ゼロの使い魔保管庫
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猫と七夕〜猫のアンリエッタ せんたいさん #br 恋敵二人を先に送り出したのは、全て計略のため。 王都の街中に向かうのは、彼女の計略からすれば失策である。 彼女の計略は、才人に呼び出しの書簡を送った所から始まっている。 才人に出したその書簡には『本日の夕刻までに王宮まで来られたし』と、認めた。 しかしその文面には水魔法で細工がしてあり、数刻経てば『明日の昼までに』と文面が変わる仕組みだ。 王宮にやってきた才人は、まず門前払いを喰らうだろう。 そうなるよう、事前に門衛にも指示を出しておいたし、才人の来訪を受ける役目のアニエスにも多少忙しくなるよう仕向けてある。 そうなると。 今日の王宮に用のなくなった才人は、明日の昼までの宿を求め、王都を彷徨うに違いない。 そこで、自分に、いや変装した自分に化けたスキルニルを使う。 彼女を使って、才人を王都のはずれにある、今は使われなくなった庵に才人を誘い込む。 そこは『変装した自分』の夢である小さな宿屋の縮図ができている。いらなくなった机や椅子を掻き集め、王宮のキッチンから調理用具を少々ちょろまかし、自身の手で作り上げたのだ。 そこで、自分の作った手料理を振舞って。 そして呼ばれた名前で、自分は元に戻り。 そしてそして。 私は晴れてサイト様に一番愛される女に!やんやん! ついでに手料理と一緒に、『私もた・べ・て♪』なんて!やんやんやん! そんな妄想を抱きながら、アンリエッタ女王の化けた灰色の猫は、才人を待ち受けるべく、王宮の屋根を伝い降り、曇天の王都へ飛び出していった。 才人は、王宮の閉まった門の前で途方に暮れていた。 書簡のとおりに夕刻までに王宮に着いたら、その内容は間違いで、約束は明日の昼まで、という話だったのだ。 「…どうすっかねえ」 いきなりの呼び出しだったので、現金の持ち合わせなどない。 このまま学院に戻ってもよかったのだが、どうにも空模様が怪しい。 暗雲垂れ込めるの文字通り、空には真っ黒な雲がかかっており、時折稲光すら垣間見える。 本格的な夕立の予感に、才人は考え込む。 一番真っ当な手段は、ここで泊まっちゃうことなんだろうけど…。 小銭しかない自分の財布の中身では、よほどの安宿にしか泊まれない。 それこそ、大部屋にまとめて詰め込まれて雑魚寝するような。 別に雑魚寝が嫌なわけではなかったが、明日にも女王に会おうというのに、臭う身体で謁見などはしたくなかった。 騎士の見栄とかそんなものではなく、一般社会のエチケットとして。 そんなこんなで才人が悩みながら王都の道を歩いていると。 「さーいーとー、さんっ」 不意に建物の陰から呼びかけられた。 建物の陰から才人に向かって呼びかける、短いポニーテールの黒髪に、白いシャツを着て、トリステインでは珍しい、黒いズボンを履いた女性。 「え、アン?」 彼女こそは才人と一部の人物のみが知る、女王アンリエッタの変装した街娘。『アン』である。 しかし。 女王は今、王宮で政務に就いているはずである。 ということは。 「…またスキルニル使ったなぁ…」 お得意の魔法人形『スキルニル』による替え玉で、諸侯貴族やマザリーニ、果てはアニエスまで欺いているのだ。 仮にも王宮で、女王に対し『ディテクト・マジック』をかけるような無礼を働く者はいない。それを逆手にとっているのである。 呆れたようにそう呟き、才人はこのどうしようもないダメ女王を叱るべく、アンに近寄っていく。 アンはにこにこと笑顔を絶やさず、才人を待ち受ける。 そして、才人は開口一発。 「…なにやってんすかあーた」 「今日は諸侯からの陳情のみですので。事前に内容も把握できておりますゆえ、スキルニルに任せてきました」 にっこり笑って、女王の顔で言う『アン』。 それを聞いて頭痛を堪えるように眉根を指でこねる才人。 そんな才人に、アンは続ける。 「そんなことより、今日はサイトさんに見ていただきたいものがあって」 「いやちょいまち公務を『そんなこと』呼ばわりですかい」 まるで女王の吐く台詞ではない。 「あら。どちらも大切な事でしょう?あなたも、この国も、私にとってはかけがえのないものですわ。 取れるものならそのどちらも取る。王とはそういうものです」 そう言って一瞬だけ『王』の威厳を持った顔を見せたが。 「まあ、それはそれ、これはこれ、です。 サイトさん、こっちですよこっち」 一瞬で元のただの娘の笑顔になって、才人の手を引いて歩き出す。 ほんの一瞬だけ見せた王の威厳には気付かず、娘の顔のアンに呆れながら、才人は手を引かれるまま、着いていった。 才人が連れられていったのは、町外れの小さな庵。 丈の長い草の生い茂る小さな空き地にぽつんと建った、到底立派とはいえない、木でできた一階建ての小さな庵。 才人は手近な木に馬を繋ぐと、先に入ったアンに続き、庵に入る。 なぁん。 軽く軋む扉を開けると、才人の足元に、猫がいた。 灰色の短い毛足の、とても毛艶のいい猫。 スレンダーな身体でお座りをしながら、長い尻尾をゆらゆらと揺らしている。 「あれ?なんだこの猫」 才人は目の前の猫を覗き込むように座り込む。 すると、その猫はごるごると喉を鳴らしながら、才人の足元にじゃれついた。 「随分ひとなつっこいなお前」 言って頭を撫でると、猫はその手に頭を擦り寄せてくる。 「可愛いなあお前。 …ってちょっとまてよ?」 才人は猫を撫でるのを止め、周囲を見渡す。 庵の中は、まるで古い食堂のようだった。 踏み固められ、水の撒かれたむき出しの土間の中央に、古ぼけた四角いテーブルが二つ。 その周囲に、頑丈そうな木の丸椅子がそれぞれ四脚ずつ。 奥を見ると簡易な木製のシンクと石で出来た釜。 アンの『見せたいもの』とはこれだったのだろう。 そして、片方のテーブルの上に、もう一つ。 ホカホカと湯気を立てる、料理の群れ。 中央に置かれた鉄ナベには、湯気を立てるシチュー。その目の前の皿には、薄くスライスした肉を重ね、その間に野菜を挟んだ料理。 そして、添え物の温野菜やサラダやデザートが並ぶ。 