X5-627
Last-modified: 2012-03-08 (木) 21:48:45 (4403d)
「いや、本当に助かりました、ワルド子爵」
ホレイショにそう言われ、珍しく、メンヌヴィルもワルドも肩で息をしている
「悪いが、次からは突破は無理だ。あれが限界。ヘキサゴンスペルも使わざるを得なかった。あんな事は、毎回は出来ん」
「そうでしょうとも。あんなことが毎回出来たら、軍事バランスが崩壊してしまう」
そう言ってうんうん頷いてたら、ワルドが更に言葉を繋げたのだ
「出来る人間が一人、トリステインに居る。良いか、絶対に烈風カリンは起こすな。奴は、本物の化物だ」
流石にホレイショが凍り付いた
「あの……伝説の?まだ」
「存命中だ。確かに伝えたぞ」
そう言ってワルドは退出し、メンヌヴィルも短く話した
「あの連中に雪辱する。良いか?勝手に所属を飛ばすなよ?やられっぱなしでは終われん」
メンヌヴィルも退出し、ホレイショは顎に手を置き、思考を始めた
「烈風カリンは退役済みだから、とりあえず除外として、マンティコア隊の凶悪さは噂以上。先ずは練度向上の為に、船員に猛訓練を課さないと駄目と。メンヌヴィル隊のお陰で竜騎士も損耗無し。現状ギリギリですねぇ」
そう言ってポリポリ頭を掻いて、結局はこう結論付けた
「まあ、女のいるベッドですっきりしてから考えましょう」
* * *
ボーウッドがマンティコアに乗ったゼッザールを拍手で出迎え、周りも喚声に包まれていた
「流石魔法衛士隊の隊長だ」
「スゲー戦い。俺らの出番無しじゃねぇか」
ゼッザールは喚声に応えながらボーウッドに並び、ボーウッドが両手を出して、がしりとゼッザールの手を無理矢理掴んだ
「素晴らしい活躍。貴卿のお陰で楽をさせて頂きました」
「なんのなんの、貴卿の丁字突撃も素晴らしかった。それに、あれは私闘でね」
「何と!?」
「風使いの本領の場所で、最高の相手と戦いたいって我が侭ですよ。私もワルドもね」
そう言って笑いながら、そのままゼッザールは倒れた
「精神力切れだ。丁重に医務室にお連れしろ」
「ウィ!」
ボーウッドの指示に全員が敬礼し、船員達が魔法を拒否して、担架でご丁寧にゼッザールを運搬したのである
ここに、本来の侵攻作戦前の小競り合いで有りながら、幾度となく衝突を繰り返す二人の戦いは、アルビオンとトリステインに偉大な軍人の伝説として、語り継がれて行くのである
* * *
ワルドは官舎に戻る迄は、精神力切れで醜態を晒す真似は断じてしなかった
フーケも副官として非常に鼻高々なので、最早男の意地である
そして官舎に着いて扉を開ける
「帰ったぞ」
「お帰りなさいませ、ワルド様……きゃあ!?」
そのまま、ワルドは前のめりに倒れてしまい、レイチェルが驚いたのだ
「ローザ、ソフィー、来て!ワルド様が」
パタパタやって来た二人は、ワルドを一瞥し、水のローザが手早く見立てる
「ん……精神力切れね。過労も凄いわ」
「激しい戦いだったのですね……」
「こうして帰って来ただけで充分よ。ベッドで全裸にして身体を拭くわ。二人共、手伝って」
ローザの指示に二人がてきぱきと動き、ワルドはベッドに運ばれ、身体を拭かれたのである
* * *
股間に生暖かい感触がある
誰かが自分のを舐めてるのだろう
袋や肛門迄丹念に舐めてるのはソフィーか?
