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Last-modified: 2011-08-01 (月) 10:14:21 (4645d)

才人は開発試作品が出来たとの事で、アカデミーにエレオノールによって拉致された
以下、当時の状況である
バタン
「いらっしゃいませ。あらあら、アカデミーの方ですね。トレビアン!今日もお約束ですか?あ、ちょっとミス、そちらは厨房ですよ!?」
ツカツカツカツカ
スカロンに挨拶すらせず無言で店内奥に歩き、厨房に行くと一悶着が起きる
「ちょっと平民、今すぐ来なさい!」
「ちょっ、包丁持ってる持ってる!!」
「そんなの後よ!!あんたにしか出来ない仕事ばっかり山積みなんだから、さっさと来なさい!!」
「才人さん!?ミス、刃物持ってる時にそんな扱いしないで下さい!?」
「あてててて!?」
耳を引っ張られて才人が厨房から引きずり出されるのを、皆がポカンと見る
「あの、ミス。才人ちゃんはウチのバイトで「これは私のボスよ!!連れて行くわ」
スカロンが言いきる前に言葉を被せ、問答無用で連れ去ろうとすると、才人から一言
「せめて、デルフ持ってかせてくれ。何か有ったら困る」
「しょうがないわね」
そのまま階段をエレオノールが耳を摘んだまま登り、才人が抗議する
「だぁ!?いい加減耳離せ!!」
「嫌よ」
余りにあっさり却下され、才人は耳を引っ張られながら、階段を登って行った
ずっと見てたスカロンは、ポカンとしつつ呟く
「才人ちゃんがあの大貴族の御婦人のボス?才人ちゃん何者?」
「おい、見たか今の?」
「平民が貴族のボスだってよ。一体何が起きてんだ?」
客達も見てた者が噂をし始める
何か特異な事が起き始めてる事だけは、聞いた者達は気付いたのだ

ガチャ
「あ、サイト。それに姉さま!?」
休憩で偶々離れてたルイズは、エレオノール達が現れたので驚く
「ルイズ、此方の仕事が、平民が必要になったから連れてくわ」
「で、でも」
ルイズが抗議しようとすると、エレオノールが鼻先に指を突き付ける
「使い魔が必要なのは、同じメイジとして、非っ常に良く解るわ。私も使い魔居た時は、アンタと同じくべったりだった。でもね、この馬鹿が居ないと仕事が進まないの。アンタは、陛下の出兵の話は聞いてるの?」
ルイズはこくりと頷く
「コイツは今ね、新型艦の設計製作を一手に担ってる。アンタのメイジとしての主張は、数万人の人間を殺すのよ?アンタは味方殺しする積もり?我慢しなさい」
こう言われてしまっては、ルイズとて我慢するしかない
「…解りました。姉さま」
「解れば宜しい。ちびルイズ、アンタはアンタの仕事頑張んなさい」
そう言って、デルフを手に持ち、ジャケットを羽織った才人の腰に手を回し、出ていく
「行くわよ、平民」
「あぁ。ルイズ、悪い。そっちの仕事終わったら、遊びに来てくれ」
「うん」
パタン
出ていく二人を見る際に、ルイズは見てしまった
そう、才人よりエレオノールの表情だ
あの表情は、新しい婚約者が出来た時の、完全に舞い上がってる時の表情だ
落胆よりも、怒りが湧いて来る
「なっなっなっなっ、何で姉さま迄。嫌よ、悪夢だわ。始祖ブリミルよ。私が何かしたのですか?酷い仕打ちです」

