<反・胸革命!> 5 「養生しなよ」 「おーう」 「何か食べ物を差し入れに来るよ」 「あんがと」 その日、騎士隊の面々が先に医務室を後にした。 ルイズにリンチされた上にキュルケに腹上死寸前にされたサイトの方が重傷なのは当然といえば当然であり、今日は医務室を一人で過ごさなければならなかった。 そうなると暇なのは道理で、昼間にシエスタやテファが見舞いにきたり、 気を利かせたギーシュやマリコルヌが差し入れを持ってきてくれたりしたものの、夜も更けるとすることがなくなった。 「暇だ……」 一日横になっていると、夜はそう簡単には眠れない。 双月が今日も光り輝いている。 キュルケの部屋はここからは見えない。 (仮にもせっかく恋人同士になれたのにこれじゃあなぁ……) 無性にキュルケに会いたくなった。 フレイムが運んできたあの手紙は大事に懐にしまってある。 キュルケの香水の微かな香りを思い出し、そっと瞳を閉じて彼女の顔を脳裏に描く。 視線は下へと移り、やがてたわわに実った褐色の双乳で止まる。 そして、脳細胞をフル活動させて彼女のあの声を蘇らせた。 ダーリン…… 潤んだ瞳、湿った唇、ツンと立った二つの蕾。 揉みしだく度に甘い果汁が採れるのではないかとばかりに瑞々しい弾力で形を変える美巨乳。 − 「……一回抜こう」 サイトは自分に正直になることにした。 腹上死しそうになっても、男の性は変わらないらしい。 「はぁ……はぁ……うう……キュルケ……」 おそらくこの学院で今自分はトップクラスに情けない姿でいるに違いない、 と自覚してはいるものの、こういった時なぜか思いとどまれないのが溜まった青少年という生物だ。 しかも、キュルケの極上の肉体を知ってしまった彼は、あまりに強烈なあの快楽からそう簡単には逃れられない。 彼女はまさに触る麻薬といってもいい存在なのだ。 そうしている内に、サイトの若い性は早くもクライマックスを迎えようとしていた。 と、その時だった。 コンコン…… 「うおっ!?」 文字通り飛び上がって驚いた彼は、まだ完治していない身体に走った鈍痛に顔をしかめ、同時に今の自分の状態に血の気が引いた。 「ど、どなた!?」 裏返った声でドアに向かって問いかけ、ズボンを慌てて引き上げる。 「きゅるきゅる」 ドアの向こうで聞き覚えのある声、いや、鳴き声が聞こえた。 「フレイム?」 こんな夜更けになんだろう、と思っていると、ドアが静かに開いた。 ゆらゆらと尻尾に炎を灯したサラマンダーが一匹、薄暗い廊下に立っている。 「何か用か? キュルケから何か預かってるとか?」 のしのしとこちらへ歩いてくるフレイムに問いかけるが、どうやら何か首に提げているというわけではなさそうだ。 フレイムはサイトの問いかけを意に介する様子もなく、医務室内をくまなく歩き回っていく。 「なんだなんだ、どうしたんだよ? 今日で俺以外はみんな退院しちまったぜ」 そう言うと、フレイムは心得たらしく軽く頷いた。 そして、サイトの股間に視線を落とすと、人間でないにも関わらず呆れた表情だと分かる感情を顔に浮かべた。 「うわっ!? な、なんだよ! 仕方ないじゃないかこっちだって何日も入院で溜まってるんだよ!」 ズボンを未だ押し上げて自己主張している自身のものを抑え、彼は叫んだ。 それをフレイムはジト目で見つめている。心なしか軽蔑の色も混じっている気がした。 「か、勘違いすんなよ!? 俺は別にお前のご主人様を欲望のはけ口として見てるわけじゃないんだからな!」 「きゅる?」 ほう、そうなのか、とでも言いたげな声を発するフレイムに、彼はルイズのような前置きを口走り、 更に恥ずかしさも合わさってか饒舌にまくしたてる。 「キュルケが魅力的過ぎるっつーか……俺には勿体なさ過ぎるっつーか…… 女湯覗きに行ったときだったてキュルケ以外の裸なんて眼中になかったくらいで、 そんで他の奴がキュルケの裸見るのが許せなかったわけで……そんで大声で叫んじまって…… ああもう何言ってんだ俺」 フレイムが今度は少し神妙な顔をしてサイトの顔を見た。 「……岡惚れって奴なのかもしんねーけど、好きな女の裸見たいって思うの、お前には分かり難いかもだけどさ」 相手が人語で何か返答を寄越す存在ではないことに今更ながらに気づき、サイトは自嘲の笑みを浮かべた。 「言い訳してんじゃダメだよな……うん、そうだな、今度会ったらちゃんと言わなきゃな、好きだ≠チて。 