X00-55
Last-modified: 2011-05-04 (水) 16:36:11 (4733d)

「……と、言う訳です。才人さん」
「はぁ〜〜〜〜〜〜」
シエスタから説明を受け、長い長ぁい溜め息を付いた才人が居るのは、魅惑の妖精亭の屋根裏部屋であり、妖精さん達の寝室が連なる一室で、ルイズがビスチェを纏ってかしこまっている
今才人に顔を合わせるのは、非っ常に気まずい
才人の心配が全て的中し、更にカジノで大負けしたのをこの店の店長に救われたとなれば、怒鳴り付けたくなるが、既に店長がしたらしいので、才人はやらない
ルイズが魅惑の妖精亭に入ってから、一週間が過ぎている
才人の方は、翌日に鉄鋼の精錬を確認し、相当良い状態に改善し、使用燃料の節約にもなり、グラモン伯達を喜ばせた
更に、石炭を蒸し焼きにした後のガスを用いてガス灯を作り配管して、製鉄所内の光源になり、作業員の負担軽減に貢献する
更に、時計職人達にダイヤルゲージ,シリンダーゲージ,バイメタル式温度計,ブルドン管式圧力計の設計図を渡し、製作の依頼をする
それぞれ機械式時計に較べれば、遥かに少ない部品点数で作れる為、時計職人的には簡単である
ダイヤルゲージはギヤ比とリンク比さえきちんとすれば良いだけなので、簡単に100分代の計測が出来るのだ
それぞれ、大きめの真鍮製懐中時計のボディーをそのまま使い、針は長針と規格を同じに統一し、独自の部品のみ変えると言った手法であり、時計職人達は安請けあいしている
見習いに対する訓練用に丁度良いと言われてしまい、才人は苦笑した
更にガラス職人を探したのだが、ヴァリエールかトリスタニアに行った方が良いと言われた為、断念している
リンク機構の相談も行い、ド=モンモランシに行く時計職人と鍛冶職人を選別する所迄終わらせた
空いた時間は、才人はグラモン式軍事教練を受けている
エレオノールの機嫌は、才人には良く解らない
一人、盛り上がっては盛り下がる事を繰り返してるからだ
そんなこんなで才人がシエスタにまだ予定が立たないと連絡を入れると、シエスタがトリスタニアの親戚に会いに行くと連絡し、魅惑の妖精亭で働くルイズをシエスタが発見し、才人に梟便で知らせ、今に至る
才人は零戦を飛ばして学院に置くと、学院からエレオノールの竜籠でトリスタニアに乗り継ぎ、王宮に預けて魅惑の妖精亭を知ってる衛士隊の隊員に送って貰うといった、大移動である
ド=グラモン滞在中に、タバサは仕事と言い残して、ガリアに向かってしまった
後は全員グラモン領に、置いて来ている
トリスタニアには、他にも才人は用事が有るのだが、現在はルイズが優先である
「全く、スリに遭うわ、カジノで大借金をこさえるわ、オマケに店長に救われるわ。凄い大冒険だな」
「……返す言葉もございません」
ルイズはしゅんとしている
「まぁ、無事で良かったよ」
才人はそう言って、溜め息を付く
何度付いても付き足りない気分に陥るのは、流石に才人も初めてである
