〇月×日
今日は9日目
とうとう、才人さんがやってしまいました
何と、ヒュドラを討伐しちゃったんです!!
ヒュドラって、軍隊出さないと絶対無理ですよ?
一体、どうすればそんな事出来るんですか?
準備段階から書くと、昨日の夜迄戻ります
先ずは恒例のサイコロ賭け
ミスタバサ29,ミスモンモランシ28,ミスツェルプストー23,私16,ミスグラモン11
あはは、昼間に添い寝して活力を補給しといて良かったです
起きた才人さんは、私達見てどう思ったんでしょう?
苦笑してましたけど
フレイムさんは、身じろぎもしないで、ずっと枕になってくれてましたよ
食事して寝る前に、才人さんがデルフさんの手入れをミスモンモランシとミスタバサにお願いして、その時にヒュドラの話になって
ミスモンモランシがそのまま徹夜でマジックアイテムを作るって事になったんです
私達は明日の本番に備えて、付き合わないで良いって言って、一人でやってました
いざ始めた途端、凄い真剣にしてました。フレイムさんとシルフィードさんが護衛です
はぁ、私もああやって仕事してるのかなぁ?
仕事中の顔は、ずっと笑顔で固定されてるから、解らないや
其で私達が起きたら、目を真っ赤にして、隈を作ったミスモンモランシが、皆に護符を渡してくれて、そのままテントに寝ちゃってしまいました
才人さん達はヒュドラの森に向かって歩いて行ったんです
テント位置が変わって無いのは、この位置が、昨日出たヘルハウンドの距離から近いせいですよ
私はフレイムさんとシルフィードさんと待って、ミスモンモランシが起きた時の為に、お食事の用意です
ミスモンモランシ、本当にお疲れさまです
暖かい食事を直ぐにあげられますから、何時でも起きて下さいね
そんなこんなで待ってたら2時間位したら、ミスグラモンが才人さんをレビテーションして運んで来ました
「ただいま、モンモランシーは起きた?」
「お帰りなさい。まだ寝てますよ。才人さんは、どうしたんですか?」
「あぁ、ヒュドラを倒すのに、全力を出しきったのさ。だから動けなくなった。モンモランシーを、悪いけど起こしてくれないか?」
「あ、はい只今」
私がテントに入って、ミスモンモランシを揺すって起こします
「あのミスモンモランシ、起きて下さい。才人さんが、倒れてしまいました」
目をパチリと開いた瞬間、ガバッと起きました
ちょっとびっくりです。ってか、非常に恐かった
「あの、魔力は大丈夫ですか?」
「ん〜全快じゃないけど、治癒の3回位なら何とかなりそう」
そのまま外に出て、才人さんを浮かせたミスグラモンに話しかけました
「状態は?」
「怪我はしてない。デルフをしまった時に、後宜しくって」
「おっけ」
そのまま治癒を使える分詠唱して、才人さんをテントに寝かせて一緒に寝ようとしてたので、私が声をかけます
「待って下さい、ミスモンモランシ。寝る前に食べて下さい」
「あ、そういえば食べて無いわ。有り難う頂くわ」
才人さんに教わった両手を合わせたお祈りをしてから、ミスモンモランシは大事そうに食べてくれました
「ご馳走様。うん、やっぱりこの祈りよね。それじゃ、また寝るわ。悪いけど宜しく」
ミスモンモランシは、才人さんを抱えて寝てしまいました
二人共沢山働きましたからね。ご苦労様でした
「あの、ミスグラモン。どうしたんですか?」
「フレイム、シエスタも一緒に来てくれ、見張りが必要なんだ。ヒュドラ相手は警戒を解けない。デルフ、シルフィードと一緒にこっちは頼むよ」
「おぅ、任された」
「きゅい」
テントの中からデルフさんが答えて、シルフィードさんが頷いてました
そして、私達は駆け足で、戦場に向かいます
着いた途端、私は呆気にとられました
だって、もの凄く大きなヒュドラなんですもの
「護符は絶対離さないで。こいつは毒ヒュドラだ、体液全てが毒。回りに飛び散った物も無闇に触らない、頭にとにかく警戒して」
「は、はい」
「ギーシュ、やっと戻って来たのね」
「ごめん、待たせた」
「良いのよ。ワルキューレを出して、武器はアックス持たせてくれないかしら?タバサのブレイドをワルキューレに纏わせて、回収しましょ」
ミスツェルプストーが指示します
「了解。おいで、ワルキューレ達」
ミスグラモンが薔薇の杖を振って、ゴーレムを出しました
その手には、大きな両刃のポールアックスを構えてます
うわぁ、あれで刈り取るんですか
そしたら、ミスタバサが近寄って来て、一体に詠唱して、ポールアックスに風が纏い、空気が歪みます
う〜ん
私でも見える位の歪みって、かなり凄いんじゃないでしょうか?
