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Last-modified: 2012-05-02 (水) 22:17:49 (4370d)

「はぁ、来ないかなぁ?」
カトレアはフォンティーヌでの屋敷で、南向きの部屋の窓を開けてから空を眺めてぼぅってしている
その先は、トリステイン魔法学院に通じる方角だ
地上には、何処からか噂を聞き付けた貴族が複数たむろしていて、非常に鬱陶しい
カトレアに求婚する為に集まった連中だ
天幕迄張って、実に執念深い
ヴァリエールではついぞ見られなかった光景で、父がどれだけ自分の身辺を案じてたか良く分かる
フォンティーヌに居を移したのは、カトレアの我が侭だ
才人にストライキの通告したのも、カトレアの完全な我が侭だ
でも、どうしても会いたかった。会って直接言いたい事があった
呼んで来てくれるかと言えば、二人の手紙でそんな事する暇なんか無いと散々に知っている
だから仕事を質にした
そうすれば、彼は絶対に来てくれる
余計なモノも付いては来ても、居ないよりかは遥かにマシだ
そもそも待つのには馴れていたのだが、魔法学院の新学期が始まった途端、才人の周りでアサシンの大量出没を二人に知らされた時、ヴァリエールの居室で真っ青になってしまい、ガタガタ震える自分を自覚した
丁度父は長い外出をしており、カトレアの話相手は母しか居なかった
「お、お母様、才人殿の周りに暗殺者が……お母様なら助けられますわよね?助けて差し上げて下さい!」
カトレアの訴えに、母は興味無さそうに答えた
「ヴァリエールの敵が暗殺者の手に掛かった所で、こちらとしては手を汚さずに済んで、せいせいするって所よ?」
「ルイズの使い魔ですよ?ヴァリエールの縁者じゃ有りませんか!」
「せめて、眷族と呼べる様になってから言いなさい」
取り付くしまも無いとはこの事だ
「ですけど……」
「縁者なぞ、ヴァリエールなら貴女が知らない方が沢山居ます。皆、素晴らしい使い手です。この程度の危機にも対処出来ないなら、ヴァリエールはそんな縁者なぞ不要です」
カトレアはそんな母の話を嫌な顔をし、いつもの陽気な顔が、すっかり引っ込んでいる
「お母様って、冷たいのね」
「なら、貴女がその身を推して行きなさい。縁者を助けるべく、貴女が命を張りなさい。貴族とはそういうものです。病気のせいで、あの人甘やかし過ぎたわね」
思わず黙るカトレア
二人でバルコニーで座ってたテーブルに、視線を落としてしまう
紅茶を飲みながら、更に母は宣った
「貴女はあの男が信じられないと言ったのに、気付いた?」
「…!そんな事言ってません!」
「言ったのよ。貴女のお父様の実力に匹敵出来る殿方なぞ、私が知る限り、存命中なら三名位です。彼は4人目なのですよ?」
思わず呆気に取られて母を見る
「そんなに……少ないの?」
「お父様を甘く見ない様に。例えばだけどね、私とあの人が本気で戦った場合、負けて死ぬのは絶対に私よ?」
母の暴虐と言える風をもってしても、父の針の様に鋭い水には絶対に敵わないとの宣告は、カトレアには意外を通り越している
「……嘘」
「本当ですよ。魔力ばかり見るから、そうやって勘違いするのです。惚れた男を信じなさい」
またまた固まるカトレア
何でお見通しなんだ、この母は?
「あ、あの、私……貴族だから」
「女なんだから、好きになったものはしょうがないじゃない」
「…え?」
カトレアが思わず母を見る
普段は寧ろ地位がどうの、階級がどうのと、一番煩いのが母だった
本当にカトレアには、母の言動が良く判らない
「貴女達全員、私にそっくりなのよ。お父様と同様に平民を好きになっちゃう所迄一緒。平民好きになるのはヴァリエールの伝統ね。ヴァリエールでは、それで妾は平民が務める事が多かったのよ」
「そうなのですか?」
「そうよ。今の陛下は素敵よね。平民が貴族になれちゃうんだもの」
あっと、カトレアは母を見た
今の気持ちの行き所を、きちんと示してくれた
「お母様……私、信じます」
「えぇ」
母の言い分は良く解らなかったが、一つだけ解った
殿方を信じる
そうだ、夫を誰よりも信じてる母の言い分が間違っている訳がない
何故なら、夫が常に素晴らしい選択をしてきたから、今のヴァリエールの繁栄がある事を、父の英雄譚と共に教えてくれたのが母である
「カトレア、もう一つ貴女に嬉しいお知らせ」
「え?何ですか?」
