X5-178
Last-modified: 2011-12-06 (火) 00:37:52 (4525d)

「で、大体一通りですかね」
「…只書くだけで、こんなに制約が有るんですね」
カトレアが才人の講義を上気した顔で真剣に受け、今しがた迄やってた製図を真剣に睨んでいる
「身体弱いんでしょう?あんまり根詰めなくて良いですよ。休憩しましょう」
「駄目です。今すぐ復習しないと、忘れてしまいます」
こういう強情っぱりは、エレオノールと同じだ
思わず才人が溜め息を付く
「解りました。但し、簡単な奴で行きます。その後休憩で、解りましたね?」
「はい、才人殿」
才人が簡単な手書き図面を書き、ドラフターの上部に貼り付け、カトレアに指示を下す
「じゃあ、コイツを三角法で書いて下さい。時間は30分、あの時計で合わせます……用意……スタート」
才人の合図からカトレアが真剣に書き出した
キュッキュッ、キュッ
カトレアのペンが走る音が部屋に木霊し、才人はその真剣さに、ルイズの面影を重ねる
『はぁ、本当に姉妹だな。そっくりだ』
変に感心しつつ、才人はカトレアの手元を見てると、格段に上達している
見よう見真似に、才人の指導が加わったせいだろう
「はい、出来ました」
「25分か。中々ですね」
そう言った才人が図面を覗き込み、チェックを入れる
「ん〜、この部分に円入るの忘れてる。後は此処は破線。初めてにしては、まぁまぁかな」
カトレアは指摘にショックを受け
「あぁ!?もう一度。もう一度やりましょう!次こそ完璧に」
「駄目。カトレアさん、気付いてる?」
「何がですか?まだ大丈夫です。才人殿がいらっしゃる時間を無駄に……」
そんなカトレアの肩を軽くつつくとカトレアがぐらりと傾き、才人が受け止める
「…あ」
「ほら、こんなに根詰めて。本当に、エレオノールさんやルイズと一緒なんだから」
カトレアが悔しげに唇を噛み、俯く
「大丈夫ですよ。ヴァリエール公爵と交渉しなきゃならないから、まだ居ます」
言外に休めと言われてるが、カトレアは悔しげな表情を変えない
「…付いて来れない身体が恨めしいかもしれないけど、俺は仕事では厳しいよ?今の状態じゃ、ミスを連発するだけだから、休めと言ってる」
ハッと顔を上げ、恥ずかしそうに今度は俯き、コクンと頷いた
「…そこ迄、考えが至りませんでした」
「ほら、こんなに根詰めて。本当に、エレオノールさんやルイズと一緒なんだから」
カトレアが悔しげに唇を噛み、俯く
「大丈夫ですよ。ヴァリエール公爵と交渉しなきゃならないから、まだ居ます」
言外に休めと言われてるが、カトレアは悔しげな表情を変えない
「…付いて来れない身体が恨めしいかもしれないけど、俺は仕事では厳しいよ?今の状態じゃ、ミスを連発するだけだから、休めと言ってる」
ハッと顔を上げ、恥ずかしそうに今度は俯き、コクンと頷いた
「…そこ迄、考えが至りませんでした」
そう言ってベッドの上でカトレアが笑みを浮かべ、シエスタがお茶と菓子を持って入って来た
「シエスタ、ナイスタイミング。カトレアさんに甘い奴お願い」
才人のお願いににこりとシエスタが微笑み、砂糖たっぷりのミルクティーを淹れ、差し出した
「あら、何で甘そうなのを淹れるんですの?」
「疲れた時には甘いモノ。俺の国じゃ普通の習慣です。頭に一番良く効くんですよ」
そう言って、自身の頭に指でコツコツ指してニヤリとすると、カトレアも微笑んだ
「では、有り難く」
カトレアに淹れて貰ったモノと、全く同じモノを才人も飲む
シエスタの心遣いは本当に上手い
