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Last-modified: 2011-11-11 (金) 22:07:46 (4548d)

ロマリアの大聖堂で、パイプオルガンに教皇聖エイジス32世が座り、音楽を奏でているのに合わせて、子供達が合唱している
内容は聖歌だ
パイプオルガンの音が途絶えると、教皇が拍手をし出した
パンパンパンパン
「皆さん、大変上手になりましたね。私は嬉しいです」
「せいか。本当に?」
「えぇ、勿論です。未来の聖歌隊がこんなに沢山居て下さって、私も嬉しいです」
「わぁい、せいかにほめられたぁ」
「じゃあ皆さん、パンとスープの用意が出来たみたいです。大きな子は小さい子を助けてあげましょうね。では行きましょう」
「「「「はぁい!」」」」
皆で手を繋いで食堂に駈けて行くのを見送り、教皇はまたパイプオルガンに座り、曲を奏で始めた
暫くすると、一人の青年期に差し掛かった少年が現れた
髪の毛は金髪、目の色は左右違うオッドアイ、非常に端正な顔立ちで、口元に不敵な笑みが乗る
「聖下、只今戻りました」
「では、私室にて報告を受けましょう」
教皇は立ち上がると、その少年、ジュリオ=チェザーレと共に歩いて行く

*  *  *
教皇の私室は対魔法措置が掛けられており、盗聴しようとすると、ディテクトマジックに連動した警報が鳴り響く様になっており、更に周囲の壁は永続のサイレンスがかかり、外に音が届かない
窓は曇りガラスが嵌め込まれ、読唇術に長けた者でも読めない様にする厳重振りである
つまり、密談には最適だ
「各国寺院の上納金に付いてはどうでした?」
どんな陰謀も先ずは金である
資金経路の確保は非常に重要だ
以前は有った金鉱山が枯れたせいで、それと同時に没落を始めた都市国家群の集合体であるロマリアの現在の資金源の大部分は、全て無税で入って来る寺院の上納金が大半を占めている
最も、前教皇時代に買うと罪を免じる免罪符の発行はやり過ぎと批判された為、現教皇により廃止された
冗談抜きで、各国軍が寺院の攻撃行動の準備を始めたのを情報に仕入れたせいである
力ずくで潰されたら、幾ら異端と叫ぼうが意味が無いのだ
最も、其を知らずに異端と叫ぶのが聖堂騎士で有る為、上層部には非常に頭の痛い問題となっている
宗教的権威と政治外交は、イコールにはならない
特に隣国たるガリアの圧力は非常に強い
「例の、ガリアからの資金輸送車の行方は?」
「南花壇騎士団の護衛から聖堂騎士隊の護衛に切り替わる、国境付近でやられてた。金貨全部取られてたよ」
「‥護衛は?」
「全滅。ありゃ、プロの仕事だ。北花壇騎士でしょう。奴らは、暗殺に非常に長けている」
教皇が苦い顔をする
「ジョゼフ王は我々に対し、大小様々な揺さぶりを掛けますね。やはり、ジョゼフ王は我々には扱えない。全く、何処が無能王なのか?」
「さぁね、僕には良く解らない。あぁ、それと手口で解ったけど、元素の兄弟の仕事だね。魔法の痕跡が強すぎる」
「‥‥それでは、勝てないのも仕方有りませんね」
肝心な所では、最強の駒を惜し気も無く投入する
やはり、チェスの名手である
「次、良いかい?」
「えぇ」
「アルビオンの方からはトリステインの封鎖作戦の影響で途絶えたまま。しかも、トリステインがアルビオンからの商船拿捕して没収してる。ロマリアへの上納金もちょろまかしてるね」
「‥‥厳重抗議するしか無いですね」
「返事なんか解りきってるのに?」
「元からそんな物は無かった。若しくは、ロマリアへの資金輸送では無かったって所ですね」
教皇は溜め息を付くが、ジュリオは平然と笑っている
