アンリエッタの出兵令迄遡る
マリコルヌ=ド=グランドプレは、自他共に認める変態さんで、ぽっちゃりさんで、彼女も当然居ない
そして本質的に臆病で、そんな自分が結構好きだ
でも、貴族たるもの、臆病な部分だけは直したいとは思っていたが、中々実行出来るものではない
そんな折り、女王アンリエッタの出兵令を聞き、直すチャンスと思って志願した
そして、少年貴族達の志願者に混ざり、今、王宮の練兵場にて、身体検査が終わった者達の内、合格者が集まり、初めての閲兵を受けている
その数は500
マリコルヌは体重に難が有ったが、何とかパス出来た
「よ〜し、ガキ共きちんと整列したな?今日から、基礎練を担当するマンティコア隊のエリックだ。教官と呼べ。はっきり言って、非常に不本意である」
いきなりの不満表明に、衛士隊と言えど全員睨み付ける
「ったく、此だからガキ共は。俺はラインで一番下っぱだから、お前らに回された。要するに、お偉いさんはお前らの面倒見る暇なんぞ、無いってこった」
「幾らなんでも、酷いと思います」
「誰が発言を許可した?お前らの生殺与奪の全権は、俺が握ってんだ」
マリコルヌはその言葉で気付いたが、不満を言った少年は収まらなかったらしい
「僕はトライアングルだ。衛士隊とは言え、ラインの貴族に教わる必要なんか無い。ゼッザール隊長にお願いする」
その声に、そうだそうだと同意の声が上がり、教官が溜め息を付く
「今、何を言ったか解ってんのかてめえら。抗命罪だ、抗命罪。今言った奴と同意した馬鹿、全員死刑だ!!」
「「「「…!」」」」いきなり少年達は無言になる
「……な、あれしきの事で」
「良いから前に出ろ。略式軍法会議だ。判事は俺。てめぇらはもう、シャバで貴族ですってやってるのと訳が違うんだよ!軍人だ軍人。さっさと出ないと、問答無用で死刑判決だ。言っとくが、全員チェック入れてるからな」
そう言って詠唱すると、水の礫が撒かれ、発言した少年達の額にピトっと引っ付いた
衛士隊は空を高速で飛びながら戦闘する
止まった状態で判別するのは、非常に易しい
流石に青醒めてぞろぞろ出て来る
その数20人余
そして、最後尾の少年が恐怖に負けて、フライを唱えて逃げ出した
教官が詠唱して、マジックミサイルが飛んだ少年を串刺しにし、少年が墜落していくのを、彼の騎獣たるマンティコアが喰わえて、墜落死を阻止する
「逃げた奴は、敵前逃亡で同じく死刑。こっちは、軍法会議無しだ」
一気にガチガチ震え始めた少年達
少年達は、初めて貴族の威が全く通用しない世界に、入ってしまった事を痛感する
「では判決だ。発言した馬鹿は死刑!っと、言いたい所だが、初めてだし、情状酌量の余地はある。だから格別の恩顧を持って、名誉回復の機会を与える」
ゴクリ
全員息を飲んで、判決の内容を待つ
「俺と一対一で勝利すれば、今回の件に付いては不問とす。同じく、同意した連中もだ。さぁ、素手、銃、剣、杖。どれかを選べ」
衛士隊相手に素手や剣は少年には自殺行為だ
かといって、銃も使った事は無い
当然答えは一つになる
「つ、杖だ」
「……杖だな。じゃあ、全員離れていろ」
教官の声に、全員距離を取ると、教官と少年が対峙する
「ぼ、僕は火のトライアングルだ。逃げるなら今の内だぞ?」
「良いから先に詠唱しろ、ハンデだハンデ」
教官は気にも止めず、手を振ってさっさとやれと促す
「糞、馬鹿にするな。ウル・カーノ…」
唱えた終えた時には、教官が水のブレイドを展開して、間合いに踏み込んでいた
一刀で杖が斬られ、そのままブレイドの刃が少年に刺さる
少年は血を吐きながら、その場に崩れた
「馬鹿が、素手が一番優しかったのによ」
そう言って、もう少年には注意を向けない
既に、少年の眼には光が無い
「後の連中は連帯責任だ。全員練兵場100周。走れ!!」
「「「「ウ、ウィ!!」」」」
目の前で刑が執行された
100周など、それに比べればずっと優しい
俗世間の垢を、今この場で洗い流すべく、少年達は走り始めたのである

*  *  *
「ひぃっ、ひぃっ」
全員100周走ってぶっ倒れている
マリコルヌは、そのぽっちゃりしたチャームポイントたるお腹が非常に目立つ愛らしさである
