ゼロの使い魔保管庫
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「シエスタ、なにそれ?」 ド・オルニエールのお屋敷のある一室。いつものように才人とルイズが他愛もないお喋りをしていると、シエスタが見慣れない髪飾りを着けて入ってきた。 「これですか?これは、シロチュメの髪飾りです。このハート型の葉っぱがシロチュメっていうんです。昔、タルブでこれで冠作って遊んでたのを思い出して、つい懐かしくなっちゃいまして。てへ」 雑草をを頭に着けて、真顔でてへ、なんて言うシエスタに思わず才人は吹き出しかけた。 というか、ハートの葉っぱ?どこかで見たような……才人は首を傾げた。 「なにそれ、ハート型の葉っぱなんてあるの?ちょっと見せてみなさいよ」 「あ、ちょっと引っ張らないで下さいよミス」 シエスタが頭をベッドに座っているルイズの目線にまで下げた。それで、隣に座っていた才人にも髪飾りの全容が見える。 緑のハート型の葉っぱが三枚丸くなるようにくっついている。そう、春とか夏に草原で大量に生えてるあれ。クローバーだった。 「シエスタ、それ、俺の世界ではクローバーって名前なんだよ」 「へえ、サイトさんの世界にもこの葉っぱあるんですか!」 「うん、懐かしいなー……」 昔、幼なじみの女の子と一緒に作ったなー、なんか無理矢理冠を被せられて、女装とかさせられたなー、あの時は公園のトイレで泣いたっけなー、とか才人が遠い昔の黒歴史に近い思い出にふけっていると、その女の子の言葉を思い出した。クローバーには特別ななんとかがあるとか……。 「俺の世界ではさ、葉っぱが四枚ある四つ葉のクローバーってのもあるんだ。こっちにもある?」 「さあ、知らないわ」 「どうでしょう……私は見たことないですね」 「そっか。ま、俺の世界でも珍しいし、仕方ないか」 そう言って、才人は頭の後ろで手を組んでベッドに身体を倒した。それが少し落ち込んでいるように見えて、ルイズは悲しくなった。 ティファニアの忘却がかかってから、才人はルイズの前でも故郷に思いをはせることが増えた。そんなときの、どこか遠くを寂しげに見つめる目を見ると、どうしようもなく悲しかった。そして、そんな目をさせているのは自分のせいだと思うと、胸がギュッと締め付けられるのだ。 ルイズは、そんな才人になにかしてやれないかと思った。すぐ思い付いた。 「サイト、ちょっと出掛けてくるわ」 「え、なんだよいきなり。用意するからちょっと待てよ」 「いいわ、サイトは留守番してて」 ルイズは怪訝そうな顔で見つめる才人とシエスタを残し、屋敷を出た。出たとたん、ダッシュで草原まで行った。そして固まった。 勢いで出てきたけど、無理でしょ。見つからないでしょ。こんなの、辺り一面草しかないじゃない。四つ葉どころか三つ葉も見つからないわよ。 早くも諦めようかと迷いだしたルイズの頭に、嬉しそうな才人の笑顔が浮かんだ。 「そうよ、何怖じけづいてんのかしら私ったら。珍しい?それが何よ。私はルイズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。そう、ヴァリエール家の三女なのよ。見つけられない訳がないじゃない」 今はそんなことは全然関係ないのだが、ぶつぶつ呟いてるうちによくわからない熱意がわいてきた。ルイズは燃えていた。 「草の根分けてでも探しだしてやるわ! 見てなさい!」 その後のルイズの様子は一言、鬼の様だったとだけ記しておく。 「ちょっと出掛けるって言って、何時間出掛けるつもりだよ」 夕方、才人はなかなか帰ってこないルイズを探していた。出ていったのは昼過ぎなのに、もう日が沈もうとしている。馬が繋いであるので遠くには行ってないはずだと踏んで、屋敷の近くを回っていた。 「ルイズーどこだー?寝てんのかー?」 少し背の高い草がしげるところに入る。ここは昼寝には最適で、時々お弁当を食べたりしている。 何度か見た場所だが、向こうの方が明らかにいつもと違っていた。 「なんか草が抜かれて土がぼこぼこしてるんだけど……何があったんだよ……」 そこは荒れ地のようにぐちゃぐちゃになっていた。見通しがよくなったそこに、ルイズはいた。 「なにやってんだよ」 ルイズはドロドロだった。泥んこ遊びをした子供のように汚れて寝転んでいるご主人様に才人は呆れた。 「……うるさいわね、なんでもいいじゃない」 「いやいや、いきなり飛び出して行って泥んこ遊びって…いつから俺のご主人様は幼児になったんですか」 ルイズはなにも答えずに右手を才人に突き出した。 「え、なに?」 「……四つ葉のクローバー」 なるほど、ルイズの手には、少し萎れてはいるものの、四つ葉のクローバーが握られている。 「え、お前、もしかしてこれを探してこんなドロドロに?」 「なによ、悪い?サイトの故郷にもあるものなんでしょ。わざわざご主人様が見つけてあげたんだから感謝しなさいよ」 ルイズ、俺のために……。 