よく売れる本 2 せんたいさん

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その時、ルイズの部屋では、部屋の主人がおかんむりだった。
不機嫌な顔で、窓の外を眺めている。

「なあ、相棒。主人の機嫌とらねぇのか今日は」
「…不機嫌の原因がわからねえもん。どうしようもねえよ」

部屋の隅で伝説の剣を手入れしながら、伝説の使い魔は小声で相棒に言う。
ルイズは今朝から不機嫌だった。
一度は理由を尋ねようとした才人だったが、ルイズは『ほっといてよ』と、にべもなく口を噤んでしまった。
これではとりつくしまもない。
才人はぽんぽんと綿毛のついた棒でデルフリンガーの刃を手入れする。

「お…おぉう、相棒上手ぇじゃねえか」
「…キモチ悪い声出すなよ、何も感じないくせにさ」
「…ノリだよノリ。なんだよ、『嬉しい事いってくれんじゃないの』とかって返してくれてもいいだろうに」
「前から思ってたけどお前ホントにメイドインハルケギニアか?製造地偽ってないだろうな?」

間抜けなやり取りを続ける恋人とボロ剣を横目に見ながら、ルイズは溜息をつく。
…ほんとに、誰のためにこんなキモチになってると思ってんのよ…。
ルイズが不機嫌なのは、あるものが手に入らなかったから。
それは、つい最近、シエスタに注意された事から、ルイズが手に入れようと考えたものだった。
シエスタはこう言っていた。

『ミス・ヴァリエール。最近サイトさんを酷使しすぎです。
 自分だけキモチイイんじゃ、いつかサイトさん、してくれなくなりますよ』

言い返せなかった。
実際ルイズの最近の才人の扱いは酷いの一言に尽きた。
一方的に擦ったり、搾り取ったりする行為が殆どで、才人がキモチイイかどうかなんて気にも留めていなかった。
で、でも、サイトも出してるってことはキモチイイんでしょ!
と思ったが。
その直後に思い直す。
もし、自分が、才人以外の男に自分のしているような行為をされたとしたら。
開発された自分の身体は、反応してしまうだろう。相手が才人でもないのに。
そう、互いを労わる心がなくては、身体を重ねる意味がない。
そう思い直したルイズは。
王都で評判になっているあるものが、すぐ近くの町にあると聞いて、出かけたのである。
しかし、その日には入荷しておらず、次の日に馬車で王都から届くという話だった。
その入荷予定の日は、どうしても外せない試験の日であった。
仕方なしにルイズはそれの入手を諦め、今に至るのである。
…なしでも、なんとかなるかなあ…。
そんな事を考え、ちらりと才人を見る。
目が合った。
すると。
才人は慌てて目を逸らした。
まるで、ルイズに怯えたように。
才人のその反応に、ルイズは一気に落ち込んでしまった。
…どうしよ…シエスタの言った事、ホントになっちゃうかも…。
そんな時。

コンコン。

ドアをノックする音が聞こえた。

「はーい、誰ー?」

その音に反応したのは才人だった。来客の応対は使い魔の仕事である。
正直、部屋の重苦しい空気に耐え切れなかったというのもあるが。
開いたドアの向こうには。
才人のペットがいた。

「こ、こんにちわ、サイト」

ぎこちない笑顔で、ティファニアはそう挨拶する。

「や、やあテファ。何か用?」

才人は部屋の中のルイズを気にしながら、開いたドアをできるだけ閉じながら尋ねた。
しかしその努力は徒労に終わる。

「何?誰が来たの?」

才人の態度に不審を抱いたルイズが、すぐそばまでやってきてドアの外を覗き込んだのである。
そして。
同じように部屋の中を伺おうとしていたティファニアと、視線がぶつかる。

「あー!あんたはエロエルフ!」

恋敵を認識したルイズは反射的にそう叫んでいた。

「い、いきなり人をエロエルフ呼ばわりはあんまりじゃないか?ルイズ…」

才人はそう指摘するが、心の中では半分あたってんなあ、などと不謹慎なことを考えていた。
そしてエロエルフ呼ばわりされた当人は。

「ひ、ひどいです…」

泣きそうな顔になっていた。
しかし。
すぐにティファニアはここに来た目的を思い出す。
そう。
今、自分が小脇に抱えている、あの本の中身を実践するためだ。
ちょうどいいことに、今目の前には正妻たるルイズもいる。
ティファニアは決心して、言葉を紡ごうとする。

