XX1-119
Last-modified: 2012-08-13 (月) 19:31:01 (4266d)

才人が扉を閉めて艦長室に行こう振り向いたらタバサが突っ立っていて、才人は思わずぎょっとしながら身構える
「…びっくりした。タバサか」
「…二人に甘いから」
そう言って、ジトーっと睨んでいる
いざとなれば、スリープクラウドで二人を寝かしつける積もりだったのだろう
才人は苦笑して頷いて、タバサと一緒に艦長室に戻ると、キュルケがネグリジェ姿になっていて、二人の姿が見えない
「二人は風呂に入ってるわ。タバサ、可愛いがって貰うのは風呂上がりにしましょうね」
キュルケの言葉にこくんと頷いたタバサは、そのままばさっと脱ぎ出し、全裸になるとキュルケと共に入って行く
「流石に4人は狭いよな」
才人はそう言って苦笑しつつ、チーズ片手にワインをとくとく注いでソファーに座って軽く飲み出した
暫くまったり飲んでると風呂からモンモランシーとシエスタが上がって来て、二人共にネグリジェを纏っている
シエスタのは夏にプレゼントした奴で、才人は笑みを深くする
モンモランシーのは買い足したのか、見た事無い奴だ
完全に透け透けでパンツはローレグ、モンモランシーの細身の肢体の魅力を引き出している
「おろ?モンモンの下着、新しい奴?」
「そうよ。才人が領内の景気上げたお陰でね、私に好きなの買えって、お父様に臨時のお小遣い貰えたの。シエスタの下着もエロいわよね。誰の趣味よこれ?」
モンモランシーの台詞にシエスタは誇らしげに言った
「勿論才人さんの趣味です。私は才人さんの好みしか身に付けませんから」
「…私にも好み言いなさいよ」
ぶすっとしたモンモランシーがベッド脇から常備薬を取り出した
「あったあった。ゼロ機関には標準装備って、先輩から聞いてたのよねぇ」
そう言ってモンモランシーが妖しく微笑んでいて、才人は苦笑する
「それ、使いたいのか?」
「うん、たっぷり。だって水使いには凄いんでしょ?」
才人は曖昧に笑って誤魔化している
水使いはモンモランシー以外周りに居ないので、頷く訳にはいかないからだ
「まだ駄目ですよ、ミス。全員一緒です」
「はいはい、じゃあ二人が上がって来る迄は、才人に寄り掛かってよ」
シエスタがそう言って既に才人の右隣でしなだれていて、モンモランシーも負けじと左からしなだれかかった
「はい、もう飲むの終わり」
モンモランシーがワイングラスを取り上げると才人が抗議する
「勿体無いから、グラスのは最後迄飲ませてくれよ」
「もう、しょうがないわね」
グラスをモンモランシーが持って、才人の口に持っていき、才人が一気に飲み干すと、二人が才人のローブをはだけてキスをし出した
シエスタの愛撫は才人の弱い所を全て把握してる絶妙の愛撫なので、一気に才人がギンギンになり、思わずモンモランシーがほぅって感嘆の吐息を洩らす
「やだ、凄い。シエスタったら、いつの間に上手くなってるのね」
「才人さん専用です。あのお薬使えば、皆上手になりますよ」
モンモランシーがゴクリと喉を鳴らして頷き、三人で縺れていると、二人が風呂から上がって来た
キュルケはネグリジェを纏っており、タバサは全裸だ。そのまま才人にすたすたと歩み寄って才人にすとんと座る
「…ん」
一番ご無沙汰してたタバサは、我慢出来ないのだろう
「あ、ちょっと待って下さいね。皆さん全員で一緒にしましょうね」
そう言ってシエスタが立ち上ってベッド脇の引き出しから例の薬を人数分取り出して、皆に渡して自分からさっさと飲み、才人にも飲ませて更に説明を重ねる
