○月×日
う〜ん
改めて読み返すと、昨日のは滅茶苦茶に書き殴ってる
しかも、それでも足りてない
なんて濃厚な一日だったんだろ?
続き書こっと
昨日の朝食食べた後は、才人さんと二人で皆の所に行くと
皆して私の姿見てびっくりしちゃって、私の方が驚いちゃった
自分で鏡見ても、確かに艶々でしたよ、あはははは
そしたらミスモンモランシが私を連れて一旦離れると、才人の為に今は子供作るなだって
ううう、そんなのあんまりだぁ!!
でも、ヒラガ伯爵夫人になりたくない?って言われてしまったら、もう頷いてしまうしかない
私は、才人さんがハルケギニアに居る為だったら、何だってするんです
避妊薬と言うのも初めて知りました
お母さんが毎年子供産まないのは、この薬使ってるのかしら?
帰ったら聞いてみよっと
でもこの薬があれば、遠慮なく出来ますね
才人さんと毎日寝られる様になると良いなぁ
才人さん達が竜の羽衣を運ぶのを見送って、家に帰って来たら、兄妹達に囲まれちゃった
「サイトお兄ちゃん、帰っちゃったの?」
「えぇ、今度は竜の羽衣飛ばして来るって」
「本当に?」
「才人さんは嘘つかないわ。皆で楽しみに待ってましょ」
「「「「はぁい」」」」
私は台所に行って、畑仕事してるお父さんの為に、お昼用意してるお母さんの手伝いだ
「お母さん、手伝うわ」
「あら、有り難う。じゃあ平行して、子供達のお昼も用意しましょ」
トントントン
包丁の心地よいリズム
流石年期入ってるわ
「お母さんの包丁の音も良いけど、才人さんはもっと凄いわよ」
「あら、料理も出来るの?才人さん」
「えぇ、すんごい美味しい料理を作ってくれたわ。そうだ、お父さん達にも、作ってあげる。天ぷらって料理、教えてくれたんだ」
「へぇ、何でも出来るのねぇ」
「私の旦那様選びは凄いのだ」
「あははは。ちょっと貸してくれないかしら?」
「……お母さん本気?」
「どっちかしらぁ?ふふふふ」
「もう、敵わないなぁ」
私はそう言いながら、油を用意です
「そうそう、お母さんは避妊薬って知ってる?」
「知ってるわよ。って、誰から聞いたの?わざと教えてなかったのに」
やっぱり知ってたんだ
「水メイジの貴族に」
「何か言われたの?」
「才人さんが出世する迄、待てって」
「出世すると思う?」
「思う。少なくとも、シュヴァリエには絶対になれる」
「ふうん。じゃあ、まだ初孫はお預けかぁ。残念だわ」
あからさまに落ち込むのが見えて、私もしゅんとしちゃった
「任せて、絶対に見せてあげるから」
「期待してるわよ」
会話しつつも手は動いてて、私は天ぷらを揚げてたのでした
天ぷら出来たてをサンドイッチと一緒にもっていったら大好評
一緒に働いてた人達にもお裾分けしたら、あっという間に無くなっちゃった
何度か試して、油きりをきちんとするのが大事だって、気付いて良かった

ひいお爺ちゃん、タルブに新しい名物が出来るかも
それも、ひいお爺ちゃんと同じく、日本の料理です
私は、才人さんと知り合えたのは運命なんだと、思える様になってきた
絶対に、死を二人が分かつ迄、一緒に居るんだ
だから明日も、頑張るぞ、おー

〇月×日
こ、困った
村に帰ってから、平和過ぎて書く事が無い
才人さんが居ないと、なんて平穏なんだろう
あ、いや、才人さんがトラブル起こしてる訳じゃなくて、才人さんが皆をびっくりさせる事ばっかりするからです
絶対にそうです!!
ん〜、何か書く事は、そうだ、ジュリーの事でも書こう
「ねぇ、シエスタお姉ちゃん」
「何よ、ジュリー」
「才人お兄ちゃん、いつ来るの?」
「竜の羽衣飛ばして来るわよ。それ迄我慢しなさい」
「それって、いつ?何時何分?」
このがきんちょめ
「才人さんは、約束守る人だから安心しなさい。だから、来た時に恥ずかしく無い様にした方が良いわよ」
「じゃあ、シエスタお姉ちゃん。化粧道具貸して」
な、なんですと?
