X5-661
Last-modified: 2012-03-13 (火) 21:59:16 (4416d)

才人達は狙撃戦後、宝石職人の所に向かって歩いて行った
流石にデルフの警戒を突破出来る者はおらず、先程の残りの傭兵も尾行を続けたが、人通りが少なくなった場所に来た途端に才人達が走り、折れ曲がった所であっさり仕留められた
才人は一人残そうとしたのだが、エレオノールが冷たくブレイドを突き刺し、自らの手を血で汚したのである
「私は才人の秘書。あんただけ血に汚れるのは無し」
「……そうか」
才人は、そう言うのみに留めた
そして才人達が宝石職人の工房に入ると、入った瞬間に言われたのだ
「俺は殺し働きには売らねぇ。帰ってくれ」
才人達の血と火薬の匂いに反応したのだろう
才人はガリガリ頭を掻いてしまった
「そうだよな。でも、そこを何とか」
声に気付いたマルクは、顔を上げて驚きの表情を見せた
「旦那!旦那じゃないですか!?何でそんなに死臭臭わせてんで?」
「マルクさんの言う通りだよ。人殺しになっちまった」
才人は深い深い溜め息を付いて、マルクが勧めた椅子に座る
「こちらの貴族様は?」
「才人の秘書。あんた、私の所長に謝りなさい!」
怒り心頭のエレオノールが、マルクに噛み付く
「…一体何事で?」
「アンタみたいな戦えない平民達の仕事を守る為に、一人暗殺者と戦ってんのよ!その感謝が出来ないと言うなら、私が才人に代わって……「マルクさんは悪くない、止めろ」
そう言って、エレオノールの激昂と共に引き抜いた杖を抑え、優しく抜くと、エレオノールはついつい従ってしまう
「うぅ゛〜〜〜」
「分かったから、ちょっと落ち着け。さっき、初めて人殺ししたから興奮してるんだ、な?」
ふぅふぅと粗い息のエレオノールを落ち着かせる為に、胸に顔を埋めさせ、エレオノールがそのまま涙を流す
暫くその様子を見てたマルクが、ぺこりと頭を下げた
「何にも知りませんで、無礼を働いてしまいました。どうかお許しを」
「許すも許さないも、俺もマルクさんの意見に賛成だ。俺だって、人殺しに使われんのは好きじゃない。でも、やるならきゃならないなら、手を汚すのは俺みたいな最低な奴が似合いさ」
才人のその言葉に、エレオノールが才人の胸に置いた手を握りしめ、パーカーを巻き添えにする
全て知ってるからだ
そして才人は必要なら、更に心を磨り減らして手を汚し続けるだろう
エレオノールには、それがとても悲しい
「何やら、えらい事情が有りそうですな。旦那も大変みたいで」
「いや、本当はこんな死臭漂わせて来る積もりじゃ、無かったんだがなぁ」
「襲われたので?」
「あぁ」
「……」
マルクは、そのまま黙って定位置に戻ると引き出しを開けた
「次に旦那が来た時に、見せようと思ってたんですよ。金剛石です」
才人の目の前に、ゴトリと金剛石の塊が置かれた
才人が大きさに目を見張る
「でかいな」
「えぇ、金剛石はあんまりやった事無いんで、目打ちも出来なくて難儀してるんですよ」
「目打ち?」
「結晶の目を読んで蚤を打ち込むと、綺麗に割れるんです。残念だが、あっしは金剛石職人じゃ無いんで」
そう言って、ガリガリ頭を掻いている
「ある程度、切り分ければ良いのか?」
「えぇ、金剛石の粉は有るんで磨けます。誰か知りませんかね?」
才人はエレオノールを離すと、金剛石を万力で押さえ、居合い抜きの姿勢を取る
「まさか、旦那?」
「そのまさか。ちょっと、試したい事がある。……はっ!!」
気合いと共に抜刀し、鞘に収める
キィン
音と共に霧が舞い、金剛石の欠片が地面に落ちた
落ちた方は指先位の塊が4つになっている
つまり、三閃したわけだ
才人は、その結果に顔を手で覆う
「とんでもない腕前ですなぁ」
「まぁ……ね」
「では楽しみにしてて下さい。あ、ノルマは上がってますよ」
「有り難う、貰ってくよ。後、硝子職人知ってたら紹介してくれないか?」
「えぇ、喜んで。旦那の仕事は遣り甲斐有りますからなぁ。仕事料も良いんで、ウチには来ないのかって、良く聞かれるんでさ」