「レコンキスタを潰してくれるなら、ロマリアからの仕事料と思えば良いでしょ?奴らは目障りだ。始祖……いや、虚無の血統を蔑ろにしている」
「確かにその通りです。奴らは虚無の血が何れ程大事か、理解して無い」
「次にゲルマニア。相変わらず寺院の建設は認めてくれない。首都ウィンドボナに有るだけだ。上納金は有るには有るけど、期待出来ないだろうね」
ゲルマニアの行いに溜め息を付く
「‥全く、ゲルマニアは建国当時より、我々ブリミル教には厳しい」
「我々が資金抜かないから、彼らは強大なんだろうね」
ジュリオは何処か愉しげだ
いや、実際に楽しいのだろう
「で、トリステインとクルデンホルフ」
教皇は頷く
「上納金が2/3に減る。理由はトリステイン国内の政策の影響だ。新金貨と旧金貨の価値を、よりによって国内で同価値と認定しちまった。もう、旧金貨では入って来ない」
気が付いたら、何故かロマリアが窮地になっている
おかしい位の状態だ
ジュリオが笑ってるのは、笑うしか無いからだろう
教皇は暫く考えると、ガリアの動きに合点が行く
「まさか、ジョゼフ王はトリステインの政策と軍事作戦を利用して、ロマリアの資金源を断つ為に、輸送車を襲って‥‥」
「としか考えられないね。全く、あの親父は食えねぇ男さ」
ジュリオが肩を竦めると、教皇は溜め息を一つ付いて、ワインを煽った
聖職者でも、酒は許されている
そもそもハルケギニアでは為替制度がきちんと有り、当座資金に付いては、小切手さえ有れば他の銀行から引き出す事が可能だ
つまり人物α(組織)がA銀行に10を入金し、小切手を受け取って、B銀行から10を引き出す
α10→A銀行10+10(入金)
α10←B銀行10−10(出金)
後に
A銀行20−10(資金輸送)→B銀行0+10(資金輸送)
こういうプロセスを得る
で、ガリアはβを使ってB銀行に輸送中の資金を強奪
A銀行20−10(資金輸送)→β10(強奪)→B銀行0
こうして、ロマリアの資金を実力で封鎖し、ロマリア国立銀行に迄、ダメージを与えた訳である
ガリアはこの資金輸送を、隠密部隊である北花壇騎士に襲わせて、ロマリアに対する揺さぶりをかけている
きちんとロマリア側で襲ってる為に、責任はロマリア聖堂騎士隊に帰し、隠密部隊なら幾らでも言い訳が効く。野盗に襲われたのだろうで終わりだ
事実、資金輸送はそれだけ狙われる物であり、各国共に輸送車の護衛には非常に気をつけているが、逆にそれが資金輸送である証拠になり、精鋭を配置せざるを得ない悪循環に陥っている。野盗だって、楽して儲ける為に知恵は付ける
ジュリオは各国を騎竜を用いて歴訪し、直接現場を観察し、報告を受け取って来たのである
「全く堪りませんね。所で、貴方に次の任務が有るのですが?」
「次は何処に飛ばす積もりだい?」
「ちょっと、トリステインで傭兵して来て下さい。気になる情報が、トリステインから届いてます」
「あぁ、例の有り得ざる工芸品の使い手かい?」
ジュリオが街の評判で得た話を持ち出す
タルブ戦での竜の羽衣の活躍は、既にトリスタニアでの酒の肴である
「いえ、どうやら、有り得ざる工芸品を製作し始めてるとか」
流石にジュリオが目を見張る
ロマリアの得意とする所は、諜報活動と各国の政治中枢に枢機卿を送り込んで政治をロマリア向きに向ける事で有るが、内政干渉を嫌い、更に人材が豊富なゲルマニアは一貫して拒否
アルビオンは司教がよりによって反旗を翻し、 ガリアは名ばかりで一切権限を与えられず飼い殺し
トリステインはマザリーニがトリステインに完全に帰順し、ロマリア中枢とは決別してしまった。一族迄トリステインに住まわせ、帰る意思が無い
