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Last-modified: 2012-02-24 (金) 00:16:11 (4442d)

○月×日
姉の方のミスヴァリエールと才人さんのやり合いも見慣れたし、慣れって怖い
二人のギリギリの線が判って来た
「ちょっと平民、いつ合格出すのよ?」
「合格品が出来る迄」
「……」
そう、才人さんははっきり基準を設けて、達しない限り駄目って言ってるだけなんだ
「私の誇りは?」
「誇りで合格品出せるなら出してみろ」
「……」
キツイけど、本当に正論しか言ってない
怖い人だなぁ。貴族の論理が全く通用しない
しかも、そんだけボロクソに言われてるのに、決して諦めないミスヴァリエール
ちょっとびっくりです
私なら、三日で心が折れてるよ
「いい加減に「出来る様になってくれ。アカデミーってのは、そんなに糞なのか?」
「今の発言、取り消しなさい!」
「合格品を出したらな」
「…グググ、絶対に見返してやるんだから」
あ、ミスタコルベールが入って来た。後ろにミスグラモンが控えてる
「先生、配管錬金宜しく」
「了解した。役に立つと思って、ミスタグラモンも呼んで来た」
「やっほー才人。錬金やるなら僕を呼ばないだなんて、酷いじゃないか?何なら、ミセスシュヴルーズも呼ぶよ?」
「シュヴルーズ先生は金属精錬に向いてない。他ので協力出来そうなら、お願いするよ」
「了解、じゃあちゃっちゃとやるか。イル・アース・デル」
二人がザックザックと錬金で配管をどんどん作っていって、ミスヴァリエールが一つ一つチェック入れてますね
「ちょっと、アナタ」
「グラモンだよ。ミスヴァリエール」
「この私に精錬のコツを教えなさい。私に教えるなんて栄誉「ヴァリエールがどうした?僕はグラモン。ヴァリエールと格式も歴史も匹敵する伯爵家だ。公爵家だからと言って、先輩風吹かせないで貰える?」
ははは、ミスグラモンもやりますねぇ
ちょっと引きつってますね、ミスヴァリエール
「素直に教えて下さいって、言えば良いのさ。ヴァリエールだから、誰にも頭下げて無いんでしょ?」
「プックックック」
あ、ミスタコルベールが笑ってる
いやぁ、面白いなぁ
確かに笑えるかも
「教えて下さいは?」
「……えて下さい」
「もう一度」
「教えて下さい!!これで良い?」
「良いよ。才人じゃメイジの感性を教えられないのは仕方ないし、コルベール先生は火だし。ドットでも同系統の僕が適任だろうしね。じゃあ、杖持って一緒にやろう」
「えぇ」
へぇ、度量はミスグラモンの方が上だなぁ
貴族同士の人間観察って、結構面白い
二人でぶつぶつ言いながら、やり始めました
配管二本持ってますね
「だから……ここの読み込みが」
「え、ちょっと、こんな物質まで気にかけるの?」
「そうだよ。ほら、この部分が不味いんだから……」
「……へ?ああ!そういう事かぁ!」
「で、青銅は亜鉛と銅の合金で、才人が欲しいのは銅精錬の高い奴で」
「……成る程。って事は、不純物を可能な限り下げて、純銅を精錬する積もりで、不純物を亜鉛にしちゃえば良いと」
「正解。飲み込み早いねぇ」
「いえ、正直、目から鱗だわ。私、最初から青銅やる積もりだったから。そっかぁ、純銅で不純物を亜鉛にしちゃえば良いのか。うんうん」
お〜、ミスヴァリエールがうんうん頷いてる
ミスグラモンやるぅ
「でも、出来るかどうかはイメージ次第。こればっかりはミスヴァリエールの資質だね」
書いててさっぱり判らないのは、ダメですかね?
