トリステイン魔法学院に、4体の竜騎士が妙な品を網を用いて、吊り下げて降り立つ
降り立った竜騎士は同僚が一騎、待機してるのを見て話かける
「よお、お前か。喋れる使い魔持ってるせいで、災難だな」
「お前達の誰かに押し付けようと転属願い出したんだが、却下されちまったよ。シュヴァリエアニエスのお守りはマジ勘弁」
「俺達だって願い下げだっての。今日は非番だから、グラモン元帥からバイト紹介されたんで、小遣い稼ぎだ」
「何だか、けったいな物運んで来たな」
「学院の研究用じゃないのか?依頼者は聞いて驚け。近衛待遇の平民だ」
「それ、サイトって呼ばれてなかったか?」
「あぁ、そういえば坊っちゃんが、そんな風に呼んでたな」
「アイツには訓練と言えど、喧嘩売るのはやめとけよ?はっきり言って、竜騎士が空から攻めても勝てるか解らん。シュヴァリエアニエスが、剣のみで勝つのが難しい相手だぞ?しかも、本気出したらそのシュヴァリエすら雑魚扱いって、シュヴァリエ自身が言ってたからな」
「奴らの支払い保証の証拠見せて貰ったからな。絶対にそんな事するかっての。なんと、学生とその平民で、毒ヒュドラの特大物を、狩って来やがった」
「…化け物って、居る所には居るもんだな」
「違えねぇ」
竜騎士達は、お互いに肩をすくめる
「下手すりゃ俺達迄、奴さんの稽古に駈り出されっかもな」
「幾ら何でも、騎乗した竜騎士を稽古に出すなんざ……」
「シュヴァリエが呟いてたんだよ。もう私じゃ手に余り始めたな、そろそろ騎兵相手も始めるかって」
「……その時は、お前に任せる」
「苦労は分かち合うもんだぜ、兄弟」
「縁は切る為に有る」
「冷てぇなぁ。空で生きる兄弟じゃねぇか」
「クックックック。随分と面白い事になってるね」
竜騎士達が、ばっと振り向くと、例の男が立っている
「やぁ、何時もご苦労様」
「聞いてたのかい?人が悪いねぇ」
「いやいや、今着いたばっかだよ。学院の様子は?」
「シュヴァリエが暇つぶしに、学生捕まえて苛めてる位だな」
「俺の代わり?」
「10人単位で、やっとこさお前さん一人分らしいぞ」
「そいつは気の毒に」
才人の背後を見つつ
「そう思うんなら、代わってやれ」
ヒュッ
才人に背後からの奇襲攻撃
ギィン!!
「ちっ、随分反応が良くなったな」
「まぁ、随分実戦で鍛えたもんで」
才人はデルフを軽く抜き、袈裟掛けに斬りつけたアニエスの剣を受け止めた
「どうやって気付いたんだ?デルフは警告しなかっただろ?」
「此方の騎士様の視線だね。後はアニエスさんの癖と、真剣なら多分、受け易い様に攻めるだろうなって、予想。まかり間違っても、殺す事だけはしないかなって」
「参った。もう剣技は教える事はなさそうだ。次は騎兵相手にするか、なぁ、竜騎士殿」
「いきなり竜騎兵は壁が高くないですかね?先ずは、騎兵と幻獣騎兵からで」
「勿論用意はするさ、だが、今の内にお願いしとこうかとね。そちらの対地訓練にもなるだろう?」
「だ、そうだぞ?皆」
話を振られ、全員苦笑で答える
「アニエスさんは、俺をどうする積もりなんだ?」
「全ての兵科に対応出来る様にしてやる。勿論銃兵も対象だ」
「はぁ〜先は長いな」
「ふ、一通り終わればな、貴様はトリステイン軍全てに関係が持てる様になる」
「コネ作りって奴か」
「一石二鳥だろ?」
「確かに」
才人は肩をすくめる
「其で、お前達と一緒に出た連中は?」
「説明しに、討伐証明を持って学院長室に怒られに行ってるよ。シエスタは、タルブで休暇だと」
「討伐は成功したか?」
「あぁ、問題無くね」
「ヒュドラもか?」
「そだよ」
「随分化け物ばりに働いたもんだな。貴様だけで、一個中隊か?」
「ヒュドラ狩るのに一個中隊?」
「其に竜騎士の航空支援、一個小隊3騎含めてやっとだ。銃兵なんざ役立たずだ」
竜騎士が答える
才人の視界に桃髪が横切るが、才人は会話を優先する