とんとんとんとん
才人達が階下に降りて行き、スカロンに挨拶するとそのまま店を出る
二人で歩きながら現状の確認だ
竜籠を預けてる王宮に向かってるのである
「出来たのか?」
「えぇ、アンタの試作品のバイトって言うの?あれを発動媒体にするのには成功したわ」
「つまり、杖機能を付与出来たと?」
「えぇ、消耗品って言ってたから、全部の作動確認したわよ。とりあえずアカデミーに来て」
「あいよ」
そのまま歩いて行くと、エレオノールが段々不満気になっていく
「……ちょっと平民」
「ん?何だ?」
「な・ん・で・エスコートしないのよ?あんた男でしょ?私は大貴族よ?エスコートするのが当たり前でしょ!!」
才人が端と立ち止まり、まじまじとエレオノールの顔を覗き込む
「な、何よ?」
思わず目を泳がすエレオノール
「悪い、俺の国にはそういう習慣無いから、気付かなかったわ」
「そう、それじゃ仕方ないわね。じゃあ、許してあげるから、今からしなさい」
才人は思わずニヤニヤしてくる
「でも、良いの?俺、平民だぜ?」
本来なら、従者か護衛ポジションでしっくりくる
なのに要求したのが、エスコートである
「平民の男でもエスコート位するわよ。おかしく無いでしょ?」
確かにおかしくは無い
平民が、貴族をエスコートするのがおかしい
その事に気付いているのだろう
赤面しながら、手を差し出すエレオノール
『勇気出してんだな』
才人はそう判断して、しゃがんで手を取り、甲にキスをすると、そのまま立ち上がり、腰に手を回す
エレオノールは、そのまま才人の腕に腕を絡め
「やれば出来るじゃない」
「修業の成果が出てるかな?」
そのままエレオノールが、少々控え目な胸を才人の腕に当てるが、才人はあいにくジャケットを着込んだせいで、反応しない
それでも構わず、エレオノールはそのまま王宮に向かって歩いて行く