「言っておくけど私、化粧道具殆ど持って無いわよ?お母さんに聞いたら?」
「お母さんもあんまり持ってない。お母さん、化粧してなくても綺麗だし」
「じゃあ、ジュリーも要らないわよ」
「どうして?」
あらら、ムスッとしてる
仕方ない、可愛くない所が可愛い妹の為だ。たまには、お姉ちゃんが一肌脱ぎましょう
「私が化粧してないのは、何でだと思う?」
お、真剣に考え始めた
「お金が無いから」
すてん
思わず転んでしまった
「図星?」
「いや、まぁ。一理はあるんだけど。違うわよ」
「違うの?」
「違うわよ。化粧しなくても平気だからよ。お母さんを見なさい。どう思う?」
そしたら即答しちゃった
「綺麗」
「でしょ?私達は、そのお母さんの娘なんだから、気にしなくて良いの」
そう言って、私はお母さんの鏡台の所にジュリーを連れて行って、ジュリーを座らせた
「ほら、良く見なさい。私の妹はこんなに可愛い。化粧は逆に、魅力を削ぎ落としちゃうわ」
「……そばかす嫌い」
「あら、私にもあるじゃない。お姉ちゃんと一緒は嫌?」
「もっと、綺麗になりたい。あの赤毛の貴族の様に、綺麗に」
あぁ、そりゃミスツェルプストー見たら、そうなるかぁ
でも、そのミスツェルプストーから、私が羨まれてる事をさりげなく教えねば
「良いこと教えてあげよっか?」
「何?」
「才人さんの好みはその赤毛の貴族より、私達の様な黒髪で、きめ細かい肌の方が好きなのよ」
「…本当に?」
「本当よ。私達の武器はね、その赤毛の貴族すら羨むきめ細かい肌。下手に化粧したら、肌が荒れて魅力を半減させちゃうのよ」
「そうなんだ」
「そうよ。だから自信を持ちなさい。私の妹は、生意気だけど可愛いのだ」
「生意気は余計だよ。お姉ちゃん」
「あら、本当の事じゃない」
ぷぅって頬を膨らませて、まだまだ子供だ

ひいお爺ちゃん
ジュリーは背伸びがしたいお年頃です
私も確かにそうだったなぁと思い返しました
でも、そういう所が可愛いんだなと思えてきました
あれ?確か帰って来た時は、糞生意気って思ってたような?
う〜ん、どういう心境の変化なんだ、私?

〇月×日
今、此を書いてるのは森の中です
し、死ぬかと思った
アルビオンが攻めて来たんです!!
私達は、お父さんの号令で間一髪で逃げ出して、お父さんは他の皆を助ける為に、家を飛び出して
やっぱり、緊急事の行動力は凄い
お母さんは、こんな所に惚れたんだなぁと再認識
私は、この人の娘で有る事が自慢だ
でも、此所には才人さんが居ないよう
アルビオン軍が傍で野営してるよ
でも、殿下自らが陣を敷いてるのも見えた
多分何とかなる
そうだ、絶対に才人さんが助けに来る

私はそう思って、何とか心の均衡を保つので精一杯だ
領主様もあっさり戦死したのに、お父さんは思ったより悲観してない
何でだろう?
そう言えば、号令かけた時にも、竜の羽衣が来そうって言ってたっけ?
「お父さん」
「何だ?」
「才人さん、来ると思う?」
「必ず来るぜ。なんせ、爺さんそっくりだからな。お前は信じられ無いのか?シエスタ」
「お父さん程確信出来ない。竜の羽衣を飛ばすのは、凄く難しいんじゃ?」
「かもな。だが奴だけは来る、例え単騎でもだ。俺には解る。だから寝ろ。見張りは俺とジュリアンに任せておけ」
「うん、解った」
お父さんは出会ってほんの少しお酒片手に語っただけなのに、私より才人さんを解ってる
「ねぇ、お父さん」
「何だ?」
「ひいお爺ちゃんと才人さん。そんなに似てる?」
「あぁ。普段は優しいが、何か間違った事した時なんざ、えらいおっかなくてな。それでいて、いつも背筋伸ばしてぴんとしてて。何と、爺さんオークにも立ち向かった事有るんだぞ?」
私、びっくりしてお父さん見てる
「本当?」
「本当だ。鍬片手に必死の形相で、まだガキだった俺をかばってくれてな。あん時に爺さんにかばってくれてなきゃ、俺の人生終わってたわ」
「へぇ、ひいお爺ちゃん凄いんだ」
「いや、実は結局やられそうになった時に、旅の金髪美人のメイジに助けられたんだ」
あらら、私はがくりと傾いちゃった
「あら、私も初耳よ。あなた」
「まぁ、親父もお袋も話したがらなったからなぁ。なんせ、最初で最後の爺さんの浮気話だし」
「えぇ〜〜〜!?」
「いや、俺や親父達がそう思ってるだけで、実際はどうだったかは、爺さんだけが知ってる。だけど、あん時の婆さんの荒れっぷりは凄かったな」
「どうして?」
起きてる私達は興味津々だ
「あぁ、何か熱心に爺さんの話聞いててな。竜の羽衣見て感心もしてた憶えがある。暫く居座ってた位だし。その間、離れに住んでて、爺さんがしょっちゅう通ってたからな」
「どんな人だった?」
「う〜ん、そうだな。第一に美人。次に胸がでかい。学者くずれって言ってたな。んで、各地の珍しいモノや文物を尋ね回ってるって」
「へぇ、学者さんかぁ」
なら、竜の羽衣に関心持つかぁ、納得
「その人って、何処に行ったのかな?」
「あぁ、結構長く滞在した後、アルビオンに行くって言って。其から便りは聞かないな。爺さんと手紙のやり取りしてたみたいだが、爺さん読むと全部焼き捨ててたから、良く解らん」
「そうなんだ」
「ま、あの後消息聞かないし、まだまだ放浪してるか、本国に帰って研究成果発表してんじゃねえかな?」
「ふ〜ん」
人に歴史有りだ
うん

ひいお爺ちゃん
まさか浮気した事があるだなんて、初めて聞きましたよ?