「貴女はフォンティーヌ。爵位持ちじゃない平貴族。例えば相手が只のシュヴァリエでも、全く問題無いのよ」
またまた固まってしまった
そう、ヴァリエールの家名を持つ上下二人とは違い、結婚の難易度が格段に低い事を、母に教えられたのだ
何か、感情が込み上げて来る
「お母様、私……良いんですか?」
「貴女には好きにさせるのが、あの人との決め事なの。貴女を健康な身体に産めなかった私は、貴女に謝りたくても出来ないのよ。だって、それでも私は貴女が産まれた時はとても嬉しかった。私はね、これでも好きになった人と結ばれた、非常に幸運の星の持ち主なの。貴女にも、そんな幸運を授けなくてどうするの?」
母の言い分を吟味し、何故自分がヴァリエールからフォンティーヌに家名が独立しているのかを、やっと理解する
そう、病気という不自由さの分は、せめて何不自由なく恋心のままに嫁げとの、父と母の不器用な仰せなのだ
「あの……姉妹同じ方でも……?」
「正妻位、自力でぶん獲りなさい」
にべもない
でも、凄い嬉しかった
「はい!頑張ります!」
「でも、一つ問題有るのよね」
「……え?」
「貴女、平貴族でしょ?求婚者沢山来るのよね。今も毎月二桁の求婚者が来てるわ」
やっと母の言い分が解った
身分だの何だのは、全て自分を守る為の方便だったのだ
「…どうしよう」
「略奪婚も有りだから、気をつけなさい」
「…あの」
これは困った。略奪婚有りなら、無理矢理手込めにされて、孕む迄幽閉なんて真似がまかり通る
力が有れば、事後承諾も有りだ
「自由にはそれに伴う弊害を受け入れないと、謳歌は出来ないの。せいぜい貴女を守ってくれる殿方だと期待しなさい」
絶世が冠される、美女過ぎる自分の容姿がちょっと嫌になった
母を恨んでも良いかな?って、ちょっと思って視線を母の顔に向ける
全くこの母は年齢不詳過ぎる
どう見ても20台にしか見えない
詳細に見つめれば、細かい皺とかが見てとれるが、肉体の妖艶さは、未だに男が放っておかないだろう
だが、彼女が髪を完全に下げる姿は風呂場意外では殆ど見たことが無い
下げると、正に自分に生き写しなのだ
髪を何で下げないのかと聞いたら
「一番美しい姿を見せるのは、たった一人で充分です」
「……美味しゅうございました」
全く、何なのだこの夫婦。未だに熱々とか冗談にも程がある

*  *  *
カトレアは、二人に経過報告をお願いして、仕事の傍らで一喜一憂しまくって、はらはらしていた
才人の投げナイフがルイズの至近に直撃した話を読んだ瞬間
「きゃあぁぁぁぁ!?」
思わず側に居た熊に抱き付き、熊が受け止めた
この熊、中々に良い仕事をしてくれる
常に手に汗握る手紙にドキドキハラハラ
才人がエレオノールとのコンビで狙撃戦をやった所など、余りに興奮してしまい、母を部屋に呼んで戦いを再現
「お母様、インテリジェンスソードの警告で才人殿が姉様をこう突飛ばして」
熊を突飛ばして熊がコテンと倒れる
本当に良い仕事をしてくれる
この熊、自然に帰るのは諦めた方が良い
「それで、才人殿がこうやってガバッ!」
熊に被さって庇う動作をするカトレア
「うんうん、それで?」
母がカトレアの興奮に、笑いながら付き合っている
瞳が凄いキラキラしてるのだ
「こうやって、背中から銃を取り出して、姉様から弾丸をこう受け取って」
熊から団栗を受け取って、シングルアクション銃に弾込め動作をするカトレア
芸が細かいぞ、熊。中に何か入ってるのだろうか?
「そして、起き様狙いを付けてズドン!」
カトレアが才人の射撃を杖を銃に模して真似して見せる
「それで、弾込めをこうやってすかさずズドン!」
才人の左手弾丸挟みを団栗で再現して、撃ち手に持ってた団栗を排莢動作でポイって捨てて、また装填して向きを変えて二回繰り返し、母の顔が真顔に変わった
「…どうなったの?」
「またこう臥せて、才人殿が鎧兼用の服をこう熊に着せて」
わざわざ再現する為に、マントを身に付けていて、熊に纏わせる
で、姉を熊と言って良いのか?
「それで?」
「アンドゥトロワで熊が空を飛ぶんです。アン・ドゥ・トロワ!」
カトレアの掛け声に、熊をレビテーションで浮かせる母
実に呼吸を読んでいる
浮いた熊を、カトレアが仰向けで銃にを模した杖に装填しながら熊を見ている
「で、こうやって才人殿が下から指示を下して、熊が生き残りの場所を上から見て才人殿に示すんです」
「ガゥ」
諦めた様に腕で指す熊
やっぱり中に何か入ってるだろ?
