騒動のきっかけとなった日の前日、サイトはコル
ベール先生と一緒に戦闘機を眺めていた。
それはゼロ戦ではなくテファと一緒にネフテスに
拐われていた時、ルクシャナのオアシスで見つけた
鉄くず同然の全損級の代物である。
サイトは思わずコルベール先生に聞いた。
「先生、本当にこれを直す気でいるんですか?」
実際問題、簡単に直せるものではないからだ。  
しかし、コルベール先生は「うんサイト君。これを直すことができたら、
この世界の技術が大きく変わると思ってね」と自信満々にいった。   
サイトはそれに対し、「俺も手伝いますよ。訓練が終わった後は」といった。 
「ありがとう。サイト君」
そんな二人をルイズ達は遠目で眺めていた。
「サイトとジャン、本当に仲がいいのよね」とキュルケが誰ともなくいった。
「だって、サイトの一番の相談相手じゃない」と
相槌を打つのはモンモランシーだ。
キュルケは側にいるルイズに聞いた。
「サイトの側にいなくていいの?」
ルイズはつまらなさそうに「だって、サイトとコルベール先生、
二人だけの世界に入っちゃってるもの」と答えた。
すると突然、キュルケがモンモランシーに
「あら、ギーシュがまた女の子を口説いているわっ!」といった。
モンモランシーはそれを聞くなり、走り出していった。そして、
「本当にあんたって男は!!あれだけ痛い目にあっても
懲りないのね!!」と怒鳴り声が聞こえてきた。
「ご、誤解だ。モンモランシー!ちょっと相談相手になってあげただけだよ!」
「言い訳は聞きたくないわ!今日はただじゃすまさないんだからっ!!」
とモンモランシーが叫び、水魔法の音が聞こえ、さらには
「待ちたまえ!モンモランシー、僕の話はほんとなんだよ
ぎゃああああ!」というギーシュの悲鳴が聞こえてきた。   
ルイズとキュルケは顔を見合わせ溜め息をついた。
「モンモランシー、ルイズの性格がうつったんじゃないの?」
ルイズは顔を真っ赤にして、「私、サイトにあんなこと
してないもん!!」といった。
「嘘言わないの。あら、サイトの側にケティ達が来て、差し入れしているわ」
 ルイズがそっちを見ると確かにサイトの側にケティ達がいた。
「サイト様、いかがですか?」
「ああ、ケティか。ありがとう、ちょうどお腹空いてたんだ」
「怒らなくてもいいの?」とキュルケが聞くと、
「だって、それくらいは許してあげなさい。と
ちい姉様に言われたから」とルイズが答えた。  
「ふーん、でもサイトは押しに弱いからねー」とキュルケが
再び見ると意外な展開になっていた。サイトがケティ達に
戦闘機の事を説明していたからだ。
「これは俺の生まれた世界の武器でね、遠くの目標にいって、
船や街を攻撃するのさ」「へぇ、強そうですね!あ、あんまり
いるとルイズ様に怒られますね、修理頑張ってくださいね」と
いって、ケティ達が離れていくのが見えた。
「あら、サイト変わったんじゃない?」とキュルケが不思議そう
な顔で言うと「母様とエレオノールお姉様にルイズを
泣かしたら婚約の取り消しとヴァリエール家伝統の魔法で
痛め付けると言われたからよ」とルイズが答えると、
「そのおかげでサイトさん、私を避けてるんでーす」とシエスタが
不機嫌そうな声で言った。「でも無理矢理、襲えばいいじゃない」と
キュルケは言ったが「サイトさんとミス・ヴァリエールの
幸せのためなら身を引きます」と答えた。
「大丈夫よ、シエスタにはたまに貸すから」
「本当ですか!嬉しいです」とシエスタは悲しみが一気に飛んだようだ。
「でもばれたらどうするの?」「その時はサイトが責任をとるのよ」
「へぇ、世界最強の使い魔ガンダールヴでオンディーヌ副隊長の
サイトもルイズとシエスタの前だと形無しねー!」
とキュルケがからかった翌日、一つの事件がおきた。
そう、モンモランシーが学院から姿を消したのだ。
休み時間にルイズの席にキュルケが来て、
「ルイズ、昼休み、予定ある?」
「サイトと一緒に食べるけど」
「じゃあ、サイトにも話聞いてもらおうかしら」
「いいわよ、昼休み、一緒にサイトのところに行きましょう」
そして、昼休みに二人でサイトのところに向かうと、サイトは
コルベール先生と一緒に戦闘機のエンジンを降ろしていた。
「サイト、お昼よ」
「ああ、分かった。先生、午後からはエンジンの錆びとり
しておきますよ」と声を掛けた。
「うん、サイト君頼んだ」
「治りそう?これ」
「治るとしてもかなり時間が掛かるよ。さ、お昼食べようぜ。
あれ、何でキュルケが一緒に居るんだ?」
「二人に話したいことがあるの」
お昼を食べながらキュルケは言った。
