192 名前:1/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:02:53 ID:hw8rwMR1
 なんて幸せなんだ。
 ギーシュは廊下を跳ねるように歩いていた。
「待っていてくれ、モンモランシー」
 彼女に呼び出されただけで、騎士隊の練習もサボり、悩まずその元へ。
「授業が終わって一時間ほどしたら部屋に来てくれなんて……素敵だモンモランシー
 なんて情熱的なんだ」

 もちろん、レディーを待たせるつもりなど無い。
 授業終了後、モンモランシーが居なくなったらすぐに行動開始。
「サイトばかりにいい思いをさせてなるものかっ、あいつが部屋に帰るとメイドかルイズが高確率で着替えてるらしいじゃないか」
 狙っているわけではないぞ? あらぬ方向に自己主張。
「まぁ、女性の着替えには時間が掛かると言うし……
 部屋に入って3分待とうではないか」

 これから始まる、ハプニングに胸を躍らせる。
 わざとじゃないんだから、モンモランシーだってそんなには怒らないだろう。
 つい、早めに来てしまった僕に非は無い筈だ。
 なにしろ僕は、一刻も早く彼女に会いたかったのだ。
 そういえば許してくれるに違いない…・・・
 許しついでに、もう少し色々許してもらいたいな。
 立ち止まってニヤニヤ笑い出したギーシュの不気味さに、誰も近寄ろうとはしなかった。

 部屋に入るタイミングを計るため、モンモランシーの後をこっそりつけていたギーシュだったが、
「しまった、見失った!!」
 甘い想像にふけるあまり、現実のモンモランシーを見失ってしまった。
「ご、ごめんよぉ、モンモランシー! 僕はもう浮気しないよ!!」
 浮気なのだろうか?
「さ、先に彼女の部屋に着くわけにはいかないし……失敗……か」
 がっくりと崩れ落ちるギーシュに、最後の希望が思い出される。
「ま、まぁ、待ち合わせしているのは事実だし……ちょっとでも彼女との時間を楽しむとするさ」
 くじけそうな自分に言い訳をして、ゆっくりとモンモランシーの部屋に向かった。
 
 
 ――僕はゴキブリです。
 金の髪をなびかせて、モンモランシーの部屋のドアにへばり付いていた。
「な、中で物音がするじゃないか……」
 神は死んでなど居なかった。ニーチェの嘘つき。
 ありがとう、始祖!! ありがとう神よ!!
 さーて、うっかりドアを開けるとするかな?
 アンロックの詠唱を小声で……
「じゃ、いらないの?」
 あれ? 話し声が……
「そ、そんなこと……言ってないわよ」
 ルイズの声にその場で崩れ落ちる。
 ……神さまなんか死んじゃえ。
「じゃあ脱ぎなさい、ルイズ。時間の無駄よ」
 は?
 あまりの展開に凍りついたのは一瞬。
 神さまキタ――――
 ごめんなさい、今日から出家します。
 ドキドキしながら耳を澄ませる。
「で……でも」
「薬……いらないのね?」

 な、なんだってぇぇぇぇぇ


193 名前:2/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:03:31 ID:hw8rwMR1
 僕の彼女が麻薬で、同級生を薬漬けですか?
 だめだっ、そんな事は断固として止めないとっ。
 固い決意を持って……

 ――ドアにへばり付いた。

「捨てちゃおうかしらー?」
「だっだめぇ」
 ル、ルイズが……あんな追い詰められた声を出すなんて……
 泣きの入った小さな声が、耳から入って脳で響いた。
 ぐあぁぁぁ、ごめんサイト、僕、君の事バカだバカだと思ってたけど……
 これにやられたのか……納得。


「じゃ、ほぉら」
「やっ、やぁ、脱がせちゃだめぇぇ」
 ぬ、脱ぎ始めたでありますか?
「うふふ、やっぱり好都合ね、この身体、準備なんていらないんじゃない?」
「い、言わないで……」
 な、中で何が起こっているんだ?
 自分の心臓の音すら邪魔なくらいに、耳に集中。

 いや、マジでうるさいから心臓止まれ。

 しゅるしゅる聞こえる、きぬずれに僕の妄想全開!!
 見てくれサイト、僕の脳内のルイズを!!

