才人が来てから数日が経ち、多少は慣れて来た
今日の授業はコルベール
コルベールは箱にふいごを付けた者を教壇に置き、ふいごを数回動かした後、才人からは指揮棒に見えた物をある穴に入れると音がなり、箱から玩具の蛇が出たり入ったり始める
あれが魔法使いの杖だと、才人はここ数日の経験で認識していた
「これが愉快な蛇君です」
「それが何の役に立つんですか?」
「そんなの、魔法を使えば良いじゃないですか」
生徒の評判は悪い
才人は、それが自立して動く様を見た瞬間、思わず立ち上がりながら叫んだ
「スゲー、エンジンだ」
周りの視線が集まる、その中の殆どは、平民が馬鹿な事言い始めたと視線が語っている
その中に興味深い視線を送ったのは三人、コルベール、キュルケ、後一人は、視線を本に戻した為、才人は気付かない
「まさか、エンジンが見れるとはなぁ。コルベール先生でしたっけ?発言して良いですか?」
「使い魔の発言自体、前代未聞だが、言ってみなさい」
「余計な事しないで」
ルイズが小声で言うが、それに肩を叩くだけで、教壇に向かい皆に向きなおる
「この玩具が、何の役に立つかって聞いた奴居るよな?」
「あぁ、言った」
「これ自体は確かに玩具だ、だけどこれを動かしてる原理は結構応用が効いてね。一つ聞くけど、魔法で光が届かない海の底や、星々の海に浮かぶ月に行けるのかな?」
「無理だな」
コルベールが即答する
「この原理を発展させると、今言った星々の海に浮かぶ月や、光すら届かない海の底にも、行ける様になるんだよ」
コルベールだけがそれに目を輝かせるが
「嘘付け」
「ゼロのルイズの使い魔は、ほらも大したもんだ」
「事実だよ、俺が住んで国は其をやっていたからね」
「口では何とでも言えるって」
「そうだ、そうだ」
ブーイングの嵐にも関わらず、コルベールだけが才人に話かけた
「使い魔君」
「才人です、平賀才人」
「才人君、今の話は本当かね?」
「勿論」
「放課後にでも、詳しく話を聞かせてくれないかね?」
「良いですよ」
「では放課後、私の研究室に来てくれたまえ」
「解りました」
その中、ルイズが唇を噛み締めてるのを、才人は見逃さなかった

放課後、才人とルイズは、コルベールの研究室に向かう途中
「何であんな事したのよ?」
「コルベール先生の授業の事かい?」
「そうよ」
「何言ってるんだ?独力でエンジンの原理を発明し、更に製作迄してるんだぜ。職人としても研究者としても、本当に凄い先生じゃないか。ああいう先生好きだぜ、俺」
「でも、あんた迄・・・」
「周りの連中には言わせとけ。あれの素晴らしさが解らん魔法が使えるだけの貴族なんざ屑だ」
一人がその言葉に立ち止まる
「ちょっと、言い過ぎよ」
「言い過ぎなもんか。大体魔法が使えるだけで威張り過ぎなんだよ。ルイズだって魔法が上手く使えないからって萎縮すんな。魔法が使えなくてもルイズはルイズだろ」
「でも、此処は魔法学院」
「良いから、ルイズは魔法に成功してる。だから自信を持て」
「成功なんてしてない!!」
ルイズの両肩に手を乗せこちらに向かせ、顔を捉える
「今、お前の前に居るのは誰だ?生意気だけど、可愛いご主人様を守る、ちょっと身勝手な使い魔だ。きちんと魔法成功してるだろ?他の屑なんざ放っておけ」
ぼんっ!!