そう言って、マルクは地図を書いて才人に渡したのである

*  *  *
才人が硝子職人達の工房に行くと、マルクから聞いてた噂の人物が来たと言うので、二つ返事で仕事を承けて貰える事になった
最も、水銀封入の硝子管温度計の依頼は、とっても嫌な顔をされたのだが
各種硝子道具の依頼は数が出るならと、値段交渉には中々白熱し、硝子の受注を独占する事が出来るならその分を勉強すると言われて、ゼロ機関の硝子受注を独占させられてしまった
最も、契約した後に、個数が万単位の仕事は流石に顔が引きつったのだが、才人はニヤニヤして放り投げたのである
「旦那ひでぇ!契約した後に万単位とか、冗談じゃねぇ!」
「だって、そっちが独占したいって言ったんじゃないか?知り合いの同業に回しなよ?じゃないと、ツェルプストーに不足分持って行くぞ?」
「だぁあ!?チキショー!やってやらぁ!!見てろてめぇ!後で吠え面かかせてやらぁ!!」
「さっさとやれよ〜?終わった奴からどんどんモンモランシに運べよ?モンモランシで、あんた達の仕事待ちなんだからな」
余りに酷い才人の後出しに、地団駄踏んだ硝子職人の棟梁は、全員集めて指示を下した
「今日から、交代制で丸一日フル操業で働くぞ!休みはねぇ!てめぇら全員覚悟しろ!そん代わり、稼ぎは保証してやる!」
げんなりした職人達は、受注の数と〆切を見て、更にげんなりしたのである
「絶対に無理っす」
「組合全部に回す!やるぞ!」
棟梁の悲壮感と仕事を抱えてる弟子達のお通夜ぶりに、エレオノールが思わず苦笑して助け船を出した
「組合受注で再契約しても良いわよ。この馬鹿、明らかに遊んでるから」
エレオノールの言に、思わず棟梁が頭を下げた
「……思い切り甘く見てた。そうして下さい、お願いします」
棟梁の言葉に、エレオノールがその場で契約書を灰にする
こうして硝子職人組合は突然の大量受注に沸き始め、更に硝子職人組合の紹介で皮革職人達にも同じ大量受注をし、更に大工にも硝子運搬用具の受注を行い、一気にゼロ機関の名が各ギルドの上客(無茶振りする嫌な客)リストに乗り、トリスタニアの城下町に、活気が更に灯り始めたのである

*  *  *
才人達は、そのまま開店時間過ぎてたので、魅惑の妖精亭に寄って行く事にした
「あらあら、貴族様に才人ちゃん、いらっしゃい。今日は仕事かしら?」
「あぁ、ちょっと各種ギルドに頼んで来た」
スカロンが席に案内する中、その言葉に、そう言えばお得意が顔を出して無いのに気付いて、店を見回すスカロン
「店に寄る余裕も無くす位の注文出したわね?」
「やっぱり分かっちゃうか。おっかねぇなぁ」
才人が中年連中の練り具合におどけてみせ、エレオノールは特に反応しない
「貴方達、そんなお金何処から出てるのよ?」
「王政府よ。納得した?」
スカロンが意表を突かれた表情をして、暫くすると何度も頷いた
「トレビアン!トレビアン!だから才人ちゃんお金持ってたのね!今後ともご贔屓に」
エレオノールはその言に才人を指差して、こう言ったのだ
「コイツは金持って無いわよ。今管理してるのは私」
「あらあら、どうしてかしらん?」
「信じられない位金銭感覚無いのよ!コイツ!ほら、貴族の見得とかと関係無いのよ!コイツ一人だと、ぼったくり価格で契約しようとしちゃってさ!信じられない」
そう言って嘆く仕草をするエレオノール
実際に嘆かわしいのだろう
「異国人だから、しょうがないんじゃないかしら?」
スカロンの意見はもっともだ
だがエレオノールは憤懣やる方無いのだろう
「とは言っても、限度ってものが有るわよ!さっきの交渉も、私が途中で主導権握らなかったら大損したわ!」
グイって飲んで語るエレオノール、才人は苦笑している
「値段交渉って、苦手でねぇ。国じゃ、値札そのままで買うのが普通だったし」
「馬鹿じゃないのあんた?買い物は商人との真剣勝負よ!」
ダンて、杯を机に叩き突けて熱弁するエレオノール
この買い物への熱意は流石は女、と言うべきか?