*  *  *
竜籠に乗る際も才人は意識して扉を開け、エレオノールの手を恭しく取りながら、段を先に登らせて乗らせ、其から自分自身が乗る
王宮のスタッフが竜と牽引索を確認すると、竜達が羽ばたき、上空にふわりと舞い上がった
竜籠の大きさは馬車と同じ位、観覧車の大きめのゴンドラと同じ位で、座席は長椅子が対面になっており、人一人が寝る事が出来る広さである
「あれ?前に乗った時と匂いが違う?」
「ちょっと、手入れしたのよ」
才人の疑問にエレオノールが何故か視線を合わさず、しかも隣に座って話す
わざわざ香迄焚いて、香りを付けてるのだ
才人はデルフと村雨を立掛け、ジャケットを脱いでいる
「そうか」
「……平民、寒い」
「え?あれ?そういや何か肌寒いな?高度上げすぎてないか?」
エレオノールの指示で普段より高度を上げているのだが、勿論才人はそんな事知る由も無い
そう言うと、エレオノールは才人に抱きつき暖を取る
「ん、暖かい」
才人は、エレオノールの為すがまま任せている
そして、エレオノールの視線がやっと才人と合うと、眼鏡越しのその顔は、明らかに期待している
「エレオノールさん。どういう顔してるか解る?」
そう言うと、エレオノールは更に期待の表情を強くし、才人が顎に手を触れクイって持ち上げると、エレオノールは瞳を閉じる
そのまま才人がキスをすると、舌を絡め、手が才人の身体を抱き締め、才人の手が胸と尻に回る
エレオノールはそのまま離すまいと必死だ
チュピ、チュピ
時折唾液が鳴り、軟体動物の様に艶めかしく身体を動かし、才人の股間が勃起してるのを手で確認すると、そのままファスナーを下ろし、露出させる
「ん、随分積極的」
「……ふん、竜籠の中は時間無いわ」
エレオノールはそう言うと才人が離れ、すかさずエレオノールが四つん這いで尻だけ持ち上げる
「あれ?獣の姿勢嫌いじゃなかったの?」
「き、嫌いよ。だから…」
ぱさり
才人がスカートを捲ると、スケスケのショーツが濡れていて、太ももに垂れている
「興奮すると」
才人がエレオノールの尻を掴み、息子を割れ目に撫でると、ビクンとエレオノールが反応する
「あっ、お、おね………はぁぁぁぁ!?」
エレオノールの懇願は完全に言葉になる前に、ショーツを下ろした才人が侵入してくるのが早かった
そのまま身体がびくびくし、才人も一気に呼吸が荒くなる
「はっはっ、すげぇ、堪らん」
ぱん
「あっ!?」
ぱん
「ひっ!?」
ぱん
「ふ、ん〜〜〜〜〜〜!?」
才人の一突き事に声が漏れ、身体が快楽が逃げる様に勝手に動くと、才人が腰をがしりと掴み逃がさない
すると、エレオノールはそのまま痙攣し始め、才人は小刻みに動かし、最後に一発奥に固定し、射精する
「ふぅぅ、こんなの駄目、こんなのだめなの。平民、へいみん」
エレオノールは才人の射精を身体を震わせて受け入れ、決して自分からは離れようとはしない
そして、才人が離れ様と動くと、尻を押し出し、才人を後方に押し倒した
姿勢を崩された才人はそのまま後頭部を壁にぶつける
ガン
「って〜〜〜。何すんだよ?」
くちゅ
繋がってる部分から、粘着質の音が鳴り、スカートが元に才人の上に覆い被さる
そのまま、才人を入れたまま回転し、エレオノールは才人に完全に欲情した顔を見せ付ける
「だ、駄目よ、駄目。絶対だめ。ゆ、許さない」
腰を前後に艶めかしく動かし、膣は才人を欲して吸引し、子宮が下がって才人にコツコツ入口が当たる
「へ、平民なんだから、わ、私の所長なんだから、じ、自分の秘書位、満足させなさい」
その間、腰のうねりは収まらず、才人は完全に復活した息子が、エレオノールを欲するのを自覚する
才人がエレオノールを抱えると態勢を変え、椅子に座った状態でエレオノールを座位にする
「へ、平民。アンタ、上手いの?」
「さぁ?良く解らん」
「じゃあ、私が敏感なの?」
「……比較されて良いの?」
「私、ヴァリエールの詰問よ?答えなさい」
「…ハルケの女性は、皆敏感で貪欲、おまけに名器揃い」
「…私も?」
「あぁ」
「ランクは?」
「皆、魅力的なんだ。一人を選べって強制されたら、殺生だよ」
「ふん、男って、皆して傍らすのは、理由が有るのね…あ……はぁぁぁ!?」
また痙攣し、才人にしがみ付き、才人も絶頂のうねりに耐えられず、尻を掴んで射精する
「………ふぅぅぅぅ、ねぇ、平民」
エレオノールはそのままの姿勢でピロートークだ
お互いの耳に、息がかかり、吐息が耳を擽る
「何だ?」
「私ね、結婚……出来ないの」
「…何でだ?」
「相手……居ないの」
「…」
才人は返事を返せない
「でも、ヴァリエールなら相手が」
「皆、逃げちゃった」
「…」
「ねぇ、平民。あんただけよ?私、魅力無い?」
『さっきの質問は、これか』
「正直に言った方が良いか?」
「…えぇ」
「性格は非常にキツイ。でも、臆病で脆いな」
「…当たり。でも臆病なんて、いつ気付いたのよ?」
「決闘後、暫くびびってたじゃないか」
「…そうね」
「レティシアさんの言ってた通りだな。本当は、誰かに支えられてないと駄目なんじゃないか?何時も突っ張りっぱなしで、一杯々々って感じがする」
「…あんた、鈍感なのか鋭いのか、良く分かんないわ」
「そうか?」
一拍おいて、更にエレオノールは告白する
「……誰かに身体を預けるのって、良い気分だわ」
「…そうか」
「ねぇ、私の事……」
才人は最後迄言わせず、エレオノールの唇を塞ぐ
エレオノールは其に応じ、舌を絡ませる
お互いが充分に味わった後、唇が離れ、エレオノールが抗議する
「……言わせない積もりね?この卑怯者」
才人は更に唇を重ね、エレオノールの抗議を封殺し、エレオノールも存分に応じた

