「しっかし、でかい家だなぁってか、マジで城だとは思わなかったわ」
才人が呆れを通り越してひたすら感心している
零戦は城壁の堀の手前に置いており、そこから幾つかの城壁と堀を潜った先迄歩いていく
正に防衛用の城だ
「ヴァリエールは、対ゲルマニアの最前線だからね。有事には周辺の平民を全て収容出来て、更に軍隊の拠点としての陣容を誇ってるの」
そう説明して、エレオノールが才人の左隣を歩いていく
右隣は、ルイズがぶら下がりっぱなしだ
「どれも年期入った城壁だし、補修の跡もあるし、相当やり合ってんのか?」
「えぇ、本来はツェルプストーを案内なんざ、御法度なのよ。ツェルプストーでもヴァリエールを歓迎しないわ。でも、空中偵察はどちらもやってるから、構成はバレバレなのよね」
「あれ、じゃあ邸宅内は?」
「勿論ツェルプストーは制限付き。家内の者無しでは動かない様に、キツク言ってるわ。お互い戦争起こしたく無いでしょ?って言ったら、素直に納得したわ。逆にツェルプストーでは、私達ヴァリエールが制限を受けるわね」
「…大変だな」
「まぁね。でも仕方ないじゃない。お父様の代迄、文字通り殺しあって来たんだから。今は、偶々同盟結んだだけよ。いきなり、はい仲良くって訳にはいかないわ」
才人は自身が思ってるより、遥かに遺恨を残している事を目の前の証拠と共に理解する
以前のキュルケの物言いは、決して大袈裟では無かったのだ
「エレオノールさんは、仲良くしたい?」
その言葉に暫し考えて、才人の瞳を覗く
「平民はどうしたい?」
「せめて、殺しあいはしないで欲しいとしか。俺は、どっちかの味方に付くとは言えんし。出来れば、仲良くして欲しい」
キュルケとエレオノール、どちらも死んで欲しくない
そんな心情なのだが
「このスケベ」
「…何でそうなる?」
「…ふん」
そう言って、エレオノールはそのまま口を閉じてしまった
「ルイズはキュルケと戦いたいか?」
いきなり振られて、ルイズも考える
「ん〜と、姫様が戦えと言えば……かな?」
「…人任せは止めろと言ったろう?」
「うっ」
以前に言われた事を再度指摘され、ルイズは思わず絶句する
「……あんまり、考えたくない」
「嫌な事を考えて、最悪に備えるのが上の仕事だよ。姫様の苦労は、まだまだルイズには解らんだろうな。正直、良くやつれないなと、俺は思うよ」
ルイズはそう言われてしまい、口をつぐみつつ、思考を巡らせる
『サイトは常に私達に見えない何かを見ている。その先に見えているのが、私達ハルケギニアの人間には解らない。だから、達観した物言いが多い。最初は反発したけど、多分サイトの考えが解れば、あたしは貴族の誇りを、更に高みに昇らせる事が出来る。絶対に離すもんか。あたしの恋と、理想と、メイジの行く先を知らしめる、最高の存在なんだ』
その意思は今は、才人の腕に抱えられるのではなく、ぶら下がったカタチで顕現していた
何重にも重ねられた堀と城壁を歩いていき、広大な内庭が広がり、中央には城が建っている
トリスタニアの王城に匹敵する規模だろう
「はぁ、やっと着いたぜ」
才人がそんな感想を洩らすと、扉がバタンと開いて桃色の風が飛び出した
「やっと来たのね!私の小さなルイズ!」
「ちい姉さま!」
掴んでた才人の腕をほどいて走り出し、次女の胸に飛び込むルイズ
「ちい姉さま、ちい姉さま!!」
「お久し振りね、私の小さなルイズ。ちっとも、甘えん坊は治らないんだから」
そう言って、ちっとも怒らず、にこにことルイズを抱擁している桃色の美女
「ただいま、カトレア」
「お帰りなさい、姉様と……」
何かに気付いたのか、ルイズを離して才人に近寄り、頭の天辺から爪先迄、じろじろと見つめて、更にスカートを持ち上げて礼をした
「お初にお目にかかります。私はカトレア=イヴェット=ラ=ボーム=ル=ブラン=ド=ラ=フォンティーヌ。ヴァリエール公爵が次女にして、情け深き父たるヴァリエール公爵からフォンティーヌを頂いた、一代限りのフォンティーヌでございます」
顔を上げたカトレアがにこりと才人に笑いかけ、才人は思わずどぎまぎしてしまう
才人の理想がそこに居たのだ
「あぁ、えっと。俺は平賀才人。カトレアさんの妹の、ルイズの使い魔召喚の儀式でハルケギニアに喚ばれた日本人で、ルイズの使い魔だ。今はゼロ機関の所長もやってるよ」
そう言って、思わず握手をする為に手を差し出す
「あっと、こりゃ日本の習慣だった。ハルケギニアじゃ違うね。失礼」
だが、カトレアは才人が手を引っ込める前に、ごく自然な姿で才人の手を握る
「あら、握手はハルケギニアの習慣でも有りましてよ?」
そう言ってカトレアが微笑み、エレオノールが眉をピクピクさせる
「……カトレア」
「あら、姉様何かしら?」
相変わらずにこにこしながら、エレオノールに振り返る
「あんた、悪戯思いついた顔をしてるわよ?」
「まぁ、酷いですわ姉様。ちょっと二人から黒髪が素敵な殿方を取り上げようとか、そんな事は考えたりはしてませんもの」
その言葉にルイズ迄思わず固まる
「ちい姉さま。冗談ですよね?」
「えぇ、勿論よ。私が小さなルイズの殿方を、奪う訳無いじゃない」
そう言って、ころころ笑っている
どうにもこうにも、思惑が笑顔のせいで全く読めない
初対面の才人には尚更だ
「では、才人様で宜しいですか?」
「様付けはしないで良いよ」
「あら、陛下からの勅命を、私の様な奉公が出来ない者に迄、奉公が出来る様にして下さり、名誉を与えて下さった方に、呼び捨て等出来ませぬ」
「ほら、俺は平民だからそんなに気を使わないでも…」
「では、才人殿で。これ以上は罷りません」そう言って、にこにこ笑いながらの圧力
才人は思わず頷く
「あぁまぁ、それくらいなら」
「では才人殿。実は相談がございまして」
「え、何?」
「あの、ドラフターの使用方法を、きちんと教えて頂けないかと。一応姉様から説明書は頂いたのですが、やっぱり使用方法を熟知した方に、きちんと見て貰いたいのです」
納得の理由だ
いきなり道具を送られて、四苦八苦するカトレアの姿が脳裏に浮かび、才人は頷いた
「今迄きちんと教えもせずに、高度な複写頼んで申し訳ない」
思わず頭を下げる才人
「いえ、こう、何かに熱中出来るのは、実に素晴らしいですわ。では、私の部屋に参りましょう。メイドさん」
「は、はい」
いきなり話かけられ、シエスタがびっくりしながら返事をする
「貴女は、ゼロ機関のメイドと解釈すれば宜しいですか?」
「は、はい。皆様の身の回りのお世話をさせて頂きます」
「では、竜さんを案内したら、家内の者に言って、才人殿の世話をお願いしますね。他のゲストには、家内の者がやりますから」
「か、かしこまりました」
そう言って、シエスタがシルフィードを呼ぶと降りて来て、ヴァリエールの竜番に渡すべく、シエスタは動き出した
その間に、四人は城に入城する
「…姉さま」
「…何よ?」
「ちい姉さまって、ああいう人だったっけ?」
「ルイズの前じゃ、お姉さんしてるからルイズが知らないだけで、珍しいモノが好きで悪戯好きよ。動物の世話なんかも、生態知るのが楽しいからやってるのに過ぎないわ。勿論、怪我してるの見るのが嫌って理由も有るけどね」
「って事は、サイトの事…」
「…面白い玩具と考えてるかも」
ルイズは不安な顔をエレオノールに向け、エレオノールは肩を竦める
『本当の事は言えないわよねぇ。さっき言ったの多分本気だって。本気で引っ掻き回されたら、堪らないわねぇ』
エレオノールは、カトレアが自身が転んだ男に関心を示し、更に今のやり取りで確信に変わった
あれは………敵だ
しかも、女の魅力という意味では、最強クラスの敵だ
全く、だから会わせたく無かった
「所で姉様にルイズ、お母様に挨拶しないと駄目じゃない?」
カトレアの言葉に二人共に思わず固まり
「そしたら、平民も挨拶させないと」
「そ、そうよね。サイトも挨拶させないと。お父さまは?」
「出掛けてるわ。お父様、最近忙しいみたい。では二人共、お母様に挨拶してきなさいな。才人殿は、私と一緒に来て下さいな」
そう言って、有無を言わさず才人を連れて行ってしまった
全く隙の無い立ち回りに二人共に反応が遅れ、はたと気付いたら二人して残される
『ちっ、やられたわ』
「ほら、お母様に挨拶するわよ、ルイズ」
「う…うん」
仕方なく、二人は母に挨拶する為に、城の扉を潜った

*  *  *
「ここが私の部屋ですの」
そう言って、カトレアが案内し、扉を開ける様に促された為、才人は扉を開ける
ガチャ
扉を開けた途端、顔面にぴたりと何かが張り付いた
「おわっ!?何だ?」
思わずべりっと剥がすと、モモンガが悪びれた様子もなく、ふんふん鼻を鳴らしてる
「……モモンガ?」
「その子ったら、何時もですの」
そう言って、カトレアがころころ笑っている
「成る程。今日は俺を盾にと」
「えぇ」
にこりとしながら頷き、楽しそうにしている
そのまま中に入ると、目の前に熊が居た
「く、熊ぁ!?」
そして、そのまま熊に押し倒される才人
「おわっ、喰われる!!」
思わず村雨を抜こうとしたら、そのままべろりと舐められた
「うわっ!?何なんだ?」
「あらあら、皆歓迎してあげて」
「ちょっ、ま、おわぁぁぁぁ!!」
カトレアがそう言うと、部屋の中に居た動物達が全て才人に集い、才人はそのまま埋まってしまう
暫く動物達に埋まってた才人を、しゃがんで面白そうに眺めてたカトレアが、ぱんぱんと手を鳴らすと、さぁっと動物達が散っていく
「まぁまぁ、凄い歓迎ですわね。この子達がこんなに懐くなんて、初めてですわ」
「……全く、使い魔達に生き埋めにされた時以来だ」
むくりと起きた才人を見て、カトレアはにこにこと眺めている
「動物が懐く方は、素晴らしい方と相場が決まってるんですの。ご存知ですか?」
才人は惚けてみる
「へぇ、女性はその通りみたいですね」
「殿方もでしてよ?」
「いやいや、俺はどうも餌と認識されたみたいで、ほら、あちこち噛まれてる」
そう言って、あちこちの噛み痕をカトレアに見せて、カトレアが思わず吹き出す
「くすくす、面白いお方ですわね。では本題に入りましょう」
そう言ったカトレアがドラフターを指すと、才人が立ち上がってデルフを立て掛け、ジャケットを脱ぐとドラフターの椅子に座って、システムをチェックする
「ありゃりゃ、軸がきちんと締まってないや。良く出来ましたね、ちょっと凄いかも」
そう言った才人が、付属されてる筈の工具を探してると
「あの、何か問題が?」
「えぇ。これ組み立てる際の工具って、付いてましたよね?」
「…多分あれかしら?」
そう言ったカトレアが指したモノは、熊の怪力で折れ曲がった、工具の成れの果てである
思わず才人が頭を抱えて溜め息を付く
「はぁ〜〜〜〜、仕方無いなぁ。零戦から工具持って来ないと」
そう言うと、一旦出て行こうとしたので、カトレアが慌てて声を掛けた
「あの、どちらに参りますの?ドラフターの使い方ですよね?」
「えぇ、整備道具がお釈迦になってるんで、零戦の車載工具持って来ますから、ちょっと待ってて下さい。俺はメイジじゃないんで、道具が無いと手入れ出来ないんですよ」
「あの、でしたら私が」
「駄目。理由は、どう手入れすれば円滑に動くか、イメージが出来ないから。魔法はアバウトで行使出来る分、知らない物の手入れには向き難いんですよ」
そう言われてしまえば、カトレアも頷くしかない
実際に適当に組んで問題が出てると言われてるのだから、魔法なら正確に行使出来るという訳にはいかない
寧ろ、魔力を込め過ぎて壊しかねない
「魔法を良くご存知なのですね」
「色々試しましたから、じゃあちょっと待ってて下さい」
そう言って才人が去ろうとすると、エレオノールが入ってきた
「…」
ツカツカ入って来たエレオノールがカトレアを睨み
「何かした?」
「あらあらまぁまぁ。お姉様、顔が怖いですわ」
笑顔と真顔の女の睨み合いに冷や汗を足らした才人だが
「丁度良いや、エレオノールさん、錬金で工具直してくれ」
「何?どうしたの?」エレオノールが才人に寄り、才人が工具だった物を渡し、エレオノールが錬金で形成し直す
「知ってるだろうけど、ガタは出るわよ」
才人が手に取って、嵌め合いを確認し
「応急処置には充分だ」
そう言って、リンクの微調整を行う
あちこちを締めては動作を確認し、また調整を行い
「エレオノールさん、ちょっと座って」
「はいはい」
エレオノールがドラフターに座ると、定規を動かし始めた
「どう?」
「もうちょい、軽い方が楽だわ」
才人がまた微調整して、エレオノールが動かす
「ん、良い感じ」
「良し、調整終了。カトレアさんと替わって」
素直にエレオノールが退き、カトレアが座る
「ちょっと、動かしてみて下さい」
「は、はい」
カトレアが動かすと、非常に軽快に動き
「まぁ!凄い滑らかに動きますのね」
「此が本来の動きですよ。じゃあそのまま」カトレアの手に才人が手を重ね、使い方の講義を始め、カトレアは終始にこにこしてたのだが、エレオノールはブスッとしっぱなしだ
「平民……近すぎない?」
「エレオノールさんに教えた時と一緒だろ?」
「…そうだけど」
「あらあらまぁまぁ!あの姉様が焼きもちなんて、初めて見ましたわ」
そう言って、カトレアが両手を合わせて朗らかに笑うのだが
「はい、今は講習中。こっち見る」
「あっ、すいません才人殿」
そう言って、カトレアは使い方の講義を受けてると、バタンと一際大きく扉が開いて、ルイズが入って来た
「ちい姉さま!聞いて聞い……何してるの?」
「今は仕事中よ、ルイズ。大人しく待ってなさい」
「…はい」
エレオノールに言われてしまい、大人しく待つ事にするルイズ
カトレアの目が真剣にコンパスを持って、分角や分割の方法を習っているのを見て、エレオノールがルイズを促して、部屋から出ていく
パタム
「あの、姉さま。どうして?」
「カトレアが真剣だからね、邪魔しちゃ悪いわ」
「でも」
「ちびルイズ。貴女が一番解る筈よ、ちょっと私の部屋行きましょ」
そう言って、二人はエレオノールの部屋に行き、エレオノールが手紙を幾つか取り出し、ルイズに見せた
「本当は、ルイズがもう少し大人になったら、明かす積もりだったんだけど。最近のよ」
差出人はカトレアだ
ルイズは思わず目を見張る
「ちい姉さまと姉さま、手紙やり取りしてたの?」
「何言ってるの?私が先で、ルイズが後。ちびルイズより、ずっと長くやってるわよ」
「そうだったんだ。読んで良いの?」
「えぇ、読んでみなさい」
封が切られた中身を取り出し、日付の古い順番から読み始める
そこには、ルイズが知らない、カトレアの心情が書き綴ってあった


姉様聞いた?ルイズったら、平民の男性を使い魔にしたんですって
まさか私達の中で、一番早く運命の人見付けるなんて、ちょっと嫉妬するわ
姉様もそう思うでしょ?溢れた女同士、また泣き言言わせてね
あら、そう言えば婚約者居たっけ?
ま、どうせまた破談だから、賭けは私の勝ちでしょうけど、うふふふふふ


姉様、最近調子良かったのに、久々に体調悪くしちゃった
私、長生き出来そうにないな
姉様、早く帰って来て、不安に押し潰されそう
笑ってるの、疲れる
笑う事しか出来ないのに、どうしよう


聞いた?姉様
ルイズったら、姫様の依頼でアルビオンに行ったんですって
姉様と同じく、奉公してるんだ
それに比べたら私なんか……
私もゼロで良いから、思いきり走って、叫んで、泣いて、笑って、そして恋がしたい
私、何にも出来ない
父様から譲られたフォンティーヌだって、実務は全部父様とジェロームが片付けてるから、私は何にもする事が無い
皆良くしてくれるけど、私、辛いよ
姉様にしか、こんな事言えない

ルイズは手紙を読み進める内に、涙をポロポロと流し始めるが、それでも読むのを止めない


ルイズったらね、とうとう使い魔さんと一緒になる決心したみたい
良いな、良いなぁ、羨ましいなぁ
私の運命の人は、使い魔召喚じゃ来なかったから、無理だもの
代わりに動物さん達で、慰められてます
姉様、私の分もルイズを苛めて良いわよ

「…う、まさか姉さまに依頼してたなんて…」

姉様姉様、あの後速攻で追加の手紙来たわ
なんと、惚れ薬で頭が変になってたんだって
何言ってるんだかよねぇ
全く、使い魔さん来てからは、使い魔さんの話題しかしてないのよ
本当に腹立つわぁ
あの意地っ張り具合は、姉様に匹敵するわね
だから、嘘ついちゃ駄目って返事しちゃった
ちい姉さまは、嘘つきな小さなルイズは嫌いです
うふふふふふ、ちょっとは困れば良いのよ


今、ベッドの中で書いてます
起きれない
姉様、ちょっとヤバいかも、意識飛びそう


姉様、有り難う
わざわざヴァレリーさんとレティシアさん呼んでくれて、助かりました
二人が言うには、命は大丈夫だけど、水のバランスが崩れてるせいで、良くならないんだって
他のお医者様と同じ見解よね
でも、根気よくやれば生活に支障は無いって
……うん、解ってる、私は貴族だから生きていけてるんだって
平民だったら、三歳迄生きられないって事位
私は幸せです、優しい姉様と可愛い妹がいて、薄幸の美女をやってる事が出来るのは、父様と母様のお陰だって
これ位言っても良いでしょ?えへっ


聞いて聞いて、ルイズったら、使い魔さんと喧嘩して、使い魔さん出て行ってしまったんですって
ちょっと笑ってしまったわ、本当に姉様と一緒よねぇ
わんわん泣いたって書いてたわ
こんな所迄、姉様と一緒
もう、本当に姉妹よね
姉様の事苦手とか言ってるけど、姉様の事何にも知らないんだから
姉様も、ルイズにもう少し接したらどうかしら?


姉様、そういえば私、どれ位魔法使って無かったっけ?
半年に一回位しか使わないもの
自分自身がメイジだって事、忘れてしまいそう


今日は久し振りの領地内の馬車で散歩です
う〜ん、気持ち良いな
はい、本日の男釣り報告
本日は三人に告白されました、ふっふっふ、羨ましい?
私の事知ってても、押しの強い方って居るのね〜
安心して、私はまだまだ未経験だ
やっぱり、恋した殿方が良いもの
そう言えば、姉様も未経験でしたよね?
あはは


姉様聞いた?戦争が起きたらしいのよ
ラ=ロシェール近郊のタルブの村が戦場になってるんですって
いきなりアルビオンから攻められたらしいから、大丈夫かしら?
不安だわ


ちょっと、聞いて姉様
なんと、タルブの戦で、平民の方が大活躍してしまったんですって
凄いわね、まるでイーヴァルディみたい
私も大活躍してみたいなぁ


姉様姉様、ルイズから手紙来たんだけど、何か使い魔さんが、王宮で一悶着起こしたみたい
中身が解らないから何とも言えないけど、やっぱり貴族が嫌いなのかな
だったら寂しいな


姉様、大怪我してる小さめの熊さん拾っちゃった
どうやら、狩りから逃げて来たみたい
久し振りに魔法使ってしまったわ
あはは、そして今はベッドの中
貧弱な身体め、姉様にめっして貰いなさい


ねぇ、姉様、恋って何だろう?
子供産むのって、凄く嬉しい事なんだよね?
母様に聞いたら、少し寂しそうに微笑むから聞けないの
母様を安心させないと駄目だから、私誰に聞けば良いんだろ?
メイド達は畏まっちゃって駄目なのよねぇ
はぁ、恋をしてみたいなぁ
異国からやって来た王子様が、私を見初めて凄い魔法で私の病気を治してくれて、そのままお嫁さんになっちゃうの
………我ながら恥ずかしい妄想だ
姉様、忘れて下さい


今日は、熊さんが母様と父様に見つかってしまいました
あはは、二人を襲って見事に返り討ちにされたわ
最初に母様を襲ったら、風でお手玉にされて、逃げ出した先に父様が居て、父様を逃走の邪魔だからって襲ったら、水の縄でがんじ絡めに縛り上げられて
人襲うなら食うぞって父様が脅したら、大人しくなっちゃった
物凄く怖かったみたいね、すっかり怯えてしまったわ
この子、野生に帰れるかしら?ちょっと心配

「あはは、何この熊さん」


姉様、本当?
まさかアカデミーから陛下の命で出向だなんて大変ね
陛下は、姉様を指名した訳じゃ無いんでしょ?
なのに姉様が抜擢されたって事は、やっぱり姉様は実力者なのね
私は姉様の妹で誇らしいです
出向先が魔法学院なら、ルイズに宜しくね
多分逃げるだろうけど


あはは、やっぱりルイズは逃げたんだ
予想的中、うふふふふ
でも、まさか出向先の所長がルイズの使い魔さんだなんて、凄い偶然ね
姉様姉様、使い魔さんって、どんな人?
そうそう、姉様のクラスで決闘してぼろ負けした挙句、ごめんなさいと言う迄、お尻叩かれたんですってね
うふふ、ルイズからも手紙来たわよ〜
隠しても無駄なのです
にしても、姉様に勝てるなんて、すんごい強いのね、使い魔さん
会うのが楽しみだなぁ

「サイトに会うの、楽しみにしてたんだ……」


嘘、仕事で姉様の実力が全く通用しないですって?
一体使い魔さんって何者なの?
魔法迄開発するだなんて、信じられない
異国の人って凄いのね
この前の妄想、現実になっちゃうかも
あ、魔法使えない人でしたよね
やっぱり無理かぁ


姉様姉様、まさか私に仕事ですか?
私が、陛下の御為に?
私に、私に出来るんですか?
嘘、信じられない
使い魔さん……いえ、所長様の仕事で必要なんですね?
やります、やらせて下さい
私が役に立つんだ
皆に迷惑かけるだけじゃ無いんだ
嬉しい、姉様有り難う
私、エレオノール姉様の妹で本当に良かった
何でも言って下さいね、全力でやります


「ちい姉さま……」


姉様、送られた品物と図面受け取りました
説明書を見ながら組んで見たけど、これで良いのかしら?
う〜ん、何か動き重いです
私、非力だから疲れちゃう
試しに線を引いてみましたけど、うん、難しいです
太い線と細い線って、どうやって書き分けてるの?
にしても面白いなぁ
綺麗な図面と、汚い文字のコントラストがちぐはぐで笑っちゃう
文字と図面の印象から見ると、本当良く解らない人
姉様、惹かれてません?


む、難しいです姉様
もう10枚失敗して駄目にしちゃった
ううぅ、ま、負けない
私が任された初めての仕事、きちんとやってみせます


あはは、熱中し過ぎて徹夜しちゃった
はい、お約束通り、今はベッドの上でお医者様に怒られてます
が、頑張るもん
大丈夫です姉様、今は凄い充実してます


やっと、一枚出来た
一枚書くのに、い、一週間
ごめんなさい姉様
私、遅いですよね
所長様に怒られたら私のせいですね
姉様の足引っ張らない様に、頑張ります


えぇ?複写の仕事内緒なんですかぁ?
あぁ、私に依頼したのが内緒なのね
ちょっとびっくりした
あはは、姉様、何やら妖しい文面がバリバリです
姉様が殿方に惹かれてく過程を、楽しみに読ませて貰ってます
うふふ、私迄楽しくなっちゃう
婚約解消おめでとう
心より、新しい恋の到来を祝福致しますわ


「…」
ルイズは無言でエレオノールを睨むが、エレオノールは何食わぬ顔で紅茶を飲んでいる


姉様、何とか上がりました
とりあえず送り返しますので、チェックお願いしますね
エレオノール姉様の充実ぶり、私も嬉しいです。ゼロ機関所長様がいらした時、是非とも歓待させて下さいね

追伸
ルイズの使い魔寝取るだなんて、酷い姉様ね
ルイズにはどう説明するのよ?ルイズはルイズで本気なのよ?
私、どっちの味方になれば良いの?
一人が正妻で、もう一人が愛妾になれって言うの?
姉様が本気ならそう言ってしまうけど、良いのね?
でも、そんなに素敵な殿方なら、私も興味あるわ


更にむすっとしながらエレオノールを睨むが、もう怖く無いのだろう
エレオノールは余裕である


姉様、所長様が褒めて下さったのですか?
やだ、凄い嬉しい
家族以外の方に褒められたの初めて
もぅ、嬉しくって嬉しくって、動物さん達とダンスしちゃった
私、頑張りますからね
そうそう、所長様の良い所教えて下さい
ちょっと妄想しちゃお
ふふふふふ
二人からの情報で具体像はばっちりです


「…姉さま。何なんですか、これ?」
「何って、カトレアの心情」
「…」
手紙を手に渋面を浮かべるルイズ
「馬鹿犬に、ちい姉さまに手を出したら殺すって、言おうとしたのに」
「カトレアの仕事の邪魔はしないでよ。冗談抜きで、複写追い付いて無いんだから。平民の指導は、あれで非常に的確なのよ」
「…はい、解ってます」
ゼロ機関の完成は一分一秒も早く求められている
流石にルイズも先日の協議は重々承知している
『にしても、馬鹿犬は何で会っても居ない、ちい姉さまの歓心を買ってるのよ?あったまきちゃう』
「今考えたの当ててみましょうか?」
「…何ですか?姉さま」
「何で平民がカトレアの歓心を買ってるか理解し難いみたいだけど、半分以上あんたの責任ね。あんた手紙で大量に、平民の自慢してたらしいじゃない」
「…うっ」
自爆する娘、ルイズの本領は遺憾無く発揮され、ルイズは落ち込みつつ、最後の手紙を読んだ
日付は昨日ので、付いたのは朝らしい


本当ですか?
姉様と所長様とルイズがヴァリエールにお越しに?
いやぁ、どうしよどうしよ?
ねぇねぇ姉様、所長様どんな服装お好きですか?
どんな髪型がお好き?
もう、恥ずかしくない格好しなきゃ
ああもう、私の服で一番綺麗なの選ばないと
明日って早すぎです
間に合え、私の衣装選び
うきゃあ、タンス全部ひっくり返っちゃったぁ〜〜〜〜
どうしよどうしよ、こんなに焦ったの初めて
助けて姉様


カトレアのぼけっぷりは、そのまま自身のぼけっぷりであり
ルイズは目頭を抑え、ふぅと溜め息を付く
何でこう、似た者姉妹なんだろう
「…あたし達って、本当に似た者姉妹なんですね」
「……そうね」
「サイトの事、ちい姉さま、どう思ってるのかしら?」
「さぁ?私はカトレアじゃないから、解らないわね」
「姉さまは、ちい姉さまがその、なったらどうします?」
「どうもしないわ。さっきの自己紹介に、きちんと覚悟乗せてたしね。私はカトレアが大事だから、カトレアの選択に文句付けたりしないわよ。あの娘の産まれて初めての我が侭だもの。少し位、大目に見るわよ」
「覚悟?」
「解らないならまだまだね。あんたはまだまだちびルイズだ」
「む〜」
ルイズは唇を尖らし、自分より姉妹をやってる時間が長い二人を羨んだ
自分とカトレアこそが仲が良いと思ってたのが、まさかエレオノールがカトレアの支えになってたとは露にも思って無かった訳で
才人を巡る仕事の中で、色々と見えないモノが見えたりしてきた
多分この先も驚く事が有るに違いない
ルイズは手紙を纏めてエレオノールに返すと、自身も一先ず紅茶を飲み出した
とりあえず、今夜だけは譲らないと心に決めて

*  *  *

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