「今日、モンモランシーいないでしょ?」
「そうね、一体どうしたのかしら?」
真面目なモンモランシーはめったに授業を休まない。
「昨夜、私の部屋に来てね、親が見合いしろとうるさい
から、実家に行ってくるって言ってたのよ」
「ふうん、何でギーシュとの事、親に話さないんだ?」
サイトには、そこがわからない。するとルイズが
「言えるわけないじゃない!ギーシュは土系統の担い手で
モンモランシーは水系統の担い手なんだから!」と言い、
キュルケが「水と土が混ざると何ができるかあんたも
わかるでしょ」と続けた。
サイトは少し考えて「泥だろっ」と答えた。
「泥は悪い象徴なのよ、土と水のメイジにとっては」
トリスティンだけでなく、ハルケギニア世界では系統の担い手の
相性合わせは結構うるさい。特に土と水、火と水、風と火この三
つの組み合わせは御法度とされているし、、中にはルイズのヴァ
リエール家とキュルケのツェルプストー家の様に領地が隣同士と
いうだけで代々仲が悪いということもよくある。この場合が一番
厄介で憎みあっている家が決めた婚姻話をぶち壊すためなら極端
な話戦争を仕掛ける事もあるのだ。そして勝った家と取り合いと
なった家が結婚することもある。かつてのルイズの様に親が勝手
に許嫁の話を決めてしまうことも珍しくないのだ。酷い話では結
婚式で初めてその相手と顔をあわすことだってあるそうだ。まあ、
ルイズの姉エレオノールの様に婚約が破談になるのも極まれにあ
るのだがそれはほとんど無いといった方が正しい…。
なった家が結婚することもある。また、かつてのルイズの様に親
が勝手に許嫁の話を決めてしまうことも珍しくなく、酷い話では
結婚式で初めてその相手と顔をあわすことだってあるそうだ。
まあ、ルイズの姉エレオノールの様に婚約が破談になるのも極ま
れにあるのだがそれはほとんど無いといった方が正しい…。
そんな妙な風習から見ると世界の危機を救った最強の勇者とはいえ、
平民あがりでシュヴアリエのサイトがハルケギニア屈指の名門貴族
ヴァリエール公爵が一番に溺愛している三女のルイズにプロポーズ
など、まさに始祖ブリミルの怒りをも恐れぬ暴挙と云える。
実際にその話が広まった時、大概の大貴族達は口を揃えて「最強の勇者
もヴァリエール公爵の怒りに触れてこれまでだ」とか、「ヴァリエール
公爵の怒りでこの世界は終わりだ」のでハルケギニア中が騒然となった。
中には始祖ブリミルにお祈りする貴族もいたそうな。
しかし、サイトを一目見て、気に入ったヴァリエール公爵は二人の結婚を
認めると大々的に発表したのだ。それもハルケギニア各国の王家や貴族達
が一堂に会したロマリアの教皇聖下とドラゴンに勇敢にも立ち向かい命を
落とした勇者達の追悼式典が終わった翌日、ロマリアで一番由緒正しきホ
テルのそれも一番最高級のダンスホールを貸し切りにして、各国の王家や
貴族達を無料招待の舞踊会を開催して場が盛り上がったところにサイトと
ルイズを壇上に呼んでさらにはロマリアの神官であり、サイトとルイズの
良き親友であるジュリオを立会人にしたうえでの突然の発表だったものだ
から各国の王家や貴族達は全員度肝を抜かし、大騒ぎになった。
それと同時にサイトはハルケギニア世界6000年の常識、貴族同士の結婚
でも同程度でなければダメという暗黙のルールをを破壊したので多くの
名門と下級という貴族格差のせいで結婚できないと諦めていた貴族の子
弟カップル達からも尊敬される存在となったのだ。
まあ、一番度肝を抜かされたのはでサイトとルイズだけでなく、ヴァリエ
ール公爵以外のトリスティンの人間であったが…
実際、ルイズの母、カリン夫人はあまりに唐突な発表にびっくりして
その場に倒れて気絶してしまったとか。
「なるほどなっ、まあ、普段のギーシュの女ったらしぶりも
影響してるんじゃねえのか」とサイトはかつての自分と同じ
ギーシュのことをを棚にあげてから
「で、どんな奴だってモンモン言ってたんだよ?」と
キュルケ に尋ねた。
「今、水の精霊との交渉役をしているスターティマ男爵
だって言ってたわ」「どんな奴だよ?」とサイトが聞くと
キュルケは「私はゲルマニアの人間だからトリスティンの
貴族の事は良く知らないわ」と肩をすくめて言った。
「だよなぁ・・・、ルイズは知ってるか?」とサイトが聞くと
ルイズは「確かモンモランシーの家と替わって水の精霊の交渉役
になって一気に出世して名をあげたのよね」と答えた。
「ヴァリエール家から見れば、新参者か」とサイトは呟いた。
するとキュルケとルイズが「あんたは成り上がり貴族でしょ!