後ろ手に才人がシエスタにだけ見える様に親指を立て、シエスタは済まし顔をしている
「くすくす、才人殿とメイドさん、以心伝心ですわね」
「シエスタは出来た娘でね。実に助かってるんだわ」
「あらあら、女性の前で、他の女性を褒めるものでは有りませんよ?」
「おっと、美女に怒られた」
「あら、まぁ!」
一息付けたせいか、カトレアの顔色が良くなっている
シエスタが一旦退出すると、カトレアが手招きしたので、才人もベッドに腰掛ける
動物達はめいめいに過ごしており、時折才人の頭にモモンガが止まる程度だ
そのまま頭にモモンガを乗せてると、カトレアから話かけた
「日本って、ハルケギニアとは、全く違う世界ですよね?」
「ん?あぁ、そうだね」
「貴方は、違う世界から来た方ですわよね?」
「誰かに聞いた?」
「いえ。考えの芯、根本というか、その部分が全く違う気がするのです」
「…そうだね」
「隠さないのですか?」
「誰も見た事が無い、非常に遠い国。何か間違ってますか?」
才人がそう言うと、カトレアが微笑んだ
「あら、間違ってませんわね」
「でしょ?」
本当の事は誤魔化し、尚且つ嘘も吐かず、隠し事ですらない
ハルケギニアの世界が、余りに狭い範囲でしか知られていないが為に、通用する言い分である
「ルイズの使い魔さんは貴族の事、どう思いますの?」
「封建制自体は日本にも有ったからね。腹立つ事はそら有るけど、基本的には何とも思わないかな」
「平民だから、貴族に憧れたりとかは?」「無いね」
才人の即答に、カトレアが困った顔をする
「話が終わってしまいます」
「何が聞きたい?答えられる範囲なら、答えますよ」
そう言って、ぽふっとベッドに背中を預けると、カトレアが頭を自身膝の上に誘導したので、才人は素直に膝枕に預ける
「使い魔さんの国では。直せない病気は有りますか?」
「有る。膠原病、狂犬病、ガン、白血病とかはその代表かな?」
「あの、名前だけ聞いても良く解りません」
「そだね。病気には大別すると遺伝等先天性、ウィルス性、細菌性、有害物質系、外傷性みたいに区別されてる」
「はい?」
カトレアがモモンガ事才人を撫でつつ語尾を上げるが、才人は気にせず言葉を紡ぐ
「気にしないで。そういう区別だって事。カトレアさんは産まれつきかな?」
「はい」
「そしたら、先天性の疾患って事になる。基本的に治らないから、上手く付き合っていくしかないね」
「使い魔さんの国でも、駄目ですか」
「…はっきり言って、解析はともかく、医療技術自体はハルケギニアのが上。更に上なら先住……そうか、その手が」
才人がむくりと起き、カトレアがきょとんとする
「あの、何か思いついたのですか?」
「先住ですよ、先住。水の精霊に頼めば或いは」
カトレアもラグドリアン湖の精霊の話は知ってるが、基本的に話をして貰う事自体不可能だ
「水の精霊は水そのものですから、私の病にも効くかも。ですが」
カトレアが言葉を切り、才人が応え
「水の精霊とは一応話は出来ます。だけど、今のままじゃ無理だ。借金が多すぎる」
「借金……ですか?」
「えぇ、そいつを片付ければ、何とか……どうかな?」
真剣に考え込んだ才人を目に、カトレアが微笑んで答えた
「まぁまぁ。私の事迄考えて下さるのは有り難いのですが、今は休憩中でしょう?ゆっくり致しましょう」
そう言って、後ろから才人をぽふりと自身に寄り掛からせるカトレア
「……俺をルイズと勘違いしてません?」
「あら、そんな事は有りませんわ」
「男に、不用意にこんな事しちゃ駄目です」
「きちんとご用意してれば良いのですね?」
そう返されて、才人は苦笑している