 ネコミミ付けて
『今日は貴方がご主人様にゃん』
 とかモンモランシーに言ってるぜっ

 あ り え な い け ど な !

「いや……恥ずかしい」
 モンモランシーって、テクニシャンなのかぁぁぁぁ?
 だ、だめだ、だめだだめだぁぁぁ

 僕は何をしているんだ?
 自分の彼女が道を踏み外していると言うのに、やってることは妄想だけか?
「それで良いのか? ギーシュ・ド・グラモン」

 ――否、断じて否!!

 麻薬など、あってはならぬ誘惑に君が負けてしまったことが悲しいよ、モンモランシー。
 そして、僕は親友になんて伝えればいいんだ? ルイズ。

 いや……嘆くまい。

 悲しむことは後でも出来る……
 今出来ることは……小さく唱えるアンロック、開いたドアを開け放ちながら、思いのたけを彼女達にぶつけよう!!

「なにをしているんだ、君たちっ!! 僕もまぜたまえぇぇ!!」

あれ?

194 名前:3/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:04:05 ID:hw8rwMR1
 ――半裸のルイズに2秒でギタギタにされました。
「このっ……このっ、このっ、この、のぞきぃぃぃぃ」
 ルイズの罵倒も痛いけど、冷たく見つめるだけのモンモランシーも……いい!

 はっ、ちがくてー
「き、君たち、麻薬など止めたまえ」
 そう、僕はそのために踏み込んできたんだっ、決して……決して下心なんて。

「……麻薬? ……この薬の事? ……てゆーかギーシュ」
 モンモランシーが手の中の瓶を小さく振り回す。
 あぁ、あの中にルイズすら屈服させる、ステキ魔法がっ!!
 思わず目が釘付けに……

 あれ? でもルイズまともそうに見えるんだが?
 あれ? ルイズもいつの間にか、冷たく僕を見つめているね。惚れた?
「ギーシュ、あんた立ち聞きしてたわね?」
「なっ、何を言うかね、ルイズ!! それは濡れ衣だ」
 間違いなく座ってました。

 つ、とモンモランシーの人差し指が唇に当たる。
 うぉ、なんて扇情的な……素晴らしいよ僕のモンモランシー!!
「正直に言ったら、ご・ほ・う・び」
「聞いてましたぁぁぁぁ」
 
 ――二人がかりで踏まれました。

「まったく……手伝っては貰うつもりだったけど、来るの早いわよギーシュ」
『き、君に一刻も早く会いたかったんだ』
 口が動いたら言いたかったです、はい。

「うー、サイト以外に見られた……」
『サイトならいいのかぁぁぁぁ』
 後で闇討ちしよう。そうしよう。

 部屋の隅でボロクズのように成っている僕に、二人は何をしていたのか説明を始めてくれた。

195 名前:4/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:04:41 ID:hw8rwMR1
「つまり、サイトに構って欲しいわけだね?」
「ちちちち、違うわよっ」
 その振り上げたコブシは何ですか?

 サイトよくルイズと付き合えるよな……
 この日頃の鍛錬があったればこそ、七万の大軍を止めれたのかも知れんな。
 やたらとタフに成りそうだ。

 ――コルベール先生が亡くなって、騎士隊にのめりこんでいるサイトが自分を構ってくれない……
 なら、自分が騎士隊に入ればいいじゃない?
 
 と、言うことらしいが……
 捨て身だな、ルイズ。
「だって……部屋に戻ったらシエスタが居るし……
 授業とか訓練とかで、二人きりの時間なんて、全然取れないし……」
 
 いじけるルイズをみて、モンモランシーを微笑みあう。
「ま、協力できることはしてもいいけどね」
「わたしも最初からそのつもりだけどね」

 ルイズが差し伸べられたモンモランシーの手を取って、作戦会議が始まった。

 ――だれが聞いているわけでもないのに、ついついヒソヒソと話してしまうのは何故だろう?
「この薬? 髪染める用よ。この髪じゃ多少の変装は意味ないし……
 逆に言えば、これだけでもずいぶん印象変わるし」
「僕は去年の制服を持ってこよう」