*  *  *
「へぇ、此所がアカデミーか」
才人の声は目の前の塔を見た感想である
そのまま塔内に入ると、エレオノールは受け付けで宣った
「此方は私のボス、ゼロ機関の所長よ。所用はゼロ機関研究室ね」
「了解しました、ミス」
エレオノール自身は顔パスだが、才人はそうではない為、軽く紹介してから塔内を歩く
塔内のエレオノールの研究室に赴くと、一人の女性が部屋の前に立っていた
「もう、エレオノール、待たせ過ぎよ」
「ヴァレリー、お待たせ」
「で、エレオノール、此方のミスタは?」
「私の所長よ」
「へぇ……」
そのまま才人の頭から爪先迄、じろじろと眺め、最後にとんと指先を才人の額に軽く当てる
「ふんふん、人種が違うわね。でも、中々のタマみたい」
才人は訳が判らずエレオノールに促すと、エレオノールが口を開いた
「あぁ、紹介がまだだったわね。此方はヴァレリー、昔からの私の友達で、アカデミーの主席研究員の一人で、トリステイン最高の水のスクウェアよ。触れたのは水の確認ね」
「あ、成程」
「この男は、サイト=ヒラガ。今私が所属しているゼロ機関の所長で、異国の文明と文化を用いて、私達トリステインの発展に寄与してくれる男よ。通り名の無冠の騎士は聞いた事あるでしょ?」
ヴァレリーは、はっとする
「へぇ、この人がタルブの英雄かぁ。おめでとう、エレオノール」
にこにこしながらヴァレリーが答え、その様に才人はどきりとする
『やべ、なんつう魅力。落ち着け、俺』
そんな才人を覗き込み、何やらうんうん頷くヴァレリー
「で、何がおめでとうなんだい?ヴァレリーさん」
「イル・ウォータル・デル」
才人の問いに答えず、治癒の詠唱を行い、才人の身体を癒す
「…え?あれ?」
「最近怪我したでしょ?銃弾も浴びてる」
「…あぁ」
「其に無理が祟って、身体から悲鳴上がってるわ」
エレオノールはキッと才人に振り向き、口を開いた
「な、平民無茶しないでよ?アンタが死んだら完成しないのよ?」
「でぇ、一番の無理はぁ……」
エレオノールの額をこつんと突ついて
「エレオノールを満足させる為に、頑張っちゃったからね」
一気に顔を赤くするエレオノール
「うわぁ、水使いって怖ぇ」
才人が本気でビビり、更にヴァレリーが答える
「あら、大抵の女なら気付くわよ。貴方からエレオノールの香りが漂ってるし、エレオノールからは貴方の匂いがしてるもの。体内精査したのは、ま、私の趣味ね」
「最高クラスの水使いが相手じゃ、隠し事は無理だな」
才人はそう言って、肩をすくめる
「あぁ、それと」
ポケットからごそごそ小瓶を幾つか取り出して、エレオノールに渡す
「使うか使わないかは任せるわ。エレオノールを宜しくね、無冠の騎士様。仕事有るなら呼んでね。機材レンタルの契約も結んでるから、私を機材として出張る事も出来るわ」
「助かります」
そう言って才人と握手を交した後、ヴァレリーは自分の研究室に帰って行く
「良い友達だね」
「…でしょ?わざわざ休みなのに、出て貰ったのよ。にしても、どうすんのよ、これ」
エレオノールが渡された物を見て、才人が答える
「何だ?媚薬と避妊薬か?」
「と、とにかく中に入りましょ」
「あぁ」