気になったので、聞いてみました
「あの、ブレイドって魔法は、どういう魔法なんですか?」
「そっか、シエスタは平民だから知らなくて当然ね。タバサは集中解けないから、私が説明するわ」
「ブレイドは、4系統に同名の魔法が存在するスペルで、系統による刃を形成するの。火なら炎の刃、水なら水の刃、風なら風の刃、土なら鉄すら両断する、鉱物の刃ね」
「その刃を普通は杖に纏わせて使うのよ。でも相手はヒュドラでしょ?だから、近付かないで出来る、ゴーレムの武器に纏わせた。でも普通はそんな事しないから、制御に多少コツが要るの」
ザシュッ
傍でヒュドラの頭部回収の為、ワルキューレが斧を振るってます
更に周りには警護のワルキューレが円陣を組、フレイムさんが目を光らせてます
「其が出来るのは、私達の様に、ダーリンと一緒に勉強してた、メイジ位じゃないかしら?」
「はぁ、才人さんって凄いんですね」
「応用範囲は凄い広がったのよね。其で今回の最大の特徴は、なんて言っても、ギーシュのワルキューレなのよ」
「どういう事ですか?」
「才人に教えて貰ったんだけど、銅ってのは、金銀と同じ系統の貴金属の一種で、腐蝕に非常に強いって言ってたのよね」
「段々、理解が及ばなくなって来ました」
「もう少しだから頑張りなさい。つまりヒュドラの毒にも耐性が高いって事なのよ。更にね、才人に言われてから、ギーシュは銅の精錬に熱心になってるの」
「ん〜と、ヒュドラの解体に最適なのは理解出来ました。銅の精錬ってのは、なんですか?」
「要は、銅の不純物を出来るだけ減らすって事ね。才人の国だと、銅は非常に重要な金属だから、其を手軽に精錬出来る、ハルケギニアの土メイジの価値は、洒落にならないって言ってたわ」
「其って、ミスグラモンはドットでも、非常に価値が有るって事なんですか?」
「その通りよ。私の錬金でも多少は出来るけど、やっぱり土メイジには敵わないわ」
「才人さんが一番、メイジの価値を解ってそうですね」
「そうね、攻撃ばかりに目を向きがちな私達とは、完全に一線を画してるもの。しかもね、才人の場合知識を応用して、更に破壊力のある、攻撃方法迄作ったのよ」
「まさか、魔法を開発しちゃったんですか?」
「その通り。正確には、魔法同士を組み合わせた技ね。単一の魔法同士を組み合わせて、タイミングを合わせると更に破壊力を発揮する訳。此で私達は、魔力の消耗を抑えながら、行動出来る様になったのよ」
「はわわわわ」
「何で私達メイジが、ダーリンに惹かれたか解ったかしら。私達の4系統を、誰よりも理解して実践せしめる、伝説の使い魔よ?」
「…言葉が、出て来ないです」
「メイジに取って、自身の系統を最高に称賛して、更に伸ばしてくれる相手に、惹かれないなんて事は無いわね。貴女のライバルは手強いわよ?」
悪戯っぽく、ウィンクされちゃいました
メイジが惹かれる理由を、さらりと語ってくれました
此は、大変な人を好きになってしまった気がする
「でも、負けません」
「えぇ、頑張りなさいな。才人がずっと居てくれる様に」
少し、哀しげにミスツェルプストーが言いました。…しかも、才人って名前で呼んで
あぁ、ミスツェルプストーも解ってるんだ
才人さんが、いつか居なくなるって事を
だから、貴族として、責任有る立場に追い込みたいんだ。才人さんは義理堅いから…
自分自身を餌にして迄、才人さんを留めたいんだ
恋愛以外の感情から、才人さんに居て欲しいんだ
はぁ、どうして才人さんは、ああいう人なんですかね?