いや、最近はレイチェルも性技が上達して翻弄される事の方が多い
ワルドが目覚めると、ベッドに寝ていて、隣にローザが全裸で寝息を立てており、股間には毛布の下に誰かが蹲っている
こんもりした体格で誰かが直ぐに解った
「ソフィーか」
すると、スルスルとワルドの上を移動して顔を出すソフィー
「おはようございます。そしてお帰りなさい。大変なお務め、ご苦労様でした」
「あぁ、どれ位気を失ってた?」
「一晩だけです。思ってたより目覚めが早くて良かった」
そう言って、自身の花びらをワルドに擦るソフィー
「疲れてるんだ」
「えぇ、今日から三日、休暇だそうです。魔法をその間使わずに、充分休養しなさいと。艦隊司令から手紙が届いております」
「そうか、レイチェルは?」
「朝食を作っております。戦いの内容、聞きました……帰って来て……本当に」
涙を流してソフィーがこらえ、ワルドが義手の左手で頭を撫でる
「次からは毎回キツくなる。何せ、師匠相手だからな」
その言葉に、怒張したワルドのモノをソフィーが挿入した
「今は……私達だけ……見て……」
「…休養モードで頼む」
「はい、動かなくて良いです。私達がたっぷりご奉仕致します」
そう言ってソフィーがそのまま腰をぐりぐりと奥に当たる様に艶かしく動かし、ワルドが我慢出来ずに
「…出る」
すると、ソフィーが奥でしっかり固定した
「ワルド様。レイチェルは最初から貴方をお慕いしようと決めてましたが、私とローザが違うのはご存知ですね?」
「…あぁ」
「今は違います。私達、本当に家族の様になって来たんです。私、言葉少ないのに、決してレイチェルと私達を区別しないワルド様が……本当に……」
そう言って、告白しようとしてえづくソフィー
ワルドは、義手でソフィーの頬を撫で
「…無理しないで良い」
ソフィーはその義手に体温を与えるべく、両手で包み
「…はい」
そう言って、ソフィーは眼を閉じて、数奇な巡り合わせで得た伴侶の気遣いに、甘える事にした
「ソフィーばっかり、ずるい」
「あら、起きたのローザ。空気ぶち壊さないでよ」
「私だって、ワルド様の事、最初は彼処から抜け出す道具で、奉仕も捨てられない為にやってたわ。でもね」
きゅって唇を噛み締めて、ローザも一息入れてから言い出した
「今は好き。本当に好き。そりゃお金は節約しなきゃならないし、軍人だから稼ぎの関係はしょうがないし、いっつも戦死の事が頭を過るし、居ない間は不安で不安でしょうがない」
ブスッとしながらローザも語る
「でも好きになっちゃった。女も侍らしてるし、私達は子供作らないとレコンキスタに何されるか解らないヤバい立場だけど、それとは関係無しに好きなの!ワルド様だから子作りしたいの!奉仕したくなったの!私馬鹿でしょ?本来敵だったのに」
ローザの主張に思わず苦笑するワルド
「本音を二人して語ったな」
「ワルド様は私達の事……好き?」
ソフィーのその不安げな問い掛けに、ワルドは真剣に答えた
「嫌いじゃない。と言うか、愛が良く解らん」
ワルドの答えは本音だろうと、二人共女の勘で把握する
世の中結構居るのだ、こういう男
「良し、じゃあ、私達が貴方に愛を教えてあげます。覚悟して下さいよ?ワルド様」
ローザの宣言に、ワルドは苦笑いを浮かべた
「今迄で、一番手強い敵だな」
「皆〜〜。朝食出来たわよ〜〜」
レイチェルの掛け声にもそもそと、三人が起き出した
* * *
才人達から連絡を受けたアニエスがタルブの村に出向くのに、半日位で着いた
引き取り部隊自体はもっと時間がかかるのだが、本人は王宮勤務に戻されたグリフォン隊の衛士に送らせたのである
衛士には極秘任務と伝えてる為に、守秘義務違反即打ち首が設定された為、誰にも喋る事は恐らく無いだろう
元々近衛四隊は女王派なので、封建貴族に対してはあんまり良い感じを持ってはいない
一旗上げる為に、下級貴族出身が過半数を占める
