ゼロの使い魔保管庫
[
トップ
] [
新規
|
一覧
|
単語検索
|
最終更新
|
ヘルプ
]
開始行:
117 名前:1/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:52:24 ID:3...
しまったな……サイトは困り果てていた。
「サイト……お話して?」
どこか印象が幼く感じるようになったタバサに、気まぐれで...
「始めて聞く」
それはそうだろう。
聞いたことある方がびっくりだ。
タバサの驚く顔が面白くて、サイトはついつい頑張った。
うろ覚えのシンデレラは姉の数が少なかったし、
一寸法師におじいさんは出ない。
メーテルリンクの青い鳥に至ってはオチしか覚えていなかっ...
それでも……
「すごい……すごい、もっと……もっとお話して」
いつも無表情だと思っていたタバサの、子供の様な笑顔にサ...
……が、限界は結構直ぐに来た。
「ごめん……タバサ……ん〜、これ以上は思い出せないな」
「お話……おしまい?」
ね、捏造するか? 一瞬だけ悩むが、話を作るのに自信の無...
「ごめんな……」
タバサの残念そうな顔に、悪い事をしたかのような罪悪感が...
ペットのエサを買い忘れたまま帰宅したのに、
当のペットは『待ってました〜』と、玄関先で迎えてくれた...
「……ご、ごめん……本当に、悪い」
サイトは一切悪くないのだが、怒られるのならルイズで慣れ...
しょんぼりする女の子には勝てなかった。
岩よりも重い沈黙にサイトが逃げ出す寸前、
今にも泣き出しそうな顔でサイトの足元を見ていたタバサが...
「……じゃ、じゃあ……ね」
「お、おう」
「も、もう一度……一度聞いたお話でいいから……」
ここで喜んで了解したのが間違いの元だった。
「あのね、今のお話……もう一度」
「じゃあ……前の前のお話……ダメ?」
実は既に俺より覚えてないか?
サイトがそんな疑いを覚えても、話を止めようとする度に……
「……おしまい?」
サイトの目には、へちゃりとつぶれた犬耳と、きゅーんとう...
「……あー、もうちょっとだけな?」
「うん♪」
いつの間にかサイトの膝の上で『おはなし』を楽しむタバサ。
サイトは目じりを下げながら、タバサを楽しませることに集...
――――三日後、ルイズがグレた。
118 名前:2/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:52:57 ID:3...
「ろーなってんにょよー」
「ル、ルイズ、落ち着きなさいって、昼間っからお酒なんてっ」
仮にもガリア王からの逃避行の最中。
モンモランシーはルイズの豪胆さに驚きながらも、同級生の...
「ほら、ね? タバサこの間まで大変だったんだから……ねぇ?」
「ら、らからぁ、みっかもがまんしたじゃにゃいっ」
キュルケから聞いたタバサの境遇に同情したルイズは、
『す、少しくらいなら……仕方ないわね』
渋々サイトを『貸し出す』事を黙認していた。
が、
「にゃんで、あんにゃに、べたべたするかぁぁぁ」
我慢も限界に達しているようだった。
サイトがタバサに構っている間、ルイズはサイトの側にいる...
一度一緒に話を聞こうとしたが……数分で見ているのが嫌に成...
そうなって来ると、ルイズがサイトといる時間が激減し、
その不満を素直に口に出来ないルイズは、着々とストレスを...
「あー、ほら、もうちょっとの間だけ……ね?」
「わひゃってるわぉう」
ちっとも分かっていない様子のルイズを宥めながら、モンモ...
ルイズもタバサも大切な友達。
モンモランシーの立場で出来ることは少ない。
ここ最近のルイズの様子は知っているし、
タバサだって物語のように自分を助けてくれた男の子に懐く...
別人のように笑うタバサを守りたいし、
こんなに追い詰められたルイズは見たくない。
「わたしも人の事言えないわね……」
モンモランシーはギーシュの気分が少しだけ分かった気がし...
それぞれの理由があって、両方守ってあげたいのだろう。
……まぁ、ギーシュの浮気性と同一視するのは少し乱暴だけれ...
