XX1-189
Last-modified: 2012-08-31 (金) 20:22:20 (4249d)
出征
ゼロ機関の事務担当にカトレアが入り、世話役にダルシニとアミアスが加わったが、ヴァリエールに帰るかどうかを問いかけた才人に対し、双子は首を振って返した
ダルシニは美味しいと理由で、アミアスは更に一つの理由だ
何か有った場合に素早く帰る算段だけはカトレアと共に取り付け、普段は三人はオストラントに常駐し、管理担当になった
オストラントなら水使いも居るし、問題発生時に素早く移動出来るからだ
ひとまず、ルイズの懸念した才人べったりではない為、ルイズも不承不承頷いた
そして才人達がグラモンでの砲身の加工具合を指導し、あっという間に一月が過ぎ、間に合わせ部分が多いがツェルプストー伯の新型艦に砲身と砲弾が届けられ、ギリギリだが間に合ったのだ
オストラントへの搭載は未だならずの状態で、才人はルイズと共に参戦の徒に就いたのである
その間に、才人はスコープの組み、調整を済ませ、自身と本部に一つずつ置いておいた
「ちぃっと間に合わなかったな」
「アレだけやれば充分じゃない?」
零戦の機内で荷物のチェックをしてたルイズが才人に返し、才人は首を捻って返す
「まぁ、魔法がなきゃ絶対無理な仕事量だったのは疑い無いけど」
「さっさと行くわよ、犬」
「わん」
才人はそう返して、既に回してたエンジンの回転を上げブレーキを解除して離陸していった
その様を見送ったエレオノールは、聖具の象に腕を切り、そのまま祈りを捧げる
横で、シエスタが両手を合わせて祈りを捧げ、コルベールはその様子を感慨深く見ていた
既に新年の降臨祭迄後一月、アルビオンとトリステインゲルマニア同盟が、お互いに知略と策謀と武力の全力をぶつける戦気が高まっており、頂点に達しようとしていた
アルビオンは防衛側になり、今回地の利が初めて活かせる状況で、士気自体は非常に高いが新兵と老朽艦ばかり
対してトリステインゲルマニア同盟側は新兵器が対して間に合わず、総合的な空戦力ではアルビオンより下、これは当初に矢面に立つと言ったトリステイン側の主張に合わせ、ゲルマニアが兵を約束通り減らした結果であるが、それでも総兵力は20万を越える大軍であり、常に補給の懸念が付きまとうし、兵の内情はアルビオンと一緒で似たり寄ったり
一日60万食、一週間で480万食、一月で1320万食である
アルビオンとしては、縦深陣を引いた上にのらりくらりと防衛すれば補給が破綻するので事は済む
これがアルビオンの強大さの理由だった
矢面に立つのは、トリステイン96門型戦列艦40隻に新型竜母二隻、ゲルマニア新型駆逐艦9隻、トリステイン竜騎士60騎(内20騎傭兵、ゲルマニア志願騎士含む)、そして陸戦部隊と補給を司る輸送艦が多数
対するアルビオンはスタンダード30隻にロイヤルソブリン級3隻、竜騎士150騎だ
スタンダードの老朽艦が非常に多いが、竜騎士が補って余りある為に、砲艦に力を入れなかったのが実状で、竜騎士の働きが戦場を左右すると言って良い
艦は、航空兵力の前には無力をアルビオンは徹底的に理解している証拠と言える
対するトリステインは、新型艦の運用に四苦八苦しており、とてもじゃないが最前線に投入出来る状態ではなく、一歩引いた後方から動く様に艦を動かすしか出来ない状態で、ある意味空母の運用を体得し始めていた