うふふふふ
ひいお爺ちゃんもスケベだったんですね
うふふ、うふ
何かこんな時なのに、楽しくなって来ちゃった
あ、まさかお父さん、こんな時だから話したのかな?

〇月×日
今は日記を書いてるのは、なんと王宮です
お父さんの予測的中!!
何と、才人さんが竜の羽衣で、私達を助けに来たんです!!
カッコ良かったなぁ
さてさて、才人さんの活躍を全部書かねば、私の女が廃る
ではでは、私が見た才人さんの活躍譚だ
私達は砲撃の音で眼を覚まして、森の中から村を見ると、アルビオン軍が空船から砲撃しながら行進して、トリステイン軍が一方的にやられてたんです
皆で口々に
「あぁ、こりゃ駄目だな」
「タルブもアルビオン領になっちまうか」
「アルビオンに捕まると、女子供はやべぇらしいぞ?アイツらオークやトロル使ってるって噂だ」
「……絶対に、殿下には勝って貰いてぇな」
「あぁ」
皆してアルビオンの勝利を予想してます
まぁ、私から見てもそう見える
暫く見てたらその時です!!
ドカァァァァン!!
アルビオンのおっきい空船が爆発して、皆で振り向いたら、何と、竜の羽衣が空を飛んでたんです!!
「おい、あれ」
「……竜の羽衣だ」
黙ってたお父さんが、とうとう大声を上げちゃいました
「来た、来たぞ!!お前ら、この前来た黒髪の剣士が、俺達を救いにやって来た!!」
その瞬間、皆で大歓声を上げちゃった
「「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」」
皆で歓声上げながら、竜の羽衣の飛行を見守ります
「おぉ、スゲー。竜騎士をどんどん落として行く」
「また落とした。スゲー、タケオ爺さんの言ってた事、本当だったんだ」
「「「「サイトお兄ちゃん、がんばれ〜〜〜〜」」」」
あ、弟妹達迄声をからして応援してる
凄い、本当にひらひら空を飛んで、竜騎士をどんどん撃ち落としていく
「あれが、竜の羽衣……」
私は目の前で繰り広げられる、竜の羽衣の乱舞に目を奪われっぱなしだ
「あれ、才人兄さんだよね?」
「勿論よ、ジュリアン。他に誰が扱えるの?」
「そうだよね。才人兄さんって、格好良いなぁ」
その後、トリステイン軍に周ると歓声が上がって、またどんどん上空に行動を取って上がって行く
そうしたら、衛士隊が飛び出した
「見ろ、衛士隊が突撃開始したぞ?」
「やった!!反撃だ」
皆が衛士隊を注目する中、私は竜の羽衣だけ見てた
だって、あんなに綺麗に飛んで、時に激しく回転しながら竜より華麗に舞う様から、目が離せない
「とうとう、粗方撃墜しちゃった」
私はその後もずっと竜の羽衣を見てると、更に竜騎士が三騎やって来て、でも竜の羽衣は動いてない
「駄目、才人さん気付いてない!!気付いて!!」
皆が私の悲鳴に竜の羽衣を見ると
竜騎士達が魔法で撃墜されて、墜落していき、皆してほっとします
「今のはヤバかったなぁ」
「あぁ、タルブの英雄が、撃墜されて終わるかと思った」
そうしたら才人さん、また大きい空船に攻撃を始めたんです
攻撃の度にダダダって音が、私達に迄聞こえて来る
その度に大きい船からバンバンと炎が上がります
「スゲー、誰も攻撃出来ない船を攻撃してるぜ」
「形勢逆転だな」
「おい、見ろよ、衛士隊の突撃だ」
「ランスに付いてる旗は、グラモンの旗?」
「グラモン?あの武門の名門の?」
私達の目の前で、衛士隊が敵部隊に突撃したと思ったら、宙に踊り上がって、敵陣の中央にあっさり突入したんです
すると、一際派手な衣装を纏った人を貫いて、先鋒の人が飛び上がり、後続も次々に蹴散らして行く
凄い、ミスグラモンの御親族は、こんなに強いんだ
確かに自慢したくなるよなぁ、うん
でも、私の才人さんには敵わないもんね
へんだ
私はまた竜の羽衣を見ると、あの大きい船の上を旋回してる
そうしたら、凄い勢いで竜騎士が降下してきて、何か魔法を放ったのかな?