「あ、あの」

紡ごうとしたが。

「あ、あんたその本…!」

ルイズは目ざとく、ティファニアが抱えている本の背表紙のタイトルを目に留めた。
それは。
ルイズが才人のために、捜し求めていた本。
『夜伽の達人 〜ひと目でわかる殿方の悦ばせ方講習〜』
であった。
ルイズは才人を押しのけてティファニアの前に立つ。そして、才人を部屋に押し込んで後ろ手にドアを閉じる。
そしてティファニアに詰め寄る。

「あ、あんた!それ!その本!どうやって手に入れたの!」
「え?えっと、昨日町の本屋さんで…」
「やっぱり昨日入荷してたんだ…!やられた!」
「あ、あの?」

悔しがるルイズに、事情のさっぱり飲み込めないティファニア。
そしてルイズは当然の結論に達する。

「…あなた。それ使ってサイトに何するつもり」

そう。彼女がこの本を持っているという事は。
その中身の超絶技巧を用いて、才人をメロメロにするために違いない。
しかし。
ティファニアの答えは、ルイズの予想の範疇外だった。

「うんと…ルイズさんと一緒に、サイトにご奉仕しようかな、って…」

え?
ルイズはティファニアの言っていることの意味が良く分からない。

「それ、どういう意味なわけ?」

思わず聞き返してしまう。

「えっと…ルイズさんは、サイトの正式な恋人だよね」

『正式』な『恋人』ときた。
ティファニアのその台詞に、な、なあんだこのエロエルフ立場ってもんわきまえてんじゃない、しょうがないから呼称をエロ乳娘に昇格してあげるわ、などと思うルイズ。

「そ。そうよ?あんたなんかの入り込む余地なんかないんだから」
「うん。だから…ね。私はサイトのペットだから、一緒にご奉仕」
「ちょいまち。いまなんつった淫乱エロエルフ」

聞き捨てならない台詞に、ルイズは目の前の少女の呼称を一瞬で淫乱エロエルフに降格させる。

「え?一緒にご奉仕って」
「その前」
「えっと、私はサイトのペット?」
「いいいいいいいいいいぬうううううううううううーーーーーーーーッッッ!」

ルイズの絶叫が廊下にこだまする。
一瞬で振り返って部屋のドアを開けたルイズだったが。
部屋の中はもぬけの空だった。
その部屋の窓は大きく開いており、そこから才人が逃げた事を用意に連想させた。

「くぁ、あ、あの犬、か、かかか帰ってきたらお仕置き、お仕置きなんだから」

怒りのあまり声を震わせながらルイズはそう漏らす。

「あ、あの、ルイズさん怒らないで」

背後からそう呼びかけてくるティファニアにルイズは怒りの形相でぐるん!と振り向いた。

「これが怒らずにいられるかぁぁぁぁぁ!」

しかし、ティファニアは怯まなかった。
そう。この人を納得させなきゃ、私はサイトと一緒にいられない。だから。

「うんと。私がペットにして、って勝手にお願いしたの。
 だから、サイトは悪くないの。ね?」

とんでもない理屈である。

しかし。
ルイズは、シエスタという、事実上の妾の存在を既に認めている。
実際、大貴族には何人も妾を囲う者もいる。
だから、彼女もそういう扱いでいいのではないだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
そう考えると、火照った思考も少しずつ冷めてきた。

「…あんたが何しても、サイトは私の物なのよ?」
「うん。私はサイトの傍にいられれば、誰のものでもかまわない」

…なんで、シエスタといい、この子といい、こんな考えが出来るのだろう。
フシギに思ったルイズだったが。
当初の目的を思い出す。

「だったら、その本寄越しなさい」
「…え?」
「私も読まないと話にならないでしょ!一緒にするんだから!」

まずは。
この本を読んで、サイトを喜ばせる。
その前に、この子を間に入れて、サイトを誘おう。
…じゃないと、逃げられちゃうかもだし…。
とりあえず、ティファニアを緩衝材にするつもりのルイズだった。

