ゼロの使い魔保管庫
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せかんど・バージン1話.『愛は暗闇の中で』(4) ぎふと氏 #br 一連の赤ちゃん誕生ストーリーが無事出産まで行きついたところで、ようやくルイズは口を閉じる気になったようだった。休みなく喋ったせいか、ぜいぜいと息をきらしている。 おつかれさん、ルイズの体に毛布をかけてやると、才人はあらためてルイズの方に向き直り背を正した。 「なあ、ルイズ。ちょっと聞いて欲しいんだけど」 暗闇の中ルイズをまっすぐ見据えた。 両手は揃えて膝の上。ルイズの両足の間にはさまっていた果報者、いや左手はルイズに気づかれないようこっそりと回収済みである。 「なによ」 ルイズは身構えた。 才人は腹に力をこめた。 「まず1つめな。お前が怒っていること、それについては全面的に俺が悪いです。弁解の余地もありません。だから煮ようが焼こうがお前の好きにしてください」 深く頭をさげた。 見つめているルイズは無言だった。何か言葉を口にすると感情が溢れそうだったので、何も言えなかったのである。 才人は続けた。 「2つめ。何度も言うけど、俺が好きなのはお前だから。これだけは信じて欲しい」 ルイズは唇を引き結んだ。 ばっかじゃないの偉そうに。はいそうですかと言えるほどルイズの傷は浅くはなかった。なので、無視した。 「3つめだけど」 そこで才人は言いにくそうに天井を仰いだ。言おうか言うまいか考えているふうだ。 けれどすぐに決心をつけたようで、口を開いた。 「あのさ、今まで俺こういう経験なくてさ。だからお前の気持ちとか考えてやる余裕全然なかったの。なのでこれもすみませんごめんなさい反省してます」 ふたたび頭を下げた。ルイズは思わず身を乗り出して聞き返してしまった。 「サイトも初めてだったの!?」 「うっせ。……二度も言わねーよ」 憮然と言った。それからルイズの胸元に指をつきつけると、怒ったような口調で、 「だいたいお前もお前だろ。俺の了解もなくいきなりこっちの世界に呼びつけてよ。えー平民ーうっそーやだーとかきゃいきゃいわいわい騒ぎやがって、挙句に俺の唇の貞操まで奪いやがって、使い魔だバカ犬だミジンコだなんだって蹴るわ殴るわこきつかいやがるわ、自分だけ被害者づらしてんじゃねーよ。俺の立場も考えろよ。てかマジで大迷惑っつの」 一気に言い切って、ふんっと才人はそっぽを向いた。 ルイズはその長い台詞を頭の中でリピートした。なんだか初めて耳にする内容がまぎれこんでいた。しばらく考えてから、すっとんきょうな声をあげた。 「うそ、だってあんたいろんな子とキスしてじゃない!」 それから指を折る。キュルケにメイドに姫さま、あ、タバサもだわ……。 また思い出してムカムカした。まったく節操のない犬ってのはこういうのを言うのよね。 「不可抗力のもあんだよ」 まあ、そうじゃないのもあったけどな……。小声でつけ加える。 「とにかく責任感じとけバカ。あと絶対他のやつには言うなよ?」 ルイズの心臓がとくとく鳴った。自分が才人にとっての特別だと思ったらなんだか胸が熱くなった。最初というのはたった1度しかないのである。他の誰でもなく自分だけの特別である。 でも素直に信じてしまっていいものだろうか。今までのことを考えると不安になった。才人はこういうことで嘘をつけるほど器用ではない。でも信じて裏切られるのも恐い。 そうだ。 ルイズは思いついた。本当かどうか確かめる方法。手を伸ばすと才人の顔をつかんだ。 「なにすんだよ」 熱かった。卵をのせたら目玉焼きができそうなぐらいに。 ルイズは面白くなさそうに言った。 「ふんだ。私こそ大迷惑よ。