ただの使い魔からヴァリエール家の三女の婚約者に
なったんだから!」とサイトに突っ込んだ。
「まあ、確かにそうだな!」とサイトは素直に認めた。
「ま、二、三日で帰って来ると言ってたわ」と言うキュルケの
言葉を聞き、「大丈夫だろっ」とサイトもいった。
「じゃあ、修理続けっか!お前らも授業に戻ったほうがいいぞ」
とサイトが言って、三人は別れた。
モンモランシーはその日、実家でギーシュとの間を話したものの、親には
門前払いされてしまった。「あんな、名門のくせに位をあげるためにお金を
使う家の息子で土の系統の担い手とはまっぴらごめんだ。そんなことを考え
ているなら明日、スターティマ男爵にあいさつしてこい」と父に言われた。
[家だって領地の経営の失敗+水の精霊のご機嫌とれなくて交渉役を外された
お陰て赤字なのに……]とモンモランシーは思ったが、渋々頷いた。


  その翌日、モンモランシーはスターティマ男爵の屋敷の前に立っていた。
「ま、軽く挨拶をすればいいのよね」と呟いた。モンモランシーはまだ
結婚する気はない。ただ、両親はその気のようだ。水の精霊との交渉
役のスターティマ家と親戚になれば、かつての地位を取り戻す事ができる。
その程度の事しか考えていないのだ。しかし、モンモランシーは決めていた。
女ったらしで頼りにならないが、勇気だけはあるギーシュと結婚して見せると。
「ルイズとサイトなんて、主人と使い魔という関係から婚約者になれたのだから
自分たちだって上手くいけば…」とモンモランシーは思った。
屋敷のドアを叩くとすぐに執事が出てきた。「御待ちしておりました。
モンモランシー様、ご両親は明日見えられると聞いています」と言われた。
広い屋敷の中を案内され、応接室で暫し待たされた。
[どういう神経してんのよっ!、客のしかもレディを待たせるなんて…]と
思った時ドアが開いて、スターティマ男爵が入ってきた。
年齢は確か二十五、六。そう、かつてルイズの許嫁でヴァリエール公爵に
眼をかけられたエリートのくせにレゴン・キスタに精通し、アルビオンの
ウェールズ皇太子を暗殺したばかりか、ルイズとサイトまで手に掛けようと
した元グリフォン隊隊長のワルドと同じくらい。
[そう言えばサイトが命をかけてルイズを守る様になったのって、アルビオンの
事件がきっかけだったのよね…]とモンモランシーは考えた。
三年ほど前にスターティマ家を継いだばかりの若き領主であり、
腕はトライアングル級というエリートメイジである。
しかし、彼ではまだ若すぎるため、水の精霊の交渉役は
スターティマ家の長老が勤めているそうだが近い将来、
彼にまわって来るのは確かである。
[ギーシュに比べれば、将来は約束されてるから悪くないわよねー]と一瞬考える。
何せ、水の精霊の交渉役の夫人の椅子が手に入るのだ。
自分と反対側のソファに腰掛けるとスターティマ男爵は
「お忙しい中、わざわざ来て下さってありがとうございます」と
丁寧な挨拶をしてきた。モンモランシーは腰の低さに驚きながら
「いいえ、こちらこそ突然押し掛けてすみません」と返した。
するとスターティマ男爵は「喉が乾いたでしょう?