良く憶えてたなぁ、はははは
そして才人さんの図面書き机に、コルベール先生が横に立ってます
「メイジの事はメイジと。流石コルベール先生」
「ま、私も彼女の能力は惜しいと思ってるんでね。才人君と同様に」
「お見事。やっぱり年の功のコルベール先生がトップに」
「残念ながら、トップは才人君程厳しい人間の方が良い。私では、全てを救うべく手を差し伸べて、反って悪化するだろう。教師の悪癖だ」
「御謙遜を」「お互いにね」
二人して肩を竦めてますね
本当に良いコンビだなぁ、あの二人
「今度こそ出来たぁ!!平民、検査しなさい」
「あいよ」
ガタッて立ち上がった才人さんを見て、ミスヴァリエールがびっくりしてる
そりゃそうだ、今迄、只の一度も立ち上がらなかったんだから
この態度で判る評価方法って、意識的にやってるんですかね?
評価が目に見えて向上してるのを見て、ミスヴァリエールの眼が期待に溢れてますね
やっぱり態度で見えますか。ドキドキワクワクしてるのが見え見えですよ〜
ミスタコルベールが、余りのミスヴァリエールの期待に満ちた眼差しを見て笑ってますよ
「直径、板厚不合格。やり直し」
あ、ガーンって顔をしてる
やっぱり、才人さんは容赦無いなぁ
「純度的にはもう俺には解らん。ギーシュ、どうだ?」
「ばっちりだよ。僕やコルベール先生と変わらない」
「だ、そうだ。次は寸法内に収める練習だな」
「みみみ見てなさい平民!ぜ、絶対にギャフンと言わせてやる!」
「はいはい、宜しく」
段々と雰囲気が良くなって来たなぁ、うんうん
仕事が回り始めるってのは、こういう事なんだなぁ
自分の新人時代を思い出しちゃった
このトリオ、歯車が完全に噛み合わさるとすんごい事になるかも
「才人君、現在の評価は?」
「4日目で材料選定基準は合格。機械加工素材の材料捻出に価する。寸法正確性は基準以下。製図能力は期待が出来る。総合評価として及第。潜在能力は二重丸」
「だ、そうだ。やはりアカデミーの誇る人材だな、ミスヴァリエール」
「一々本人の目の前で評価しないでよ!」
「お断り。評価は透明性を確保すんのが俺のやり方」
「私も才人君のやり方を支持するね。逆にミスヴァリエールが我々を評価してみてくれたまえ」
「…平民のミスタコルベールの評価は?」
「魔法のエキスパート。科学技術に非常に関心を示すも、加工能力は素人に毛が生えた程度。メイジとしての能力は非常に有能。科学技術に対する理解力が高く、砂が水を吸う様に体得していく。周りに対する配慮にも優れ、正に潤滑油。潜在能力はなまる」
「自身は?」
「魔法能力無し。加工能力は日本の職人として並。治具製作、設計能力有り。基本は溶接加工職人。職人として典型的なひねくれ者。仕事の為なら軋轢増やそうがかまいやしないトラブルメーカー。潜在能力ゼロ」
え?ちょっと待って、自身の潜在能力ゼロ?
「……自分は成長しないって言うの?」
「あぁ、しない。何故なら今やってるのは、技術の放出であって、体得じゃない」
「……そう」
ミスヴァリエールが考え込んでますね
……何か、自分自身を一番低く見積もってません?