スカロンは、才人と視線を合わせてひそひそ話を仕掛けた
「才人ちゃんの国でも、買い物だと女のコってこんな感じ?」
「……概ね」
所が変わり、時代が変わり、文化が違おうとも、やっぱり女の買い物の熱意には、男は全く理解出来ないのだろう
二人共に苦笑して、才人がはたと気が付いた
黒髪の彼女が居ないのだ
「ジェシカは?」
「あぁ、ジェシカはちょっとタルブに行ってるわ。ワイン用葡萄の収穫祭なのよ。才人ちゃんも収穫祭は一度参加したら?年頃の女のコ達が桶の中で、足踏みで葡萄潰しながら音楽に合わせて踊るのよ?見てるのも楽しいわよ〜」
才人はその言葉にエレオノールを見る
エレオノールは視線の中味に気付き、天ぷらを頬張りながら答えた
「ヴァリエールじゃやってないわ」
「そうなのか。名物なら、一度見に行くのも良いかもな」
「来年にしなさい、来年に。仕事以外で、あんまりうろちょろしないでよ」
「そうだな」
自身の身の上の危険が、周りに及ぼす事を言外に指摘され、才人も頷いた

*  *  *
才人達は、王宮には寄ってもアンリエッタには面会しなかった
水使いは僅かな匂いも分析する
つまり、死臭を幾ら消しても、エレオノールみたいに別系統では、バレてしまう
だから、全てが終わる迄は止めようと決めていたのである
最も、いつ終わるかはちょっと分からない
竜籠で才人は帰ろうとしたのだが、何故かアカデミーに来てしまった
「何でアカデミー?」
「用が有るのよ」
「あ、成程」
才人達が中に入ると、中で才人が特にじろじろ見られる
「平民が何で権威ある王立アカデミーに入ってるんだ?お前はあっちだ、出ていけ」
一人立ち塞がった研究員が、指を出口に指して退出を命じる
当然だ、メイドですら、研究施設内には入れない
正に機密の塊である
才人は機密保持の観点からと当たりを付けたが、平民風情と侮蔑が籠ってるのを感じ取り、つい剣呑な空気を出してしまう
その空気に、何とデルフが飛び出した
「あ〜いぼ〜う。最近殺し過ぎて過敏じゃねぇのか?大人しくしとけよ」
何と、デルフにたしなめられた
エレオノールですら驚き、デルフの柄に視線を移す
「お前に言われるとはな」
「おりゃあ、どんどん心が震えなくなっていく相棒見んのは悲しいんでね」
研究員を無視してやり取りしてる、一人と一振りの掛け合いに憤慨し、研究員がもう一度威厳を保って命じたのだ
「聞こえなかったのか?平民。ここは権威有る王立アカデミーだ。平民風情が来て良い場所じゃない。さっさと回れ右をして出ていけ」
そんな研究員をやはり相手にせず、才人はエレオノールに問い質す
「エレオノール、アカデミーでご法度なのは?」
「攻撃魔法の行使ね。武器の使用は規定に無いわ。でも傷付けたりしないでよ?彼らは私達の契約上備品扱い、私達賠償義務を追うのよ?」
「ふぅ、やれやれだ。」
才人はちっとも退いてくれない研究員に対して肩を竦めて挑発し、エレオノールが行動を起こすのを待っている
エレオノールは、どうも動こうとはしない
「ミスヴァリエール。先程の備品扱いとはどういう事だ?この護衛を退去させたまえ。幾ら君でも容認出来ん」
「私、この男嫌いなの。対して力無いのに偉ぶっちゃってさ。平民、制圧しちゃって良いわよ」
才人にそう言って、けしかけるエレオノール
「…普通逆だろ?」
「あら、私の喧嘩っ早さはアカデミーで有名なの。またかで終わるわ」
そこで、才人は研究員に聞いてみる
「本当?」
「…その通りだ」
つまり、敢えて喧嘩で決着しろと言っている
本当に困った大貴族である
「思い切りやる気削がれたんだけど?通してくれない?」
「私も同感だが、それは出来ん。何せ機密の塊だ」
「俺さ、ゼ「あら、聞こえないわ。困ったわ、早く研究室に行きたいわ」
思い切り棒読みの上に、大声で遮るエレオノール
「…残念ながら義務でね」
「お気の毒、俺も仕事なのよ」
お互いに一息ついてからは、動きが一気に加速した
杖を抜いた研究員の右手をそのまま右で取った才人が引っ張り、態勢を崩して立て直そうと身体が勝手に反応するのに合わせて懐に飛び込み、左手を喉に手刀を当てつつ脚を払う
気が付いたら、研究員が背中から床に叩きつけられていた
ダァン!