 さっきは去年の僕の服でサイズが合うのか、確かめようとしていたらしい。
 どんなイベントシーンだったのか、楽しみにしていたのだが……
 
 ……ルイズにメジャーを巻きつけているモンモランシーもいいな……

 あれ?
「モンモランシー、なんで去年の僕のサイズなんて分かるんだ?」
 
 そこでやっと気がついたのか、ルイズも不思議そうにモンモランシーを見つめていた。
「ど、どうでもいいしょう? いいからさっさと取ってきなさいよっ!!」
 ……真っ赤になるほど怒る事ではないと思うのだが……

 やはり、女性は不可解だよ。

196 名前:5/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:05:18 ID:hw8rwMR1
「あー、それでだね、サイト……これが……」
「ルイス・ド・グラモン」
 精一杯の低い声……だ、だめだ……バレバレだ……
 クラスの皆は既に笑いかけてるし。

 ――髪を黒に染めて、男子の制服を着て、緩く髪を結んだだけでも、確かに印象は変わるけど……
 元がルイズだからなぁ……
 
 せめてキラキラした目でサイト見つめるの止めればいいのに。

「へぇ、グラモンってことは、ギーシュの弟?」
 あれ?
「あっ、あぁ……そういう設定」
「設定?」
「いやっ、そうだよ、うん」
 ……こ、こいつ気づいてねぇぇぇえ、鈍い鈍いとは思ってたけど、ここまでか?
 隊のみんなも、あまりの展開に硬直している。
 そりゃそうだろうな……

「あれ? でもお前末っ子じゃ?」
 あ、しまった。

「隠し子なんです!!」
 まてぇぇぇぇぇ、何を言うかルイズっ、ではなく
「ルイス、なんて事をっ!」
 父の名誉を汚すなぁぁ
「あー、ギーシュの親だもんなぁ」
「ちょっと待て、親友!! それはないだろ」
 サイト……お前もかっ
 てゆーか、騎士隊の皆もそうなのか? って顔で見るなぁぁぁ。
 どう見てもルイズだろ?

「僕も、シュヴァリエになりたいです……サイト……さん」
 男子の制服を着て頬を染めるなっ、しなを作るなっ、サイトを見つめるなぁぁぁ!!
「あれ、でもルイズに似てないか?」
 ……! チャーンス
「あぁ、ルイズには内緒だぞ? サイト」
 くっくっく、『何を言う気』ルイズどれだけ睨んでも無駄だ。
「父の浮気相手はルイズの母親なんだっ!!」
「「「なんだってぇぇぇぇぇ」」」
 ちょと待てぇぇぇ、
 言っといてなんだが、あまりの反響に怖くなる。

 ……あと、血走った目で睨むルイズも怖い
『母さまの名誉をぉぉぉぉ』
 いや、僕も父の……やめておこう。

「そうかー、ヴァリエールって浮気の一族だもんなぁ」
「寝取られの歴代当主……今回も……」

 そういえばそんな一族だっけ?
『今なら訂正効くけど……止めておかないか? ルイズ』
 目で訴えかける。
 結構洒落にならない噂になりそうな……
「そ、そうなんですよ、シュヴァリエ!!」

 あ、親の名誉売ったね? ルイズ。

197 名前:6/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:05:51 ID:hw8rwMR1
 ごめんなさい、母さま。
「ルイズに会わなくていいのか?」
「そんなっ、あの天使のようなルイズ先輩に会うなんて、恐れ多いですよ!!」
 ……何よギーシュもモンモランシーもその目は。
「でも、ルイズが来るかもしれないぞ?」
「今日は、来ないわよ」
 ナイスフォロー! モンモランシー。
「用事があるらしいから……」
「へー、そうなんだ」
 むか、なにその、無反応。
「じゃ、始めようか、皆」
「「「「おうっ」」」」
 サイトの声に、隊員が応える。
 いつもは端で見ているだけだけど、今日はわたしも一緒。
 それだけでも、変装したかいが有ったわね。
 
「……隊長は、僕なんだが……」
 ぽつりと呟くギーシュは無視!