すごい使い魔を呼び出すつもりが、こんな平民が出てきちゃうだもん」 才人の頬をぎゅうっと引っ張った。渦巻いていた嵐はいつのまにか消えてなくなっていた。 + + + (よかった。なんとか機嫌直してくれたみたいだな) 才人はほっと息をついた。人生最高ってぐらいに恥ずかしい思いをしたが、それだけの見返りはあったようだ。それに7万の敵を相手にするよりはるかにマシだ。 (ま、日本だったら、とても言えないけどな) 苦い笑いが浮かぶ。およそハルケギニアの貴族ってのは、日本とはどうにも感覚がずれているようだ。あのギーシュだってモンモンにキスしか許してもらってないみたいだし、他の水精霊騎士隊の面々も似たり寄ったりだ。 なので毎晩二人の女の子と同じベッドで寝ている才人などは、文字通りただ並んで寝ているだけでも、……たまにそれで済まないこともあるが、英雄視されたり嫉妬の対象になったりする。 なんにせよ貴族の世界で“してない”ってのは、女性を大切にするという騎士道精神の証しみたいな感覚を伴うものらしかった。 で、ルイズである。 常々子供っぽいとは感じていたけれど、まさか何も知らないとは思わなかった。なるほどシエスタとの違いはそこか。納得もいった。 それはいい。問題はこれからどうするかだ……。 (やっぱ教えてやらないとマズいよなあ) まさか最後の最後にこんな難題が控えているとは思わなかった。 野郎同士その手の話で盛り上がるのは得意だけれど、女の子相手となると話は別。こっぱずかしいことこの上ない。できれば避けてとおりたい。 けれど俺がやらなきゃ誰がやる。未経験のまま二十代を迎えるのだけは願い下げだった。ていうかそこまで我慢させられたらに死ぬ。確実に絶対に死ぬ。 才人は腹をくくった。 「ルイズ、もう1つ話さなきゃならないんだけど」 「なに?」 「その、な? さっき話してた子供の作り方ってやつだけど」 「それがどうかしたの?」 純真無垢な声が聞き返した。ピュアってのは時に犯罪だ。 「あのな、子供ってのは結婚しなくてもすることしたらできちゃうんだよ。お前のいうところのベッドの上のイロイロってやつで、そのイロイロってのをお前に教えなくちゃいけないかなーなんて……」 どうにも歯切れが悪い。 ルイズはとまどっているようだった。いきなり何を言い出すのかってふうだ。 「えっと……もしかして赤ちゃん欲しいの?」 ちげーよバカ。お約束すぎだろそれ。 「や、やだわ。バカ犬のくせに何血迷ってるのかしら! 下品な犬ってこれだからイヤよね。まったくこのバカ犬ときたらふんとにふんとに身の程知らずなんだからっ!」 身もだえる顔は、暗くてわからないけど恐らく絶対に真っ赤なはずだ。バカはお前だ。ったくこの脳天気娘が。 だんだんとイライラがつのってきた。もとから我慢強い方じゃない。ああもう面倒だ。 きゃあっ、とルイズが叫んだ。手で顔を覆ってうつむく。 「ななななな」 「何してんのかって言いたいの?」 「そそそそそ」 「見てのとおり服脱いでますが何か?」 「どどどどど」 「どうしてもなんもベッドの上に男女がいりゃ普通脱ぐだろが」 「ででででで」 「でももくそもあるかよ。落ち着けって別に変なコトしようってんじゃないから」 ルイズは毛布をひっかぶって丸くなってしまった。 才人も勢いで脱ぐは脱いだものの、どうにも居心地が悪くて困った。ほんと暗くてよかった。 「おーい、ルイズさん。生きてますぅ?」 毛布の固まりをつつきながら聞く。もぞりと固まりが動いた。 「お前さ、一応確認するけど親とか姉さんとかから聞いてないんだよな? ベッドの上で何するとかって」 「お、お母様から……」 くぐもった声がした。 「相手の殿方にお任せしなさいって……」 なんて無責任な親なんだと才人は呆れた。万が一でも未来の旦那が真性のヘンタイだったりしたらどうする気だ。