「確かにえらい鱗硬かったもんな。切り裂いても、肉に跳ね返されたし。いやぁ、首落とすのにカウンター使わないと無理だったわ」
「…毒ヒュドラに近接戦仕掛けたのか?」
「そだよ」
「何で生きてるんだ?」
「対毒用に水メイジに、大量に簡易マジックアイテム作って貰った。一回限りでぶっ壊れる奴」
「何とも、行き当たりばったりな作戦だな」
「ま、結果オーライだよ」
「そうだな」
竜騎士達は感心しつつ呆れる
「坊っちゃんの討伐での様子はどうだった?元帥に土産話したいんでな」
また桃髪がひょこりと出るが、才人は会話を優先する
「オーク戦とヒュドラ戦は、指揮官務めて貰ったぞ。オーク戦の指揮は見事だった。味方の失策もきちんとカバーしてな。ヒュドラ戦は再生を始める前に攻撃を畳みかける様に指揮してさ、正にグラモンって感じだよ」
「コボルト戦は洞窟に4〜50位のコボルトが居てさ、洞窟に入ったら挟撃喰らったんだが、ギーシュは無難に戦線維持してくれて助かったわ。土メイジって安定してるのな」
「ほ〜、坊っちゃんも中々やるな。其ともお前さんの影響か?」
「元々グラモンで教育されてたから、素質は有ったんじゃないか?以前はいい加減だったみたいだが、最近は授業も真面目に受けつつ、俺の稽古にも付き合ってくれてるよ」
「其はいつ位からって聞いてるか?」
「俺が使い魔として召喚されて、俺と決闘してからみたいだな」
「決闘って禁止だろう?」
「ほら、俺は平民、ギーシュは貴族」
「あ、そいつは盲点だな」
竜騎士達は笑う
「何にせよ、お前さんがどうやら坊っちゃんに、良い影響与えてるみたいだな。此からも宜しく頼むわ」
「グラモンは指揮官としては、本当にどいつも外れが少なくてね。死にたくないならグラモンに従えってのが、一兵卒の決まりみたいなもんさ」
「女関係は?」
才人が聞くと
「もう酷ぇのなんの。多分戦傷より、色恋沙汰の刃物傷のが多いんじゃないか?」
竜騎士達が爆笑し、アニエス,才人も一緒に爆笑する
「アハハハハ。グラモンの女癖の悪さは知っては居たが、まさか其処までとはな」
「なんだ。シュヴァリエにも手を出そうとしてたのか?」
「銃士隊の隊則にはな、グラモンが寄って来たら発砲を許可するって、きちんと殿下の署名付きで名文化されてるのさ」
「銃士隊の隊則にはな、グラモンが寄って来たら発砲を許可するって、きちんと殿下の署名付きで明文化されてるのさ」
「ぶわっはっはっはっは。は、腹痛ぇぇぇぇ」
全員で腹を抱えて悶える
「ギーシュの家族って、何やってんだよ?」
「1に女探しで、2に口説きで、34が無くて、5が酒を片手に口説くだな」
「軍は?」
「んなもん、グラモンには女遊びの間の暇つぶしだって」
「どうしようもねぇな、おい」
「違えねぇ」
クックックックと全員発作が収まらない
才人の視界にさっきから、桃髪が隠れた積もりで、ちらりとして居るが才人は気にせず、会話を楽しむ
「で、銃士隊に実際に来た事あんの?」
「あ〜来た来た。学院に居るギーシュ以外は全員来てな、元帥含めて全員に鉛玉で歓迎したっけ」
「…撃ったのかよ」
「其がさ、平気な顔して受けるんだよ。レディの熱烈な歓迎嬉しく思うとか言い始めてさ。グラモンは全員土メイジでね、硬化使って銃弾無効化するんだ」
「なんつうか、筋金入りだな」
「全くだ、でも近付いた時に杖ぶった斬って、再装填した銃構えると、やっと逃げ出す」
「あっはっはっはっは。其でこそグラモンだな」
竜騎士達は笑いの発作が止まらない
「いやぁ、其がだな。結構良い射撃訓練になるから、隊員達には評判良いのよ。今度はいついらして下さるかしらってな」
「ぶわっはっはっはっはっは」
またまた全員で腹を抱えて笑う
「み、見てぇ。グラモンって、天然の芸人かよ」
「隊員達がグラモンを追っ払う時にまた来て下さいねって叫ぶんだよ。そうするとまた来る」
「馬鹿やるのも血筋かよ」
「だろうな。しかも奴らは真剣にやっている」