*  *  *
才人がエレオノールに促されて入室すると、中は本棚と薬品が入って熟成待ちの壷、そして錬金で試作したのだろう、バイトを咬ませるテーブルが、スリットが入った状態でセットされている
「ほぅ、旋盤のテーブルの試作か」
「ミスタが、平民のイラストから起こしたのよ。手持ちはこっち」
そう言って、簡略化された銅製の代物が取り外し式でセットされたトーチから、有線でスリットが入ってるケースに繋がっている
「お、トーチ式」
才人がそう言ってトーチを掴む
「うん、良いね」
「試しに使ってみて」
そう言ってエレオノールが、カートリッジを取り出して挿入する
カチッ
ハマったケースから、ライトが点灯して才人が驚く
「何でライトが点灯?魔法?」
「そうよ。基本的に平民が使う前提だから、ケースにかけられたディテクトマジックに反応して、カートリッジの魔力で弱くライトをつけるの」
「なる、魔力の残量計か」
「便利でしょ?」
そう言ってエレオノールが、土から金属を錬金して出すと、才人が試しに使ってみる
金属からぱらぱらと粉が発生して、才人は無負荷で作業出来る感覚に驚く
杖でやってた時は、エレオノールという、巨大な負荷が有ったのだ
「ん、溶接トーチとは違うね。理想通りの加工が出来る」
「合格?」
「花まるだな」
「何よそれ?」
そう言って、エレオノールは椅子に腰掛け、才人は興味津々で本棚の本を漁り始める
「平民に、最新のルーンの研究書なんて要るの?……要るか」
才人が、科学を応用したルーンの使い方をしてるのを思い出し、本棚を物色してる才人に寄り添う
「多分アンタに役立ちそうなのは、この辺りね」
そう言って、数冊の書籍を取り出して才人に渡す
「お、悪い」
そう言って机に腰掛け、才人は読み始める
「何で椅子に座らないのよ?」
「エレオノールさんの席だろ?」
頁を捲り、才人は読み進めながら答える
「違うわよ」
「え?」
「今のこの席はアンタの席。ゼロ機関の研究室よ?ここ。アンタ自分がトップの自覚あんの?」
「……そういやそうだった」
「良い?誰がなんと言おうと、頭の自覚しなさい。私が所属してる組織の長が、情けないなんて嫌よ?」
「…解ったよ」
そう言って席に着いて、本を読み続ける
すると、エレオノールがワインを持って来る
「お、サンキュ」
今は夜、しかも深夜に入り始めている
ワインを持って来るのは当然といった所だ
最新の設備を研究以外に使ってしまっているのは、研究室では検証目的を含めてままある
持続性の悪い冷気魔法を試験する目的で、ワインを冷やしている
生鮮品で無いのは、腐るととっても困るからだ
気付かず、塔内丸ごと腐臭に包まれた事が過去に有ったりする
レティシアとヴァレリーの、引き継ぎのドタバタ時に発生している
そしてワインを口に含みながら、才人はとある項を読み進める内に、背もたれに寄っかかって本を上に掲げて読んでたのだが、そのままぱさりと本を顔に落としてしまう
「ちょっと、どうしたのよ?平民、もう酔ったの?」
才人の様子を肴に、机に座って飲んでたエレオノールが心配すると、才人が渇いた笑いを出し始めた
「はははは、パースの項の代償って意味、何時から解明されたんだ?」
「あぁ、それ?つい最近よ?パースってほら、謎の多いルーンじゃない?まだまだ一般的じゃないわね」
「あはははは」
才人は本を持ち、姿勢を正すと机に肘を付いて頭を抱える
「一体どうしたのよ?」
「何でもねぇ」
「嘘吐きなさい」
『イル・ウォータル・デル・パース・ウィアド。水よ、潜在能力に賭けて開放せよの積もりが、潜在能力を代償を以って開放せよか。そりゃ、ダメージ返って来るわな』
気付かず自爆スペルを唱えていたのだ
才人に限らず、頭を抱えるに違いない
やはりこの男、馬鹿である
普段使われないルーンは、それなりに理由が有るのだ
経験則を無視すれば、当然の結果である
そんな事は露知らず、エレオノールは才人の顔を覗き見、大して酔ってないのを確認すると、するりと才人に座る
「…何だよ?」
「読書はもう良いんでしょ?」
「あぁ」
「今日は研究室に泊まるわよ」
「寝る場所は?」
するとエレオノールが来客用のソファーを指す
「いつも泊まり込みする時は、ソファーだったわ」
「そっか、じゃあ」
「ん」
才人の首に手を回し、エレオノールの主張は、抱いて連れてけである
才人は無言で抱き上げ、エレオノールの顔に笑みが浮かぶ
「じゃあ姫、添い寝は如何しましょう?」
「苦しゅうない。そちに伽を命ずる」
「御意」
才人が抱っこしたまま歩き、ソファーに座ると、互いが互いの服を脱がせ、後は肌を合わせ、そのまま繋がると二人は目を閉じた