「シュヴァリエ、よろしくお願いします」
 皆が二人組みになり始めたので、迷わずサイトに駆け寄る。
 他の人にサイトは渡さないんだから。
「え? いいの?」
「はいっ!!」
 
 何故かしら? 皆変わったものを見る目で、わたしを見てる。

「ルイズ……じゃない、ルイス、今日の訓練は……」
 何かを言おうとする、ギーシュをサイトは手で制して、
「いや、うん、いいや、じゃ、打って来いよルイス」
 木剣を構える。

 あら?
「今日は剣の訓練なんだ」
 あら?
「いや、いつも俺の相手いなくてな。正直助かるよルイス」
 
「サイト手加減下手だからな」
 あら?あら?
「そっちが来ないなら、こっちからいくぞ?」
「ちょっ、まってっ」

 慌てるわたしを見て、サイトが動きをゆっくりと止める。
 あ、やっぱり優しい。

 でも……

「貴様に”剣”を教えてやる」

 ……それが言いたかっただけかぁぁぁ
 わたしは必死で逃げ始める。

198 名前:7/7[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01:06:24 ID:hw8rwMR1
 腕重い、足重い。
 それより、なにより。
「体いたぁい」
「はっはっは、ルイス、俺の受けた訓練はこんなものじゃなかったぞ?」
 しらないわよ、そんなのぉぉ。
 息が上がって、抵抗も反論も出来ないわたしをサイトは見下ろしている。

「よし、痛かったら手を上げてみろ、ルイス」
 お、終わってくれるの?
 期待をして、全力で右手を上げる。
「よーし、痛かったら……我慢だ」
「なっ!!」
 ……なに、このサディストぉぉぉ
 その満足げな顔……アニエス……あんたどんな訓練したのよ……
 サイトが染まってるしっ。
 
「まぁ、これで手がまだまだ上がることは分かったな」
「ひ……ひど……」
 終わる様子が無いから……諦めてよろよろと立ち上がる。

 ――どれくらい、逃げただろう……
「いくぞっ!!」
 もー好きにして。
 その場でふらりと倒れこむと、運良くサイトの剣の軌道から外れた。
 倒れただけなんだけど……、サイトの予想外の動きだったみたい……
「なにっ!」
 驚くサイトが、わたしの至近距離でふり……む……

 ――ビリィ!

 は?
 その拍子に、サイトの服に引っかかって、ギーシュの制服が……って
『む、胸がぁぁぁぁ、丸見えぇぇぇぇ』
 悲鳴を上げる体力も無いし、腕が重くて身体を隠すことも出来ない。

『バレタわね……』
「お、お前……」
『そーよ、犬、ご主人様をこんなにして……せ、責任とってもらうんだからね?』
 サイトの看病で、優雅に数日過ごすことを考える……
 シエスタは部屋に立ち入り禁止!!
 少しくらい我侭でもいいわよね?
 やっぱり『あーん』は外せないし、お、お風呂とかも痛くて一人では入れないかもっ!

 それなら、まぁ、この苦労も……

「もっと食って、肉付けないと、強くなれないぞ」
『ナヌ?』
「よーし、みんな、今日はここまでー」
『ちょっ、ちょっとっ、待ちなさいよぉぉぉ』

 ――モンモランシーが助けてくれるまで、動けなかったわたしは……



 とりあえず部屋に帰って、サイトをギタギタにした。

 
 
 
229 名前:1/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:08:44 ID:jhvuEaNM
 昨日からルイズが口を聞いてくれない。
「なー、ルイズどうしたんだよ」
 無言で睨まれるだけで、一言も喋らない。
「サイトさん、なにしたんですか?」
 いや、俺が聞きたいんだけど。
「昨日からこうなんだ……あー」
「何があったんです?」
 そうだ……思い出した。
 ルイズがほんの少し……少しだけ耳をこちらに向ける。

 ……やっぱり……アレだよなぁ……

「ミス・ヴァリエールがこんなに怒るなんて……何したんですか?」
 いやー、ルイズはいっつも怒ってると思うけど。
 でも、ここまで怒るって事は……
「昨日ちょっと……さ」
 聞こえたらしいルイズが、何かを期待するように俺を見ている。