ルイズの火照った顔を見ながら、モンモランシーは思索に耽...
多分まったく気がついていないサイトに、警告くらいはして...
おせっかいを自覚しながらも、三人に笑っていて欲しいと自...
「もんもん〜」
「なーに? ルイズ」
「はく」
…………
「ちょっ、待ちなさいっ、こっち来なさいっ」
一行の中で比較的常識人なため、
この旅の間中、貧乏くじを引き続けている少女は、
今日もまた、他人の世話に明け暮れる。
119 名前:3/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:53:38 ID:3...
「そーゆーわけだから、少しルイズに優しくしなさい」
珍しく部屋の外でサイトを見つけたモンモランシーが、この...
サイトに一言も喋らせず、一息に言いたい事を言い尽くして...
話を聞くサイトの背中には、冷や汗が大量に流れていた。
「え……と、モンモン……あの……さ……」
「言い訳無用!! いい? タバサの相手もいいけど、ルイズ...
二股幇助としか取れないような言葉を残して、モンモランシ...
ガサリと言う音共に、近くの茂みからタバサが現れた。
「……ごめんなさい」
「い、いや、タバサは悪くないって……俺が鈍いんだ」
久々に外に出たのは、タバサとの話の途中で話題になった『...
地球に興味が無い様子のルイズと違い、サイトの話をうれし...
サイトは様々なことを話し始めていた。
「……どうするかなぁ」
サイトにとって昔の事を楽しく思い返す、思いのほか楽しい...
ルイズを悲しませているのなら、サイトにとっては選択の余...
「その……タバサ……あの……」
話を止めようとした時のタバサの様子を思い出し、サイトは...
「ダメ」
やっぱりダメですか。
ルイズと、どうやって話すか悩み始めるサイトにとって、意...
「ルイズと仲良くしなきゃ、ダメ」
「え?」
「ごめんなさい」
責任を感じたらしいタバサが、ペコリと頭を下げると後ろも...
「ちょっ……タバサ?」
「待ってて」
色恋沙汰が苦手……そもそも上手く理解できないタバサは、頼...
殺そうとしても自分よりわたしを優先した人を、
自分を助けてくれたサイトを、
力の及ぶ限り助けたい。
そして、適うならば、魔法を使えない彼の杖になりたい。
そんなタバサにとって、自分がサイトの邪魔をしてしまった...
サイトやモンモランシーが思う以上にタバサを困らせていた。
「で、タバサはどうしたいの?」
そんなの胸の内を悟っている様子の親友は、タバサの単語を...
感謝しているとはいえ、心情的にはタバサの味方をしたいキ...
言いよどむ様ならば、丸め込んでしまうつもりだった。
「二人に笑って欲しい」
サイトに惹かれている事を自覚し始めた少女の微笑みは、キ...
120 名前:4/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:54:10 ID:3...
「で、ヴァリエールの事をどれだけ知ってるの?」
酒場の片隅で顔に向かって灯りを向けられたサイトが目を細...
ルイズのところに向かおうとするサイトを、キュルケが力づ...
「キュルケ、何の真似だよ?」
「いいから、きりきり喋りなさいっ!!」
右手がテーブルに叩きつけられる音に、酒場中の客がサイト...
「あなたがやったのよね?」
「って、何を?」
キュルケの射すくめる様な眼光に身を縮めるサイトを見て、...
「あの子をあんなに女の子っぽくしたのは、だぁれ?」
「う……っ……いや……そのっ……」
実はキュルケは憂さを晴らしたいだけだった。
せっかく自分の得意分野で親友の役に立てると思ったのに。
タバサの望みは、自分ではなくルイズとサイトの仲を取り持...
「どーして、そうなるのよっ」
「な、何がだよっ?」
キュルケの脈絡の掴みにくい行動に、サイトは非常に居心地...
店に入った時は、店中の男達の羨望の眼差しに得意に成って...