「何というか、一番自身に辛辣じゃないかね?」
「そうすかね?一応客観的に見た積もりなんですけど」
「才人君の国の基準が判らないせいだな、きっと」
あ、成る程。納得だ
ミスタコルベール、流石です
「才人。僕の評価は?」
「学生の評価は、潜在能力の方が重要じゃね?」
「どう見てるか聞きたいなぁ」
「…ショック受けても知らんぞ。ギーシュは頭脳は並。基本目立ちたがりだが、怠け癖が付いている。戦闘に於いて時折光るモノがある。金属精錬能力に優れ、金属の均質化、結晶化に於いて非常に有能。メイジとしてクラスアップも望める為、潜在能力はなまる」
「的確だな、才人君。ほぼ我々教師の評価と一緒だ」
「先生、違う部分って?」
そう言って、ミスグラモンが聞いてます
まぁ、気になるよねぇ
「金属精錬能力に長けるという評価だな。基本的に、我々メイジはそこまで気にしないからね」
「あ、成る程。全部思い当たるや。あっはっはっは。才人は良く見てるなぁ」
「ま、ギーシュはあんまり気にしないでくれ」
「私は気にしろって事?」
「勿論。仕事上の評価は気にしなきゃ駄目だろ?」
やはり厳しい才人さん
仕事の上では、本当に付き合いたく無い人だ
自己評価は、そのものズバリかも?
「ふん、ムカつく。私の平民の評価はね」
ふんふん、評価は?
「非っ常にムカつくわ。しかも、正論しか言わないのが更にムカつく。ちょっとは手加減しなさい!逆らいようが無いじゃない!」
……それ、八つ当たりって言いません?
才人さんが笑ってる
「んで、ミスタコルベールは、私達の良心ね。ミスタが居なかったら、私、研究室を潰してるわよ!」
「……本気の才人君相手じゃ、首と胴が別れ別れになるが?」
「ミスタ、揚げ足取らないで下さい!それ位の気持ちだって事です」
「…やるか?」
才人さんがそう言った瞬間、頭抱えて座り込んじゃいました
「嫌だぁ〜〜〜!お尻叩くのもう嫌〜〜!」
あ、真っ青になってガチガチ震えてる
才人さんが顔を変な風にしてる。失敗って、感じかな?
才人さんが引っ張り上げて、ぽんぽん背中を叩いてる
「あ〜悪かった。もう言わない。やらないから」
「ヒック、ヒック」
なんて言うか。駄々っ子あやしてるみたい
あ、落ち着いたミスヴァリエールが、才人さんを思い切りひっぱたいた
バシーン
う〜ん、良い音だ
「いいいきなり触るなぁ!」
「…んだよ。心配するんじゃ無かったわ」
才人さんが不貞腐れて、席に着いてまた図面を書き始めました
う〜ん、まだまだ軋轢有りそうですね、はぁ
そして才人さんの一人の時間たるお風呂に行っても、全く遭遇出来てません
すっかり予定聞くのを忘れてました

ひいお爺ちゃん
シエスタの間抜け振りを笑って下さい
ぐすん

○月×日
さてさて、夏休み突入です
今回の帰省は、何とミミと一緒の帰省です
本気で付いて来ちゃったよ、この娘は
「…ねぇ、ミミ」
「なんですか?」
「帰らなくて良いの?」
「大丈夫ですよ。ちゃんとお邪魔した後は、帰りますって。あの、一週間位滞在して良いですか?」
「別に構わないけど……ジュリアンその期間居るかな〜?」
「む〜、期待しましょ。うん」
そう言って、私達は乗り合い馬車の中でゆらゆら揺られてます
才人さん、連れて来たかったなぁ
お仕事だから、駄目だって言われちゃった
だから、休みが出来たら寄ってねって約束させちゃった
えっへっへっへ、二人の愛の巣は……焼け落ちてたよ……がっくし
今、どれ位再建進んでるんだろ?
そんなこんなで馬車がタルブに着きました
もう、夜になってます
村の入口見たら、結構再建されてる
あれから一月位なのにえらい早くない?
