135 名前:1/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:42:00 ID:EbOQI9el
使い魔さんともう一度きちんと話したい……
そう思っていた。
「お手伝いいたします。」
アニエスはそう言ってくれた。
今、学園に、使い魔さんを迎えに行ってくれている。
入念なリサーチの結果、アニエスが予約したのは
『魅惑の妖精』亭、使い魔さんとルイズが働いたこともあるお店。
過密スケジュールで空けた今日という日……
この一月、どれだけ仕事が大変だったことか……
ここに来るのも、アニエスがサポートにサポートを重ねて……
ドキドキする。
心地よい緊張感。
軽い足音がドアの前まで跳ねる。
トントンと、小さなノック。
「ど、どうぞっ」
やだ…声が詰まる。
ドアが開くと……そこには……黒髪のメイド?

136 名前:2/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:42:32 ID:EbOQI9el
学院長の部屋に、アニエスが入っていった。
(珍しい客ね)
私とサイトが戦争に行っている間は、結構来ていたらしいけど。
お行儀は悪いけど……こっそり近づいて聞き耳を立てる。
「後ほど、シュヴァリエ・サイトをお借りしたいのですが……」
なぬ?
「ほう、また何故?」
「戦争の現状について、聞きたい事が有ると陛下が仰せですので。」
……ひーめーさーまー、またかっ、またなのかっ?
「ふむ、では後ほど使いをやって、向かわせましょう、先にこの書類ですが……」
「はっ、そちらにつきましては……」
こんな事してる暇はない。
部屋まで走る。
「サイトっ」
「うぁっ、なんだルイズいきなり。」
「出かけるわよ」
「は?」
「すぐに……遠く……あ、馬用意なさい」
「へ?」
「どれくらい上達したか見てあげる」
「まて、ルイズ、俺今から隊の集会が…………」
「用意するのっ!!!」
「はいっ」
最初からそう言って。
「馬小屋前に、5分後急ぎなさいっ」
サイトはぶつぶつ言いながら走り出した。
私も出かける支度をする。
……シエスタも……あれ?
…あぁぁぁぁぁ、二人っきりで……おでかけっ?
……櫛、櫛どこっ、あぁぁぁぁぁ服も……
乗馬だったら動きやすくて……かわいいのっ。
……この辺に……あれ?
あーーーっもうっ、どこに仕舞ったのよ、サイトのバカーーー。
うーーーっ、あ、そうだ……し、下着……とか…も?
ルイズがサイトと落ち合ったのは、実に30分後であった。

137 名前:3/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:43:04 ID:EbOQI9el
「あの……貴方は?」
「あ、私、シエスタと申します。シュヴァリエ・サイト付のメイドをやらせて頂いております。」
あ、貴方が……あの時の命令で付いたメイドなのね。
「その……サイトさまは?」
「シュヴァリエ・アニエスからの言伝です。『ミス・ヴァリエール逃亡、直ちに追撃に入る。しばしのお待ちを』との事です」
……使い魔さん、連れて行かれたのね……
肩の力が抜ける。
「はぁ……」
「あの………」
私の落胆を見た、……シエスタが心配そうにしている。
「あら、失礼、サイトさんに用事があったものだから……」
「あの……」
「あぁ……私は……アン、アンよシエスタ。」
少し遊び心が出てくる。
「そのっ……貴族の方ですか?」
「私は、貴族に使える身よ、そして貴方達にもね。」
今の私の実感。
「えっと……」
「それよりシエスタ、学園でのルイズや……サイトさんのお話、聞きたいな」
「はいっ、良いですよ。」
アニエスが来るまでの時間も、退屈はしなくてよさそうだ。

138 名前:4/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:43:39 ID:EbOQI9el
「もっと力を抜いて……そうそう」
「……なぁ……」
「なによ?」
「遅れてきて、何も言わないのは……まぁいいや」
「……こ、これでも急いだのよっ」
「教える側なのに、前に乗ってるのも……いいか……」
「だっ、だって……前見えないじゃないっ」
「なんで……こんな獣道を、こっそり動くんだ?」
「………追っ手が……」
「追っ手ってお前、なにしたんだよ?」
「う、うるさいわねー、良いから前向いてっきゃっ」
足場が悪い所為で、少しゆれて……サイトの胸に飛び込む。
………あ
「わ、悪い……そのっ」
サイトのドキドキが……聞こえる。
「どこか打ってないか?痛いところ無い?」
サイトが恐る恐る聞いてくる……
「平気……」
緩みそうな顔を、一生懸命引き締めながら答える。
「良かった……」
安心したサイトが、私の頭をクシャっと撫でた。
「あっ」
「えっ、痛かった?」
…………
「うん、痛かった」
「うそっ、どこっ、ちょっと……」
「だから……撫でて」
「は?」
「痛くないように……さっきみたいに撫でなさい」
うれしかったんだから。