今向けられるのは好奇の視線だけだった。
店の片隅で美人に詰め寄られる少年。
――どう見ても浮気の釈明中です。
苦笑と冷やかしの視線が痛い。もっとも半分は
『なんでこんなのが、こんな美人捕まえて、しかも浮気? 何...
そんな視線だったが。
散々迷走した挙句に、少しだけ冷静さを取り戻したキュルケ...
「ヴァリエールの機嫌を取りたいのよね?」
「はい……」
「で、あの子の喜ぶこと何か知ってるの?」
……あれ?
サイトは少し悩んだ後、真っ白になった。
ルイズの為とか、ルイズが好きだから……
そんな事を言いながら、自分はさっぱりルイズを喜ばせるこ...
側に居るだけでルイズが喜んでくれる等と言い切る自信はサ...
ルイズに自分は何か返せているのだろうか? サイトはキュ...
「ご、ごめんなしゃい」
「プレゼントの一つもしたことないわけ?」
「あ、それは有ります」
すっかり小さくなったサイトは、ついつい敬語で答えてしま...
「で、あの子は何を喜ぶの?」
「……分かりません」
「なってないわね」
「申し訳ございません」
タバサの事を一から仕込みたい!
キュルケが誘惑に耐えながら、サイトのダメなところを挙げ...
冷やかしていた周りの客が、あまりの落ち込みようにサイト...
『ルイズの為に何でもさせていただきます』
サイトはキュルケに絶対服従を誓っていた。
121 名前:5/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:54:53 ID:3...
「お願い」
キュルケがサイトを躾ける間、タバサの方でルイズの足止め...
そう指示されたタバサは、しばらく途方に暮れた後、
「はぁーい、おねえさま、シルフィにおまかせっ」
最悪の選択をしていた。
何を頼まれていたのか既に忘れていそうなテンションでサイ...
「わたしはルイズに会えない」
言われるまで気付かなかったとはいえ、ルイズが自分を優先...
サイトとの楽しい時間はとても大切だったから……
それを気遣い、守ってくれたルイズにどれほど感謝すればよ...
そして、だからこそ……
「今……会えない」
涙で視界が滲む。
ルイズの優しさが痛かった。
妬いてしまうとはいえ、サイトの側に人が居ても許せる自信...
「あなたになりたい」
サイトに想われる彼女に、今会うのは辛すぎる。
感情を押し殺した表情の下で、見えない何かが荒れ狂う。
ほんの少し前まで、何が有ろうと怯まなかった少女が、
自分の奥に芽生え始めているものに怯え、
「ごめんなさい」
復讐に燃えていたときには決してとらなかった道を進む。
胸の疼きを押さえながら、タバサはルイズから逃げていく。
122 名前:6/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:55:30 ID:3...
「じっかん〜、じっかん〜、時間を稼ぐのー、きゅいきゅいっ」
シルフィードはご機嫌だった。
タバサと合流して気がかりの無くなった彼女は、純粋に話が...
風韻竜はその長寿と引き換えに出生率が低い。
個体数が少なくとも生き延びることが出来る生命力と、生ま...
「お話、おっはなっし、た〜のし〜の〜」
長い時を一人で生きるのは寂しい。
同世代の同種すら希少な彼女にとって、タバサと知り合って...
「お姉さまも楽しそうだし、シルフィもうれしいのっ。
人の身体は窮屈だけど、こんな毎日なら別に少しくらいは我...
タバサの側に長く居たシルフィードは、タバサの心が癒えて...
それがまた彼女の喜びになった。
タバサの事をタバサ本人よりも気にかけている使い魔にとっ...
この一年で始めて全てがうまく行っている……
そんな実感に溢れていた。
「あー、ギーシュさまだ、やほー」
「元気が良いな、シルフィード」
ギーシュはシルフィードのことを知っても、『面白いじゃな...
他の者が辟易して逃げ出すシルフィードとの会話も、我慢強...
実は女の子と話をするのが好きなだけだが、聞き上手と言う...
同じく女の子が好きなマリコルヌは、シルフィードの話に付...