余程トリステインが気に入ったか、ロマリアの体質を嫌ってるか。教皇を辞退したのも、恐らくそういう理由が有るのだろう
とにかく今は、隠然と勢力を温存し、来る時に備える雌伏の時である
現在の教皇聖エイジス32世は、司教枢機卿、司祭枢機卿、助祭枢機卿からなる、コンクラーベにより選出された司教枢機卿マザリーニが辞退した為に、次点で選出されている
異例の若さで選出された教皇だ
枢機卿は教皇の次の地位で政治的な位置付けで、実際に信者達を束ねてるのは司教、司祭、助祭、副助祭、祓魔師、読師達である
要は、議員が枢機卿で、行政区が司教達と言えなくもない
ちなみに、女性の最高位は司祭迄だ
「ちょっとは働きまくってる、僕にご褒美くれないかな?」
そう言って教皇の手を取ると、パシッと払われる
「お止めなさい。事が成就した暁には全て捧げると、言ってるでしょう?」
「へぇへぇ、お堅い事で」
ジュリオが頭の後ろで腕を組み、ぼやく

「私とて、好きで虚無になった訳では有りません。ですが、使命を果たさねばならないのです」
「はいはい、解ってます解ってます。また彼処で発散しますかね」
「‥出来れば、余りややこしくしないように。彼処は孤島ですから、遊ぶのは構いませんが、彼女には手を出さない様に」
「はいはい、助祭枢機卿のお陰で、彼処じゃ良い思いが出来るよ」
「あぁ、それと」
「何でしょ?」
「トリステインに行くのと併せて還俗の許可を出します。名ばかりとはいえ、必要でしょう?」
その言葉にジュリオは笑みを深くする
還俗の許可が有れば、戦争での殺生、ナンパ、何でもござれだ
「へぇ、って事は、トリステインの虚無食って良いんだ?」
「出来ますか?彼女にはガンダールヴが付いてますよ、ヴィンダールヴ?最強の使い魔を掻い潜って、彼女を手中に収められるなら、して見なさい。その方が楽ですからね。ですが、死んでも責任取りませんよ?」
「おっかない相手こそ燃えるね。じゃあ、行って来るよ」
手をひらひらさせてジュリオが出て行き、ヴィットーリオ=セレヴァレは溜め息を付いた
母の名前がヴィットーリアであり、男性名として同じ名前なのは珍しい事ではない
「何で虚無の使い魔はこう、私達使い手を気落ちさせねばならないのでしょう?虚無がマイナスの感情の方が力を蓄える事が出来るせいとはいえ、毎回腹立たしい」
其処でワインを煽り、また一人愚痴る
「貴方の事は嫌ってませんよ、ジュリオ‥‥」

*  *  *
「ったく、アイツに付き合って何年も経つけど、未だに契約時のキス以外、何にも無しと来たもんだ」
そう言って、騎竜の繋がってる所に行くと、飼育員が寄って来た
「あぁ、やっと来てくれた。アズーロ何とかして下さいよ」
「喧嘩でもしたかい?」
「あれ見て下さい」
親指を立ててくいって指すと、アズーロが雌竜に種付けをしている
「ありゃ………今繁殖期だし、勘弁してよ」
思わず髪を掻き上げ、ジュリオも呆れている
「家の雌竜、風竜はおろか、火竜に迄仕込んじまいまして」
「成竜だしなぁ」
「成竜だから、我々じゃ止められないんですよ」
下手に接すると、怒らせて自分が死ぬハメになる
特に交尾中は、雄は非常に気が荒い
「う〜ん、流石僕のアズーロだ。雌にモテまくってる」
雄を受け入れるかどうかは雌次第だ
沢山出来るのは、竜のハンサムの証拠である
目の前で雌を渡って種付けするアズーロを見て、思わずジュリオは顎に手を添えて、うんうん頷いている
「いやまぁ、種付けはいずれしますから構わないっすけど、勘弁して欲しいですなぁ」
「雌全部か。そういや風竜と火竜って、混血したっけ?」
「一代限りのハーフで、中途半端なんですよ。だから洒落にならないんです」
「あ〜そだね」