「才人さんの感覚が伝わるお薬です。触れてれば全員一緒に気持ち良くなれますよ。痛みも伝わるから要注意ですけど」
「ふうん。凄いの?」
キュルケの質問にシエスタはにっこり頷いた
「とんでもないですよ〜」
その言葉にタバサとキュルケも飲み、ひと足先に飲んでたモンモランシーは、目が虚ろになって才人にしがみ付いていた
「やぁ!何これ何これ?私こんなに気持ち良いの?」
タバサも飲み干した途端にがちりと抱き締め、才人がベッドに動こうとするのをいやいやと首を振る
「…今すぐ」
キュルケは二人の豹変にびっくりし、才人に近寄って触れた途端、身体中に才人が感じている快楽が突き抜け、硬直する
「ひぃ!?」
後はそのまま肌を触れさせる為にモンモランシーと阿吽の呼吸で才人のローブを引き剥がし、肌を密着させて滅茶苦茶に舐め出した
そのまま才人は引き摺りながらもベッドに到達すると、すかさずタバサがお尻を向けると、シエスタも隣でお尻を向けた
「皆大丈夫ですよ。逸るのも解りますけど、才人さんに誰に入れて貰うか決めて貰いましょう」
シエスタの言葉に名残惜しそうにキュルケが離れて、無理矢理モンモランシーを引き剥がして同じくベッドでお尻を向ける
「ダーリン早くね」
才人が4人に手を触れ、全員が才人の興奮を感じて一気に濡れている
そして才人の一番快楽の感じるものが尻に触れると全員が思わず短く鋭い声を上げ、尻が挿入し易い様に動き、才人が侵入していくと、合わせて最奥に当たる様に身体が勝手に動き完全に繋がった
余りの感覚に、全員が快楽に耐えられず震えている
「今まで……一番キツイ。やぁ!?何これぇ!?出ちゃう出ちゃう出ちゃうぅぅぅぅ」
シエスタの悲鳴に射精が重なり。全員が同時に果てる
そう、タバサの中にだ
タバサは何も言えずに才人の射精が最高の位置で出来る様に、身体が勝手に動いて震えている
才人が抜くとすかさずシエスタに挿入し、4人がまた違う感覚に震え、信じられない位によがり、震える
「タバサも凄かったけど、シエスタも凄いぃ」
キュルケが長い髪を振り乱して腰を無意識に振っていて、モンモランシーは、あとか、うとか、意味の無い声しか出していない
才人の腰の動きに完全に合わせて動くシエスタのうねりに全員が酔い、才人の射精にまた果てる
「いっいっいぃ!?」
余りの快楽に歯をガチガチ鳴らして、キュルケが涙を垂らして震え、身体がビクビクと痙攣を止めない
そんなキュルケの蜜壷に快楽の元が合わさり、キュルケは身体が快楽に逃げようとするのと逆に迎え入れようとするのがごっちゃになり、訳が解らないまま貫かれる
貫かれた途端、その見事な肢体は才人の射精をさせるべく、本人の意思を無視して勝手に動き出した
「ダーリン何これ?あ……ああぁぁぁ!?」
貫かれる普段の快楽に、上乗せされた男の快楽に身体が動いてずっと絶頂が止まらない
才人が華奢な彼女達を纏めて両腕で抱える為に、キュルケに被さって両腕を拡げて腕を延ばし、キュルケの隣同士のタバサとモンモランシーには脚を交叉させつつ、しっかりと全員に伝える姿勢を取ると、痙攣を繰り返して反応が薄い
「キュルケ、凄いだろ?」
才人の言葉にキュルケ自身がガクガクと頷くだけで、全員声すら出ない
そのまま才人が軽く動かすのをキュルケが抵抗して、常に奥になる様に勝手に尻が動いて上手く突き入れが出来ない才人が囁いた
「キュルケ、動いちゃ駄目な。ちゃんと一番奥に出すから」「…あ゛い。ぜ、ぜったいだから……」
才人がそのまま腰を上手く突き入れて、宣言通り奥に固定して射精すると、くぐもった声の四重奏が部屋に響き、くてぇと四人が脱力する