早々に話し相手失格の烙印を押されていた。
シルフィは話を聞くより話すほうが好きなのだ。
「どうしたんだい?」
「内緒〜、内緒だよ、ギーシュさま」
ついつい喋りそうになる自分の口を、両手で可愛らしく隠す...
「そうか、それじゃ仕方ないね。何か出来ることはないかな?」
「ん〜〜〜、んっ? あっ、ギーシュさま、ギーシュさまっ、...
シルフィードはルイズとの会話にギーシュの知恵を借りて……
「きゅい?」
『ルイズが動かなくなるようなお話』に、不思議そうに耳を...
123 名前:7/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:56:03 ID:3...
「うーっ、頭痛い……」
宿の自室で水を飲みながら、ルイズは頭痛に耐えていた。
ひとまずタバサをゲルマニアに逃がすため、最も足が付きに...
最も効率が良い方法で、ガリア国内を移動していた。
シルフィードがバテるまで、風韻竜に出せる限りのスピード...
手近な宿で休む。
この繰り返しだった。
通常の移動手段を想定している包囲網に、この方法だと掛か...
騎竜を探す役人も、まさか人間に成っているとは思わない為...
役人が探しているのは、数人の少年少女と竜であって、
保護者(キュルケとシルフィード)付きの旅行者ではないか...
高速移動と人化はそれなりに疲労するらしく、シルフィード...
彼女に負担をかけていることを自覚している一団が、しばら...
「のんびりしすぎたわ……」
実際、見つかってもどうと言うことは無い。
今のこの一団を地方の官憲程度で抑えられる筈は無いのだ。
恐ろしいのは、虚無の使い手そのものとエルフ程度だが、
ビダーシャルが出てきても、今回は逃げの一手が打てる。
虚無の使い手にしても、王族である公算が高いため、こんな...
それでも気を緩めすぎだ。
ルイズは気を引き締めることにする。
「よしっ」
勢い良くベットから立ち上がり……暫し頭を抱える。
二日酔いは辛い。
「ま、負けない……」
よろよろと立ち上がり、コクコクと水を飲む。
アルコールで少しだけ鬱憤を吐き出したルイズは、もうしば...
それとも外聞を捨ててでもサイトに甘えるか悩む。
「……いたたたた」
二日酔いに考え事は向かない。
「サイトのバカ……なんでわたしばっかりこんなに苦しいのよぅ…...
考えるのを止めて、ぽつぽつと胸のうちを吐き出す。
「わたしにも甘えさせなさいよ……」
「タバサばっかりズルイ……」
「あんた大きい胸が好きなんじゃなかったの?」
「…………寂しい……ょぅ」
段々小さくなる声と、段々大きく成る想い。
膝を抱えて丸くなるルイズが、サイトに会いに行く決心をす...
「ルイズ〜、ルイズ〜元気かなっ? きゅいきゅいっ」
二日酔いには最悪の来客が訪れた。
124 名前:8/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:56:35 ID:3...
にゅぉぉぉぉ、頭がキンキンするぅぅぅぅ。
のたうつルイズを余所に、シルフィードは元気にご挨拶。
「あ、おっはようっ、ルイズ、元気かなぁ?」
「だ、黙りなさいよ……って、なんでタバサがお姉さまで、わた...
余計なことを言ってしまったことを、ルイズは海よりも深く...
「えー、だってだって、ルイズはルイズって感じなんだもん。
ほらっ、ル・イ・ズって感じでしょ?」
弾むように大きくなる『ル・イ・ズ』が頭に響く。
「もう、ルイズで良いから、でてってー」
「え? 本当? わーい、ルイズでいいんだ、ルイズでいいん...
「にゃぁぁぁ」
何を言ってもシルフィードの口は止まらない。
「あ、ルイズ、ルイズ、質問があるのっ、答えて、答えてっ」
「もー、分かったわよっ、答えるから、答えたら出て行きなさ...
この言葉を、ほんの数秒後に後悔する事になる。
「ねぇ、ルイズ、『赤ちゃんてどこから来るの?』」
「え?」
「ねぇねぇ、ルイズっ、『赤ちゃんて……』」
「っっだ、黙んなさぁぁぁいっ!」
あまりのバカな質問に、二日酔いのことを忘れてルイズはシ...