飲み物でもいかがですか?」と聞いてきた。
「いいんですか?お言葉に甘えて…」
すぐにオレンジジュースが出てくる。それをモンモランシーは
一気に飲み干してしまった。
「いやだわ、人の家でこんな飲み方するなんて…」と言った時、
奇妙な感覚に襲われた。そう、自分の意思を失ってしまったのだ。
「男爵に薬を盛られたのね…」と気付いた時、モンモランシーは気を
失ってしまった。気を失ったモンモランシーの脇に立つとスターティマは
不敵な笑みを浮かべた。「ふふふっ、こんなに簡単に引っ掛かるとはな…
お前の家は私と親戚になれば、かつての地位を取り戻す事ができる、と
思っていた様だが、現実は違うのだよ。私がお前に目をつけたのは、
名門モンモランシ家の名が狙いだったのさ。ふふふっ、お前とお前の家は
私が支配させてもらうぞ!!」スターティマの高笑いは屋敷中に響いていた…。


 それから十日後、学院ではモンモランシーが帰ってこないと大騒ぎだった。
サイトとコルベール先生のそばにルイズとキュルケが来て、言った。
「サイト、モンモランシーまだ帰ってこないのよ!!」
「いくらギーシュに愛想尽かしたといってもおかしいよなあ」と
サイトが答えた時、突然シルフィードが降り立った。
三人は同時に叫んだ。「タバサッ!どうしたんだよ」
そこに立っているのは、ガリア女王になったタバサだったのだ。
タバサはサイトに手紙を見せた。「俺、こんな達筆なのは読めねえよ」
そこでルイズが手紙を読んだ。
「ガリア女王、シャルロット様へ。私、モンモランシーはスターティマ
男爵と四日後に挙式・披露宴を取り行うので出席のほどよろしくお願い
します」ですって?」ルイズはタバサに尋ねた。「この手紙、いつきたの?」
タバサは答えた。「昨日の夜」
「すると式は三日後?ちょっとおかしいんじゃない?!」とキュルケが叫んだ。
タバサはサイトに訊いた。「サイトもおかしいと思うでしょう?」
「ああ、確かに。見合いをして、二週間後に式ってのは俺の世界でも
あり得ない、大抵一、二ヶ月後にするからな…。ってことは
モンモンの奴、変な薬で操られてるんじゃないのか!!」とサイトは叫んだ。
「俺、ギーシュのところに行ってくる!」
「私も行く!」
二人はギーシュを探しに走り出した。
まず、騎士隊の溜まり場の小屋を覗いたがいない。
サイトはルイズに言った。
「二手に別れて探そう!!」
「じゃあ、私はこっち!!」
「おう、頼んだ!!」
すると前からケティがやってきた。
「サイト様、どうかなさったんですか?そんなに慌てて」
「ケティか!ギーシュ見てないか?」
「いいえ、ギーシュ様は朝から見ていませんわ」
「分かった!見かけたら、俺かルイズに教えてくれ!!」
「はい、わかりましたわ」
その頃、ルイズはテファ達に聞いていた。
「テファ!!ギーシュ見てない?」
「あら、ルイズさん。ギーシュさんは昨日から見ていませんわ」
「分かったわ!見かけたら教えて!」
「わかりました!!」
二人で学院中を探したが、ギーシュはどこにもいなかった。
「参ったなっ、ギーシュの奴、どこにいったんだ?」
サイトとルイズのところに下級生の騎士隊員がやってきた。
「サイト副隊長、ルイズさんと仲良くしてるとこに聞くのも
申し訳ないですがギーシュ隊長知りませんか?」
「それはこっちのセリフだよ」言葉を返すサイトに
ギムリ、レイナール、マリコルヌもやって来て。
「サイト、ギーシュが部屋に閉じ籠ってるから
引っ張り出してくれ」とサイトに言った。
「分かったよ、ギーシュの部屋に行ってみよう」
そして、サイト達はギーシュの部屋の前にきた。
ドアを叩くが、返事がない。サイトは少し考えてルイズに
「お前のエクスプロージョンでドアを壊せ」と言った。
「いいの?そんなことして」
「後で直せばいいんだから!」
ルイズは言われた通り、ギーシュの部屋のドアを破壊した。
部屋の中はひどかった。ワインの空き瓶が散乱し、ギーシュは
ベッドの上でベロンベロンに酔っ払っていた。
「おい、ギーシュ!!酔ってる場合か?モンモンが大変だぞ!!」と言っても
「良いのさ。彼女が幸せになれれば、結婚するという話は
僕の友人でスターティマ男爵に近い奴から聞いたから…」
と呂律が回らない口調だ。これにサイトがぶちギレた。
「お前、そんなんでいいのかよ!好きな女が他の男に取られてッ!!」
「だって相手は水の精霊との交渉役を将来担うエリートメイジなのだよ!