「で、才人殿が一気に起き上がって、狙ってズドン!フィナーレ!」
カトレアが才人に成りきっての活劇は、実に母の顔色が変わるには充分だった
「…誘い込まれたって、言ってたわよね?」
熊を下ろして真顔で聞く母に頷くカトレア
「…信じられない。トゥエ・レ・スパーセを突破するなんて」
「何ですか?それ?」
カトレアが知らないので聞くと、母が説明しだした
「予め、こうやって射撃手を配置して、そこに追い込んで殲滅を仕掛ける、弓や銃、魔法による射撃戦術よ。やられたら、基本的に全滅するわ。メイジ非メイジなんか関係なく、防御魔法から攻撃魔法に移った瞬間に、後ろからズドン。飛んだら、フライの詠唱以外普通は出来ないからやっぱりズドン」
「…え?」
カトレアの顔色が変わる
「で、今、こうやって三角形に配置してたでしょ?これ、通常はこう火線が十字になる様に配置するんだけど、それを更に上回る命中率と殲滅力を誇る陣形よ。マスケット銃の命中率の低さなんか、気にならない配置よ」
カトレアの顔が真っ青になる
「あの……何で才人殿勝てたんですか?」
「一にも二にも正確かつ素早い射撃。それと、エレオノールを命中観測員として空に飛ばした事。どちらかが抜けてれば、エレオノールか平民のどちらかが死んでるわ」
「……」
カトレアは思わず黙ってしまう
「軍人じゃないのよね?」
「はい、民間人らしいです」
「彼の国じゃ民間ですら、そういうのが普通に情報として載っているって事よ?どれだけ戦いの歴史を踏んで来たのかしらね?」
母の疑問に、カトレアは答えられなかった
そして活劇の興奮は、常に死と隣り合わせだと言うことを、母に教えられたのである

そして、才人が毒を盛られたって一報を読んだ瞬間、カトレアは自分の平衝感覚が無くなり、床に頭をぶつける音を聴き、そのまま動けなかった
何か良くない事が頭をぐるぐる周り、完全に起きれない。動物達が心配してカトレアを舐めるが、何も出来ずにそのままの状態で軽く痙攣し、メイドが発見するまで、意識を保ったまま喋る事も出来ずに、視界が実際に真っ白になっていく感覚に浸っていた
そして、気付いたらベッドの上で、母が心配そうに見ていたのだ
「……あ、私」
「寝てなさい」
「いえ、身体起こしていたいから」
そう言って、身体を起こすカトレアに、母が手ずから紅茶を淹れて渡す
一口飲んで一言
「お母様のは、相変わらず不味いです」
「失礼ね」
そう言って母が拗ねる
この母の不器用振りは、ちょっと洒落にならない
ルイズはそんな母の教えで編み物とか教わってしまったのだから、さもありなん
姉で気付いて、カトレアは母の教育で手芸と料理は絶対に教わらず、メイドに頼んで修得したちゃっかりさんだ
何気に父の方が器用で、ごくたまに見せて貰ってたら、母が怒って父が逃げ出す様を何度か見せられた
どうやら本人も凄いコンプレックスらしい
「貴女、3日寝てたわ」
「……え?」
「手紙が開いてたから見たわよ。毒を盛られたショックを、自分にやってどうするの?」
「……」
カトレアは暫く考えてから、こう答えた
「つまり、才人殿が死んだら、私、ショックで死ねるんですね?」
「えぇ、そうなる可能性は高いわね」
すると、カトレアは内側から来る感動に浸って、悦びと共に言い放った
「なんて嬉しいんでしょう?好きな人と、例え離れていても、運命を共に出来るんです!こんなに幸せだなんて、あって良いのでしょうか?」
そう、カトレアは常に死と友達だった
油断すると、直ぐに連れて行かれる友達だ
その友達は、好きな人が居ない世なら、居る所に連れて行ってくれると言ってくれた
死が溢れているハルケギニアで、最後を共に出来るのは、最高の愛のカタチと言われて久しい
死が近しいが故に、一人隔離され、絶対に自分では叶わない愛のカタチの一つが達成出来るとは思って無かった
母が溜め息を付く
「私もそう思った事は沢山有るから、あんまり強く言えないけど。子供の為に、強く生きて欲しいと思うわ」
「産んでも宜しいの?」
「貴女の場合、命懸けよ?」
「はい!大好きな殿方との御子なら、喜んで!」
カトレアの晴れやかな顔に、母は軽く微笑んだ
「そうね、貴女の場合、普通の事が全て命懸けの大冒険だったわね。冒険の結末がハッピーエンドになる様に、楽しみにしてるわ」
「はい、お母様」
そう、外出から生活から、カトレアは全てが大冒険
こんなに生きて行くだけでハラハラドキドキの自分が、才人のお陰で楽しくなって来た
今なら何故姉がぞっこんになったのか、手に取る様に解る
妹が執拗に執着するのが痛い位に解る
だけど、自分も女だ
好きな男と添い遂げたいと願って何が悪い?
「だって私は、生きて行くだけで大冒険。常に命懸けなんだから、待ってる時間なんか無いのよ。悪いけどルイズ、私、酷い姉になるわね」
カトレアの決意は、カトレアにしか止められない

*  *  *
カトレアが手紙を送って一日たったら、午後を過ぎた辺りで竜籠がぽつねんと現れた
「あれは、まさか」
すかさず部屋に戻って望遠鏡で見ると、確かにエレオノール所有の竜籠だった
「やった!来て下さった!急げ私!」
最初から着る予定だった、出る事が無いので使い途が無かったパーティードレスに袖を通し、鏡の前で前と後ろと確認して、ちょっと露出多いかしら?と思いながらも良しっと気合いをいれる
杖は内股にバンドで固定して、下着はドレスのラインが崩れる為に身に付けない