きっとアンの手作り料理だ、と才人は思ったが。 その肝心のアンの姿がどこにもない。 周囲を見渡すが、見えるのは足元の猫だけ。 その猫を見下ろすと、目が合った。 なん。 猫は才人と目が合うと嬉しそうに鳴き、足元に頭を摺り寄せてくる。 「…ここのご主人、料理置いてどっかいっちゃったみたいだぜ」 才人は人懐っこいその猫を抱き上げ、料理の置かれたテーブルに着く。 「トイレかな」 当然、いきつくのはその考え。 才人は手持ち無沙汰に、猫の頭を撫で回す。 ごるるるるるるるる…。 才人の腕の中で、猫は幸せそうに喉を鳴らす。 しばらくそうして猫の機嫌を取っていたが。 「遅いな」 才人が席に着いて結構時間が経ったが、一向にアンが戻ってくる気配はない。 「まったく、あのワガママ女王はぁ」 つい、そんな愚痴がこぼれる。 才人の言葉に、腕の中の猫がなん、と鳴いた。 才人は猫の反応に、言葉を返す。 「ああ、ここに来た子の事な。あの子実は女王様なんだぜ」 相手が猫ということもあってか、才人はあっさりと秘密をばらす。 そして続けた。 「でもな、国政ほっぽって男と…まぁ、俺となんだけど、デートするようなダメ女王でさ。 ほんと、この国大丈夫なのかって心配になるよ」 言いながら猫を目の前に抱き上げる。 猫は不機嫌そうになぶ、とくぐもった声で啼く。 「…何?お前違うとか言いたいわけ?」 なんとなくそう言われているような気がして、才人はそう答えた。 猫はそのとおり、といわんばかりになん、と澄んだ声で応えた。 「…そうは言うけどな。 いくら相手の事が好きだからって、八方手を尽くしてまでデートとかって、女王としてどうよ?って思うわけで。 少しは自覚持って欲しいよな。…まあ、断らなかったり、叱らなかったりする俺もダメなんだけどさ」 言って自虐的に笑う。 しかし、と思い直して才人は続けた。 「でもさあ、俺だって嫌なわけじゃないんだよ?ただ、ちゃんとやる事はやってほしいわけで。 …あ、でも代理は立ててるから別にいいのか?でも、そう言う問題なのか?」 ついつい自問自答の形になってしまう。 愚痴を零す相手が猫では仕方のないことだ。 猫はそんな才人を促すように、なぁん、と鳴いて見せた。 そしてその声に、何故か歯止めの聞かなくなる才人。今まで溜まっていた鬱憤を、この猫に晴らすような喋りっぷりだった。 「バレなきゃいい、ってことかもしれないけどさ。 でもさあ、そういうの、人として、っていうか王族としてどうかと思うわけ。間違ってない? 自分の国でしょうよ。ちゃんと自分で面倒みなきゃダメでしょうに。ホントダメダメ女王だよ。 調教どころか、再教育が必要だね。もうダメダメのダメダメ。ハルケギニア始まって以来の色ボケダメ女王だよな。 俺が言うのもなんだけど、いい加減恋愛感情に溺れすぎなんだよなあ、アンリエッタ女王さまはさ」 ぼふん。 才人の視界は奇妙な煙と光に包まれた。 その煙と光は一瞬で姿を消す。 その目くらましで一瞬視界を奪われた才人の太股の上に、何か温かい、重いものが乗る。 そして蘇った視界には。 才人の太股の上で。 満面の笑顔で。 眉を釣りあがらせて。 腕を組みながら。 怒っているのか笑っているのか良く分からない表情で。 王冠の乗っていない頭に灰色の三角の猫耳を生やした。 いつもの真っ白なドレスの、何故か膨らんだスカートのお尻の部分に空いた大きめの穴から尻尾を生やした。 アンリエッタ女王がいた。 「あ、あれ?ひ、ひめさま?なして??」 「ええ。ちょっと猫になる魔法で猫に化けていたのです。ええ。 …で?一体どこの誰がダメ女王なのかしら?教えていただけますかシュヴァリエ?」 アンリエッタとて一応王の端くれである。 情事の際には従順で淫乱な牝奴隷になるとはいえ、女王モードの時は話は別。 発情していないアンリエッタは、あくまでトリステイン女王なのだからして。 才人はその迫力にゴクリと唾を飲み、固まる。 「あ、あれれ?ひめさま怒ってはる…?」 才人は不幸にも、満面の笑顔に隠された、ドス黒い怒りを、犬の本能で感じ取ってしまった。 「いいいいええええええ。怒ってなんかいませんことよ」 いや違う。オコッテル。絶対怒ってる。 「図星を突かれて、ちょっとトサカにきてるだけですわ」 だからそれ怒ってるって言うんだって! 「まあせっかくの忠告ですし聞き入れておくこととしましょう、シュヴァリエ。 でもね、一言だけ言わせて頂戴」 これ以上ないくらい満面の笑みで、才人の上で、才人を見下ろしながら、天上の声は囁いた。 「サイトさまのアホぅ」 あまりにも穏やかなその言葉と同時に、才人の顔面に女王の拳がめり込んだ。 粗末なテーブルに並んだ料理を挟んで、女王とその騎士は対峙していた。 そう、まさに『対峙』である。 その食卓に満ちた空気は、死合のそれだった。 脂汗の浮く額を時折ぬぐいながら、騎士は木の食器を繰って、目の前の料理を食べる。 『せっかくですから、味わって召し上がってくださいな』との王命を戴いては、騎士に抗う術はない。 一方、対面の女王は、満面の笑顔で食事をする騎士を見つめる。 眉も口も慈愛に満ちた笑顔を形作っていたが、その瞳だけは一切笑っていない。 それゆえに、騎士が受ける重圧は想像を絶するものがあった。 女王の内に眠る牝猫の獣性が、騎士の牡を圧倒しているのかもしれない。 もちろん、料理の味などわかるはずもない。 「どうです?シュヴァリエ?ダメ女王手ずから作った料理の味は?」 そこへ、休みなく降ってくる皮肉の棘の生えた催促の台詞。 ボディブロウのように、アンリエッタの言葉が才人のハートに鈍く響く。 独り言に近いものであったとはいえ、才人は目の前でアンリエッタを罵ったのだ。 当然、女王は酷くおかんむりであった。 「え?あ、はい、大変おいしゅうございます」 味のしない、野菜を挟んだ薄い焼肉を飲み込んで、才人は応える。 女王は瞳以外笑顔のまま、今度は目を細めて言った。 「…それは、隣のソースに浸けて頂くのですよ。湯に潜らせただけのお肉とお野菜がおいしいなんて、変わっておりますのね、シュヴァリエ」 アンリエッタの指摘のとおり、その料理の皿の隣にある銅製の小さな壷には、甘い香りの黄土色のソースが満たされている。 