次代はともかく、次次代が不味い事になる
仕方無いので、ジュリオは呼び掛けた
「アズーロ、行くよ」
「きゅ、きゅいきゅい」
雌に腰を振って痙攣しているアズーロ
無視されたジュリオは近寄ってアズーロに薄い革手越しに触れる
「きゅっ!」
「はい、それで終わり。仕事だ、行くよ」
雌から長大な竜の逸物が二本抜かれ、白濁液にまみれている
すぐに性器が胎内に収納されると、アズーロにジュリオが跨がり、手綱をぴしりと叩いた
一気に羽ばたいてジュリオと風竜は舞い上がり、風を掴んで一気に飛んで行く
目指すは、トリステインの前に、とある修道院である

*  *  *
ガリアのとある孤島に有る修道院は、俗世間から完全に隔離されている、清貧を旨とする今時珍しい修道院である
収入は、忘れた時にやって来る寄付のみだ
物資は空路で僅かながら週に一度運ばれ、段々畑が修道院の外に続いている
そのセント・マルガリタ修道院に生活水準が上がる喜捨が出る様になったのは、風竜に跨がった助祭枢機卿が飛来する様になってからになる
ロマリア教皇庁直属の助祭枢機卿位
彼が持って来る喜捨は、教皇に彼女達が見捨てられてない証である
俗世間から隔離されてようとも、静かに暮らす為の物資を仕入れる為には、金が必要になるのは人が集まるなら当然の帰結である
全てを賄えない孤島では、致し方無い
そして空路を使わざるを得ない為に、只の生活物資が空船では高いのだ
彼、ジュリオ=チェザーレが来る様になってから、食事に目に見えて改善が得られた
週に何度かの蛙料理と毎日のチーズ、それと神の滴、つまりワインが週に一度、提供される様になったのである
取れる程度の僅かな豆や野菜類、購入した質の悪い小麦粉で作るぼそぼそした自家製パンと自家製鶏卵
僅かに塩を効かせたスープに自家製野菜を入れるのが精々であった修道院には、格段の進歩である
蛙は高級品も有るが、質に拘らないなら民衆に良く食べられる非常に質の良い蛋白源で、ガリア料理やトリステイン料理には欠かせないレパートリーでは有るが、他国からは蛙食いと揶揄されている
実は、才人がハルケギニアに来てから、一番気に入った料理の一つだ
南部では冬眠しない為、一年中仕入れられる
「あ、竜のお兄様!」
農作業をしていた少女達の何人かが風竜に気付き、着陸場所の庭に向かって駆け出して行く
「貴女達、きちんと作業しなさい!」
「はぁい、後でやりまぁす」
年長の修道女が叱りつつ溜め息を付く
彼の来訪を歓迎するのも、大事な役目で有るのを承知してるからだ
事実、修道院長も彼には頭が上がらない
だが、実務を仕切っているのは年配の修道院長ではなく、30位の修道院育ちの女性である
修道院の中しか知らない彼女達に取って、物語の王子様の様なジュリオの来訪は、正に自分がお姫様になってしまったかと思ってしまう位鮮烈なもので、完全にアイドル扱いである
少女達の中に一人成人の女性が混じり、竜から降りて来たジュリオに挨拶した
「いらっしゃいませ、枢機卿猊下」
「嫌だなぁ、何時もの様に名前で呼んでくれよ、ジュリオってね」
そう言って、にこやかにウィンクするジュリオ
その瞬間に少女達がきゃあきゃあ騒ぎ出した
「お兄様、今日は何時もの習慣とは違いますよね?」
「どういたしましたの?」
「今日はどんなお話して下さいますの?」
「ああ、ごめんよ。先に仕事終わらせるからさ。じゃあデボラさん、事務室で」
「はい、解りました」
取り巻きの少女達の謝りながら、ジュリオはその成人女性、デボラと一緒に事務室に向けて歩いて行った

*  *  *
ジュリオがデボラと共に入室した途端、ジュリオはデボラの身体を後ろから修道服の上からまさぐり始めた