怒らせたら実家に迷惑が掛かるじゃないか!!」とギーシュは叫んだ。
それを訊いたサイトは黙ってギーシュを部屋から引きずりだし、
二人か最初に決闘したヴェストリの広場にやってきた。
「何でこんなところに連れてくるんだ?」と聞くギーシュを
サイトはいきなりぶん殴った。
「サイト、何するのよっ!!」叫ぶルイズにサイトは答えた。
「こいつの根性を叩き直そうと思ってな!立てよ、ギーシュ!!
おめえはそんな男じゃないだろ!!俺達オンディーヌの隊長として、
いつも危険を乗り越えてきただろ?国や世界を救えたおめえが何でモンモンの
本当の気持ちを聞かずに諦めるんだよ!!そんなの俺が許さないぞ!!」
するとギーシュは吐き捨てる様にいった。
「お前のように強くないからだよっ!!大貴族のヴァリエール家や女王陛下に
認められる勇気もないし、ガンダールヴの力も無いからな!!」と叫んで、
サイトよりも強い力で殴り返した。それも何度も何度も。
「ギーシュを止めて!!」ルイズが叫び、
ギムリとマリコルヌが慌ててサイトから引き離したが、
それをサイトは止め、聞き返した。
「ガンダールヴの力が無いからっ?それがどうした? 
そんなの、理由じゃねえだろ!!」と叫び、ギーシュをさらに数回殴った。
そして、サイトは手を止め、「分かったよ、お前がそんな根性無しだとは
思わなかった!」と  言い、「ルイズ、先に部屋に戻ってる」と去っていった。
「勝手な事ばかり言って…。誰が好きでお飾りの隊長していると…」と
呟くギーシュをルイズは思いっきり平手打ちした。
「サイトに謝って」とルイズは言った。
「何故だ!何故あんな奴に!!」
タバサがまず言った。「貴方と決闘したとき、サイトは
まだガンダールヴの力を知らなかった」
キュルケが続けた。「サイト、アルビオンの事、未だに
責めているのよ。自分のせいでウェールズ皇太子は殺さ
れてしまった。自分がもっと強ければ良かった、自分が
アンリエッタ様の大事な人を殺したんだって」
さらにテファも「サイトさんはアルビオン軍に一人で
突っ込んでいって私が助けたとき、言ってたんです。
ガンダールヴの力が無くてもみんなを助けるためなら
突っ込んでいたって」
マリコルヌが「タバサを助けるときこう言ってただろ?
例え、命令でルイズを襲ったからって友達が捕まってる
のはほっとけないって」と諭した。
そして、最後にルイズが言った。「リーヴスラシルの力
を持ったときもそう。私が使ったら死んでしまうから使
わないでっていったら[みんなとルイズを守る事が出来る
んなら使うしか無い、死ぬかもしれなくても]といって使
ったのよ!自分の世界じゃないのに自分の命を懸けてこ
の世界を守ったのよ!みんなの笑顔が見たい、それだけ
の思いでっ!!」と叫んだ。
「だからその勇気が僕にはないと。それに代わりの子は他にもいるし…」
「嘘言うなよ、全然女の子に声かけてないじゃないか」
「そうですよ!二人の喧嘩は学院の日常風景なんだから」
するとギーシュは立ち上がり、「部屋に戻る」と去っていった。
ギーシュは部屋に戻り、考えていた。確かにモンモランシーには幸せになってほしい。
その時自分の気持ちに気付いた。「そうだ、僕はモンモランシーが好きなんだ、
他の誰よりも…。なのに自分はすぐ他の女の子を見てしまう。最低だな、僕。
でも最後に本当の気持ちを聞いてみたい」ギーシュはそう思い、立ち上がった。
翌日、ギーシュも学院から姿を消した。


 その二日後、スターティマは目の前のモンモランシーに聞いた。
「お前が世界で一番好きなのは誰だ?」
「貴方です、スターティマ男爵」
スターティマは心の中でほくそ笑んでいた。「ふふふっ、後は結婚式の
最中にモンモランシ家の人間を殺した後、普通の状態に戻し、お前が殺した
のだと言えばよいだけだ」と思った。「では教会にいくぞっ」「はい」
そして、教会での結婚式の誓いの言葉の時、突然足音がした。
「誰だ!!」振り返ると金髪の少年が立っていた。
「待ってくれ、モンモランシー。僕に本当の気持ちを教えてくれ!!」
