タバサは才人とのダンスを夢見た翌日、非情な現実を突き付けられていた。
 なんとダンス希望者数が、2,000人以上も居るのだ。無論事前に大臣達によって
 選別されて残った人数だった。無論皆、うら若き女王の王配になりたい者達だ。
 王族と縁戚になれば、いやが上にも家の格は上がるし、長男に家督を持って行かれた
 次男、三男にとっては、兄を見返す(見下ろす)千載一隅のチャンスであった。
 事実上のお見合いダンスと言って差し支えないだろう。
 同様に才人の方にもダンス希望者が相当数いる模様だ。

 タバサは頭を抱えた。
 ダンスは、1日約3時間。それを8日間行うのである。
 しかしダンスは、1曲当り約5分。休憩も考えると、1日に30人程度しか消化出来ない。
 これでは園遊会で踊れるのは、240から250人程だ。
 とてもではないが、外国の外交官である才人と踊るのは夢の又夢であった。
 この240〜250人の中に才人を入れれば、あらぬ疑いが掛けられるのは必至と言えた。
 才人とのダンス一曲を夢見てたタバサにとっていかんともしがたい現実であった。

(せっかくあの人と1曲踊れると思ってたのに…これでは園遊会を開催したくない。
 何とかして、あの人と踊る方法は無いものだろうか?あの人と…)
 不意にタバサの脳裏にフリッグの舞踏会での才人とルイズのやり取りが浮かんだ。

「ちゃんとリードしなさいよー」
「俺はダンスなんか踊った事ねぇよ。せいぜい運動会でオクラホマミキサー位しか
 やった事ねぇもんよ」
「なにそれ?」
「簡単に言うと、短時間で沢山の人と踊るダンスみたいなものと思ってくれれば良いよ」
「あのねぇ、ダンスと言うのは一組の男女がお互いを見つめ合いながらするものなのよ?
 短時間で何人も入れ替わったら詰らないじゃない」

「そう言われてなー、俺が考え付いた訳じゃねぇし、大部分の連中は嫌々やっていたしな」
「あんたの国ってホント変わってるわね」
「俺達学生は、ダンスなんてやる機会無いし、大人になってもダンスなんか一回も踊らず
 に死んでいく人が殆どだからな。まっ、ダンスなんて一部の上流階級の人達が踊るもん
 なんだよね、実際」
「そうなんだ。で、そのオクラホマミキサーってどうやるの?」
「そんなの聞かないでくれよ。説明出来る程練習してねぇし、もう何年も前の事で、殆ど
 覚えてねぇよ」
「しょうがないわねー。分かる範囲で構わないわよ」
「えーと、男女に分かれて円を描くように平行に並んで、20秒から30秒位で次の人と交代
 だったと思う。自信ないけど」
「たった2、30秒?随分と忙しいわね。もっとゆっくりやればいいのに」
「仕方ないんだよな。これは自分達の為じゃなくて親や、近所の人に見せるものだったし、
限られた時間の中で、出来るだけ多くの人と踊れるようにしたものだったからな」
「それで楽しかったの?」
「いいや、はっきり言ってなぜか踊りたくない奴と踊って、踊りたい人とは直前で終了に成るんだよ、これが。いわゆるオクラホマミキサー伝説って呼ばれるやつなんだけどね」
「ふーん、そうなんだ。でもこれからは舞踏会とか有るから、ちゃんと覚えたほうが身の
ためよ」
「俺、使い魔だし、平民だから関係無い気がするけど、ご主人様が恥を掻かないように
 出来るだけ覚える事にするよ」
「そうして」

(これだ!30秒で1人踊れば、1日で約300人消化出来る。7日有れば、此処に有る名簿
 の人数は消化可能…多少増えても最終日にあの人とラストダンスを1曲フルコーラスで
踊れるはず…いいえ絶対踊る。そのためにも、ガリア版オクラホマミキサーを考え、
実行しなければ)