ルイズから音がなり
耳迄真っ赤になる
才人はそれを見て逆に心配し始めた
「大丈夫か?ルイズ、風邪でもひいたか?」
「な、何でも無いわよ、馬鹿犬」
「でも見るからに体温上がってるだろ?」
額に手をやり、熱くなってるのを確認する
「ちょちょちょっと、休憩してから行くから、あんた先に行ってなさい」
才人はルイズのおでこに額をちょこんとくっつける
「随分熱あるな?あれ?更に上がったか?」
「いいい良いから離れなさい馬鹿犬。ややや休めば、だだ大丈夫だから先行ってなさい」
「辛いなら部屋に戻れよ」
「大丈夫だから心配しないで(不意打ち過ぎよ馬鹿)」
才人が先に行くと、何処からか黒髪のメイドが彼にくっついて話かけるのを見かけ、別の意味で更に血が昇る
「ああああたしの前で他の女といちゃつくなんて」
才人自身は何もせず、メイドからくっついているのは目に入らない様だ
才人に別の生徒が話かけるのが見える
「其処の使い魔、さっき聞き捨てならない言葉を聞いたんだが、もう一度言ってくれないか」
「何の事だい?女足らし」
「君も中々の様だがね。確か貴族なんぞ屑って聞こえたんだが、もう一度言ってくれないか?」
「何度でも言ってやるよ。貴族なんざ屑だ。魔法が使えるだけじゃねぇか」
「あの、才人さん、謝った方が」
「訂正したまえ」
「やだね」
「僕としては訂正すれば穏便に済ませる積もりだったが、召喚時の分もあるし、軍人たる父と兄の名誉を汚されては仕方ない、決闘だ。逃げたりしないね?」
「ああ、構わんぜ。場所は?」
「ヴェストリの広場で待ってる」
「解った」
側を見るとシエスタは既に居なくなってて、代わりにルイズが立っている
「ちょっとギーシュ、決闘は禁止されてるでしょ?」
「貴族同士の決闘が禁止されてるんであって、貴族と平民の決闘は禁止されておらんよ」
「ちょっとあんた、謝っちゃいなさいよ」
「嫌だ、それよりヴェストリの広場は何処だい?」
「あんた、死ぬわよ?」
「死ぬかもしれないのは、仕事で慣れてるよ。ヴェストリの広場は?」
「こっちだ、平民。付いてきな」
「解った」
才人はそのまま案内役に付いて行く
「もう、使い魔の癖に言う事聞かないで、勝手な事ばかりするんだから」
広場に着くと、物見高い生徒達が多数集まっている
「さて、使い魔」
「才人、平賀才人だよ」
「僕は青銅のギーシュ、ギーシュ=ド=グラモン」
薔薇の造化が杖らしい。そこから花びらが一枚落ちて、青銅の彫像が現れる
「何!?」
「僕はメイジだ、メイジが魔法で戦う、文句は無かろう」
だが、その後の行動はギーシュの予想を裏切った
「スゲー!!魔法スゲー、ちょっと良く見せて」
いつの間にか彫像に近寄り、細部を色々観察し始めた才人
「うぉ、この細工凝ってる、何この繊細さ」
「鎧部分もスゲー綺麗だな」
「正に戦う乙女だな。ギーシュスゲー、こういう細工って難しいの?ってか必要?」
「嫌、本来はゴーレム造る際は、そんな部分に迄注力したりしないんだけど、戦闘力としては変わらない上に魔力を余分に消耗するし」
つい才人の質問に答える
「それを敢えてやるのか、ギーシュは凄いんだな」
手放しでの賞賛につい顔が綻んでしまい
「才人だったね?君程、僕のワルキューレを誉めてくれた人は居ないよ。今からでも遅くないから、先程の発言訂正すれば決闘を辞めにして、出来ればその・・・ゆ」
「それとこれとは話は別」
ギーシュは心底哀しい顔をする
「残念だよ、才人。いくよ」
「あぁ」
ギーシュのワルキューレが才人に襲いかかる
才人は回避しようとするが失敗し、打点をずらした状態では有るが顎に貰ってしまう
「痛ぅ、流石銅製だ、重い。速さは人と同じ位か。ってぇと、銅で人型か・・・」
思考をまとめ、決断し、一気に詰める
狙うは膝関節、銅なら全体重を掛ければ曲がる筈
ワルキューレの攻撃をサイドステップでかわし、膝関節に全力で横から蹴りを放つ
ごいん
鈍い音がし脚がしびれる
「どうだ?」
「へぇ、驚いた」
ギーシュがそう言った矢先にワルキューレの右脚が微妙に曲がり、歩行の反応が悪くなり、脚がもつれて自重で倒れる
もう起き上がれないだろう
「これで後はギーシュだけだな」
才人は脚を踏む度に激痛が走る
骨にヒビか折れてしまったのだろう
脂汗をかきつつ、ギーシュを睨む
「誰が一体だけと言ったんだい?」
「何だと!?」
ギーシュが更にワルキューレを造り出す
これには才人も唖然とする
「平民にしては良くやったかな。ではこちらの番」
ワルキューレが詰め寄り才人を殴り飛ばす
両手を顔の前で十字にするクロスガード
しかしガードした右腕から鈍い音がする
「ぐぁっ!?」
続けてワルキューレが攻める
肋骨が折れ、あちこちに裂傷が出来、片目は腫れて前も良く見えない
それでも才人は立っていた
「もう止めてギーシュ、決着はついたでしょ!!」
ルイズが叫ぶがギーシュは聞かない
