X00-42-10のつづきです。
叙勲式翌日 朝 魔法学院
飛竜に4隅を持ち上げられた竜籠が校門前に降り立った。
勿論乗っているのは、ラ・ヴァリエール公爵夫妻とエレオノールである。
衛兵に事情を話し、ルイズの部屋へ向かった。
部屋の扉がノックされ、才人が扉を開けると魔王が立っていた。
「うわあああ」才人は、後ずさった。
「随分失礼な挨拶だな」
「し、失礼しました。お、おはよう御座います。ラ・ヴァリエール公爵」
(朝から心臓に悪いよ、この人)
「父様、え?!母様、姉様?、おはよう御座います。何の連絡も無しにお見えになるなんて、どうしたんですか?」
「ん、いや、お前の使い魔が大公になったんでな。お祝いに来たんだよ」
(嘘だ!絶対嘘だ。さっきの顔は、殺意むき出しだったぞ)
「ルイズの使い魔と言う事は、虚無の使い魔と言う事よね。伝承通りだとすれば『ガンダールヴ』なんでしょう?」
「ええ、まあ」
「凄い戦闘力だったわね、今度研究させてくれないかしら」
「丁重にお断り申し上げます」
(人体実験は、死んでもやだ)
「この度は、大公叙勲おめでとう御座います。折り入ってお話があるのですが宜しいかしら?」
「ええ、構いませんが」
「あなた」
「うー、おほん。実は枢機卿から無理難題を持ちかけられてな」
「姫様とサイトを結婚させて私達を妾にする話?」
「知っておったのか!。おのれ鳥の骨め、わしより先にルイズに話をつけるとは」
「父様、枢機卿からは、未だ何も聞かされてはいません」
「何、では、なぜ知っておるのだ?」
「アニエス銃士じゃない、近衛連隊長から聞きました」
「陛下の懐刀から?」
「はい」
「では既に陛下に…」
「姫様には未だのようです」
「そうか、でお前はどうするつもりだね?無論わしは反対だ」
「父様ならそう言うと思っていました。ですが、私達3人この話を受けると決めました」
「何だと!そんな勝手許さんぞ。何3人?では2人の姫殿下も受けると決めたのか?」
「その通りです。父様」
「き、貴様一体何人毒牙に掛ければ気が済むんだ?わしは認めん、絶対認めんぞ!」
「すいません、俺自分の意志でキスしたのルイズだけなんですけど?」
「一寸待って、姫様とは?」
「ねぇよ。最初は、勘違いだし、次は兵隊誤魔化す為に姫様からだし、舞踏会の時は、ルイズに仮装してたし」
「姫様に戻ってからのあのキスは?」
「俺からはしてねぇだろ。拒否出来なかったんだよ」
「でもあのキスは恋人同士以外の何物でもなかったわよ」
「その後、姫様が釈明したろ」
「確かに聞いたわ。でもそれで全部じゃないでしょ。キスの前にあんたに言った心の内の激白は無かったでしょ」
「聞いてたのかよ。なら俺の言ったこと嘘じゃねえって分かってるだろ」
「まあね。でもあんた他にメイドと7回もキスしたでしょ」
「8回です。ミス・ヴァリエール」
「へ?ちょっとあんた、何時の間に?」
「ミス・ヴァリエールが寝ている時に。ま、確かにサイトさんからされた事は、有りませんけどね」
「それに、タバサもテファもお前の精神力を溜めるためにしたんだし」
「確かにそうだけどね」
「ゴホン、一寸いいかね?つまり君は、陛下を始め数多くの女性にキスをされまくっていると。そう言う訳なのかね」
「ま、まあそうなりますね」
「一つ聞くが、君はどうやって女性の気を引いているんだね?」
「別に何も」
「あんた自覚が無いんだろうけど、あんたが体張って何かする度にどんどん気を引きまっくてるんだかんね」
「そんな事言われてもな」
「要するに、毒牙に掛ける側では無く、毒牙に掛けられる側ということね」
「え?幾らなんでもそれは」
「それで君は、どうするつもりなのかね?」
「俺ですか?本音を言えば、お断りしたいんですよね」
「サイト」
「分かってるよ。俺個人の問題じゃないんだろ。そう言う訳なのでお受けする事にします」
「そうか、だがわしは、反対だ。自分の娘が政治の道具になるのは見たくない。ルイズには幸せな結婚をして欲しいのだ」
「おしゃる通りですね」
「ルイズ、お前はこれで幸せになれると思うか?」
「そんなの分かりません。でもやれるだけやってみます」
「分かった。サイト殿もし娘を不幸にしたら、大公だろうが王配だろうが統一王だろうが地の果てまで追いかけ殺す。それだけは忘れるな」
「分かりました」
「帰るぞ」
公爵達は、竜籠に乗り帰路に就いた。