思い立ったタバサの行動は素早かった。
大臣達やオーケストラ、舞踏会の司会進行役を交えてガリア版オクラホマミキサーの
協議を行った(無論、表向きは有力貴族と出来るだけ踊る為として)
大臣達は、表面的には渋い顔をしていたが内心では大喜びであった。
なぜなら彼等は、多数の有力貴族達から相当なごり押しを受けていたからだ。
約2,000人という数も、彼等にしてみれば身を削る思いで減らしたもの。
もし園遊会で踊れなかった場合、相当数の有力貴族を敵に回しかねない状況になって
いた事だろう。その上自分の面目が潰れずに済むのだから。それにこれを提案したのは
女王自身、いくらでも申し開きが出来るのだから乗らない手はなかった。
こうして両者の思惑の一致(?)した協議は、数時間で終了し、有力貴族達にはその日
の内に伝書フクロウなどで通達され、ヌーベル・グラン・トロワでは、大きな張り紙が
幾つも張り出され、もうじきやってくるであろう各国の要人のための説明がなされて
いた。
 即位園遊会が始まった。
 護衛なども含めれば、総勢1万を超える大園遊会であった。
 タバサ自身にとっては、各国との要人との顔合わせや、折衝などはどうでも良い事
なのだが、「最終日に才人と1曲踊る」を潰さない為に、精力的に仕事をこなした。
傍から見れば、行動的な新女王に見える事だろう。
全ては「才人と1曲踊る」唯その為だけなのだが。

ダンスの時間になると、皆指定された会場に移動した。人数が多過ぎる為、一つの会場
では収容出来ないので複数の会場で行われるのだ。

タバサのダンス相手達は、新女王に気に入って貰おうと、与えれた30秒の時間に自分を
精一杯アピールした。無論タバサにとっては、鬱陶しい事この上ないのだが、我慢した。
流石に300人以上のアピールは苦痛だった。が、「才人と1曲踊る」それが1歩近付いた
と思うと1瞬でそれも消え去った。

そうしてつつがなく最終日がやって来た。
(その間、ダンスで、ルイズとアンリエッタが才人の足を踏むなどして、ダンスの輪から
 わざと外れて其の日1日踊り明かしたそうな)
 それを聞いたタバサは…(羨ましい。私は彼と1曲踊る為に物凄い苦労と苦痛を
味わったと言うのに…でも…いよいよ彼と踊れる。絶対に誰にも邪魔させない)
タバサは名簿とにらめっこをしていた。才人とラストダンス1曲フルコーラスで踊る為
には、才人との直前でミキサーが終了しなくてはならない。後でも前でもいけない。
もしそうなっては、この10日余りの苦労が全て無駄になる。一人の誤差も絶対に許され
ない。タバサは綿密に計算して最終日の踊る順番、面子を確定した。
(とうとう、あの人と踊れる)
 タバサの胸は、喜びに打ち震えた。
 
 最終日のダンスが始まった。
 この日もタバサのダンスの相手は、アピールに熱心だったがこの日はタバサには一切
 聞こえていなかった。(今までも殆ど聞いていないが…)
 タバサの関心は、ミキサーが正確に才人の前で終わるかと言う一点だった。
 何回も計算し尽くしたが、ルイズ達の様な行動に出る者がいないとは限らない。
 タバサは才人から目が離せなかった。
 どんどん近くなる才人、どんどん大きくなる鼓動。
 それでも聴覚を研ぎ澄まして、残り時間の音(演奏者に事前に協力要請済み)を聞き
分け、冷静に計算する。
(大丈夫、このまま行けば彼と踊れる)
 やはりそれでも一抹の不安が有る為、決して才人から目が離せなかった。

 才人迄後一人となった。
 次のパートナーチェンジの時、合図の音が聞こえねば一巻の終わり。
 タバサは耳と研ぎ澄ませ、音を聞き分けた。
 チェンジと同時に合図が鳴った。
 タバサの心の中に喜びが溢れかえる。
(とうとう、とうとう彼と踊れる)

そしてミキサーが終了し、司会進行役が魔法を用いて各ホールに告げた。
「これでミキサーは終了となります。ラストダンスは、フルコーラスで行います。皆様方
 存分にお楽しみ下さいませ」

 タバサは才人と向き合った。
「よっ!久しぶり…とっ、いけね。…お久しぶりです。シャルロット陛下」
「敬語は不要。今まで通りで構わない」
「いや、でも…」
「構わない」
 この時タバサは自分の使い魔が羨ましくなった。言いたい事を全部話せる使い魔を…
(おしゃべり過ぎるが…)

「すまないげど俺はダンスはあまり踊れねェ。もしあれだったら誰かと代わろうか?」
「その必要はない。私が貴方に合わせてあげる」
 10日余りの苦労を全て無駄にする提案だったので即座に拒否した。
(私がこの1曲のために、どれ程苦労したと思ってるの?相変わらずの朴念仁)