「ルイズ、だから言ったろ?貴族の気分で動いてたら、危ないぞって」
「……はい」
流石に、今回ばかりは素直である
良いとこまるで無しなのだ
貴族のマントが、今まで凄まじい効果を発揮していたのを、改めて痛感している所である
コンコン
「ルイズちゃんのお兄さんが来たんですって?挨拶させてくれないかしら?」
「スカロン叔父さん」
シエスタがガチャリと開け、スカロンが入室する
流石に4人は狭い
シエスタがスカロンに席を譲り、立つ
ルイズはベッドに腰掛けており、才人はテーブルを挟んで、スカロンの対面だ
「あら、貴方がルイズちゃんのお兄さん?宜しく、私はスカロン。ミ・マドモアゼルと呼んでね」
「初めまして、マダム。俺は才人、ルイズの腹違いの種違いの兄です」
東京にはオカマさんが多い。たまに飲む酒場で良く見てた才人は、普通に対応する
初対面で驚かない才人に、スカロンはちょっぴり感心しながら対応する
「あら、ミ・マドモアゼルって言ったでしょ?もう、皆マダムって言うのよねぇ。って、今言ったの、他人じゃない?」
「親の連れ子同士の結婚ですよ」
「あら、納得だわ」
スカロンは頷く。ルイズの任務の性質上、一番無難な方法を取っている
そして、スカロンはルイズと才人を交互に見ると一人納得し、更にシエスタに声をかける
「シエスタ。お店手伝って貰えない?貴女が居るとチップが増えるのよねぇ」
くねくねしながらスカロンが言うと、シエスタは才人の前で有るので即答する
「絶対、嫌。厨房だったら、手伝っても良いです。スカロン叔父さん」
「ん〜、まぁしょうがないわね。じゃあ宜しく頼むわね」
「マダム」
「あら、なあに?」
「ルイズの負けって、どれ位ですか」
「えっと、お城の半額位?」
「……大した負けっぷりだ。じゃあ、ルイズの代わりに支払いますよ」
そう言って、才人は小切手を出す
グラモン滞在中に、王宮から来た報酬である
金額が多大な為、口座を開設して入金してあると手紙に綴られ、小切手が同封されていた
本来はもう少し高いのだが、コルベールとエレオノールに金額書いた小切手を渡してしまった
コルベールとエレオノールは、今回分の貢献はしてないと固辞したのだが、才人は一言
「ゼロ機関は不安定収入の組織だ。払える時に払う。次回がいつ払えるか解らないから、受け取る様に」
と言って、押し付けた
二人共、自身が抱える研究途上の物がある為、資金は有るに越した事はない。結局は受け取る
最初は三等分しようとしたが、二人に猛烈に反対された
「こんの馬鹿平民!!実績に基づく分配比率にしなさい!!そんなの貰っても嬉しくない!!」「私も同感だよ、才人君」
二人がきちんとした大人である事を嬉しく思い、更に感謝する
「素晴らしいスタッフだ。姫様に感謝しないとな」
そう言って微笑み、エレオノールを真っ赤に染めさせた
何故エレオノールが真っ赤に染まったのか、才人には解らない
当たり前の事を言ってるだけだったからだ
残りは一応、今回分をギリギリ支払えるかどうかって所である