「ようし、そのまま全員聞け。俺はお前らゴミを、せめて雑魚にせにゃならん」
聞いてるかどうかはどうでも良いのだろう
一方的に教官が話す
「今日刑を執行した馬鹿二人だが、きちんと親元には罪状を送った。後は奴らの親次第だな。一応生きてる」
志願した上での軍務違犯
まごうかたなき一族の面汚し
親や家族の怒りが容易に分かり、全員ゾッとする
場合によっては、家にマジで帰れない所か、家名剥奪絶縁も有り得る
「勿論そうなる事を見越して、わざと生かしてある」
『…死んだ方がマシの様な?この教官鬼だ。悪魔だ』
マリコルヌはそう思い、皆が同じ感想を抱いた
「言っておくが、戦場はここでの訓練なんざ序の口だ。ほんの一瞬の迷いが、命の明暗を分ける。きちんと其を憶えて、基礎訓練に励め。良いな?」
「「「「はいっ!!」」」」
「ようし、全員起立」
足腰ガタガタだが、全員今度は逆らわない
二人の犠牲で骨身に染みたのだ
逆らえば、次は自分の番である
「整列!」
ザザザザ
全員が整列する
「兵舎迄駆け足!行け!」
「「「「ウィ」」」」
ざっざっざっざっ
今日は、此位で終わらせてくれるらしい
ヘロヘロの身体に無理矢理鞭を打ち、マリコルヌは城外の兵舎に駆けて行ったのである

*  *  *
「あ〜疲れた」
マリコルヌがシャワーを浴びた後(兵舎に湯船は無い)は、食堂で食欲が無いにも関わらず、無理矢理取る事にした
どうやら全員同じ考えの様で、あちこちでうっぷと言いながら、無理矢理飯を詰め込んでいる
明日からの猛訓練が予想されるのだ、食わなければ冗談抜きで死ぬ
そんな中、ずっと気になってたクラスメートを食堂で見付けて、マリコルヌは席に向かった
「やぁ、ギーシュ、レイナール」
「やぁ、マリコルヌ。君もこの組だったんだね」
ギーシュの挨拶にマリコルヌがむ?と、なる
何か、ギーシュが違う気がする
そう、これは言わないといけない
「なぁ、ギーシュ。お願いが有るんだけど?」
「ん?何?僕に出来る事?」
「うん、君にしか出来ない。僕を……僕を踏んでくれぇぇぇぇ!!」
流石にギーシュが仰け反り、レイナールが冷たい視線を送る
「あのな……マリコルヌの変態振りはもう馴れたけど、ギーシュは無いだろ?ギーシュは?」
「嫌、だってこうムラムラって来るモノが、ほら解んない?」
「解ってたまるか!?席着け阿呆!」
ベシッ
後ろからギムリに叩かれて、マリコルヌは渋々と着席する
「あぁ、マリコルヌ。君は友達とは言い難いけど、僕に近寄らないで貰えないか?」
向かい席に着かれたギーシュが、心底嫌そうにしている
「今ので友情にヒビ入ったな。マリコルヌも、ちったぁ時と場所を弁えろ」
ギムリに言われて、マリコルヌは首を傾げている
「いや、そうなんだけどさ。何かこう、ギーシュを見たら何故か無意識に?うん、リビドーが迸ると言うか」
「そんなの、君にしか解んねぇよ」
レイナールがそう言って肩を竦める
「しかし、あの教官おっかなかったなぁ」
話題を変えようとギムリが口を開けて食い物を放り込みながら、話を振ってきた
「いやぁ、あれ位普通だよ」
「そうなのか?ギーシュ」
レイナールが聞くと頷いて語り出した
「だって、殺して無いし。きちんと治せる怪我の範囲で収めてる。其で僕らを完全に掌握した。しかも、どうやら水のラインだね。火のトライアングルじゃ言い訳出来ないよ。圧倒的に火が強いもの」
「そう言われてみれば、そうだな」
同じく火の使い手として、レイナールが頷く
「心配もしてると思うよ。きちんとやらないと死ぬぞって。兄さん達も普段はおちゃらけてんのに、軍の仕事になると、顔付き変わるもの」
「はぁ、貴族っても、楽じゃねぇなぁ」
ギムリが溜め息を付くと、マリコルヌは頷いた
「僕、生きて軍に行けるかな?」
「さぁな。さっさと食って寝ようぜ。起床後直ぐに訓練だ。明日からが、本格的にヤバいぞ?」
ギムリがそう言って平らげると、マリコルヌは無理矢理詰め込んだ

*  *  *
翌日からの訓練は、非常に酷かった
アニエスの扱きを暇潰しで受けた経験が無ければ、マリコルヌ達は脱落者の列に入っていただろう
事実、力尽きて倒れる者が続出し、教官がわざわざ治癒とポーションで無理矢理立たせる事が、頻繁に起きている
