花見?  191の者氏


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「……う、う…だぁ〜〜我慢できねぇ!!」
「な、なんだい突然に」

フェオの月、いつものように水精霊騎士隊が広場で訓練を始めようとした矢先サイトが咆哮し、横にいたギーシュを驚かせる。

「だってよ、もう一年だぜ?俺は一年もクニを離れてるんだ。
 いい加減、故郷の空気を吸いたくもなるってんだ」
「そ、そうか、確か君はロバ・アル・カリイエ出身だったな。
 僕はてっきりルイズとあのメイドにお預けでもく…ゴアッ!」
余計な気を回す隊長に反逆行為を加える副隊長であったが隊員たちは慣れたものである。

「二人ともよく飽きないよなぁ」「でも今回は溺れたりボロ雑巾にならずに済みそうだね」
「今度こそは絶対来ると思ったんだけどなぁ」

勝手な事を云いつつレイナールの差し出す袋に銅貨や銀貨を入れていく。
「しっかし毎度毎度よく当てるよな、脱帽だわ」
豪快に笑いつつギムリが新金貨を放ってよこす。
「ちょっと観察してみればわかることさ。でも判らないでいてくれたほうが騎士隊としては備えができていいんだがね」
《騎士隊雑費》と書かれた袋の口を結びつつレイナールが笑う。

彼らは自分たちの上司がふざけだした場合のオチについて賭けていたのである。
即ち、両者が飽きて止めるか、彼らの相手が制裁することでお開きになるかを。

さて話を上司たちに戻せば、彼らはまた会話に戻っていた。
「だいたい、故郷の空気というが具体的には何を指すんだい?」
そう問いかけるギーシュに真顔のサイトが答える。

「花見」


「花見?花を見たいならそこらじゅうに咲いてるんだから
 いくらでも見ればいいじゃないか」
ギーシュが不思議そうに返す

「違うんだよ。俺の欲してる花見ってのはな《サクラ》っていうピンク色の花をつける木じゃないとダメなんだ。
 でもって只、見るだけじゃない。花を咲かせた木の下で弁当とか酒を持ち寄ってみんなで楽しく飲み食いするんだ。
 《サクラ》じゃなきゃダメなんだ!旨い弁当や酒がなくちゃダメなんだぁ!!」

「そ、そうか。要するに季節の花を肴に宴会をする、のが君の故郷の花見なんだな」
「でも僕たちにそんな宴をするほどの余裕は……」
鬼気迫るサイトの説明にたじろぎつつもギーシュが合いの手をうつ。と、いつの間にか周りに集まっていた隊員たちの中からマリコルヌが進み出る。手には《雑費》と書かれた袋が握られている。
必死に取り返そうとするレイナールをギムリ達が抑え込むなか、朗らかに提案する。
「軍資金ならここにあるじゃないか」
「ま、待て!それはもっと重大な事態に遭遇した時のために!」

「隊員の士気が落ち込んでいるというこの時期に使わずして何のための金か!そうだろ、みんな!」
制止の言葉を遮り皆に問うマリコルヌに同意の拍手が贈られる。

そうと決まれば動きが早いのが水精霊騎士である。
マルトーの親父さんにサイトをダシに料理を分けてもらい、めいめい秘蔵のワインなど持ちだして来る。
会場となったのは例の如くにゼロ戦の格納庫兼騎士隊宴会場となっている小屋の前である。

サイトの希望する《サクラ》に近いイメージにするためにギーシュを筆頭に土系統のメイジたちがヴェルダンデの掘り起こした土山を錬金しかたどっていく。

準備万端、いざ花見とはいっても隊員にとってはいつもの馬鹿騒ぎと変わりはないのだが…。
途中、マルトーから聞きつけたシエスタが乱入したことが間違いの元であった。
最初こそ「これがサクラなんですねぇ。おじいちゃんもよく言ってました、もう一度見たいって。
 あいつらとまた飲めたらなぁ、って。タルブにはあんなにきれいな花畑があるのに満足できなかった理由が
 わかる様な気がします。ちょっぴり、だけですけど」
クスッと笑いつつサイトに寄り添う姿はなかなかに絵になっていた、故に場にそぐわぬオーラを纏うものが現れるのも世界の理であったのだろう。
格納庫前にきれいなクレーターを作り上げ、気絶した者たちの中から己が使い魔を引き摺り出す。
しっかとしがみついたまま気絶している邪魔なメイドを引っぺがし、サイトだけを部屋に運び込む。


使い魔のご主人さまは聞いていたのである。
構ってくれない使い魔に何か構ってもらえる材料はないかと。

そして格好のお題を聞いたのだ。「花見がしたい」

「花見」ってなんだろうと詳しく聞こうとするが相手は遮蔽物の無い広場にいるためそう近づけない。
さらに間の悪いことに騎士隊の連中が周りに集まってしまって一層聞き取りづらくなってしまった。

切れ切れにサイトの声が聞こえてくる。
「花見・てのは……って…ピンク…花びら………を見ながら……酒を飲んだり…」

そこまで聞いたところで人の気配を感じ、盗み聞きを見つかっては貴族の恥と退却せざるを得なかった。

そのうち騎士隊連中が恒例の馬鹿騒ぎを始めたが、その中に使い魔と使い魔に寄り添うメイドを視野に捕えてしまい気づけば宴会の声はすでになく気絶した者たちが死屍累々となっていたのである。

―しょうがないわよね、真昼間から騒ぐ連中が悪いんだもん。ご主人さま差し置いてメイド侍らしてるコイツが悪いのよ。そうよ、私はちゃんと躾ける義務があるんだもん。ごごごご主人さまとして当然よね―

などと半分煮えながら部屋にサイトを回収し鍵をかける。
ベッドにサイトをどうにか運び上げるとワインの瓶を片手に自分もベッドにあがる。

「ピ、ピピピンクのは、は花びら見ながら、ののの飲みたいだなんてそんな贅沢滅多にないんだからね。
 わわわたしはしたくないんだから。ごご御主人様としてのぎ義務で仕方なくなんだからね…」

などと呟きつつスカートを脱ぎ、パンツを脱ぎサイトの枕もとに座り込み……

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と、ここまでは受信したのですが続きはノイズばかりでした。
発信者は続きプリーズw


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