彼に会えると思ったら、ちょっと股間から垂れて来た
「が、我慢よ、我慢」
そして鏡の前で、今一番ニコって出来る笑顔をしてみる
「うん、大丈夫。私は誰よりも綺麗」
事実だから、誰も反論出来まい
ちょっと笑顔をするだけで、求婚者が鈴なりになる自分の笑顔は、あの黒髪の男にも効く
彼は美人耐性が高いけど、手を出さないでいられる程、枯れてもいない
「だから大丈夫。自信を持って、行きなさいカトレア」
そう、鏡の中の自分に言い聞かせ、階段を逸る気持ちを抑えて、淑女の作法を敢えて思い出しながら、一歩一歩、ゆっくりと降りて行く
竜籠は速い。姿を見せてからは到着迄直ぐだ
自分がちょっとゆっくり動けば、丁度彼の入室と一緒になる筈だ
そんなカトレアの耳に、言い争いの声が聞こえてきた
〈るっせーな!此方は仕事だ!通せ手前ら!〉
〈平民如きがミスフォンティーヌに仕事だと?嘘を言うな!どうせ噂の美貌を拝みに来ただけだろう?〉
〈貴方達通しなさい!カトレアは私の妹よ!〉
〈フォンティーヌ嬢の言無くば信用出来ん。貴婦人は下がってなさい〉
〈相棒、ムカついて来たから殲滅しようぜ〉
〈待てお前ら。私を貴婦人に混ぜなかったな?〉
〈アニエスさん程の美女を貴婦人に入れないたぁ、てめえら許さねぇ!〉
〈あわわわ、皆様落ち着いて下さい!きゃあぁぁぁぁ!才人さん抜いちゃ駄目ぇぇぇぇ!!〉
〈許す、やれ。遺体は全部此方で引き取る〉
〈シュヴァリエけしかけないで〜〜〜〜!?〉
暫くきょとんとしてから、慌てて走り出したカトレア
バタンと扉を開いたら、才人を後ろから抱き付いてなんとか止めようとしたシエスタに、才人の装備から03式をぶん取り、銃に弾込めしてるアニエス
面白くなりそうだから、見物に回ったエレオノール
そして、杖を抜いて才人に向ける求婚者の一団が一触即発の状態で対立していた
「何をしてるんですか!アナタ方は!」
一斉に振り向いた求婚者の一団は全員が鼻の下が一気にだだ下がり、才人は思わず口笛を吹き、アニエスとエレオノールが驚き、シエスタは明らかに嫉妬している
「「だってこいつが言う事聞かないから」」
才人と求婚者の一団が完全にハモって、またギンと睨み合う
「メイジ相手で50人斬りって、自慢出来るか?」
「出来るわよ。父様でも三人で50人だったって」
エレオノールもけしかけている
カトレアは頭が痛くなって来た
「姉様迄けしかけないで下さいな」
「良いじゃない別に。こんな所に居るなら、どうせ出兵しないんでしょ?」
「心外だ!取り消せ!」
「え?」
エレオノールが思わず振り向くと、何人かが主張を始めた
「部下に訓練を任せてるだけだ!本作戦には同道するぞ!」
「私もだ」
やいのやいの言われ始めて、エレオノールがばつが悪そうに言った
「それは失礼。ごゆっくり〜」
すたこらと屋敷に逃げ込むエレオノール
「おい、どうすんだよ?殺しちゃ不味いんじゃねぇか?」
デルフがアニエスに聞き、アニエスが考えて発言する
「出兵する奴、手を上げろ」
50人前後の内、全員手を上げた
「あ〜こりゃ不味いな。私も勢いで言い過ぎたか?」
アニエス迄失敗を悟り、どうしたもんかと、頭をガリガリ掻いている
何とも気まずい雰囲気が辺りを包む
「カトレアさん、どういう事?」
才人の疑問に、カトレアが答えた
「出兵の前に、一番手柄を上げた方と結婚の約束をして欲しいって、方々ですの」
「そうだ!フォンティーヌ嬢と結婚するのは私だ!」
「いや、僕だ!」
「俺に決まってる!」
やいのやいの言い始めた求婚者の一団は無視し、更に才人はカトレアに聞いた
「で、カトレアさんは?」
困った様に首を傾げるだけだ
カトレアには、今の時期では、はっきりとお断りが出来ないのだろう
何せ士気がかかっている
そんな中で、シエスタがポンと解決策を出した
「だったら簡単です。才人さんに勝利した方と、結婚しちゃえば良いんです」
突然の発言に、皆がシエスタに振り向いた
才人だけは、その言葉にしゃがみ込んで、地面にのの字を書き始める
「どうしてこう、面倒くさい事は全部俺に振るんだよ?」
「あっはっはっはっ!これはおもれぇ!嬢ちゃんの真ん中の姉ちゃん。今の解決策でやっちまえや!そうすりゃ、相棒が全部ふるいにかけてくれんぜ?最も、ふるい分けした結果、だあれも残らんかも知れんけどな」
デルフの挑発に、求婚者の一団から魔力が洩れ出した
「聞き捨てならんな、インテリジェンスソード。フォンティーヌ嬢、今の条件で構わない。承諾してくれないか?」
才人の方に視線を送ると、イジイジしてたのは態度だけで、ウィンクを素早くしてくれた
『大丈夫、信じる。そうですよね?お母様』カトレアは、そのまま頷いたのである
「分かりました。但し一対一での勝利が条件です。生死はなるべく生存で」
「努力目標で構いませんね?」
「完全には、無理でしょう?」
「良く解っていらっしゃる。我ら貴族の誇りにかけて、敵をなるべく生存させるべく、決闘させて頂く」
全員がカトレアに杖に捧げ、此処に婚約を賭けた決闘が始まったのである

*  *  *
「なぁ、相棒」
「んだよ、トラブルメーカー」
「相棒程じゃねぇ。50人抜きなんざ、どうやる積もりだ?」
「ドレッドノートで心臓一発」
「何処当たっても死ぬじゃねぇか」
「……だよな」
そう言って、才人は長銃を外してアニエスに放り投げた