「……何で水の教官か、やっと解ったよ」
ゼイゼイしてるマリコルヌの側で、レイナールが同じくゼイゼイしながら語る
「あはは、軍も考えてるねぇ」
ギーシュが涼しそうに立っている
落第とはいえ、何だかんだで、家で訓練してきたせいだろう
「ま、才人の稽古に比べれば軽いよ、うん。才人の場合、ゼロからスタートだったからね」
「…そうだな。あいつに較べればこれ位」
ギムリが汗をかいたまま立ち上がり、マリコルヌも立ち上がる
「僕らもシュヴァリエの扱きが効いてんだね。あんまり、醜態晒さずに済んでる」
マリコルヌは、自分がそう思う事に驚いた
そしてギーシュの涼しい顔を見てると、またムラムラしてくる
「ぼ、僕を、踏んで罵ってくれ〜〜〜〜!!」
すざっとギーシュの前に平伏し、ギーシュに虫酸が走って後退する
他の少年達にも艶が解り、思わず赤面してしまう
「…なんつうか、マリコルヌの言い分が解って来た様な」
「…僕もだよ、レイナール」
「……君達と、絶交したくなってきた」
『う〜ん。才人に抱かれちゃったせいかなぁ?男装もそろそろ限界かぁ』
皆で揃いの軍服なのだが、どうも限界かなと、ギーシュも思い始める
最近、そっちの気の人達の視線が熱くて困るのだ
ギーシュは完全にノーマルである為に、それも勘弁である
「そうだ、今度の休みに皆で出掛けないか?魅惑の妖精亭って店が、中々良いらしいぞ?」
「本当かい、ギムリ?」
「おぅ、何でもヒポグリフ隊グラモン隊長御用達らしいぞ?」
その言葉に、ギーシュを除いて全員目の色が変わる
「それは是非とも行かねば」
マリコルヌの言葉に全員頷き、気合いを入れる
「そうそう、後、あっち方面の店も聞いて来た。全員小遣い有るな?行こうぜ?」
ギムリのその言葉に、レイナールがコホンと咳払いをする
「あっち方面とは?」「やだなぁ、言わせんなよ、このっこのっ」
レイナールにギムリが肘でつつき、レイナールが鼻の下を伸ばして赤面しながら笑い
「ハッハッハ。僕は、学術的興味に決まってるじゃないか……すいません嘘です。僕も連れて行って下さい」
そう言って参加を請い、ギムリが尊大に頷く
「大変正直で宜しい。レイナール二等兵、参加を許可する」
「た、隊長!自分は感激でアリマス」
ギムリに向かって敬礼するレイナール
『ふうん、そういう店かぁ。後学の為に行ってみようかな?』
ギーシュも頷いて、全員で行く事が決まる
「ガキ共、休憩終わりだ。来い!!」
マリコルヌ達は教官の怒声に、慌てて走って行った

*  *  *
さて、そんな訓練の合間の休日の前日
「よっしゃー!!休みだぁ!!」
一際元気が良い四人組が、飯とシャワーを浴びたら、速攻で街に飛び出した
中には、ヘロヘロでベッドに倒れた連中が居るにも関わらずだ
やはり、待ってるモノがテンションを高めるのだろう
目指す先は歓楽街、そして大人の宿である
そのまま宿で一泊してから、明日の休みに魅惑の妖精亭に向かう手筈だ
「よし、お前ら。一番良いとこを探すぞ?」「「了解でアリマス!」」
遊び馴れてない少年貴族達の、初めてのトリスタニアでのイケない遊びである
全員期待値が違う
そんなこんなで、宿から女達がウルフホイッスルを鳴らし、少年達を蠱惑する
「デムリ隊長。何処が良いか全く解りません!」
「…実は僕もだ」
こんな時こそジェラールが居たら色々教えてくれただろうが、生憎ジェラールの事を知ってるのはギーシュだけだ
そしてギーシュはピンと来た
「あ、そうか。グラモン隊長の御用達の店はどれだ?」
わざと大声を上げると、何軒かから、声が上がった
「ウチは良く来て貰ってるわよ〜」
「あら、ウチだってそうよ〜?」
「ナイスだ、ギーシュ二等兵。勲章モノだ」
その内の一軒に狙いを定めて、少年達は突撃した
「「きゃあ〜〜〜。可愛い〜〜〜!!」」
いきなり黄色い歓声で出迎えられ、全員眼を白黒させる
「ねっねっねっねっ。ジェラール様とどんな関係なの?」
「僕の兄です」
「やだ?本当に?こんなに可愛い弟さんいるなんて、聞いてないわ」
そう言って、きゃいきゃい婦人達がギーシュ達の周りに集まる
「何だ?お前らも来たのか」
声に振り向いた先は
「き、教官!」