「あっ、お止め下さい。私は神に身を捧げた身です」
「そだね。僕は神の代理人の使いだね。って事は、僕の意思は神の意思だねぇ」
ジュリオがにやにやしながらまさぐるのを止めず、更にうなじに顔を寄せ囁く
「…欲しい癖に」
びくんと震えて、デボラは何も言わない
そのまま修道服を捲ると、尻が出る
「あ、駄目です。か、神よ」
「だから、神の意思だって……ね?」
長い修道院生活で、身体には一切の無駄な肉は付いておらず、しかもまともに男を見るのが、ジュリオが初めてだ
船員は何も言わずに、積み荷を卸してさっさと去り、しかも年配の修道女が対応をする為、修道院育ちの年若い少女や妙齢の女性は、男を見た事自体がジュリオが初めてである
文字通りの免疫ゼロで美少年に会ってしまったら、あっさり転んでしまった
彼女は悪くない。明らかにジュリオがつけ込んでいる
「あ、駄目です。お願いします、神よ!」
そんなデボラの尻にジュリオが息子を宛がい、ぬるると挿入していく
「ひっいっ!あっあっあっあっ!?」
パンパンパンパン
ジュリオが腰を打ち付け、デボラの声に一気に艶が乗る
「ほら、こんなに濡らしちゃって。神の意思にきちんと添ってるよ?」
ジュリオが一際高く突き入れ、固定する
「ああぁぁぁ!?」
ビクッビクッ
デボラの身体が痙攣し、ジュリオの精が注がれる
ジュリオは、そのまま二回目をする為に腰を動かしながらデボラに被さり、囁いた
「神の滴に混ぜてる?」
「…も、勿論です。ジュリオ様」
「ちょっと、戦争に行って来る。だから、今日から暫くのお別れになるよ」
「……名残り惜しゅうございます」
「じゃ、もう一回」
そのままデボラとキスを交わし、ジュリオは更に腰を振り始めた

*  *  *
ジュリオが少女達にせがまれるまま、彼女達には未知の世界たるハルケギニアの話をし、少女達が目を輝かせている
風竜に乗って各地を回るジュリオは彼女達に尽きぬ話題を提供し、少女達が憧れの目を向けている
そんな中、一人の銀髪の少女が、中に入ろうとしながらも留まり、行ってしまう
ジュリオは目敏く見付け、立ち上がった
「悪い、ちょっと用足し」
「お兄様、もっとお話して下さい」
「そうです、もっとぉ!」
「じゃあ、お勤め終わってからね。今日は泊まって行くから」
「はぁい」
少女達が目を輝かせて頷き、溜めてた勤めに散って行く
ジュリオも立ち上がって、歩いて行った
目指すは礼拝堂
あの少女が良く居る場所である

礼拝堂に入ると、先程の少女が、熱心に祈りを捧げてる様に見える
「やぁ、どうしたんだい、ジョゼット。今日は、挨拶してくれないじゃないか」
「……」
ジュリオが近づいても、ツンと顔を反らせるジョゼット
明らかに祈りの振りだ
「お兄様、私、知ってるんですよ?」
「…何をかな?」
「デボラ姉様や他の人にも、神の愛とかと言って、凄くいやらしい事してるって」
ジュリオは気まずい顔をする
それで立場が悪くなることは無いが、彼女のご機嫌取りが大変になる
「…ほら、男は愛を振り撒くのも役目で」
「嘘ばっかり。なら、何で私には愛を振り撒いて下さらないの?」
そういってジョゼットが涙目になって睨む
彼女の身長は142サント位、栄養状態が悪い修道院の同世代の少女達でも、一際小さい
「…やっぱり、銀髪が嫌いなんだ」
「そんな事無いよ」
「…背が小さいの、嫌いなんだ」
「そんな事無いって。むしろ好き、うん思い切り好き」
そう言って、ジュリオが触れようとすると、するりと抜けられる
「どうせ、私は背も小さいし、色の無い銀髪だし、魅力なんて無いですもの」
ジョゼットがぶっすぅとしてそっぽを向く
「そんな事無いって。白状する!白状するから!此所に来てるのは、ジョゼット目当てだって。信じてくれ!」