アニエスはぱしっと受け取る
「使わないのか?」
「威力有りすぎる。カトレアさんのお願いに反するじゃねぇか」
「律義な奴だな」
「ま、ね」
才人はそう言って、一人目の求婚者が呆れた様に声を出した
「ほぅ、銃を捨てるとは、馬鹿かお前は?」
「あ、大丈夫大丈夫。先に詠唱始めて良いよ」
才人の発言は挑発にしかならない
頭に血を上らせた貴族は詠唱を始めた途端、才人は懐に両手を入れて、目に止まらぬ速さで投げナイフを投擲した
ガス
一発で杖を持った手に深く突き刺さり、杖を落としてしまう
そして数秒置いてから、悲鳴を上げ始めた
「がぁぁぁぁ!?」
「ほい、一人目」
ガンダールヴの顕現時間は僅かに一秒未満
50人なら全員で50秒だ
この手段ならあっという間に終わる
そのままてくてく歩いて、抑えてる腕から無造作にナイフを引き抜いた
「があ!」
「一々五月蝿い。さっさと治療して貰え。次」
才人の投擲が全く見えない貴族達は焦った
だが、言い出してしまったが故に退けない
そう、ここで逃げたら、麗しのフォンティーヌは振り向いてくれないからだ
そして5分後、全員杖を持った手を隠す動作をしたら、肩口に複数突き刺され、腕の腱を断たれて終わってしまった
剣すら抜く迄に、相手にして貰えなかったのだ。実に呆気ない終わりに全員が落ち込んだが、激昂する者が現れた
「貴様、本気で勝負しろ!」
詰め寄る貴族に、鬱陶しい才人は左手を柄に掛けて、右手をヒュンと動かした
チン
後には霧が残り、貴族の服が一刀で斬り裂かれ、前がぱらりと捲れて青褪める
「見えたか?次は首」
静かな威圧に恐れをなし、全員引き下がった
次は、せっかく手加減したあの男が、本気で首を跳ねに来る
素直に撤収作業を開始して、去って行った
「ほうら、やっぱり綺麗に片付いた」
シエスタがそう言ってにまにましてる
「全く、シエスタの発言でちびっちゃったよ」
「嘘つき〜。才人さんが本気で殲滅しない様にするにはどうしたら良いか、必死に考えたんですよ〜?」
才人のやる気を削ぐには脱力させる事
シエスタは見事にやり遂げた。ちょっと自慢しても良いだろう
そしてカトレアは、その様をぽうって眺めてしまった
この人は本当に実力だけで全てを跳ね返す
強さと優しさを併せ持ち、あれだけ苦悩してるのにおくびにも出さない
彼を独り占めだなんて、無理だ
今、周りに居る女性達が、自ら望んで居るのがありありと分かる
「で、カトレアさん。ストライキの件なんだけど?」
ばつが悪そうに頭をわしわしして、才人が済まなそうに本題を出した
「……えっ?あ、はい!すいません、とりあえず中に入って下さい」
すっかり忘れてた。そうだ、彼は仕事で来てたんだ
求婚者の群れを、私の為に追い払ってくれる為に来てたんじゃ無かった
一人舞い上がってこんな格好して、見事に滑った
なんて恥ずかしいんだろう?
そして、才人が呟いたのを、カトレアは聞き逃さなかった
「……反則過ぎる……」
その瞬間にドキンと心臓が跳ねた
『やった!偉いぞ私!』
母に、美女に産んでくれたのを、本気で感謝した

*  *  *
応接室に通して、黒髪のメイド達が二人、茶器とお菓子を置いている
「ありがとう、アミアス、ダルシニ」
二人はニコってして退室して行った
「メイドさん迄、レベル高ぇ………いだだだだだ!」
「どうせ私は、田舎娘ですよ〜〜!」
才人の呟きにシエスタがぷりぷりして、たっぷりつねられる才人
「お母様が紹介して下さった方達ですの。いつ寝てるのか不思議な位なんですよね」
「へぇ。働き者なんだなぁ」
ぎゅうと更に両手でつねられる才人
「あだだだだだ」
「私だって、働き者です!」
「ひえふらのふぉほ、おろひてなひ、おろひてなひふぁら!」
ぱっとシエスタの両手が離れて、才人が両頬を擦っている
「ふぅ、何で一挙手一投足で、こんなになるんだ?」
「そりゃ、女侍らした男の宿命だ。諦めろ」
アニエスが笑いながら断言して、才人がガリガリと頭を掻く
「クスクスクスクス。才人殿の周りは何時も楽しそう」
カトレアが妖艶なドレスのまま朗らかに笑い、エレオノールはクスッと微笑んだ
「で、カトレア。何なのよ?急にやりたくないだなんて」
カトレアは周りを見回して困った様に首を傾げる
エレオノールにはその癖が人払いを意味してたのを知っていたが、敢えて言い放った
「私はゼロ機関秘書。聞く義務がある」
エレオノールの言葉にシエスタが重ねた
「私はゼロ機関メイドで事務担当です。問題は総力を持って当たるのが、ゼロ機関の方針です」
アニエスだけ部外者だが、こう言った
「銃士隊隊長アニエス=シュヴァリエ=ド=ミランだ。今日は休暇だが、ゼロ機関の取引先の安全管理に対する責任を負っている。私も理由を聞きたいな」
皆が皆、事情を聞くに足る立場だと主張してるのだ
何か有るなら、全部話して欲しいと言っている
「皆が居ると言えないなら、俺一人になろうか?」
才人の申し出にカトレアは人差し指を唇に当てて、済まなそうに言った
「あの……怒りません?」
「あぁ、大丈夫。叱りはしても怒らないよ」
「出来れば、叱るのも無しで……」
本当にばつが悪そうに言ってる態度にエレオノールがピンと来た
「カトレアまさか……狂言ね?」
「……はい」
縮こまって恐縮してるカトレアの姿に、才人含めた全員がはぁぁぁと深い溜め息を付いた
「あの……怒らないの……ですか?」