才人操る零戦はオストラントの同型艦を見てニヤリとすると、発光信号が発せられ、ルイズがマニュアル片手に着陸艦を示して着陸し、艦内に収容されるとスタッフ達と腕を組んだ
「久し振り!」
「おぅ!さっさと指令部に行ってくれ。武装は?」
「対空誘導弾を頼む」「了解した」
才人がそう言ってルイズと共に指令部に行くと、指令部では既に人員が揃っていた
「遅くなりました」
「お待ちしておりました、ゼロ機関所長。此方はゲルマニアのハルデンベルグ侯。ゲルマニア側の司令です。そして此方が帰順をしたボーウッド客員提督。いや、ボーウッド提督です」
「ほぅ、貴方が噂の…」
「ふむ……平民か」
ボーウッド提督とは素直に握手を交わした才人だが、ハルデンベルグ候のカイゼル髭をしごいて角付き兜を被った毛むくじゃらの姿と握手した瞬間、思わず口にしてしまった
「バイキング?」
「ちょっと才人。何でゲルマニア北部の古い部族の事知ってるのよ?」
「もしかして懐古趣味の人?」
ルイズにひそひそ話をすると、ルイズが頷いて、あからさまにハルデンベルグ候が頬をひくつかせており、ルイズの婉曲な指摘に機嫌を悪くした様だ
「バイキングは我が先祖だ。侮辱は止めて貰おうか」
「おっと、コイツは失礼。何分異国人で此方の世俗には疎いもんで。でも兜は戦闘中以外は止めた方が良いよ。禿げる」
才人がそう言って、自身の頭頂部を指してくるくる回すと、更に頬をひくつかせるハルデンベルグ候
「…だから侮辱か?」
「いやいや、親切心なんですけど?俺の本業もハゲに苦しんでてねぇ。若い身空でなって来て、皆溜め息付いててさ」
「なんと!?」
「あ、やっぱりか。ハゲは嫌だよね、ハゲは」
うんうん頷いてる才人に、ハルデンベルグ候は思わず苦笑している
「まぁ、世間話はそこまでにして下さい。では今回の作戦を説明します」
そう言って、ウィンプフェンは説明し出した
今回攻めるポイントは二つ、軍港設備のあるロサイスか、民間港のダータルネスだ
民間港のダータルネスより、港湾の設備がロサイスの方が整っている為にロサイス側を攻めたいが、上陸部隊を無傷で降ろすには、敵地上部隊の迎撃を無しにしなければならない
その為には一日、ダータルネスに敵地上部隊を惹き付けなければならない
何か知恵は無いかと才人は尋ねられ、才人は
「無いよ。空爆で地上部隊壊滅させる位だな。出来る分量持って来たでしょう?」
「ロサイスで迎撃したら港湾迄壊滅してしまう。此方は20万も居ます。我々が使えないから却下ですな」
「じゃ、お手上げ。魔法に任せる」
才人はあっさり匙を投げた
自分自身の限界をはっきり自覚しているが為に、その点に付いて才人はあっさりしている
その為、他から見たら非常にムカついて見える訳だ
嫌われる原因だし、更に余計な言葉を放った
「ゲルマニアが艦隊出せば事は済んでない?何で封鎖作戦時の艦隊差し向けないんだ?」
「…政治的判断と言う奴だ。我々軍人は、与えられた兵力で何とかするしかない」
苦々しくハルデンベルグ候が吐き捨て、才人もピンと来た
「ゲルマニアも随分やり手の様で。全く上手いねぇ」
「…では、ミスゼロ。貴女の虚無の魔法で何とかなりませんか?」
「何とか使える魔法を探してみます」
ウィンプフェンの問いにルイズが答え、ウィンプフェンが頷いた
「頼みますぞ。出撃は明日の早朝です」
* * *
アルビオンではトリステイン出征の報を受け、にわかに沸き立って居たが、その中でホレイショに呼ばれた二人の武人が命令書を見せられて、身体を震わせていた
盲目のメンヌヴィルには、ホレイショが口頭で伝えている