才人の背筋がぞくりと震える。 女王の瞳は、まさに獲物を目の前にした猫のそれだった。 才人はさしずめ壁際に追い詰められた窮鼠、といったところか。 しかし、窮鼠猫を噛むとのたとえもある。 まだ、手はあるはずだ。まだ何か──────。 「え、ええと。素材の味が生かされていておいしいって意味で」 「それって料理人の腕は関係ないってことですわよね」 にっこり。 こ、こえええええええええええ。 あまりにも穏やかなその言葉と怒りの篭った視線に、才人はいよいよ自分が嬲られているのだと悟る。 窮鼠どころか、もうすでに猫の口に咥えられているのである。 「ねえサイト様」 「は、はひ」 今まで『シュヴァリエ』と呼ばれていたのが急に名前になったことで、才人の恐怖が加速する。 思わず両手を膝の上に置き、背筋をぴんと伸ばしてしまう。 女王は優雅な仕草でテーブルを回り込み、硬直する才人の顎を、少し爪のとがった指でつまむ。 そして顔を上げさせ、自身の瞳を覗き込ませる。 「私に、女の悦びを刻み込んだのは、どこのどなたかしら?」 「え、あ、俺?」 目を点にして応える才人に、アンリエッタははしたなくテーブルに腰を載せ、その長い灰色の尻尾をゆらゆらと揺らす。 「そうですわね。最初は私から求めたとはいえ、悦びを覚えるまで私の女を嬲ったのはサイト様です」 「ちょ、ちょいまち、あのあと姫さま自分でいろいろしてきたじゃんか」 才人の反論に、女王はキスしそうなくらい顔を近づけ、さらに反論する。灰色の三角の耳が、ぴんぴん、と楽しそうに揺れる。 「…あなたに刻まれた最初の夜は、ずっと私を苛んだのです。昼な夜な、あの焼け爛れた棒で引き裂かれるような感覚を、私は反芻していたのですよ」 「まってそれって俺とは関係ないじゃんか」 「じゃあ戻して」 才人の頬を挟み込み、真剣な眼差しで才人の瞳を覗き込む。 「…え?」 「私の無垢を戻して。夜な夜な疼く、この身体を戻して。恥じらいも節度もあった、あの頃に戻して頂戴」 潤みきった目で、才人をそう非難する女王。それと同時に、牝猫の喉がころころと鳴り始めている。 「いや、その、無理ですってばそれ」 「なら、私のこと、もうダメ女王なんて呼ばないで。 あなたがこうしたのよ。私がダメなわけじゃないの。分かってる?」 じっと才人の瞳を見つめ、そう命令する女王。そのスカートの布の隙間から出ている尻尾からゆらゆらと揺れている。 「わ、わかりました、わかりましたから」 「嘘」 猫の瞳で、女王は才人の嘘を見抜いた。 そして、才人の唇に熱い吐息を吹きかけながら、囁いた。 「嘘だわ。きっとサイト様は私の事、心の奥でダメな女だと思ってるのよ」 「そんなダメだなんて思ってませんて、もう」 「本当に?」 「ほんとですって」 「ほんとうにぃ?」 「ほ・ん・と・うですって!」 あまりにもしつこい牝猫女王の追及に、半ば自棄気味にそう吼える才人。 アンリエッタは直前で放たれたその大音声にびっくりした顔になったが、すぐに元に戻ると。 「じゃあ、こんな事しても、ダメだなんて思わないんですね」 言うや否や、ドレスの胸元を勢い良くぐばぁ!と開くと、色も柔らかさもサイズも女王な胸を放り出した。 「え」 目の前で揺れる女王な肉鞠に一瞬で固まる才人の隙を見逃さず、アンリエッタは才人の股間のテントに手を掛け、ジッパーをずり下ろす。 「えいっ」 そしてそこからまろび出たテントの支柱を、染み一つない真っ白でまん丸な女王の胸で挟み込む。 「ちょ、なにして」 「こんなことしても、ダメ女王じゃないんですよね」 言いながら、ぐにぐにと両手で胸を挟み込み、間に挟まれた才人の肉棒を女王の圧力で押しつぶす。 「い、いやまって、なんでいきなりこんなっ」 「…私、サイト様が好きなの。この国と同じくらい、大好きなの」 肉棒を胸の谷間に挟んだまま、猫耳の女王は、真剣な顔で才人を見上げる。 今更何を、と才人は思ったが。 女王は続けた。 「サイト様とキスするのが好きなの。サイト様にぎゅうってされるのが好きなの。 …サイト様とえっちするのが、だいすきなの」 そして、胸の谷間でとろとろと半透明の液体を零す才人を、完全に発情した視線で見つめた。 ほう、と熱い溜息が先端にかかると、才人の喉からうっ、と声が漏れる。 そんな才人を見上げ、牝猫女王は淫らな声で己が騎士に尋ねる。 「こんな淫乱な女でも、ダメじゃないんですか…?」 「い、いやその…」 返答に窮する才人。 姫さま相当追い詰められてたんだな、と無駄に反省などしてみる。 だがしかし本当のところは、アンリエッタがこうなってしまった原因は、『アイシャの指輪』によって猫が混じった事により、抑えていたものが噴出してしまったからである。 むにむにと自分を刺激し続けるアンリエッタに、才人は辛うじて思いついた事を、投げかける。 「両立できるなら…ダメじゃないですよ」 「え…?」 「俺も、トリステインも。両方。 両方とも、面倒見切れるなら、あなたは立派な女王様ですよ」 アンリエッタはその言葉に、ふにゃん、と嬉しそうに笑う。 「はい、そうできるように尽力致します…。サイト様」 「言葉だけじゃダメですよ。ちゃんと実行しなきゃ」 「はい。勿論ですわ。だから…」 言ってアンリエッタは、才人の肉棒を胸の谷間から開放し、ざらざらの舌でその先端を舐めあげた。 「ちょ、まってうわっ!?」 その強すぎる刺激に、才人の堰はあっさりと崩れ去り、白濁がどぴゅどぴゅと容赦なくアンリエッタの顔に降り注ぐ。 「は、ふわ、いっぱい…」 飛び散る白濁を主に顔面に受けながら、幸せそうな笑顔で女王は淫靡に微笑む。 その頭で、灰色の猫耳がくたん、と倒れる。 そして嬉しそうに、ぴちゃぴちゃと飛び散った才人の精液を舐め上げる。 「い、いきなり舐めないでくれよ…出ちゃったじゃん」 「うふふ。勿体無いですね。確かに」 そう言う意味で言ったのではないのだが。 牝猫女王は才人の言葉に嬉しそうに微笑み、そして精液に塗れたまま、その柔らかい胸を晒したまま、才人の身体を這いずって昇っていく。 近寄ってくる牡と牝の混じった匂いのする女王に、才人の腰が思わず引ける。