とことこ歩いてると、ミミが窓口から洩れる灯かりを見ながら、感心してます
「凄いなぁ。戦場になって村は焼け野原になったって言ってたのに、もう再建されてる」
「…私もびっくりだ」
私は元の家の建ってた跡を見ると、きちんと再建されてました
「ウチの家も再建済みとは」
「どういう事なんだろ?大工さんでも早すぎない?」
「いや、全く……ただいまー。お客さん連れて来たよ〜」
私はそう言って扉を開けると、一目散にジュリーが走って来て突撃しちゃいました……ミミに
「サイトお兄ちゃんいらっしゃ〜〜〜〜い!!」
「ひょえぇぇぇぇ!?」
あ〜あ、どんがらがっしゃん
二人してぐじゃぐじゃになってます
「……いたたたた。あんた、誰よ?私のサイトお兄ちゃんなら、絶対に受け止めてくれるのに!」
ちょおっと待て、私はジュリーをすぱこんと頭を叩きます
「痛い!?」
「だから、お客さんだって言ったでしょ?あんた気絶させてどうすんのよ?きちんと謝りなさい!」
「…ごめんなさい。でも目を回してる」
「あぁもう、私がおぶるから手を貸して」
「はぁい」
私達のどたばたを、下の子達がわらわらやって来て観察してます
「シエスタお姉ちゃん、サイトお兄ちゃんは?」
「サイトおにいちゃんは〜?」
「お仕事なんだって。来てくれる様にお願いしたから、良い子にしてれば来てくれるわよ」
「そのおねえちゃんだれ〜?」
「私の友達よ。お客さんだから、皆きちんと遊ぶのよ?」
「「はぁい」」
私が先頭にジュリーが荷物を持って、そしてきょろきょろと見回して
「しまった……間取りが違う」
「お帰り、姉さん。姉さんの部屋……」
ジュリアンが出て来て私に挨拶しようとして、ある一点に釘付けになっちゃった
そう、気絶してるミミの寝顔に
しめしめ、上手くハマったかな?
でも、ここは敢えて無視ですよ。えぇもう、ふっふっふっふ
「ただいま、私の部屋は何処?」
「離れ」
……何ですと?
「だって、新婚は二人きりじゃないと駄目だって、父さんも母さんも言いきっちゃって」「新婚だなんて、やだ、そんな、本当の事は言わないで!照れちゃうじゃない!」
そう言って、私は両手で顔を隠しちゃいました
………え?両手?
ごつん
……結構鈍い音を立てて、ミミが頭を床にぶつけてしまった
「あ……」
「…何やってんだよ?姉さん」
はぁって、溜め息吐かれてしまった……あはははは
「いたたたたた、何でお尻と後頭部痛いの?……コブが二つ出来てるし」
「あぁ、それはね」
喰らえ!必殺の右!
一言多い弟の口を閉ざしてしまえぇ〜〜
ジュリアンが私のアッパーを食らって、華麗に宙を舞います
うん、黙らせるにはこれが一番
「…シエスタも兄妹相手は酷いね」
「あっはっはっは」
笑って誤魔化してしまえ
「で、この人が?」
「えぇ、ジュリアンよ」
伸びたジュリアンの顔を覗き込んで、ふんふん頷いてるわね
「うん、中々良い感じ。シエスタのお母さんかお父さん美人なの?」
「母さんが美人だよ。私なんか、そっくりなんだから」
「お父さんの方にだね〜うんうん」
……く、中々にやりおる
さてと、ミミを何処に泊めるかは父さんと母さんに聞いてからだ
居間はどっちだろ?
ジュリアンを放置したまま、ジュリーの襟首掴んで案内させます
「……ジュリアン兄ちゃん放置で良いの?」
「平気よ、慣れてるもの」
長女の横ぼ……特権此処に遂行す
ジュリアンも、せっかく女のコ連れて来たんだし、さっさと才人さん位格好良くなんなさい
長女が嫁に出ても構わない位になりなさいな、我が弟ながら結構期待してるんだぞ?