「其でも、才人さんは、自身を並だって言ってるんですよね」
「並なら並で良いじゃない。ダーリンの国なら、ダーリンの代わりは沢山居るって証明よ。でも、私達にはダーリンだけ。だからダーリンは、ハルケギニアに居なきゃ駄目」
「そっか、その通りですよね。才人さんは、ハルケギニアに居なきゃ駄目ですよね?」
「私達に出来るのは、色仕掛け位じゃない。だから其をするしか無いわ。だってダーリンは大人で、私達はまだまだ未熟な学生なんだもの」
「お互い頑張りましょう」
「えぇ」
「よし、回収終了。最後に一本動いて噛みつかれたよ。ワルキューレで回収して良かった」
「お疲れ様、ギーシュ。麻袋に入れて、固定化と周囲浄化宜しくね」
「大丈夫、昨晩の内にに用意してるよ」
「其じゃ、レビテーションね。えっと、誰か出来る?私は無理よ」
「大丈夫、まだ唱えられる」
ミスタバサがそう言って、レビテーションを唱えて、ヒュドラの頭が入った麻袋を運んでしまいました
「ヒュウ、流石私達の中じゃ、一番の魔力持ち」
「あの、魔力ってクラスによって、決まってるんじゃないんですか?」
疑問に思ったので、聞きました
ミスツェルプストーが、歩きながら説明してくれます
「違うわよ。クラスってのは、系統を乗算出来る量で、単純な強さを示すのよ。でも実際は其を更に出力制御、効果範囲を決めて、精神力で行使するの。つまり同じスペルでも、魔力の注ぎ込み具合を変えるのよ」
「魔力ってのは、要は使用出来る魔法の総量ね。つまりスクウェアだけど、あっさり魔力切れを起こすメイジも居れば、ドットだけど、回数を沢山唱えられるメイジも居る」
「でも、クラスが上がる度に魔力消費が半分になるから、見かけの使用量は増加するの。つまり魔力は水瓶に入った水で、クラスは其を掬う杓と例えても良いわ」
「クラスが上がると杓の容積が半分になるから2倍の回数が唱えられる。自身の系統が一番消費が少なくて、それ以外の系統を使うと、効果が落ちる上に、魔力消費も上がるの。つまり杓が大きくなる。また系統の高いスペルを使うと、掬う杓も大きくなる」
「はぁ、成程。つまり、水瓶の容積が一番大きいのが、ミスタバサって事ですか?」
「そういう事。更にタバサは器用だから、少ない杓で大量の魔法が使える訳。だから、私達の中で、一番の使い手なのよ。そして必要なら、その魔力を一気に使い切る事も出来る」
「へぇ、解り易い説明有り難うございます」
「でもね、違う系統だと、系統のドットと別系統のトライアングルじゃ、系統のドットのが上なのよ。コルベール先生の凄い所は、風と土も系統のラインクラス程度の掛け合わせが出来る器用さと、自身の系統の炎制御に絶対な所よ」
「コルベール先生って凄いんですね」
「魔法を使ってるのを見た事無い、オールドオスマンを除外するとしたら、先ず間違いなく、学院最強のメイジよ」
「本当ですか?」
「えぇ。皆変人扱いしてる上に馬鹿にしてるけど、勉強会での講義聞いたら、そら恐ろしくなったもの。普段の授業なんて、変テコ発明見せて、遊んでるだけなんだけどね」
「何で、普段の授業でやらないんですかね?」
「ダーリンと一緒で、何か隠してるわね。ダーリンの報酬に目がくらんで、サービスした感じよ。お互いに、意気投合しちゃったもの」
「大人って、隠し事抱えてるんですね」
「重ねた年輪が、男に渋味を出してるのね。学生が、がきんちょに見えちゃうわ」
うっとりと、言ってしまいました
「あぁそれ、私も解ります。才人さんとマルトー料理長も、意気投合してますよ」
「出来る男は、出来る男を見抜くのね」
「そうですね。殿方同士の、職を通じたやり取りって、凄く眩しく見えます」
「女同士は、基本嫉妬での、足の引っ張り合いだもんねぇ」
