ゼロの使い魔保管庫
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目が醒めた時 せんたいさん #br 目が醒める。 癖で、まず自分の置かれている状況を確認する。 ここは?トリステイン魔法学院女子寮の私の部屋。そのベッドの上。 どういう状況?起きたばかり。隣には…裸のサイト。私も、裸。 …昨日、『呼び方を間違えたお仕置き』と称して、いっぱい我侭を聞いてもらった。 大好きなだっこを昼までしてもらって。 お昼ごはんを一緒に食べた後、一緒に図書館に本を返しに行った。 そのあと部屋に戻って。お尻禁止を言い渡してから、抱いてもらった。 キスをいっぱいして、と言ったらいう事を聞いてくれた。 でも…そのうち…私がガマンできなくなって…。 だって、サイトがいっぱいいじるから…ダメって言ったのにいじるから…。 お尻で、おねだりしてしまった。 …恥ずかしいのに、勝手に口が動いておねだりしてしまった。 …もう、私には貴族のプライドも、女の子としての恥じらいもないのかもしれない。 私に腕枕をしながら、目の前で眠る、私をこんなことにしてしまった犯人を睨みつける。 …ばか。最低の屑。浮気者。鈍感のニブチン。 彼に対する不満を心の中でぶちまける。 でも。 どろり、と私の中で、溜め込まれた彼が動いた。 そのせいで…私の心は、しあわせで一杯になってしまう。 …これは、もうどうしようもないのかもしれない。 愛する人の分身を体の内に注がれると、私の心は折れてしまう。 なんでも許してしまう。世界中の何もかもがどうでもよくなってしまう。この温かい迸りさえあれば、何もいらないとすら思えてしまう。 『人を殺すのは剣でも魔法でもない。愛される事で人は死ぬ』 いつか読んだ哲学書にはそんな事が書いてあった。 昔の私はそんなことはありえない、と想っていた。 でも今は違う。 私はサイトに愛されて、初めてもう死んでもいい、と思った。 この瞬間に生が終わるなら、なんて幸せなんだろうとすら思う。 これが、愛に殺されると言うことなんだと、思い知らされた。 昔の私は死を覚悟していたつもりでしかなかったと、その瞬間に思い知った。 世界中の何もかもが、自分ですら、どうでもよくなるような幸せが存在するなんて、思いもよらなかった。 …でもそんな事言ったら、きっと彼は怒る。 未来にはもっと幸せがあるとかそんなことを言って、怒るだろう。 …分かってる、言われなくてもそんなこと。 私はそっと、いつもの夢想をする。 卵のない私の胎内でゆらめく、彼の子種を感じながら。 才人が目を醒ますと、右腕の腕枕の上で、タバサが柔らかく微笑んで自分の寝顔を覗いていた。 眼鏡をかけているので、随分先に目覚めたのだろう。 「…おはよう、サイト」 タバサは幸せそうな微笑でそう言って、才人の腕枕から起き上がる。 「…おはよ。シャルロット。寝顔覗いてただろ」 ちょっと不機嫌にそういう才人に、ベッドを降りながら青い髪の小さな少女は言った。 「…ちょっとだけ。可愛かった」 くす、と笑って、円卓の上に重ねられた服を着込みだす。 まあ見られて減るものでもないしな、と才人は思い、会話を続けることにした。 「…あのなあ。 まあいいや。今どんくらいだ?」 日差しは既に地平線をはるか過ぎている。朝食には遅く、昼食には少し早いといった時間だろう。 「お昼前。…お腹すいてる?」 二人は実質朝食抜きである。着替え終わったタバサにそんな事を言われると、才人は急に小腹がすいてくるのだった。 「…すいた。なんかあるの?」 「待ってて」 それだけ言ってタバサは、マントも羽織らず杖も持たず、部屋の外へ出て行った。 北花壇騎士だった昔の彼女からは、考えられない行動だった。 タバサが向かったのは、もちろん厨房。 大好きな才人に、朝ごはんを作るためだ。 こんな時のために、何度も料理の本を熟読しているのである。 厨房の裏口から入ると、丁度朝食の片付けが終わった所だった。 料理長のマルトーに事情を話すと、彼は快くコンロの一つを貸してくれた。 『寝坊した友達に朝食を作っていこうなんざ、見上げた心構えだねえ』などと言っていた。 少し嘘をついたが、まあこのくらいは許容範囲だろう。 タバサは卵を四個ほどもらうと、手早くかき混ぜ、フライパンで炒める。 最初はスクランブルエッグのつもりだったが、思いのほか綺麗に丸く焼けてきたので、オムレツにすることにした。 しかし結局失敗し、中途半端な崩れた平たい卵焼きになってしまう。 眉をへの字にしながら、タバサは捨てるのももったいないし、才人が待っているので、それを持っていくことにした。 「…ごめんなさい」 軽く失敗したオムレツをテーブルに出しながら、タバサはしゅんとなっていた。 才人はそんな彼女を気にも留めず、オムレツをつまむ。 「大丈夫、旨いって」 飲み込んでそう言う才人に、しかしタバサは。 