後は、跡取りになれない次男坊や三男坊がメインだ
グラモンの様に、封建貴族で有りながら目指す貴族の方が少ないのだ
だから、必ず軍人を経験させるグラモンは、一目置かれている訳である
アニエスが到着すると、すかさず生け捕りにした女の顔を検分する
ずっと森の中だ
村人には知らせない方向で進めている
才人の方針により、身繕い迄させられ拍子抜けしたのか、自殺する気が失せたらしい
才人とキュルケだけがいる
他の者は警戒、シエスタは平民として、敢えて村人達と行動を共にしていた
「ちっ、権力の犬め」
「封建貴族に雇われたお前と変わりゃしない」
「知ってる?」
キュルケの言に、アニエスは暫く考え
「要注意リストにあった気がする。国を股にかけるアサシン団の一人だろう」
「あら、じゃあヤバいじゃない」
「こいつらの特徴は、魔法を忌避してる点だな。メイジを殺す仕事を承けるのが本来なんだが。お前達、メイジに雇われて非メイジを殺そうとするとか、馬鹿じゃないのか?」
その言葉にグッと唇を噛み締める女。アニエスの吹っ掛けは当たりの様だ
「飯を食う為には、信条を曲げる必要が有るんだ!」
「嘘だろう?」
「違う!」
その言葉に暫く考えたアニエスは、また話し掛けてた
「お前はそう思ってるみたいだな。上は違う様だが」
その言葉に口惜しそうに睨む女
「ま、何処も上はそんなもんって所だな」
そう言ってアニエスが結論付けると、女の髪を掴み上げようと手を出し、才人が横からその腕を掴み、首を振る
「才人!?」
「仕事に忠実なだけだよ」
「全く、お前は本当に女には甘いな」
アニエスははぁと溜め息を付き
「この人の処遇は?」
「雇い主知ってれば用は無いんだが、コソコソ動かれても厄介だ」
そう言って、剣を抜くアニエス
そして、才人がその前に立ち塞がった
女は、そんな才人を唖然と見た
本来アサシンは失敗即、死だ。捕まった時も同様である
才人の行為は絶対に有り得ない
「退け、アサシンは殺すのがハルケギニアの掟だ」
「俺は日本人。日本じゃ犯罪者も一応官憲が捕らえて保護する事になっている。俺も犯罪者スレスレだ。彼女と大して変わらない」
「お前は人殺しだが英雄だ。コソコソやったりしていない。退け!」
才人は黙って首を振る
「この……馬鹿者が!」
バキィン
アニエスの本気の斬撃に、才人が居相を合わせ、一合の元にアニエスの剣がへし折られた
後には霧が舞っている
アニエスは顔を歪める
「何で……そこまで」
「甘チャンなんだよ、俺」
そうとしか言えない
例え自身の首が絞まると分かっているにも関わらず、だ
確かに甘チャンとしか言えない馬鹿者だ
「あぁ、糞、もう勝手にしろ!私はもう知らん。勝手に殺されろ!」
そう言って、アニエスはそっぽを向いてしまった
「悪いね、アニエスさん」
「ふん」
才人は懐から投げナイフを取り出し、女を縛ってた縄をぶつっと切った
「…何で?」
「君は仕事を失敗した。失敗したら死なんだろう?なら、元には帰れない筈だ。帰ったら死が待ってるんだから、もう無害だよ。関係無い所に行けば良い」
アニエスもキュルケもあっと声を上げる
言われてみればその通りなのだ
「元に戻って、また狙ったらどうすんだい?」
「俺が馬鹿だったってだけさ」
才人はそう言って肩を竦めた
この男は、それでも通すらしい
「アンタは私の仲間を殺したんだ。礼は言わないよ」
「当然だね」
女は歩いて去って行く
アニエスとキュルケはその様を見て溜め息を付いた
コイツはこういう奴なのだ
良くも悪くも、ハルケギニアの常識と無縁なのだ
「はぁ、更に厄介事抱えちゃって、どうすんのよ?」
キュルケの発言に才人は笑ってこう言った
「勿論、ハルケギニアを楽しむのさ。だろ?デルフ」
カチッとデルフが出て来て相槌を打った
「くっくっくっ。おもれぇ、おもれぇよ、相棒。やっぱり相棒は面白ぇ。とことん楽しめや。俺っちがきちんと付き合ってやらぁ!」
* * *