そのまま才人が射精が終わって力が抜けた息子に力を取り戻す為にぐりぐり動かすとキュルケから悲鳴が響いた
「ひぃ!ひぃ!ダ、ダーリン、もう無理!無理ぃ!お願い休ませて!一人じゃ、ダーリン受け止めるの無理ぃ!!」「じゃ、今はおっきくしないとね。モンモン待ってるし」
「ひい゛!?お願いぃ!私イキ過ぎて駄目ぇ!!」
タバサは痙攣を繰り返してるだけで目は虚ろ、シエスタはちょっと潮を噴いてしまった
そして才人が復活すると、にゅぽんと音を立てて抜いて、モンモランシーを両腕で持ち上げる
「え?あ?やだ?何々?何で持ち上げるの?」
欲求が伝わるので、尻を才人に合わせる為に暴れるモンモランシー
新品のネグリジェは、才人に匂いをたっぷり付けて貰う為に着たままだ
才人はそのまま運んでタバサとキュルケの間にモンモランシーを割り込ませると、モンモランシーがすかさず尻を突き出すのに合わせて、息子でショーツをずらして入口に当てると、ヒクヒクしていたモンモランシーの女がぱくりとくわえ始め、にゅるにゅると中に案内をしていき、奥に届いた
「あ……ああ゛ぁ〜〜〜〜!!」
モンモランシーの上半身から力が抜け、くたりとしながら結合部分に体重を押し付けて固まり、才人がまた全員を抱えて震える四人
「皆違って、皆良いだろ?」
シエスタが強く頷いて言葉にならない声を上げ、キュルケやタバサは痙攣しているだけだ
「モンモンは中の吸い付き堪らないから……今日は更に強力」
才人がそのまま軽く動かしながら腰を合わせると、モンモランシーの小振りな丸い尻が完全に呼吸を合わせて吸い付き、何度も痙攣しながら吸い付いていて、何度も射精したのに堪らなくなった才人は遂に出した
「さいと、すご……さいとがいいの?わたしがいいの?どっちぃ?」
「……モンモンが凄い…シエスタが良い。タバサが堪らない。キュルケが我慢出来ない」
モンモランシーの問いに才人が息を荒くしながら言って、離れるとベッドに倒れ込み、暫く四人が突っ伏してぜぇぜぇ言っている
呼吸が戻るとキュルケとシエスタが才人の頭を両脇から豊かな胸で抱え、タバサが才人の乳首に吸い付き、モンモランシーが勃起させる為に才人の息子を舐め出した
才人の弱点を完全に把握したモンモランシーの刺激に堪らず、才人はあっさり勃起する
そして才人を胸に抱いた二人は、完全に蕩けていた
「ダーリン好き、大好き!一番好き!だからダーリン、もっと手柄立てて!」
キュルケのお願いは、少女としての真摯なお願い
シエスタはそういうのはどうでも良いいのか、ひたすら才人に胸を当てている
才人は胸に埋まって返事が出来ない
二人の胸を舌で絡めとるのに忙しいのだ
「ふぁっ!あっあっあっあぁ!?」
褐色の肌でありながら綺麗なピンク色の乳首を才人にシエスタの胸と一緒に舐め取られ、更にモンモランシーが挿入した為、焦点が合わずにピクピクしていてそのままモンモランシーがグチグチと音を立てながら腰を動かして無理矢理才人を射精に高めていき、才人が射精するとそのまま全てを吸い込む
「あ……う……」
モンモランシーはそのまま射精が終わるとすかさず動かし始める
「あぃ……さいとの……やる」
モンモランシーもアンリエッタ程ではないが、本能の訴えに応答してしまい、本人にも制御が効かないのだろう
才人の上で腰をぐねぐね動かして痙攣を繰り返し、皆が才人が感じている感覚に溺れる
「モンモランシー、お願いぃ!て、手加減」
キュルケがひいひい言って嘆願するが、モンモランシーの反応がおかしい