「……カハッ」
後頭部と背中を強打して、更に喉に当てられて呼吸が詰まり詠唱そのものを止められる
完敗だ
「悪い、手加減した」
「何で手加減すんのよ?やっちゃいなさいって言ったじゃない」
「賠償すんのはこっちって言ったじゃないか?支離滅裂だぞ?おい?」
「るっさいわね。貴族には見得を通しきる必要が有るのよ!」
二人がそのまま歩いて行き、置いてきぼりにされた研究員は暫く動けず、エレオノールが何故彼を通したかを事務に照会し、ゼロ機関とやらのトップがあの黒髪の平民で有ることを知らなかった、自身の落ち度であると気付かされるのは、もう少し後になる
誰にも文句言えないカタチでの嫌がらせであり、実にヴァリエールらしいやり口である
ヴァリエール公の娘らしい行動であろう

*  *  *
「って訳なんですよ、ヴァレリーさん」
「アッハッハッハッ!エレオノール、見せびらかしと嫌がらせ両方やるなんて、やるじゃない!」
そう言って、ゼロ機関の研究室に呼ばれたヴァレリーが、ソファーの上で腹を抱えて笑っている
「見せびらかしと嫌がらせ?」
才人がそう聞くと、ヴァレリーが答えた
「もう人相書きは各所に回ってるの。貴方は顔パスの筈なのよ。門衛では何も問題無かったでしょう?」
「……言われてみれば」
才人がそう頷き、ヴァレリーは笑い過ぎて出た涙を拭っている
「つまり、私の男は凄いのよ?あんたみたいなチンケな野郎と一緒にしないでくれないって、自慢が入ってるの。アッハッハッハッ、やだ面白いわぁ。人って変われば変わるモノねぇ」
そこに、やっとエレオノールが入って来た
手にはワインを持っている
「ちょっと、笑い過ぎよ、ヴァレリー」
「アッハッハッハッ。こんなに面白いのに、笑わないなんて無理!」
そもそも今は勤務時間は既に過ぎ、研究が詰まってる連中以外は帰っている
ヴァレリーはエレオノールの手紙で残ってたのだ
才人がトリスタニアに行くとした時点で、エレオノールはヴァレリーに連絡を取ったのである
で、アカデミー以上にオフリミットなアカデミーゼロ機関分室に入れているのは、研究部材が今は置いて無いからだ
「ゴンドランはどうしてる?」
「聞いた方が早いわよ。そろそろ来るから」
コンコン
ノックの音が響き、エレオノールが返事をする
「誰?」
〈私よ〉
喧嘩友達の声で、エレオノールは扉を開けた
ガチャ
才人が立ち上がって、礼をする
「初めまして、俺は」
「ヴァリエールの男のサイト=ヒラガでしょう?宜しく。私はヴァランタン。ヴァリエールとは、魔法学院時代からの悪友よ」
そう言って才人の言葉を遮り、握手を交わすヴァランタン
「言っておくけど、同じ席には着けないわ。私には資格が無い」
「ヴァランタン、あんたまさか?」
エレオノールの言葉に、ヴァランタンが苦い顔して頷く
「詳しいのは言えないけどね。私にも守秘義務は有るのよ」
「充分だよ。ヴァランタンさん」
才人はそう言って、礼をする
「あいつが悔しがる顔見るの楽しいから、期待してるわ。長居出来ないし、じゃね」
そう言って、去って行くヴァランタン
三人は取り残され、才人もソファーに座った
「アカデミーも敵……か」
「私は違うわよ」
才人の言葉にヴァレリーが即答する
「ヴァレリー?」
「私も陰険なやり口は嫌いなの。何よ、一人を寄って集って、しかも自分の手は汚さない。やるなら自ら汚しなさいよ」
「……」
才人は黙っている
「はい、頼まれてたの。バイトの序でに作っておいたわ」
ヴァレリーがコトリと小瓶を幾つか置いた
「コイツは?」
「自白剤と解毒薬と睡眠薬、避妊薬と媚薬、それに傷薬と体力回復薬よ」
才人は黙ってエレオノールに小瓶の群れを解毒薬と回復薬と傷薬以外は渡し、エレオノールは受け取る
