X00-42のつづきです。
 
 トリステイン王宮

「ルイズ、サイト殿、シャルロット姫殿下、ティファニアさんお待ちしていましたわ」

「姫様、こちらは被害は御座いませんか?」
「建物の中が少しね。他はありませんわ」

「それは何よりですわ」

「サイト殿本当に有難う御座います。ゴールドドラゴンばかりかレッサードラゴンを103頭も倒して下さって。正真正銘、救国の英雄ですわ」

「いえ、そんな。ところで何の用ですか?」

「サイト殿、ゴールドドラゴンのところまで来て下さい」
「どうしたんですか?」
「ゴールドドラゴンが貴方を呼んでいるのです」

「何ですって!!」
「とにかく来て下さいまし」

 ゴールドドラゴンは、まだ微かに息をしていた。
「勇者よ…よくぞ我を倒してくれた…礼を言う。…そなたに渡すものがある…受け取ってくれ…」
 ゴールドドラゴンから光の玉が出現し、額の一部が四角く光った。
「先ずは…この玉を飲み込み給え…これは我の筋力以外の全ての力だ…次に光っている額を切り抜いてくれ…先程の魔法剣でなくとも切り抜けるはずだ…それをマントにして纏ってくれ給え」

「デルフ、飲み込んで大丈夫かな?」
「多分」
「おい」
「いいから飲み込め」

 才人は意を決し光の玉を飲み込んだ。
「があああああああああ」
 才人の中でゴールドドラゴンの力が駆け巡った。
「なんじゃこりゃーー」
「大丈夫か相棒」
「何とかな…全身が痺れたというかなんというか」

「じゃあ次だ相棒」
「ああ」

 才人は、額を切り抜き纏った。
 するとそのマントが光り輝き、黄金色の全身鎧となった。
「その状態になった時…我の力の全てが使える…ただブレスは吐けないし…腕力等もそなたの10倍程度…くらいにしか…ならぬが」
 
「ちょっと待て、なんだこのド派手な鎧は。こんなの目立ってしょうがねぇ」
「良かったな相棒。さっきの『神衣』より落ちるが大幅な防御力上昇だぜ。それにしてもゴールドドラゴンの力か…」

「どうやって脱ぐんだ?」
「マントに戻るよう念じれば良い…さすれば元に戻る…そなたの闘志が高まった時…危険が迫った時…鎧に変化する」

 才人が念じると元のマントに戻った。
「マントの状態でも十分派手だな」

「最後に…汝らの…敵は…強大…気を…つけ…ろ」
 ゴールドドラゴンはこと切れた。

「ねえ、サイト。ゴールドドラゴンの力ってどんなのが有るの?」
「どんなって」
 才人の頭の中にゴールドドラゴンの力の全てが映し出された。
「何だよこれ!こんなの使えねぇよ」
「どうしたのよ」
「なるほど、こいつは凄ぇ。やさしい相棒には、どれも人間相手には使えないね」
「デルフ」
「貴族の娘っ子、相棒がこの力使えるのはこの間のでかい剣士人形みたいのだけだな」

「そんなに凄いの?」
「ああ…今相棒の中には、お前さんが最初に打った『エクスプロージョン』100発以上の魔法力が眠っている」
「うそ」
「ほんとだ…しかし相棒には荷が重すぎるな」

「サイト」
「相棒、気に病むことはないぜ。使わなきゃいけねぇ訳じゃねぇんだからよ」
「ああ…そうだよな。別に使わなくたって構わないんだよな」

「サイト殿」
「あ…姫様すいません」
「いいえ、謝る必要は有りません。それよりお願いが有るのです」

「何でしょう?」
「実は、レッサードラゴン達をオークションに懸けるのです。本来、権利は倒した人物、つまり殆どをサイト殿が持っているのです。すみませんが半分ほど国庫に頂けないでしょうか?」

「姫様、半分と言わず全部差し上げますよ」
「いけません!再び国を救って頂いたのに、半分ですら厚かましいものを全部とは」
「構いませんわ姫様。今国庫は苦しいのでしょう。少しでもお役に立てれば私としても嬉しいですわ」

「少し?何を言っているのルイズ!レッサードラゴン1頭オークションに懸ければ100万エキュー位になるのよ。サイト殿は103頭倒したから1億300万エキュー位の権利を有しているのよ」
「1億300万?!それって」
「トリステインの国家予算の7か月分弱位ですわね」