「お、女の子がそんなこと言えるはずないじゃないっ」
「そうなの?」
「そうよっ!!」
釈然としない表情のシルフィードは、ギーシュに聞いた話と...
そう悩み始めるが、シルフィードも『赤ちゃんの作り方』に...
「女の子には聞いちゃダメなの?」
「そうよっ、そんな事言える筈無いじゃない!」
フムフムと頷いたシルフィードは、おもむろに立ち上がると、
「ん、わかったー、サイトに聞いてくるね」
――――――――――――――――――――――――
「サイトー、赤ちゃんの作り方教えてー」
「よしっ、OKだ、シルフィード!! さぁっ、おいでっ!!」
……妙に爽やかなサイトがシルフィードを抱きしめる様子が、...
――――――――――――――――――――――――
「だ、だめぇぇぇぇぇ」
「きゅい?
「そ、それくらいなら、わたしが教えるわよぉぉぉ」
125 名前:9/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:57:44 ID:3...
「えっと、だから……その……ね?」
「きゅい?」
話はまったく進んでいなかったが、ルイズの様子を見たシル...
「あの……やっぱり無しってのは?」
耐え切れなくなったルイズが、シルフィードに降参してみた。
「ひっ、ひどいのっ、ひどいのっ。
シルフィ、楽しみにしてたのにっ。
騙されたっ。シルフィ、ルイズに騙されたっ!」
暴れるシルフィードの次の台詞は、ルイズの顔を真っ青に...
「ルイズが赤ちゃんの作り方教えてくれるって、シルフィの事...
ひたすら人聞きの悪いことを絶叫しながら、部屋の外に駆け...
「ま、待ちなさぁぁぁあああいっ、人に聞かれたら誤解される...
言うからっ、説明するからっ」
「ならいいの、はやく、はやく〜、きゅいきゅい」
こいつ分かってやってないか?
ルイズはそんな疑いを持つが、
「楽しみなの、楽しみなの、きゅいきゅい」
シルフィードはまだ子供だった。
世のお母さん、お父さんの苦悩をルイズはたっぷりと味わっ...
(あぁ、ごめんなさい、ちぃねぇさま。ルイズは悪い子でした)
幼い頃、しつこく聞いてカトレアを困らせていた事を思い出...
「あ、そうだっ」
「きゅい?」
「そうっ、コウノトリよっ、コウノトリが運んでくるのよ」
ありがとう、ちぃねぇさま。
ルイズは姉に無上の感謝を……
「むー、嘘なの、ルイズはシルフィを騙そうとしているのっ」
「うっ」
「シルフィ、風韻竜ですもの、ルイズの産まれる前から空飛ん...
でもでもっ、赤ちゃん運ぶ鳥なんていないの知ってるもの」
……なんて厄介な。ルイズが賢いのかバカなのかわからないシ...
「……ルイズ……嘘吐いた。
ルイズ、シルフィの事騙そうとした」
こ、この展開はっ、ルイズが嫌な予感に慄くと、
「ルイズが『赤ちゃんの作り方』で、シルフィを騙そうとした...
シルフィ、ルイズにおもちゃにされたぁぁぁぁ」
「ちょっ、だからそんな事喚きながら、外に向かうなぁぁぁぁ...
ルイズが力づくでシルフィードを取り押さえる。
「……シルフィ、『赤ちゃんの作り方』聞いただけなのに、ルイ...
「っっっ、わ、わざとじゃないでしょうねぇぇぇぇ」
126 名前:10/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:58:17 ID:...
「ふむふむー、なの」
「うぅ……お、お嫁に行けない」
シルフィードの精神攻撃に負けたルイズは、知っている限り...
「ん〜、でも、本当なの? きゅいきゅい」
「……本当よ」
「でも、ルイズのっ……赤ちゃんが出てくるようには見えなかっ...