「…今度は、失敗しないから」 そう言って決意を新たにし、才人の対面に腰掛ける。 そして、その鼻先ににゅ、とフォークに刺されたオムレツのきれっぱしが差し出される。 才人だった。 「はい、あーん」 「じ、自分で食べれる…」 しかし才人は困った顔のタバサに向けて、さらにオムレツを近づける。 「はい、あーん」 聞く気のない才人に、タバサは折れる。 大人しく口を開き、フォークの先に載ったオムレツを頬張る。 確かに、味は悪くない。 「このまま頑張れば、いいお嫁さんになれるな、シャルロット」 何の気なしに才人の放ったその言葉を聞いた瞬間、タバサの顔がぼん!と火を吹く。 お嫁さん。 それは、今の彼女が唯一持っている夢。 ガリアもトリステインも、ハルケギニアもどうでもいい。 タバサは、才人のお嫁さんになれれば、他になにもいらない、と思っていた。 でも、そのためには。 料理もできなきゃだし掃除もそうだしお裁縫もだし家計の管理もだしもちろんお洗濯も。 でもソレより何よりも。 サイトの、赤ちゃんを、産めなきゃダメ。 今のタバサにはそれができない。 生理は勿論来ているので身体的な問題はない。 あるのは、社会的問題。 タバサは仮にもガリアの王族である。そんな自分が身ごもれば、間違いなくその子供に累が及ぶ。 もちろん、才人にも影響を及ぼすだろう。 私一人の我侭で、サイトを、その子を不幸にはできない。 だから、タバサは全ての条件が揃うまで…。 全てのしがらみを捨て自由になるか、全てを手に入れ王になるか…。 それまで、才人の子を孕むつもりはなかった。 目の前で失敗したオムレツを旨そうにほおばる才人を見つめ、タバサは思った。 …いつか絶対、アナタの子供を孕ませてね。 それまで、完璧なお嫁さんになれるように、勉強をしなくては。 ガリアの王女が決意を新たにしていると、扉が突然開いて、仇敵が姿を現す。 「みつけたわよぉぉぉぉぉぉぉヴァカ犬ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 マントを羽織り、大きな杖を手にして、完全な臨戦態勢でタバサは。 未来の夫を守るべく、立ち上がる。 「私の夫を犬呼ばわりしないで」 「誰が夫だこのロリメガネえええええええええええええ!」 そして今日も。 トリステイン魔法学院に、虚無の花が咲く。〜fin #br
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目が醒めた時 せんたいさん #br 目が醒める。 癖で、まず自分の置かれている状況を確認する。 ここは?トリステイン魔法学院女子寮の私の部屋。そのベッドの上。 どういう状況?起きたばかり。隣には…裸のサイト。私も、裸。 …昨日、『呼び方を間違えたお仕置き』と称して、いっぱい我侭を聞いてもらった。 大好きなだっこを昼までしてもらって。 お昼ごはんを一緒に食べた後、一緒に図書館に本を返しに行った。 そのあと部屋に戻って。お尻禁止を言い渡してから、抱いてもらった。 キスをいっぱいして、と言ったらいう事を聞いてくれた。 でも…そのうち…私がガマンできなくなって…。 だって、サイトがいっぱいいじるから…ダメって言ったのにいじるから…。 お尻で、おねだりしてしまった。 …恥ずかしいのに、勝手に口が動いておねだりしてしまった。 …もう、私には貴族のプライドも、女の子としての恥じらいもないのかもしれない。 私に腕枕をしながら、目の前で眠る、私をこんなことにしてしまった犯人を睨みつける。 …ばか。最低の屑。浮気者。鈍感のニブチン。 彼に対する不満を心の中でぶちまける。 でも。 どろり、と私の中で、溜め込まれた彼が動いた。 そのせいで…私の心は、しあわせで一杯になってしまう。 …これは、もうどうしようもないのかもしれない。 愛する人の分身を体の内に注がれると、私の心は折れてしまう。 なんでも許してしまう。世界中の何もかもがどうでもよくなってしまう。この温かい迸りさえあれば、何もいらないとすら思えてしまう。 『人を殺すのは剣でも魔法でもない。愛される事で人は死ぬ』 いつか読んだ哲学書にはそんな事が書いてあった。 昔の私はそんなことはありえない、と想っていた。 でも今は違う。 私はサイトに愛されて、初めてもう死んでもいい、と思った。 この瞬間に生が終わるなら、なんて幸せなんだろうとすら思う。 これが、愛に殺されると言うことなんだと、思い知らされた。 昔の私は死を覚悟していたつもりでしかなかったと、その瞬間に思い知った。 世界中の何もかもが、自分ですら、どうでもよくなるような幸せが存在するなんて、思いもよらなかった。 …でもそんな事言ったら、きっと彼は怒る。 未来にはもっと幸せがあるとかそんなことを言って、怒るだろう。 …分かってる、言われなくてもそんなこと。 