「このパーティーでもですか?」
「あら、誰が可愛いがって貰えるか、駆け引きしまくってるじゃない」
「あっ、そうでした」
私は自分の頭をこつんと叩いちゃいました

てくてく歩いて着いたその後は、才人さん達を起こして、宿屋に向かってシルフィードさんが飛び立ちました

ひいお爺ちゃん
メイジの育成に、平民が指導して役に立つなんて初めて聞きました
そして、メイジの皆が才人さんに惹かれる、真の理由の一端に、触れる事が出来ました
使い魔の能力に、惹かれてる訳じゃないんですね
この冒険は、私にも色々収穫が有りました
今は宿屋で、風呂上がりに書いてて、此から宴会です
才人さんのお嫁さんの路は楽しいなぁ
負けるな私
いくぞ、おー

〇月×日
10日目です
何故かタルブの村に帰って来ちゃいました
竜の羽衣を見に行くとかで
其よりも、昨晩のミスタバサはなんなんだぁ!?
途中迄は憶えてますけど、ギャンブル無茶苦茶強いじゃないですかぁ!!
ブラックジャック20連敗した迄は憶えてます
あの後ポーカーに切り替えて、更に20連敗したとか
「ショウダウン」
「21」
「くっ、19です」
「2戦目」
シャッシャッ
ミスグラモンがカードを配ります
「コール」
手札は伏2と表4で計6。私がカードを呼びます
シャッ
むう、9が来て15か
あれ?ミスタバサの手札はキング。呼ばないって事は20辺りですね、むむむ
「コール」
シャッ
「ガビン!?」
10が来ちゃいました
「あぁ、やっちゃったわねぇ」
ミスツェルプストーが楽しそうに見てます
「ショウダウン」
「14」
「25、バースト。あわわわわ。何で14でぇぇぇ!?」
ミスタバサの眼鏡がキランと光ります
「3戦目行くよ」
シャシャッ
うむ、伏10表クィーンで20ですか。ミスタバサはジャック。今回は良い手札です
「カードは要らない?」
私達は頷きます
「ショウダウン」
「此なら勝つる、20です」
「21。ブラックジャック」
「エースとジャック…最強手じゃないですか」
私はへなへなになります。ま、まだ始まったばかりですよ
「其じゃ4戦目」
シャシャッ
うむ、9が2枚18ですか
此はコール出来ないです
「このままで」
ミスタバサは出てるカードは2ですよ
「コール」
ミスタバサがカードを呼びます、シャッ
6ですか
「コール」
シャッ、更に7
「コール」
シャッ、更に2
表が合計17。ミスタバサが頷きます
「ショウダウン」
「18です」
「20」
「う、嘘」
私は、すっかりミスタバサの無表情にやられていきます
「うわぁ、タバサの無表情って、ギャンブルだと凶悪ね」
ミスモンモランシが、すっかり感心して見てます
私は、すっかり翻弄されました
「ミスタバサの手札は2、良しコール!!」
「コール」
シャシャッ
「ウムム」
ミスタバサの手札は計7
私は伏2表2,8で計12
「良し、もう一度、コール」
シャッ
キングが来ちゃいました
冷や汗たらたら
「ど、どうですか、ミスタバサ。降りません事?」
「大丈夫。貴女はバーストしてる」
みえみえなんですね
「ショウダウン」
「15」
「22です。バ、バースト」
「あらあら、完全に手玉に取られちゃって」
ミスツェルプストーは、楽しそうに見てます
「はい、其じゃ次」
ミスグラモンのディーラーが板に付いてます
シャシャッ
ふむふむ、伏5表エースです。此は中々
ミスタバサは表2ですか
「コール」
「コール」
シャシャッ
私は3
ミスタバサはジャック
私は此で良し
「コール」
シャッ
む、2ですか
「コール」
シャッ
5が来ました。此で19
ミスタバサの口の端が吊り上がります
此は、21来ちゃいましたね?