「媚薬も、使い方次第じゃ、拷問や自白の強要、無力化に使えるわ。寧ろ、自白剤より使えるんじゃないかしら?」
「……だな」
既に、そういう使い方をした才人が頷く
「エルフが作る物程効果の高い自白剤も精霊の涙があれば作れるわ。その代わり廃人になるけど。無害なのはエルフじゃないと無理ね」
「そうか……」
ヴァレリーは、才人に気になった事を聞く
「襲われ始めて、今迄に何人殺したの?」
「30〜40人か?」
「……良くそれで襲撃減らないわね?異常じゃない」
「知らんよ、全く」
才人はそう言って肩を竦める
「アカデミーのトップが荷担してんなら、奴を血祭りにあげんのが手っ取り早いか?」
才人は一刻も問題を終息させたいのだ
その為なら、封建貴族を殺す事も躊躇わないだろう
「出来れば止めて欲しいんだけど?後釜狙って、アカデミー内で政争が起きちゃうわ」
ヴァレリーに言われ、ガリガリ頭をかく才人
今回の問題の一番頭が痛い所はそこである
才人が手当たり次第に報復すると、統治システムが麻痺するのだ
だから、一番影響が大きいヴァリエール公を目標にする訳にはいかない
三姉妹の親だからという理由ではない
最も、才人は口にしないが
そこそこ且つ、なるべく死なれても困らず、居なくなってくれた方が有り難い、本物の屑を目標にして見せしめに殺すのが、最も波風が立たない方法である
『つまり、俺が死ぬのが一番なんだよなぁ』
これも口にしない
そして、目標を仕留めても終息しないなら、目標が増えるだけである
暗殺合戦など、国力を疲弊させるだけだ
才人は、対症療法に為らざるを得ない今の事態が非常に歯痒い

*  *  *
ヴァレリーはその後、エレオノールとひそひそと話をした後に退出し、エレオノールと才人はそのまま残った
部屋に改めてディテクトマジックをかけるエレオノール
「……しまった。聞かれた」
エレオノールの舌打ちに、才人がデルフを抜く
「誰にだ?」
「最初にチェック入れて、ヴァレリー来た時に再度やって、ヴァランタン……アイツか!」
思わず激昂するエレオノール、才人はそのままエレオノールの指示に従い、デルフで吸っている
「…本物の敵か?」
「嫌よ、アイツとは腐れ縁なのよ。疑いたくない!」
エレオノールの青い顔に、才人が肩に手を置くと、そのまま才人に身体を向けるエレオノール
「こんなの嫌よ。早く終わらせてよ!」
「……」
「何で何も言わないのよ?何か言ってよ!」
才人は沈黙したままで、エレオノールのやるに任せている
「どうせ、何時ものヒステリーって、思ってるんでしょ?」
「…いや」
エレオノールは両腕で肩を抱いて震えてる
「ルイズの前じゃ強がったけど……怖いのよ。メイジだって、万能じゃない。今日だって、才人の服無しでフライ中に狙われてたら防御出来ない!後ろから狙われたら、私なんかあっさり……」
思い出して、ガタガタ震えが止まらなくなったエレオノール
「……あんたの指示だと、震えが止まるの。前に出る事が出来るの。お願いよ、何か言ってよ。怖くて怖くて、おかしくなりそう」
才人はそんなエレオノールに上から抱擁し、背中を優しく擦った
そう、幼子にやる様に、ゆっくり、ゆっくりと擦り、自分の鼓動をエレオノールに聴かせる為に、頭を優しく抱き、胸元に固定する
「…大丈夫……大丈夫だ」
「…うん」
ゆっくりと、一言一言を噛み締める様に言う才人
その言葉は、本物の魔法となって、エレオノールに染み込んでいく
「今は……我慢比べだ」
「…うん」
才人が言葉を発する度に、エレオノールの震えが治まっていく
「奴らの資金が尽きるか、俺達の精神が参って、殺られるかの我慢比べだ」
「…うん」
才人の言葉は、何でこんなに染み込んで来るんだろう?