「……ふぇ?さいとがだしたいって言ってるから出すの。キュルケはどうでもいいの」
そう言って、腰を止めないモンモランシー
才人の上で艶かしく動いてまた射精した刺激を虚ろな目で味わっていると、ガクガクしてるタバサを見て唇に指を喰わえて考え込み、タバサを抱き寄せて持ち上げる
タバサは既に朦朧と為すままだ
「タバサ、あなたがさいとと繋がって寝る。みんなきもちいいからだいじょぶ」
そう言って無抵抗のタバサがビクビクしているのを跨がらせて、自分が退くと、すかさずタバサに挿入させ、全員が震えるのを、更にモンモランシーがタバサに背中から体重を乗せて、タバサが奥に無理矢理繋がせられる
「…はっ……あっ!?」
タバサにはサイズオーバーな才人の逸物が根本迄がっつりと入れられ、モンモランシーが後ろから被さって決して退避を許さない
「…や…やめて」
「だめ、痛い?」
ぶんぶん首を振るタバサ。何度も愛されてる内に、身体は才人に合わせてこなれてしまった
「きもちよすぎ?」
モンモランシーに後ろから耳に囁かれたタバサが頷いて、モンモランシーが唾液をにちゃあと延ばしながら邪艶な笑みを浮かべつつ、タバサの首筋を舐め上げる
「なら、おかしくなろぉ。さいとのものだとからだにきざんぢゃえ。きょうりょくするよ」
そう言って、モンモランシーがタバサに被さって本人の意思を無視させて完全結合させ、タバサの焦点が全く合わない
「……はっ……ひぃ!?」
才人の絶頂に加えて、自分の絶頂が滅茶苦茶に昇らせられ、しかも後ろから友達にして同じ人の愛人から本気で愛され、皆で愛される悦びを無理矢理植え付けられ、タバサは今までの鬱屈してたもの全てが、今この時だけは吹き飛んだ
才人の射精に震え、自分の絶頂に震え、逞しい自分男に寄り掛かりつつ、後ろから友達が被ったサンドイッチに、彼の顔は彼の大好きなおっぱいが埋めていて、彼が興奮しまくってるのが伝わる
「……気持ち良くて…良いの?」
涙を流しながら誰にともなく聞くタバサ
「いいの。みんなでしあわせになるの。なかまはずれなし。わかった?」
モンモランシーの言葉にタバサは頷いた
「…うん」

*  *  *
翌朝、艦長室で一番最初にタバサは起き、昨日の恥態を思い出して思い切り赤面し、恥態のままのベッドを首を振って見回して、溜め息をついた
後ろからモンモランシーが被さってる為に、身動きは取れない
『…本当に良いのかな?』
ハルケギニアの慣習越えて無いかな?っと自分で疑問に思いつつ、元凶の男を見下ろす
きっちり繋がったままで、愛されれば愛される程溺れて行く自分が、復讐なんかより彼の胸の方が大事になってきてるのを自覚し、ぐらつき具合に内心動揺する
彼に全部預けて良いのか?
正直解らない
彼は守ってくれると言った。約束は守られてる?
今の所完璧
私を手中に収める事は、ガリアの政変に嫌が応にも関与せざるを得ない立場を強制する。私は彼にきちんと話してない
「…狡い女」
そう、私は彼に溺れて助けて貰いたがっている
自分だけじゃ余りに辛いから、彼を問答無用の所迄引き摺り込んで、後戻りさせない様にしたい
「…汚い女」
こんな薄汚い私に、友達は一緒に幸せになろうって言ってくれた
私は友達の資格が無い
私はどうしたら良いのだろう?
キュルケは微笑んで全部包み込んでくれたけど、モンモランシーやシエスタもそうだろうか?
涙を一筋流して、自分の運命に引き摺り込もうとしている男を見る
大体こいつが全部悪い
なまじっか頼りになるから!誰よりも強いから!貴族の誰よりも貴族だから!