どうやら風魔法みたいで、私には解らない
竜の羽衣が回避行動取ったけど、どうなんだろ?
その後、宙返りした竜騎士があっさり竜の羽衣の背後を取って、マズイですよ
「才人さん、頑張って、やられないで!?」
私は固唾を飲んで見守ります
すると、才人さん、宙返りを変な軌道描いて短縮して、竜騎士が付いて行けずにそのまま宙返りして
竜の羽衣が対面になるように旋回して攻撃すると、竜騎士が撃墜されたんです
凄い!?
此だから才人さんの行動は眼が離せない
そうしたら、その少し後です
辺り全体が光に包まれ、空船全体から爆発音が聞こえて来る
私達は光に包まれ、何が起きたか解らなかった
でも、光が収まると、空船が続々と不時着していく
あの大きい船が不時着すると、白旗出した
「やった、トリステイン軍の勝利だ!!」
「勝った、勝ったぁ!!」
皆で、おおはしゃぎ
私はずっと竜の羽衣を注目してたから、草原に高度を下げて行くのが見えたんです
「姉さん、父さん」
「何よ?」
「何だ?」
「僕、軍に入る。才人兄さんに近付くには、一番手っ取り早いや」
「……そうか、なら空軍にしとけ。空軍なら平民でも出世出来る」
お父さん、複雑な表情しながら頷いちゃった
まあ、確かにうちの跡取りなのに、戦死する可能性考えたら、良い顔出来ないよね
「解った。村の再建終わったら、空軍に入るよ」
でも、我が弟ながら、決意した男の顔は、格好良いぞ
しかぁし、今は着陸体制取った才人さんのが優先だ
それいけシエスタ!!
全力全開で走れ!!
ダダダダ
私が走り出すのを、お母さんが声をかけてくれたんです
「宴会に呼ぶから、絶対に来て貰いなさいよ〜〜〜!!」
私は手を振って、竜の羽衣に全力で走る
ぜいぜいはぁはぁ
流石に400メイル以上の全力疾走は堪えますね
でも、竜の羽衣にとうとう着いた!!
ま、先ずは深呼吸だ
ふうふう
良し、呼吸は整った
才人さんが降りて来ない
疲れたのかな?だとしたら、こちらから声をかけないと駄目だよね?
私は竜の羽衣をばんばん叩いて呼びかけます
「才人さん!!才人さん!!才人さん!!本当に来てくれた!!才人さん、開けて下さい!!私です、シエスタです!!」
私が胴体を叩いて、才人さんに催促するんですけど、ちっとも出てくれない。どうしたんだろ?
「んもう、何よメイド。あたしのサイトに何か用?」
ミスヴァリエールがガラリと風防を開けて、乗り出して来ました
私、見た瞬間に真っ青です
だって、血みどろだったんですもの
「ミスヴァリエール、負傷したんですか?」
「この通りピンピンしてるわよ?何で?」
え、気付いてないんですか?
改めて自身の服を確認すると、身体のあちこちに血がべったり付いているのに、やっと気付いたみたい
「あたし…傷なんか一つもしてない。…サイト?」
ミスヴァリエールが才人さんを見た途端、真っ青になってしまって、悲鳴を上げちゃいました
何で相乗りしてて気付かないんですか?
相変わらず、自分の事だけで手一杯なんですね
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!何これ?何でこうなってるの?」
「……嬢ちゃんの詠唱中に、被弾したんだよ。相棒は、使い魔の役割を優先しやがった」
「ボロ剣!!何で教えないのよ?あんた溶かすわよ!?」
「相棒が、嬢ちゃんの一世一代の大博打に挑む時に、……邪魔なんざ出来るかよ」
成程〜、詠唱中は気付かないかぁ。でも終わった後に気付かないのは、ペケですね
え?ちょっと待って?ミス、いつの間に魔法を?