「…どういう事だ司令」
「ふざけるな貴様。派手な正面決戦で我々を外すだと?今まで散々にマンティコア隊に煮え湯を飲まされて来たにも関わらず、この大一番で我々を外す?燃やされたいのか?」
「しょうがないでしょう?僕だって卿らに外れて貰いたくない。ですが、他の任務に君達が必要と言われてしまったんですよ。総司令の命令なんです。逆らえません」
艦隊司令のホレイショに詰め寄る二人に対し、ホレイショもほとほと困り顔をしている
正面決戦時こそ必要なのに、このタイミングで引き抜かれるとはホレイショも想定外だったのだ
「ホレイショ殿は反対なのだな?」
「当然です。正面戦力に貴方達が居ないとなると、戦力が大幅にダウンする。勝てる戦に勝てなくなります」
「ならば、我々がクロムウェル殿に取り成そう」
ワルドの言に、ホレイショは頷いた
「当てにしないで待ってます。風竜で行って来ればすぐでしょう。頼みます」
「行くぞワルド。今回ばかりは従えん。納得出来なきゃ燃やしてやる」
「…あぁ」
激昂したメンヌヴィルは先に飛び出し、ワルドは続いて足早に去った
* * *
首都ロンディニウムのクロムウェルの居城に二人は入城すると、命令書を衛兵に突き付けて脇目も振らずにクロムウェルの執務室に入室した
但し、扉をメンヌヴィルのブレイドで焼き尽くしながら鉄棍で破壊するといった荒業で、中ではクロムウェルが難しい顔をしながら、机の下の女相手に腰を振っている何時もの光景が繰り広げられていた
「此方も忙しい。何だ?」
「何だではない。呼び出したのはそちらだろうが!」
メンヌヴィルが今にも躍り掛かろうとした為に、ワルドが割って入る
「落ち着けメンヌヴィル。お前の気持ちも解るが、命令の中身を聞いてからでも遅くない」
「…良いだろう」
メンヌヴィルが引いた為に、ワルドが切り出した
互いに何度も同じ死線を潜り抜けた為に、戦友としての連帯が出来ていた
「総司令。今回の引き抜きに付いて、どんな理由かを説明願いたい」
「……あぁ、その事か。正面決戦時の戦火を隠れ蓑にして、トリスタニアを二人に襲撃して欲しい」
あっさり言ったクロムウェルに、二人が愕然として言葉に詰まった
「馬鹿な。そんな事が出来るなら、今まで何の苦労をして来たと言うのだ?」
「同感」
メンヌヴィルが短く同意を示し、クロムウェルはニタリと爬虫類を思わせる笑みを浮かべて応じた
「そう、それだ。貴卿らの奮迅の活躍を以てしても抜けなかった。此処が重要だ。だからこそ、今回はあっさり通過出来るのだよ」
「どういう事だ?」
メンヌヴィルが聞くと、クロムウェルは話し出す
「何、トリステインの哨戒網を知るワルド子爵に水先案内して貰って、ステルス艦を使ってオークとトロルとメンヌヴィル隊をトリステインに輸送し、トリスタニアで降ろして暴れて貰う。その際、メンヌヴィル隊にはトリステイン魔法学院を占領して貰いたい」
ワルドとメンヌヴィルは二の句が告げずに黙っている
まさか、自分達がずっと陽動を知らずに仕掛けていたと知らされ、何も言えなくなってしまったのだ
「封鎖突破失敗すら、算段の内……だと言うのか?」
メンヌヴィルの問いに、クロムウェルは首を振って答えた
「いや?突破出来た方が万々歳だった。お陰で金も鉄も火薬もすっかり無くなった。出来れば、この手は使いたくなかったが、転ばぬ先の杖と云う訳だ。ステルス艦はずっと前に建造していたが、先頃やっと配備が出来たのだよ。不可視の布の生産に四苦八苦してて、中々進まなかったがね」