エレオノールの芯にぽかぽかとしたモノが灯り、青褪めてた顔に血色が戻って来る
「今迄、我慢はしてきたか?」
「……カトレアが産まれてから、ずっと」
才人はそんなエレオノールの頭も撫でだし、背中も合わせて擦る
「じゃあ、大丈夫だ。20年も我慢しなくて良いんだ。楽だろ?」
「…うん」
何でこの男は、自分自身の事を差し置いて、周りにばっか優しいんだろう?
一番血にまみれ、一番嫌な仕事をし、一番キツイ立場なのに、こうして、私の事迄気遣ってくれる
だから、ちょっと我が儘言いたくなるのは、きっとこいつが悪いんだ。そうに違いない
「…今日は帰りたくない」
「そっか、遅いしな」
「薬使いたい。沢山気持ち良くして……」
今日は私の身体は洗ってない、当然彼の身体もだ
私は今、とっても牝臭い。そしてこいつの身体はとても牡臭くて、火薬と死の臭いが混じってる
私を守った栄誉の証
だから、この匂いが大好き
エレオノールは一旦離れて媚薬の小瓶を取って口に含むと、才人に唇を重ね、才人と自身に飲ませた
ひそひそ話を思い出すエレオノール
『良い、エレオノール、これ試作品ね。今の所一方通行。男の快楽を、女が自身の感覚と重ねて感じる水の魔法薬。簡単に言うと快楽二倍、乱れる事より、相手に完全に同調出来る事を目指した薬よ。多分、すんごく幸せになれると思うから、試して報告して』
『データ取りさせる積もり?』
『その通り〜。データ欲しいから、数が欲しかったら出してあげるわ』
データ取りは確かに男女が要る
エレオノールは、恥ずかしながら頷いたのだ
そして今、才人に触れてると、何処が気持ち良いのか伝わって来る。そしてそこが自分も気持ち良い
才人に抱き抱えられ、ソファに優しく横たえられる
この瞬間がエレオノールは大好きだ
確かに姫と呼ばれる立場だが、やってくれる男は目の前の黒髪の男だけである
ヴァリエールの娘に安易に触れようとする勇者は居ない
才人を促して服を脱がせて貰う
そう、ゆっくりと一枚一枚脱がされていき、胸を軽く隠して目を伏せる
「小さいから」
だが、脱いでた才人のが視界に入り、言った瞬間に勃起したものが、更にギンと跳ねたのを見えた
『今のが……壷なの?でも、演技じゃ絶対ならないよね?』
全裸になった才人がエレオノールに触れる
一気に股間が切なくなる
「は、はやく……前戯はいいから……切ないの……才人が切ないんだよね?」
だが、才人は股間を擦り付けるだけで挿入しない
「俺の感覚が伝わる薬か。なら、俺がどうしたいか当ててみ?」
自分の腿や股間に擦られる度に身体が震える
「い、良い!?何時も、こんなに切ないの?」
「あぁ、いつも切ない。辛いんだぜ?目の前で絶世の美女が潤んだ目で見つめるんだ」
「やだ……やだ……こんなので……イキそう……駄目……中じゃないとやだ」
才人の、いや、エレオノールの感覚が中に入れたい、中に出したいと強烈に囁いている
でも直ぐに出そうで堪らない
才人が入れたい姿勢、出したい態勢を取らないと入れてくれない
股を開いてみる
入れてくれない
違う、気が狂いそうになる
『は、早く』
尻を横向けにしてみる
外れ
『まだ?やだ、こんなの待てない!!』
「お願い!」
「駄目」
「〜〜〜!?」
エレオノールは声にならない声を出して本当に泣きそうな顔になる
「やぁぁぁ、イジワルしないでよ。早く、早く!」
才人の手は胸を擦りながら乳首を弄り、股間は力を失う事なくエレオノールの太股の柔肌に挟まり、擦れる度にエレオノールの体はビクビクと震え涙目になる
そして才人は流石にやり過ぎかと思って、エレオノールの耳に囁いた
「エレオノールの身体で一番綺麗なのは、背中から腰、お尻、そして太股に至るライン。全部見るには?」
ハッとなったエレオノールがすかさず才人に背を向け、尻を突き付ける
切なさが更に酷くなる
「やぁ、こんなにぃ?」
「まだある」
そう言って、尻の間に撫で付ける
「どうするの?どうするの?早く早く早く、入れたいの出したいの」
もう本当に狂乱し始め、才人は流石に答えを言う
「上半身をソファに臥せて。すんごい、いやらしくなるから」