「だから、グラモンは憎めないのさ」
クックックックと、笑いの発作を止めずに竜騎士が答える
「ギーシュって、グラモンにしてはまともだったのか?」
「もうちょいはっちゃけないと、グラモンらしくねぇな」
「だな」
「才人君」
「あれ?コルベール先生」
「ここ此は何だね?」
「丁度良かった。実はコルベール先生に、相談があったんですよ」
「才人君、質問に答えてくれたまえ」
「あぁ、すいません。科学の一部。此は金属で出来た竜、飛行機です。その中での戦闘機と呼ばれる兵器」
「此が、飛ぶのかね?」
「才人、本当か?」
「えぇ。ですが足りない物が有りまして、先生に相談しようかと」
「あぁ、済まねえ。ちと相談なんだが」
「はい、何でしょう?」
「俺達はまた明日から任務なんだよ。今日支払って貰えないと、次の休暇にこちらに来れるか解らないんだ。だから悪いんだが、何とか支払って貰えないかね?」
才人はぽんと手を叩く
「コルベール先生。悪いけど一時的に立て替えて貰えません?こちらの換金迄、まだかかるんですよ」
「うむ。この飛行機とやら、この炎蛇の脳髄に直撃するモノがある。喜んで出させて頂こう」
コルベールが金を取りに研究室に戻る
「良い先生で助かったな」
「此を持って来たのも、コルベール先生に見せる為みたいなもんだしね」
「今度は何する積もりだ?お前さんの稽古やら行動やらは、確かに飽きないんだよな」
「多分面白い事さ」
才人はニヤリとする
「で、アニエスさん。相談なんだけど?」
「ん?何だ?」
「暫くこの零戦にかかりきりってなりそうなんで、稽古時間を短縮して欲しいんだけど?」
「其は大事な事か?」
「作業の進展具合によるから、何とも言えないなぁ。只、絶対に損はしないと思う。こいつが飛ぶの、見たくない?」
「其は、飛ぶなら是非とも見たいな。やっと、この目で見れる科学だろう?」
「じゃあ決まりって事で、時間が空いたら稽古に傾注ってカタチで良いかな?」
「其で良い。明日から騎兵相手による稽古するぞ、馬は学院の使って、私が騎乗しよう」
「軍馬じゃなくて良いの?俺は?」
「足りない分は魔法で対応して貰う。騎馬と徒歩。両方だ」
「相変わらず激しそうだな」
「あの剣水含ませると伸ばせるからな。槍にも対応出来るぞ?」
「消費した分を補給以外にも、使い途有ったのか」
「そういう事だ。最初はランスの代わりに使う。いきなり突撃喰らって、死なれたら敵わんからな」
「才人君、持って来たぞ」
コルベールが走って戻って来る
「ああ、すいませんコルベール先生。はい、確認お願いします」
「はいよ……良し、確かに貰った」
「あれ、最初に言ってた費用より安いんじゃ?」
「さっき随分笑わせて貰ったし、近衛待遇の隊非所属の平民なんざ居ないからな。先行投資させて貰う」
竜騎士達はニヤリと笑う
「改めて名前を伺いたい」
「才人、平賀才人だよ」
「俺達は、トリステイン竜騎士隊だ。何か有ったら呼べ。其所のシュヴァリエアニエスと同じく、力になる」
「宜しく」
才人は一人々々に握手を交わす
「グラモンの坊っちゃんを宜しく頼むぜ。未来の士官を育ててくれ」
「俺で良いのか?」
「アンタが多分一番だ。知ってるんだろ?」
「…まさか」
「そういうこった」
竜騎士達は才人の肩を叩き、竜に騎乗し才人に向かって敬礼すると、一気に上昇。魔法学院から去って行った

「お宅の同僚、気持ち良い連中だな」
「まぁな、空を飛ぶ奴に貴族平民の別は無いからな。空軍の階級に、貴族と平民の区別なんざ無いぞ?」
「良いことじゃないか」
「陸軍が硬直してんだよ。俺達は銃士隊出来た時は、やっとかよって思った位だからな」
「だとさ、アニエスさん。空軍には評価されてるみたいだよ?」
アニエスはそっぽを向き、紅くなりながら、ブツブツ言っている
「……何か、今のシュヴァリエ見てると、今迄の堅物イメージがガラガラ崩れるな」