ジェシカが見たら、舌舐めずりしそうな位にはなって来てるからね
……あっそっか、ジェシカでも良いのか
ま、良いや、うん
ジュリーの案内で居間に行ったら二人共に居ました
「お父さんお母さん、ただいま。此方はメイド仲間で友達のミミ。是非ともタルブに遊びに来たいって」
「は、初めまして、ミミです」
そう言ってペコリとお辞儀したミミを見て、父さんも母さんも微笑んでくれて
「いらっしゃい、ミミさん。この前の戦で何も無くなってしまったけど、ゆっくりしてってくれ」
「ジュリアンのお嫁さんになりに来たの?」
あ、お母さんがからかってる
「あ、はい、宜しくお願いします!」
私は唖然と、父さんと母さんは顔を見合わせてから、笑い出しちゃった
「ハッハッハ。いや、まだ話してもいないだろ?滞在中にじっくり選びなさい」
「ジュリアンは将来有望だけど、貴女には、ちょっと馬鹿息子じゃ失礼だわ」
「そんな事無いです。御義母様の面立ちと御義父様の黒髪を受け継いで、素晴らしいと思います」
いきなり御義父様御義母様ですかい
「……こんな娘、欲しかったよなぁ。ウチの娘達は、誰に似たやら皆お転婆で」
「あなたに決まってるじゃない」「…本当の事言うなよ」
掴みは良い感じかな?うん
気になった話題振ってみよ
「ねぇ、お父さん。村に入って気になったんだけどさ、再建えらく早くない?」
「お、良く気付いたな。陛下の御威光さ。タルブ再建に貴族と大工を大量に動員されたのよ」
「ふぇ〜凄いなぁ」
「アストン伯の代官からも一筆貰ってたらしくてな、今年仕込むタルブのワインは、是非とも王宮で買わせてくれとね」
うわぁ、凄い
「陛下、やるなぁ」
「ちょっと、感心しちまったよ。誰の差し金かね?陛下の考えなら、結構良い女王になりそうって、皆で宴会の席で評判だったな。お前はどう思う?」
う〜ん?思った事言えば良いのかな?
「私、才人さんの看病で王宮に行って、陛下ご自身とお話する栄誉に預かったんだけど」
「本当か?」「シエスタ、凄い幸運ね」
「うん。もの凄く可愛い方でした。王様としてはどうかな?才人さんに聞いたら、腹黒い計算出来る人だって、笑ってたけど」
あ、お父さんがふんふん頷いてる
「ほぉ、腹黒い計算ね。じゃ、期待出来そうだな」「そうね」
「そうなの?」
「そういうもんさ。上はえげつない位で丁度良い」
「ふ〜ん」
お母さんが料理の残りを出して来て、私達は食べてから、一緒にサウナ入って、私の部屋で寝ちゃった
ベッドの中で、二人で話すのは勿論男の子の話
ではでは、おやすみなさい

○月×日
ミミとジュリアンが連れ立って、ジュリアンの仕事を手伝う為に、ミミがちょこちょこ付いていってる
うん、中々良い塩梅かな?
昨日のベッドの中でもジュリアンの事でミミがおおはしゃぎ
ドストライクでしたか
「ねぇねぇ、ジュリアンってどんな人?」
「そうだなぁ。人畜無害?平凡?私の召し使い?」
「酷い言い様。良い所無いの?」
「良い所?父さんと一緒で、いざというとき程頼りになるわよ?何だかんだで面倒見も良いし、年下の子達には人気有るわね。そう言えば、従姉妹がジュリアン狙ってたよ〜な。胸なんかこれもんよ?」
そう言って、私より大きい胸を表現して、ミミがむぅと唸ってる
「今の内に唾付けとこ」
「ま、頑張って」
「うん」
その後も何だかんだで盛り上がって、あんま寝てなかったり
さて、私は二人の邪魔しない様に遠巻きにして父さんの手伝いしてるけど、本当にミミが笑いながらジュリアンの葡萄の間引き手伝ってて、すんごい良い雰囲気
「いや、お似合いだな。あれ」
「そうだね」
「才人さんが来てくれれば、多分お前もああいう感じだな」
そう言って、プチプチ間引いてるお父さん
「私もあんな感じ?」
「いや、もっとデレデレだ。甘くて吐きそうになる位だな」
「ぶぅ」
膨れっ面でぶうぶう言ってたら、笑われてしまった
「仕込みの時期には良い感じになってくれよ」
お父さんが葡萄の木に語りかけて皆に声をかけました
「間引き終わったら、果実向けの収穫行くぞ」
「了解〜」
タルブのワインの品種は遅咲きなのです
果物用はこの夏休みが収穫時で、私達の帰省に合わせて一気に皆で収穫するんです
美味しいよ〜?羨ましいだろ〜、えっへっへっへ
トリスタニアに行けば売ってるから、是非とも買いなさい
一部はゲルマニアやアルビオンに魔法付きでわざわざ輸出してるんだよ〜?