「ねぇ、使い魔さん。ルイズの使い魔って、大変?」
才人はそんな問いに、考える迄もなく
「まぁ、ヒスは多いし、理不尽な暴力は有るし……エレオノールさんもそうだな」
「あらあら……姉様との事、どうなさいますの?」
「どうしましょ?ってか、良く知ってますね」
「えぇ、色々と。例えば使い魔さんは何がお好きとか」
「へぇ、何が好きなんだろ?」
「胸が大きくて、腰がキュッて締まってる、お尻が丸い女のコが好きとか」
そう言って、才人の後頭部を胸に当てて、楽しそうに上から覗いている
「で、ルイズの使い魔で、エレオノールさんのボスをどうすんのかな?」
「そうね……私の魅力で奪っちゃいましょうかしら?」
「姉妹喧嘩の種に使いますか?」
そう言って才人が苦笑すると、カトレアが笑っている
ここから、どうやってもって行こうかなと、明らかに表情が楽しんで語っている
「私、フォンティーヌなんです」
「たしか……そう言ってましたね」
「はい、一代限りですが、当主なんです」
「……って事は?」
「私の行動を掣肘出来るのは、陛下と、私だけなんです」
そのまま少しずつ、顔を近付けて行くカトレア
「据え膳はお好き?」
「食わねど高楊枝ってのも、嫌いじゃないかな?」
「男は度胸じゃなくって?」
「女は愛嬌でしょ?」
そんな中、二人のやり取りを遊びと判断した犬が才人に吠えながら飛び乗った
「わんわん、わんわん!」
「おわっ!?」
犬を皮切りに才人がまた動物達に蹂躙され、更にベッドから引きずり降ろされる
「のわぁぁぁぁぁぁ!?」
「あらあら、遊んでると勘違いされてしまったわ」
頬に手を当てて、ころころ笑うカトレア
才人が涎まみれになっていくのを楽しそうに眺めている
カトレアは気が済んだ動物達が離れていくと、ボロボロになった才人の前に両膝を立てて、膝に肘を乗せて顎を両手で支えながら上から笑顔で見下ろす
「動物達が遊んでですって。本当にこんなに懐く人は初めてですわ」
「……俺、何もしてねぇんだけどなぁ」
カトレアは涎まみれになった才人の顔や服を浄化付きのハンカチで拭い、黒髪の男を興味深げに眺める
「ハルケギニアの貴族の男性では、あり得ないですわね」
「……よっと。そうなんだ?」
立ち上がった才人に合わせて、カトレアも立ち上がり、にこやかに頷く
カトレアの歩調がまだおかしいのに気付いた才人が、無理矢理カトレアを抱え上げた
「きゃっ!?」
「お姫様は、まだお休みが必要の様です」
カトレアが恥ずかしそうにコクリと頷き
才人は問答無用でカトレアをベッドに連れていく
ベッドの毛布を脚で跳ね上げ、カトレアを横たえると、ふぁさりと毛布を掛けた
カトレアが上気した顔のまま、更に微笑んでいる
「無理して、笑わなくても良いですよ?」
「無理してなんかいません。本当に楽しいんですよ?」
そう言って、朗らかに否定する
「そっか。そいつは失礼。じゃあ、休むのに邪魔だし、そろそろ」がしりと才人の腕をカトレアが掴み、懇願する
「お願いです。もう少し、色々お話させて下さい」
「……いや、俺が居ると、どうも興奮し過ぎな気がするし」
「お願い……」
押しの強さはエレオノールもかくや
才人は頷くと、ベッドの脇で膝立ちになり、ベッドに肘を付いて、カトレアの髪を指ですくいながら、カトレアの求めに応じる
「ねぇ、使い魔さん。さっき言ってた殿方の話」
「うん?」
「貴族の殿方だと、皆見栄っ張りなんです」
「そうなんだ」
「はい。平民の方だと、おどおどしてしまうんです」
「へぇ」
「何でか最初はさっぱり解らなかったんですが、私、その、自分で言ってしまうのもなんですが、美女らしいので」