「佳い女でしょ?」
「今のシュヴァリエなら有りだな」
シュッ
竜騎士の喉元に剣が突き付けられる
「ちょっ、シュヴァリエ?」
「私を口説いて良いのはな、一人だけだ」
「り、了解、だから剣下げて」
「ふん」
チン
「アニエスさん、照れ隠しとは言え、酷いね」
「ふん」
アニエスは赤面しながらそっぽを向く
「才人君、そろそろ良いかね?」
「はい」
「此が空を飛ぶには何が必要かね?」
「此処の給油口開いて貰えますか?」
「解った」
コルベールが給油口をアンロックで開き、才人が中を確認する
「良かった。少し残ってた。この油、ガソリンを錬金して欲しいんです」
「ふむ」
コルベールが風魔法で、残ってたガソリンを指に触れさせ、臭いを嗅ぐ
「随分揮発性の高い油だな。原料は何かね?」
「原料は太古の植物や微生物の化石、石油を用います。その石油に熱を加え、蒸発温度別に精製します。軽い側から、ナフサ,ガソリン,灯油,軽油,重油となり、重油は更にABCと分別されます」
「組成的には全て炭化水素の混合物です。ハルケギニアでは、石油は産出されてますか?」
「ちょっと私にも解らないな。と言うより、炭化水素とは何だね?」
「そうですね。例えば木炭は解りますか?」
「勿論だ」
「あれが炭素です」
「ふむ」
「で、水素ってのは、海水に金属の棒を二本指して、棒同士に雷を流すと、泡が出ます」
「ふむふむ」
「量の多い方が水素で、少ない方が酸素です」
「そんな実験は、した事無かったな」
「で、この水素が燃えると、先程の酸素と結合し水が出来ます」
「ほうほう」
「炭素も燃えると酸素と結合し、二酸化炭素になります」
「二酸化炭素とは何かね?」
「炎を出した後に発生する空気ですよ。窒息の元です」
「ほう、そうなのか」
「で、炭化水素とは、今言った炭素と水素が結合した物で、燃料としては最高の素材に近いですね。空気中の酸素と燃焼しながら結合し、二酸化炭素と水を発生させます」
「成程、理屈は解った。石油が無いなら、何か錬金で代用出来る物を探さねばならないね。才人君、何か知らないかね?」
「そうですね。石炭、松、ミドリムシって所ですか。石炭は粉末微細化して、石油状にする技術が有りまして、松、ミドリムシは、体内に精製する油が石油に酷似してます。錬金で取るなら、此処等がやり易いと思いますよ?」
「石炭は有る。松はどんな植物だい?ミドリムシは?」
「松は針葉樹の一種で杉等と近いですね。ミドリムシは、ミジンコはご存知で?」
「ミジンコと言うと、湖沼や池に居る小さい生物の事かい?」
「正解。それらの小動物を総称して、プランクトンと呼ぶんですが、ミドリムシはそのプランクトンの一種ですね。動物の特徴と、植物の特徴を合わせ持った生物です。全体に葉緑素を持ち、緑色をして自立行動が出来ます」
コルベールは熱心に速記でメモを取りながら、話に聞きいる
「ふむふむ、ちょっと松は無理そうだな。トリステインに松みたいな樹木は余り見ない。ミドリムシは、量の確保が難しいだろう。となると、石炭だね。所で才人君」
「何でしょう?」
「何でそんな事を知ってるのかね?」
「俺の国じゃ高校生レベル、つまり魔法学院生レベルの知識です。後は、石油関係の知識は、乙4類危険物取扱い者だったもので」
「危険物取扱い者?」
「俺の国の国家資格ですよ。石油系の危険物を、取り扱う為のお墨付きです」
「ふむ、危険な代物だから、扱いにお墨付きが要るのだね?」
「そういう事です」
「此処までヒントが有れば、多分何とかなるだろう。石炭は燃料の研究用としてストックがあるし、ちょっとやってみよう。魔法はイメージだ。さっきの臭いをイメージすれば」
「あ、あの臭いって着色で、本来のガソリンは無色無臭です」
「何?」
「あれ、漏れたら感知出来る様にしてるんですよ」
「本当かね?」
「残念ながら」
コルベールは肩を落とす