「…そうか」
メンヌヴィルはそう言うので精一杯だ
「で、暴れるだけで良いのか?」
ワルドが聞くと、クロムウェルは頷いた
「あぁ、効果的なタイミングで最前線にばらせば士気を挫ける。そうすれば、後は平らげるだけだ。しかもその壊乱をトリスタニアに報せればトリスタニアすら壊乱する。その様を中立と称して、虎視眈々と機会を狙ってるガリアはどう出る?」
クロムウェルの言葉に二人は大きく頷いた
「質問は以上か?」
二人は踵を揃えて敬礼し、無言で対応した
「ホレイショとホーキンスだけには報せておけ。奴らも納得出来れば、引き所と踏ん張り所を見極めるだろう」
「サー・イエス・サー」
ワルドはアルビオン式で応答し、少なくとも、自身の選択が正しかったと自信を持ち、メンヌヴィルは宣った
「次も契約の更新は願えるか?アンタなら、面白く焼ける事態を作って貰えそうだ」
「此方こそ願えるかな?メンヌヴィル殿」
「当然」
二人は踵を返し、意気揚々と歩いて去って行った
* * *
ルイズは貴賓室で一人唸りながら、祈祷書を捲りながら溜め息を付いていた
才人は風呂に入っている
「う〜ん、あぁは言ったけど、どんな魔法が有るか、あたしも知らないのに」
ルイズは既に風呂上がりで、食事も済ませているが、悩みの声が延々と部屋に木霊している
ガチャ
才人がタオルで頭を拭きながら入って来た
「何か浮かんだか?」
「あぁもう、ちっとも分かんない!サイトならどう誘う?」
才人に振り返って聞くルイズに才人も首を捻って答えた
「俺、軍人じゃねぇからなぁ。まぁ、あれだ。本土防衛の為に敵に対抗せにゃならないんだから、軍勢に向かうのがアルビオン軍の基本姿勢だから……」
才人の言葉にうんうん頷いて真剣に聴くルイズ
大抵の事には常に答える、使い魔の思考の端には常にヒントが含まれている。一言も聴き逃すまいと真剣だ
才人はルイズに近寄ってルイズをひょいっと抱えると、自身はベッドにとすんと座ってルイズを膝の上に乗せ、ルイズは顔を赤くしたが逆らわない
そのまま、ルイズの髪を弄くりながら才人は更に思考の糸を紡ぐ
声は思考の呟きの為に小さく、ルイズが聴きやすい様に抱えたのにルイズも気付く
「まぁ、此方の手勢も正面戦力は限定されてんだから、集中しなきゃ各個撃破の対象になる。だから、軍令自体は間違ってない、と思う」
ローブ一つのルイズは、才人の呟きにつれて耳に掛かる息に反応して身動ぎする自分の動きで、自身のローブが少しずつはだけて行ってるのには関心を示してない
「ま、陽動すんなら囮を用意するな。囮は張りぼてで構わない。遠目でそれと見えれば良い」
「囮……かぁ」
「全く、攻める方は守る方より戦力が必要ってのは本当だな」
才人が締めるとルイズはとんと降りて、ルビーを填めてパラパラと捲ると、祈祷書に一文が載ったページが出現していた
「初歩の初歩、イリュージョン(幻影)」
ルイズは机の上に置いていた杖を握ってルーンを軽く唱えてすぐに振ると、自分と才人の幻影が部屋の中に現れた
「サイト、囮、出来た!出来たよサイト!」
「…いや、びっくりだ。スゲーなルイズ」
ルイズがぴょんぴょん跳ねてはしゃぐ姿に、才人は本当に驚いて幻影を見ていたが、幻影が行動を始めたのを思わず見てしまう
そう、幻影の才人がルイズをキスをしながら脱がし、幻影のルイズはぽうっとしながら受け入れ、目の前で始めてしまったのだ
ルイズはきょとんとしながら真っ赤になり、慌ててページを読み直しする