…ちょっと、八つ当たりになってしまった
そんなこんなで自分の中が勝手に彼の物を吸い込み、射精させるべく動いて、彼の射精と自分の絶頂が身体に悦びを伝え、歓喜に震える
「ミス、おはようございます」
川の字で寝てたシエスタがむくりと起き出して、折り重なってるタバサに顔を寄せて囁いた
「…女で狡くない女なんて、一人も居ませんよ、ミス」
ハッとしてシエスタを見る
「私も……ですよ」
誰にも聴こえない様に、耳打ちして囁いてみた
「貴女も?」
シエスタは昏い笑みを浮かべ、頷いた
「私達皆、狡いんですよ、ミス。多分、一番明け透けなのがルイズさんなだけです」
シエスタはそのまま折り重なって寝てるモンモランシーとタバサに軟体動物の様に身体を寄せてタバサにキスをする
「だから……良いんですよ、ドロドロで。そんなドロドロも、才人さんは承知の上です」
シエスタの言葉に気付いた
だから彼は最初の頃、逃げ出す仕草が多かったんだと
「もう少しで私達の勝利です。協同戦線、頑張りましょう」
タバサはその言葉に頷いた
女達の、後ろ昏い秘密
彼が傍に居るにも関わらず、彼には言えない数々の話
私達はきっと罪を重ねてる
でも、勝てば全ては許される

だから私達はきっと勝つ
そして全てが結ばれた時、私達は彼の見えない所で舌を出そう
引っ掛かってご愁傷様って

*  *  *
カトレアはフォンティーヌに向かう馬車の中で、非常にはしゃいでいた
「ねぇねぇ、私、才人殿にお願いしたいと思いますの。二人はどう思いまして?」
ゴーレムの御者が馬車をのんびりと走らせ、カタカタ路面に合わせて揺れている
そんな中で、ダルシニとアミアスに聞いているカトレア
二人は完全にカトレア付きになった為に、常に傍に居て、微笑みながら聞き返した
「何をでしょう?お嬢様」
「私を、お嫁さんにして下さいって」
二人はちょっと驚いて聞いてみた
「貴族をお辞めになるのですか?」
「えぇ、そうすればもう、貴族の求婚者に煩わされる事も無くなりますし、中々良い案かと思うのですが」
「今度は、今までの10倍の求婚者が鈴なりになりますね」
アミアスの返しに固まってしまった
ヒクヒクしてからガクンと頭を垂れるカトレア
「あぅ……良い案だと思ったのですけど」
「根本的に、誰かの膝の上に乗っからないと解決しませんから。しかも、誰よりも強い方でないと、夫になる方が殺されてしまいますし……」
ダルシニの言葉に唸ってしまうカトレア
「……才人殿、今すぐ貴族になって下さらないかしら?」
「イーヴァルディは、貴族に価値を見出だしてないですよ」
そう、アミアスは嘯いて、カトレアはむ〜と唸る
「大体、才人殿が貴族になれば解決致しますのに!」
そう言って両手をぶんぶん振ってカトレアはむきぃって暴れ、アミアスとダルシニはその様を笑って見ている
「頑固ですけど、女性には甘いお方ですし、毎日毎日ベッドでお願いしてみては如何でしょう?」
毎日ベッドで爛れながらお願いする
その様を想像したカトレアは涎をたらりと垂らしてしまい、ダルシニがハンカチで拭いて美女のだらしない姿をフォローする
「…はっ。いけないいけない。私はいつ如何なる時も誰よりも綺麗じゃないと、存在価値が激減しちゃいます」
自意識過剰……とは言えないのが困りものだ
自分の武器には磨きをかける事には余念が無いが、余りに美しい為に化粧すら不要なのがカトレアである
つまり、磨く部分は主に内面になる
立ったまま、足の指で針を摘まんで移し換える訓練をバストアップ体操と共に、休暇以来ずっと続けている
教えて貰ったのは母からだ
「あの、お母様。殿方が悦ぶ方法を教えて下さいませ!」
「あら、貴女もなの?」
「……も?」
聞きに行った時に呆れ顔で見られたのはちょっとショックだが、恥は一時である
「ルイズとエレオノールも聞いて来たのよ。全く、姉妹で一気に色気づいちゃって」
そう言って溜め息を付いてる母
『出遅れてしまいました!』
内心の焦りを押し隠してとにかく頭を下げるカトレアに、溜め息混じりに母は話し始めた
「殿方を射止めるのは、まぁ難しくない……って言えると思うわ。でもね、射止め続けるのは、本当に難しい。基本的に私達女側が堕落して、飽きられるのが多いわ」
先達の有り難い意見であり、カトレアは神妙に拝聴する