「あらあら、ノン・ノン・ノン。賭事の分は、賭事で支払って貰うのが、私のモットーよ」
「おみそれしました」
メトロノームの様に、指をちっちと振りながらスカロンは悪戯っぽく応じ、才人はそう言って頭を下げる
「中々出来たお兄さんねぇ。何処でそんなお金稼いだのかしら?旅の剣士さん?ん〜、お仕事は何してるの?」
「剣は自衛用です。職人やってます。今はちょっと出稼ぎしてたんですけど、ルイズからの手紙で知りまして、夜通し馬でかっ飛んで来ました」
「まぁ、トレビアン!!ミ・マドモアゼル感激!!美しい兄妹愛ねぇ。最も、ルイズちゃんは少々不満そうだけどね」
スカロンが一人そう言うと、ルイズは身じろぎをする
どうも、この人は全てお見通しらしい
『ううぅ、スカロン店長には、ずっと頭上がりそうにないわ』
「で、無事を確認出来たし、貴方はどうする?泊まる場所は用意してる?」
その言葉に、ルイズがベッドからがしりと才人を掴む
無言のおねだりだ
才人はルイズの頭に手をぽんと乗せ、話す
「良ければ、マダムを少しお手伝いさせて頂けませんか?ルイズを助けて下さった礼も有りますし、トリスタニアにも用事が有りまして、少し滞在しなきゃならないんですよ」
「あら、どんなご用事?こんな仕事してるせいで私、こう見えても顔広いわよ?」
才人に取って渡りに舟である
トリスタニアの市場と、街路全部見回る積もりだったのだ
「あ、そうなんですか?でしたら、硝子職人の工房と、宝石磨きの職人の工房知りませんか?トリスタニアは、あんまり詳しくないんですよ」
ルイズが其を聞き、才人に近寄り耳打ちする
「サイト、硝子職人は、ヴァリエールに居るよ」
才人の仕事にヴァリエールが役に立つ。当然ルイズは、この機を逃す積もりは無い
「あぁ失礼、硝子職人のは無しで」
そんな様を面白そうに眺め、スカロンは応じる
「仲の良い兄妹ねぇ。宝石磨きの職人さんって、良く市場で露店出してる人?」
「ビンゴ!!その人」
「ちょっと待ってて、地図書いて来るわ」
スカロンは立ち上がり、一旦席を離れる
すると、才人はルイズを撫で始めた
「ルイズ、でかした」
「え?」
「トリスタニアの顔役に、偶然とは言え繋げたんだ。大した強運だ」
ルイズはキョトンとする
才人の言い分が、余り理解出来ないのだ
「あの、スカロン叔父さんは、こんな仕事してるせいで、顔が広いだけですよ?」
シエスタが言うと、才人は更に応じる
「シエスタ、中々凄い事なんだよ。少なくとも、俺には接客業なんざ無理。当然、人脈なんざ作れない。シエスタの叔父さんは、凄い人だって」
「そうなんですか?」
シエスタには良く解らない。何故なら、才人には大貴族のパイプやら、王族のパイプが既に出来ているからだ
だが、才人からすれば、所詮ガーダールヴに惹かれた上でのパイプである
どうにも、信じきれない
「あぁ、世馴れた人だね。安心してルイズを任せられるわ。ルイズ、スカロンさんの言う事はきちんと聞けよ?社会勉強だ。未来の公爵には必須だぞ?」
「い、言われなくても、解ってるわよ」
「良い子だ」
くしゃりと撫でられルイズは目を細める
待ちに待った使い魔の手である。其だけでルイズは元気が出るのだった
「で、才人さんは今日はどちらに泊まるんですか?」
「そうだな、木賃宿にでも」
「じゃあ、私も一緒に泊まりますね。ほら、宿代は節約しないと」
そう言って、才人の腕を取り、ルイズがムッとする
「サイトはあたしと一緒。使い魔なんだから当然でしょ?それに無駄使いする必要も無いじゃない………狭いけど」
「狭いから良いよ。シエスタはスカロンさんの所に」
「妖精さん達で、今目一杯ですよ。スカロン叔父さんがカジノに居たのは、偶然じゃないです。夏休みなんで、ミスみたいに引っ掛かる娘達を救い上げてるんですよ」
スカロンの行為は偶然では無いとシエスタに聞かされ、才人は唸る
「うっわ、あの人には頭上がらねぇなぁ、おい」
どうにも、シエスタの親戚は格好良すぎる
「えへへ、ひいお爺ちゃんの教育の賜です」
シエスタはそう言って、自慢の叔父に胸を張った