しかし狭い丸椅子の上では逃げ場はない。 アンリエッタは才人の胸板に完全に密着すると、その鼻先で、雄の匂いにまみれながら、言った。 「今度は…きちんと、やや子の部屋に」 そして腰を持ち上げ、才人の先端を己が肉の割れ目に押し当てて、ねだる。 「やや子の部屋に…サイト様のあっつぅい子種を…」 ぶちゅり。と滑った音を立て、アンリエッタの桃色の秘唇はあっさりと才人を飲み込み、ぐにゅりぐにゅりと襞を蠢かせて牡を奥へと導いていく。 「子種を…やや子の部屋を、子種で…いっぱい汚してくださいまし…」 その言葉に、才人はぎゅっとアンリエッタを抱きしめる。 抱きしめられてアンリエッタの子宮がぞる、と蠢き、ぱっくりと肉の顎を開いて才人の先端を咥えこむ。 完全に密着する性器と性器。 しかし、このままでは。 「サイト様…こ、このままでは動けません…は、放して…」 「だめ。今日は姫さまを放さない」 才人は反論し、さらにきつくアンリエッタを抱きしめる。 あまりの愛しさに、才人はアンリエッタを離したくなかった。 それに、猫になったせいか、アンリエッタの身体はいつもよりずっと柔らかく、こうして抱いているだけでとんでもなく心地よい。 才人は腰を回すように動かし、続けた。 「前、宿で、したみたいにさ。中、動かして、みせてよっ」 回転刺激だけでも十分感じていたアンリエッタだったが、才人の言葉にその時の事を思い出す。 膣肉で才人をくわえ込み、腰肉を動かして、子宮口で才人を犯したあの日の事。 「わ、分かりました…んっ…こ、こうですね…」 才人の腰の回転に合わせ、アンリエッタも同じように腰を回して。 膣道に感じる牡の温度を、手でしごくかのようにイメージしながら、膣肉を蠢かせる。 ぐにぐにと凶悪な螺旋を描き、アンリエッタの膣はまるでコルクの栓のようにがっちりと咥え込まれた才人を刺激する。 「そ、そう、いいよ、きもちいいよ姫さま…っ」 「や、いや、姫さま、なんて、言わないでっ、おね、おねがいっ、なまえでっ、名前で呼んでぇっ、名前でっ、呼んでくださいましぃっ!」 上半身をぐにぐにと才人に押し当て、下半身でぎゅりぎゅりと才人を拷問具のように締め上げ、アンリエッタは艶やかに啼く。 耳がぴんと天上を向き、尻尾がうねうねと淫らにくねる。 才人はそんなアンリエッタの尻肉を掴み、尻の谷間を大きく開きながら、応えた。 「アンリエッタ、アンリエッタ、アンリエッタっ!」 熱に浮かされたように女王の名を呼ぶ才人。 限界が近いのか、その腰の回転が速くなる。 「サイトさまぁ、サイトさまぁ、サイトさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 ぶるぶると震え、愛する騎士の名を連呼しながら、最後の力を振り絞ってアンリエッタは腰の回転と膣肉の動きで最大の螺旋を描く。 ぎゅりりりり、と膣道が絞られ、牡に快楽を与えるためだけに存在する肉襞が、肉の牙となって才人の肉棒に食い込む。 最奥では子宮口が捲れ上がり、まるで唇のように才人の亀頭に口付けをする。 その瞬間。 どぷどぷどぷどぷどぷ…。 アンリエッタが望んだとおり、彼女の子宮は才人の吐き出した牡の欲望で、徹底的に陵辱された。 「は、ふわ、いっぱいぃ…」 ほわん、と蕩けた目で、女王はくったりと騎士の肉椅子の上にしなだれかかった。 「うふ。なんだか玉座に掛けているよう」 アンリエッタは才人の上でご満悦だった。 ドレスは才人の精液に汚されてしまったので、脱いで部屋の隅へ。 今は、裸の上に『アン』の着ていた上着だけを羽織っていた。 もちろん丈はそこまで長くないので、真っ白な上着の裾からは、同じように白い、尻尾の生えた下半身が丸見えだった。 そんな格好で、アンリエッタは椅子に掛けさせた才人の上にいた。 玉座と化した才人は、膝の上でそんな格好をしている女王に、再び牡を滾らせていた。 さすがにガマンきかなくなりそうなので、才人は言った。 「あ、あのさ、どいてくんないかなあ」 「嫌です」 あっさり否定された。 「こんなに元気にしておいて、どいてくれもないものですわ」 言いながら、自分の脚と脚の間でぴんと立つ、牡をちょん、とつつく。 「わ」 「それに…せかっく作った手料理なんですもの。サイトさまに、食べさせてあげます」 言ってアンリエッタは。 先ほどの、薄い肉に野菜を挟んだ料理を指につまんでソースに浸け、そして振り向いて。 「はい、あ〜ん」 言って肉を口許に持っていき、咥えて。 才人の口許に持っていく。 「はひ、ろうろ」 才人はそれを半ば自棄気味に口で受け取る。 もぐもぐと咀嚼したのを確認すると、アンリエッタは言った。 「お食事とったら…またしましょ」 言って、元気になっている才人をきゅ、と握る。 「わ、わかりましたよ…全く、姫さまにはかないません」 「うふふ。当然ですわ。これでもこの国の王ですよ」 才人はその言葉に思わず、心の中で 『ダメだこの女王…早くなんとかしないと』 と思ってしまう。 「…あ、今『ダメ女王』って思った」 「え。い!思ってません!思ってませんよ!」 「うーそ。言い訳してもわかるんだから」 「な、なんで分かるの!姫さまなんか魔法使った!?」 「いーえ。でも、自分の騎士の考えていることくらい分からなくては、王失格ですもの」 そして、このどうしようもない淫乱ダメ女王は淫靡に、典雅に、あくまで優しく、微笑んだ。 「それと、名前で呼べといいましたわよね? 全く、王の命令を聞かないなんてどうしようもないダメ騎士ね。ダメ犬騎士だわ」 「ちょ、それって論点のすりか」 しかし反論しようとする才人の口は、アンリエッタの人差し指で封じられた。 「うふ。もう二度と人の事ダメって思えないように…」 そう言って、才人の肉棒を再び飲み込み、膣肉でぎゅり、と締め上げる。 喘ぎ声を上げる才人に、アンリエッタは続けた。 「同じくらい、ダメにしてあげる。この、ダメ犬モグラ騎士♪」 そして今度は、遠慮なく上下にも腰を使い始めた。 結局才人が開放されるのは、アンリエッタから完全に『猫』の抜けた、次の日の昼のころであったという。〜fin