「心に強く思い描いたものを投影す。想いが強ければ、詠唱者は空をも作りだすだろうって、ええええ!?」
「……へぇ」
才人の言葉にルイズは真っ赤になり、慌てて言い繕った
「ち、違うの!違うの!ねぇ、違うったら違うの!サイトちょっと聞いてよ!」
杖を離せば良いのをすっかり失念しているルイズ。才人はニヤニヤしながら鑑賞し
「成る程成る程。娘っ子の想いは随分強いんだぁね」
デルフが出て来てカタカタ笑い出した
なんせ、股を開いて才人に両手を広げて受け入れ、才人が応じると本当に嬉しそうに才人に組み敷かれている
「だ〜か〜ら〜違うのったら違う〜〜!」
顔を真っ赤にして怒鳴るルイズに才人が近寄って、ルイズが握り締めた杖を左手で持つと、右手で硬く握り締めたルイズの右手を剥がしていって幻影が消える
「…あっ」
「虚無は魔力と精神力を大量に消耗すんだろ?休むぞ」
「うん」
それから何を思ったか、ルイズは荷物の方に歩み寄り、ごそごそし出すと一つ取り出し、才人に歩み寄ると差し出した
「あげる」
「コイツは……セーター?」
「うん」
ルイズは才人が寒さに耐えられる様に、初夏からやって来たセーターを差し出した
モンモランシーの指導により、何とか着れる様になっている
「ルイズの手編み?」
「うん」
「有り難う。実は、零戦の中はかなり寒かった。本当に助かるよ」
才人の言葉にニコッてするルイズ
「ルイズは寒く無いのか?」
「あたしを暖めるのはあんたの仕事よ、犬」
「イエス、マイロード」
才人はその言葉にルイズを抱き抱えると、同じベッドで小さな身体のルイズにお互いにローブをはだけて肌を合わせると、ルイズは才人の腕枕と匂いに包まれてストンと寝入り、ルイズの寝息につられて才人も意識を手放した
* * *
ロサイス近郊に陣を張られた亜人達の陣地
そこに近付く物好きは居ない
すえた悪臭と獣臭が漂うが、アルビオンの大地に流れる風が常に臭いを散らしており、白の国の大地は、彼らが生活が出来うる恵みをもたらしている
そんな彼らが人間に手を貸すには、それなりの理由がある
その理由が陣の中では繰り広げられていた
中ではオークが人間の女相手に腰を振っており、女の乳房にはオークの子供が吸い付いていて、若いオーク達は体格の大きい成体のオーク達が女を独占している為、彼らが仕事で出張る間しか女が回って来ない
「ピギッピギッ」「きゃははははは」
気の触れた笑い声が陣に木霊していて、笑い声を発しているのは人間の女達だ
手足が欠けている者も多く、身体はすっかり汚れ糞尿に濡れている者が大半だ
臭いに麻痺したのも理由だが、全裸の為に防寒目的で自ら塗りたくって寒さを凌いでいる
乾けば、糞尿の臭いはそうは酷くならない
湿気が雑菌を増やし、悪臭の元になる
彼女達は、生きる為にオークに犯されなければならなかった
寒い身体を暖めてくれるのはオークだけだ
オークが興味を失せた女は凍死するだけであり、転がってた死体に若いオークが挿入していたが、暫くすると肉を千切って食べ出し、他のオーク達も集まって来て綺麗に骨まで喰われてしまった
明日は我が身、彼女達はオーク達に必死に媚びた
一体でも多くの興味を引かなければ死ぬだけだ。そう、彼女達はすっかりオークの雌になっていた
人間として生きていた頃の栄誉、教養、清潔、恋、家族、全ては壊れた心と共に喪われ、オークを見たら尻を振り、勃起したオークが居たら自ら跨がり繋がった