だらだら、汗が流れます
「サ、サレンダー」
「へ?降りるの?」
ミスグラモンが聞くので頷きます
「まぁ良いか、ショウダウン」
「19です」
「バースト」
「えええぇ!?」
や、やられたぁぁぁ!!
「うわぁ、凄い糞度胸」
ミスグラモンが感嘆します
ミスツェルプストーとミスモンモランシが拍手しちゃいました
えぇ、一切抵抗出来ませんでしたよ
ギャンブラーって、ミスタバサの事ですね
私じゃ絶対に勝てません
ははは、はぁ
さてと、気を取り直して、本日の出来事って事で

才人さん、竜の羽衣見た瞬間、変な作法をしてました
そしてですね、何かガタガタ触り出したんです
「此は零式艦上戦闘機五二型。金属で出来た竜、飛行機だ」
「此が、飛行機?」
才人さんが言ってた、才人さんの国の飛行機!!
私達の家族が、ひいお爺ちゃんから託された、ちょっと迷惑な代物が飛行機!?
才人さんが飛ぶって
竜より高く、竜より速く!?
凄い凄い凄い
才人さんならやってくれる、才人さんなら何とかしてくれる
私達のひいお爺ちゃんは優しく、時には厳しく、働き者だったけど、唯一の欠点として、竜の羽衣から飛んで来たって、ずっと嘘吐き呼ばわりされてたんです
小さい頃は私はそう言われた度に、喧嘩しまくってたんだ
弟のジュリアンも、嘘吐きって呼ばれて帰って来る度に泣いてた
絶対嘘吐きなんかじゃない、飛ぶとは思えないけど、ひいお爺ちゃんが嘘吐く訳ないって、小さい頃は信じてたんです
ひいお爺ちゃんが亡くなって、もうやり方が解らないから飛ばない代物だって、皆諦めてたのに
だから、ひいお爺ちゃんは嘘吐きなんだって、皆寂しい顔してたのに
才人さんが飛ぶって、其だけで私はびっくりしちゃいました
「ひい爺さんが残した物って、他に無いかな?」
「あ、はい」
もう、ひいお爺ちゃんの残した物を全部見せないと
あのお墓の文字も読めるかな?
墓地に案内してみましょう
「才人さん。この墓の文字を読めた者に、竜の羽衣を譲るって、ひいお爺ちゃんの遺言です」
「大日本帝国海軍少尉佐々木武雄 異界ニ眠ル」
「読めるんですか?才人さん」
「あぁ、日本人だからな。他には?」
「あの、遺言がもう一つあって」
「何?」
「竜の羽衣を、陛下にお返しして欲しいって。どの陛下なんですかね?」
才人さんがお墓に敬礼を
「俺は、軍人じゃないけど、少尉の気持ち受け取った。佐々木少尉、探すさ、必ず。俺は、あんたと同じ日本人だ」
「……才人さん」
「俺なりの、ひい爺さんへの手向けだよ。他には?」
「はい、家に来て下さい」
ズキンと来た。駄目だ、このままじゃ才人さん居なくなっちゃう
私なんか放って、どっか行っちゃう
だから、心を開いてくれないんだ
だから、我慢して私に手を出そうとしないんだ
だから、翼人さんに無理矢理しちゃったのも嫌なんだ
此処は、才人さんに取って、通りすがりの異郷の地なんだ
もう、ぐちゃぐちゃだ。私には才人さんしか考えられないのに、何で何で何で!?