「お前がオンディーヌ騎士隊の隊長のギーシュ・ド・グラモンか。何しに来た?」
ギーシュは答えた。「モンモランシーを返して貰おうか」
「何を馬鹿なことを言っている。お前が水系統の娘に恋をし、更に
私に喧嘩を吹っ掛けたとなるとお前の父、グラモン元帥が困るぞ」
「父や実家はは関係ない。これは僕とモンモランシー個人の間の問題だ」
「ふふふっ愚か者め!!自分から死を望みに来るとはなっ!!」
「出会ってしまったからだよっ!!自分の大切なモノを
守るためなら本気で自分の命を懸けている勇者になっ!!」
「そいつは愚か者だ、お前と同じ…]
「そいつはちょっと違うぜっ!!」
「そうよ、サイトは愚かでも何でもないわっ!!」
ギーシュの聞き慣れた二人の声がしたと思ったら
隣にサイトとルイズが立っていた。
「サイト!それにルイズ!!どうしてきたんだ?」
「隊長であり、良き親友のお前とモンモンをほっとけないって」と
サイトが言えば、ルイズも「私にとって、モンモランシーは
大切な友達の一人なんだからっ!!」と言った。
サイトと聞いた途端、スターティマの部下達がざわめいた。
「あの伝説の勇者か!元グリフォン隊隊長の裏切り者、ワルドを倒したという!!」
「俺も聞いた事がある!!七万のアルビオン軍を一人で
止めただけでなくガリアの無能王ジョゼフも手にかけたとか…」
「平民からオンディーヌ副隊長に登り詰めたというあいつか!!」
「エルフに捕まっても生還したとか…」
「エンシェントドラゴンを倒したとか…」
「ヴァリエール公爵の屈強な親衛隊を一人で倒したとか…」
「あんたの活躍、随分オーバーに広まっているわね…」
ルイズが呆れた口調で言ったとき、タバサとキュルケとテファもやって来た。
「お前ら!!どうしてきたんだよ!!」サイトが尋ねると
「だってあんた達だけじゃ心配だからよ…」とキュルケが代表して
答えた次の瞬間、「オンディーヌ騎士隊、只今参上!!」と
ギムリの声が聞こえ、騎士隊がワーッ!!と入ってきた。
「君たち、へますると騎士隊解散になるかも知れないのにどうして?」
とギーシュが尋ねるとマリコルヌが代表して答えた。
「僕達には、騎士隊より、君たちの仲の方が大切だからさっ!!」
そして、レイナールは「僕は反対したんだがね、みんながどうしても行くって
言うから仕方なくついてきたのさ…」と遠慮がちに答えた。
「バカめ!明日には貴様らの実家、全員とり潰しだっ!!」
するとサイトはギーシュにむかって言った。
「俺たちのキャッチフレーズ、何だっけ?」
ギーシュにはすぐわかった。「あの言葉か!」「そうだぜ!!」
まず、サイトとギーシユが叫んだ。
「俺たち、明日の事は!」全員が答えた。「明日、考える!!」
サイトが「さ、ギーシュ隊長!!みんな準備出来たぜ!!」と言って、
「よし、全責任は僕がとる!!攻撃始めっ!!」と
ギーシュが叫んだその時、「待っておったぞ!!
悪魔の力の担い手っ」と別の声が聞こえたと思ったら、
眼つきの鋭いルイズ達が初めて見るエルフが出てきた。
サイトはすぐに気付いた。「エスマーイル!
何でてめえがここにいるんだ!!」
そう、そこに居たのはかつてサイトとテファを拐うのを指示し
ただけでなく、殺そうとしたネフテスの対蛮人強硬派の
急先鋒でビダーシャルの政敵エスマーイルだったのだ。
「ふふふっ覚えていたか。ガンダールヴよ!!お前らの周辺の者
の心を操ればお前らがほいほい出てくると思ってな!!
それにあの入れ知恵をする剣も今はいない!ここがお前らの墓場だ!!」と
エスマーイルは高々と叫んだ次の瞬間、自分とスターティマ達の回りにカウンター魔法をかけた。
「どうする?待っていても攻撃は飛ぶし、カウンターを解除すれば死ぬからな、
お前らはどっちみち死ぬのだよ!!」とエスマーイルは高々と笑った。
更にエスマーイルとスターティマと部下達はサイト達をぐるりと囲った。
「どうする?」サイト達は相談した。サイトは言った。
「ルイズがディスペルを詠唱している間、お前らで時間稼ぎをしてくれ!!