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猫と七夕〜猫のアンリエッタ せんたいさん #br 恋敵二人を先に送り出したのは、全て計略のため。 王都の街中に向かうのは、彼女の計略からすれば失策である。 彼女の計略は、才人に呼び出しの書簡を送った所から始まっている。 才人に出したその書簡には『本日の夕刻までに王宮まで来られたし』と、認めた。 しかしその文面には水魔法で細工がしてあり、数刻経てば『明日の昼までに』と文面が変わる仕組みだ。 王宮にやってきた才人は、まず門前払いを喰らうだろう。 そうなるよう、事前に門衛にも指示を出しておいたし、才人の来訪を受ける役目のアニエスにも多少忙しくなるよう仕向けてある。 そうなると。 今日の王宮に用のなくなった才人は、明日の昼までの宿を求め、王都を彷徨うに違いない。 そこで、自分に、いや変装した自分に化けたスキルニルを使う。 彼女を使って、才人を王都のはずれにある、今は使われなくなった庵に才人を誘い込む。 そこは『変装した自分』の夢である小さな宿屋の縮図ができている。いらなくなった机や椅子を掻き集め、王宮のキッチンから調理用具を少々ちょろまかし、自身の手で作り上げたのだ。 そこで、自分の作った手料理を振舞って。 そして呼ばれた名前で、自分は元に戻り。 そしてそして。 私は晴れてサイト様に一番愛される女に!やんやん! ついでに手料理と一緒に、『私もた・べ・て♪』なんて!やんやんやん! そんな妄想を抱きながら、アンリエッタ女王の化けた灰色の猫は、才人を待ち受けるべく、王宮の屋根を伝い降り、曇天の王都へ飛び出していった。 才人は、王宮の閉まった門の前で途方に暮れていた。 書簡のとおりに夕刻までに王宮に着いたら、その内容は間違いで、約束は明日の昼まで、という話だったのだ。 「…どうすっかねえ」 いきなりの呼び出しだったので、現金の持ち合わせなどない。 このまま学院に戻ってもよかったのだが、どうにも空模様が怪しい。 暗雲垂れ込めるの文字通り、空には真っ黒な雲がかかっており、時折稲光すら垣間見える。 本格的な夕立の予感に、才人は考え込む。 一番真っ当な手段は、ここで泊まっちゃうことなんだろうけど…。 小銭しかない自分の財布の中身では、よほどの安宿にしか泊まれない。 それこそ、大部屋にまとめて詰め込まれて雑魚寝するような。 別に雑魚寝が嫌なわけではなかったが、明日にも女王に会おうというのに、臭う身体で謁見などはしたくなかった。 騎士の見栄とかそんなものではなく、一般社会のエチケットとして。 そんなこんなで才人が悩みながら王都の道を歩いていると。 「さーいーとー、さんっ」 不意に建物の陰から呼びかけられた。 建物の陰から才人に向かって呼びかける、短いポニーテールの黒髪に、白いシャツを着て、トリステインでは珍しい、黒いズボンを履いた女性。 「え、アン?」 彼女こそは才人と一部の人物のみが知る、女王アンリエッタの変装した街娘。『アン』である。 しかし。 女王は今、王宮で政務に就いているはずである。 ということは。 「…またスキルニル使ったなぁ…」 お得意の魔法人形『スキルニル』による替え玉で、諸侯貴族やマザリーニ、果てはアニエスまで欺いているのだ。 仮にも王宮で、女王に対し『ディテクト・マジック』をかけるような無礼を働く者はいない。それを逆手にとっているのである。 呆れたようにそう呟き、才人はこのどうしようもないダメ女王を叱るべく、アンに近寄っていく。 アンはにこにこと笑顔を絶やさず、才人を待ち受ける。 そして、才人は開口一発。 「…なにやってんすかあーた」 「今日は諸侯からの陳情のみですので。事前に内容も把握できておりますゆえ、スキルニルに任せてきました」 にっこり笑って、女王の顔で言う『アン』。 それを聞いて頭痛を堪えるように眉根を指でこねる才人。 そんな才人に、アンは続ける。 「そんなことより、今日はサイトさんに見ていただきたいものがあって」 「いやちょいまち公務を『そんなこと』呼ばわりですかい」 まるで女王の吐く台詞ではない。 「あら。どちらも大切な事でしょう?あなたも、この国も、私にとってはかけがえのないものですわ。 取れるものならそのどちらも取る。王とはそういうものです」 そう言って一瞬だけ『王』の威厳を持った顔を見せたが。 「まあ、それはそれ、これはこれ、です。 サイトさん、こっちですよこっち」 一瞬で元のただの娘の笑顔になって、才人の手を引いて歩き出す。 ほんの一瞬だけ見せた王の威厳には気付かず、娘の顔のアンに呆れながら、才人は手を引かれるまま、着いていった。 才人が連れられていったのは、町外れの小さな庵。 丈の長い草の生い茂る小さな空き地にぽつんと建った、到底立派とはいえない、木でできた一階建ての小さな庵。 才人は手近な木に馬を繋ぐと、先に入ったアンに続き、庵に入る。 なぁん。 軽く軋む扉を開けると、才人の足元に、猫がいた。 灰色の短い毛足の、とても毛艶のいい猫。 スレンダーな身体でお座りをしながら、長い尻尾をゆらゆらと揺らしている。 「あれ?なんだこの猫」 才人は目の前の猫を覗き込むように座り込む。 すると、その猫はごるごると喉を鳴らしながら、才人の足元にじゃれついた。 「随分ひとなつっこいなお前」 言って頭を撫でると、猫はその手に頭を擦り寄せてくる。 「可愛いなあお前。 …ってちょっとまてよ?」 才人は猫を撫でるのを止め、周囲を見渡す。 庵の中は、まるで古い食堂のようだった。 踏み固められ、水の撒かれたむき出しの土間の中央に、古ぼけた四角いテーブルが二つ。 その周囲に、頑丈そうな木の丸椅子がそれぞれ四脚ずつ。 奥を見ると簡易な木製のシンクと石で出来た釜。 アンの『見せたいもの』とはこれだったのだろう。 そして、片方のテーブルの上に、もう一つ。 ホカホカと湯気を立てる、料理の群れ。 中央に置かれた鉄ナベには、湯気を立てるシチュー。その目の前の皿には、薄くスライスした肉を重ね、その間に野菜を挟んだ料理。 そして、添え物の温野菜やサラダやデザートが並ぶ。 きっとアンの手作り料理だ、と才人は思ったが。 その肝心のアンの姿がどこにもない。 