「ならば、先程の石炭からの石油精製法をイメージすれば、何とかなるだろう。良し、やってみる」
「頑張って下さい」
「……相変わらず、さっぱり解らんな」
「体系立てて学習しないとね。理解出来る、コルベール先生が凄いのさ」
さっきから、何とか才人の視界に収まりつつ、隠れようとしている桃髪を、敢えて無視する才人
「所で才人」
「何?」
「あ〜、良いのか?」
「その内、話かけて来るでしょ?」
「視界に収まりつつ隠れようとか、矛盾した行動取ってるな」
「精一杯の自己主張なんでしょ?」
「クックック。しょうがない、ちょっと手伝ってやるか。才人」
「何?ムグッ」
アニエスから才人にキスをし、舌を入れ、抱き締める
ピチュ、ピチャ
敢えてアニエスが音を立て、たっぷりと才人をねぶる
「ばばば馬鹿犬〜〜〜〜!!」
ドゴッ
「グハッ」
才人にドロップキックが命中し、アニエスの腕から才人が吹っ飛ぶ
「ふ〜、ふ〜、よよよよりにも寄って、ここここのああああたしの目の前で、すすすす凄くねっとりとしたキキキキキスするなんて。アニエスがううう羨ましいとかそんなんじゃ無いんだから、かかか勘違いしないでよね?あああああんたご主人様の事、なななな何て思ってんの?」
「一体どうしたんだい?ミスヴァリエール?」
才人が言うと、ルイズが硬直する
「う〜」
「言いたい事が有るのかい?ミスヴァリエール」
「う〜」
「無いなら、ちょっと後で良いかな?俺は忙しくなるんで。零戦を改修せにゃならん」
「…そんなのより、あたしを見て」
「約束してきたんだよ。約束は果たさないとならん」
「…何で、あたしを見てくれないの?」
才人は視線をルイズに合わせない
「ミスヴァリエールは、俺に言いたい事が有るのかい」
「……ばないで」
「何を?」
「ミスヴァリエールって、呼ばないで!!」
「何で?」
「酷い酷い酷い。其はあたしが酷い事言ったけど、こんなのサイトじゃない!!あたしのサイトは何時も優しくて、どんな時でも包んでくれて!!どんな時でも……」
「出てけって言ったのは、そっちだろ?」
「ひぐっ」
「言いたい事は?きちんと言えないと、ずっとミスヴァリエールだぞ?」
『平民に謝るの?そんなの駄目。あたしはヴァリエールなの。でも謝らないと、サイトはずっとミスヴァリエールだって。そんなのヤダヤダヤダ。サイトの居ないベッドはヤダ。サイトの温もり無いのヤダ。サイトが他の女に取られるの絶対にヤダヤダヤダ』
『サイトは、あたしにきちんと自分の非を認めろって言ってるの。それが出来ないルイズは嫌いだって言ってるの。あたしはあたしはサイトに嫌われたくないの!!』
『あたしのプライドって何?考えてみなさいルイズ、あたしのプライドで、事態は好転した?一度もしてない!!』
『何これ?あたしのプライドって謝る事すら出来ないの?何か変だよ。非を認める事が何がイケナイの?サイトに謝る事すら出来ないんじゃ、あたしは本当にゼロよ。謝りなさい』
おろおろし、う〜と唸り、ルイズが思考をまとめる迄、才人は待つ
そして、ルイズがきっと顔を上げると、才人の顔が目の前に有り、一気に紅くなるが、才人の眼は真剣そのもの
ルイズは此処を間違えたら、本当にサイトは許してくれないと理解する
「……さい」
「聞こえない」
「……なさい」
「もう一度」
「ごめんなさい」
「何に対して?」
「……サイトに、無神経な事言った」
「反省した?」
「うん」
「もうしない?」
「うん」
「家族と引き離されて、ルイズは平気か?」
ルイズは首を振る
「解れば宜しい。良く頑張ったな」
才人がルイズを撫で、一気に涙を溜め、ルイズは才人に抱きつき泣き出す
「ルイズ、良く頑張って謝れた。プライドをねじ伏せるの、大変だったろ?」
「ヒックヒック…うん」
才人に抱き締められ、頭を撫でられ、ルイズは欲しかったモノを味わう
「今、して欲しいのは何だ?ルイズ」
「……一緒に寝て」