私はそっと、いつもの夢想をする。 卵のない私の胎内でゆらめく、彼の子種を感じながら。 才人が目を醒ますと、右腕の腕枕の上で、タバサが柔らかく微笑んで自分の寝顔を覗いていた。 眼鏡をかけているので、随分先に目覚めたのだろう。 「…おはよう、サイト」 タバサは幸せそうな微笑でそう言って、才人の腕枕から起き上がる。 「…おはよ。シャルロット。寝顔覗いてただろ」 ちょっと不機嫌にそういう才人に、ベッドを降りながら青い髪の小さな少女は言った。 「…ちょっとだけ。可愛かった」 くす、と笑って、円卓の上に重ねられた服を着込みだす。 まあ見られて減るものでもないしな、と才人は思い、会話を続けることにした。 「…あのなあ。 まあいいや。今どんくらいだ?」 日差しは既に地平線をはるか過ぎている。朝食には遅く、昼食には少し早いといった時間だろう。 「お昼前。…お腹すいてる?」 二人は実質朝食抜きである。着替え終わったタバサにそんな事を言われると、才人は急に小腹がすいてくるのだった。 「…すいた。なんかあるの?」 「待ってて」 それだけ言ってタバサは、マントも羽織らず杖も持たず、部屋の外へ出て行った。 北花壇騎士だった昔の彼女からは、考えられない行動だった。 タバサが向かったのは、もちろん厨房。 大好きな才人に、朝ごはんを作るためだ。 こんな時のために、何度も料理の本を熟読しているのである。 厨房の裏口から入ると、丁度朝食の片付けが終わった所だった。 料理長のマルトーに事情を話すと、彼は快くコンロの一つを貸してくれた。 『寝坊した友達に朝食を作っていこうなんざ、見上げた心構えだねえ』などと言っていた。 少し嘘をついたが、まあこのくらいは許容範囲だろう。 タバサは卵を四個ほどもらうと、手早くかき混ぜ、フライパンで炒める。 最初はスクランブルエッグのつもりだったが、思いのほか綺麗に丸く焼けてきたので、オムレツにすることにした。 しかし結局失敗し、中途半端な崩れた平たい卵焼きになってしまう。 眉をへの字にしながら、タバサは捨てるのももったいないし、才人が待っているので、それを持っていくことにした。 「…ごめんなさい」 軽く失敗したオムレツをテーブルに出しながら、タバサはしゅんとなっていた。 才人はそんな彼女を気にも留めず、オムレツをつまむ。 「大丈夫、旨いって」 飲み込んでそう言う才人に、しかしタバサは。 「…今度は、失敗しないから」 そう言って決意を新たにし、才人の対面に腰掛ける。 そして、その鼻先ににゅ、とフォークに刺されたオムレツのきれっぱしが差し出される。 才人だった。 「はい、あーん」 「じ、自分で食べれる…」 しかし才人は困った顔のタバサに向けて、さらにオムレツを近づける。 「はい、あーん」 聞く気のない才人に、タバサは折れる。 大人しく口を開き、フォークの先に載ったオムレツを頬張る。 確かに、味は悪くない。 「このまま頑張れば、いいお嫁さんになれるな、シャルロット」 何の気なしに才人の放ったその言葉を聞いた瞬間、タバサの顔がぼん!と火を吹く。 お嫁さん。 それは、今の彼女が唯一持っている夢。 ガリアもトリステインも、ハルケギニアもどうでもいい。 タバサは、才人のお嫁さんになれれば、他になにもいらない、と思っていた。 でも、そのためには。 料理もできなきゃだし掃除もそうだしお裁縫もだし家計の管理もだしもちろんお洗濯も。 でもソレより何よりも。 サイトの、赤ちゃんを、産めなきゃダメ。 今のタバサにはそれができない。 生理は勿論来ているので身体的な問題はない。 あるのは、社会的問題。 タバサは仮にもガリアの王族である。そんな自分が身ごもれば、間違いなくその子供に累が及ぶ。 もちろん、才人にも影響を及ぼすだろう。 私一人の我侭で、サイトを、その子を不幸にはできない。 だから、タバサは全ての条件が揃うまで…。 全てのしがらみを捨て自由になるか、全てを手に入れ王になるか…。 それまで、才人の子を孕むつもりはなかった。 目の前で失敗したオムレツを旨そうにほおばる才人を見つめ、タバサは思った。 …いつか絶対、アナタの子供を孕ませてね。 それまで、完璧なお嫁さんになれるように、勉強をしなくては。 ガリアの王女が決意を新たにしていると、扉が突然開いて、仇敵が姿を現す。 「みつけたわよぉぉぉぉぉぉぉヴァカ犬ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 マントを羽織り、大きな杖を手にして、完全な臨戦態勢でタバサは。 未来の夫を守るべく、立ち上がる。 「私の夫を犬呼ばわりしないで」 「誰が夫だこのロリメガネえええええええええええええ!」 そして今日も。 トリステイン魔法学院に、虚無の花が咲く。〜fin #br
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