 ……やっぱり……か。
「ルイズ……ごめんな」
「な、何がよっ」
 あぁ、一日ぶりに聞くルイズの声。

「実は俺……昨日……」
 ルイズもシエスタも身を乗り出している。

 ルイズに隠し事をしたのが悪かったんだな。うん。

「お前の弟と……」
「っっっ、ばかぁぁぁぁぁぁ」

 枕やら、始祖の魔道書やら、机やら、ベットやらが飛んできて、俺とシエスタは部屋の外に放り出された。

230 名前:2/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:09:29 ID:jhvuEaNM
 なんで一晩たっても気付かないのよっ!!
 怒ってはいたけれど、昨日は機会があるたびに胸を強調して見せた。
 それなのに……
「なぁぁぁんで、見向きもしないし、気もつかないのよぉぉぉ」

 ルイズが怒っているから他の事に気を回す余裕が無いだけなのだが、ルイズにしてみたら何をやっても無反応としか見えなかった。

「ど・う・し・て・く・れ・よ・う・か・し・ら?」
 冬眠前の熊のように、いらいらと辺りをうろつきまわる。

「……ルイズ……何よこれ?」
「モンモランシー」
 手には昨日の小瓶。
「念のため、今日もいるのか聞きに来たんだけど……止めといた方がいいわよ。」
「なんで?」

 モンモランシーの一言を聞いた時、わたしの復讐方法が決まった。

231 名前:3/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:10:02 ID:jhvuEaNM
「なっ、ルイズっ、どうして来たんだい?」
「間違えないで、ギーシュにいさん。僕はルイスです」
 一人だけ正体を知っているギーシュの口を素早く封じる。

 サイトはまだ来てないみたいね。

「に、にいさん」
 ギーシュがなんだかその場で硬直してる。

「ル、ルイズじゃないんだよな?」
 うるさいわね、風邪っぴき。
 昨日気付かなかったこいつら皆敵だっ!!
 でも、今は復讐の為に耐え忍ぶ。
「はい、先輩。今日もよろしくお願いします」
 にっこりと。
「……お、男でもいい……」
 な……なんで、わたしを見つめるのかしら?

 サイトが来るまで、ルイズじゃないと言うことを周りにアピールする。
 これからの復讐で、わたしがルイズだとばれると、効果が半減するもの。

232 名前:4/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:10:34 ID:jhvuEaNM
「へえ、今日も来たんだな、ルイス」
「はい、シュヴァリエ」
 サイトが来た。
 今からどんな恥をかくかも知らずに。

「サイト、今日の訓練だが……組み手でいいのか?」
「うん、その予定だろ?」

 そう……今日の訓練は、武器無しで、ルール無用の組み手。
 ……見てなさいサイト。
 いつもみたいに地面に這って貰うわよ。
 しかも、今日は下級生に負けたことになるの。
 伝説のガンダールヴともあろう者が。

「んー、じゃあまた皆てきとーに組になって」
 その言葉が聞こえ終わるより先に、サイトにタックル。

「うおっ」
「シュヴァリエ、僕とやりましょう」
 また皆が一斉に静まり返る。

「こりてねー」
「実はマゾ?」
「いや、ルイズ似だけあって、サイトに構いたいんだろう」

 好き勝手言ってるわねー、でもあんた達は知らないのよ。
 サイトが武器持ってないと弱いって。

 ギーシュにだってやられてたのに、シュヴァリエに成ったからって怖がりすぎよ。

「みどころあるな、ルイス」
 な、なによ、優しく笑っても許してあげないんだから。
「流石ルイズの弟だな」
 ……コロス

 このわたしの事を微塵も分かってない犬っころを調教してやるぅぅう。
「でも、ルイズのタックルはもっと鋭いぞ!!」
 いや、まて、両方わたしだから。

「行きますよ?」

 さあっ、教育してやるっ!!