…も、もう大丈夫だろ。流石に。
あれから半日が過ぎていた。既に時間は深夜。
俺は、ルイズの部屋の前まで戻ってきていた。
学院内じゃ見つかるから、近くの町まで馬を走らせた。
晩飯はそこで済ませてきたけど…。
さすがに、泊まる気はなかった。
この状況で外泊なんかしようもんなら、ルイズのお仕置きがランクアップするのは目に見えている。
…いやね?お仕置きっつうても痛いのは最初だけで、後半はなんつうかキモチイイんですけど。
さすがにこう毎日じゃ、身がもたないっていうか。
さてと…それじゃあ。
俺はそっとドアを

「遅いじゃないのよ」

ってうわっ?ルイズっ?
ドアを開けた向こうからいきなりルイズの声がした。
…ってあれ?
声が…怒ってない?
…よかった、予想通り怒りは収まったか…。
と、俺が胸を撫で下ろしたのもつかの間だった。

「なんつーカッコしてんだよ!」

ルイズは。
スケスケの白いネグリジェに、黒いガーターだけ、という格好で、目の前に立っていた。
いやいやいやいやソレ全裸よりエロゐんですけど!

「…早く入りなさいよ」

ルイズはそんな俺を無視するように、そう言ってベッドに向かう。
その上には。
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
俺は思わず吹いてしまった。

「あ、おかえりなさいサイト」

そこにいたのは。
薄いグリーンの、ルイズとよく似たスケスケのネグリジェに、白いガーターだけを履いたテファが寝そべっていた。

「お、お前ら何やってんだよっ!」

俺の言葉に二人は顔を見合わせる。
そして、テファが口を開いた。

「うんと。今夜はね。精一杯サイトを喜ばせてあげようと思って」

…うんとすいませんそれって性的な意味で?
いかん。夜遅いしこんなもん見たせいで相当沸き上がってんな俺。

「…そういうわけだから、ほら、脱いで」

うわっ?
いつの間にか、ルイズが俺の右側に立っていた。
そして、俺のパーカーの袖口をつまんで軽く引っ張る。
…いつもなら、ここで無理やり蹴り倒すとかして脱がされるんだが。
ルイズは、袖をつまんだまま、上目遣いに俺を見つめているだけだ。
ってーか。
かわええええええええええええええええ!?
その仕草がもうたまらんほどにクルわけで。

な、なんだ、どーしたんだ?何が起きているんだ?

「…なによ、私の顔に何か付いてる?」

いつもなら。
ルイズは自分を見つめる俺に、不機嫌な顔でそう言っただろう。
しかし、その時のルイズは。
きょとんとした顔で、本当に自分の顔にかにかついているのか、という表情を顔に出していた。
キタ。なんかずきゅんときましたヨ?

「い、いやなにもついてないよ」

そして。
次の瞬間、逆サイドの袖も引っ張られた。
犯人はテファだった。
テファは、にっこり笑って言った。
俺の腕を、深い深淵に挟み込みながら。

「サイトがしたくないなら、いいんだよ?」

そしてルイズが追い討ちしてくる。

「疲れてるなら、今夜はもう寝ましょ。
 でも、サイトがしたいなら…」

言って、俺の腕に絡み付いて。
俺の顔を見上げて、潤んだ瞳で。

「私たちが、シテあげるから…」
「今日はサイトは、ゆっくりすればいいんだよ…」

両側からそんなふうに挟まれたとあっては。
脱がずにはおられますまい!各々方〜っ!
そんなわけで、俺はあっとゆうまに全裸になって、ベッドに腰掛けたのだった。

二人は、屹立する才人を目の前に、ぺたんと床に座り込んでいた。
そして、打ち合わせどおりに動く。
まず、ルイズがその屹立した雄に、手を掛ける。
両手で包み込むように、まるで神に祈るように、指を絡ませる。。
これこそが、件の書に載っていた技の一つ。
『天使の祈り』である。