酒を飲みながら、婦人を片手に抱えてる教官を見て、思わずマリコルヌ達が、直立不動になる
「構わん。今は非番だ。そうしゃっちこばるな」
「は、はいっ」
マリコルヌ達が姿勢を崩すと婦人達がまたきゃいきゃいやりだした
「やだぁ、エリック様の知り合い?」
「部下だよ」
「あらあら、そうなんだぁ」
「それより、そろそろじゃないか?」
「えぇ、そうね」
酒を片手に教官が婦人と話してるのを聞き、マリコルヌが尋ねる
「あの、何がそろそろなんでしょうか?」
「何だお前ら、知らずに来たのか。今日は、月に一度だけやって来る、お姫様が来る日なんだよ。今エントランスに居る野郎共は、全員それ目当てだ」
すると、マリコルヌがピンときた
「…まさか、教官。明日休みなのは…」
「それ以上聞いたら、軍法会議だ」
「了解であります」
そして、暫く待ってたら、黒髪の非常に美しい娘が二人、中央に進み出た
全く同じ容姿だ、恐らく双子なのだろう
ドレスのアクセントとアクセサリーを対称に着けてる為、何とか判別出来る
「おぉ、相変わらず美しいな」
その双子がきょろきょろと見回し、マリコルヌ達に寄って来た
「初めましての人達ですね」
二人はそう言ってマリコルヌ達を眺め、一人がレイナールとギムリを、もう一人がギーシュとマリコルヌの頬を舐めた
「……!?」
舐められた四人が赤面して後退り、黒髪の娘達がひそひそ話をした後に、ニコリと笑いかけた
「それじゃ、私は貴方」
「私は貴方です」
そう言って、二人がレイナールとギーシュの腕を取り、階段を上がって行った
「ちっきしょ。駄目だったか」
「あの、教官?」
マリコルヌが思わず問い掛ける
「あの二人は月に一度、相手をああやって本人が一人だけ指名して行くんだよ。一度相手をした事有るんだが、そりゃもう夢心地で、良く憶えてねぇ。何人もプロポーズしてんのに、未だに誰も射止めて無いんだよ」
「はぁ…」
「で、残念だったな二人共。正直に言え、筆下ろしか?」
「…恥ずかしながら」
ギムリが答え、マリコルヌも頷く
「気にすんな。誰でも初めてはある。リードしてくれる相手身繕ってやる」
そう言って、教官が女性を呼ぶと、二人はその女性達と共に階段を、心臓が張り裂けそうな位緊張しながら登って行った

*  *  *
こちらは、指名されたレイナールが部屋に入ってガチガチになっている
「貴方。お名前は?」「はひっ。レ、レイナールと言いまふ」
緊張の余りに舌が縺れるレイナール
「くすっ。私はダルシニです、宜しくね。一夜の夢を楽しみましょう」
そう言って、ダルシニがレイナールの側に寄って行くと、レイナールは緊張の余り硬直し、そのまま眠気が襲い、瞼が閉じていく
「そう……夢を見てね」
レイナールの耳には、そう聞こえた様な気がし、そのまま意識が途切れた

*  *  *
こちらはギーシュが連れ込まれた部屋だ
「あ、あの、僕は、その」
「あ、大丈夫です。女の人ですよね?」
「…解るの?」
「はいっ。だから、お願いしたんです。私はアミアスと言います」
「…ギーシュで」
「はい、ギーシュ様ですね?ではちょっと、裸になって下さい」
ギーシュは思わず後退る
「いや、僕はほら、ノーマルだからそう言う趣味は」
アミアスの目が妖しく光り、ギーシュがベッドに押し倒され、そのまま舐められる
「うぁっ!!」
「ん、美味し。じゃあ行きますよ〜」
「ちょっと、お願い、止めて、はぅ!?」
アミアスによってあっさり脱がされ
「や、やめ、お願い!?ひぅ!?やぁ、そこは〜っ」
「んふ、男の人知ってるんですね〜。大丈夫、女同士だから大丈夫ですよ〜」
ピチャッピチャッ
身体中を舐められたギーシュは、そのまま失神する
「ん〜美味しいし、何か懐かしい味がする。さてと、ちょっと寝てて下さいね」
アミアスがそのまま呟き、ギーシュの眠りが更に深くなった
そんなギーシュの首筋にアミアスは吸い付き、直ぐに口を離した
「ん、ご馳走様」
パタン
すると、ダルシニが入って来た
「アミアス、私にも味見させて」
「ダルシニ、あんまり飲んじゃ駄目だよ?」
「はいはい」
ダルシニも首筋に口を付け、直ぐに離した
「ん〜美味しい。やっぱり女のコだよねぇ」そう言って、にっこり笑うダルシニ
「二人分も食べたんだから、治療お願い」
「はいはい、水よ……」
傷が綺麗に治され、痕跡が掻き消えた
「それじゃ、何時もの様にしましょ。アミアス」
「はいはい。ダルシニも気をつけてよ?それじゃ、明け方に」
ダルシニが出て行って、アミアスが残された
「はぁ、吸血鬼って、辛いなぁ……私もダルシニみたいに、幸せになりたいなぁ」

*  *  *
「あらあら、そんなに固くならないで、貴族様。私がたっぷり初めてを相手して上げますからね」
そう言って、女性がベッドに押し倒し、マリコルヌの服を脱がしていき、マリコルヌの緊張で縮みあがった可愛い息子を舐めだした
「あおっ!?」
「やだもう可愛いぃ。被ってるんだぁ。それじゃ、むきむきしましょうね」
蜂蜜色の髪が、マリコルヌの股間で揺れている
「うわっ。そんな事!?」
唇と手の両方でムキと剥かれながら、そのまま口の中に包まれる
「うわっ!?ちょっと!?やめっ!?」
だが女性は丹念に掃除し、綺麗にするとすかさず跨がった
「じゃあ、初めての刺激でそのまま行きましょ?口より、中でイキたいよね?」
返事すら聞かずに、ヌププって音を立ててマリコルヌが飲み込まれていく
「あ、これ、すご」
「童貞脱出おめでとう。き・ぞ・く・さ・ま」
そう言って腰を振ろうとする前に、マリコルヌはあっさり射精する
「あっあ、駄目。これ駄目。で、出るぅぅぅ!!」
マリコルヌのぽっちゃりした身体が震え、女性がクスクスと笑い
「あらあら、剥きたてじゃしょうがないかぁ」
そのままマリコルヌが満足する様に軽くうねらせ、マリコルヌがはひはひと声に出さない声を出す
「や、ちょっと、まっ」
「まだまだ元気でしょ?アナタのお腹、座り心地良いわねぇ。じゃあ頑張りましょう?」
そのまま、マリコルヌは一切主導権を握れず、ずっと為されるまま、涙でぐしゃぐしゃになりながら射精しまくり、男になったのである

「どう?初めての女は?」
グチュ、グチュ
マリコルヌの精液でぐちゃぐちゃになった女性の結合部から音が鳴り、ぽっちゃりしたお腹の上に、女性が胸を押し付けながら、マリコルヌの首筋を舐め上ゲ、マリコルヌは声にならない
「は、はひっ、凄く…キモチ」
「気に入ったら贔屓にしてね?」
マリコルヌがまた射精し、女性がクスクス笑う
「あら、またイッたのね。頑張って。出兵するのでしょう?」
「…ばいっ。ぞうでず」
「手柄を立てて帰って来て、また私を買ってね?」
女性も心得てるのだろう
マリコルヌの奮起を促す言葉を囁き、更に口付けを交わす
「……ちょっと臭いです」
「失礼ね。アナタのおちんちんが汚かったのよ。きちんと洗いなさい」
「す、すみません」
女性も知ってたからキスをしなかったと、マリコルヌも気付き
『次から、きちんと洗おう』
そう思いながら、意識を手放した

*  *  *
翌朝、四人が下の階で集まり、互いの戦果を報告しあっている
「レイナール、一番人気の姫に指名されたんだろ?どうだった?」ギムリが声をかけると、レイナールが答え
「……夢心地過ぎて何にも憶えてない。身体は、無茶苦茶だるいけど」
欠伸して、憶えてない事を後悔しまくってる、レイナール
「ギーシュは?」
次にギムリがギーシュに振ると
「……全身舐められた」
「「「おおぉ!?」」」
ギーシュが突っ伏してる所に、喝采が上がる
「マリコルヌは?」
隊長として、次々と戦果を要求するギムリ
マリコルヌはぽうっとしながら答える
「10回から先は覚えてないや」
「「ほほ〜〜?」」
レイナールとギムリが顎に手を当て、キランと眼を輝かせる
「そう言うギムリはどうなんだよ?」
突っ伏してたギーシュが、そのままギムリに問い掛けた
ギムリが胸を張り
「ようし、聞いて驚け!僕は「ガッチガチに緊張しまくって勃たなかった挙句、キスだけで失神して、そのまま朝を迎えたのよねぇ」
ギムリがさぁっと青醒めて振り返ると、朱色の髪をした、昨日ギムリの相手をした女性がニコニコ笑っている
そんなギムリを見て、皆がやれやれと肩を竦め
「あ、あの……レイラさん?」
「あのまんまじゃ可哀想だから、今からリベンジさせてアゲル」
そう言って、ギムリを拉致して部屋に上がって行った
さて、彼らの中で一番の不運は誰だろう?

*  *  *
マリコルヌ達はそのまま宿でぐうたらした後、トリスタニアの街に繰り出して、ぶらぶら彷徨いた後に魅惑の妖精亭に辿り着いた
酒場は客でごった返しており、順番待ちで暫く待った後に通された
「ふぅ、凄い混み方だ」
「いや、宿も良かったけど、こういうのも良いね」
レイナールが汗を拭きつつ宣い、ギムリとマリコルヌが危ない視線で妖精さん達をガン見し、ギーシュが呆れる
すると、妖精さんがやって来て、素早く顔を隠した
マリコルヌ達には見たことある桃色がかったブロンドと、背の小ささである
「…なんで、ルイズが居るんだよ?」
マリコルヌが怪訝な顔をして聞くと、妖精さんは顔を隠したままぶんぶん首を振って否定しつつ、メニューを指差した
どうやら、選べと言ってるらしい
「どうしますか?ギムリ隊長」
レイナールが聞くと、重々しくギムリが頷いた
「うむ。マドモアゼルに非道な事は気が引けるが、やはり聞かねばならないな。お前達、やってしまいなさい」
「了解でアリマス」
そう言うと、手をワキワキさせてマリコルヌが妖精さんに立ち上がって近付いた
はっきり言って、非常に怖気が走る
「い、いやぁぁぁぁぁ!!」
ドゲシ!!
マリコルヌの顔面に両足が乗っかり、マリコルヌが倒れ込んだ
「……やっぱり、これだよ」
「で、ルイズ。何で居るんだい?」
マリコルヌが幸せそうに気絶してるので、ギーシュが聞くと
「バ、バイトよ、バイト。ほら、サイトの治療費とかで、すっからかんで」
「あ、成る程ね」
ギーシュはちょいちょいとルイズを呼び、ルイズが耳を寄せると本当の事を聞き出した
「本当は任務だろ?」「……皆には内緒」
「了解」
二人で耳打ちしてる姿は、ちょっと怪しい
「何だよ、ギーシュ。いつの間にルイズと仲良くなったんだよ?」
ギムリが聞くと
「才人繋がりだよ。なぁ、ルイズ」
「そ、そうね、サイトのお陰で仲良くなれたわ」
「へぇ」
ギムリやレイナールが納得の頷きをする
確かにサイトが来てからのルイズは、色々変わったのだ
取っつき易くなっている
「で、あんた達、さっさと注文選びなさいよ」
「お、そうだな。マリコルヌ、起きろ」
ギムリがマリコルヌを叩き起こして、皆が注文していった
ルイズが厨房に行くと、皆して妖精さん達の批評を始める
経験しても、いや、したからこそ、ついついそういう目で見てしまう
やりたい盛りの少年達だから、仕方ないだろう
「う〜ん、僕あの娘」
「ばっか、あの金髪だろ?」
「あの黒髪の娘じゃね?胸でかいし」
三人で言いたい放題を、ギーシュが苦笑して聞いている
『もし僕が女だって知ったら、どういう評価下すんだろうねぇ?』
「ギーシュはどの娘が良いんだよ?」
マリコルヌの言葉に
「ん〜と(将来才人と一緒に住む人だもんね)」
唸って、結局ルイズを指した
「は?ルイズが趣味なのか?ギーシュ」
「あぁ、可愛いじゃないか(やっぱり、可愛い娘と一緒に愛して貰う方が良いし)」
「ヴァリエールだからか?」
ギムリの言葉に
「関係無いよ。家格なんか考えなくて良いんだ(才人は、家なんか無視で、女のコの魅力しか見ないしねぇ)」
「グラモンの坊っちゃんは流石だねぇ」
ギムリが感嘆してると、ルイズが真っ赤な顔をして料理を運んで来た
どうやら聞こえてたらしい
「お待ちどうさま。き、聞かなかった事にしておくわ。貴方の兄も似たような事言ってたし、ググググラモン得意のナンパでしょ?」
「そだね。忘れて良いよ、ルイズ。一緒に住む事になったら、思い出してくれれば良いや」
マリコルヌ達がどよめく
「まぁ、聞きました?奥様」
と、マリコルヌ
「えぇ、聞きましてよ?」
と、レイナール
「最近の若い方達って、大胆ですわね」
ギムリがそう言ってトドメを刺す
空になったお盆をバシリとギーシュの頭に炸裂させ、ルイズは他の注文を取りに席を離れた
「随分大胆だな、ギーシュ」
「兄さん達に較べたら、まだまだだよ」
そう言って肩を竦めると、ギムリは頷いた
「グラモンってのも、大変だなぁ」
アフターこそ出来なかったものの、彼らは楽しんで帰り、翌日の訓練に備えたのである

*  *  *
マリコルヌ達が訓練に忙殺されている中、凶報が届いた
先に出撃してたガリア方面軍の敗北である
流石に訓練生達にも伝わり、動揺が走った
「おら、その程度の荷物でモタモタするな!そのまま走れ!」
ザッザッザッザッ
訓練は少年達には苛烈だったが、表向きは誰も何も言わない
言う暇が無いからだ


「良し、本日の授業は砲術だ。計算方法を教える」
黒板にずらりと計算式と図形が書かれ、全員がノートに書き留める
「良いか、良く聞け。大砲は撃てば当たるって代物じゃない。きちんと気象、発射角、発射速度、弾の重量から着弾地点を計算する生きた数学だ。闇雲に撃っても弾の無駄。良く覚えておけ」
カッとチョークで黒板を叩き、教官が少年達に発破をかける
「先ずは目標より遠方を狙って撃つ。次に目標より近方だ。こうやって交叉させると、その遠近の差で目標迄の計算が出来、効力射が出来るのは三発目からになる」
カッカッカッカッ
教官が黒板に書いていくのを少年達は頷きながら、或いは適当に受け流す
「慣れた砲兵なら一発目から命中が可能だが、お前達には無理だ。きちんと覚えておけ。砲術指揮に回された時に、恥だけならまだしも、味方含めて自分が死ぬ事になるぞ?」
その瞬間に、今まで適当に受け流してた生徒がノートに書き留め始めた
やはり、命は惜しいのである
「教官、質問です」
「何だ?」
「ガリア方面軍が敗北したと聞いてますが、本当でしょうか?」
「本当だ。だがお前達は気にするな。今出来る事をやれ、良いな?」
「…しかし」
「敵を討ちたいなら先ず頭を磨け。身体を鍛えろ。戦意の前に、味方を無駄に殺さない様に勉強しろ。お前らは、まだまだゴミだ」
「……」
流石に歯痒いのだろう、口惜しそうに着席する
その姿を見た教官が、溜め息を付いて語り始めた
「良いか。俺達メイジは確かに強力だ。ドットでさえ、平民の鍛えに鍛えた一個小隊に匹敵する戦闘力を保持している。だから、お前達も戦場に出れば、それなりに活躍しようと思えば出来るだろう」
そこで一度区切り、また語り出す
「だが所詮そこまでだ。何で大砲や銃、剣や槍が有ると思う?」
教官に問われ、おずおずと少年が答える
「それは、平民が居るからでは?」
「半分正解で半分間違えだ。シャバでは魔法絶対論が蔓延してるが、戦場ではそうじゃない。お前達は、自身最強の魔法をどれだけ継続出来る?恥ずかしがらずに答えてみろ」
教官の質問に、少年達が答え始めた
「一分です」
「45秒」
「さ、30秒です」
「20分です」
長い答えは土使いである
ゴーレム使役の最長時間だろう
「今考えた魔法を、10時間継続出来るか?」
全員首を振って答える
「無理です」
「だろう?メイジなんか、魔力か精神力が切れたら終わりだ。しかも、今言った時間しか持たん。お前達が魔法を使えない立場ならどうする?」
聞かれて考えた者達から、複数の手が上がった
教官が指名する
「グランドプレだったな?答えろ」
「は、はい。僕…小官なら魔法を使わせた後、銃や砲で攻撃します」
「正解。更に囮を攻撃させてる最中に、横から殴り掛かるって手が有るな。つまり、今の答えがお前達の末路だ」
全員押し黙る
「解ったか?俺はお前達ひよっ子共を、死なせたく無いんだよ。今は少ない時間でも牙を研げ。出来る事に全力を出せ。このまま兵科の話でもするか」
書いた物を消し、そのまま武装した人物達を書き始める
「各国のメイジ兵、つまり俺達の特徴だ。先ず魔法衛士隊。コイツは我がトリステイン独自のメイジ兵科だな」更に幻獣を書く
「幻獣騎兵で、俺達はランスを用いている。つまり遠距離魔法戦も行う軽突撃兵だな。三次元高速機動でチャージを決める、我らがトリステインの一騎当千の精鋭部隊だ」
次にユニコーンに乗った騎兵を書いていく
「コイツはガリア花壇騎士団。基本的には騎兵移動をする魔法歩兵だ。ガリア花壇騎士団はハルケギニア各国でパラディンを凌ぐ人数と陣容を備えた、魔法兵科最強と言って良い。クラスの高さも我々衛士隊を質量共に凌いでいる。まともにぶつかればまず負ける」
流石に、魔法大国ガリアの陣容に少年達が息を飲む
更にペガサスを書いてメイジ兵を書く
「コイツはロマリアの聖堂騎士隊、パラディンだな。ペガサスで移動するメイジ歩兵だ。特徴は、魔法を各兵が合成させて詠唱させる聖歌斉唱がある。攻撃力だけならハルケギニア最強と言えるが、下準備が有るので初動が遅い、融通が効かない石頭揃いと欠点も多い」
そして、次に鎧を着せて、銃器を持たせたメイジ兵を書く
「で、次に出るのはゲルマニアの親衛隊たる装甲擲弾兵、パンツァーグレネーダーだ。実は、数だけ見れば最多を誇る。なんと、二個連隊2000人居るぞ?」
一気にざわつき始める
「メイジ兵なのに……銃器ですか?」
「そうだ。ゲルマニアが誇る、機械化メイジ兵達だ。特徴はクラスの低い兵達にも均一の攻撃力を持たせる為に装甲と擲弾、マスケット銃を装備させてる点だ。つまり、戦列重歩兵のメイジ版だ。また、特徴の一つに背が非常に高いメイジを採用する傾向があり、別名巨人部隊とも言われている。つまり、体力に任せて鎧迄着込んでる訳だ。実は臨機応変具合が恐ろしい部隊でね。前線に出て来られたら堪らん連中でもある」
カッカッカッカッ
今度は鎧を着込んだ重騎兵だ
「コイツはアルビオン親衛の鉄騎兵、アイアンナイツ。コイツらも数が多い。二個連隊有る。特徴はブレイドをランス形状にする連中と、シールド展開と遠距離射撃する内部騎兵が併せてチャージを決める、機動戦術をする突撃兵だな。三次元機動こそ出来ないが、平面打撃力なら我々衛士隊を凌いでるだろう」
各国の一騎当千のメイジ騎士団を書いていき、少年達が感心する
「あの、彼らと戦場で相対した場合は?」
「全滅を覚悟しろ。以上だ」
ガタガタと全員崩れていき、流石に堪らない声を出す
「きょ、教官。せ、せめて対策を」
「魔法を攻撃に使わず防御に使え。後は攻撃手段を用意して攻撃しろ。何故我々がランスを持ってるか解るか?魔法を節約してるんだ」
全員成る程と頷く
「普通は魔法を攻撃に使いますよね?」
「相手が各国の親衛相手では無理だ。攻撃と同時に殺される。メイジ兵の真価が有るのが各国の親衛隊だ。特徴は良く叩き込んでおけ」
全員ノートに書き留める。今回は特に鉄騎兵と当たる可能性が高い
対策は練るに越した事は無いのだ
そんな中、教室に伝令兵が入り、書類を渡す
「命令です」
「……了解した」
お互いに敬礼して、伝令が去り、今の書類を読み上げる
「さて、ちょっと早いが出撃命令が出た」
全員一気に顔が引き締まる
「と言っても、俺とお前達は別。今回損耗したグリフォン隊を下げて、俺達マンティコア隊が出る。お前達は後方支援を兼ねた野外訓練だ」
野外訓練と聞いて、一同安堵の息を付くが、教官が更に言い放った部分でひっくり返った
「良いか、良く聞け。お前達の任務は魔獣ひしめく森に分け入り、鉄屑を集めて来る事。死ぬ確率はかなり高いな。戦場行くのと、大して変わらんだろう。まぁ実戦訓練だ、輸送艦に乗って行って来いと書いてるな」
「教官、質問です」
生徒が挙手をしたので、教官が指名する
「許可する」
「はい、何故鉄屑集めをするのでしょう?」
「鉄が足りんのだろう。戦争では鉄を大量に使うからな。錬金でも限度はある。勝つ為だ、解ったな?」
「ウィ」
全員が敬礼し、立ち上がった
其処で、リーダーを指名されてた少年が号令をかける
「エリック教官の武運を祈り、敬礼!」
バババッ
一斉に敬礼をすると、教官が返礼をする
「お前達も成果を期待している。輸送艦は既に向かっている。総員準備を完了次第、郊外に出発」
「「「「ウィ!」」」」

*  *  *

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