「良い?結ばれるのはゴールじゃないの、始まりなのよ。それが解らないと、ツェルプストーに取られて終わる」
「…はい」
母の部屋で二人座って真剣な話である
「でね、先ずは出しゃばらない。男を立てる。まぁ、この部分であの平民にでしゃばるのはエレオノールですら無理だから、とりあえず問題は無し」
「……はい」
素直に頷いて続きを待つ
「常に恥じらいを忘れない。男は恥じらいを忘れた女に興味は示さない。気をつけなさい。結ばれた油断が、恥じらいを忘れてしまう事が多いのよ。だから複数で綱引きしてるのは、常に自分自身に緊張感を与える良い刺激になると思いなさい」
「はい」
確かにそうだ
一瞬の油断が、別の女に持って行かれてしまう
「そして、常に魅力的な肢体でいなさい。つまり、男を迎え入れる場所も磨きをかけるのです」
カトレアはきょとんとして聞いてみた
「…出来るんですか?」
「可能です。娼婦の方々とお付き合いした事が無いと、知らないのも無理は有りませんけど」
「是非、是非!」
カトレアの嘆願に、母は実演してみせた
沢山の豆を用意してみせて、深皿に盛った豆を爪先立ちで立ちながら摘まんで、片足で別皿に移し変え、片足が終わると反対の足で同じ様にやり、カトレアが思わず感嘆の呻きを漏らしたのだ
「最終的には、摘まみ難い針で行います」
「…凄い」
「今からでも全く遅く有りません。真の淑女は身体の内側も殿方の感嘆を誘えねば淑女では有りません。頑張りなさい」
「はい、お母様!」
女の階段は思った以上に大変らしい
ならばやるしかないとカトレアは頑張っていて、もしかすると体力増強に効果があったのかも知れない
皆が見えない所で地味に頑張っていると知って、カトレアも頑張っていた
そんなカトレアが母に教わった数々の体型維持と体力維持の体操をしているのをダルシニ達が見て笑いだした
「あっ、やってるやってる。娼館でもやってる人は多いんですよね」
「その人達、売れっ子ですか?」
真剣にやりながら聞いてきたカトレアにダルシニが頷いた
「売り上げに影響あるみたいですよ。やって無い所は、やっぱりちょっと寂しいみたい」
「そうそう。でもライバルには教えないから、あんまり広まらないんですよね。寧ろ貴族の女性にやってる人は多いんじゃないかな?」
「下級貴族の子女では、やってるのをかなり見ましたよ〜」
母は確か下級貴族出だ、カトレアは頷いた
下級貴族の女性は身体一つで殿方に気に入られなければならない。だから、母は教育の一環として習ったのだと推測出来た
「アミアスとダルシニはなさらないの?」
カトレアの質問に二人は顔を見合わせて、苦笑してみせ
「あぁ、私達は」「…ねぇ」
カトレアにはちんぷんかんぷんだったが、自分の為に頑張ったのだ

「あの時より、大分身体が締まった気がします」
「あぁ、それは確かに」
「腰回りのサイズ、減りましたもんね」
二人の言葉にカトレアはウシとガッツポーズし、美容に関して何もしてない二人をジトーって見て皮肉ってみた
「何で何の努力も無しで、そんな肢体なのです?」
「体質なんです」「すいません」
二人の言葉にかくんとしてぶちぶち呟いた
「神様って、絶対不公平だ」
「そうですねぇ」「本当に」
心底頷いた二人に、きょとんとするカトレア
良く判らないが、不公平と思う所は有るんだなと思い直し、馬車がフォンティーヌの屋敷に着こうとした時、馬車がガクンと停止した
「あれ?まだ屋敷の前ですよね?」
ダルシニがそう言って窓から周りを見た瞬間に、顔を険しくする
「杖を」
カトレアが頷き、杖を抜いた
そして二人が馬車から降りて、屋敷への道の途中に展開し、ラ=ラメー伯旗を掲げてる数百人の軍装の男達に喝と怒鳴り始めたのだ
「何の真似ですか!こちらの馬車はカトレア=イヴェット=ラ=ボーム=ル=ブラン=ド=ラ=フォンティーヌ様の御馬車と知っての仕業ですか?ヴァリエールの眷族と知っての狼藉、ヴァリエールが許すとお思いですの?下がりなさい!!」
メイドの格好に本人達は気弱にも関わらず、約束の為にビビりながらも振り絞って怒鳴るダルシニ
メイド服に隠れた脚はガチガチ震えていた
『こ、怖い、怖い。サンドリオン、カリン。私に勇気を!』
力の限り軍勢を睨み付けていると、一人の男が出て来た
