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560 名前:1/4[sage] 投稿日:2006/12/25(月) 00:07:35 ID:yhljsR8g
夢ならよかったのに。
「目覚めたか?」
起きて最初に目に映るのが自分を叩きのめしたエルフだなんて……
「あと、八日だ」
嫌味な男。
私が正気で居られる期間を毎朝教えてくれる気のようだった。
無言で本を手にと……なにこれ?
「シャイターンの門の活動が活発になってきているのでね……異界の書物だ」
才人の世界の本?
少し興味を引かれた。
「書物とは……素晴らしい」
ビダーシャルが恍惚と呟く。
「この様な文化は我々には無い……」
そう言いながら、ハルケギニアにも見当たらない美しい発色の本を読んでいた。
「どんな本なの?」
どうせ正気を失うまでの時間つぶし。
珍しいものでも……
「興味があるのかね?素晴らしい!まぁ待ち給えよ?」
何?いきなり元気になったビダーシャルがどこかへ駆けさる。
これ……なんて書いてあるの?
『コスプレ大全』『全国美少女制服図鑑』『制服マニア』
えっと……書物?
綺麗な絵ばかりなんだけれど……
561 名前:2/4[sage] 投稿日:2006/12/25(月) 00:08:08 ID:yhljsR8g
「さぁさぁさぁっ、次はっこれだぁぁぁぁ」
えと……んと……
まぁいいか、暇だし。
「後ろ向いて」
ビダーシャルはにこにこと視線を外す。
見たこともない服を、先住魔法で虚空から次々と作り出す。
真っ赤なワンピース……スカート短すぎる。
「おぉぉぉ、股下のライン=スカートの丈……素晴らしい学説だっ」
「まだみちゃだめっ」
白いふわふわで縁取られたワンピースをゴテゴテしたベルトで固定。
ん……と、いいのかな?
「こう?」
振り向いたビダーシャルの顔が笑み崩れる。
「おっけぇぇぇぇ、よしっ『今年のプレゼントはあ・た・し』はいっ」
服を着るたびにビダーシャルは色々なことを言わせる。
『おちゅうしゃする?』とか『おまたせっ!』とか……意味がよく分からないのだけど。
「今年のプレゼントはわたし」
「むぅっ、イントネーションが……リテイクだ!」
ビダーシャルが納得するまで繰り返されるやり取りにももう慣れた。
何度か繰り返すとビダーシャルが鼻血を吹く。
「よひ、つぎら」
不思議な男……エルフって皆こうなのかな?
562 名前:3/4[sage] 投稿日:2006/12/25(月) 00:08:39 ID:yhljsR8g
リアル着せ替え人形、しかも美少女萌えぇぇぇぇぇ
こんな最果てに左遷された時には、泣くかと思ったが……
「よしっ、次はこの某有名私立中学校の制服だっっ」
ちょっと上司の娘に手を出しただけなのに、こんな所に飛ばされた時にはイヤイヤだったが……
(もう誰にも代わってやらんっっ)
しかも、薬で心を喪失させた後は……
(此処を守る……という事は、四十六時中べったりで好きなことしほうだいっ!!)
い、いたずらしてもバレナイっっ、何年ぶりだろうかっ……
「着た」
ぐはぁぁぁぁっぁ、萌え。
震える声で指示を出す
「『おにいちゃん』はいっ」
『血縁でもないのにどうして?』
問いかけるような瞳で小首を傾げつつも、指示通りに……
「おにいちゃん?」
ぐはっっっ、疑問系っ!来ました問いかけるようにっ……おにいちゃんです。
血、血が……血がたりねぇぇぇ。
ボタボタと鼻血を吹きながらその場に崩れ落ちる。
「くっっっ」
まだ……まだだっ、私は……まだ……
「大丈夫?」
心配げな表情で覗き込むように放たれたその言葉に、私の意識はブラックアウトした。
563 名前:4/4[sage] 投稿日:2006/12/25(月) 00:09:11 ID:yhljsR8g
「あいつが居るっ、あいつに殺されてしまうっ」
「あいつってエルフ?」
「そうだ……ヤツの部屋からは毎日大量の血痕がっっ」
キュルケの背後にゆらりと立つ者が居た。
「血痕がどうした?」
ひぃぃぃぃぃと、逃げ出す男が最後に名を告げる。
「ビダーシャル卿!」
――――
サイトたちがビダーシャルを追い払った後、走り回ってタバサを探す。
「お姉さま、無事だったのね?きゅい」
シルフィードの陰に隠れたタバサを皆で取り囲む。
無事を喜ぶ声を掛けようとする男達が一斉に固まった。
「きゅい?どしたの?」
男達の血走った目がタバサを射抜く。
「ありがとうっ♪おにいちゃん♪」
ビダーシャルに何度も言わされていたため、つい癖になっていたタバサが口走る。
助けに来たサイトたちは一斉に血の海に沈む……
「あんた……なにやってんのよ……」
脱力仕切ったキュルケに抱きつきながらタバサが囁いた。
「ありがとっ、おねぇさまっ」
救出に来た一団を全員ノックアウトした後、
タバサ主導の下、城を抜け出す……
最早ハルケギニアにおいてタバサに勝てる存在は居なかった。
ビダーシャルの作り出した数多の衣装をアンリエッタに献上することによって、サイト達はお咎め無しになったのだが……それはまた別のお話。