 そしてラストダンスが始まった。優雅なワルツの調べがホールに響き渡る。
 才人は本当に下手くそであった。が、経験値がほぼ0ではどうしようもない。
 他の貴族達は、幼少の頃から社交界に向けて、ダンスを徹底的に叩き込まれるのだから
 その差は歴然であった。
 無論タバサはそんな事は百も承知していたから、言葉通り見事に才人に合わせて見せた。
(この人と踊れるのは、これが最初で最後かもしれない。ならばこの5分間を人生最高の
 時間にする。今まで辛く苦しい事を忘れさせてくれる、そしてこれからの苦難も乗り
越えさせてくれる、決して色褪せない、そしてどんな時でも自分を支えてくれる、
そんなひと時にする)

 タバサは全神経を才人に注ぎ込んだ。
 目は才人から一瞬たりとも離さず、身体は才人に密着して、全身で才人の微妙な動き
さえ逃さず、感じ取っていた。

(この時が永遠に続けば良いのに…この人の優しく太陽の様な微笑み、他人の為に真剣に
 怒る顔、ルイズに虐待され怯える顔、友人と馬鹿騒ぎしている顔、故郷を思い出し
 泣きはらす顔、いずれも今となってはとても愛おしい。もみじの様な小さな私の手を
握る大きな手、数々の死闘を潜り抜けてきた逞しい腕、この腕に抱き締められたら
どんなに心休まるだろう…そして私の目の前に有る同年代の男性と明らかに厚みの違う
胸板…顔を埋めたくなる衝動が何度も襲ってくる…でも、それはダメ。彼にはルイズが
いる。どんなに彼を求めても決して叶わない。私の心の中に封じ込めなくてはならない。
彼女が羨ましい…何度彼に抱き締められたのだろう?何度顔をうずめたのだろう?何度
唇を重ね合わせたのだろう?)

そして演奏が終わりダンスが終了した。
才人は一礼をすると
「じゃあ、またな」
 そう言うとルイズ達の方に歩いて行った。

 タバサは無言で見送っていた。
 不意に後ろから話しかけられた。
 イザベラであった。
「エレーヌ。このまま何も言わずに彼を帰してしまうの?どうやら恋人がいるらしいけど、
 そんなのどうでもいいじゃない。自分の気持ちは、はっきり伝えないと後で後悔するよ。
 勝ち目のない戦いだからって逃げてちゃダメじゃない。貴女は勝ち目の無い状況でも
 それを覆して来たじゃない。伝えても無駄かもしれない。それでもしないよりは遥かに
 マシだと思うけどね。踏み込まなければ傷つく事は無いけど、踏み込まなきゃ決して
勝つ事なんて出来やしないよ。如何するかは貴女次第だけどね」

タバサはしばし逡巡した後、才人の方に走り出した。
「まったく北花壇騎士の時は、何の感情も無い人形だったのに、変われば変わるものね…
あの男がエレーヌの凍てついた心を溶かしたんだね。恋の力って本当に凄いわね。
私では溶かす事が出来なかった貴女の心、思う存分ぶつけてやりな。勝ち目は無くても
私達が貴女の恋路を手伝ってやるわ。それがせめてもの私の罪滅ぼし」
そう言ってイザベラは、走って行くタバサを見つめていた。
「待って!」
 タバサは才人を呼び止めた。
 既に周囲には、アンリエッタを始め、ルイズ、ティファニア、キュルケそして水精霊
 騎士隊の面々がいた。

「何か用か?タバサ」
 才人は振り返って尋ねた。

タバサは才人の目を見つめる。
「貴方にはルイズがいる。それは知っている。
帰るべき故郷がある。それも知っている。
でも…それでも…私は貴方の事が好き」

歓声と驚きが衝撃波となって周囲に広がって行く。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、タバサ」
 タバサのいきなりの告白に才人は驚き、戸惑った。

「迷惑なのは、分かっている。
 でもこれは嘘偽りの無い私の気持ち。
 本当は、私の胸の奥に留めるつもりだった。
 でも後悔はしたくない。
 例え勝てる見込みが0でも…
 それでも私は貴方の事が好き」

「いや、でも、それは…」
 才人は返答に困った。
 周囲には、トリステインだけではなく各国の要人が大勢いる。
 もしNOと言えばタバサにとんでもない傷が付くだろう。
 だがYESとは決して言えない。言えばルイズと別れなければいけない。
 そんなのは絶対に出来ない。

 返答に困っている才人を見てタバサが口を開いた。
「ごめんなさい。貴方が困るのは分かり切っていた。
 私の体面なんか気にしなくていい。
 NOと言いたければ、そう言って構わない。
 そうすれば私自身諦めがつく」
 タバサの告白を他人事とは思えない人物がいた。
 アンリエッタである。
(自分以外にもサイト殿に思いを寄せる人物がいた。それも自分と同じ女王で…
 私は彼女の様に、公衆の面前で告白する事が出来るだろうか?)
 何度どなく彼に思いを告げて唇を重ね合わせた事が有るが、まだ一言も彼に「好き」
だと告げていない事に気付いた。
 今告げなければ、取り返しのつかない事になる。そんな予感が襲ってくる。
 今告げなければ…