「これは失礼、主人に忠実なメイド殿。部下に手出しはさせん。返事次第だがね」
そう言って、メイド相手にも関わらず一礼する
「我が花嫁に忠実なメイドに傷を付ける訳にはいかない。申し訳ないが、花嫁を出して頂けないだろうか?」
「我が主は貴方に嫁ぐなど決めておりません!素直に帰りなさい!」
ダルシニの決然とした返事に、男は嘆かわしい仕草をして見せた
「何というつれない返事だ。僕が10年も恋い焦がれた相手に相応しいメイドだな。僕はピエール=ド=ラ=ラメー伯爵。父がタルブの緒戦で戦死した為に、伯爵位を継いだ未熟者さ。ヴァリエール公より、カトレア嬢との結婚の許可を頂いた。今日移動だと聞いたので、我が屋敷にこうやって迎えに来たのだよ」
一際大声で馬車に呼び掛け、思わずカトレアが下車して来て蒼白になっている
「……一体、何の事です?それに貴方はあの時、才人殿に完敗したじゃないですか!」
「あぁ、あの時は調子が悪かった。何日も天幕暮らしで食事も苦労してね」
そう言って嘯くラ=ラメー
「嘘です!使用人迄、全員連れて居たじゃ無いですか!」
カトレアの剣幕に、自分自身の演技の方を優先する男はカトレアに近付いて、しゃがんで無理矢理手を取り、口付けした所をカトレアにパシッと払われた
「その顔も美しい。やはり僕の目に狂いは無い。聞いてくれ。僕は、死んだ父上を安心させたいのだ。ラ=ラメー伯爵領は此からも安泰だと、ヴァルハラの父上に報告したいのだ」
思わずカトレアは固まってしまう
「その為には、貴女が必要なのだ、カトレア嬢」
彼も、自らの誇りの元に生きている
だけど、心は彼には響かない
カトレアは悲しい顔で首を振ってしまった
「…私の恋は、貴方には注げません」
「…悲しいかな。でも、貴女を初めて見たのは10年前。僕はその時から、ずっと貴女だけに恋をして来た。あんな平民に何が出来る?奴の事なぞ、只の麻疹だ。僕が全てを注いで君を守って見せよう。平民に貴女は守れない。僕と共に来るんだ」
カトレアは意思を込めて、自分の前に膝を付いた姿勢を崩さないラ=ラメー伯に言い放った
「私は、命が短いからこそ、恋に殉じると決めたのです。貴方のモノにはなりません」
「あの平民、異国人でしょう?トリステインには殉じませんよ?」カトレアは思わず詰まってしまう
「イーヴァルディは、常に去るものと相場は決まっているのです。僕と一緒の方が、絶対に幸せになれる。短くてもいい、僕の妻になってくれ」
ぐらぐらと揺れてしまうカトレア
心に去来するのは、不安、不信、いつ死ぬか解らない自分と黒髪の男、沢山のライバル、めくるめく官能と、支えてくれた逞しい胸と腕、信じたい心と、帰る事を前提にした彼自身の行動
杖を思わず振りかざしたが、ラ=ラメー伯は微動だにせず、結局杖を下げてしまい、そのまま虚脱してダルシニとアミアスに支えられてしまう
「彼女をラ=ラメーに連れて行く。総員護衛しろ」
「「「ウィ」」」
返事をした部下達はそのまま馬車を取り囲み、アミアスはカトレアを心配げに見て、ダルシニはラ=ラメーを睨んだ
「イーヴァルディは絶対に来ます。必ずです」
ラ=ラメーはその言葉に余裕でいなした
「貴族同士の恋に、平民如きが何が出来る?」
「出来ます。絶対です」
「そこまで言うなら良いだろう、賭けだ。次の虚無の曜日にラ=ラメー伯領の教会で結婚式を挙げる。其までに取り返しに来い。ラ=ラメー伯軍がお相手する。命懸けで来ると良いさ。君はメッセンジャーとして残るが良い。結婚式が終わる迄、指一本触れぬ事を、杖に掛けて誓わせて貰うよ」
そう言って、ラ=ラメー伯は馬車事カトレアを連れて行ってしまい、ダルシニが残された
アミアスはカトレアのお付きとして、男達にカトレアを指一本も触れさせず、馬車に運び込んで窓にカーテンを掛けて周囲を遮った
ゴーレムの御者がメイジに操作されて踵を返して馬車が走り始め、ダルシニはその様を見送ったのである
そのままダルシニはぺたんと座り込んでしまった
「こ、怖かった。どうしよう?あの時反対しておけば……」
そのままよろよろと立ち上がって、屋敷に一人、とぼとぼと歩き出したのである

*  *  *


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