とにかく、何とかしないと
そうだ、ミスツェルプストーが袋小路に追い込めって言ってました。良し、私の家族に相談だ
「ただいま〜」
「お帰り、シエスタ」
「お母さん、後で話有るけど良い?」
「えぇ、大事な話?」
「うん」
「解ったわ、お客さんにお茶の用意してくるわね」
「そのお客の才人さんがね、ひいお爺ちゃんのお墓の文字読めたの」
「あらま、本当に?」
「本当よ」
「其じゃ、譲る人が出て来たのね」
「それでね、才人さんも、竜の羽衣は飛ぶって言ってたの」
「……本当に?」
「姉さん、それ本当?」
「本当よ、ジュリアン」
「僕、挨拶してくる!!」
お母さんもジュリアンも、びっくりしてました
私は遺品の有る部屋に入って、遺品を探します
えっと、ひいお爺ちゃんの遺品は、あった、此だ
てくてく歩いて行くと、声が聞こえてきますね
「あ、ごめん。お邪魔するね」
「あの、ひいお爺ちゃんの墓碑、読めたんですか?」
「ああ」
「竜の羽衣って、飛ぶんですか?」
「勿論」
「僕たちのひいお爺ちゃん、嘘つきなんかじゃないですよね?」
「勿論だ。俺が飛べる様にしてやる」
「本当ですか?」
「ああ」
「あの、僕、ジュリアンって言うんです。シエスタ姉さんの弟です!!」
才人さんお得意の、頭なでなでをジュリアンにしてる。男女関係無いんだなぁ
「俺に任せとけ。オジサンはな、不可能を可能にする男だ」
「はいっ!!」
うわぁ、才人さん、自分でオジサンって言っちゃった
「才人さん、自分でオジサンはどうかと思います。ずっと若いじゃないですか?」
「いやいや、別に構わないだろ?」
「はい、此です。ひいお爺ちゃんは、大した物遺さない人でしたので」
私が遺品を手渡すと、才人さん、なんかしんみりしてました
私の一番幼い妹が才人さんの堅いズボンをくいくい摘んだら
才人さんは満面の笑みでしゃがみました
本当に子供好きなんだぁ
「どうしたかな?」
「お兄ちゃんは、シエスタお姉ちゃんのお婿さん?」
「えっと、どう答えっかな」
「そうよ」
「本当?シエスタお姉ちゃん」
「えぇ。だからね、才人さんの事は、才人お兄ちゃんって呼んでね」
「うん!!サイトお兄ちゃん」
「はははは」
「お父さんお母さん、シエスタお姉ちゃんが、お婿さん連れて来たよ〜」
ガクリと崩れる才人さん
「まさか、家族使って外堀埋めて来るとは」
「相棒、本当におもれえわ」
良し、作戦成功
次に行きますよ〜
お父さんとお母さんを説得しないとね
「ジュリアン、父さん呼んで来て」
「ん、解った」
ジュリアンが外に飛び出しました
一番下の妹は、父さん居ない事に、気付かなかったみたい
「才人さん、お母さんがお茶を持って来るんで、少し待っていて貰えますか?」
「あぁ、解ったよ」
そう言って、弟妹達にちょっかい出してます
あ〜あ、キャッキャッ言い始めちゃった
私は着替えて私服になって、母さん達が来るのを待ちます
ガチャ
「おぅ、シエスタ。随分速い帰りだな」
「ただいま、父さん」
「シエスタ、其で何の話?さっき、お婿さんって言ってたけど」
「どういう事だ?」
「えっと、お父さんお母さん。今来てる人が私の好きな人で、私が結婚したい人です」
あ、お父さん、固まっちゃった
「ち、ちょっと待て、お前に結婚はまだ」
「あなたが私を拐ったのは、あなたが20で、私が14でしたっけ」
あ、お父さん黙っちゃった
「…あ、あれはだな」