恥ずかしそうに言ってるカトレアに、才人は笑って応じる
「自分自身で獲得したモノじゃ無いから、あんまり嬉しく無いと」
コクンと頷いて、更に言葉に紡ぐ
「でも、使い魔さんは初対面から違ってたんです。私を前にしても自然体。ルイズや姉様が傍に居たとはいえ、私、驚いちゃいました」
「美女美少女ばかりで、流石に慣れたよ」
「まぁ!?外にはそんなに沢山いらっしゃるんですの?」
「俺基準でね」
そう言っておどけて見せると、カトレアが更に笑い
「あら、そしたら私、何位位なんでしょう?」
「トップ争いは熾烈だなぁ。ってか、どっから漏れるか解らんから内緒」
「あらあらまぁまぁ!水責め?火責め?風責め?土責め?」
「更に鉄砲責めやら包丁責めやら」
「あははははは」
腹を抱えてカトレアが本気で笑っている
「ひぃっ……ひぃっ……お腹…苦し」
ぜぇぜぇ言いながら、カトレアは笑いの発作に耐えている
「面白かった?」
「思い切り責められてる使い魔さんを想像しちゃって………あははははは!」
思い出し笑いで発作に火が付き、更に腹を抱えてベッドで転げるカトレア
『娯楽……少ないんだなぁ』
才人はそんな事を思いながら、笑い転げるカトレアを眺めている
「あははは……ぜぃ、ぜぃ……こんなに……笑わせないで……下さいな」
「えっと、俺が悪いの?」
「はい!」
きっぱりと断言された瞬間、やっぱりカトレアもヴァリエールなんだと才人は認識した次第で
『無意識の傲慢は、多分気付かないんだな』
そう思って、才人はその部分を指摘するのは止める事にした
多分、貴族になったら、才人の子孫もこうなるんだろう
そう思いながら、カトレアの求めるままに、相手をする事にした

*  *  *
「あたし、もう行くわよ」
「仕事してたら、邪魔しちゃ駄目よ?カトレアは真剣なんだからね。後、友人の相手位しなさい。あんた、意外と薄情なのね」
サクッと頭に巨大な剣が刺さり、ルイズは扉の前でふらつく
「姉さま…幾ら何でも」
「平民はルイズのゼロ時代から、きちんと相手してくれて、しかも今の友達との架け橋にもなってくれたんでしょ?ねぇ、虚無のルイズ?」
その言葉に硬直し
「姉さま……いつご存知に?」
「否定しないのね」
「あ、違います姉さま!あたし、虚無じゃないです!ゼロです、ゼロ」
「もう少し、きちんと嘘付きなさい。お父様は、そんなんじゃ騙されないわよ?」
しゅんとうなだれ、席に着くルイズ
「姉さま、サイトから聞いたんですか?」
「いいえ、平民は使い魔のルーンを見せただけ。私は其をガンダールヴと読んで、後は芋づる式ね。あんた、私のアカデミーの研究内容知ってるでしょ?」
「確か、始祖ブリミルの彫像研究……あ!?」
「そう言う事。私はブリミルの彫像を如何に神々しく創るかを研究する為に、あらゆる始祖ブリミルに関係する著書を読み漁ったわ。それこそ、偽書の始祖の祈祷書迄ね」
始祖ブリミルに対する、トリステイン一の研究者である
それが、ガンダールヴの胸に収まった
余りに偶然に過ぎる
「良い事教えて上げましょうか?」
「何でしょう?姉さま」
「イーヴァルディの勇者は実在するわ。あれは、実在の人物達の物語。アイツは、当代のイーヴァルディね」
「えぇ!?」
「イーヴァルディの勇者とは、剣に代表される『武器』で敵を倒す。倒される対象は、強大な魔獣や幻獣に留まらず、時には強大な貴族迄、一軍を破って討伐したりする、メイジ殺しの物語でもある」
「そうなんですか?」
「メイジ殺しの奴は、ほとんど普及してないのよ。見つかり次第、焚書されてるから。私も探すの苦労したもの」