ディスペルでカウンターを解除したらテファが忘却魔法をかける。そして、
その後一斉攻撃して、敵が怯んだ隙にルイズがエクスプロージョンをかける。
それしか方法は無い!!お前ら、死ぬなよ!!」とサイトは言った。
すぐに行動を開始した。サイトはルイズを守り、他の全員で
スターティマの部下達の魔法の攻撃を止め、時間稼ぎをする。
そして、ルイズがディスペルを放った瞬間、テファが忘却魔法をかけた。
スターティマの部下達の攻撃がとまり、全員で攻める。
そして、ルイズがエクスプロージョンを唱え始めた。
もうじき、決着が着く。全員がそう思った。
しかし、エスマーイルの操る人形がルイズに襲い掛かってきた。
するとサイトはルイズを抱き抱えながらマリコルヌに渡された
剣を振り回し、エスマーイルの人形を倒しまくったが人形は
次々に出てくる。「これじゃ、らちが明かねえ!!」
そう思ったとき、右のポケットにアニエスが以前くれた
拳銃が入っている事を思い出した。
「ルイズ!!俺のポケットの中に入っている拳銃を俺に渡してくれっ!!」
ルイズが拳銃をサイトに渡すとサイトは人形に向け、続けざまに発射した。
「ふふふっそんなのでは倒すことはできないのだよ!!」と叫びながら
エスマーイルは突っ込んで来たがサイトはルイズを抱えながら素早くよけ、
エスマーイルに膝げりを食らわせた。エスマーイルは崩れる様に倒れた。
「ふう、一丁あがりっと」
「止めを差さなくていいの?」
「後でビダーシャルに引き渡そう」
その頃、スターティマは焦っていた。「こいつらは只者ではない…」
そう思った。屈強な筈の部下達が次々とやられていく。
そこでスターティマは残りの部下達に「後は任せた」と言い、
モンモランシーを連れ、地下室に逃げ込んでしまった。
「逃げたぞ!ギーシュ!!お前は後を追え!残りの連中は任せろ!!」
「分かった!」ギーシュは二人の後を追い、階段に飛び込んだ。
そして、地下室の一番奥の部屋でスターティマと対峙した。
「モンモランシー!!目を覚ますんだ!僕は君がいないだけで死んで
しまいたくなるほど気の弱い男なのだよ!!」とギーシュは叫んだ。
「ふふふっ、無駄だよ。この薬は一回飲むと目を覚まさんよ、
君はここで死ぬのだ!君だけではない、君の仲間も。
さらに君の父上も息子が私に喧嘩を吹っ掛けたとなると
元帥の称号が取り上げられるだろう…」と冷たい笑いを浮かべた。
その時、ギーシュの頬に唇の感覚がした。見るとイルククゥが
ギーシュにキスしていた。と次の瞬間、モンモランシーの不機嫌な声がした。
「何が『君がいないと死んでしまいたくなる!』よ、イルククゥに
まで手をだすなんて!!」「モ、モンモランシー!目を覚ましたのかい?」
「ええ、最悪の目覚めだけどね…」
「な、何故だ!何故目を覚ましたのだ?」
「あのエルフが白状したのね〜、ショックを与えると目を覚ます
とねぇ、ギーシュ様、後は任したノネェー、きゅいきゅい」
と言ってイルククゥは出口に向かい、去っていった。
モンモランシーはギーシュの方に駆け寄った。
「よくも変な薬を飲ませてくれたわね…、覚悟なさい!」
「ふふふっ、仕方ない…。ここで死んで貰おう!!」
スターティマの強力な魔法が二人を襲う。
しかし、ギーシュはすぐにワルキューレで応戦する。
地下室ではギーシュの土魔法の方がどちらかと言えば有利だが、
「私を誰だと思っているのかね?腕前はトライアングルなのだよ!!」
確かに強弱を分けながら攻撃してくる。しかし、ギーシュは違和感に襲われた。
そう、何故か前方ではなく、さらにその背後から
魔法が来る様な感覚に襲われたのだ。
少し考え、ギーシュは言った。「男爵、貴方は魔法の腕前が高くないな」
「何を言っているのだ?私を誰だと思っているのかね?」
「貴方の杖の振りと魔法の動きが一瞬ずれているからだよ!!」と
ギーシュは叫び、スターティマの後ろにゴーレムを送った。
すると次の瞬間、「うわーっ!!」と声が聞こえ、一人の男が倒れた。
「ふっ、影武者を使うとは卑怯な奴だな、あんたはっ!!」