「ふんだ。その手には騙されませんよだ。他の女のコにも、同じ事言ってるんだ」
んべって舌を出して、いーってするジョゼット
ジュリオは頭をガリガリやってから、弁明を始めた
「本当だって。信じてくれよ。僕が忙しいの、知ってるだろう?」
ジョゼットがこくりと頷く
「君が居なかったら、僕はこの修道院に足繁く通わなかった。他の連中に任せてたさ。実務者のデボラさんとは、仲良くしとかないと色々と支障が出るんだって」
「……本当に?」
「本当だって。ほら、ロマリアの男は、息をするように女のコを口説くのが普通で………あぁ、糞、言い訳にもなってないな」
ガリガリ頭を掻いて両手を広げるジュリオ
普段の色男振りが、全て落ちている
「とにかく誓う。神と始祖に誓って、僕はジョゼットに会いたくて、この修道院に来てると告解する。この宣言が受け入れられないなら、僕は火刑にされようとも、甘んじて受け入れる」
両手を広げながら目を閉じ、ジュリオはジョゼットの判決を待つ
すると、ジョゼットがすとっとジュリオの胸に飛び込んだ
「今は信じて上げます」
「嬉しいよ」
そのまま、ジュリオは彼女を抱き締めた
「今は……まだだけど……必ず……迎えに来る」
その言葉に、ジョゼットがジュリオの胸で目を見張る
「嘘……」
「本当だ、待っててくれ。全部ゴタゴタしたの片付けるから、そしたら君を、堂々と拐いに来る」
余りの告白に、ジョゼットがわなわな震え
「私……良いの?こんなに幸せで良いの?」
「いや、まだまだ幸せじゃない。君は何も知らない。だから、何も知らない君が外に出て行っても大丈夫な様に、僕が何とかする」
「お兄様……」
「待っててくれるね?僕のお姫様」
瞳を潤ませて、こくりと頷くジョゼット
「待ってます。信じて待ってます」
そのまま、瞳を閉じるジョゼット
ジュリオは、そのまま口付けを交わした
舌も入れない、普通のキス
少女を壊す事を恐れた、ジュリオの精一杯の強がり
ジュリオから唇を離し、抱擁してた手をジョゼットの唇に持っていき、唇をなぞる
ジョゼットは潤んだ瞳で、その行動を受け入れた
「それで、暫く仕事の都合で来れなくなる。今日は、それを伝えに来たんだ」
「…何処に行きますの?」
「ちょっと、戦争行って来るよ」
何気ない言葉で爆弾を放たれ、ジョゼットの瞳に涙が溜まる
「い、嫌です。そんなに危ない仕事、行かないで下さい!」
「君を迎えに来る為に、必要な仕事なんだ」
そう言われては、ジョゼットも黙るしかない
「死なないで下さいね」
「勿論だ。君の王子様を信じなさい」
やっと、何時ものふてぶてしさを発揮したジュリオが、ニヤリと笑みを浮かべる
瞳は礼拝堂の外、更に向こうのトリステインを向いている
『ジョゼットの素性?知らないね。知らない内に参ったんだ。この僕がだぜ?だったら、やれる事全部やってやる。例え、ハルケギニア全てを敵に回しても構うもんか!』

*  *  *
マリコルヌ達が森の中をサクサクと歩いている
メンバーはギーシュ、マリコルヌ、ギムリ、レイナールだ
此は、お互いの魔法を把握してるからと云う理由で組まれており、全ての小隊がそういった理由で、知り合いと組まれている
居ない場合は、水使いを軸に振り分けられている
負傷時の対策で、誰も文句を付けなかった
ラ=ロシェールの岩山の探索は比較的楽に終わって鉄屑を順調に回収したが、森はやはり危険だ
周りの小隊と連携して、距離を取って歩く作戦行動だ
誰かが魔獣に遭遇した際、直ぐに支援に向かえる距離である
「この辺も、空域は戦場になってるから散ってるとは思うけど、中々無いね〜」
そう言って、ギーシュが土を触って地面を読んでいる
