ゼロの使い魔保管庫
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「ラ・ヴァリエール家は断絶とします」 気の毒そうにアンリエッタは告げた。ルイズは貴族のマントをはぎ取られ杖をも取り上げられる。それでもルイズは唇を噛んだまま一切抵抗はしなかった。 「あなたに罪はないわ。でも、貴族のけじめはわかりますね」 ルイズはうなずいて周りを見回す。オスマン院長は目を合わせずに言った。 「申し訳ないが、学籍は削除させてもらった」 ルイズとアンリエッタが進めた虚無の魔法理論に基づく急進的な改革に対し、軍勢を起こして反乱したルイズの両親。そのあまりの急進さを恐れた伝統的な他国貴族とも通じていたらしい。だが結局はラ・ヴァリエール家といえどトリステイン全軍の敵ではなかった。両親は戦で散り、長女は嫁ぎ先から生き残ったルイズに決別の手紙を送っていた。次女は修道院で両親とラ・ヴァリエール家のために散った兵士を弔うという。 そして最後に残ったルイズの扱いは家名断絶と一切の官職剥奪、全財産の没収となったわけだ。今、彼女に残された財産は、今身に付けている旅の軽装のみだ。 「路銀は大切にしろ」 アニエスはルイズの手に数枚の金貨を握らせる。ルイズは会釈のみして城を後にした。 トリステインの国境に立ち、ツェルプストーの領地を睨み付ける。今回の反乱を焚き付けたのはツェルプストー家だ。そのくせ、反乱を起こした途端にトリステイン王家に協力して軍勢を差し向けた。 「サイト……」 呟いて涙を落とす。親娘の戦いは駄目だと言ってルイズと公爵二人の魔法の間に入ったサイト。今はトリステインの地下牢に幽閉されているはずだ。 「なんにも、なんにもなくなっちゃった」 ルイズはくずおれて金貨を地面に投げつけた。もう宿を探す気もない。野宿で凍死してもいい。 と、目の前に何かが降り立った。 「キュルケ……」 友達だと信頼した自分が馬鹿だったんだ。ルイズは力なく見上げた。 「ほんと、見事に失ったのね」 ルイズは鼻で笑って答える。 「全部あんたに奪われたわ。貴族として死ぬ名誉までね」 キュルケはくすりと笑った。 「私、友達からは一番大切にしているものは奪わない主義よ」 「私に何が残ってるの!虚無まで封じられたのよ!」 キュルケは縄で縛った足元の荷物をルイズに転がして馬に乗ると言った。 「これ、奪い返してきたから」 キュルケが去ったあと、ルイズは荷物をほどいた。 「ルイ……ズ」 「サイト!?」 おそるおそる頬に手を当てる。次いで胸に顔を埋める。ひどく汗臭いが、間違いなくサイトの匂いだ。サイトの首筋に付いた血の跡を舐める。サイトは首を縮めたが構わず首も胸も舐め回した。 「私の、私のサイト」 ルイズは優しく囁くと、たった一つ残った宝物を抱き締めた。
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「ラ・ヴァリエール家は断絶とします」 気の毒そうにアンリエッタは告げた。ルイズは貴族のマントをはぎ取られ杖をも取り上げられる。それでもルイズは唇を噛んだまま一切抵抗はしなかった。 「あなたに罪はないわ。でも、貴族のけじめはわかりますね」 ルイズはうなずいて周りを見回す。オスマン院長は目を合わせずに言った。 「申し訳ないが、学籍は削除させてもらった」 ルイズとアンリエッタが進めた虚無の魔法理論に基づく急進的な改革に対し、軍勢を起こして反乱したルイズの両親。そのあまりの急進さを恐れた伝統的な他国貴族とも通じていたらしい。だが結局はラ・ヴァリエール家といえどトリステイン全軍の敵ではなかった。両親は戦で散り、長女は嫁ぎ先から生き残ったルイズに決別の手紙を送っていた。次女は修道院で両親とラ・ヴァリエール家のために散った兵士を弔うという。 そして最後に残ったルイズの扱いは家名断絶と一切の官職剥奪、全財産の没収となったわけだ。今、彼女に残された財産は、今身に付けている旅の軽装のみだ。 「路銀は大切にしろ」 アニエスはルイズの手に数枚の金貨を握らせる。ルイズは会釈のみして城を後にした。 トリステインの国境に立ち、ツェルプストーの領地を睨み付ける。今回の反乱を焚き付けたのはツェルプストー家だ。そのくせ、反乱を起こした途端にトリステイン王家に協力して軍勢を差し向けた。 「サイト……」 呟いて涙を落とす。親娘の戦いは駄目だと言ってルイズと公爵二人の魔法の間に入ったサイト。今はトリステインの地下牢に幽閉されているはずだ。 「なんにも、なんにもなくなっちゃった」 ルイズはくずおれて金貨を地面に投げつけた。もう宿を探す気もない。野宿で凍死してもいい。 と、目の前に何かが降り立った。 「キュルケ……」 友達だと信頼した自分が馬鹿だったんだ。ルイズは力なく見上げた。 「ほんと、見事に失ったのね」 ルイズは鼻で笑って答える。 「全部あんたに奪われたわ。貴族として死ぬ名誉までね」 キュルケはくすりと笑った。 「私、友達からは一番大切にしているものは奪わない主義よ」 「私に何が残ってるの!虚無まで封じられたのよ!」 キュルケは縄で縛った足元の荷物をルイズに転がして馬に乗ると言った。 「これ、奪い返してきたから」 キュルケが去ったあと、ルイズは荷物をほどいた。 「ルイ……ズ」 「サイト!?」 おそるおそる頬に手を当てる。次いで胸に顔を埋める。ひどく汗臭いが、間違いなくサイトの匂いだ。サイトの首筋に付いた血の跡を舐める。サイトは首を縮めたが構わず首も胸も舐め回した。 「私の、私のサイト」 ルイズは優しく囁くと、たった一つ残った宝物を抱き締めた。
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