寒い地域では、高値で取引して貰えるんだって
小麦は焼かれて駄目になって、また種撒きからやったから、今は幼芽です
果樹も1/4位被害負ったけど、まだましだね
知り合いも何人か亡くなったけど、負けたらもっと大変だったんだから、才人さん様々だ
なんと、竜の羽衣置いてたお社迄再建されてました
皆気合い入れすぎだよ
確かに英雄の象徴を遺したいのは解るけどね
さてさて、私達は次の畑に移動中にミミに寄ります
「ねぇねぇ、シエスタ」
「どうだった?」
「ジュリアンの目標って、才人さんなんだって?」
「そう言えば、そうだったね〜」
「才人さんみたいに、軍のスクウェアメイジ倒せる位になるんだって、息巻いてたよ?毎日走ってるみたいね。シエスタが滞在指定してなかったら、とっとと空軍に入ってたのにって、ぶつぶつ言ってたよ」
「ミミに引き会わせる為だから、しょうがないじゃない。ミミが帰る迄、居てくれるか確認した?」
「お願いしたら頷いてくれた。えっへっへっへ、頑張るぜい」
「頑張れ頑張れ、跡継ぎ出来ればウチも安泰だ」
「うん。ねぇジュリアン〜」
言いたい事言って、ジュリアンに寄って行っちゃった
う〜む、気合い入ってるなぁ
「何?ミミ」
近いから声が聴こえて来た
「シエスタの事どう思う〜?」
随分と大きい声で話すなぁ
「暴虐非道の姉だね。さっさと才人兄さんの所に嫁いでくれないかな?」
な、何だとぉぉぉぉ?
「ジュリアァァァァァン!!」
「やべっ」
脱兎の如く駆け出したジュリアンを追い掛けて、私も走り出します
くらぁ!なにいっとんじゃあ!
私がそんな風に全力で走ってると、背後から盛大な笑い声が
「あはははは!面白〜い!」
「何時もの兄妹喧嘩で、家の迷物だ。近所にも評判でねぇ」
うるさ〜い!私だって好きにやってな〜い!
くそぅ、逃げ足速くなってる
果樹園の中で見失なっちゃった
「ぜぇぜぇ、何処だジュリアン」
「ここ」
「きゃっ!?」
木の蔭に隠れてたジュリアンにびっくりして、私は思わず声を上げちゃった
「やっと、ミミが離れてくれた」
「ハァハァ、な、何よ?ミミ苦手」
「いや、可愛いよ。ただね、僕は今、才人兄さんに追い付く方が優先なんだ。他に余所見してる暇無いんだよ」
「ふぅふぅ。才人さんは両方やってるわよ。今でも鍛えながらお仕事してるわ。そういう所は見習いなさい」
「…僕は、才人兄さん程器用じゃない」
カチンと来た
どうして男ってのは、どいつもこいつもこうなんだ!
「いい加減にしろ!本当はもう私より強くて頼りになる癖に、何時までも弟のままでいてさ、そういう気遣いムカつくのよ!」
「…ミミの事じゃないの?」
「違うわ!この馬鹿!ジュリアンの事だ!」
「良いから聞け!ジュリアンはミミの事好き?」
「可愛いとは思う。けど、好きな人っていうか、憧れてる人居るし」
「誰よ?」
「ジェシカ姉さん」
……はい?