「結婚を両親が認めてくれないなら拐いますって言って、私の事無理矢理馬で、かっさらってくれたじゃない。あの時、本当に格好良かったわぁ」
「お父さんそんな事したの?」
「えぇ、私が隣の村出身なのは知ってるでしょ?あれから5年は、実家に挨拶も出来なかったのよ?シエスタが4才になって、初めてタルブの村に来てくれたの」
「お父さんって、情熱的なんだ」
「…あんときゃ、俺も若かったんだよ」
頭ぼりぼりかいてます
「じゃあ、シエスタの話に戻しましょ。本気なのね?」
私はこくりと頷きます
「でも、今のままじゃ駄目なの」
「…一体、どういう事だ?」
「才人さんはね、ひいお爺ちゃんと同じ国の人なの」
二人とも驚きます
「…だから、お爺様と同じ黒髪で、似た雰囲気がしたのね」
「…あぁ、本当に似てたな。ちび共と遊んでるの見た時、思わず固まっちまったわ」
「才人さんはね、オークやヒュドラも倒せるの」
「な!?」
お父さんが絶句して、お母さんが口に手を当てて、目をまんまるにして驚いてます
「…こりゃまた、えらい男見付けたもんだな」
「…そんな人と一緒になりたいって……駄目?」
「…いや、正直何も言えん」
「シエスタ、大当たり引いたじゃない」
「…でもね、駄目なの」
「どういう事だ?」
私は、うつ向いてしまいます
「才人さんね、話してくれないの」
二人共、私が話す迄、じっと待ってくれます
「…才人さんね、口には出さないけど、帰りたがってるの」
私は、涙がぽろぽろ流れ落ちます
「……才人さんね、心を開いてくれないの。……このままじゃね、才人さんどっか行っちゃうの。……帰る路を探す為に、……ひいお爺ちゃんの悲願でもある、自分の国に帰るために」
私は声が震え、それでも話します。だって、お父さんとお母さんに、真剣に話さないといけない事だから
「私、才人さんじゃなきゃ、やだよう。才人さんと一緒になりたいよう。お母さんみたいに、大好きな人の子供……産みたいよう。ひ、ひく、うわぁぁぁぁぁ」
「……シエスタ、本気なんだな」
泣きながら、私は頷きます
「なら、私達のやる事は一つかしらね、あなた」
「…あぁ、俺の娘を泣かすたぁ、ふてぇ野郎だ。とっちめてやらぁ」
「さてと、ベッド余ってる所から、借りて来ないとね。シエスタ、ジュリアン達呼んで来て、離れを掃除させるから。貴女は才人さんと、ちょっと出掛けて来なさい。夕食に招待するから、絶対に来て貰いなさい。解った?」
「……ベッド?」
「好きな人の子供、欲しいんでしょ?」
お母さんが悪戯っぽく、ウィンクしてくれました
「……良いの?」
「くすっ。シエスタはね、私達自慢の器量良しよ。変な貴族に引っ掛かる位なら、ヒュドラを狩る勇者で、お爺様に似た雰囲気を持つ人の方が、ずっと良いわね」
「…お父さんは?」
「お前は、良くも悪くも俺の娘ってこった。きっちり、型にはめて来い」
お父さんも、ニヤリってしてくれました
「有り難う。お父さんお母さん」
「いや、あの男なら多分大丈夫だ。爺さん似の男なんざ、初めて見たわ」
「あら、貴方がそうじゃない」
「いや、俺は爺さんの国の人間じゃないからな。容姿はともかく、雰囲気だ。多分あれが、爺さんの国の人間の、共通の特徴なんじゃないか?」
「そうかしらね?」
「シエスタ、ぼやぼやしてると、妹達にかっさらわれるぞ?」
「ちょっと、お父さんそれ酷い!!」
「ワハハハハハ」
そう言って、お父さんは出て行きました
多分ベッドを借りに行ったかな?