*  *  *
才人は地図を貰って頭を下げた後、バイトとして厨房と皿洗いにつき、シエスタは厨房で料理をし、久し振りのサイトシエスタコンビによる、お料理コンビネーションを炸裂させ、厨房のてんてこまいの注文をあっさり仕上げながら、合間に皿洗いをざっと仕上げる働きぶりをみせている
この二人は魔法学院で、ずっとコンビを組んでいるので、お茶の子さいさいだ
正に阿吽の呼吸でシエスタが料理を文字通り放り投げる
「はい、揚げ物終わり!!」
ヒュッ
才人が包丁数閃で空中の料理を切り分け、落ちた先の皿の上に盛り付いている
「あいよ、運んでくれ」
……ガンダールヴの使い方を、間違っている気がしないでもない
普段から厨房に入っているスタッフは、そんな二人の行為にぽかんとし、スカロンに報告する
「これ、見せ物に出来ますよ」
「……チップも飛ぶわね」
スカロンも深く頷いた
そんな中、ルイズは接客にどじっ娘満載で応じている
あっちで酒をひっくり返し、こっちで転び、慣れない接客用の営業スマイルで顔をひくつかせ、逆にそれが受けている
但し、チップには結びついていないので、要修業だろう
最も、酔いどれ相手だと怒って喧嘩になるので、そう言った席には回されていない
そんな中、騒ぎが起きた
「おい、妖精ちゃん。こっち来て酒注げ、酒」
「あ、はい、ただ今」
来店した客は、既に酔っ払っている
たまたまルイズは空いていた為、席に付き、慣れない手付きで酒を作り、渡すとひっくり返してしまう
どうにも酒の匂いに我慢が出来ず、震えて取り落としたのだ
更に見事に好みとは正反対の泥酔親父であり、鳥肌が立ったのも災いしている
貴族は下世話な対応は嫌なのだ
「てめぇ!!何しやがる!?」
「も、申し訳有りません、今お拭き……」
「い〜や、許せねぇなぁ。ごめんで済んだら、陛下なんざ要らないんだよ。弁償だ」
そう言って、ルイズの手を掴み引っ張り外に出そうとする
「い、痛い!?」
「良いから弁償で付き合え、良いな?」
「お待ち下さい、ミスタ。ルイズちゃんの粗相、私、ミ・マドモワゼルが成り代わり、謝罪致しますわ」
そう言って、いつの間にか側に寄ってたスカロンが頭を下げる
「てめぇ!!どう落とし前付けてくれんだよ!!あ?」
「でしたら、私がルイズちゃんの代わりに一晩お付き合い致しますわ。是非とも其で勘弁を」
そう言って、酔客にしなだれかかるスカロン
はっきり言って、おぞましい光景である
すっかり酔いが醒めた客が後退り、吐き捨てる
「い、要らねぇよ。糞、飲み直しだ」
「お代は結構ですので」
「当たり前だ、馬鹿野郎」
そのまま退店し、ルイズはほっとする
「あ、あの、スカロン店長、有り難うございます」
「減点一。さっきのお酒代は、給料から引くわね」
ルイズはびくっとするが、頷く
世の中は、大変厳しい
「ま、さっきの客は、二度と来ないから安心して」
「えっ?」
「ルイズちゃんは知らなくて良いの。接客頑張んなさい。お兄さんが見てるわよ?」
「は、はい!!」
才人が見てる。其だけで、醜態は晒せない
「でも、もうちょい私の事見てくれてたって、良いじゃない。厨房に入りっぱなしで、あたしのピンチに出て来ないなんて、何してんのよ?馬鹿犬」
ついつい不満が口に出、聞こえたスカロンが応じる
「本当に、お兄さんは甘やかしねぇ」
才人はスカロンが出るとトイレと言って、トイレと違う勝手口に歩いて行き、厨房に居ない事を、スカロンだけは知っている