「そんな大金余計駄目です」
「そうですよ。そんなの個人が使う金額じゃないですよ」

「しかしサイト殿が無報酬では、ドラゴン退治に関わった者全て無報酬にしなければなりません」
「それは…まずいですわね」

「それにサイト殿は、ゴールドドラゴンをも倒しています」
「そうですわね」
「サイト殿」

「何でしょう?」
「申し訳ありませんが、ゴールドドラゴンは、国宝として保管したいのですが」
「ええ、構いません」
「それで報酬の件なんですが」
「ゴールドドラゴン自身から貰いましたから要りませんよ」

「陛下、私に案が御座います」
「どのような」
「死亡見舞金は別にいたしまして、(オークションの売却益×倒した数÷参加人数)×1%で如何でしょうか。此の他に貢献具合によって報酬を加算すれば良いかと存じます」

「1%?幾らなんでも低すぎです」
「いいえ姫様、多すぎるくらいです。それだとサイトの報酬は、103万エキュー位になりますわ」

「確か家1軒2千エキュー位だったよな。そうすると…515軒分!」
「私の実家10万エキュー位って聞いたわ」
「ルイズの実家…あれ家じゃなくて城だろ、どうみても。あれが10以上!」

「この金額やはり大きすぎます」
「ちょっと待て、ルイズ。俺一人で103万はおかしいだろ。ルイズとテファの魔法が無けりゃ絶対倒せなかったんだし」

「確かにそうだけど、実際に死地に赴き倒したのは、あんたなんだから」
「でもよう」

「サイト、それでいいと思うわ。私30万エキュー以上の働きなんて絶対していないから」
「テファ」

「さっき貢献具合によって報酬を加算すると言っていた。だからルイズとティファニアはこれに該当する」

「タバサ」
「貴方は、報酬は三人で均等に分けるべきと思っている。しかし、それは間違い。理由はルイズが言ったとおり。この場合、貴方は打倒報酬を受け取り、二人は貢献報酬を受け取るのが筋」

「サイト殿、シャルロット姫殿下の言うとおりです。そうでなければ二人とも納得しないでしょう」

「でも姫様、103万なんて多すぎますよ」
「先程申した通り、貴方は本来1億以上の権利を有しているのです。それに私は、枢機卿の案をまだ承認しておりません。1%なんて国による簒奪も同然です。ですから才人殿、貴方の望む報酬割合を述べて下さい。但し、1%より下は絶対認めません」

「1%でお願いします」
「分かりました。ですがサイト殿、もう少し欲を出しても誰も咎める事は出来ませんよ」
「いえ、ルイズがいますよ」

「ちょっと」
「ルイズ、言い争いはお止めなさい」
「申し訳ありません」

「それでは陛下、先程の案で報酬額を決定します。貢献報酬につきましては、状況等を考慮致しまして決定します」

「分かりました。詳細は、お任せ致しますわ」

「陛下、オークションの開催日時は如何いたしますか?」
「そうですわね、では一ヶ月後の虚無の曜日に開催します。諸外国に連絡が行き渡り、こちらへの移動日時を考えればこの位が良いでしょう」

「畏まりました。早速伝書ふくろうを各地に向かわせます」
「一ヵ月後か、随分先だな。まあハルケギニアは、情報伝達と移動に時間が掛かるからな」

「サイト殿、これを受け取ってください」
「なんすか、これ?」
「小切手です。今回報酬額が多額なので財務庁に貴方の口座を開設し、そこに振り込みます。これはトリステイン王宮発行の物なのでハルケギニア中どこでもお使い頂けますわ。その冊子が無くなったら又受け取りに来て下さい」

「分かりました。…しかし小切手か。こういう物を使う事になるとは夢にも思わなかったな。」

 暫くして銃士隊が帰還した。
「おいサイト、随分派手な戦果を挙げたな…戦果同様恐ろしく派手なマントを纏っているな。どうしたんだそれは?」

 才人は、これまでの経緯を話した。

「成程、通常は黄金マントで戦闘時などは、ゴールドドラゴンアーマーに成るという訳か。しかし、かなり恥ずかしいな」

「言わないで下さいよ。それよりアニエスさん達もレッサードラゴン6頭倒したそうですね」
「ああ、お前達の…いかん報告がまだだった」
… …
「陛下、只今戻りました」
「ご苦労様です。アニエス」
「ご報告致します。… … …」
 アニエスは、レイナールの作戦・戦果などを報告した。

「成程、実に理に適っていますわね」
「見事な洞察力、作戦立案能力ですな(なかなかに私好みの少年だな、私の部下ひいては後継者として欲しいですな)」

「アニエス、昼食は未だなのでしょう?ここはもう良いですから下がって食事になさいな」
「はっ。それでは失礼致します」
―――――――――――――――
「陛下、昼食の後、軍の再編について緊急会議を開きます」
「分かりました」

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