「何処まで探索出来た?」
「半径100メイルかな?」
ギムリが聞いてギーシュが答える
それを聞いてマリコルヌが杖を取り出した
「スリサーズ・デル・ウィンデ。こちらグラモン小隊。周囲100メイル目標無し。聞こえた人は探索範囲内だ。範囲を拡大してくれ」
「了解」
「うち、土使い居ないんだ。助かった」
「了解、探索範囲を広げる」
次々に応答の返事が入り、ギーシュに報告する
「ギーシュ、今付近の小隊に知らせた。僕達も前進しよう」
「そうだね。では前進」
ギーシュが土を読んでいる間は、ギムリとレイナールが周囲を警戒する
流石に気が抜けない
ギーシュ達はクラスが高いのがレイナールのラインで有るが、属性がバラけていた為に、比較的良い成績を残している
成績上位者には、僅かだが金一封が出る
一回の飲みで消える額だが、出ないより遥かに良い
そんな中、歩いて前進していくと、緊急通信が入って来た
「こちら、バトン小隊。今、ヘルハウンドに襲撃を受けている。至急来援を請う。仲間二人が重傷だ、早く来てくれ!」
遠話を受けたギーシュ達が一気に顔を険しくする
「クヴァーシル!」
ばさぁ
マリコルヌの呼び掛けに、使い魔が木から降りて来た
「ヘルハウンドの居る方向だ。案内急げ!ギーシュ」
「言われなくても。グラモン小隊は支援に向かう。総員杖抜け!」
全員が杖を抜き、真面目に目標を見据える
「クヴァーシルの案内で突撃開始!マリコルヌは周囲に遠話で支援要請」
「ウィ」
「突撃開始!!」
ギーシュの号令の元、マリコルヌ達が突撃を開始し、あちこちで、小隊が同じ様に走り出した
マリコルヌの使い魔、クヴァーシルの案内で一気に先頭に踊り出る
クヴァーシルがほうと鳴き、注意を促す
更にマリコルヌが視界を共有して、現状の確認をした
「ギーシュ、ワルキューレ出して。目標迄100メイル」
「了解。おいで、ワルキューレ達」
ギーシュが杖を振り、ワルキューレ達が土から立ち上がる
其を見た後続の小隊から、ゴーレムを出す小隊が出始めた
「ワルキューレを先頭に出す。そのまま走れ!」
「「「ウィ!」」」
訓練のお陰で呼吸は乱れない
教官の扱きが効いてる事に感謝しつつ、全員そのまま走る
そして遂に仲間を発見した
辛うじてシールドで耐えている
「レイナール、マリコルヌ。牽制出来るか?」
「任せて。デル・ウィンデ」
「ウル・カーノ・ソウイル・イーサ・ウィンデ」
フレイムアローとウィンドカッターを唱えて二人が同時に杖を振るい、真空の刃と炎の矢がヘルハウンド達に降り注いだ
速さに長けたヘルハウンド達が異変に気付き、全て回避する
「駄目だ、当たらない」
「上出来だ」
レイナールの呟きにギーシュが返し、その間にワルキューレを味方の前に展開させ、遂に戦線を押し上げた
「近接戦用意!奴らには射撃なんざ当たらない」
「了解」
ギーシュがワルキューレを操作しつつ戦線を維持し、その間にマリコルヌ達がブレイドを展開する
ワルキューレの囲いじゃ足りない為に突破して、ヘルハウンド達がが襲いかかって来る
ギーシュの前にギムリが割り込み、ワルキューレを展開してるせいでブレイドを出せないギーシュの盾になる
「ギーシュは下がれ!君がやられたら戦線崩壊だ!」
ギーシュは素直に頷いて下がり、ギムリが突破して来たヘルハウンドを一合で斬り捨て様としてかわされる
「ヴルルルルル」
「くっそ、素早い」
少年達には非常にキツイ相手だ。クラスが高ければ、範囲魔法で全滅させる事も出来るが、生憎トライアングルクラスが居ない
「うわっ止めて、痛ぁ!」
ギムリが悲鳴に振り向くと、マリコルヌが尻を噛まれている。もう涙目だ