まぁいっか、今は才人さんだ
「デルフさん。其より才人さんの傷は?止血しないと、死んじゃいます!!」
「左太ももに一発。背中に風穴。右肺潰れてる」
「何か薬とか無いの?ボロ剣」
何か無いんですか?
早くしないと死んじゃいますよ!!
そう思った途端、私は身体の震えが止まらなくなっちゃった
「相棒は薬はって、思い出した。香水の嬢ちゃんが薬持たせてた。パーカーって奴の、ポケットに入ってねぇか?」
ミスが才人さんに取り付いてポケットをまさぐると、小瓶が出て来ました
早く早く、私は急かしたいけど、とにかく経過を見守ります
「飲み薬?」
「そだよ」
ミスヴァリエールは薬を口に含ませて、才人さんに飲みこませました
むぅ、例え治療と言えど許せませんね
ついつい黒いオーラが出ちゃうのを止められない
「どう?」
「おぅ、何とか血は止まった。だが、危ねぇ状態には変わりねぇ。動かすのも止めとけ。メイジに応援頼むんだな」
ミスヴァリエールは聞くと、飛び降りて
私に声をかけます
「シエスタ、衛士隊を呼び寄せるわ、死ぬ気でアピールしなさい」
「勿論です、ミス」
私と一緒に大きな動作で注目を浴びる様に手を振ってたら、衛士隊が降下を始めてくれたんです
良かった、通じた!!
「どうしたのかね?マドモワゼル。そんなに血まみれになって」
「あたしはともかく、サイトが重傷なの!!早く水メイジの所に連れて行って!!」
「何?副長殿が?」
衛士隊の騎士様が、才人さんの状態を覗いて、直ぐに魔法を唱えました
私に迄聞こえてきます
「アンサーズ・デル・ウィンデ。こちらグリフォントロワ、隊長報告です。副長殿負傷、大量出血、意識レベル昏睡。トライアングルじゃ無理です、スクウェアを………了解、待機します」
通信が終わったみたいです
私達に向けて微笑んでくれました
「今隊長と連絡が取れた、安心しなさい。応援が来る。それ迄は私が維持に全力を上げよう」
「あ、有り難うございます」
私が深々と頭を下げると、慌ててミスヴァリエールも下げました
まぁ、普段は大貴族として振る舞ってるから、反応が遅れたんでしょうね
衛士隊の人が治癒の詠唱を一生懸命に唱えてくれてます
額には脂汗。得意な系統じゃ無いんですね
冒険の時に散々見てきたから、私にも解ります
バサ
4騎の騎士様が更に着陸しました
あの羽帽子の人が隊長かな?
すんごい身体。メイジでもゴツイ人居るんだ
でも、柔和な瞳だな
「副長殿は?……ルイズ嬢?」
「私をご存知なのですか?」
へぇ、流石ミスヴァリエール。こんな所でも知られてるんですね
「父上母上にはお世話になったからね。その桃髪と目元、母上にそっくりだ。トロワ、報告」
「はっ、見ての通り、鳳に乗せたまま動かしておりません。危険と判断しました」
「うむ。宜しい」
そう言ったら、レビテーションで才人さんをふわりと浮かせました
「私が輸送する。トロワ、伝令として殿下に報告を」
「はっ」
「待って下さい!!」
私もミスヴァリエールもガチガチ震えてる。でも、こんな危険な状態で、才人さんを放りっぱなしに出来るもんか!!
「何かね?ミス」
「私も連れて行って下さい!!看病する人が必要な筈です。私はメイドですので、適任の筈です!!」
隊長様が即答してくれました
「成程、確かにそうだな。後続の騎士に送らせる、乗りたまえ」
「はい、有り難うございます」
「ちょっと待ちなさいよメイド。サイトはあたしの使い魔です。あたしが行かないでどうするんですか!?」
「時間が惜しい。二人共早く乗りなさい」
そう言うと、隊長様は先に離陸しちゃいました。は、確かに急がないと
でも、ミスヴァリエールは一度竜の羽衣に戻ってごそごそしてます
「何してるんですかミス?早く行かないと」
「ちょっと待っててよ。良し取れた」
そう言って、二振りの剣を取りました
「はい、あんたは刀持って。呪い付きなのは知ってる?」
「はい」
「サイトが回復する迄、刀の管理はあんたに任す。どういう意味か解るわね?」
私は全力で頷きます
「誰にも触らせません」
「良い返事ね。すいません、お待たせしました。お願いします」
「随分のんびりだな」
騎士様から、皮肉を言われてしまいました
「サイトにとって、剣は私達メイジの杖に等しいんです。サイトの侮辱と受け取りますが?」
本当にギラリと睨み付けるミスヴァリエール
騎士様の方が、非礼に気付いたみたいです
「それは失礼した。謝罪を受け入れて欲しい」
「良くってよ」
「ではミス、早く乗りなさい。追い付く為に飛ばしますよ」
「「はい」」
私達は一気に飛んで、先行する隊長様に追い付きました
先に飛んでたグリフォンの騎士様が、私達を誘導しにやって来て、降りた先は、なんと王女殿下の所だったんです!?