*  *  *
才人達が試作品を竜籠で運搬し、開発に協力し終えたコルベールが学院に戻ってボイラーをギーシュ達と共にモンモランシに運び
皆がモンモランシ領に集合したのは翌日の午後だった
そこで、帰国したアンリエッタの出兵宣言と新旧エキュー価格差統一宣言並びに国家為替条約の締結を全員聞いたのである
最も、聞いたのは書面による伝聞である
モンモランシ伯ではなく、モンモランシーから受け取り、全員顔を引き締める
「新旧エキューの統一かぁ、これ、混乱起きるんじゃ?」
比較的詳しいキュルケが文章を読み進めると、才人がニヤリとする
「へぇ、ほぼ理想的。宰相殿は有能だな。こりゃ、きちんとやらないと俺がやられる」
「ダーリンそうなの?私には問題有りそうに見えるんだけど?」
「ほら、ここ見ろ。新旧エキュー交換で1.08倍で交換するって書いてるだろ?」
「えぇ」
「インフレ率と贈与に纏わるギリギリの線を、多分デムリ卿率いるスタッフが、計算して弾き出してる数字だ。インフレ率考えると1.03〜1.05が限度の筈なのに、きちんと平民に還元してんのさ」
「ちょっと平民、数字見たダケで其所まで解るの?」
「インフレには良いインフレと悪いインフレがある。悪性のインフレは経済を縮小させるけど、年3%位のインフレは、経済を活性化させる」
「ふんふん」
キュルケが一番熱心に聞いている
次はコルベールとエレオノールだ
「でも経済のパイが拡大すると、金の量が足りなくなるだろ?」
「ん〜と、その通りね。採掘にも限度あるし」
キュルケが頷く
「だからエキューの価値を下げて、皆に行き渡る様にするって訳」
キュルケが一番先に頷いて、エレオノールとコルベールが頷き、モンモランシーとギーシュは、ハテナマークを連発する
「このクルデンホルフって、どんな国?」
才人の問いに外から声が聞こえて来た
「トリステイン王国の保護国で、我がモンモランシ伯領の金主だ」
「お父様」
才人に対しての道が開き、モンモランシ伯が歩み寄って来る
「初めまして、で良いのかな?」
「良いだろう、ゼロ機関所長殿」
「では先程のクルデンホルフの概要は、金融国家として見て良いのかい?」
「その通りだ、奴に借りてない封建貴族の方が少ない」
「成程ね………成程、トリステインも中々えげつねぇな」
才人が聞いた話を元に、また条約内容を読み苦笑するのを、モンモランシ伯が興味深げに観察する
「理由はなんだ?所長殿」
「これ、クルデンホルフに対する増税です。いやぁ、まさかこんな国が有るとは知らんかった。保護国なら、取り扱いは主にエキュー金貨でしょ?」
「その通りだ」
「クルデンホルフの国主様は、今頃怒鳴り散らしてんだろな。クックックックックックッ」
才人の笑いを理解出来たのはその場にはおらず、奇異の目で見られるが、才人は意に返さない
「そちらの仕事はまだ空きが有るか?良ければ詳しく聞きたい」
「良いですよ」
「此方だ」
そう言って、自ら案内をし、才人は一人付いて行く

案内されたのは庭園であり、大きな鯉が彩りに泳いでいる
「ヒュ〜、こんな庭園有るだなんて、錦鯉も居るとはねぇ」
「ニシキゴイ?」
「俺の国にも居たもので。改良品種の呼称ですよ」
「うむ、最初は養殖池の中から色変わりのタニア鯉を見付けてな。其から、こうやって魔法も使って改良していった。ここまでなるのに、30年掛ったわ」
「じゃあ、モンモランシ伯が開祖?そりゃ凄い」
「だが妻も娘も理解してくれぬ。最近やっと、ガリアやロマリア、ゲルマニアから、高値で引き合いに出せる様になったと言うのに」
基本的に趣味に冷たくされるのは、どこの世界の男も共通らしい
その哀愁漂う背中に、思わず才人は同情する
「気持ちは良く解ります」
「解るか?貴公!!」
ガシッと才人の両肩を掴み、延々と講釈を垂れようとする前に、才人が口を挟む
「先程の説明では?」
「う、うむ、そうだったな」
才人が村雨を鞘事抜いて、地面にがりがりと書き始める
「まず今回の通貨統一で新エキューになると、市場価格で現時点で単純計算で1.08倍になります」
「うむ」
「つまり、何もしなくても、収入が1.08倍になります」
「そうだな」
「借りた金の利率は?」
「3%だ」
「多分デフレだったので、非常にキツイ利率だったでしょうね。でも今回の政策で、借りても利益が出せるので、問題無くなります。そのまま何もしなくても、無借金経営に改善出来ますよ?」
「成程」
伯爵が理解すると、更に続ける
「で、彼らは受け取る額面は同じでも、金の総量は減る。減った分はトリステインの利益、つまり増税になります」
「…陛下も中々にえげつないな」
「しかも、この条約のポイントは、結んでクルデンホルフの損害が如何に小さくするかであって、トリステインは結ばない方が利益を出せる事。つまり貸しに出来るんです。後は向こうが、どう思うかですね」
「こんな事出来るのは恐らく」
「マザリーニ宰相でしょう」
「今はあの鳥の骨に、感謝しておこうか」
そう言って、モンモランシ伯は呟く