「ルイズ、才人はそんな事は望んでないよ。だから僕は、貴族の誇りを掛けて最後迄相手をする。結果がどうなろうとだ」
才人はそれを聞いてニヤリと口だけを動かし、ボロボロの身体をギーシュに向けて歩き出す
それを見たギーシュは剣を造り出し才人の前に投げつける
「君は素晴らしいよ、才人。でもこのままじゃ君に勝ち目は無い。剣は貴族に歯向かう平民達の牙だろう、それを取りたまえ。何、気にする事は無い、君は今迄素手でやってたんだ、例え今取った所で、誰にも文句は言わせない」
「ボロボロの状態からなら、最初から渡しなさいよ」
「ルイズは黙ってろ」
才人が怒鳴る。ギーシュはそれを見て顔を綻ばせる
「さぁ、来たまえ」
才人は一瞬悩むが剣を取る
どうせ、取った所で使えないから意味無いだろうと
そして左手で剣を握った瞬間にそれは起きた
身体が軽くなる、痛みが引く訳では無いが無視出来る
左手のルーンが光るのを才人は気付かない
そして、常人に有り得ない速度でワルキューレに詰め寄り一閃
ワルキューレが両断される
「何!?」
ギーシュが慌ててワルキューレを数体造り出すが、それも才人の突進を阻む術にはなりえない
才人がワルキューレ達を仕留める間に、盾として最後の一体を造り出すが、それすらも両断される
そして折れた右腕でギーシュの顔を掴みそのまま押し倒し、馬乗りになりながらギーシュの顔の右側に剣を突き立てる
「続けるか?」
「ま、参った」
先程は冷や汗で顔を青くしたギーシュは、何故か顔を赤らめながら
「君は凄いな、あの、さっき言った件考えてくれないかな」
「もう平民とは言わないからさ、僕が謝るよ」
徐々に才人の顔が近づいて来て、ギーシュの顔が更に赤くなる
「え〜と、今は君の治療のが優先だろう、だからその、そういうのはまた今度に、ね」
「……」
「さ、才人待ってくれ、僕も二人きりなら吝かでは無いが、今はほら、他の皆が見てるから、だから駄目だって」
「……」
「だ、駄目、才人らめ、お嫁に行けなくなっちゃう!!」
ギーシュが叫ぶと同時に、才人がギーシュに覆い被さる
「皆見てるのにぃ〜〜〜!!」
「……」
「あ、あれ?才人?」
「……」
「気絶してるわよ」
モンモランシーが近づいて、診察を行いながらギーシュに冷たい目線を送る
「サイト!!」
ルイズが駆け寄り、それにギーシュの知り合いも近づいて来た
ギーシュに対して生温かい視線を送る
「レイナール,ケティ,キュルケ,ギムリ,マリコルヌ」
「「「「聞いたぞ」」わよ」」
「ギーシュ様って、そちらもOKだったのですね」
「おお、僕の可愛いケティ、誤解だよ」
「恋の前には、性別すら障害では無いのね、素敵」
「おお、麗しのキュルケ、誤解だ」
「まさか、お前がそんな奴とはなぁ」
「レイナール、これはだな」
「まさか、僕を越える男がこんな所に」
「マリコルヌ、それは断じて違う」
「俺には近付かないでくれよ」
「ギムリ、だから違うって」
「モンモランシー、サイトの容体は?」
「悪いわね、手持ちのポーションだけじゃ無理だわ、治療も私だけじゃ無理みたいっと、応急手当終わり、動かして良いわよ」
ふわりとサイトが浮かぶ
見ると、タバサが来て、レビテーションを掛けてくれたらしい
「医務室?部屋?」
「私の部屋で」
「解った」
ルイズとタバサ、モンモランシーはサイトを連れ寮に戻る
「ルイズ、僕が行っても・・」
「今は治療の邪魔になるから駄目ってか、あんた男でしょ?女子寮に忍び込む気?」
「あ、いやそれはだね……解った、治療の邪魔になるから暫く待つよ」
ルイズはギーシュを睨み付け、ギーシュは複雑な表情で頷いた

才人が目を醒ますと、ベッドの上で、ルイズがベッドの脇で寝息を立ててるのが見えた
「ん〜、あれからどれくらい経ってんだ?」
ルイズを見る
「もしかして、ずっと看病してくれてたのか」
ルイズの頬を優しく撫でると、その刺激でルイズは目を開けた
「おはよう、ルイズ」
「ん、やっと目を醒ましたわね、馬鹿犬」
「いくらなんでも馬鹿犬は無いだろう?」
「ふん、ご主人様の言う事聞かないで、大怪我するんだから、馬鹿犬で十分よ」
「確かにそうだな」
苦笑しながら頷く
「あれから、どれくらい経ったんだ?」
「3日よ」
「その間、ずっと看病してくれてたのか」
「当たり前でしょ、あんたはあたしの使い魔なんだから」
照れながら、そっぽを向くその態度に、才人は思わず手を頭の上に乗せ、優しく撫でる
「なな何すんのよ」
「ルイズ、有り難うな」
優しい気持ちで、自然な笑顔をルイズに向けながら、頭を撫でる
ルイズの顔がどんどん紅くなるが、才人は無視して撫でる
「あああああんたの事なんて何とも思ってないんだから。あああああくまで主人の義務なんだから。勘違いしないでよね」
「ん、そうだな」
ルイズはそのまま目を閉じ、気持ち良さそうに暫く撫でられていた

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