233 名前:5/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:11:50 ID:jhvuEaNM
 いつも通りに間合いを詰めて、股間を蹴り上げるっ!!
『避けられるものなら、避けて見なさいよっ』
 あら?
 いつもはちゃんと当たるのに?
「……怖い奴だな……お前」

 おかしい、避けられた。
 何で?
 毎日ちゃんと練習してるのに。
「喧嘩か? 妙に慣れてるよな、ルイズかと思った」

 ……胸見ても気付かないのに、蹴り見て怪しむなんてぇぇぇ。
 許さない!!

 今度こそ当てる!
 的の大きい胴体を狙うことにする。
 狙うのは身体の中心、心臓に向かって固めた右拳を突きこむ。
 ヒットする瞬間に、右手を内側に捻りこむ。
「っと」
 まーたーよーけーたー
 姉さまの修行を、もっと真面目にやっておけばよかった。
 姉さまなら、どんな相手でも今の一撃で気絶させるのに。
 わたしはせいぜい一瞬動きを止める程度。

 一瞬でも止まれば、股間に一撃入れてやるのに!!

「あールイス、なんか攻撃に殺意を感じるんだが?」
「気のせいです、シュヴァリエ、もーちょっとお願いします」

 もーちょっとで楽にしてあげるわよ?
 ゆっくり眠るといいわよっ、地べたでっ!!
 サイトから足が見難いように、低い姿勢で踏み込む、
 サイトの腕を掴んで、膝でサイトのお腹を狙うけど……それはフェイント。
「っと、大技が多いなールイスはっ」
『避けさせてあげたのよっ!!』
 密着状態からサイトの足の甲に、踵を……

「っったぁぁぁぁぁいいっ」
 足がっ!! 足がぁぁぁ!!
「あー軍用のブーツだから鉄板入ってるぞ?」
 さ、先に言えぇぇ、サイトの卑怯ものっ
 じたばたと周りを転がってから、またサイトと向き合う。

「はっ……はっ……はぁ……っなんでっ?」
 ――休み無くサイトを攻め続けているのに、わたしの攻撃はかすりもしない。
 いつもならサイトはもうぼろぼろなのに……

 ……もしかして……いっつもサイトわざと?
 わたしだから……避けずに……
 ちょっと嬉しくなる。

 仕方ないわね……わたしの変装が完璧だっただけだし……そろそろ許してあげようかしら?
 そう思っていた矢先、
「そろそろ、俺からも行くぞ?」

 えぇぇぇ? またぁぁぁ?
 二日続けて泥まみれになった……わたし女の子なのにっ!

234 名前:6/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:12:48 ID:jhvuEaNM
 どろどろのルイスが、荒い息をついて地面に倒れている。
「生きてるかー?」
 ルイズと同じ顔に気が引けて、結局殴ったりは出来なかったけど……

 投げたり絞めたりした。

 ……逆にきつかったかもなぁ?
 いまだに起き上がれないルイスは、ぼそぼそと何かを喋っている。
「ふくしうしてやる、ふくしうしてやる……」

 ……元気そうだな。

「サイト今日はいつも通りに?」
「あぁ、寝てる奴は運んでやれ」

 俺もルイスに肩を貸す。
「……もー、動けないわよ」
 わよ? ま、いいか。
「動かなくていいさ、しばらく大人しくしてろ」
 うわ、こいつ軽いなー、投げ飛ばしてる時も思ったけど。
 持ち上げてしばらくすると、規則正しく浅い呼吸音が聞こえてくる。

 疲れて寝ちまったのか。

 さて、騎士隊全員、泥まみれだ。
 組み手の時はいつもそうだ、ちゃんとルールや場所あるならともかく、どちらかがダウンするまで、土の上で取っ組み合いだからなぁ……

「みんなー風呂いくぞー」
「……おー」

 なぜかギーシュが大騒ぎしているが、とりあえず先に進んだ。

235 名前:7/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:13:47 ID:jhvuEaNM
「う……ん……」
 ……脱衣所で、ルイスを除く全員が真っ裸。
 いつまで経っても起きないから、さーてそろそろ起こそうかな……
「と、思ってるんだが……」
 なんだ、この色気。こいつ本当に男かよ……