だが援護に向かえない。今、目を逸らした隙に、ギムリにも襲いかかって来たからだ
ギムリに突撃したヘルハウンドにタイミング良くブレイドを突き出し、避けきれなかったヘルハウンドの口内にブレイドが突き刺さる
「やった!仕留めた!」
レイナールも二体を仕留めている
やはり、腕が立つのは彼らしい
「総員聞け!後続の小隊、僕の指示に従え!ゴーレム部隊前進!」
咄嗟にギーシュが杖を指揮杖にして指示を下し、後続の小隊達が指示に従う
反発する暇は無い、即断即決が出来る人間に、思わず従ってしまう
ゴーレム部隊が前進していく最中に、マリコルヌに取り付いたヘルハウンドも退かせ、更にゴーレム達で戦線を構築させ、その隙に水使いが負傷者に走り寄った
「大丈夫だ、治せる。傷は浅いぞ、頑張れ」
「風使い、全員木に飛べ、行け!」
負傷者への治療とギーシュの怒号が重なり、風使い達が戦場の木々にフライで飛び乗る
「水使い治療急げ!ゴーレム出してない土使い、アースハンド。火使い、ファイアーボール。風使い、ウィンドカッター。攻撃準備!」
一斉に詠唱が重なり、全員が頷く。攻撃準備の完了だ
「土使い、放て!」
一斉にアースハンドが放たれ、ヘルハウンド達の脚を掴み動きを封じる
「火使い、放て!」
一斉にドットスペルのファイアーボールが飛び、弓なりにゴーレムを飛び越して着弾
「ギャワン!」
「ギャウン!」
一斉にヘルハウンドが悲鳴を上げるが、更に追撃がかかる
「風使い、放て!」
砲撃の様に、ゴーレムと云う遮蔽物越しで曲射した後、更に上から取り残しを風使い達がウィンドカッターで追撃をかける
「ゴーレム隊、磨り潰せ!」
ギーシュの号令と共に瀕死のヘルハウンド達にゴーレムの突撃が重なり、綺麗に殲滅を終えた
「ヘルハウンド、全滅!取り残し10居たけど逃走を確認!」
木の上に乗ってた風使いが確認し、大声を上げた
「此方も大丈夫。ちょっと深いが、何、僕達全員でやれば大丈夫だ」
ギーシュが全ての報告を聞き、更に声を跳ね上げた
「僕達の勝ちだ。全員、勝鬨を上げろ!」
「「「「ウォオオオ!!」」」」
少年達が喚声を上げ、仲間を救えた事、皆で勝てた事にひたすら喜んだ
「やるじゃないか、ギーシュ」
バンとギムリが左肩を叩き、レイナールが右肩を叩く
「いや、流石グラモンだ。咄嗟の度胸は大したもんだね。君と一緒なら、生き残れそうだ」
そして、尻を擦りつつ、マリコルヌが木から降りて来た
「あいたたたた。いやぁ、凄かったなぁギーシュ。何でグラモンが尊敬されるか、良く解ったよ」
そんな中、放心した様に惚けたギーシュがペタリと座り込む
姿勢は内股の、いわゆる女のコ座りだ
「び、びっくりした」
その艶は少年達を欲情させるには充分過ぎるもので、ギーシュを手荒く祝福しようと寄り付いた少年達が全員顔を赤らめつつ喉を鳴らし、更に一人、突撃をかましたのである
「ぼ、僕を、罵って踏んでくれぇぇぇぇ!!」
マリコルヌがずざぁと平伏し、思わずギムリが踏んづけた
「気持ちは十二分に解ったから止めろ、馬鹿」
「…だな」
「…抱かれても良いかも」
少年達がその言葉に頷いてしまい、ギーシュは呟いた
「……君達なんか、友達じゃないやい」
何を言っても、今のギーシュの艶は押し隠せない
こうしてトリステイン軍に、変態の伝統が脈々と受け継がれてしまったのである

*  *  *


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Last-modified: 2011-11-11 (金) 22:07:46 (4548d)

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