「サイト殿」
 才人は、アンリエッタの方を向いた。冷や汗がどっと流れた。
 アンリエッタは夜の顔を出していたからだ。
 才人とて大馬鹿ではない。アンリエッタが何を言うつもりか即座に理解した。

「わたくしも貴方がルイズをどれ程大事か良く存じております。
 帰らなけれなならない故郷があるのも存じております。
 それらを承知の上で申し上げますわ…
 わたくしは、一人の女として貴方を愛しておりますわ。
 例え神がこの身を引き裂こうとも、その想いは変わりませんわ。
 以前貴方に話しましたが、どちらか一人を選べなどとは申しませぬ。
 貴方は、わたくし達の想いを全て受け止めて下さいまし」
 女王にあるまじき発言であったが、アンリエッタは本気でそう思っていた。
 才人は更に答えに窮した。返答次第ではハルケギニア全てを敵に回しかねない状況だ。
 
 そしてもう一人、2人の女王の告白で心が揺れてる人物がいた。
 ティファニアである。
(2人共サイトにはルイズがいる事を知った上で告白している…どうして?…2人を
引き裂くことになるかも知れないのに…どうして…私の心はこんなに痛むの?
2人がサイトに想いを打ち明ける度に、どうして心に痛みが走るの?
2人共サイトが帰るべき世界が有る事を知っているのに、どうして打ち明けるの?
2人共晴れやかな顔をしている…サイトに「好き」と言えたから…なの?)
その瞬間、ティファニアの胸に更に強い痛みが走った。
 
(もしかして私もサイトの事が「好き」なの?…)
 ティファニアは、サイトと出会った日からの事を走馬灯の様に思い出していた。
 全身傷だらけで、今にも死にそうなサイト、綺麗だと言ってくれたサイト、故郷に帰る
為に一生懸命努力していたサイト、トリステインに帰る際「またな」って言ってくれた
サイト、巨大ゴーレムから救ってくれたサイト、ベアトリクスに頭を下げてくれた
サイト、胸を触って確かめてくれたサイト。
それからロマリアでルイズが才人を元の世界に帰したと言った時の事を思い出した。
(あの時、私は「帰れて良かったね」と思った。急なお別れで悲しくもあった。
でもそれら以外に言葉に出来ないもどかしさが有った。
…ああ、そうなんだ。私は2度とサイトに会えなくなるのが辛かったんだ。だから
彼を元の世界に帰したと言ったルイズを問い詰めたんだ。あれは彼女を心配したんじゃ
なくて、その不満を彼女にぶつけていただけなんだ…そうなんだ。私はサイトの事が
好きなんだ…初めて会ったあの日からずっと…今頃気が付くなんて…私って何て間抜け
なのかしら…)

才人の方を見る。
2人の女王に告白されて戸惑っている。
ルイズが何やら抗議している。
(私が今、告白すればサイトにもっと迷惑を掛ける…でも…今、告白しないとサイトは
 もう私の手の届かない所に行ってしまいそう…)