*  *  *
先程の客が魅惑の妖精亭を後にした後、暫くしたら裏路地に誰かに引き込まれ、後ろから喉元に刃を当てられる
「ひっ!?」
その刃は今迄みた事無い刃紋を持ち、非常に美しく、更に濡れており、その水が冷気を醸しだし、男は血の気が引いて行くのが解る
この刃は、人なんか簡単に切り裂ける
実際に触れてるだけの喉から、血が流れ出してるのが解る
声を出したら、その時点でお陀仏だ
狙われる覚えは全くないが、酔っ払ってた時の事かもしれない
「二度とあの店には行くな?良いな?約束出来ないなら、このままヴァルハラに送ってやる。返事は?ウィ?ノン?」
ガタガタ震えだした男、その震えは刃に当たり、更に出血を促す
とてもじゃないが、メイジとて今の状況じゃ打開出来ないと、男は観念する
「ウ、ウィです!!だ、だから、た、助けてくれ!!」
「行け、此方を向いたら殺す」
刃を離した人物が男を蹴りだし、男はほうほうの程で走り去っていく
その人物は暗闇ですら妖艶に光る刃を収め、歩いて去っていった

*  *  *
夜明けと共に、魅惑の妖精亭は閉店する
最後迄居た客は、アフターの約束を妖精さんと上手く取り付けた、努力と幸運の持ち主達
だが、ルイズはアフターのお誘いを全て断っている
やればチップ倍増の機会が増えると、先輩達に教えて貰ってるのだが、使い魔が来てしまった
とてもじゃないが、使い魔以外の男とデートなんざしたくない
それほど、初日の出来事が尾を引いている
そしてやっと、使い魔と一緒のベッドの前に邪魔が入る
シエスタではなく、店長の娘、ジェシカだ
「ねぇ、貴方。ルイズちゃんのお兄さん?今日、厨房凄い助かったんですって?」
「いえいえ、助けられたのはこっちですよ」
ジェシカはビスチェの胸元を強調しながら、才人の腕を胸元の間に抱えこむ
胸の大きさはシエスタをしのいでおり、本質的な巨乳派の才人には、非常にキツイ誘惑だ
実に柔らかい感触は、夢見心地にさせてくれる
「ねぇ、私のお婿さんにならなぁい?お店助かっちゃうなぁ」
そして才人は、そんなジェシカのおでこをちょんとつついた
「いやん!?」
「実に素晴らしい誘惑。もうちょっとで、おぢさんうんと言っちゃう所だったよ」
「やぁだ、今うんって言ったでしょ?タニアっ子を甘く見ないでよ?」
「上手い手だね、ジェシカさん」
「ジェシカで良いわ。シエスタにも呼び捨てじゃない。なんか嫌だなぁ」
「解ったよ、ジェシカ。だから、腕離してくれない?」
「アフターしてくれるなら離してア・ゲ・ル」
そう言って、ジェシカは腕を離さない
「おぢさんをからかうのはやめなさい」
「だって、ひいお爺ちゃんに、似てるじゃない。黒髪の男の人って、素敵よねぇ」
そう言って、ジェシカは店の男にする様にとろんとした目を向ける
大抵の男は酒と併せて一発で転んでくれるのだが、才人は残念ながら、今は飲んでない
「あぁ。ジェシカも武雄さんの曾孫か」
「あら、ひいお爺ちゃんを知ってるの?」
「竜の羽衣譲って貰ったよ」
聞いた途端、ジェシカは目を丸くする
「って事は……ひいお爺ちゃんと同じ国の人?」
「あぁ」
「やった!!凄い偶然、本当にアフターしよ!!私、俄然興味沸いちゃった。もう何でも許しちゃう」
そう言って、ジェシカが更に抱きつき、シエスタが睨みつける
「……ジェシカ。才人さんに何してるの?」
「何って、良いことよ。あ、これからするのよね?じゃ、行こ行こ?」
そんな様を見せ付けられたルイズは、サイトを何時もの如くぶん殴り、屋根裏部屋に引きずって行ってしまった
シエスタはあちゃーという表情をし、ジェシカはぽかんとする
「な、何?今の?」
「ミ……ルイズさんは、とんでもないブラコンなの。あんな事ルイズさんの目の前でやってたら、ああなるわよ」
「でも兄妹でしょ?」
「血の繋がらないね」
「あ………あぁ!?」
シエスタの言い方にぽんと手を打ち、ジェシカは納得する
「じゃ、本気でいこう。障害は多い程燃えるのだ」
そんなジェシカの様に、ため息を付くシエスタ
「本気で遊ぼうの間違いでしょ?全く、悪い癖なんだから」
「あら、どうかしら?シエスタは知ってるんでしょ?どんな人?」
するとシエスタは頬を染め、小さく囁いた
「……お嫁さんになりたい人」
「良し、決まり。本気だ」
「ちょ、ちょっと待って!?ジェシカ、止めて!?スカロン叔父さん、何とか言ってよ!!」
すると、スカロンはシエスタの思惑とは反対の事を言い出した
「あの人が婿に来てくれたら、助かるわぁ。ジェシカ、頑張って来なさい」
「サー、イエッサー。ジェシカ軍曹、突貫します」
ビシッとアルビオン式敬礼を行い、ジェシカは階段を登って行く
「もうやだ、従姉妹迄ライバルなんて。始祖ブリミルよ、お恨み申し上げます」
シエスタはよよよと泣き、その様を他の妖精さんは笑いながら見ていた
皆、他人の恋愛沙汰程面白いモノは無いのだ