「良かった、一安心だ。取り越し苦労だったな」
「本当よ。まさかカトレア迄巻き込まれたんじゃ無いかと心配したわ。だって、フォンティーヌに突然居を移してるんだもの」
才人の発言にエレオノールが頷いて、シエスタは安堵に微笑み、アニエスも苦笑する
カトレアはやっと気付いた
彼らは自分も陰謀の的になったと思ったから、全力で助けるぞと、決意してたのだ
だから、皆退室したがらなかった訳だ
「あ、あの、心配して下さって有り難うございます!そしてごめんなさい!才人殿に会いたくて、嘘付いちゃいました」
ぺこりと頭を下げたカトレアに、エレオノールが答えた
「あぁ、それは良いのよ」
「えっ?」
エレオノールが左隣に座ってる才人を小突く
反対側に座ってたアニエスが肘を才人にドスって入れた
シエスタはメイドとして立って背後に控えている
才人は肘が良いところに入ったお陰で、苦悶に悶えている
「これ、どうしようもない無節操でしょ?さっきも見惚れてたわね?」
カトレアが真っ赤になる
「しょうがないじゃない。命懸けで守ってくれるんだから。惚れちゃうの仕方ないじゃない」
シエスタが、その言葉に深く頷く
「それじゃ、此所で休暇すっか。異論ある人」
全員首を振る
「え?休暇……ですか?」
「そ、休暇。私達全員明日から4日の休み。さぁ、カトレアの我が侭、今日含めて5日で全部出し切れる?」
カトレアは、自分の幸運の星に感謝した
「はい!私の我が侭、全部聞いて下さい!」
こうして、本日から5日の爛れた性活が始まった
カトレアはアニエスに質問してみる
「あのシュヴァリエ=アニエスも才人殿の?」
「そうだ。コイツ、普通にしてるけど実は一杯々々でね。暫く仕事から隔離したいんだよ」
アニエスがカトレアの問いに頷いて、才人の頭をここんと小突いた
アニエスの情はとても痛い
「アニエスさん、毎回痛いんだけど?」
「何を言ってる?いつの間にかエレオノールを呼び捨てにしてる癖に、私は未だにさん付けじゃないか。結構腹立つんだが」
エレオノールがふふんと余裕の表情だ
「でも、アニエスさんはアニエスさんだしなぁ」
「私は年下だ。なんかむず痒いから止めてくれ。今じゃ、殆どの分野でお前に勝てないんだぞ?」
「ま、その内に。俺カトレアさんもさん付けだぜ?」
「……そ、そうか」
そこで会話が途切れ、思い切って、カトレアが言い出した
「あの、このお屋敷。コックとメイド二人と、竜や馬番だけです」
思わず才人が真顔になる
「警備無し?駄目だ、不味すぎる。ゼロ機関は敵が多いんだ」
「才人に賛成。カトレア、ヴァリエールに戻りなさい。私も心配事が増えるのは嫌よ」
才人とエレオノールが即座に難色を示し
「あいつら警備の代わりになってたか。追い払うんじゃ無かったな」
アニエスも難しい顔をし、シエスタも沈んだ顔をする
「ミスフォンティーヌ。考え直して下さい。私の家族みたいに巻き込まれてからじゃ遅いんです!」
次々に主張され、カトレアがあわあわとなる
「話を聞いてくださぁい!」
思わず絶叫し、ぴたりと収まり、とりあえず聞く事にした4人
「あの、あの、このお屋敷は別荘です。一時の滞在用です」
「そうなの?」
エレオノールがてっきり転居したのかと思って確認し、カトレアが頷く
「はい……だって、此所に居る間は、最強の護衛が居る事が前提ですから」
そう言って、頬をポッと赤らめた
そして、全員が才人に顔を向ける
「つまり、カトレア」
「はい、才人殿と……その……」
流石箱入り娘はやる事が違う
会瀬の為だけに別荘を用意してしまった
アニエスは思わず呆れて肩を竦め、脇に立て掛けてたデルフがガチッと思わず出てきた
「いんやぁ、おでれぇた。相棒とくんずほぐれつしたいが為に家用意するたぁな」
「黙りなさいぼろ剣。この屋敷はフォンティーヌ領主の正式な屋敷で、実際に何時でも使える様に、ヴァリエール公が使用人を最低限置いてるのよ。つまりカトレアの正式な所有家屋。疚しい所は一切無い」
紅茶を一口飲んで、更にエレオノールが言葉を重ねた
「で、カトレア、我が侭言って良いわよ?その代わり、私達も言うけど」
「はい、あの、今日の為にヴァレリーさんに色々とお願いして、用意して貰いました」
そう言ってバッグから薬類を取り出してコトっと置く
「新薬だそうです」
「あ……この薬。ヴァレリーのバイトって、カトレアが依頼したの?」
「はい?えぇまあ」
エレオノールが驚いて、アニエスが怪訝な顔をする
「何の事だ?」
シエスタがそんなアニエスに囁いた
「あの薬、殿方と一緒に飲むと、殿方に触れてる最中は、ずっと相手の快楽が自分の快楽に加わるんです。正直、無しでやるの嫌になっちゃう位」
ゴクリと息を飲むアニエス
「試したのか?」
「はい、女性複数でも、男一人で全員気持ち良くなれちゃうし、誰の女が素晴らしいか丸分かりになっちゃうから、楽しいですよ?」
「つまり、エレオノールとやってみたと」
「はい、ミスヴァリエールったら、私の中に出したいって思い切り泣くんです。私も、ミスヴァリエールの中に凄く出したいですし、すんごく仲良くなれちゃいます」
「……是非とも試したい」
生唾飲み込んでアニエスが言い、カトレアは更に言った
「あの……数を作った方が単価が下がると言われたんで、沢山用意してますから大丈夫です」
「……えぇ」
エレオノールもゴクリと言っている