 ティファニアが才人に近付き、話し掛ける。
「サイト」
 ティファニアの表情を見て顔が青ざめる。
 如何見ても今から告白します…と言う表情だったからだ。

「ごめんなさい、サイト。私ね、今気付いたの…貴方が好きだって。初めて会った日から
 ずっと…私って凄い間抜けよね。今頃気付くなんて…それに貴方にはルイズがいるのに
 迷惑だって私も分かってる…でもね…どうしようもないの。2人の女王陛下が貴方に
 告白するのを見て、サイトが私の手の届かない所に行ってしまいそうな気がしたの…
 そしたらね、初めて会った日からの事が次々と思い出されたの。
貴方にとって私は友達の1人にしか過ぎないんでしょう?
私もお友達の1人だと思ってた。でもそれは違ってたの…そう思い込んでいたの。
貴方にはルイズがいたから…でも気付いてしまった…自分の気持ちに…
私の母がお妾さんだって言ったよね。私もそれでいいかな、と思っているの。
貴方達2人がどれ程強い絆で結ばれているか私も知っているから…
私は、サイトのお嫁さんになれなくても構わない。でもね、ずっと傍にいたいの…
サイトは私に外の世界を見せてくれた。これからもきっともっと沢山の世界を見せて
くれると思うの…私の我儘、聞いて欲しい」
 これらを聞いたキュルケがルイズを引っ張り、耳打ちした。
「貴女どうするの?ここでサイトに告白しなくちゃ貴女に勝ち目は無くなるわよ!2人の
 女王に加えてあのハーフエルフの子、推測だけど彼女アルビオンの王族でしょ?
 女王陛下が直々にハーフエルフを迎えに行け、なんて他には理由考えられないからね。
 それに虚無の担い手とも言っていたわ。多分担い手は、王族若しくは始祖ブリミルの血
 を引いた者にしか現れないんでしょ?でなければもっと大勢いる筈だし…私の勘が
当っていれば、彼女は次期アルビオン女王よね。反対派が相当出そうだけど、唯一の
正統な血統で有る以上、可能性は大きい筈よね。そうなるとサイトに求愛しているのが
女王3人と言って良いわよね?となるとサイト一人では断る事は不可能だわ。そして
ここで貴女が『サイトなんか好きじゃない』みたいな事言ったらもう打つ手無しよ?
分かってる?ここで素直にならないと一生後悔する事になるわよ」

「そんなの分かってるわよ!でもこんな大勢の前で…その…するなんて…」
流石のルイズも告白3連発には驚いた。しかも各国要人が大勢いるこの場所でとは…
キュルケが言っているのは正しい。その通りにしなければ確実に才人は、彼女達の
誰か…下手をすると全員と結ばれてしまう。そうなると幾ら公爵家三女とはいえ、
手も足も出せなくなる。王配にでもなれば、自分の使い魔だ、なんて言い訳通る筈も
無い。そうなる前…つまり今を逃すと万事休すになるのは明白だった。

「私は、立場上タバサを応援するわよ。なんたって親友だしね。でも貴女にサイトを
 失って欲しいとは思わないわ。いいえ、貴女がサイトを失えば廃人になるわ。
 間違いなく…そんなの私見たくなくってよ。無論タバサ達もね。
 だから貴女は、ここでサイトにきちんと告白しなければいけないわ。
 その結果はどうなるかは私には分からない…神のみぞ知る…ね。
 さあ、行ってらしゃいな」

 ルイズは才人の後ろに回り込み、マントをくいくいと引っ張った。
 才人は、後ろを振り向いた。
 ルイズは顔を下に向け、モジモジしていた。

「サ、サイト、あ、あのね、その、私ね、あんたのことをね、つまりね」
「うん」
「す、す、す、好き、かもしれないわ」
「うん」
「ご、ご主人様がこう言ってるんだから、何とか言いなさいよ」
「うん」
「ルイズ、それではここに入り込めないわ。自分の想いを正直におしゃいな」
 見かねたアンリエッタがルイズを諭す。

「うっ…サ、サイト、私ね、あんたの事、ずっと前からす、好きよ。でね、私はあんたを
 誰にも渡したくない。例え姫さまだって。だって、だって私、あんたと2人で暮らす事、
 ずっと夢に見て、そして楽しみにしてたんですもの…はっきり言えば誰にも邪魔され
たくない!ホントはシエスタだって居て欲しく無いの!…でも…それは出来ないの…
あんたは、敵が多くなり過ぎた。そして今回の事でもっと増えるわ。そうなると私1人
じゃ、あんたを守りきれない…多分、姫さま1人でも…あんたを守る為には皆の力を
合わせないといけないの。その為には…嫌だけどあんたを皆で共有するしかないの。」

ルイズはアンリエッタ達の方を向いた。
「姫さま、タバサ、テファ、サイトの事を思うんなら私の提案、受け入れて下さいますか?」

「もちろん」
 3人は声をそろえて答えた。

「あのー、話が纏まったところ恐縮なんですが、世間的に凄く不味くないすっか、それ。
 再考した方が宜しいんじゃないかと…」

「却下」
 4人は声をそろえて答えた。

 4人が協議した結果、シエスタも含めた5人で才人の妻となり、ルイズ卒業後は
トリステイン王宮にルイズ、才人、シエスタが一緒に住み、ティファニアも卒業後は、
トリステイン王宮に住む事となった。タバサには、ド・オルニエールにあるゲートの鏡
を貸し出す事になった。ティファニアの為にもルイズは、始祖の祈祷書を開いて呪文を
覚え、同じ物を作り出した。

こうして才人は、自分の意見をスルーされ、5人の妻を持つ事と相成った。
人々は、才人をこう呼んだ。
「幸福過ぎて、不幸な大王さま」と…

         FIN 


URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White
トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!