「ジェシカ姉さん、今日お見舞いに来るんだってさ。だから、志願先延ばしにした」
ななな何ですと〜〜!?
「あ、憧れだよね?」
「良く分かんない」
あはははは、明日から修羅場るか?
な、泣きたい
あんな事聞いてからだと、ミミの頑張りが、い、痛々しい
どどどどうしよ?
収穫終わった後のミミもおおはしゃぎ
「ねぇシエスタ。ジュリアンって何気なく優しいよねぇ」
「そう?」
「うん!すんごい自然に重い物持ってくれたり、御父様と一緒に仕事してる仕草もカッコいいし!才人さんの浮世離れした所と違って、何より身近な所が良いよねぇ!やっぱり黒髪の男の人最高!」
あぁもう、はしゃぎまくってるなぁ
そしてやって来ました、従姉妹のジェシカです
「やっほー、降臨際振り〜!皆大変だったね〜」
そしたらジュリアンが迎えに行っちゃって
「いらっしゃい、ジェシカ姉さん」
「おぉ〜ジュリアンかぁ!また、美味しそうに育っちゃって」
私が迎えに立った時には、そう言ってむぎゅってジュリアンを豊満な胸に埋めちゃいました
「ふぎゅっ」
「ん〜?どうだぁ?ジェシカ姉さんの胸は良いだろう?」
じたばたもがくジュリアンを、両手でしっかり抱え込んで胸に埋めちゃった
あ、動かなくなった
「ん、そうそう。女のコの胸は味わうものだよ。ジュリアンも判って来たねぇ」
「ねぇ、ジェシカ」
「ん?何?」
「多分、窒息してるんじゃないかな?」
「え?あ?やだ、ジュリアン大丈夫?」
ガバッて離してジュリアンを見てみたら、やっぱり目を回してて、そのままジェシカが口を塞いで人工呼吸
お、息を吹き返した
「ぷはっ、はぁはぁはぁ」
「ごめんごめんジュリアン。大丈夫だったぁ?」
「……夢見心地でした」
「そうだろそうだろ?じゃあ、やり直し行こうか」
またガバッって埋めちゃった
「むぎゅ」
「ん〜良い男になったねぇ、ジュリアン。どうだ?私を嫁にしないかね?」
「むぐ」
「毎日この乳を味わい放題だぞ〜?」
あはははは、からかってるのか本気なのかジェシカは良く解らないのよね
あ、私の側に赤毛の頭が来た
あらら、涙目になってるわ
「は、初めまして。私、ミミって言います」
「初めまして〜。私ジェシカって言うの。ジュリアンとシエスタの従姉妹よ。貴女、家の店で働かない?人気出るわよ〜?」
「結構です。私、魔法学院のメイドですから」
「あら、シエスタの同僚さんかぁ」
そう言ってジェシカはずっとジュリアンを埋めてます
ジュリアン抵抗は?無理か、ジェシカは何処もかしこも女のコの柔肌だもんね
「いい加減ジュリアン離して下さい!」
あぁもう、ジェシカがにんまりしてる
「半年に一度の従弟との感動の抱擁を邪魔しちゃ・駄・目・よ」
明らかにからかってるなぁ
従姉妹としてはどうすべきかなぁ?う〜む
と、思ってたら、お父さんから声がかかった
「ジェシカ、それ位にしておけ。お客さんをあんまからかうな」
「はぁい、叔父さん」
やっと抱擁を解かれたジュリアンは顔真っ赤
そして、やって来たお父さんがごつんと拳骨やっちゃった
「男ならどしっとせんか」
「母さんにデレデレの父さんに言われたくないや」
「夫婦でデレて何が悪い、馬鹿息子」
「所構わずいちゃつきやがって、迷惑なんだよ、阿呆親父」
あ、二人共に目付き変わった
「…一辺死んでこい」
「姉さんのパンチに鍛えられた僕に当てられと思うな!」
振りかぶってお互いに右と右のパンチの応酬