才人は激しく感動した。汚れているのも気にせず、ルイズを抱き締めた。 「ルイズ、ありがとう」 「ふ、ふん、少しは寂しさも紛れるかな、って思っただけよ」 頬を軽く染めてそっぽを向くルイズは、泥で汚れていても、すごく可愛かった。だが、才人はそれより、ルイズの言葉が気になった。 「寂しい?俺が?」 「え、あんた、さっき落ち込んでたじゃない。違うの?」 「違うよ。クローバーには特に嬉しい思い出なんかないしネ……」 才人は生暖かい目で遠くを見つめていた。なんか目が潤んでいた。 「じゃあなんで落ち込んでたのよ」 ルイズは自分がしたことが無駄なことだったのでは、と思い、語気が荒くなった。才人は無言でクローバーを受けとると、茎の部分でわっかを作った。 「なにそれ?てか答えなさいよ」 「いいから、ちょっと左手出してみ」 ルイズは言われた通り手を出す。すると、才人はルイズの手をとり、クローバーのわっかの部分を薬指にはめた。 予想外のことにルイズは目を見開いて才人を見る。才人は少し顔を赤らめて、頬を掻いた。 「四つ葉のクローバーは幸せの四つ葉のクローバーって言われてて、見つけたらいいことあるって言われてるんだ。だから、ルイズにあげようと思ってさ」 「な、ななな、なんで指輪なのよ。し、しし、しかも薬指って…」 ルイズが真っ赤な顔で俯く。 「よ、予約」 才人もルイズから目をそらす。 よ、予約ってそれ、プロポーズじゃないの、なに使い魔の癖に主人にプロポーズしちゃってんのかしら、ほんとに、ふんとに、なんてルイズは思ったが、実際は聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、「そ、そう……」と言うのが精一杯だった。 「じゃ、じゃあ、暗くなってきたし屋敷に戻ろうか!」 気恥ずかしさに耐えられなくなった才人はくるっと後ろを向いた。しかし、ルイズが袖をぐいっと引っ張って無理やり後ろを向かせる。 「なにす、んむっ」 才人はルイズからの不意討ちのキスに一瞬目を大きく開いた。だが、すぐに閉じて更に唇を押し付け返す。 「あ、あのね、これはお礼なんだからね」 ルイズは顔を真っ赤にして言うが、瞳は潤んでいて、全く迫力がない。 「はいはい、わかってますよご主人様」 ニヤニヤ笑いながら、今度は才人から唇をくっつける。 絶対わかってない、とルイズは思ったが、たまにはいいかと思い直し才人の首に腕を回した。 終わり
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「シエスタ、なにそれ?」 ド・オルニエールのお屋敷のある一室。いつものように才人とルイズが他愛もないお喋りをしていると、シエスタが見慣れない髪飾りを着けて入ってきた。 「これですか?これは、シロチュメの髪飾りです。このハート型の葉っぱがシロチュメっていうんです。昔、タルブでこれで冠作って遊んでたのを思い出して、つい懐かしくなっちゃいまして。てへ」 雑草をを頭に着けて、真顔でてへ、なんて言うシエスタに思わず才人は吹き出しかけた。 というか、ハートの葉っぱ?どこかで見たような……才人は首を傾げた。 「なにそれ、ハート型の葉っぱなんてあるの?ちょっと見せてみなさいよ」 「あ、ちょっと引っ張らないで下さいよミス」 シエスタが頭をベッドに座っているルイズの目線にまで下げた。それで、隣に座っていた才人にも髪飾りの全容が見える。 緑のハート型の葉っぱが三枚丸くなるようにくっついている。そう、春とか夏に草原で大量に生えてるあれ。クローバーだった。 「シエスタ、それ、俺の世界ではクローバーって名前なんだよ」 「へえ、サイトさんの世界にもこの葉っぱあるんですか!」 「うん、懐かしいなー……」 昔、幼なじみの女の子と一緒に作ったなー、なんか無理矢理冠を被せられて、女装とかさせられたなー、あの時は公園のトイレで泣いたっけなー、とか才人が遠い昔の黒歴史に近い思い出にふけっていると、その女の子の言葉を思い出した。クローバーには特別ななんとかがあるとか……。 「俺の世界ではさ、葉っぱが四枚ある四つ葉のクローバーってのもあるんだ。こっちにもある?」 「さあ、知らないわ」 「どうでしょう……私は見たことないですね」 「そっか。ま、俺の世界でも珍しいし、仕方ないか」 そう言って、才人は頭の後ろで手を組んでベッドに身体を倒した。それが少し落ち込んでいるように見えて、ルイズは悲しくなった。 ティファニアの忘却がかかってから、才人はルイズの前でも故郷に思いをはせることが増えた。そんなときの、どこか遠くを寂しげに見つめる目を見ると、どうしようもなく悲しかった。そして、そんな目をさせているのは自分のせいだと思うと、胸がギュッと締め付けられるのだ。 ルイズは、そんな才人になにかしてやれないかと思った。すぐ思い付いた。 「サイト、ちょっと出掛けてくるわ」 「え、なんだよいきなり。用意するからちょっと待てよ」 「いいわ、サイトは留守番してて」 ルイズは怪訝そうな顔で見つめる才人とシエスタを残し、屋敷を出た。