「っ! わ、忘れなさいっ、忘れる約束でしょうがぁぁぁぁ」
乱れた着衣を整えながら、ルイズはシルフィードに掴みかか...
正確に話しても信じようとしないシルフィードに、オンナノ...
(あぁぁぁぁ、ティファニアに呪文聞いとけば良かった)
ここに始祖の魔道書が有れば、確実に読めるだろうに。
ビダーシャルと戦った時の百倍ほど、自分の不手際を呪って...
「んとんと、ルイズ」
「なによっ」
すっかりルイズに懐いたシルフィードが新たな質問を切り出...
「赤ちゃんていいもの?」
「ま……まあ……ね」
「何人ほしいの?」
「へ?」
「サイトの赤ちゃん欲しいの?」
「ふえっ」
「サイトと赤ちゃん作りたいのっ?」
「い、いやぁぁぁぁぁぁ」
シルフィードの質問は止まる事は無く……
「ルイズが教えてくれないのなら、サイトに聞くねっ。
あ、さっき見たの、サイトに教えてあげても良い? 良い?
サイトが知らなかったら困るしっ」
「だ、だめぇぇぇぇ、わ、わたしが説明するからぁぁぁぁ」
シルフィードの質問から逃げることすら出来なくなったルイ...
「……も、許して……」
「きゅいきゅい」
ルイズは精神が崩壊するまでシルフィードの質問に付き合っ...
127 名前:11/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:59:03 ID:...
「いいわね?」
「はっ、ルイズの望みの物を聞き出し、早急にプレゼントする...
サイトはキュルケに連れられて、ルイズの部屋の前に来てい...
「手伝う」
「ありがと、タバサ」
感謝の印とばかりに髪をくしゃりと撫でるサイトを、眩しそ...
サイトと一緒になら……ルイズの前に立って、まずお礼を言お...
そう決心したタバサは今ここに居た。
「いくぜ」
小さくノックしてから、ルイズの部屋に踏み込む。
サイトとキュルケに隠れるようにタバサが続く。
「ルイズ……寝てるのか?」
サイトの問いかけに答えるように、ゆらりとルイズが起き上...
――シルフィードとの問答の途中に、いつの間にか意識を失っ...
鉛のように重く感じる体を起こした。
……これは……夢?
サイトが何か言ってる……
サイト……
サイト
寝惚けているルイズはサイトの顔を見ているだけで、シルフ...
――ルイズの様子がおかしい気がしたが、サイトは予定通り行...
アドリブで行動を変更できるほど、サイトは器用な少年では...
「い、今まで、俺ルイズの事……よく知ってるつもりだったけど……
良く考えたら、俺ルイズの欲しい物もわからないんだ……
こ、これから頑張るからさ、
今日も、何かプレゼントするつもりなんだ……
手に入るようにがんばるからっ……
ルイズっ『欲しい物』教えてくれっ!!」
ん――――と、空中を眺めていたルイズが、ふわりと笑って呟い...
「赤ちゃん♪」
「「「は?」」」
ルイズの衝撃のおねだりに、三人そろって間抜けな声を上げ...
「赤ちゃん♪ かわいーの♪」
「が、頑張るんだっけ?」
「え……と……ルイズ?」
あまりの展開にキュルケとサイトが取り乱す。
「え……と……て、手伝う?」
タバサも変だ。
「赤ちゃん♪ 赤ちゃん♪ 赤ちゃん♪」
「「「…………ぅ……」」」
正気に返ったルイズが窓から飛び降りようとするまで、三人...
終了行:
117 名前:1/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:52:24 ID:3...
しまったな……サイトは困り果てていた。
「サイト……お話して?」
どこか印象が幼く感じるようになったタバサに、気まぐれで...
「始めて聞く」
それはそうだろう。
聞いたことある方がびっくりだ。
タバサの驚く顔が面白くて、サイトはついつい頑張った。
うろ覚えのシンデレラは姉の数が少なかったし、
一寸法師におじいさんは出ない。
メーテルリンクの青い鳥に至ってはオチしか覚えていなかっ...