周囲を見渡すが、見えるのは足元の猫だけ。 その猫を見下ろすと、目が合った。 なん。 猫は才人と目が合うと嬉しそうに鳴き、足元に頭を摺り寄せてくる。 「…ここのご主人、料理置いてどっかいっちゃったみたいだぜ」 才人は人懐っこいその猫を抱き上げ、料理の置かれたテーブルに着く。 「トイレかな」 当然、いきつくのはその考え。 才人は手持ち無沙汰に、猫の頭を撫で回す。 ごるるるるるるるる…。 才人の腕の中で、猫は幸せそうに喉を鳴らす。 しばらくそうして猫の機嫌を取っていたが。 「遅いな」 才人が席に着いて結構時間が経ったが、一向にアンが戻ってくる気配はない。 「まったく、あのワガママ女王はぁ」 つい、そんな愚痴がこぼれる。 才人の言葉に、腕の中の猫がなん、と鳴いた。 才人は猫の反応に、言葉を返す。 「ああ、ここに来た子の事な。あの子実は女王様なんだぜ」 相手が猫ということもあってか、才人はあっさりと秘密をばらす。 そして続けた。 「でもな、国政ほっぽって男と…まぁ、俺となんだけど、デートするようなダメ女王でさ。 ほんと、この国大丈夫なのかって心配になるよ」 言いながら猫を目の前に抱き上げる。 猫は不機嫌そうになぶ、とくぐもった声で啼く。 「…何?お前違うとか言いたいわけ?」 なんとなくそう言われているような気がして、才人はそう答えた。 猫はそのとおり、といわんばかりになん、と澄んだ声で応えた。 「…そうは言うけどな。 いくら相手の事が好きだからって、八方手を尽くしてまでデートとかって、女王としてどうよ?って思うわけで。 少しは自覚持って欲しいよな。…まあ、断らなかったり、叱らなかったりする俺もダメなんだけどさ」 言って自虐的に笑う。 しかし、と思い直して才人は続けた。 「でもさあ、俺だって嫌なわけじゃないんだよ?ただ、ちゃんとやる事はやってほしいわけで。 …あ、でも代理は立ててるから別にいいのか?でも、そう言う問題なのか?」 ついつい自問自答の形になってしまう。 愚痴を零す相手が猫では仕方のないことだ。 猫はそんな才人を促すように、なぁん、と鳴いて見せた。 そしてその声に、何故か歯止めの聞かなくなる才人。今まで溜まっていた鬱憤を、この猫に晴らすような喋りっぷりだった。 「バレなきゃいい、ってことかもしれないけどさ。 でもさあ、そういうの、人として、っていうか王族としてどうかと思うわけ。間違ってない? 自分の国でしょうよ。ちゃんと自分で面倒みなきゃダメでしょうに。ホントダメダメ女王だよ。 調教どころか、再教育が必要だね。もうダメダメのダメダメ。ハルケギニア始まって以来の色ボケダメ女王だよな。 俺が言うのもなんだけど、いい加減恋愛感情に溺れすぎなんだよなあ、アンリエッタ女王さまはさ」 ぼふん。 才人の視界は奇妙な煙と光に包まれた。 その煙と光は一瞬で姿を消す。 その目くらましで一瞬視界を奪われた才人の太股の上に、何か温かい、重いものが乗る。 そして蘇った視界には。 才人の太股の上で。 満面の笑顔で。 眉を釣りあがらせて。 腕を組みながら。 怒っているのか笑っているのか良く分からない表情で。 王冠の乗っていない頭に灰色の三角の猫耳を生やした。 いつもの真っ白なドレスの、何故か膨らんだスカートのお尻の部分に空いた大きめの穴から尻尾を生やした。 アンリエッタ女王がいた。 「あ、あれ?ひ、ひめさま?なして??」 「ええ。ちょっと猫になる魔法で猫に化けていたのです。ええ。 …で?一体どこの誰がダメ女王なのかしら?教えていただけますかシュヴァリエ?」 アンリエッタとて一応王の端くれである。 情事の際には従順で淫乱な牝奴隷になるとはいえ、女王モードの時は話は別。 発情していないアンリエッタは、あくまでトリステイン女王なのだからして。 才人はその迫力にゴクリと唾を飲み、固まる。 「あ、あれれ?ひめさま怒ってはる…?」 才人は不幸にも、満面の笑顔に隠された、ドス黒い怒りを、犬の本能で感じ取ってしまった。 「いいいいええええええ。怒ってなんかいませんことよ」 いや違う。オコッテル。絶対怒ってる。 「図星を突かれて、ちょっとトサカにきてるだけですわ」 だからそれ怒ってるって言うんだって! 「まあせっかくの忠告ですし聞き入れておくこととしましょう、シュヴァリエ。 でもね、一言だけ言わせて頂戴」 これ以上ないくらい満面の笑みで、才人の上で、才人を見下ろしながら、天上の声は囁いた。 「サイトさまのアホぅ」 あまりにも穏やかなその言葉と同時に、才人の顔面に女王の拳がめり込んだ。 粗末なテーブルに並んだ料理を挟んで、女王とその騎士は対峙していた。 そう、まさに『対峙』である。 その食卓に満ちた空気は、死合のそれだった。 脂汗の浮く額を時折ぬぐいながら、騎士は木の食器を繰って、目の前の料理を食べる。 『せっかくですから、味わって召し上がってくださいな』との王命を戴いては、騎士に抗う術はない。 一方、対面の女王は、満面の笑顔で食事をする騎士を見つめる。 眉も口も慈愛に満ちた笑顔を形作っていたが、その瞳だけは一切笑っていない。 それゆえに、騎士が受ける重圧は想像を絶するものがあった。 女王の内に眠る牝猫の獣性が、騎士の牡を圧倒しているのかもしれない。 もちろん、料理の味などわかるはずもない。 「どうです?シュヴァリエ?ダメ女王手ずから作った料理の味は?」 そこへ、休みなく降ってくる皮肉の棘の生えた催促の台詞。 ボディブロウのように、アンリエッタの言葉が才人のハートに鈍く響く。 独り言に近いものであったとはいえ、才人は目の前でアンリエッタを罵ったのだ。 当然、女王は酷くおかんむりであった。 「え?あ、はい、大変おいしゅうございます」 味のしない、野菜を挟んだ薄い焼肉を飲み込んで、才人は応える。 女王は瞳以外笑顔のまま、今度は目を細めて言った。 「…それは、隣のソースに浸けて頂くのですよ。湯に潜らせただけのお肉とお野菜がおいしいなんて、変わっておりますのね、シュヴァリエ」 アンリエッタの指摘のとおり、その料理の皿の隣にある銅製の小さな壷には、甘い香りの黄土色のソースが満たされている。 才人の背筋がぞくりと震える。 