私達は降りた途端、隊長様の後ろで膝を付きます
まさか、こんな所で殿下に拝謁出来るだなんて感激……駄目、今は才人さんが優先だって
「殿下」
「世辞は後です。負傷部位と状態を教えなさい」
「はい、デルフお願い」
デルフさんに頼んでしまいました。まぁ、私と一緒に震えっぱなしですものね
「おうよ。左太ももに散弾喰らってる、多分弾残っているな。後、背中に風穴開いてるわ、エアスピアー喰らって右肺が潰れてる。出血の大半は背中からだな。薬使って何とか止血したが、やべぇ事には変わりねぇ」
「薬の種類は解りますか?」
「此です」
ミスが小瓶をアンリエッタに渡しました
それを殿下が匂いと魔力の残りを確認してるみたいです
「あら、この成分は、調合した人は本当に必死でやったのね。此、戦時でも限りが有るから、部隊に配備するのは無理の有る薬よ?」
へぇ、殿下は水のメイジなんですね
「先ずは傷の状態を見ないと。使い魔さんの服が邪魔ですわね。切り裂いて「駄目ぇぇぇぇぇ!!」
突然ミスが大声を上げて、殿下の声を遮断しちゃいました
ちょっと、私もびっくりです
「ルイズ=フランソワーズ?」
「駄目ったら、駄目なの。サイトは其を軽鎧って言ってたの。サイトがその程度の怪我で済んでるのは、その堅い服のお陰なの!!無くしちゃったら、次に闘いあった時に、サイトが死んじゃう!!」
う、確かにその通りです。私も頷きましょう
「あたしが脱がせます」
「私もやります」
私達二人で才人さんの服を脱がします
えっと、人間って大量に血が入ってるんだ
服が重く濡れてる
「此は、酷い」
隊長様が傷口を確認して、顔をしかめます
……大丈夫だよね?
「風使い、前に」
「私がやります」
ゼッザールが前に出る
「上手く黒ずんだ部分を切り取りなさい」
「はっ」
隊長様自ら手術ですか?
頑張って、才人さんを助けて!!
私は祈りを込めて見守ります
「後は私が塞ぎます。太ももから、弾をえぐり出しなさい」
「はっ」
殿下が水のメイジで良かった。どんどん傷口が塞がっていきます
「良し、取れた。私は此で魔力切れだ。最小出力ってのは、中々に難しい」
「此方も塞がりました。傷が残ってしまうのは、私の技量では精一杯です。後は太ももですね」
やった、もう少しだ
終わったぁ!!
私は今、トリステイン王女殿下に心からの感謝と忠誠を捧げます!!
周りからも歓声が上がってる
やっぱり才人さんの参戦は、トリステインを救ったんだ
もう、嬉しくて嬉しくて堪らない
あれ?殿下の顔があまり明るくない
どうしたんだろ?
「では、貴女達も。大義でした」
わぁ、殿下自ら浄化して下さるだなんて感激です
トリステインの民で良かった
後で皆に自慢しちゃえ
てへっ
ミスヴァリエールと隊長様がやり取りして、衛士隊の騎士様が去って行きました
私の才人さんを助けて頂き、有り難うございます
機会が会ったら、差し入れさせて下さいね
そんな事を思ってたら
殿下が難しい顔しながら喋り出したんです
「さて、ルイズ。使い魔さんが助かったとは言っても、実はまだ、予断を許さない状態です」
「本当……ですか?」
「はい。血を流し過ぎました。このままでは体温も維持出来ず、夜を越えられないかも知れません」
あぁ!?だから殿下は喜んでなかったんだ
まだまだ危機じゃないですか!?