「くぁ…!」

才人の喉から喘ぎが漏れる。
ルイズはそれに気をよくし、そのまま行為を続ける。

「ふふ…キモチいいんだ…」

きつすぎず緩すぎず、絶妙な力加減でルイズは才人を刺激する。
細い指が生み出す快感に、才人は蕩けそうになる。

「ああ、いいよ、キモチイイ…っ!」

才人の声に気を良くしたルイズは、さらなる刺激を使い魔に与える。
掌からはみ出た才人の先端に、キスをしたのである。

「うぁっ!」

才人の背がびくん!と跳ね、丸くなる。
ルイズはさらに休むことなく、才人の先端にキスの雨を降らせ、両手でくにくにと硬い肉の槍を揉みしだく。
そいて、もう一人が才人を襲う。

「サイト、体もキモチよくしてあげるね」
「…えっ?」

いつの間にかベッドの上に乗っていたティファニアが、才人の首に両腕を絡ませた。
そして。
その規格外の胸を才人の胸板に押し付け、硬くなった乳首を押しつぶしながら、才人の身体にこすり付ける。
絶妙な力加減で押し当てられる柔肉は、快感となって才人の身体を駆け巡る。
この技は、ある程度の胸がなくてはできない。
そして、破壊的な胸を持つティファニアがこの行為を行うと、その快感は何倍にも膨れ上がった。
これこそが『バストマッサージ』と呼ばれる荒業である。
才人はたまらず、目の前の柔らかいペットを抱き締める。
それに応えるように、さらに激しく、淫らに、ティファニアは身体を才人にこすりつける。
ルイズも負けじと、膨らんだ才人の先端を口にくわえ、更なる刺激を才人に贈る。
二人の織り成す快感の波がは、やがて才人の堰を破る。

「うぁ、で、出るっ!」

そう言って才人はティファニアをきつく抱き締め、そして。
股間の堰を放ち、ルイズの口内へ白濁を注ぐ。
びくびくと才人のからだが震え、そしてすぐにくったりと力が抜ける。
それを感じたティファニアは、そっと才人をベッドに横たえる。
ルイズも、口内に満たされた才人の精液を飲み干すと、ベッドに上がる。
そして二人は、横たわる才人の右側に並んで座る。
才人はしばらく快感の余韻に浸っていたが。

自分を見つめる二人に気付き、身体を起こす。
それを見たルイズが口を開いた。

「ねえ、サイトがよかったら…だけど」
「え?」

そして、ルイズはその場で膝を立て、足を開く。
その谷間では、才人を飲み込んで溢れたルイズの潤滑油が、あふれ出して、彼女を淫らに光らせていた。
その上に覆いかぶさって、ティファニアは四つん這いになる。
そして、お尻を突き出して、その上から右手で濡れた己を開き、言った。

「私たちにも…してほしいの」

ごくり、と才人の喉がなる。
先ほど欲望を吐き出した才人の器官は、既に復活して硬さを取り戻していた。

「無理はしなくていいのよ…?」
「サイトの好きなように…していいんだよ…」
「「好きなだけ…していいんだよ…?」」

まるで淫魔のように、囁く二人の声に。
ひくひくと蜜を溢れさせ、ひくつく二つの蜜壷に。
才人の理性は完全に吹き飛んだのだった。


結局。
相棒は、二人と大合戦を繰り広げたってわけで。
ああ。そりゃもう、あの七万の大軍を相手にしていた時のような大立ち回りだったぜ。
なんせ相手は虚無二人だからな。相棒の全精力を持って相手しなきゃならんかったわけよ。
二人の担い手を落とすのに、結局相棒は夜明けまでかかってたな。
全く、伝説の使い魔ってのもタイヘンだぁね。
で、今相棒は、ベッドの上で死んだように気絶してる。
戦いの後で完全に果ててるな。ひょっとするとリアルに死んでるかも。
でもその顔はやり遂げた男の顔だった。
生死を賭けるのは男の仕事、ってわけだ。
…シャレにもなってねえやな。
さて、そんじゃあ俺っちもそろそろ寝るかな。
…相棒が起こしてくれるのはしばらく先になりそうだがな…。〜fin

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