そうでなきゃオカズにするのもダメかもしんねー」 そう独り言を言い終え、彼はフレイムを見やった。 すると、フレイムは開けっ放しになっているドアを振り返り、きゅるきゅる、と困ったような鳴き声を出した。 「ぷ……」 ドアの向こうの死角に、誰かがいるということに気づいたのは、その時になってからだった。 「あっははははっ!」 堪えきれなくなった女性の笑い声が医務室に響いた。 サイトはその声に、恥ずかしさを通り越して顔面蒼白になった。 「きゅ、るけ……?」 「ごめんなさぁい、盗み聞きするつもりはなかったのよぉ」 ドアの向こうから現れた人影は、案の定キュルケその人だった。 ・ ・・ ・・・ サイトのベッドの隣、面会者用の椅子に座ったキュルケはロングブーツの美脚を組んで話を聞いていた。 「なるほど、女湯をのぞいたのは騎士隊仲間の巻き添えだったのは分かったわ」 「そ、そう、そりゃ良かった」 「で、怪我の具合はどう?」 「あ、ああ、だいぶ良いよ、明日か明後日には退院できそう」 「そう、良かったわ」 彼女はギーシュが昼間差し入れてくれた葡萄酒を喉を潤す程度に口にすると、 「それで、さっきの話についてだけど」 と切り出した。 「う……」 思わずギクリとしてしまう。 自分をオカズにされて嬉しい女性はそういないことくらいは予想できる。 しかも、そんな醜態をさらしていた男に惚れられていると盛大な妄言を耳にして、彼女は一体どう感じたことだろうか。 これがルイズなら既に五体満足ではないだろう。 恐る恐る、キュルケの顔を窺う。 「はぁ……」 苦笑いを浮かべていた。 安堵とまではいかないが、どうやら怒っているわけではなさそうだ。 「いいの、本当に?」 「え?」 尋ねる彼女の瞳にはどこか物憂え気な感情が揺らめいていた。 「あ、えーと……」 サイトは答えに窮した。 しかし、彼とて無意味に彼女への想いを口にしていたわけでもない。嘘を言ったつもりはないのだ。 (じゃあ、決まってるよな……) サイトは高鳴る胸の鼓動を聞こえないと自身に言い聞かせ、彼女の目を見つめ返した。 「私、わがままよ」 「それは分かってるよ。実は友達想いで面倒見がいいこともさ」 「本気の恋は、けして後悔してはいけないの。私を恋人にして、後悔しないのね?」 「今のところ、後悔してないよ……少なくとも、キュルケが側にいて後悔するようなことはないと思う」 しんと部屋が静まった。 それがどのくらいの時間なのか見当もつかなかったが、実際はほんの一瞬なのかもしれなかった。 ややあって、頬杖をついたキュルケの表情がふと和らいだ。 「……分かったわ」 ふう、と彼女が息をつく。 そして、少し恥ずかしげに付け加えた。 「光栄に思いなさいよ。私がここまで一人の殿方に操を立てるなんてそうないんだから」 「肝に銘じておくよ」 サイトは踊り出したい気持ちをぐっと堪え、笑顔で応じた。 これで本当に、自分たちは新しいスタートが切れる。そんな気がした。 困難も多いだろう。しかし、今はただこの瞬間を祝福したい気分だ。 「それで……」 キュルケがサイトの滲み出てくる歓喜を見透かしたかのように艶然と微笑んだ。 フレイムが何かを察したのか、部屋の外へと出て行く。 「溜まってるのよね……?」 「あ……」 まだ軽く硬度を保っていた彼の股間に、彼女の細い指が伸びていた。 ・ ・・ ・・・ 「ん……ちゅ……ちゅぱ……んはぁ……」 そそり立つペニスに熱く、柔らかな刺激が与えられている。 キュルケの赤い舌先が血管の浮き上がるほどに固くなった男根を這い上がる度に、 まるでその微熱に溶かされてしまうのではないかと思うような快楽が伝わってくる。 目の前にはセクシーな紫の下着を露わにした彼女の股間が広がっていた。 いわゆるシックスナインの体勢で二人は互いを愛撫していた。 サイトも彼女の下着に手をかけ、そっと彼女の秘所へ舌を伸ばす。 淫らに愛撫するというより、そっと口づけするように彼女の花弁の中心を舐める。 「ちゅっ……」 「あんっ!」 キュルケはピクンと彼の舌先が自分の中へ侵入してきた刺激に身体を震わせる。 と同時に、濃密なキュルケのラブジュースの味が彼の舌に広がった。 舌をより深くへ侵入させると、まるでキスをリードするように彼女の膣壁が舌に絡みついてくる。 愛液を促すように、彼は舌先でキュルケの綺麗な桃色の膣内を刺激した。 