女王の瞳は、まさに獲物を目の前にした猫のそれだった。 才人はさしずめ壁際に追い詰められた窮鼠、といったところか。 しかし、窮鼠猫を噛むとのたとえもある。 まだ、手はあるはずだ。まだ何か──────。 「え、ええと。素材の味が生かされていておいしいって意味で」 「それって料理人の腕は関係ないってことですわよね」 にっこり。 こ、こえええええええええええ。 あまりにも穏やかなその言葉と怒りの篭った視線に、才人はいよいよ自分が嬲られているのだと悟る。 窮鼠どころか、もうすでに猫の口に咥えられているのである。 「ねえサイト様」 「は、はひ」 今まで『シュヴァリエ』と呼ばれていたのが急に名前になったことで、才人の恐怖が加速する。 思わず両手を膝の上に置き、背筋をぴんと伸ばしてしまう。 女王は優雅な仕草でテーブルを回り込み、硬直する才人の顎を、少し爪のとがった指でつまむ。 そして顔を上げさせ、自身の瞳を覗き込ませる。 「私に、女の悦びを刻み込んだのは、どこのどなたかしら?」 「え、あ、俺?」 目を点にして応える才人に、アンリエッタははしたなくテーブルに腰を載せ、その長い灰色の尻尾をゆらゆらと揺らす。 「そうですわね。最初は私から求めたとはいえ、悦びを覚えるまで私の女を嬲ったのはサイト様です」 「ちょ、ちょいまち、あのあと姫さま自分でいろいろしてきたじゃんか」 才人の反論に、女王はキスしそうなくらい顔を近づけ、さらに反論する。灰色の三角の耳が、ぴんぴん、と楽しそうに揺れる。 「…あなたに刻まれた最初の夜は、ずっと私を苛んだのです。昼な夜な、あの焼け爛れた棒で引き裂かれるような感覚を、私は反芻していたのですよ」 「まってそれって俺とは関係ないじゃんか」 「じゃあ戻して」 才人の頬を挟み込み、真剣な眼差しで才人の瞳を覗き込む。 「…え?」 「私の無垢を戻して。夜な夜な疼く、この身体を戻して。恥じらいも節度もあった、あの頃に戻して頂戴」 潤みきった目で、才人をそう非難する女王。それと同時に、牝猫の喉がころころと鳴り始めている。 「いや、その、無理ですってばそれ」 「なら、私のこと、もうダメ女王なんて呼ばないで。 あなたがこうしたのよ。私がダメなわけじゃないの。分かってる?」 じっと才人の瞳を見つめ、そう命令する女王。そのスカートの布の隙間から出ている尻尾からゆらゆらと揺れている。 「わ、わかりました、わかりましたから」 「嘘」 猫の瞳で、女王は才人の嘘を見抜いた。 そして、才人の唇に熱い吐息を吹きかけながら、囁いた。 「嘘だわ。きっとサイト様は私の事、心の奥でダメな女だと思ってるのよ」 「そんなダメだなんて思ってませんて、もう」 「本当に?」 「ほんとですって」 「ほんとうにぃ?」 「ほ・ん・と・うですって!」 あまりにもしつこい牝猫女王の追及に、半ば自棄気味にそう吼える才人。 アンリエッタは直前で放たれたその大音声にびっくりした顔になったが、すぐに元に戻ると。 「じゃあ、こんな事しても、ダメだなんて思わないんですね」 言うや否や、ドレスの胸元を勢い良くぐばぁ!と開くと、色も柔らかさもサイズも女王な胸を放り出した。 「え」 目の前で揺れる女王な肉鞠に一瞬で固まる才人の隙を見逃さず、アンリエッタは才人の股間のテントに手を掛け、ジッパーをずり下ろす。 「えいっ」 そしてそこからまろび出たテントの支柱を、染み一つない真っ白でまん丸な女王の胸で挟み込む。 「ちょ、なにして」 「こんなことしても、ダメ女王じゃないんですよね」 言いながら、ぐにぐにと両手で胸を挟み込み、間に挟まれた才人の肉棒を女王の圧力で押しつぶす。 「い、いやまって、なんでいきなりこんなっ」 「…私、サイト様が好きなの。この国と同じくらい、大好きなの」 肉棒を胸の谷間に挟んだまま、猫耳の女王は、真剣な顔で才人を見上げる。 今更何を、と才人は思ったが。 女王は続けた。 「サイト様とキスするのが好きなの。サイト様にぎゅうってされるのが好きなの。 …サイト様とえっちするのが、だいすきなの」 そして、胸の谷間でとろとろと半透明の液体を零す才人を、完全に発情した視線で見つめた。 ほう、と熱い溜息が先端にかかると、才人の喉からうっ、と声が漏れる。 そんな才人を見上げ、牝猫女王は淫らな声で己が騎士に尋ねる。 「こんな淫乱な女でも、ダメじゃないんですか…?」 「い、いやその…」 返答に窮する才人。 姫さま相当追い詰められてたんだな、と無駄に反省などしてみる。 だがしかし本当のところは、アンリエッタがこうなってしまった原因は、『アイシャの指輪』によって猫が混じった事により、抑えていたものが噴出してしまったからである。 むにむにと自分を刺激し続けるアンリエッタに、才人は辛うじて思いついた事を、投げかける。 「両立できるなら…ダメじゃないですよ」 「え…?」 「俺も、トリステインも。両方。 両方とも、面倒見切れるなら、あなたは立派な女王様ですよ」 アンリエッタはその言葉に、ふにゃん、と嬉しそうに笑う。 「はい、そうできるように尽力致します…。サイト様」 「言葉だけじゃダメですよ。ちゃんと実行しなきゃ」 「はい。勿論ですわ。だから…」 言ってアンリエッタは、才人の肉棒を胸の谷間から開放し、ざらざらの舌でその先端を舐めあげた。 「ちょ、まってうわっ!?」 その強すぎる刺激に、才人の堰はあっさりと崩れ去り、白濁がどぴゅどぴゅと容赦なくアンリエッタの顔に降り注ぐ。 「は、ふわ、いっぱい…」 飛び散る白濁を主に顔面に受けながら、幸せそうな笑顔で女王は淫靡に微笑む。 その頭で、灰色の猫耳がくたん、と倒れる。 そして嬉しそうに、ぴちゃぴちゃと飛び散った才人の精液を舐め上げる。 「い、いきなり舐めないでくれよ…出ちゃったじゃん」 「うふふ。勿体無いですね。確かに」 そう言う意味で言ったのではないのだが。 牝猫女王は才人の言葉に嬉しそうに微笑み、そして精液に塗れたまま、その柔らかい胸を晒したまま、才人の身体を這いずって昇っていく。 近寄ってくる牡と牝の混じった匂いのする女王に、才人の腰が思わず引ける。しかし狭い丸椅子の上では逃げ場はない。 