197 名前: Noe"l de la Charlotte(シャルロットのクリスマス)(1/2) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 14:20:28 ID:NUc1o116
降臨祭のイブ。 

タバサは自室で熱心に作業していた。 
両手に細い棒を持ち、棒の先には紐が絡み合っている。 
そう、彼女は編み物をしていたのだ。 

傍らには図書館で借りてきた編み物の本が開かれていた。 
編み棒の先と本とを交互に見やりながら一生懸命に編んでいる。 

あ。 

彼女の口から声がもれた。 
編み目を一段飛ばしてしまったらしい。 
彼女はため息とともに毛糸を引っ張り解いていく。 

間に合うかな――― 

窓から差し込む陽光の傾きを眺めて、タバサはひとりごちた。 
・・・ 
・・・・・・ 
太陽がトリスティンの杜に消える頃、なんとかタバサの作業は完了できた。 

「おねーさまっ、それだれのなのね〜」 
彼女の使い魔シルフィードが隣できゅいきゅい叫んでいる。 
「ひみつ」 
「シルフィにはわかるのねっ、きっときっとあの黒髪の男の子なのねっ」 
「・・・」 
「おねーさまが答えないってことはアタリなのねー。サイト、サイト、サイトへのぷっれぜんと〜きゅいきゅ・・・」 
ゴスッ。タバサの貫手がシルフィの眉間に突き刺さる。 
「いいいいったい。いたいよー。うううう・・・」 
シルフィは両手で眉間を押さえてうずくまった。 
そんなシルフィに見向きもせず、タバサは部屋から出て行った。 

彼女が向かうのはもちろん、サイト(とルイズ)が住んでいる部屋である。 
彼の部屋の前で立ち止まると、タバサは胸に手を当てて深呼吸をした。 

あがらない。 
ちゃんと言う。 
ちゃんと渡す。 

呪文の様にそう唱えると、意を決して扉を小さな拳でノックした。 

「ほーぉい」 
暢気なサイトの声がする。 
「――わたし」 
タバサはそれだけつぶやくと、扉がガチャリと開かれた。 

目の前にサイトが立っている。 
チラッと上目で彼の顔を確認して、すぐに伏目になってしまった。 
なぜか顔が熱い。まさか、真っ赤になっている?! 

わたしの鼓動が早くなる。 
「どした?入るだろ?」 
彼が優しく声をかけてくれた。ちょっと嬉しい。 
わたしは首を縦に小さく振って、部屋の中に入った。 

運よくルイズもシエスタも居ないようだ。 

今しかない。 

198 名前: Noe"l de la Charlotte(シャルロットのクリスマス)(2/2) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 14:21:58 ID:NUc1o116
わたしは彼のパーカーの袖を引っ張った。 
「これ・・・」 
「えっ?おれに??」 
彼は目を大きく開いて驚いている。 
「そう」 
「い、いいの?」 
「いい」 
もっと話したいのに・・・短い言葉しか出てこないよ。わたしのバカ。 
「開けていい?」 
彼はわくわくしながら聞いてきた。 
その表情にわたしの頬が緩んだ。 
「開けて」 
ガサゴソ。おおおっ。 
彼が取り出したのは、わたしが編んだ手袋。 
ガリアの城から助け出されたときに握ったあの手にぴったり合うように作ったつもり。 
左手の甲の部分には、護りのルーンを刺繍した。 
わたしがそばに居ないときでも護ってあげれるように。 

「ありがとう。ぴったりだよ」 
彼は早速手袋をつけ、ためつすがめつ眺めている。 
「よかった。大事にしてね――っ!?」 

すると、彼がいきなりわたしの手を握ってきた。 
温かくて、優しいサイトの手。 
彼を独り占めしているルイズにちょっとヤキモチを焼いてしまう。 
「ほんとありがとう。タバサ。でも・・・お返しどうしよ・・・」 

少し曇った彼の表情。 
いいのに。もう手を握ってくれただけでもお返ししてくれたのに。 
でも今夜は、ちょっぴりわがままになって、お返しをもらっちゃおうかな。 

「お返し。もらうね」 
わたしは、サイトの手を強く握り返して、下に引っ張った。 
え・・・。サイトは前のめりにバランスを崩す。 
その隙にわたしは思い切り爪先立って、彼との距離を縮めた。 

彼の唇とわたしのが触れ合った。 

んむー!?サイトは思わぬ事態に動揺してる。 

わたしはいつまでもそうしたかったけど、誰かがこの部屋に近づく気配を感じる。 
たぶんルイズだろう。 
わたしは彼の唇を解放してあげた。 

同時に扉が開いた。 
そこには桃髪の彼のご主人さまが立っている。 

「あんたたち、そこでなにしてるのかしら?」 
ルイズの片側の眉がぴくぴく痙攣している。右手に持った杖を左手でしならせていた。 
彼が何やら彼女に言い訳を並べはじめた。 
ここはもう退散したほうが良さそうだ。 

わたしはルイズと目線が合った。 

いっこ勝ち。 

すれ違いざまに彼女の耳元に小声でつぶやいた。 

「な、なんですって〜」 
背後からルイズの罵声とサイトの悲鳴が響いた。

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