「じゃあ」
「使い魔さんを人肌で四六時中暖める必要が有ります。勿論裸です。服を着ていては駄目です」
「えっ!?」
ミス、真っ赤になるだなんて、看病の覚悟無さすぎです。私がアドバンテージ持たせて頂きます
「私がやります。殿下」
「助かりますわ。一人では無理なので、交代でお願い致します。アニエスは戻りまして?」
「今、グラモン隊長と共に戻られました」
「通しなさい」
「はっ」
そう言って、シュヴァリエともう一人の隊長様と話をして、二人が去って行きました
只、もう一人の隊長様、私見てウィンクしてたなぁ
何か軽そうな人だ、うん
あ、才人さんが殿下に運ばれて行く
私は後ろをとてとて小走りに付いて行くと、殿下が才人さんを降ろした途端、抱き締めてしまいました
思わず呆然です
「ひひひひ姫様?」
「何をしているのです?予断を許さないと言った筈ですよ?直ぐに出ますから、服は脱げませんが、其でもやらなければ駄目です。早く空いてる場所から暖めなさい」
「失礼致しました」
は、いけないいけない、私ともあろう者が、お世話で硬直するだなんて
直ぐに空いた隣で抱き締めます
う、確かに冷たい、ってか、こんなに体温下がってたら死んじゃう!?
早く目を覚まして、才人さんの大好きなおっぱいを、早くちゅうちゅう吸って下さいね
「あの、二人で隣同士だと、あたしは?」
ふっ、覚悟の差ですね、まぁ鳥ガラの身体じゃ暖めるのも大変ですし、見てて下さい
「早く毛布でも探すか、其処で見てなさいな、ぺったんこ」
「は、はい!!……今、さらりと酷い事言いませんでした?姫様?」
「さぁ?」
嘘!?
あのミスヴァリエールに正面から毒舌を!?
殿下って、以外とやるんですね
あっ、ミスヴァリエールがぶっすうとしてる
あははは、こんな状態じゃなきゃ、爆笑してますって
他の天幕から毛布を探し出して掛けてくれると、殿下をジトッと睨んでます
そしたら殿下が毛布をひっ被って、毛布の中で悪戯っぽく舌を出してます
殿下、素敵!!
私、殿下の事好きになっちゃいました
そんなこんなで待ってたら、シュヴァリエが中に入って来ました
「殿下、用意が出来ました」
「解りました。では行きましょう……平民の娘さん、忘れ物があれば今直ぐに取りに戻りなさい。必要最低限で、着替え等は王宮で用意しましょう」
「ぎょ、御意にございます」
こんな言葉遣い、した事無いからおっかなびっくりです
「アニエス」
「はっ、付いて来い」
私が立つと、ミスヴァリエールが代わりに入って、直ぐに殿下といがみ始めてしまいました
「殿下、さっきの件ですが」
「あぁら、胸の分の面積が大きくないと、保温に不利でなくって?」
「うぐぐぐぐ」
完全に遊ばれてますね
私が去る間に聞こえて来たのは、それ位です
「全く、殿下も友達相手だと人が悪い」
シュヴァリエが苦笑してます
「何時もでは無いんですか?」
「いや、何時もは私がからかう立場なんだがな。ボケってしてる所をついつい」
「はぁ」
「さて、着いた。殿下の命令だ。ヒポグリフ隊、誰か一人婦人の送迎をしてくれ」
「そういう事なら、この知勇兼備なジェラールにお任せあれ!!」
大袈裟な身振りで先程の隊長様が礼をして、顔を起こしてウィンクしちゃいました
すると無言でシュヴァリエが短銃構えて、隊長様に向けて引金引いたんです
バァン!!
あ、隊長様倒れちゃいました
「代わりの者でお願いする」
私はびっくり仰天です
「どどど同士討ちだなんて、やっちゃ駄目ですよ!?」
「あぁ、大丈夫大丈夫。俺達の隊長なら何時ものこったから。俺が行くよ。乗りな」
「えっ?えっ?えっ?えっ?」
何時も?
そう言って、他の騎士様が乗せてくれました
「行くぞ」
「はい」
バサァ
ヒポグリフが一気に加速して、空に舞い上がります
うわぁ、速いなぁ
さっきのグリフォンより速い
「グリフォンより速いですね」
「あぁ、ヒポグリフはグリフォンとペガサス、又は馬との相の子を品種固定した幻獣でね、従順さと速度と加速に優れるんだ。その分攻撃力に劣る。ヒポグリフ隊のはペガサス由来の固定品種。だから空でも陸でも圧倒的に速い。まぁ、竜には劣るけどね」
「そうなんですか。知りませんでした」
「場所は?」
「はい、彼処の森です」
「了解」
あっという間に着いちゃいました
「お父さん、お母さん」
私は降りて、家族の元に行くと、家族がびっくりしてます
「衛士隊の騎士様!?」
皆が膝を付きます
「あぁ、任務だから気にしなくて構わない。早く用事を済ましてくれ」
「あ、はい。えっと、私の日記帳とペンと荷物入れ。才人さんが重傷なの。王宮で看病するから行って来る」
お父さんもお母さんも聞いた途端に渋い顔してる
「才人さんは大丈夫なのか?」
「大丈夫。才人さんは、看病すれば治るから安心して」
「シエスタ姉さん。才人兄さんの看病頑張って」
「シエスタお姉ちゃん。私の分も宜しくね」
「「「「シエスタお姉ちゃん」」」
「大丈夫、皆の分迄やってくる」
私は腕捲りをして、腕をぽんと叩きます
お母さんが用意してくれた物を受け取って、騎士様の後ろにまた乗ります
「お願いします」
「了解。では、タルブの民よ、我らの英雄の治療にタルブの村娘をお借りする。朗報が届くであろう。期待して待て」
「「「「ウィ!!」」」」
皆の見送りを受けて、あっという間に着いちゃった
今度は馬車に案内されて乗ると、才人さんが居る
早速って思ったら、銃士の方がチェインメイル脱いでくっついてる!?
ちょっと、それ私の仕事!!
あ、ミスヴァリール迄一緒の馬車?
「あの、ミスヴァリエール?」
「何よ?」
「何でやらないんですか?」
「馬車の中は、銃士隊の管轄だから手を出すな、ですって」
「そうなんですか?」
周りの女性に聞いたら微笑みながら頷きました
むう、仕方ないです
って、良く見たら、毛布から出てる部分を見ると、二人共胸はだけてる!?
えぇ!?
「もしかして、ミスが不機嫌なのは」
「……ふん」
まぁ、確かに私も不機嫌になりますね
あ、話声が聞こえて来た
「すんごい綺麗な黒髪ねぇ。素敵」
「戦争じゃなきゃ、今頃この人の命令で、殿下の警備してたのよね」
「はぁ、命令って絶対服従を傘に来て、あんな事やこんな事迄やられちゃうかも!?」
「きゃあ、えっちぃ!?」
全然嫌がってない所か、ネタにして遊んでる
しかも才人さん、実は全裸なんですよね
「う〜ん、中々のモノをお持ちの様だ」
ちょっと、添い寝した二人して何やってんの?
「隊長が唾付けてなきゃ、唾付けるんだけどなぁ。なんせ、ヒュドラ狩りの勇者で今回の勝利の立役者だし。オマケに平民だし。何の問題も無いよねえ」
私達はぴくぴくしちゃってます
ええい、牽制だ
「銃士隊の皆様は、彼とか旦那様とかは、いらっしゃらないのですか?」
「あら、結婚してるのも居るし、彼氏持ちも居るわよ。でも、私達第二分隊は、残念ながら一人者ばっかし」
そう言って、皆様ケラケラ笑ってます
「じゃあ」
「ほら、衛士隊から旦那引っ張ろうと不純な目的な娘は、目的果たす為に頑張ってるし、旦那持ちは子供を家族に任せて頑張ってるし、皆色々事情持ってるわ。旦那や彼氏持ちに他の男暖めさせる程、うちらの隊長は野暮じゃないって事」
「「あ」」
私達二人して絶句です。むう、気付かなかった
シュヴァリエの気遣いって、細かいんだなぁ
「だから、ちょっと位は許してね」
そう言って、ぺろりと舌を出しちゃいました
「えっと、もしかして分隊の編成って」
「そう、比較的危険な任務に投入されるのが私達第一から第三。身寄りの無い人も多いわね。彼氏や旦那持ちが第四から第六。特に第六は家族持ちで、最前線には出さないのが決まりみたいなもん。今回みたいに総力戦だと、そんな事言ってられないけどね」
「年齢層も幅は有るわよね。10代後半から30第前半迄居るわよ。任務によっては、30代が逆に使い易いとかもあるし」
「へ〜。色々居るんですね」
「ま、兵隊やってる女なんか、皆どっかで道を踏み外してるからね」
「その通りよね」
銃士隊の皆様が、ケラケラ笑ってます
私達より少しだけ大人の女性達。命のやり取りしてたにも関わらず、何か楽しそうですね
きっと、私には想像出来ない修羅場を潜って来たんでしょうね
尊敬しちゃいます
素直に譲って控えましょう
此処は、彼女達銃士隊の領分だ
確かに、私達には手を出せない

ひいお爺ちゃん
本当の誇りを持ってる方々の仕事を、垣間見る事が出来ました
私の知ってる世間は、私が思ってる以上に狭いみたいです
こんなに、目標とすべき女性達が居たなんて驚きです
私も、あんな風に笑いながら仕事が出来る様になりたいな
才人さんのお嫁さんの路は、私の成長の路だ
今より素敵な女性になる為に
いくぞ、おー

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