こりゃ魔法学院にも保健体育の授業を作るべきだな。今度オスマン先生に提案しておこう。 「んじゃ任せてもらおーか。ほぉら出て来い」 「ひゃんっ」 毛布を引っ剥がすと中からルイズが転がり出てきた。もちろん裸だ。やっぱり明るい方がいいな、と考えを改める。でもそうなると我慢できないだろうから、暗くてよかったかもしれない。 「あ〜う〜う〜」 ルイズは手で必死に自分の体を隠そうとした。そんなルイズの肩に才人は両手をおいた。 「じゃあルイズ。俺のことは今から先生って呼べ。これからお前に男女の営みのなんたるかを教えるから」 「……なっ」 「その上で、お前がしてもいいかなーって気になれたらその時本番しよーな。それまで待っててやるよ」 「……本番?」 「深いことは気にすんな。あと殴ったり蹴ったりはなしだぞ? 不能にしやがったら一生恨むからな?」 ルイズはう〜と唸るように答えた。 才人はルイズの手を取ると、自分の方へ導こうとした。とにかく実物を見せてしまうのが手っ取り早いと考えたのである。 けれどルイズは両手を固く握りしめて、動こうとしてくれない。 未知への怯えがそうさせているのだった。知ってしまえば自分が変わってしまうような、そんな予感に怯えていた。 + + + 「しゃあねーな」 ため息をつくと、才人はルイズの体に腕を回した。優しくあやすようにそっと抱きしめた。しっとりとした肌の吸いつく感触に頭がくらりとした。ぐっと耐えて、ルイズの唇に軽く一瞬だけ唇を重ねた。 「……んっ」 ルイズは甘いため息をもらした。 「……うそつき。待つっていったじゃない」 うつむいたその声は妙に艶っぽくて、才人をどきりとさせた。 (やばいなぁ。俺どうにかなっちまいそう) 体に溜まる一方の熱を懸命におさえつけた。早いとこ授業を進めた方がよさそうだ。 「どうやって子供を作るかって話だけどさ」 言いながら、ルイズの手に自分の物を握らせた。すぐ離そうとしたので、できないように上から押さえつけた。 強張った指でルイズはその感触や形を理解したようだった。ルイズの手の中でそれはさらに固く大きく姿を変えた。 「……これが俺の。わかった?」 「で、でも……」 こんなに大きいものがあったら、普段から気づくと思う。こんなの知らない。 「お前見てドキドキしてやらしい気分になってるからこんななってんだよ」 ルイズの指がぴくっと反応した。瞬間才人の背筋に電流が走る。 才人は急いで言葉を続けた。 「で、さっきお前が嫌がったところにこれが入ると運が悪けりゃ子供ができるってわけ」 「う、うん」 「最初は驚くかもしんないけど……、ってか俺もそうだったけど、これは普通のことなんだよ。俺もお前もそうやって生まれてきたの。だから変態とか言うなよ。俺だってさすがに傷つくってか……」 なんだか信じられない話だった。でも手の中にある物がその証明のようにも思えた。 そこで才人は頬をぽりぽりと掻いた。 「まあ、男はみんな変態だしな。たまにはそーゆーこともしたくなるかもなあ」 「へ?」 「そうだな、例えば……」 才人はにやりと意地悪げな笑みを浮かべた。 「黒猫の格好させて、今日はあなたがご主人様にゃ〜んって言わせたくなっちゃうとか」 「はうっ」 「体中に生クリームたっぷりつけて、それを舐めたくなったりとか」 「あうあう」 「そういう気分になっちゃうかもなあ。まあできるだけ我慢するけど? ルイズはそういうの嫌だろうしな」 ルイズは言葉を失った。だってそれ全部ルイズが今までやってきたことですから。 つまりルイズ・フランソワーズは変態。これ確定。 「だだって、それこそ普通でしょ?」 いいや、どうみても変態プレイです。俺どっか間違ってます? ねえ?