出たとたん、ダッシュで草原まで行った。そして固まった。 勢いで出てきたけど、無理でしょ。見つからないでしょ。こんなの、辺り一面草しかないじゃない。四つ葉どころか三つ葉も見つからないわよ。 早くも諦めようかと迷いだしたルイズの頭に、嬉しそうな才人の笑顔が浮かんだ。 「そうよ、何怖じけづいてんのかしら私ったら。珍しい?それが何よ。私はルイズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。そう、ヴァリエール家の三女なのよ。見つけられない訳がないじゃない」 今はそんなことは全然関係ないのだが、ぶつぶつ呟いてるうちによくわからない熱意がわいてきた。ルイズは燃えていた。 「草の根分けてでも探しだしてやるわ! 見てなさい!」 その後のルイズの様子は一言、鬼の様だったとだけ記しておく。 「ちょっと出掛けるって言って、何時間出掛けるつもりだよ」 夕方、才人はなかなか帰ってこないルイズを探していた。出ていったのは昼過ぎなのに、もう日が沈もうとしている。馬が繋いであるので遠くには行ってないはずだと踏んで、屋敷の近くを回っていた。 「ルイズーどこだー?寝てんのかー?」 少し背の高い草がしげるところに入る。ここは昼寝には最適で、時々お弁当を食べたりしている。 何度か見た場所だが、向こうの方が明らかにいつもと違っていた。 「なんか草が抜かれて土がぼこぼこしてるんだけど……何があったんだよ……」 そこは荒れ地のようにぐちゃぐちゃになっていた。見通しがよくなったそこに、ルイズはいた。 「なにやってんだよ」 ルイズはドロドロだった。泥んこ遊びをした子供のように汚れて寝転んでいるご主人様に才人は呆れた。 「……うるさいわね、なんでもいいじゃない」 「いやいや、いきなり飛び出して行って泥んこ遊びって…いつから俺のご主人様は幼児になったんですか」 ルイズはなにも答えずに右手を才人に突き出した。 「え、なに?」 「……四つ葉のクローバー」 なるほど、ルイズの手には、少し萎れてはいるものの、四つ葉のクローバーが握られている。 「え、お前、もしかしてこれを探してこんなドロドロに?」 「なによ、悪い?サイトの故郷にもあるものなんでしょ。わざわざご主人様が見つけてあげたんだから感謝しなさいよ」 ルイズ、俺のために……。 才人は激しく感動した。汚れているのも気にせず、ルイズを抱き締めた。 「ルイズ、ありがとう」 「ふ、ふん、少しは寂しさも紛れるかな、って思っただけよ」 頬を軽く染めてそっぽを向くルイズは、泥で汚れていても、すごく可愛かった。だが、才人はそれより、ルイズの言葉が気になった。 「寂しい?俺が?」 「え、あんた、さっき落ち込んでたじゃない。違うの?」 「違うよ。クローバーには特に嬉しい思い出なんかないしネ……」 才人は生暖かい目で遠くを見つめていた。なんか目が潤んでいた。 「じゃあなんで落ち込んでたのよ」 ルイズは自分がしたことが無駄なことだったのでは、と思い、語気が荒くなった。才人は無言でクローバーを受けとると、茎の部分でわっかを作った。 「なにそれ?てか答えなさいよ」 「いいから、ちょっと左手出してみ」 ルイズは言われた通り手を出す。すると、才人はルイズの手をとり、クローバーのわっかの部分を薬指にはめた。 予想外のことにルイズは目を見開いて才人を見る。才人は少し顔を赤らめて、頬を掻いた。 「四つ葉のクローバーは幸せの四つ葉のクローバーって言われてて、見つけたらいいことあるって言われてるんだ。だから、ルイズにあげようと思ってさ」 「な、ななな、なんで指輪なのよ。し、しし、しかも薬指って…」 ルイズが真っ赤な顔で俯く。 「よ、予約」 才人もルイズから目をそらす。 よ、予約ってそれ、プロポーズじゃないの、なに使い魔の癖に主人にプロポーズしちゃってんのかしら、ほんとに、ふんとに、なんてルイズは思ったが、実際は聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、「そ、そう……」と言うのが精一杯だった。 「じゃ、じゃあ、暗くなってきたし屋敷に戻ろうか!」 気恥ずかしさに耐えられなくなった才人はくるっと後ろを向いた。しかし、ルイズが袖をぐいっと引っ張って無理やり後ろを向かせる。 「なにす、んむっ」 才人はルイズからの不意討ちのキスに一瞬目を大きく開いた。だが、すぐに閉じて更に唇を押し付け返す。 「あ、あのね、これはお礼なんだからね」 ルイズは顔を真っ赤にして言うが、瞳は潤んでいて、全く迫力がない。 「はいはい、わかってますよご主人様」 ニヤニヤ笑いながら、今度は才人から唇をくっつける。 絶対わかってない、とルイズは思ったが、たまにはいいかと思い直し才人の首に腕を回した。 終わり
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