あ〜あ、相討ちで二人共に崩れ落ちちゃった
そのまま喧嘩を始めちゃったから、顔を出したお母さんが手招きしてる
「あらあらあらあら、男共は放っておいて、こっち来なさいな」
「あ、はぁい、二人共、居間に行こ」
私達は二人の喧嘩を素通りして、居間にとことこ向かいます
「軍に行ったらこの程度じゃねぇぞ?解ってんのか、馬鹿息子!」
「兄さんにボロ負けした親父に言われたくねぇ!」
あぁ、そういう喧嘩か
確かに放っておくに限るや
私達が居間に入ったら、ジェシカが懐から封筒を取り出したわね
「叔母さん久し振り。これ、お父さんから預かって来たわ」
あ、見舞金か
「受け取れないわよ」
「受け取ってくれないと、私が父さんにこっぴどく怒られるんだけど?」
「ん〜、じゃあ有り難く頂戴するわ。代わりに葡萄持って行って。良い所身繕っておくわ」
「本当?有難う!お店でも評判なのよ〜」
そう言ってパクっと卓に載った葡萄を食べちゃった
私達が座ると、お母さんがお茶を淹れてくれて
「ジェシカ。さっきのジュリアンと結婚は冗談なの?」
お、お母さんストレートだわ
ミミが拳握ってるなぁ
「ん〜?ジュリアンにプロポーズされたら頷くわよ。いい男になって来たじゃない」
「あらあら、そう?」
「そうよ〜。店に来る口説こうって男共より、ずっと良いわ」
「あらあら、百戦錬磨のジェシカにそう言わせるなら、大したもんだわ」
「あら、叔父さん程にはまだなってないから、これからが期待の株よね。あれは伸びるわ〜」
ほう、弟の評価がジェシカから見て良いのか。ちょっと驚いた
「シエスタから見てジュリアンはどうなの?」
「召し使いよ」
「兄妹の扱いは酷いね。でも、私も兄妹欲しかったなぁ」
ガタッ
お?ミミが立ち上がった
「ま」
「ま?」ジェシカが鸚鵡返しに聞いてるわ
「負けません。私、これから成長期なんです。胸だって、これから大きくなります!」
「あっはっはっは!私は、商売で恋愛も商品の女よ?私は最初から無いって。安心しなさい、邪魔しないから」
そう言ってけらけら笑ってるわ
ジュリアンの心ジェシカ知らず
黙っておこうか、うん
そう言えば、二人共に来ないな?
いつの間にか殴り合いの音も聞こえなくなったし、両方倒れてるのかな?
そう思って廊下に行ったら、二人共に居ないし
きょろきょろ探して見たら、父さん達の部屋に居たわ
二人で酒を交わしてるし、何なんだ?この身代わりの早さ
「…初恋だったのか?」
「……多分」
「…飲め」
「……うん」
「ジェシカは良い娘だからな」
「うん」
「……プロポーズしたら、頷いてくれるってよ」
「……今の僕じゃ……駄目だ」
「……そうか」
「…うん」
聞いてたのか、そっと離れよう
そしたら、ジェシカが居たわ
「トイレ探してるんだけど」
「こっちよ」
私がトイレに案内してる最中、ジェシカが参った顔してたわ
「…余計な事、喋り過ぎたなぁ」
「ジュリアンの事?」
「全く、ぺらぺら喋り過ぎたわ。でも、やっぱりいい男だわ。プロポーズしてくれるの、楽しみに待っていようかねぇ」
「聞いちゃった?」
「ジュリアンには内緒だよ?」
そう言って、ひらひら手を振ってたわ
全く、ジェシカも大概佳い女じゃないの

ひいお爺ちゃん
貴方の曾孫は良い子ばかりです
ヴァルハラで自慢してて下さい


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