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せかんど・バージン1話.『愛は暗闇の中で』(4) ぎふと氏 #br 一連の赤ちゃん誕生ストーリーが無事出産まで行きついたところで、ようやくルイズは口を閉じる気になったようだった。休みなく喋ったせいか、ぜいぜいと息をきらしている。 おつかれさん、ルイズの体に毛布をかけてやると、才人はあらためてルイズの方に向き直り背を正した。 「なあ、ルイズ。ちょっと聞いて欲しいんだけど」 暗闇の中ルイズをまっすぐ見据えた。 両手は揃えて膝の上。ルイズの両足の間にはさまっていた果報者、いや左手はルイズに気づかれないようこっそりと回収済みである。 「なによ」 ルイズは身構えた。 才人は腹に力をこめた。 「まず1つめな。お前が怒っていること、それについては全面的に俺が悪いです。弁解の余地もありません。だから煮ようが焼こうがお前の好きにしてください」 深く頭をさげた。 見つめているルイズは無言だった。何か言葉を口にすると感情が溢れそうだったので、何も言えなかったのである。 才人は続けた。 「2つめ。何度も言うけど、俺が好きなのはお前だから。これだけは信じて欲しい」 ルイズは唇を引き結んだ。 ばっかじゃないの偉そうに。はいそうですかと言えるほどルイズの傷は浅くはなかった。なので、無視した。 「3つめだけど」 そこで才人は言いにくそうに天井を仰いだ。言おうか言うまいか考えているふうだ。 けれどすぐに決心をつけたようで、口を開いた。 「あのさ、今まで俺こういう経験なくてさ。だからお前の気持ちとか考えてやる余裕全然なかったの。なのでこれもすみませんごめんなさい反省してます」 ふたたび頭を下げた。ルイズは思わず身を乗り出して聞き返してしまった。 「サイトも初めてだったの!?」 「うっせ。……二度も言わねーよ」 憮然と言った。それからルイズの胸元に指をつきつけると、怒ったような口調で、 「だいたいお前もお前だろ。俺の了解もなくいきなりこっちの世界に呼びつけてよ。えー平民ーうっそーやだーとかきゃいきゃいわいわい騒ぎやがって、挙句に俺の唇の貞操まで奪いやがって、使い魔だバカ犬だミジンコだなんだって蹴るわ殴るわこきつかいやがるわ、自分だけ被害者づらしてんじゃねーよ。俺の立場も考えろよ。てかマジで大迷惑っつの」 一気に言い切って、ふんっと才人はそっぽを向いた。 ルイズはその長い台詞を頭の中でリピートした。なんだか初めて耳にする内容がまぎれこんでいた。しばらく考えてから、すっとんきょうな声をあげた。 「うそ、だってあんたいろんな子とキスしてじゃない!」 それから指を折る。キュルケにメイドに姫さま、あ、タバサもだわ……。 また思い出してムカムカした。まったく節操のない犬ってのはこういうのを言うのよね。 「不可抗力のもあんだよ」 まあ、そうじゃないのもあったけどな……。小声でつけ加える。 「とにかく責任感じとけバカ。あと絶対他のやつには言うなよ?」 ルイズの心臓がとくとく鳴った。自分が才人にとっての特別だと思ったらなんだか胸が熱くなった。最初というのはたった1度しかないのである。他の誰でもなく自分だけの特別である。 でも素直に信じてしまっていいものだろうか。今までのことを考えると不安になった。才人はこういうことで嘘をつけるほど器用ではない。でも信じて裏切られるのも恐い。 そうだ。 ルイズは思いついた。本当かどうか確かめる方法。手を伸ばすと才人の顔をつかんだ。 「なにすんだよ」 熱かった。卵をのせたら目玉焼きができそうなぐらいに。 ルイズは面白くなさそうに言った。 「ふんだ。私こそ大迷惑よ。すごい使い魔を呼び出すつもりが、こんな平民が出てきちゃうだもん」 才人の頬をぎゅうっと引っ張った。