言われて直ぐに臥せるエレオノール
「あっ、あっ、絶対今ぁぁぁぁ!早く!早く」
エレオノールの曲線がくにゃりと魅せ、その魅惑的なお尻が交尾の為に差し出された姿勢は、才人に非常に来る
才人の感覚に同調したエレオノールは、初めての感覚に恥も外聞も無くなり、必死に尻を押し付ける
「動かないで、入れらんない」
「そんなのやぁ!焦らすの駄目!早く早く早く」
何とか我慢したエレオノールの入口は溢れに溢れ、そんな所にガチガチな才人がしっかりと押し当てられ、ゆっくりと挿入していく

「あ………あぁぁぁぁぁ!?凄い!すごいっ!!ひっ!?」
「まだまだ、どうしたいか判るだろ?」
才人の言に角度を調整して、お尻を才人に押し付けた。それに対し
才人はしっかりと腰を掴んで、奥に固定した
「自分の中、凄いだろ?」
才人の言葉に必死に頷き、エレオノールが身体を押し付けたまま、動かない
「私の中、私……入って。早く出したいの、奥にぃ、奥にぃ」
エレオノールの中は凄まじくうねり射精を促し、才人も我慢出来ない
「あ、出る!でるぅ!」
ビクッビクッ
余りに強烈な射精の快楽と、受け入れる悦びが引っ張られ、才人の腰が離れない様に固まっている
暫く射精の感覚に酔い、エレオノールは動けない
「ふぅ、ふぅ、ふぅ」
「…どう?」
「もっとぉ、もっと出したいの」
「どう出したい?」
「このカッコで、私に沢山出すの」
才人の感覚に酔いしれたエレオノールは完全に虜になっている
「了解。じゃあやろうか」
エレオノールはコクリと頷いた

*  *  *
エレオノールがソファの上で目覚めた時、身体の充足感が半端じゃなかった
「……何これ?私が私じゃないみたい」
気付けば才人に寄りかかっており、寝ている最中に薬は切れたのだろう
下半身を中心にベトベトだ
でも、この牡と牝の醸し出す匂いに信じられない位満足感を得ている自分がいる
そこで、才人が目を開ける
エレオノールの動きで目が覚めたのだろう
「…良く寝た」
エレオノールは才人の顔を見て、一瞬で真っ赤になる
「あ、や、昨夜のは無し!あれ、私じゃないから!絶対絶対、私じゃない」
「…今更何を?」
才人が怪訝な表情をする
確かに才人の発言は間違って無いが、もう少しこう、二人きりの甘さとか、空気とか、そういったものを重視した方が良いのではないか?
エレオノールがムスッとし始めて、才人の頬を両手でつねり始めた
「いでででで」「良いから忘れなさい!解った?絶対よ!命令したからね!」
ちょっと不機嫌になった才人が、パシッとエレオノールの両手を掴む
捕まれた瞬間、目には僅かな怯えと、圧倒的な期待の眼差しが浮かび才人に注がれる
「アレを忘れろだと?」
「…だって……あんな格好で獣みたいに……そのまま獣みたいにヨガって……ああああ!?違う、違う、あれは私じゃ、むぐっ」
思い切り潤んだ瞳を逸らしながらぶつぶつ言ってるエレオノールの唇を塞ぎ、エレオノールは才人の舌を思う存分に味わい、粘液質の音を立てて離れる
「……はっ、ちょっとは弁明……きゃあ!?」
才人の力であっさりひっくり返されて、昨夜のヨガった姿勢を取らされると、才人は一気に挿入した
「あ、はあぁぁぁぁ」
「気持ち良い?」
「私……獣じゃ」
「獣だよ。貴族じゃなくて、牡と牝。牝はどんな姿勢取る?」
もう、才人の壷は把握してしまった。そして、才人の壷は自分が一番気持ち良いと、脳裏に刻み込まれてしまった
どんな反応が彼の状態を示してるのか全部判る
才人が一番気持ち良くて、たっぷり射精出来る態勢に、身体が勝手に動く
才人はそれに、覆い被さった
パンパンパン、パン
エレオノールが射精に合わせて身体を痙攣させる
「ひっ……ひっ」
『も、無理。無しは、耐えられない』
エレオノールはそう思いながら、自身に被さる男にキスをねだると、男はキスをしてくれ、更に耳すら舐められ、首筋にもマークを付けられ、証をあちこちに付けられ、その痕に幸福感と羞恥に染められてしまった

*  *  *


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