「最初は、その、才人殿と二人きりで……その後は……その…仲良くして下さい」
そう言って、カトレアがぺこりと頭を下げた
「了解よ。じゃあ、二人で行って来なさい」
すっかりそわそわし始めたエレオノールが、しっしっしっと才人を追い払う
「…はいよっと、じゃあカトレアさん、待たせて悪かったね」
「あ、はい」
才人が村雨を帯びてデルフを左手に持ち、立ち上がったカトレアの肩を抱こうと手が泳いだが、カトレアが俯きながらコクンと頷いたので肩を抱き、二人して部屋を出た
パタン
残された部屋では、エレオノールとアニエスがシエスタを座らせて、菓子を片手に紅茶を飲み始める
「アレを使うならマラソンよ。とにかく食べておかないと」
「その通りですね、ミス」
「そんなに凄いのか?」
「ミランの中がどんな感じか、今から楽しみだわ。今のところ二人だけだけど、アイツの言う通りか検証効くのは大きいわぁ」
「そうですねぇ。ミスタバサ混ぜたら、多分皆でミスタバサ攻めちゃいますよ?」
「あら、あの娘そんなに良いの?」
「すんごい気持ち良いですよ、ミスタバサの唇。多分中も相当かと」
「引き摺り込みましょう」
「賛成です」
「なぁ、奴の言い分って?」
「ハルケギニアの女は、全員最高か?って話」
アニエスの問いにエレオノールがそう言って、シエスタも頷いた
すっかり貪欲な一団になってしまった

*  *  *
カトレアの案内で寝室に移動し、才人が扉を開けたら、豪奢な天蓋着きキングサイズのベッドが鎮座していた
10人位は詰めたら並んで寝られそうだ
「でけぇベッド」
「あの……才人殿は、おもてになりますから」
「俺の為?」
「いえ、前からの家具です」
そう言いながら、内股から杖を抜いて一振りし、部屋の魔法ランプが一斉に点灯した
暖色系の灯かりであり、そんなに白くない
「大丈夫?魔法使って」
「只の合図です。使って無いですから安心して下さい」
カトレアがそう言って、杖をことりと置いた
改めてカトレアを見る才人
ドレスは大胆に背中が開いて腰迄露出しており、前は胸元が大きく開いて谷間を強調し、首に生地が巻かれてそこから流れて胸元を支えており、腰までは身体のラインに密着する事で、ドレス全体を支えていて、尻の形まで分かり、そこから少し絞りながら裾に向けて広がっていく
そして繊手を二の腕迄有る手袋で被い、中指から甲に繋がり、手の平は露出していて、隠す事により、より繊細さとエロスを醸し出している
何処からどう見ても、ドレスただ一着のみである
優美な自身の曲線ありきのデザインであり、着こなせる女性自体相当限定されるだろう
才人の周りでは恐らくキュルケだけだ
エレオノールやアニエスは美しいが、こう言ったデザインは両者が纏う雰囲気と相まって、似合わないなと才人は目算を付けた
ちょっと胸が二人共に足りないし、エレオノールはクールな鋭さの印象が強く、アニエスは凛々しさが表に出てしまう
柔らかい母性と朗らかさと共に、妖艶さを醸しだせてるカトレアだから似合うのだろう
カトレアが才人のジャケットに手を掛けて脱がせ、持った瞬間にズシリとして思わず驚く
内側を見たら、投げナイフや弾薬が収納されていた
背中側の腰まで投げナイフが収納されている
前は下向き、後ろは上向きでロックボタンが付いて落下防止になっている
「何で……こんなに……」
「これ位必要なんだ。俺はメイジじゃないから、飛び道具一つ取っても持ち運びしなきゃならない。剣だけじゃ、メイジに勝つには難しい」
「俺の使い魔の能力だって、大して動かさないと長持ちすっけど、常に全身動かすとあっという間に切れる。接近戦が一番切れ易いんだ。実際にアサシンメイジとの長期戦で切れて苦戦している」
そしてベルトにもホルスターに掛かった短銃と弾倉が二つあった
正に動く武器庫である
弾倉は固定化と風魔法が掛かっており、炎から弾薬を保護出来るようになっていて、より安全な持ち運びになる様になっている
ちなみにジャケット20、腰に40×2、総弾数は100発だ
全て圧縮封栓工程のみ本日製作のドレッドノート弾である
旧型弾薬は銃士隊バージョンアップ用に保管中だ
「…生きる為の、装備なのですね」
「まぁね。じゃないと、カトレアさんの期待に応えられないし」
カトレアがその発言に赤くなる
「あ……私の為でも有るんですね?嬉しい」
そう言って、今度は才人の上着を脱がせた
パーカーのポケットから、小瓶と金貨の音がする
「あら、こちらにも薬」
「無いと死ぬからね。実際死にかけた」
はっとして、カトレアがポツポツと話し始めた
「私も、才人殿が盛られた話を読んだ時、死にかけました」
「…え?」
「あの時に私、思ったんです。やっぱり、時間無いなって」
二人共にベッドに腰掛け、肩がお互いに触れている
肩が触れただけで、匂いを嗅いで、美しいドレス姿を見ただけで、才人はギンギンだ
「でも、才人殿の活躍を読むと、凄いワクワクして、才人殿が死にそうになると、私迄死にそうになっちゃいます」
「ごめん」
「何で謝るんですか?私、それ位才人殿の事好きになっちゃったのに。好きになる事、いけない事なんですか?」
「…いや」
「ねぇ、私の事、魔王として拐って下さい。私を貴方のお城に閉じ込めて、酷い事して下さい。私、貴方に拐われたい。早く……貴族になって、私を真っ先に拐って下さい」
「……」
「私を略奪して!」
そこからはクイッと例の薬を飲んで、更に才人にも飲ませた