*  *  *
そして才人の帰りを待っていたエレオノール達の所に、一羽の伝書梟がキュルケに留まり、手紙を受け取ると、梟はそのまま飛び去って行き、キュルケは内容を読み進め、全てを読むとすかさず焼き払った
「ウル・カーノ」
ボン
一気に灰にした手紙を、忌々しげに眺めるキュルケ
「どうしたのかね?ミス」
「ちょっと、実家から縁談の紹介よ。うざったいったらないわ」
コルベールの問いに、キュルケはそう答える
中味は全然違う事を記されていたのだが、誰にも喋らない

良いかキュルケ。ゼロ機関の動向を逐一報告せよ。我がツェルプストーが噛む隙を見付け出せ
トリステインの通貨が新通貨に完全に切り変わったタイミングで、ゲルマニアから値上げがある
その時がチャンスだ
何ならその男を篭落しろ
有能ならば構わん、平民だとて婿にする
この事は誰にも知られるな

『ったく、何処から情報仕入れてんのよ?ふざけんじゃ無いわよ。篭落されてるのは私の方だっての。しかも、ダーリンを裏切れって言うの?』
でも、キュルケは父の言い分が自分の願望に近いのに気付き、とりあえず黙っておく事にする
事態がどう転ぶか、静観する事にしたのだ
そして、帰りが遅いのでモンモランシーを先頭にぞろぞろ迎えに行くと、池の前でお互いの襟を掴み、怒鳴り散らしてる二人がいた
「何だと平民!!もう一度言ってみろ!!」
「るせぇ!!小型美魚の美しさを理解出来ない、大型魚好き成金趣味が、俺の趣味に文句言うな!!」
「ふざけるな貴様!!大きな池すら用意出来ない貧乏人が、ちんまい水槽でニヤニヤしてるのを笑って何が悪い!!」
二人の怒鳴り合いを見た感想は
「……放っておこうか」
「……同感」
こうして、その日の作業は流れたのである