139 名前:5/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:44:12 ID:EbOQI9el
「もーミス・ヴァリエールったら、サイトさんにメロメロな癖に、一生懸命とぼけ様としてるんですよ。」
ルイズらしい。
「それで、いつもはどんな風なんですか?」
「サイトさんがいる所だと、強きな癖にですね」
「えぇ」
暫く溜めたシエスタが、一気に喋る。
「姿が見えなくなると、子猫みたいにオロオロ探すんですよっ!!」
「まぁ」
ルイズ……かわいい。
「しかもっ」
「まだ有るの?」
「えぇ、もちろん、見つかるとまた目を逸らしてっ」
「強情ねぇ」
「声掛けて貰えるの待つんです。」
「もぉ、あの子ったら……」
「声掛けて貰った途端に、表情変わるんですけどっ、サイトさんのほう向くときは一生懸命無表情!!バレバレなんですけどねっ!!」
くすくす笑う私に、シエスタはまだまだ喋る。
「もし用事なんかで声かけて貰えなかったときなんかっ」
思わず身を乗り出す。
「こーーーんな顔するんですよっ」
今にも泣きそうな顔の真似をしてくれる。
「かっ、かわいーーー、ルイズかわいーーー」
一緒になって笑う。こんな時間は始めてかも知れない。
ひとしきり笑ったところで気が付いた。
「喉渇いたわね、シエスタ」
「えぇ、何か用意しましょうか?」
素早く立ち上がるシエスタ、使い魔さんのメイドは優秀みたい。
「いいえ、ここに用意してありますわ」
各種の飲み物と、軽い食事。
「食べちゃいましょう」
「そうですねっ、飲み物は……これですか?」
「えぇ、好きなだけどうぞ」
結構良いお酒らしいけど、使い魔さん飲むか分からないですし。
「空けちゃいましょうね」
シエスタが手際よくグラスを二つ用意して、ワインを注ぐ。
「あーお酒かぁ……」
「飲めないの?」
「んー、飲めないというか……」
「のめるなら良いじゃない?」
「……そうですかね?」
「そうよ」
「………いいかっ、アンさんいい人だしっ」
ちょっと照れる。
「では、シエスタ、二人の出会いに」
「「かんぱーい」」

140 名前:6/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:44:43 ID:EbOQI9el
サイトにぺったりとくっ付いたまま、馬で獣道を進む。
サイトの体温が背中に残る……幸せ。
さっき頭を撫でてもらってから……お互い意識して、何も喋ってないけど……
沈黙が気持ちよかった。
少し開けたところに出た、今だ。
「サイト」
「な、なんだルイズ」
「お昼にしましょう」
「……お前が作ったの?」
……なによ、その沈黙。
「そんな時間無かったから……でがけに食堂で買ったの、お弁当」
……ほっとするなぁぁぁぁぁぁ
「いっ、いつかっっっ」
おいしーの作ってっ
「うん、待ってるな」
サイトが何もかも分かってるように笑って……
見とれた私は、サイトがキスするまで動けなかった。

141 名前:7/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:45:16 ID:EbOQI9el
陛下に申し訳ない……
サイトは結局見つからなかった、中間報告をしに『魅惑の妖精』亭に訪れた。
陛下の部屋の前で、宿の主人が蒼白の顔で立ち尽くしていた。
「なにごとっ」
思わず、主人を押しのけて部屋に踊りこむ。
「あらー、あにえしゅしゃん、いらさーい」
「あーあにえすだー」
は?
世界が真っ白になる、へ、へいか?
「シ、シエちゃんが……シエちゃんが……飲んでる……」
「なぁぁぁぁんですってぇぇぇぇ」
宿の娘が走ってきた。
「ひぃぃぃぃぃ、ダメじゃないパパっ、シエスタに飲ませたら……」
「お、おわりよぉぉぉぉ」
「あーおじしゃま、じぇしかたん〜、げんき〜?」
青ざめた顔で、ガクガクと首を振る店主達………
「おい、そんなにまずいのか?」
思わず、娘のほうを捕まえて聞いてみた
「そのっ、悪気は無いんですけど……あの状態のシエスタって……人の弱点をズバッと一言で付くんです、言われたくないことを……そのっ」
「あーすかろんおじしゃま、じぶんのぉ、したぎと、じぇしかのを一緒に買った時、混乱していた店の人、お元気でしゅかぁ?」
「わ、わすれてぇぇぇぇぇぇ」
なるほど
「じぇしかぁ〜」
「な、なあにぃ?シエスタ」
「こないだのぉ、男の子と上手く行きましたか〜?」
「何だとぉ、どこの馬のほねだぁ?」
いきなり店主の声が太くなった。娘が逃げ始めて、私一人になる。
……悪い予感がする。
「シエスター、さみしーの、わたしのあいてもしてー」
「もー、あんちゃんったら、あ・ま・え・ん・ぼさんっ」
い、いちゃいちゃしてる……陛下と平民がいちゃいちゃしてる……
凄いぞシエスタ……いい具合に、シエスタの気もそれたし……
「あーしってるぅ?あんちゃん」
「なーにぃ、しえちゃん」
「そこの、あにえすさんねー」
え?
「このあいだーさいとさんみつけたときー」
……まさかっ
「いっしょにーむらでー、ごにょごにょしながらー」
まてーーー、ヘンな隠し方をするなー剣の稽古だっ稽古っ
「さいとさんといっしょにぃ、おしごとさぼってたんですよー」
……………へ、い……か
「ず」
ず?
「ずるーーーい、アニエスばっかりするぅぅぅぅい」
は?
「んーーーアニエス」
シエスタがわたしを睨んでいる
「お前も飲め」
陛下が向こうで叫んでいた……
「のめー、あにえすー、のむのだー」
……何?この地獄絵図。
溜息をついて……ワインを飲み干した。