「…どういう事なんでしょう?」
「あんたよ、あんた。これは私の推論なんだけどね、イーヴァルディの勇者とはガンダールヴの刻印持ちの事。そして虚無の使い手に使役されたか、決別したが故に発生した旅路の物語」
「なんでそんな物が」
「メイジ殺しの勇者なんて、沢山居る訳無いでしょ?書に遺そうと思うのは、ある意味当然じゃないかしら?」
言われて見ればその通りだ
ルイズはその言い分に頷く
「何故、物語なんでしょう?」
「一番読み易いからに決まってるでしょ?」
「あ、そうか」
ルイズはポンと手を叩き、納得する
「で、此処からが本題よ」
ルイズはごくりと頷く
「ちびルイズ。今のままなら、当代のイーヴァルディの勇者の物語は、使い手と決別して去って終わる」
「……えっ?」
「あんたは余りにも、自分自身の事しか考えて無い。アイツがアンタに付き合うのは、多分アルビオンの戦が終わる迄」
「いきなり……そんな」
「良い?私は仕事で付き合って、何を考えてるか大体解ったし、アニエスとも情報を交換して、陛下と宰相閣下の話にもきちんと食い付いて聞いて来た」
エレオノールは菓子を一摘まみし、更に紡ぐ
「今のゼロ級は量産前提で全てを製作している。政治、外交、軍事、経済、果ては宗教迄、トリステインが全てを独占して、世界最強国になり、更なる果てを調べる為に、冒険を奏でる夢の宝箱になる。燃料なんか、石炭使ってるけど、実は熱さえ出すなら何でも良い。風石だって、艦重量は同クラスの戦列艦の重砲群に比べれば、鉄フレーム使っても軽いもん。しかも、アイツは更に、軽量高剛性化を自ら達成させる技量が有る」
「……」
「戦艦級ゼロ級10隻と新型武装で、多分ネフテスすら圧倒出来る。アイツは虚無なんか要らないって言ったらしいけど、納得ね。本当に、虚無の使い手の破壊力なんか要らない」
「……」
「ゼロ機関の長は、大量虐殺者と英雄の名を冠し、更に莫大な富を得る」
「……」
「アイツは多分、最初から全部読んでる。だから出ていく。私達に全部放り投げてね」
「姉さま。そんな事言わないで「甘い!!」
エレオノールに一喝され、黙るルイズ
「アンタは認めて貰いたがってるだけ。虚無を得てから何をした?虚無の力でやったのは、アルビオン軍を吹き飛ばしただけでしょ?」
「アイツは貴族、平民に関わらず、国に生きる全ての民を、出来るだけ働いたら利益が出る様にした」
「もう一度言うわ。アンタはまだまだ子供。大人のアイツの苦悩を支える事すら出来ない半端者」
「アイツの苦悩は、アイツの生きる場所が、此所じゃ無い所から始まっている。アイツは、帰らないと待ってる人達がいる」
エレオノールが震えている
「でも、嫌。帰したく無い。でも帰さないと、彼の御家族や御先祖様にご挨拶出来ないなんて真似、出来ない」カタカタ震えていたエレオノールは立ち上がり、ルイズの肩をがしりと掴み
「どうすれば帰せる?どうすれば呼び戻せる?どうすれば全部丸く収まる?あんた、一度も考えた事無いでしょ!!」
「そんな事は有りません!!姉さま、幾ら何でも酷い!!」
「嘘だ!!だって、虚無の呪文は、必要なら現れるんでしょう?ぼろ剣に聞いたわよ?」
ルイズが愕然とする
つまり、今ルイズがそういう呪文がもし有ったとして、今現れて無いのは
本心は 絶 対 に 帰 し た く な い との現れである
「…あっ」
気付いたルイズが蒼白になり、エレオノールも気付く
そんな魔法が、都合良く存在するとは限らない
「悪い、言い過ぎた。そんな都合の良い魔法…………有るじゃない」
「え?」