*  *  *
ラ=ロシェールの軍港
新造された戦列艦のアッパーデッキで、魔法衛士隊ヒポグリフ隊隊長ジェラール=ド=グラモンは大きな伸びをした
「くう、これだこれ。やっぱり空軍は居心地良いねぇ。ラ=ロシェールよ、俺は帰って来たぜ!!」
「ウォッホン。ド=グラモン閣下。おふざけは大概にして貰いましょう」
「おっと、ド=ポワチエ閣下。これは失礼を」
あくまで恭しく、かつ小馬鹿にした感じで挨拶をするジェラール
こんな事が出来るのは、グラモン一族だけである
「さて諸君。此から作戦を説明する」
戦列艦に乗り合わせた搭乗員に号令を掛けると、全員がぴしりと引き締まる
「我が軍はゲルマニア空軍と合同で、アルビオン封鎖作戦を行う。ゲルマニア方面軍指令官はハルデンベルグ候、我がトリステイン軍はラ=ロシェール方面軍は俺。ガリア方面軍はド=ポワチエ将軍だ」
「そして、任務内容は、嫌がらせだ!!」
この瞬間、グラモンの性格を知らない者達ががくりと崩れ、ジェラールは更に笑みを深くする
「つまり、あの生真面目で飯作るのが下手くそなアルビオンに対して、尻を叩いて挑発して、乗って来たら逃げる。序でに商船の航行を実力を以って排除する。要点はこの二点だ。尚エアカバーに竜騎士が使えない為、ガリア方面軍はグリフォン隊、ラ=ロシェール方面軍はヒポグリフ隊を用いる。何か質問は?」
「はい」
一人の士官が手を上げたので、ジェラールが指名する
「竜騎士が使えないのは何故でしょうか?」
「来るべき進攻に備えて温存だ。その時は逆に、俺達衛士隊が出撃出来ない。理解したか?」
「「「「ウィ!!」」」」
一斉に敬礼を返し、ジェラールとポワチエが各部隊に別れて、指示を下し始めた
ガリア方面軍の母港はグラモン伯領である
砲弾製作即補給が効くのだ。当然と言えば当然の選択である
そして、ガリア方面軍は先にグラモンに向かう為、順次離陸していく
その様を総員帽振れで送ったラ=ロシェール方面軍も、作戦行動を開始した
この作戦の要点に付いて、ジェラールは下士官と士官に伝えて無い事が有るが、軍務上必要だからである
封鎖作戦と言えば聞えは良いが、実際は少々退屈な任務である
哨戒しながら商船を発見次第アルビオン側は拿捕、トリステイン側やガリア側は母港に引き返させ、言う事聞かない場合は大砲をぶっ放し、それでも応じない場合は拿捕ないし撃沈する
要は通商破壊である
此を組織的にやられると非常に堪らない
当然アルビオン側が包囲を突破すべく、戦列艦を出して来る
「敵艦発見。トリコロール、戦闘旗を掲げてます。数は7、此方と同数です」
「問答無用か。良いね良いね、その覚悟。ようし、射程外で右砲一斉射。その後、取舵一杯」
ジェラールが喜色満々に指示を下し、戦闘配置だった乗員達は、すかさず指示に従う
「てぇぇ!!」
ジェラールの指示の基、一斉に戦列艦が火を吹く
ドドドドーン
「全弾外れ」
観測員がすかさず報告する
「ようし、取舵一杯」
「取舵一杯、ようそろ」
操舵手が一気に舵輪を回し、横列体型だったトリステイン軍が回頭し、そのまま逃走を始めると同時に、縦進陣だったアルビオンが射程内に入り回頭、次々舷側を見せ、右砲戦が開始される
ドドドドーン
だが、例え長射程とは言え、既に射程外に行き足の付いたトリステイン艦艇には当たらない
そして、そんなトリステイン艦艇の旗艦から、ヒポグリフが飛び立つ
「くっ、奴ら艦艇に幻獣騎兵を乗せてます」
「弾種、散弾。弾幕張れ!!」
「アイアイサー!!」
トリステインの幻獣騎兵は強い、真上の死角を取られたら終わりだ
ドドドドーン
角度を上に向けた散弾の弾幕がアルビオン艦艇を包むが、ヒポグリフ隊は上空を射程外から近付けないようだ
「ようし、そのままだ、そのまま」
「警告〜〜〜!!敵艦射程内に入りました!!」
「何だと!?」
ドドドドーン!!
トリステイン艦艇から火を吹き、今度は盛大にアルビオン艦艇に命中する
ドスドスドス
「消火急げ〜!!」
「反撃、反撃しろ〜〜!!」
一気に被害が出ててんやわんやの所を、更に追い討ちが掛かる
ヒポグリフ隊の降下急襲だ
降下で速度を上げたヒポグリフ隊が全員ランスを手槍として投げ付け、動き回る甲板員を串刺しにしつつ、マジックミサイルで更に追撃を行い、速度の優越を用いて悠々と離脱する
離脱した時を見計らって、更にトリステイン艦艇から追撃の砲撃
ドドドドーン!!
既に雌雄は決したと判断したのだろう、アルビオン艦艇が撃沈される前に撤退を始めると、ジェラールは追わなかった
代わりに垂れ幕を、戦列艦に垂らしたのである
〈や〜い、飯マズのアルビオンの腰抜け、悔しかったら、トリステインより美味い飯用意しろ!!〉
其を見た両者が、どの様に思ったかは書かないでおこう
帰還したヒポグリフ隊隊員達は、余りにジェラールらしい垂れ幕に、盛大にジェラールを笑い飛ばした
「ぶわっはっはっは、流石隊長。ちくちく嫌がらせすんのは、本当に得意だよな」
「アルビオンの連中、飯不味いの指摘されると嫌ぁな顔すんだよな」
皆して、ゲラゲラ笑っている
「さてと、初日は成功。後は他の所がどうなるかだな」
そう簡単に上手く行かない事等、ジェラールは承知しているのだ

*  *  *


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Last-modified: 2011-08-01 (月) 10:14:21 (4645d)

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