「サ、サイト……寝てる間に脱がしちゃっても……」
 いや、それはまずいだろ、マリコルヌ。
 てゆーか、ルイズと同じ顔を、皆の前で脱がせるのは、俺の精神衛生上ひじょーによろしくない。
「みんな、先に入っておこうではないかっ!! ルイスも気が付いたら入ってくるに違いないさっ」
 ギーシュは強硬に風呂に入りたがるし。

 さて、どうするかなぁ。とりあえずマリコルヌを殴っていると、ルイスが目を覚ました。
「あ……れ?……ぇ?……って、きゃああああああ」
 うをっ、凄い悲鳴で、騎士隊の半数がKOされる。
 
 ……こいつ殴るより悲鳴の方が強いんじゃ?
「なっ、なにっ? なんなの?」
 錯乱しているルイスの前に立って声を……なんで赤くなってるんだ?
「起きたか?」
「う……うん」
「じゃ、脱げ」

 あ、灰になった。
「なななな、なんでよっ」
「風呂に入るからだ」
「お、お風呂?」

 なんでそんなに怖がるのかね?
 貴族用の大浴場、シュヴァリエになったし俺も皆と裸の付き合いだ。

「やっぱり漢なら裸の付き合いも必要なんだぜ」
 だからマリコルヌ、お前は何でそんなに張り切ってるんだ?
「さ、ルイス君もぬ〜ぎ脱ぎしましょーねぇ」
 とりあえず、拳で黙らせる。

「まぁ、交流もかねて……だな……」

 なんでそんなに壁際で、追い詰められた小動物みたいに……
 ルイスは必死に視線を彷徨わせて、やっと見つけたギーシュに叫んだ。
「ギーシュ……じゃないっ、ギーシュおにいちゃんっ、助けてっ、助けてよぅっ」
 ムカ。
 あれ? なんだこの、ムカって。

 ちなみに……
「お、おにいちゃ……ぐはっ」
 ――ギーシュは鼻血吹いて倒れた。

「さ、ルイス……脱ごうか?」

236 名前:8/8[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 03:14:48 ID:jhvuEaNM
 全員で囲んで部屋の隅にルイスを追い詰めた。
「い……いやぁ……」
「もう逃げられないぞ」
 泥だらけのルイスの服に手を掛けると、涙を流して懇願した。
「や、止めて、サイト……お願いよぅ」
「……だめだ」

 汚いまんまだと、廊下とか汚れるしな。
 震える肩を掴んで、力任せに引っ張る。

「やあっっ……いやっいやっ、いやぁぁぁぁ」
「あーもうっ、抵抗するなよ。面倒だなぁ」
 振り回される腕を取って、軽く捻って間接を極める。
 そのまま体重をかけて、床に押し付けて、服をむしり始める。

「ひっ……痛っ……痛いよぉ、サイト……やめっ……許してぇ」
 ルイスの妙に色っぽい喘ぎ声……って

「黙れ!」
 一喝する。

 ヤバイ。平賀才人、一世一代のピンチだ。

 お っ き し た ! !

 落ち着け、サイト!! こいつは男だ!!
 でも……ルイズと同じ顔で、はらはら涙を零すこいつを押さえつけてると……どうも……興奮する。

 油断一瞬・怪我一生。

「……サイトが……サイトが立ったわぁぁぁぁ」
 誰かの声に、一瞬で部屋中が静まり返る。

「あいつ……男押さえつけて……」
「そういえば、皆で風呂って……サイトの……」
「ね、狙われているのか?」
「抱いてよ」
「ちょっ、誰だよ今の?」

 ズサァっと、人の空白地帯が出来る。

 ちょっ……
「まてっ、誤解だぁぁぁ」
 慌てて立ち上がると……抑えてないのにほどけたタオルは落ちなかった。

「サイトのばかぁぁぁぁ」
 破れかけた服で、必死に身体を隠しながらルイスが逃げ出す。
「ちょっ、まてっ」
 廊下に飛び出した俺の前には通りすがり大量の女生徒が居て……

 ――半裸の美少年を追って、風呂を飛び出したシュヴァリエサイトの伝説は……しばらく収まる事は無かったと言う……

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