*  *  *
ルイズは自分の部屋に才人を放り込むと、腹を殴って気付けする
「ったく、また重くなってる。全然太って無いのに、一体なんなのよ?」
勿論、増量分は全て筋肉です
使い魔のお仕事する為に、ルイズの知らない所で、沢山稽古してるのだ
涙ぐましい才人の努力も、ルイズの前では露と消える
それより、そんな才人を片手で引きずりながら階段すら運べる膂力を、ルイズが何処から出してるかの方が謎である
同じ重量の物体は、絶対に動かせない筈だ
恐らく、才人がどんなに重くなっても、ルイズは片手で引きずるだろう
ご主人様は、使い魔限定で無双になるらしい
「って。相変わらず酷いな、ご主人様は」
「ああああんた、言う事は無いの?」
「何をだ?」
「あたしが絡まれた時、何処に居たのよ?」
「ん?そんな事あったのか?」
ドゲシ!!
ルイズの蹴りが、才人の腹に直撃する
『どんなに鍛えても、何故ルイズの蹴りは痛いんだ?此が使い魔の呪いかよ?』
余りの痛みに苦悶する才人
「痛いです。マイロード」
「だから、何処に居たのか、正直に仰い」
「何時頃だ?」
ルイズが言うと、才人はポンと手を打つ
「あぁ、そん時、トイレでうんこしてた」
ルイズのアッパーカットが顎に炸裂し、才人は意識が吹っ飛ぶ
そのまま、才人を夏だから脱がして横にし、ルイズはプンプンしながら添い寝に入った
才人の努力が報われるのは、何時だろう?
神と始祖か、大いなる意思のみが知る

*  *  *
ガチャ
「えっへっへっへ。わったっしっは、魅惑の妖精亭の看板娘〜〜」
そう言って、鍵を合鍵で開けてジェシカはルイズの部屋に入室し、才人がルイズと一緒に寝てるのを発見すると、鍵を閉め、才人の上に乗っかり、寝に入る
「じゃあ、修羅場を楽しもうね、お兄さん」
着ているのは、スケスケのネグリジェである
もうバインバインな胸がこれみよがしに主張され、才人の上でむにゅりと変型する
二人共、夏の昼間に屋根裏で寝てる為、才人はパンツ一丁、ルイズは下を穿いてない
暑いのに肌を合わせないとルイズの方が寝られないのが、がしりと才人を掴んでいる仕草からも想像に難くない
そして、ジェシカもその恩恵に預かり、色々えっちな事をしようとする前に、寝てしまった

*  *  *
「…暑い」
才人が午後の余りの暑さに目を覚ますと、何故かジェシカ迄上に被さって寝ている
才人はそのまま起き出し、ルイズの隣にジェシカを置くと、そのまま着替えて村雨とデルフを持って出て行く
用事が有るからだ
パタン

二人が起きたのは夕方であり、起きたら才人がおらず、お互いに顔を合わせて唖然とする
「何で、い……おにいちゃんじゃ無いのよ?」
「其はこちらの台詞よ。何でお兄さん居ないのよ?せっかく誘惑しに来たのに」
「ああああたしが居るのに、堂々とやらないでくれる?」
「あら、善は急げって言うでしょ?タニアっ子は、せっかちなのよ。次からは、ちゃんと私の部屋に呼ぼうっと」
「そんなの駄目に決まってるでしょ?」
「ふ〜ん?殴りまくって、お兄さんが何をやってるか聞かない貴女に、言われたく無いわねぇ〜」
「教えてくれないもん」
ブスッと応じるルイズに、ジェシカがやっと気付く
才人は教える積もりが無いのだ
なら、スカロンから聞いたとは言え、自分が言ってはいけない事である
「じゃあ、一つだけ言ってあげる。殴るの止めなさい。貴女には、勿体無いお兄さんだわ」
「そんなの……解ってるもん。あたしじゃ……駄目だもん」
「おっし、許可が降りた。じゃあ、私が貰おうっと、じゃね」
ひらひら手を振り、ジェシカが部屋から出て行く
パタン
誘導尋問に引っ掛かった事を、出て行った後にルイズは気付く
「……あっ、やられた!?ちょっと、今の無し!!待ってよ!!」
ルイズがバタバタとジェシカを追い、部屋を飛び出した
此所でも虫の払いは必要らしい
ルイズは頭が痛い
「こんなので、あたし、任務なんかこなせるの?」
ちょっと疑問だ

*  *  *


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Last-modified: 2011-05-04 (水) 16:36:11 (4733d)

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