才人に口移しで飲ませた瞬間、カトレアがぎゅうぎゅうに抱き締めつつ、貪欲に才人の唇を貪る
才人の感覚がカトレアに伝わり、その心地良さに離れられない
「ぷぁっ……邪魔です!」
カトレアがそう言って才人のシャツを無理矢理脱がし、ジーンズを脱がそうと頑張る
「あぁもう、何これ?堅くて脱がし難い」
「いや、ボタンとファスナー下ろさないと」
才人が苦笑して自ら脱ぎ、脱いだ瞬間にカトレアがパンツを強奪する
「のわっ!?」
全裸になった才人の上にドレス姿のまま、カトレアが太ももに背中を見せて跨がった
「私の背中……どうですか?」
ちらっと才人を向いて、唇に右手を寄せて欲情に染まった目で物欲しそうに見つめる
そう、才人がどれだけ欲情しているのか切ない位に自分に跳ね返って解ってても、言って欲しいと瞳が訴える
この可愛い我が侭は反則だ
才人が上半身をむくりと起こして、カトレアの背中に自分の身体を当てる
「ひぅ!?」
背中に肌が触れただけで、凄まじい切なさが身体を走る
そう、彼の受けてるカトレアの肌触りだ
とても柔らかくて、すべすべしてて、ひたすら興奮する
そして自分は鍛え上げられた彼の肌がとても心地よい
彼の腕がカトレアの身体をドレスの隙間から手を侵入させてまさぐりつつ、肩口に噛み付かれた
「ん…!」
思わず顎が跳ね上がって愛撫に反応し、暫く噛んでた口が開いて、今度は耳元にくすぐったい息と共に囁かれた
「綺麗だよ。見た瞬間に押し倒したくて仕方なかった。こんな姿見るたぁ、あいつら殺しときゃ良かった」
その言葉に、カトレアはへにゃってなってしまう
「……嬉しい」
才人がそのまま前に身体を倒すと、才人がしたい事が何となく解ったカトレアは素直に従い前にコトンと倒れて、彼のしなやかで逞しい腕がカトレアの腰を掴んでくいっと持ち上げ、スカートが捲られた
「早く……早く」
はしたなく自ら催促し、彼にその入口から滴る自分のもので、濡れに濡れた秘部を見せ付ける
だが、彼は先に太ももに付けてた杖のバンドを外す
「駄目、そんなの良いから」
「俺が良くない。カトレアさんの曲線美が台無しじゃんか」
思わずカトレアはベッドに顔を埋めてしまい、シーツをギュッと掴んでしまった
嬉しくて恥ずかしくてどうしようもない
遂に彼の手がお尻を掴んで、カトレアの入口に案内無しで当てる
カトレアは彼の快楽でどうすれば良いか解り、尻の角度を調整するとズヌヌと入っていく
そして入って奥に到達した途端、一気に爆発した
「あっ……何これ?何これぇぇぇ?早く出したい!あっああぁぁぁぁ!?」
あっという間に才人の呼吸にシンクロし、動きに併せて呼吸を短く刻み、あっという間に来た
「ひぁぁぁぁぁぁ!?」ドクッドクッ
脈動に併せて強烈な射精感と共に、自分が精を受け入れる悦びに反応し、絶頂の痙攣が止まらない
彼が深く突き入れたのに負けない様に尻を突き出したまま痙攣し、固まる
彼がそのまま被さって来た
「…すげ」
彼の呼吸の荒らさ、身体の欲求は全てカトレアの欲求にして快楽そのもの
否という選択肢は吹き飛んだ
それに止まらない
彼の欲求はカトレアに跳ね返って、彼の分身から更に搾る為に自分の意思を無視してさっきから蠕動し、射精で力が多少減った彼の分身が瞬く間に力を取り戻し、しかも、快楽は全てカトレアに跳ね返る
彼はさっきから動いてない
「気持ち良すぎて、また出ちゃう」
彼は突き入れたまま、カトレアは彼のモノが奥に当たる様に突き出したまま
そして彼の上半身は、カトレアを固定するためにきつく抱き締めてくれる
「はぁぁぁぁ」
二度目の射精を固まったまま受け入れた時、完全に何かが切れた
ぼぅっと、彼のモノが入ってる余韻と彼から来る入れていたいという欲求に素直に従い、身体を動かさないでいると、繋がったまま彼が横倒しにし、一緒にコテンと倒れる
「あん」
ベッドに沈んですぐに浮き、更に彼が脚を開いて正常位になると、彼がドレスを脱がせ始めた
首のバンドを外して、その様をぼぅっと受け入れ、しかも身体の抱き起こしの優しさに、思わず身体を寄せてしまう
「こぉら、脱がせられないだろ?」
「だって、優しいんですもの」
満たされるとは正にこの事なんだろう
カトレアの身体からドレスが脱がされ、今度は手袋が片方ずつするすると脱がされる
産まれた姿のままになったカトレア
思わず両手を前に突き出して、抱擁を要求してしまう
彼は仕草の無邪気さと妖艶さが混じった姿にクスリとしてから、応じてくれた
「ん、素敵……」
「そりゃ、こっちの台詞」
才人のモノが力を取り戻すと、才人が腰を動かし始めた
グチュッグチュッと粘着質の音が天蓋に木霊する
「誰が一番素敵?」
「全員さ」
「馬鹿……そこはカトレアって言わないと駄目な所です。私の我が侭聞いて下さらないの?」
快楽に身体を密着させながら、カトレアの可愛い我が侭に才人は望み通りの答えを返す
「勿論……カトレアさ」
「嬉しい」
そう言って二人は唇を重ね、ゆったりとしながら快楽に耽っていく

*  *  *


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Last-modified: 2012-05-02 (水) 22:17:49 (4370d)

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