X00-42-9のつづきです。
叙勲式の午後 トリスタニア 超高級宿 最高級室
「全くあの鳥の骨め!ふざけるにも程がある。陛下とあの黒髪の男を結婚させ、ルイズを妾にするなど。あまつさえアルビオンとガリアの姫殿下も妾にするとは正気の沙汰とは思えんわ。ええい、忌々しい」
激しい怒気をまき散らし、怒鳴っていのは、ルイズパパ、ヴァリエール公爵である。
今この部屋には、公爵夫妻と長姉エレオノール在室していた。
「あなた、落ち着いて下さい。それでお受けになったんですか?」
「受ける訳なかろう。大公になったとは言え、元平民に国を任せるような事を。私のルイズを妻ではなく妾などと、死んでも認められるものか!」
「お父様、どうして枢機卿は、そんなとんでもない事を持ちかけたのです?陛下をはじめ、ルイズ達も承服しないと思いますが」
「わしに分かる訳が無かろう」
「枢機卿は陛下のお気持ちに気付かれたのでしょう。そしてルイズ達のも」
「何だと!陛下があの男に御好意を寄せていると言うのか?ルイズの気持ちは知っていたが」
「ええ、ルイズ達がガリアの姫殿下を救出した後、我が家に来る途中、罰を与えたときの事です。ルイズとあの男が負傷して倒れた時、陛下は、ルイズに目もくれずあの男の治療に専念しておられました。以前なら何をおいてもルイズの治療を優先していた筈です。その時の陛下の目は正しく恋する乙女そのものでした」
「何たることだ。だとすると二人の姫殿下のお気持ちも」
「恐らくは」
「なんという忌々しい男だ。ルイズを毒牙に掛けただけでは飽き足らず、陛下や姫殿下にまで毒牙を掛けるとは」
「でも陛下は、ご公務でお忙しい身でしょう?いつそんな機会が有ったのかしら?」
「詳しい事は分かりません。ですがあの男に説明出来ない魅力があるのでしょう」
「魅力だと?そんなものに惑わされるようでは国の行く末が心配だわい」
「枢機卿の思惑は兎も角、1度ルイズとお話をされては如何です?お父様」
「こんな下らん話など出来る訳なかろう。今からでも遅くない、ルイズに婿を取らせよう」
「最早手遅れでしょう。今更ルイズが他の男性になびく事は無いでしょう」
「カリーヌ、お前まさか認めるつもりなのか?」
「ルイズの気持ち次第です。それにあなたはルイズにおしゃたでは有りませんか。もうルイズは巣立っていると」
「確かに言ったが、しかしこれは」
「兎に角、明日ルイズ達と話をしてみましょう。すべてはそれからです」
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「サイト、何処行っていたんだい?もう帰るんだが」
「悪い、ちょっと野暮用でな」
「どうしたんだい?深刻そうな顔して、君らしくない」
「とても深刻な問題を抱えたんでね」
「どんな問題なんだね?」
「今は、話せねぇ、厄介すぎて」
「分かった。気が向いたら話してくれたまえ。役に立たないかも知れないが相談くらいは、何時でも乗るからさ」
「ああ、すまないな」
「では諸君、魔法学院に帰るぞ」
「応」
魔法学院 ルイズの部屋
「サイトさん、ミス・ヴァリエール今の話本当なんですか?」
「アニエスさんから聞いたから、間違いないと思う」
「残る障害は、父様だけらしいわ」
「女王陛下がこの話を聞いたら」
「喜んでお受けするでしょうね」
「ですよね。はあーサイトさん、もう手の届かない所に行っちゃうんですね」
(既成事実を作ってしまえば…)
「いやまだこの話決まってないし。それにルイズの家族が認めるとは思えねえし」
「特に父様は、あんたが私を押し倒したところを目撃したから猛反対するわね」
「親父さんお前の事溺愛してるもんな」
「兎に角正式に話を受けたわけでは無いからね」