刺激はあっても、できるだけ丁寧にするのを忘れない。 「キュルケのここ、もう濡れてるじゃないか……?」 「あん……だってぇ」 言うまでもなく、キュルケはいつもより感じているようだった。 「だって、何?」 「……ダーリンが、あんなに好きって言うから」 キュルケのうっとりとした声が、彼の更なる性感をくすぐった。 やはり、自分の手でするなどよりずっと彼女との行為は気持ち良く、そして心地よかった。 この少女をもっと感じさせたい、絶頂へ導きたい。 そう思えるセックスができるのも、もしかしたら彼女の魅力の一つなのかもしれないとサイトは感じた。 「キュルケ、入れていい?」 少し早いが、今日のキュルケの濡れ方なら問題ないと思った。 舌先で感じた彼女の膣壁も、早く雄を受け入れたいとヒクついていた。彼女もインサートを望んでいてもおかしくはない。 少しずつとはいえ、互いに身体の意思疎通ができるようになってきていた。 キュルケは予想通り、小さく頷いて挿入を受け入れてくれた。 「キュルケ……その、避妊しとかないと」 「ん、私が持ってる」 彼女はスカートのポケットからコンドームを取り出した。 そして封を切って中身を取り出す。 すると、彼女は口にその先端をくわえた。 「んー……」 「うぁ!?」 ゆっくりと口をペニスの先端へあてがうと、そのままフェラの要領でゴムを被せてしまった。 「き、器用だね」 「あらん、褒めてるの、それ?」 「もちろん!」 「きゃ!?」 サイトは体勢を入れ替え、彼女の身体にのし掛かった。 「ちょっとダーリン、まだ包帯取れてないんだから無理しちゃダメよぉ」 「はぁはぁ、キュルケ相手に全力で挑まないんじゃ男が廃るよ!」 キュルケのブラウスをはだけ、まろび出た巨乳を思う存分に揉みしだく。 「んぁああ!?」 喘ぐ彼女の女性器に自身の男性の切っ先を合わせ、腰をゆっくりと推し進める。 彼女の中は、トロトロの愛液に満たされ、熱く、粘度をもって彼を受け入れていった。 軽く腰を振るだけで、クチョリと愛液とペニスが絡み合う音が聞こえる。 すっぽりとキュルケの中へと侵入を終えた時、熱にうかされた表情でキュルケが囁く。 「あぁ……ダーリンの、固い……」 「キュルケの中も、凄く熱いよ……」 そっと唇を重ね、二人は律動を始めた。 まだ包帯の目立つサイトにその運動はかなり身体に負担だったが、 キュルケから得られる満足感に比べればさしたる問題ではなかった。 怪我人とは思えないたくましさで、サイトはキュルケの膣内へペニスを打ち込み続けた。 規則的な動きで二つの乳房が揺れ動き、過剰にあふれ出た愛液がベッドのシーツに染みをつくっていく。 珠のような汗をかきながら、二人はどちらが求めるでもなく唇を重ね、舌を絡め合う。 「はっ はっ はっ はぁっ ぁうっ」 行為は女性が達することのできる時間にやっと届くかの短さだったが、 キュルケは自分のために身体を酷使してでも腰を振るサイトの腕の中で絶頂感を抱きつつあった。 取り立てて今回が従来のセックスと違うわけではない。しかし、今の二人には愛情という新しい要素が加味されている。 快楽を貪るだけでなく、互いを理解し合い、共に絶頂を迎えたいとより強く願う心がある。 「ねっ ねぇっ わ、私、もうっ……」 「俺もだっ……!」 「んああっ! 凄いぃっ!」 キュルケがラストスパートに入ったサイトにしがみつくように手足を絡ませた。 その刹那、サイトが射精感を理性で抑えられる限界を超える。 サイトは本能的にキュルケの子宮口まで最後の一突きを送り込み、そのまま硬直させた。 「うっっ……!?」 「あっ……」 一瞬の静寂。 ドックン! 「ふぁああああああーっ!?」 波にさらわれるような感覚が二人を襲った。 何もかもが白濁し、ただ壊れそうなほどの快感があるだけだった。 キュルケはサイトの背中に爪を立て、サイトは跳ねる彼女の腰を逃すまいとがっちりと固定して精液を膣奥へ送り込み続ける。 「あっ……あっ……」 ブルル、とサイトが腰を小刻みに震わせ、残滓までもを放出する。 それを彼女の膣内も助けるように生々しくうねり、吐き出された精を自身の奥へと誘う運動を起こす。 その運動が収まると、二人がベッドに脱力した。 「はぁー……はぁー……」 「キュルケ……」 サイトは恋人の目尻に溜まった涙を、宝石を扱うように慎重に、そっと手で拭き取ったのだった。 <続く?>