ルイズが顔を上げると、目の下に隈が出来ている
睡眠不足が相当来てるのだろう
「ちょっと待てるか?」
「なら、隣に居て」
「解った」
才人はルイズの肩を寄せる
アニエスと竜騎士は其を見て
「どうやら振られたみたいだな、シュヴァリエ」
「あぁ、別に才人が一人にこだわる必要無いだろう?」
「割り込む気満々だな」
「あれ以上の男が居ないもんでね」
「俺なんかどうかね?」
「論外」
「ちぇっ」
特に落胆するでもなく肩をすくめる

「才人君、取りあえず出来た。此で試してみないか?」
「じゃあ、揮発燃焼テストやるんで、もう一つ容器用意して下さい」
「解った」
コルベールが研究室に戻り、容器を用意する
「良し、此にコイツを少し垂らして、気化させて。コルベール先生、着火」
「うむ。ウル・カーノ」
ポン
「ふむ、良い感じだ。じゃあ、此を燃料タンクに」
トポトポと出来たガソリンをタンクに注ぐ
「ルイズ悪い、ちょっと離れてくれ。アニエスさん達も、コルベール先生。このプロペラをこちらの回転方法に、風魔法で回して下さい」
「何でそんな事するのかね?」
「最初の点火は外部から回す必要が有るんですよ。愉快な蛇君と一緒です」
「成程、了解した」
才人が乗り込むとコルベールに合図を送り、コルベールがプロペラを、風魔法で回転させる
ゴロゴロ、プス、プス
才人がタイミング良く点火スイッチを押す
ブ、ブブブロロロロ!!
「ウワッ、五月蝿い!!だから離れてろと言ったのか」
「何か下品」
「良し計器類も異常無し。エンジンの調子も異常無し」
「才人君!!此で飛べるかね!?」
ブロロロロ、プスプスプスン
「コルベール先生、ガソリンの精製成功です。エンジンも調子良いですし、後は、ガソリンの量を用意する必要が有ります」
「了解した。どれ位必要かね?」
「5樽分以上ですね」
「以上?」
「はい、此からちょっと、色々やらないとならない事が」
「其は何だね?」
才人が飛び降り、コルベールと話始める
「コイツには対艦用の爆装と、航続距離延伸用の増槽が追加装備で有るんですよ。其を製作します」
「此は、ただ飛ぶだけの代物では無いのか?」
「簡単に言うと、竜騎士と同じ仕事する武器ですね」
「でも、どうやって作るかね?」
「錬金で材料を用意して、其を俺が加工します。ハルケギニアの艦は木造船のみですか?」
「才人君の国では、木造では無いのかね?」
「えぇ、基本的に鉄鋼船ですね」
「頑丈さが俄然違うな」
コルベールは驚嘆する
「では、木造船用の兵装にしないと。やっぱり破壊力と一緒に、延焼出来る性能が重要ですよね?」
「ふむ、確かにそうだな」
「なら火薬と一緒に部屋仕切って、ガソリンとかの油を入れちゃいましょう」
「成程、だから以上を用意と言う訳だね?」
「そういう事です。一人じゃ無理なら、ギーシュとかにも手伝わせちゃいましょう」
「ふむ、面白くなって来たな。全面的に協力しよう。こう兵器が好きと言う訳では無いのだが、何か目的をもって物を作ると云うのは、楽しくてね」
「やっぱり先生は職人だ」
「才人君は?」
「俺ですか?恐らく、生粋の職人魂を受け継ぐ、日本人ですよ」
才人はニヤリとする
「今日は、後は樽を用意して、私が錬金してガソリンを用意しよう。1樽程度は何とかなるかな?明日以降は才人君と私で、やり方を検討して、協力してくれる人材を学生含めて募集しよう」
「学院長にも話してみるか。研究用だと言えば、結構融通してくれるものでね。アカデミーに対する対抗心を、学院長は持っててね。私が自由に出来るのは、学院長のお陰さ」
「研究機関に対してですか?」
「実用的な研究は、余りしない、くだらない機関だって、良い印象持って無いのだよ」
「そうなんですか?」
「始祖ブリミルの彫像の研究なぞ、何の意味が有る?」
「……確かに」
其処に4人が通り掛かる
「お疲れ。どうだった?」
「賞賛半分。叱責半分って所かな。これ見てよ」