オーク達も少しは寒いのか、人間用の天幕を幾つか仕入れて雑魚寝していて、そんな中に入れたら万々歳だ
オークは分厚い脂肪に鎧われ、人間より強力な筋肉が熱を維持する為、寒暖に非常に強い為に薄着や全裸でも平気である
脂肪を蓄えているのは伊達ではないのだ
「オーク様、オークさまぁ、あは、あったかぁい」
前後からオークの欲望に貫かれた女がオークの肉に挟まれて暖を取っている
そんなオークの陣に人間が入って来た
「戦える連中は全員仕事だ。来い。新しい雌が手に入るぞ」
「ピギッピギッ」
女達を犯してた成体がぞろぞろと動き、まだ若くて戦うには成長が足りない若雄と子供が残された
大量に居た成体が一気に居なくなった為に、がらんどうになって寒くなる
すると、女達は若い雄に擦り寄った
「ほぅら、大人が仕事で出て行ったよ。今の内に楽しもうねぇ」
そう言った女が若雄の股間に蹲り、そのまま舐め出した
皮を唇で剥いて露出させると、そのまま尻を向けて勃起したモノを挿入した
「ピィッ!!」
まだまだ若い個体が挿入して直ぐに射精し、女に被さって震え、また少し腰を振っては震える
「あはは、良い子だねオーク様。流石私の子だ。そうだよ、私はアンタの雌であって食べ物じゃないからね」
そう言った女をオークがひっくり返して正面を向けると、女は両手両足で抱き締めた
まだまだ若いオークには効果覿面の抱き着きで、オークはそのまま涎を垂らしながらもまた腰を振っては痙攣を繰り返し、女からは決して離れない
彼らが満足する前に離れるのは、気分を害する危険な行動だからだ
一体でも多く自分を気に入って貰えた場合、オーク同士の喧嘩の際に守ってくれるオークが増える事に繋がる
自分が産んだ子が一番調教しやすいのだ
そして子供とは言え、人間より遥かに力は強い
そんなオークが繋がったまま立ち上がり、糧食用に搬入されていた羊に寄り、一頭の頭を握ると無造作に螺切った
メェメェ鳴いていた羊達が何とか逃げようとしていたが無視し、そのまま腹に指を差し込んで何かを掴んで取り、抱いていた女の口に差し出した
「あら、肝くれるのかい?優しいねぇ」
そう言った女はそのまま肝臓をかじり、食べ始めた
肝臓はビタミン類が豊富な栄養食であり、絞めた直後なら人間でも問題無く生で食える
肉食獣やオーク達も経験則で知っており、先ず内蔵から喰う
肝臓をあげるのは、オーク流のプレゼントだろう
そのまま、女を組み敷いたまま腰を振りつつ羊を解体しながら食べ、わざと喰いカスを女の上に落としつつ射精し、女は腰を振りながら血の滴る肉を喰い、ひたすら腹が減る妊娠に備えた
彼女達に人間の暮らしは過去の話だ
* * *
サー=ヘンリー=ボーウッドは自身の旗艦に戻ると、先程会った噂の人物の事を反芻していた
曰く、あのゼッザールに勝てる逸材
曰く、女王アンリエッタのお気に入り
曰く、マザリーニも認める内政手腕を持つ
曰く、異国の新兵器や新技術の専門家であり、ゼロ級の設計製作者
曰く、実際に相対したあの魔法兵器の使い手
「あれで平民か……貴族の大部分より優れているな。目立ち過ぎだ。本人も自覚している様だが……。さて、近衛は彼を全面支持していたな」
ある意味、外様の自分とは似た境遇では有るが、同時に自分と違い、絶対に受け入れられない壁が有るのも事実
「平民でなければ、話はもう少し楽だろうに……。ま、今は目の前のアルビオンだ。あの男の評価が固まるのは戦後だな」
明朝以降に予定される衝突に備え、ボーウッドは魔法ランプの灯りを消し、部屋に暗幕が降りた
* * *