「始祖ブリミルは降臨したの!生誕じゃないのよ!つまり、やっぱりアンタには素質が有る!なのに真面目に考えてない!」
「そんな……嘘、私に?」
いきなりの宣言に、ルイズの方がぽかんとする
「良いから、今すぐ祈祷書とルビーを持って来なさい!!あんたが持ってるのは、陛下から聞いてるのよ!」
「は、はい!」
言われて慌てて走り去ったルイズを見つつ、エレオノールは拳を握る
「そうよ、虚無よ。全ては虚無から始まってるんだから、虚無に解決策が合ってもおかしくないじゃない」
バタン
息を弾ませたルイズがテーブルにどさりと始祖の祈祷書を置き、水のルビーをはめる
「持って来ました、姉さま。こうやってルビーをはめると読める様になるんです」
「試しに読んで見なさい」
「はい」
序文を読んでいき、ルイズはうっかり命を削る部分迄、エレオノールに聞かせてしまい、エレオノールは真っ青になる
「ちょっと待ちなさい!あんた、命削ってるの?平民は知ってるの?」
「知らないけど、知ってます」
「どういう事よ?」
詰め寄るエレオノールにルイズは素直に答える
「エクスプロージョンの効果を見て、カガクから推測出来るから、あんまり使うな、必ず守りなさいって、魔法使用後の対処迄教えてくれて」
エレオノールはその言い分に、深い溜め息を付く
「本当にアイツが使い魔で良かったわ。守ってるのね?」
コクリと頷くルイズを見て、エレオノールはほっとする
「ああもう、本当にアイツが使い魔なのは運命じゃない。早くページを捲って、アイツの国と行き来が出来る魔法を調べなさい。良い?魔法の根本は願いよ?強く、強く願いなさい。使い魔を喚んだ時みたいに、あの時の背水の覚悟のまま、今、願うのよ!!」
ルイズにとって、使い魔召喚の儀は、全てを決定付ける授業で有った事を、当然エレオノールは知っている
「はい、姉さま」
ルイズはひたすらに願う
『ハルケギニアとサイトの故郷……日本だったかな?その行き来が出来る魔法……お願い……出て!!』
ぱらぱらと捲っていくが、何も反応しない
「あぁもう、イメージが足りないんじゃ?」
分厚い祈祷書のページを全て捲り、成果が無い事にエレオノールがケチを付け、ルイズも落ち込む
「イメージ……そうか、あの零戦と刀!!」
イメージを膨らませる為に思い起こし、もう一度ルイズは捲っていく
やはり何も応答しないかと思われたが、ルイズはふと、後ろの方のページで固まった
「何これ?ハッケンデン?」
「何よ?それ?」
「さぁ?」
結局収穫は其だけで終わり、二人共に落胆したのである
「良い?あんたは基本的に不器用よ。使い魔召喚ですら、何十回と失敗したんでしょ?だから、たった一回で成功するなんざ、有り得ないと思いなさい。成功する迄、平民には黙ってるのよ?そして、アイツが帰るって言った時に、実はねって驚かせて、何時でも帰れるからって言って、ハルケギニアに永住させるの?解ったわね?あんた、婿取りたく無いでしょ?」
「はい、姉さま」
二人して炎を瞳に宿し、帰れる路を切り開き、また来る路の可能性の端を掴んだ事に、熱意を傾ける
最も、二人の思惑も実際に帰れる魔法が有ったらの話であり、実際にそうかは、まさしく始祖ブリミルと神のみぞ知る、である

*  *  *


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Last-modified: 2011-12-06 (火) 00:37:52 (4525d)

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