「こうでもしないと家の名が無くなってしまうからだよ!だから名門の
モンモランシ家の名前を狙ったのさ!!」とスターティマは叫んだ。
「そうじゃない。あんたは弱いだけだ。あんたにはテファの様な圧力を
はね除ける力もない。タバサの様な悲しみを乗り越えられる力もない。
ルイズの様に失敗しても気持ちを切り替えて乗り越えようとする努力の力もない。
そして、わが親友サイトの様な大切なモノを守るために命を懸けて挑む力と
勇気も持ち合わせていない…。あんたはガリアの無能王ジョゼフと
同じ意地が汚い奴なのだよ!!」とギーシュは叫んだ。
魔法が強くないとなればギーシュでも十分戦える。
暫くして戦いが終わった時、スターティマは倒れていた。
「感謝したまえ、我々オンディーヌは命まで奪わん。
さ、モンモランシー。学院に帰ろうか?」「そうね」

そこに「ギーシュ、モンモン、大丈夫か?!」と
大声が聞こえてサイトとルイズが飛び込んできた。
「やあ、サイトとルイズ。全部片付いたよ」
「そうか、良かった」
「モンモランシー、大丈夫?」
「大丈夫よ、ルイズ。助けに来てくれてありがとう」
とそこに「サイトさん、ルイズさん!大変です!!」とテファがやって来た。
「どうした。テファ?」「エスマーイルが逃げました!!」
「そうか、次に会ったとき、捕まえよう」
「そうね、まだ近くにいるかもしれないから早く学院に帰りましょう」
とルイズが言った。


それから数日後の学院の中庭のコルベール先生の実験室のそば。
「結局、何の抗議も無かったわね」とキュルケが言った。
「だって、ドットメイジの学生とシュヴァリエの副隊長にやられたなんて、
トライアングル級のメイジが恥ずかしくて言えないでしょう」とルイズが答えた。
「いや、そうじゃない。彼は魔法の腕前がトライアングルじゃなかったのさ」とサイトがいった。
「サイト、どうして分かるの?」
「あの後、ギーシュに訊いたらそう言ってたんだ」とサイトは答え、
「それよりこいつをさっさと治さねえと!またエスマーイルの刺客が
襲ってくるかも知れないからな!」と戦闘機をいじり続けながら言った。
実際、まだエンジンの錆びとりを終え、燃料タンクの修理を終えたばかりで
電子機器の修理はこれからと言える状態だった。
すると、「またあんたはっ!いくら言っても分からないのね!!」
「許して、モンモランシー!!]
「もうあんたの言うことは訊かないわ!!」
「ご、ごめんなさいー!!」
といつもの通りの二人の声が聞こえてきた。 
「戻ってきた翌日からあれよ」とキュルケが言えば
「ま、あれが学院の日常風景だけど」とルイズが返す。
するとギーシュのゴーレムが飛んできて、ばらしたばかりの
戦闘機のエンジンの部品が吹っ飛んでしまった。 
「大目に見てやれよ、それくらい…、て、おい、こらっ!
ギーシュとモンモン!!お前らに振り回されたお陰で修理の
予定が遅れてんだぞ!!それを邪魔するんじゃねえよー!!」
とサイトは怒鳴り、立ち上がり歩いていったと
思うとギーシュを引きずってきた。
「罰として、修理を手伝えっ」
「何故、僕が」
「修理の手伝いとモンモンに半殺しにされるの、どっちがいい?」
とサイトが訊くと「こっちの方がいい」とギーシュは答え、
サイトとコルベール先生と三人で修理の続きを始めた。
キュルケがルイズに小声で「サイトとギーシュ、
どっちが隊長か分からないわね」と言い、      
ルイズも「だって普段の二人を見てれば分かるじゃない」と
小声で応じたところにモンモランシーがやって来て、
「サイト、それにコルベール先生。どんどんこきつかって下さい」
「そ、そんなぁー!」
「だってここにいれば浮気する心配ないもの」
それから暫くギーシュの周りに女子生徒は近寄らなかったと言う。
何故なら鬼の形相のモンモランシーがギーシュの周りに近付く
女子生徒を睨み付けていたからだ・・・。

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