渦巻いていた嵐はいつのまにか消えてなくなっていた。 + + + (よかった。なんとか機嫌直してくれたみたいだな) 才人はほっと息をついた。人生最高ってぐらいに恥ずかしい思いをしたが、それだけの見返りはあったようだ。それに7万の敵を相手にするよりはるかにマシだ。 (ま、日本だったら、とても言えないけどな) 苦い笑いが浮かぶ。およそハルケギニアの貴族ってのは、日本とはどうにも感覚がずれているようだ。あのギーシュだってモンモンにキスしか許してもらってないみたいだし、他の水精霊騎士隊の面々も似たり寄ったりだ。 なので毎晩二人の女の子と同じベッドで寝ている才人などは、文字通りただ並んで寝ているだけでも、……たまにそれで済まないこともあるが、英雄視されたり嫉妬の対象になったりする。 なんにせよ貴族の世界で“してない”ってのは、女性を大切にするという騎士道精神の証しみたいな感覚を伴うものらしかった。 で、ルイズである。 常々子供っぽいとは感じていたけれど、まさか何も知らないとは思わなかった。なるほどシエスタとの違いはそこか。納得もいった。 それはいい。問題はこれからどうするかだ……。 (やっぱ教えてやらないとマズいよなあ) まさか最後の最後にこんな難題が控えているとは思わなかった。 野郎同士その手の話で盛り上がるのは得意だけれど、女の子相手となると話は別。こっぱずかしいことこの上ない。できれば避けてとおりたい。 けれど俺がやらなきゃ誰がやる。未経験のまま二十代を迎えるのだけは願い下げだった。ていうかそこまで我慢させられたらに死ぬ。確実に絶対に死ぬ。 才人は腹をくくった。 「ルイズ、もう1つ話さなきゃならないんだけど」 「なに?」 「その、な? さっき話してた子供の作り方ってやつだけど」 「それがどうかしたの?」 純真無垢な声が聞き返した。ピュアってのは時に犯罪だ。 「あのな、子供ってのは結婚しなくてもすることしたらできちゃうんだよ。お前のいうところのベッドの上のイロイロってやつで、そのイロイロってのをお前に教えなくちゃいけないかなーなんて……」 どうにも歯切れが悪い。 ルイズはとまどっているようだった。いきなり何を言い出すのかってふうだ。 「えっと……もしかして赤ちゃん欲しいの?」 ちげーよバカ。お約束すぎだろそれ。 「や、やだわ。バカ犬のくせに何血迷ってるのかしら! 下品な犬ってこれだからイヤよね。まったくこのバカ犬ときたらふんとにふんとに身の程知らずなんだからっ!」 身もだえる顔は、暗くてわからないけど恐らく絶対に真っ赤なはずだ。バカはお前だ。ったくこの脳天気娘が。 だんだんとイライラがつのってきた。もとから我慢強い方じゃない。ああもう面倒だ。 きゃあっ、とルイズが叫んだ。手で顔を覆ってうつむく。 「ななななな」 「何してんのかって言いたいの?」 「そそそそそ」 「見てのとおり服脱いでますが何か?」 「どどどどど」 「どうしてもなんもベッドの上に男女がいりゃ普通脱ぐだろが」 「ででででで」 「でももくそもあるかよ。落ち着けって別に変なコトしようってんじゃないから」 ルイズは毛布をひっかぶって丸くなってしまった。 才人も勢いで脱ぐは脱いだものの、どうにも居心地が悪くて困った。ほんと暗くてよかった。 「おーい、ルイズさん。生きてますぅ?」 毛布の固まりをつつきながら聞く。もぞりと固まりが動いた。 「お前さ、一応確認するけど親とか姉さんとかから聞いてないんだよな? ベッドの上で何するとかって」 「お、お母様から……」 くぐもった声がした。 「相手の殿方にお任せしなさいって……」 なんて無責任な親なんだと才人は呆れた。万が一でも未来の旦那が真性のヘンタイだったりしたらどうする気だ。こりゃ魔法学院にも保健体育の授業を作るべきだな。