全員バケツと雑巾を持っている
「此から罰掃除さ」
ギーシュが肩をすくめる
「明日から皆、ちょっと手伝ってくれ」
「稽古かい?」
「いんや、物作りさ」
才人が不敵に笑う
その笑顔の先に有るものを、コルベール含めて非常に後悔する事になるのは、実際に作業を始めた時である

「あらあら、ルイズ。きちんと仲直りしたのね。つまんない」
「キュルケ、どう言う意味?」
「だって、ダーリン誘惑する機会が減るじゃない?」
「ああああんたなんかに、サイトはあげないもん」
「冒険してた時のダーリン、凄くカッコ良かったわぁ。ヴァリエールだけ見れなくて、残念ね」
「……そんなに?」
「カッコ良かったわよね?タバサ」
コクリとタバサが頷く
「ヒュドラ仕留めた時は、イーヴァルディが目の前に居るかと思った」
「タバサの言う通りよね。あれは、惚れ惚れしちゃうもの。私は、ヒュドラの時は見れなかったけど」
「本当だよ。コボルトの時なんか、タバサとデュオでコボルト相手にダンスするし」
「お前ら、褒めすぎ。俺よりサポートのが偉いって」
「そんな事ないわよ。自慢話になるわね〜。もう、明日からの授業が楽しみだわ。暫く、話題は独り占めね」
「……ずるい」
ルイズが涙目で、才人を睨む
「あ〜、まぁ。ルイズとは今度な」
「絶対だからね。馬鹿犬」
「わん」
ギーシュ達が首を置いて、罰掃除に去ると、才人はアニエスに声をかける
「アニエスさん、討伐の証拠持って行って、政府から代わりに報酬受け取って貰える?」
「了解だ。全員の代理として行くが、何人だ?」
「6人」
「解った。ヒュドラには、色付ける用に交渉しよう」
剣に触れ、ニヤリと笑う
「宜しく」
アニエスは役所が開いてる内に向かう為、少々早く学院を去って行った

*  *  *
ルイズがとにかく一緒に寝たいと言うので、部屋に戻る
ルイズの足元はふらふらしており、才人が肩を寄せると、素直に身体を預ける。相当寝不足なのだろう
ガチャ
部屋に入ると、食器やら着替えやらが、散乱している
『随分、生活感溢れる部屋になっちまったな』
「掃除すっか?」
ふるふる首を振る
「明日で良い」
「そうか」
才人をギュッと掴み、離そうとしない
才人はそんなルイズを抱っこすると、ルイズはされるがままなので、そのままベッドに運ぶ
トスン
ベッドに横たえると、才人はデルフと村雨を立掛け、ジャケットと服を脱ぐ
「あ、しまった、風呂入ってねぇ」
ルイズが首を振る
「そのままが良い」
「は?一体どうした?」
「どうしてもなの。ご主人様の言う事、聞きなさい」
「はいはい」
ルイズを着替えさせると、紅くなりながらもそのまま応じ、更に紐パンを付けるのを要求するので、身につけさせると、才人に抱きつき、ゴロリと一緒に横になる
「ずっと、休んでたんだってな」
「うん」
「堪えたか?」
「うん」
「今日は、存分に甘えて良いぞ」
「…良いの?」
「ご主人様の機嫌が治るなら、喜んで」
「…アニエスとキスした」
「あれはアニエスさんからで」
「ご主人様にキスする前に、キスした」
「焼きもちか?」
「あんたなんかに、焼きもちなんか妬かないもん。ご主人様に、言う事は無いの?馬鹿犬」
「寂しかったか?」
「寂しくなんかないもん」
「辛かったか?」
「辛くなんかないもん」
「じゃ、ごめんなさいの意味を込めて」
才人から、ルイズにキスをすると、ルイズはきっちり応じ、舌をルイズから絡める
ピチュ、ヌル
口を離すと、ルイズはぼんやりしている
眠気が限界なのだろう
「もう、寝な」
「うん」
才人をそのまま抱き締め、ルイズはストンと眠りについた

*  *  *

URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White
トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル