才人達が訓練に出てる最中、アンリエッタ達は貴賓室で査定員達と詰めの協議を行なっていた
「ええと、艦長から鉄の比重計算方法を伺いまして、既存戦列艦と重量差計算を行いましたが、現在の運行重量で、凡そ1/10ですね。ロイヤルソブリン級で1/20以上かな?ちょっとあれは重すぎる。竜や人員は除外してます。つまり、風石の消費量は単純に1/10。単位移動時間比率なら、速度差を換算すると1/50以下。はっきり言って、とんでもないないです。国内艦全部切り替えしたい位だ」
「商船級換算では?」
「商船級だと空荷計算でも1/5以下。積み荷を積んだら拡大します。商船級でも、導入メリットは絶大です」
アンリエッタはそのまま考え、聞く
「ですが鉄のフレーム使ってるでしょう?。あれはどうなのです?」
「使わないと駄目ですね。機関の強度と風石の浮力を船体全体に分散する為に必要です。機関が強すぎて、木材で持たせると弱くなります。ツェルプストー伯に技術提供したお陰で、より軽量且つ高剛性パイプの採用が出来てます。本当に無駄が無い」
「船室は木材のみでやってますが、コイツも凄い。わざと鉄パイプ抜いて、木材強度のみで充分と判断していて、しかも間違って無い」
そう言って、肩を竦めている
「まだあります?」
「この船、硝石の生産工場になってます。えぇと、100人で一週間に、結構な量が取れるらしいです」
そう言って、選り分けられた硝石を袋事置き、アンリエッタとアニエスの目が点になる
「は?何で?」
「トイレで取れるそうです。詳しくはゼロ機関機密であり、艦試験運用士官すら艦長の許可無しでは語れないと首を振りました。我々はゼロ機関の機密姿勢を支持する、例え王政府と言えども、何処から洩れるか解らないので語れないと」
アンリエッタは頷いた
「確かに、現時点で知る人間を増やすのは得策では有りません。独占してこそ力です。価値はどれ位になりますか?」
「1年42週、軍関係者で一万人と仮定すると、必要量の大半を自産可能です。硫黄も回収出来てますが、現時点ではゲルマニアに頼むのが最適ですね」
アンリエッタも頷く 
「私には小型軽量且つ破壊力が既存大砲を上回る大砲を設計中と明かして下さいました。アニエスは先に試し撃ちしたのでしょう?」
そう言って、アニエスを促すと、アニエスが答えた
「はっ、とんでもない威力の新型銃を披露されました。奴の言う事は実績を伴っている。恐らく事実でしょう」
アニエスの後に、アンリエッタが繋げる
「更に足踏み機械式縫い物機。ミシンと言ってましたか?それに、火打石無しで簡単に発火出来るマッチ等、応用分野では此方に報告が入る前に売れ始めてしまった物迄有ります」
アンリエッタは監査員を睨み付ける
「正直に仰いなさい。彼らがこなした価値は、国家予算に該当した場合、どれ位の価値が有るのです?」
査定を行なった三人が、正直に答えた
「最低30%以上。下回る事は有りません。副艦長に聞いた所、設計製作上間に合わず、まだ未完成部分が有るそうです」
「杖を懸けますか?」
「然り。我々はマザリーニ宰相の選出を恥じぬモノにすべき義務と誇りがございます」
そう言って、杖をアンリエッタに差し出した三人
「では、彼らに国家予算の30%を支払っても、将来的にはお釣りが来るのですね?」
「はっ。ですが、実際に支払うのは反対致します」
「勿論です。仮定の話ですよ。彼らに対し、予算拡充の大義名分が必要なのです。彼らの仕事に携わる人間を増やすには一にも二にも予算。彼らが人を選抜し、教育し、何かやる度に人足が増えている。既に新しい産業は芽吹きました」
そこで一度口に水を含み、更に喋る
「我々は水やりを丁寧に且つ、時には間引かねばなりません。立派な大木になる様に、しっかりやりましょう。そろそろ独立採算に分離も検討しましょうか?予算を与えて、自らの裁量で人足を揃える様にして貰った方が何かと都合が良いでしょう。会計が必要になりますが」
アンリエッタがそう言うと、査察員は首を竦めて言ったのだ
「閣議に諮る事項です。我々には答えかねます」
「あら、そうでしたわね。ではそうしましょう。所で所長は外国人です。トリステインに帰順をお願いしてますが、異論はございますか?」 
「いえ、有りません。どんな手段を以てしても、他国に渡してはなりません。国力差の有る他国で同じ事をされては、我が国の優位など、あっという間に消し飛びます」
「宜しい。では彼への勧誘は、国家予算30%に比する重大事項になりました。貴殿方は何時も通りで。殿方を動かすのは、美少女や美女の仕事と相場が決まってます」
「御意」
そう言って、全員がアンリエッタに敬礼し、アンリエッタとアニエスは艦橋で訓練を見学する為に立ち上がった

*  *  *
才人達の離着陸訓練を見る為、アンリエッタとアニエスは艦橋で双眼鏡片手に見ている
双眼鏡は軍の物を士官から借りている
艦橋は360°の視界が確保出来る様に、天井含めて、水晶硝子を嵌めてある
前後左右上下で竜騎士達が編隊を組んで飛んでいて、非常に壮観だ
竜騎士達が続々と着艦と離陸を繰り返し、皆が進路を開けると、零戦が艦尾から進入して来て着陸すると、そのまま走行しながら飛び上がって行く
「……正に離着陸の為の艦ですわね」
「えぇ、使用目的がシンプルで実に良い」
そんな様を感心しながら見ていたら、航海長がアンリエッタに進言した
「このまま着水態勢に入ります」
「……は?いつ海に出てたのです?」
「陛下達が到着してから、ゆっくり飛んで三時間後には海上に出てましたが?訓練は射爆以外は海上でやっております。機密保持には一番です」
「‥その通りですね」
思わずアンリエッタが頷き、航海長の指示により、一気に高度を下げていくオストラント
艦尾から海面に着水し、航海長から指示が飛んだ
「艦底水漏れチェック急げ!このまま昇降舵下降一杯、海面に押し付けろ」
「下降一杯ようそろ」
「発光信号、ゼロに放て。ゼロ着艦せよ」
「ウィ、ゼロ着艦せよ、信号入ります」
艦橋から発光信号をチカチカ始めると、下降に付き合ってた零戦が着艦態勢に入った
その頃、才人はかなり汗を垂らして操縦桿を握っていた
「海上着艦だ。ルイズ、慎重に行くぞ」
「どうしたのサイト?航空着艦は楽々やってたじゃない」
ルイズは才人が真剣な声を出した為に、怪訝な顔をする
今迄艦速100リーグでの同調離着艦を簡単にしてたのだから当然だ
「海上は波がある。艦上も揺れる、着艦が一番難しいんだ」
その言葉にルイズも気を引き締めた 
「了解よ。良く見てサイト。ずっと下降舵やりっ放しで、回転も上げっぱなしよ」
ルイズの言葉に、才人は笑みを浮かべる
「良く……解ってやがる。このまま艦を任せたいわ、行くぞ、着艦」
ルイズが頷いて艦上の揺れを注意して見ている
零戦は引き込み脚を出し、着艦態勢に入った
艦上で甲板員が着艦態勢の零戦が機体後部のランディングギアが艦を滑った瞬間、親指を立てて見送り、ルイズが才人の代わりに返すと甲板員と共にニヤリとする
そのまま才人はブレーキを全開で掛けていた
海上でも速度が出ていたオストラントのお陰で、艦首付近できちんと着艦が終了する
才人は思わずふぅと溜め息を付いた
そんな零戦に甲板員と信号手が走って来る
「ふぅぅ。何とか出来た」
「艦長、転回して収容します。メイジが一気にレビテーションで転回しますので、ゆっくり走って下さい」
「了解した。頼むわ」
メイジ達がレビテーションを唱えて転回すると、才人はすかさずブレーキを外してエレベーター迄とことこ走り、また転回して貰ってブレーキをロックし、エンジンを切った
合図を交わすとガコンと下降していき、下で甲板員達が待っていた
主翼尖端を畳み、収容作業を終わらせると、士官が報告に寄る
「艦長、艦橋へ。陛下がお待ちです」
「了解。行くかルイズ」
「うん」
才人達は、艦橋に向けて歩いて行った

*  *  *
カンカンカン
右舷艦尾、艦橋直通階段を二人が登っていき艦橋に顔を出すと、航海長が敬礼して来たので才人は会釈で返し、手離しで賞賛し始めた
「お見事、海面に艦体押し付けて安定させるとはやるね。お陰で楽に着艦出来たよ」
「何度も見れば、何がヤバイか小官にも解りますよ」
そう言って制帽を脱いで被り直し、照れを隠している
「全く、給料出せるなら雇いたい所だ。アンタなら安心して艦を任せられる」
「それはそれは光栄ですな。退役したらお願いしましょう」
お互いにニヤッと返す 
アンリエッタはそんな様をニコニコと眺めている
男同士のユーモアを邪魔しない余裕が、アンリエッタには出来ていた
才人はそこでやっとアンリエッタにくるりと向きを向ける
「姫様。訓練の方が順位高いから悪いね。本当に航海長の機転で楽に着艦出来たからさ」
「あら、良いのですよ。きちんと訓練優先と、最初に艦長が言ったじゃないですか」
言われて才人が頭を掻く
「そう言やそうだった」
才人が苦笑すると士官達からも含み笑いが漏れて来る
「さて、航海長。訓練は離発着訓練は終了でして?」
アンリエッタが聞くと航海長が答えた
「今日は午前中のみで全騎着艦次第収容ですが……。午後は帰投ですから」
そう答えると、伝声管から声が入って来た
〈此方4番デッキ倉庫。竜騎士達から訓練終了後の竜の騎乗許可が願い出てます〉
「…今まで一度も無かったぞ?理由は?」
才人すら疑問を発して航海長が理由を聞いて見ると、意外な答えが返って来た
〈海で魚群見付けたせいで、狩に出たいらしくてそわそわしてるらしいです。遊ばせてあげられませんかね?〉
「収容はお前達だが、後で大変だが良いのか?」
〈一番働いてんのは竜ですからね〉
「なら良いだろう、許可する。良いですね?艦長」
「あぁ。海流に流される心配は?」
「無用です。航空術なら誤差の範囲です」
そこで才人は命令を下した
「了解。機関パイパス開放。ボイラー圧力1キロに絞れ。艦内温度測定後、問題無いならボイラー停止。機関士は見張り残して、離水時間迄全員休息だ。艦内人員は総員離水迄休息開始。司厨は甲板での食事セット、離水迄船旅楽しむぞ」
その言葉に航海長が敬礼し、伝声管を全て開いて号令を下した
「了解しました。総員大休止!司厨はアッパーデッキに食卓セットに昇降機使用後、機関士は見張り一名残して暖房運転に絞れ!艦内温度点検後、暖房不要なら閉鎖。竜は思い切り遊ばせろ!カカレ!」
各所から了解の返答が返り、全員が一斉に予想外の休憩に沸いた
「航海長も休みなよ」
才人が留守番するとの申し出なのだが
「いえ、艦長には、艦内最高のゲストを歓待する任務が有りますので」
そう言われてしまい、才人は苦笑して頷いた
「おっと、そいつは大事な仕事だ」
「でしょう?」 
二人してにやりとし、才人がアニエスやルイズを促して、一足先に降りて行くと、航海長がアンリエッタに声を掛けた
「陛下」「はい?」
思わず振り返るアンリエッタ
「彼を是非ともトリステインに。小官も彼の元で働くのも悪くないと思います。厳しいにも関わらず、要点を良く押さえてる」
「そんなに気に入りました?ゼロ級と彼」
「えぇ、船乗りとしては、次の艦の艦長になれるより、彼の航海長が良いですなぁ」
そう言って、白髪混じりの髭を弄っている
「全く、貴方もですか。どうして軍人は男女に関わらず、彼を気に入るんでしょうね?」
「さぁ?有言実行の鑑だからではないのですかね?」
アンリエッタはぽんと手を叩いて頷く
「言われて見ればそうですね。私も頑張って引き入れますから、軍事機密ですよ?」
そう言ってアンリエッタが唇に人差し指を立ててウィンクすると、残ってた士官達が敬礼した
「ウィ」

*  *  *
アッパーデッキにテーブルと料理があげられ、大空の元での昼餐が始まった。竜騎士達は乗ったり放したりして、騎竜達が存分に水遊び出来る様にはからっている
その中で、ルネが騎竜ヴァルカンに乗って、海面に突撃するのを止めさせようとして、そのまま一緒に飛び込み、海面に盛大な水飛沫が上がる
ドッパァァァン
音で振り返った才人達だが、そこには勢いで放り出されたルネが死体の様にプカプカ浮いていただけだった
「何やったんだ?あれ?」
才人とルイズがフォークに食べ物を突き刺しながら怪訝な表情をしてると、暫くするとヴァルカンがザバァと浮き上がり、口に魚を頬張っている
「馬鹿だね。竜の飛び込みに付き合うなんざ、命幾つあっても足らないよ」
声の先に振り返り、居たのはジュリオだった
「お〜美少年もずぶ濡れになって来いよ。色男振りが上がるぜ?」
「帰りにまた乗るのに、濡れたら風邪ひいちゃうよ」
「それもそうだな」
またルネに目を移すと、ヴァルカンが面倒くさそうに、ルネを自身の背に食わえて乗せてる場面が繰り広げられていた
「って事は、アイツは大馬鹿って事か。放せば良いのに」
他の竜はオストラントと一緒に海流に流されたり、魚群を見付けては思い思いに潜っており、水遊びを存分に楽しんでいる
疲れた竜はオストラントのアッパーデッキで、羽を広げて日光浴で並んでぐてぇとしていた
実にトドくさい 
そんな中、ジュリオの騎竜アズーロが、口一杯に魚を含んでアッパーデッキに乗り上げ、ジュリオに向けて頭から吐き出した
途端に魚の滝に呑まれるジュリオ、周りに魚がびちびち跳ねている
暫く皆、呆然としてジュリオを見てたが、遂に一斉に笑い出した
「ぶわっはっはっはっ!お裾分けだってよ!主人として否やは無いよな?」
「主人思いの竜じゃねぇか。きちんと食べてやれよ〜!」
皆してゲラゲラ笑っているが才人やアンリエッタも笑いつつ、魚の種類を見て才人が頷いた
「お、鯵じゃん。美少年、ロマリア人は例え神官でも美食に生きるんだろ?」
「……その通りだ」
そう言って、全身粘液と海水だらけになったが、美少年の態度を崩さないジュリオ
ロマリア人は、何時如何なる時も格好付けだけはするらしい
「それじゃ騎竜の主人思いを借りて、ちょっと俺の国の料理を披露するよ。ちょっと、姫様も味わって見て。包丁とまな板貸してくれ。後、レモンかライム。ライムの方が良いか」
才人の要求に、アッパーデッキで料理してた司厨達が貸し出して、才人は鯵を捌き始めた
あっという間に鯵を三枚に卸して切り分けして盛付けし、ライムを握ってぶしゅりと掛けてジュリオに差し出した
「騎竜のお裾分けだ。俺の国の料理、刺身って言うんだ。試しに食ってみ?」
生で食べるのは、流石に初めてなジュリオが鼻白む
「いや、生はちょっと」
「美味いのにな、ルイズ、あ〜ん」
「あ〜ん」
思わず口を開けたルイズに才人は刺身をひょいと放り込んだ
びっくりして思わず口を閉じたルイズだが、暫くもっきゅもっきゅして一言
「…本当に美味しいわ」
「あら、本当ですの?」
思わず興味を示したアンリエッタがぱくりと食い付いて、同じくもっきゅもっきゅして、ゴクンと一言
「い……いけますわ!是非とも宮廷料理のメニューに!」
「あ、この味は取れたてだからだよ。マジで騎竜のお陰だよ。運んだら味わえない、現地限定の贅沢さ」
そう言って才人も食べると、ジュリオも意を決して挑戦する
「美食でロマリアが負ける訳にはいかないね……では」
そう言って、汗をたらしつつ、目を瞑って気合いを入れて口に放り込んだ
もぐもぐして飲み込むと、直ぐに次の切り身にフォークを伸ばしている 
もう、何も言う気が無くなったのだろう
「美味いだろ?」
才人の言葉にジュリオがコクコク頷いて、フォークで口に運ぶのに忙しそうだ
「他の連中も食って見るか?海でしか味わえない贅沢品だ」
その言葉に、女王自ら絶賛した事に興味を示した連中が食い付いた。ちなみに一番食い付いたのは、司厨達だ
才人が更に捌いて出すと、皆が恐る恐る手を伸ばして、一口食べてみて、じっくり味わった後はすっかり変わった
「…美味い」「こんな料理あんのかよ……切るだけだぜ」
「切るだけって馬鹿にすんなよ〜?これ見ろ」
そう言って切り分けた鯵を見せると、頭と骨だけなのに、ビチビチ動いていて、皆が驚いた
「秘技、活き造り。腕がなきゃこうはいかない」
そう言って笑うと司厨が腕を捲った
「んだとぉ!上等だ!艦長に出来て、俺達司厨が出来ない訳が無い!艦長包丁返して下さい。私がやります」
「お、どぞどぞ」
ムキになった司厨達が挑戦し始め、一気に沸いている
才人は下がって見物すると、アンリエッタが隣に立ち、背後にアニエスが、更に反対側にはルイズが立った
「くす、皆楽しそうにしてますわね」
「だね…何時もは酒の時だけ元気だけど」
才人が笑ってちょっと離れて腰掛けようとしたら、アンリエッタが才人のパーカーの裾を掴んだ
そして皆に解らない様に、くいくいと引っ張る
才人はルイズが食事を楽しみながら海風を楽しみ、竜と竜騎士達のじゃれあいを見て笑ってるのを確認すると、アニエスと視線を合わせたら促され、アンリエッタの引っ張りに付いていき、ルイズの背後になってる階段から降りて行った

*  *  *
艦長室にアンリエッタが入るとロックとサイレンスがかけられ、アンリエッタがしなだれかかる
「サイト殿。私が甘える時間は少ないのです」
「…あぁ」
「私も貴方も、沢山殺してしまいました」
才人は両肩に手を当て、アンリエッタが項垂れている
「夢に‥‥うなされるのです。私の命令で死んだ者達に、引き摺られ、呑み込まれ、身体中を汚され、四肢を千切られ、生きながら喰らわれ、何度許しを請うても、許されないの」
アンリエッタの告解に、才人は黙って聞き入れる
「私、何て事を‥‥それでも、私は、自分が助かりたいと思ってしまった。自分だけが助かりたいと‥‥何て浅ましい」
才人が何も言わないので、アンリエッタは更に吐く 
「まだ、1000人弱です。私、1000人も殺して、自分は助かりたいって。まだまだ死ぬのに!まだまだ殺すのに!怖い‥‥怖い」
アンリエッタはそう言って涙を足らしながら、震えている
「…俺もそうさ。勇ましく死ぬ事なんざ考えちゃいない。薄汚く、図太く、傲慢に生き延びれば勝ちだと思ってる」
「‥‥はい」
才人はふわりとアンリエッタを抱き寄せ、アンリエッタはそのまま胸に抱かれ、目を閉じる
「貴族らしくなんざ糞食らえだ。絶対に生き延びて、全部片付ける」
「はい」
やはりそうだ。アンリエッタが惹かれたのは、血に染まる意思力と甘さが同居してるからだ。自分と違い、不安定なのを、無理矢理捩じ伏せる事が出来るから
だから私は彼の決意に、安心感を得られる
こんなに近いのにとても遠い。距離は長いが、歩かなければ近くならない
だから私は、自分の弱さすら武器にする
少しでも、彼に振り向いて欲しいから
女のコとして扱ってくれる、只一人の男だから
「毎日うなされてたのですが、昨晩はそんな事は有りませんでした」
「そりゃ、良かった」
「はい、夢の中でも、貴方が助けて下さいましたから」
アンリエッタはそう言って、才人に微笑む
妖しい、男であれば決して無視出来ない色香を放つ魔性の誘惑
才人にキスの姿勢をそのまま示すと、才人が応じ、唇を重ねる
舌を入れない只の口付け
「私の事も、もっと沢山見て下さい。私は、我が侭言ってはいけませんの?」
「……いや」
彼が言い、彼女は告解する
「サイト殿に懺悔しますわ。私、国家予算をギャンブルで使い込んじゃいました」
「……はぃ?」
才人が思わず固まる
「貴方が悪いんですよ?だって、私の方にもっと振り向いて下さらないから」
「…いやいやいやいや、違うだろ?」
才人は思わずそう言ってしまう
才人の言い分は確かに正しいが、睦事となると間違いだ
「‥怒っちゃいました?」
そう言って、ペロッて舌を出すアンリエッタ
「…怒ったと言うか、呆れたと言うか」
才人は余りの発言に、どうしたもんかと唸ってしまう
「私、悪い事しちゃいました。叱って下さいませんの?」
そう言って才人に、猫が耳を伏せていやんな表情をしてる様を想像させる仕草をする
才人はピンと来てしまった 
「そっかぁ、お仕置きされたいのか」
「あの‥‥」
アンリエッタが軽くイヤイヤとするが、瞳は完全に裏切っている
才人がアンリエッタをひょいと抱えてベッドに座り、すかさずくるりとひっくり返した
「ふわっ!?何を‥‥?」
才人はそのままアンリエッタのスカートをひょいとたくし上げ、アンリエッタに呟いた
「アンは駄目な娘だね。そんなにお仕置きされたいんだよね?」
「そ‥‥そんな事‥‥ございませんわ」
アンリエッタの顔はプイッとそっぽを向いて軽く朱に染まり、更に透け透けの下着にを身に付けたお尻がちょっと浮き上がっている
才人は軽くパンとお尻を叩いた
「ひゃん!?」
パンパンパン
才人が叩く度にお尻がくいっくいっくいっと持ち上がっていき、才人は思わず笑みを浮かべる
「アンは何を期待してるのかなぁ?お仕置きされてるのに、お尻が持ち上がってるよ?」
「‥‥」
アンリエッタはぷるぷるしつつ、才人の言葉に無言で返し、更に才人の手が彼処を撫でた時、思わず声を上げてしまう
「ひゃうっ!?」
「何をどうお仕置きされたいのかな?」
才人の手がパンとお尻を叩いたり撫でられる度に、身体が震えて思わずシーツを噛んでしまう
「う゛〜、う゛〜」
呼吸が乱れ、涙を溜め、羞恥と官能に染まりながら、才人にとうとう告白してしまう
「‥‥サイト殿のモノでお仕置き‥‥して欲しいです」
その言葉で、才人はアンリエッタの耳に囁いた
「はしたない姫様だ」
吐息と言葉でビクッと反応してしまうアンリエッタ
才人がそのままスルッと抜けて、すかさずズボンを脱ぎ、アンリエッタの腰を自分に軽く引っ張ったのを、アンリエッタは逆らわずに脚を動かして追随し、待望のモノが下着をずらして入口に押し当てられる
「あっ‥‥」
そのままずぬりと挿入され、アンリエッタはシーツを掴んで呼吸を荒らげ始めた
「はっはっはっはっ」
「ありゃりゃ、姫様喜んじゃ、お仕置きにならないなぁ」
才人はそう言って、お尻の穴に指を這わせてつんつんする
「ひぃ!?ち、違いますの!そこは違いますの!」
思わず目を見開いて振り向いて、許しを請うアンリエッタ
「でも、ほら、お仕置きだし」
「お、お願いです!他のお仕置きは何でも致しますから、ああぁぁぁ!?」
才人の指が一本侵入し、身体がガクガク震えるアンリエッタ
「くぅ、アンはお尻好きなんだね。一気に締まったよ」 
才人はそう言って、指を更に潜り込ませる
「お願い‥‥止めて‥‥止めてぇ」
アンリエッタは涙を垂らして懇願し、才人がそのままアンリエッタに身体を倒して来た
「痛い?」「‥‥少し」
「お仕置きだから我慢だよ」
アンリエッタは頷いて、そのまま才人の腰の動きに合わせて身体を預ける
「あっあっあっ、来ちゃいます、私‥‥ひぃ!」
指を入れられたまま、才人の射精を受け入れ、アンリエッタは身体の痙攣が止まらない
才人は暫く余韻を楽しんでからにゅるりと抜き、アンリエッタがごろんと仰向けに崩れて、ひはひはと呼吸を荒らげている
「ひ、酷い‥‥酷い」本気で涙を垂らしてアンリエッタが泣いていて、才人が慌てだした
「今回お仕置きだから……」
涙を垂らしてアンリエッタは才人を睨んでいる
「う゛〜」
こうなったらもう、どう言っても才人の負け
才人はぷんすかしてるアンリエッタに身体を重ねて抱き寄せ、頭に手を置いて、耳元で囁いた
「ごめん」「‥許しません」
「ごめんってば」「‥駄目です」
「俺が悪かった」「‥不浄の場所に入れないで下さいまし」
「あぁいうプレイも有るんだよ」
そこで、アンリエッタがぴたりと止まり、少し間が空いてから聞き出した
「‥‥本当に?」「本当」
「‥気持ち良いんですの?」「いや、やった事無いし」
「じゃあ、良くして下さるなら、許しても良いです」「…頑張ります」
そして、敢えて離れたアンリエッタは才人の顔を正面に見据えて不機嫌な顔のまま、才人に宣った
「そちらの初めては私が頂きます。ですから、他の女性と試さないで下さいまし。そしたら、許して差し上げますわ」「はい」
才人の返事に、ころりと満面の笑みを浮かべたアンリエッタ
「嬉しいですわ!わたくしにも、サイト殿の初めてが務まるんですのね。私、頑張りますから、優しくして下さいまし」
そう言って機嫌が一気に良くなったアンリエッタが才人にもたれかかり、才人は受け止める
『女心は、全然解らん』
そう思いながら息を吐いてると、アンリエッタが愛撫を始めたので才人も応じ、アンリエッタの束の間の休暇に全力で応じ始めた

*  *  * 


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