142 名前:8/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:45:48 ID:EbOQI9el
「おー」
獣道を踏み越えると、小さな水場に付いた。
「素敵……」
ルイズが見とれていた……
少し開けた森の中に、憩いの場所のような水場、向こうのほうで小さな動物達が水を飲んでいた。
「綺麗ね……」
見惚れているルイズの瞳に、水場で跳ね返った陽光が映っている。
「うん……綺麗だな……」
「来て良かったわよね?サイトっ」
「そうだな」
はしゃぐルイズを馬から下ろして、自分も降りる。
馬を繋いでいる間に、ルイズはあちこちを嬉しそうに見て回っている。
森の中の楽園ではしゃぐ、魅惑の妖精の様だった。
「天国って……こんなところなのかなぁ……」
「サイトーーー、早く来なさいよ、水っ、気持ち良いわよ」
「おうっ」
ルイズに向かって走り出す……
側まで付くと、少し水をすくってルイズの方に……
「きゃっ、もうっ、サイト、やったわねっ」
力尽きるまで、二人ではしゃいだ。

143 名前:9/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:46:30 ID:EbOQI9el
「だいたいーミス・ヴァリエールはぁずるいー」
「ずるいー」
「いっつも、さいとさん、ひとりじめー」
「じめー」
……どうしよう……これ。
陛下は楽しそうに、シエスタと……何本空けてるんだ?
数えるのが怖い……
「あにえしゅー、のんでますかー」
「はっ、陛下」
「うむ、よしっ」
「へいかー?」
「んー、わたしへいかー、でもーおんなのこなのー」
「おーわたしも、おんなのこー」
「「おんなじー、イエー」」
息ぴったり……
「きいてーしえちゃぁぁん」
「きくよー、あんちゃん」
「わたしぃ、おともだちいないのぉ」
「えーうそぉ」
「こないだね、ルイズにもきらわれたの」
「だいじょうぶよぉ」
「?」
「ミス・ヴァリエール、きらいっていっても、うそだってぇ」
「そ、そうかなー」
「それにぃ」
「んー?」
「もーわたしも、おともだちだよー」
「え……ほんとー」
「うん」
陛下が楽しそうだから……いいか。
「あー、あにえしゅしゃん、よってねい」
「うみゅ、よってねぃ」
「「のめー」」
ま、まって………
私、実は下戸―――――

144 名前:10/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:47:02 ID:EbOQI9el
俺はルイズのほうが見れなくなっていた……
水を掛けたせいで……服が……
「どしたの?」
「いやっ、なんでもない」
ルイズは気づいてないみたいだけど……
「ほんとーになんでもないの?」
「う、うん、なんでもない」
「じゃあ、何でこっち見ないの?」
「いやっ、そのっ……」
気づいてない……はずだ。
「サイト……」
「なに……」
常に上を見ながら答える。
「サイトなら………見てもぃぃょ」
何か聞こえる。
濡れてる俺の服にぴったりと暖かいルイズの身体が当たる。
「こうしたら……寒くない……わよね?」
「そ、そうだなっ」
「風邪引かないためには、仕様がないわよね」
「そうだよなっ」
いつの間にか町の側まできていたので、
『魅惑の妖精』亭に着替えを借りに行くことになった。
……ゆっくりと向かう道中で、たっぷりルイズの体温を堪能した。

145 名前:11/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:47:34 ID:EbOQI9el
私たちが『魅惑の妖精』亭に付いた途端、店に上げられて……
「なに?これ?」
シエスタと……アニエスと……ひめさまぁ?
「あーやっときたー」
「おー、ヴァリエール、お前も飲め」
シエスタが……変。
「私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて」
部屋の隅っこで、アニエスは三角座り……なんで?
「るっいっずっ、のみましょーよぉ」
……姫さまは壊れてるし…………
「どうする?」
サイトが後ろから聞いてくる……
「……どうしよう……」
結局潰れるまで相手するしかなかった。

146 名前:12/12[sage] 投稿日:2006/10/17(火) 23:48:05 ID:EbOQI9el
頭は痛いけど………
みんなで飲むお酒がこんなに楽しいとは思わなかった……
新しいお友達の、シエスタ……また、皆で騒ぎたいね。
「アニエス」
「はっ、陛下」
……返事は格好良いけど……斜めに立ってるわよ?
「帰る」
「申し訳有りませんでしたっ」
ちょっと笑う。
「いいえ、アニエス。稀に見る有意義な休日だったわ。」
私は私の戦いのため、王宮へと向かった。

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