私もジュリアンを呼びに行くと、別の部屋から盛大に歓声が聞こえて来て、見てみると才人さんに、弟妹達が遊ばれてました
「うわきゃあぁぁぁ」
「わはははは」
「…才人さんって、子供好きなんですね」
「お、話終わった?」
「サイトお兄ちゃんもっと遊んで〜〜!」
「ジュリアンは?」
「えっと、確か其処ら辺」
才人さんが指した所で、ひっくり返ってました
「なんで伸びてるんですか?」
「いやぁ、プロレスごっこでKOしちゃってさ」
「才人さんからやったんですか?」
「いんや、腕試ししたいってから、軽く遊んだんだけどね。バックドロップしたら気を失っちゃって」
「もう、才人さんやり過ぎ」
「ごめんごめん」
「ジュリアンジュリアン」
ぺしぺし叩くと目を開けて、暫くするとガバッって起きました
「え、あれ?」
「才人さんに、腕試しを申込んだですって?馬鹿ね、近衛隊隊長ですら勝つの難しいのに、何やってるの?」
「…近衛隊隊長が勝てない?才人兄さんに?」
「そうよ」
その瞬間、完全に憧れの対象になってしまいました
「決めた。僕の目標は、才人兄さんだ」
「才人さんに挑もうなんて、10年早いわよ。スクウェアメイジでも勝てないんだから」
「なら、僕もスクウェアメイジに勝てる位に、強くなってやる」
「無理しちゃだめよ。お母さんが呼んでるから行って来なさい」
「うん、解ったよ」
ジュリアンが出た後、再度才人さんに声をかけます
「才人さん、ちょっと外に出ましょう。此から家の中、てんてこまいになるんで」
「手伝おうか?」
「お客様にそんな事させたら、恥になります!!」
「あ、そうか。じゃ、出よう。おちびさん達、ちょっと、おぢさんは外に出てくる」
「え〜、もっと遊んでぇ」
「後でな」
「ぜったいだよ〜」
手を振って出て来たら、ミスタバサがやって来て、手紙を渡してくれました
「ん」
「学院からですか?」
コクリと頷きます
中身を見たら
あれ、そのまま殿下の結婚式の休み取って良し?
やった、丸儲け
ん?何々、人より長い休み分は、きっちり給金からさっ引くと
ぐすん
そうそう、上手くはいかないですね
仕方ないか
ミスタバサに挨拶すると、今回は私達に付いて来ませんね
一応、私の家族に気を使ってくれてるみたいです
草原に着いたら、また私、泣いちゃいました
才人さんは、優しく撫でてくれて、こんなの離れたくないですよ
「お母さんただいま」
「お帰り、シエスタ。準備は万端よ。結構ロマンチックに出来たと思うわ。たっぷり、可愛いがって貰いなさい」
「有り難うお母さん」
ひっしと、お母さんに抱きついてしまいました
「其じゃ、風呂に入って来なさい。念入りに洗うのよ」
「はい!!」
そして今、夕食前にこれ書いてます
お父さんお母さん
私は今夜、女になります
念願の、大好きな人の女になります

ひいお爺ちゃん
やっと、此処まで来れました
色々有りましたけど、私ひいお爺ちゃんのひ孫で、お父さんお母さんの子供で、本当に良かった
次は、お父さんお母さんに初孫見せますからね
ひいお爺ちゃんも、期待してて下さい

*  *  *

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