今度オスマン先生に提案しておこう。 「んじゃ任せてもらおーか。ほぉら出て来い」 「ひゃんっ」 毛布を引っ剥がすと中からルイズが転がり出てきた。もちろん裸だ。やっぱり明るい方がいいな、と考えを改める。でもそうなると我慢できないだろうから、暗くてよかったかもしれない。 「あ〜う〜う〜」 ルイズは手で必死に自分の体を隠そうとした。そんなルイズの肩に才人は両手をおいた。 「じゃあルイズ。俺のことは今から先生って呼べ。これからお前に男女の営みのなんたるかを教えるから」 「……なっ」 「その上で、お前がしてもいいかなーって気になれたらその時本番しよーな。それまで待っててやるよ」 「……本番?」 「深いことは気にすんな。あと殴ったり蹴ったりはなしだぞ? 不能にしやがったら一生恨むからな?」 ルイズはう〜と唸るように答えた。 才人はルイズの手を取ると、自分の方へ導こうとした。とにかく実物を見せてしまうのが手っ取り早いと考えたのである。 けれどルイズは両手を固く握りしめて、動こうとしてくれない。 未知への怯えがそうさせているのだった。知ってしまえば自分が変わってしまうような、そんな予感に怯えていた。 + + + 「しゃあねーな」 ため息をつくと、才人はルイズの体に腕を回した。優しくあやすようにそっと抱きしめた。しっとりとした肌の吸いつく感触に頭がくらりとした。ぐっと耐えて、ルイズの唇に軽く一瞬だけ唇を重ねた。 「……んっ」 ルイズは甘いため息をもらした。 「……うそつき。待つっていったじゃない」 うつむいたその声は妙に艶っぽくて、才人をどきりとさせた。 (やばいなぁ。俺どうにかなっちまいそう) 体に溜まる一方の熱を懸命におさえつけた。早いとこ授業を進めた方がよさそうだ。 「どうやって子供を作るかって話だけどさ」 言いながら、ルイズの手に自分の物を握らせた。すぐ離そうとしたので、できないように上から押さえつけた。 強張った指でルイズはその感触や形を理解したようだった。ルイズの手の中でそれはさらに固く大きく姿を変えた。 「……これが俺の。わかった?」 「で、でも……」 こんなに大きいものがあったら、普段から気づくと思う。こんなの知らない。 「お前見てドキドキしてやらしい気分になってるからこんななってんだよ」 ルイズの指がぴくっと反応した。瞬間才人の背筋に電流が走る。 才人は急いで言葉を続けた。 「で、さっきお前が嫌がったところにこれが入ると運が悪けりゃ子供ができるってわけ」 「う、うん」 「最初は驚くかもしんないけど……、ってか俺もそうだったけど、これは普通のことなんだよ。俺もお前もそうやって生まれてきたの。だから変態とか言うなよ。俺だってさすがに傷つくってか……」 なんだか信じられない話だった。でも手の中にある物がその証明のようにも思えた。 そこで才人は頬をぽりぽりと掻いた。 「まあ、男はみんな変態だしな。たまにはそーゆーこともしたくなるかもなあ」 「へ?」 「そうだな、例えば……」 才人はにやりと意地悪げな笑みを浮かべた。 「黒猫の格好させて、今日はあなたがご主人様にゃ〜んって言わせたくなっちゃうとか」 「はうっ」 「体中に生クリームたっぷりつけて、それを舐めたくなったりとか」 「あうあう」 「そういう気分になっちゃうかもなあ。まあできるだけ我慢するけど? ルイズはそういうの嫌だろうしな」 ルイズは言葉を失った。だってそれ全部ルイズが今までやってきたことですから。 つまりルイズ・フランソワーズは変態。これ確定。 「だだって、それこそ普通でしょ?」 いいや、どうみても変態プレイです。俺どっか間違ってます? ねえ?
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