アンリエッタは才人の胸板に完全に密着すると、その鼻先で、雄の匂いにまみれながら、言った。 「今度は…きちんと、やや子の部屋に」 そして腰を持ち上げ、才人の先端を己が肉の割れ目に押し当てて、ねだる。 「やや子の部屋に…サイト様のあっつぅい子種を…」 ぶちゅり。と滑った音を立て、アンリエッタの桃色の秘唇はあっさりと才人を飲み込み、ぐにゅりぐにゅりと襞を蠢かせて牡を奥へと導いていく。 「子種を…やや子の部屋を、子種で…いっぱい汚してくださいまし…」 その言葉に、才人はぎゅっとアンリエッタを抱きしめる。 抱きしめられてアンリエッタの子宮がぞる、と蠢き、ぱっくりと肉の顎を開いて才人の先端を咥えこむ。 完全に密着する性器と性器。 しかし、このままでは。 「サイト様…こ、このままでは動けません…は、放して…」 「だめ。今日は姫さまを放さない」 才人は反論し、さらにきつくアンリエッタを抱きしめる。 あまりの愛しさに、才人はアンリエッタを離したくなかった。 それに、猫になったせいか、アンリエッタの身体はいつもよりずっと柔らかく、こうして抱いているだけでとんでもなく心地よい。 才人は腰を回すように動かし、続けた。 「前、宿で、したみたいにさ。中、動かして、みせてよっ」 回転刺激だけでも十分感じていたアンリエッタだったが、才人の言葉にその時の事を思い出す。 膣肉で才人をくわえ込み、腰肉を動かして、子宮口で才人を犯したあの日の事。 「わ、分かりました…んっ…こ、こうですね…」 才人の腰の回転に合わせ、アンリエッタも同じように腰を回して。 膣道に感じる牡の温度を、手でしごくかのようにイメージしながら、膣肉を蠢かせる。 ぐにぐにと凶悪な螺旋を描き、アンリエッタの膣はまるでコルクの栓のようにがっちりと咥え込まれた才人を刺激する。 「そ、そう、いいよ、きもちいいよ姫さま…っ」 「や、いや、姫さま、なんて、言わないでっ、おね、おねがいっ、なまえでっ、名前で呼んでぇっ、名前でっ、呼んでくださいましぃっ!」 上半身をぐにぐにと才人に押し当て、下半身でぎゅりぎゅりと才人を拷問具のように締め上げ、アンリエッタは艶やかに啼く。 耳がぴんと天上を向き、尻尾がうねうねと淫らにくねる。 才人はそんなアンリエッタの尻肉を掴み、尻の谷間を大きく開きながら、応えた。 「アンリエッタ、アンリエッタ、アンリエッタっ!」 熱に浮かされたように女王の名を呼ぶ才人。 限界が近いのか、その腰の回転が速くなる。 「サイトさまぁ、サイトさまぁ、サイトさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 ぶるぶると震え、愛する騎士の名を連呼しながら、最後の力を振り絞ってアンリエッタは腰の回転と膣肉の動きで最大の螺旋を描く。 ぎゅりりりり、と膣道が絞られ、牡に快楽を与えるためだけに存在する肉襞が、肉の牙となって才人の肉棒に食い込む。 最奥では子宮口が捲れ上がり、まるで唇のように才人の亀頭に口付けをする。 その瞬間。 どぷどぷどぷどぷどぷ…。 アンリエッタが望んだとおり、彼女の子宮は才人の吐き出した牡の欲望で、徹底的に陵辱された。 「は、ふわ、いっぱいぃ…」 ほわん、と蕩けた目で、女王はくったりと騎士の肉椅子の上にしなだれかかった。 「うふ。なんだか玉座に掛けているよう」 アンリエッタは才人の上でご満悦だった。 ドレスは才人の精液に汚されてしまったので、脱いで部屋の隅へ。 今は、裸の上に『アン』の着ていた上着だけを羽織っていた。 もちろん丈はそこまで長くないので、真っ白な上着の裾からは、同じように白い、尻尾の生えた下半身が丸見えだった。 そんな格好で、アンリエッタは椅子に掛けさせた才人の上にいた。 玉座と化した才人は、膝の上でそんな格好をしている女王に、再び牡を滾らせていた。 さすがにガマンきかなくなりそうなので、才人は言った。 「あ、あのさ、どいてくんないかなあ」 「嫌です」 あっさり否定された。 「こんなに元気にしておいて、どいてくれもないものですわ」 言いながら、自分の脚と脚の間でぴんと立つ、牡をちょん、とつつく。 「わ」 「それに…せかっく作った手料理なんですもの。サイトさまに、食べさせてあげます」 言ってアンリエッタは。 先ほどの、薄い肉に野菜を挟んだ料理を指につまんでソースに浸け、そして振り向いて。 「はい、あ〜ん」 言って肉を口許に持っていき、咥えて。 才人の口許に持っていく。 「はひ、ろうろ」 才人はそれを半ば自棄気味に口で受け取る。 もぐもぐと咀嚼したのを確認すると、アンリエッタは言った。 「お食事とったら…またしましょ」 言って、元気になっている才人をきゅ、と握る。 「わ、わかりましたよ…全く、姫さまにはかないません」 「うふふ。当然ですわ。これでもこの国の王ですよ」 才人はその言葉に思わず、心の中で 『ダメだこの女王…早くなんとかしないと』 と思ってしまう。 「…あ、今『ダメ女王』って思った」 「え。い!思ってません!思ってませんよ!」 「うーそ。言い訳してもわかるんだから」 「な、なんで分かるの!姫さまなんか魔法使った!?」 「いーえ。でも、自分の騎士の考えていることくらい分からなくては、王失格ですもの」 そして、このどうしようもない淫乱ダメ女王は淫靡に、典雅に、あくまで優しく、微笑んだ。 「それと、名前で呼べといいましたわよね? 全く、王の命令を聞かないなんてどうしようもないダメ騎士ね。ダメ犬騎士だわ」 「ちょ、それって論点のすりか」 しかし反論しようとする才人の口は、アンリエッタの人差し指で封じられた。 「うふ。もう二度と人の事ダメって思えないように…」 そう言って、才人の肉棒を再び飲み込み、膣肉でぎゅり、と締め上げる。 喘ぎ声を上げる才人に、アンリエッタは続けた。 「同じくらい、ダメにしてあげる。この、ダメ犬モグラ騎士♪」 そして今度は、遠慮なく上下にも腰を使い始めた。 結局才人が開放されるのは、アンリエッタから完全に『猫』の抜けた、次の日の昼のころであったという。〜fin
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