それでも……
「すごい……すごい、もっと……もっとお話して」
いつも無表情だと思っていたタバサの、子供の様な笑顔にサ...
……が、限界は結構直ぐに来た。
「ごめん……タバサ……ん〜、これ以上は思い出せないな」
「お話……おしまい?」
ね、捏造するか? 一瞬だけ悩むが、話を作るのに自信の無...
「ごめんな……」
タバサの残念そうな顔に、悪い事をしたかのような罪悪感が...
ペットのエサを買い忘れたまま帰宅したのに、
当のペットは『待ってました〜』と、玄関先で迎えてくれた...
「……ご、ごめん……本当に、悪い」
サイトは一切悪くないのだが、怒られるのならルイズで慣れ...
しょんぼりする女の子には勝てなかった。
岩よりも重い沈黙にサイトが逃げ出す寸前、
今にも泣き出しそうな顔でサイトの足元を見ていたタバサが...
「……じゃ、じゃあ……ね」
「お、おう」
「も、もう一度……一度聞いたお話でいいから……」
ここで喜んで了解したのが間違いの元だった。
「あのね、今のお話……もう一度」
「じゃあ……前の前のお話……ダメ?」
実は既に俺より覚えてないか?
サイトがそんな疑いを覚えても、話を止めようとする度に……
「……おしまい?」
サイトの目には、へちゃりとつぶれた犬耳と、きゅーんとう...
「……あー、もうちょっとだけな?」
「うん♪」
いつの間にかサイトの膝の上で『おはなし』を楽しむタバサ。
サイトは目じりを下げながら、タバサを楽しませることに集...
――――三日後、ルイズがグレた。
118 名前:2/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:52:57 ID:3...
「ろーなってんにょよー」
「ル、ルイズ、落ち着きなさいって、昼間っからお酒なんてっ」
仮にもガリア王からの逃避行の最中。
モンモランシーはルイズの豪胆さに驚きながらも、同級生の...
「ほら、ね? タバサこの間まで大変だったんだから……ねぇ?」
「ら、らからぁ、みっかもがまんしたじゃにゃいっ」
キュルケから聞いたタバサの境遇に同情したルイズは、
『す、少しくらいなら……仕方ないわね』
渋々サイトを『貸し出す』事を黙認していた。
が、
「にゃんで、あんにゃに、べたべたするかぁぁぁ」
我慢も限界に達しているようだった。
サイトがタバサに構っている間、ルイズはサイトの側にいる...
一度一緒に話を聞こうとしたが……数分で見ているのが嫌に成...
そうなって来ると、ルイズがサイトといる時間が激減し、
その不満を素直に口に出来ないルイズは、着々とストレスを...
「あー、ほら、もうちょっとの間だけ……ね?」
「わひゃってるわぉう」
ちっとも分かっていない様子のルイズを宥めながら、モンモ...
ルイズもタバサも大切な友達。
モンモランシーの立場で出来ることは少ない。
ここ最近のルイズの様子は知っているし、
タバサだって物語のように自分を助けてくれた男の子に懐く...
別人のように笑うタバサを守りたいし、
こんなに追い詰められたルイズは見たくない。
「わたしも人の事言えないわね……」
モンモランシーはギーシュの気分が少しだけ分かった気がし...
それぞれの理由があって、両方守ってあげたいのだろう。
……まぁ、ギーシュの浮気性と同一視するのは少し乱暴だけれ...
ルイズの火照った顔を見ながら、モンモランシーは思索に耽...
多分まったく気がついていないサイトに、警告くらいはして...
おせっかいを自覚しながらも、三人に笑っていて欲しいと自...
「もんもん〜」
「なーに? ルイズ」
「はく」
…………
「ちょっ、待ちなさいっ、こっち来なさいっ」
一行の中で比較的常識人なため、
この旅の間中、貧乏くじを引き続けている少女は、
今日もまた、他人の世話に明け暮れる。
119 名前:3/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:53:38 ID:3...
「そーゆーわけだから、少しルイズに優しくしなさい」
珍しく部屋の外でサイトを見つけたモンモランシーが、この...
サイトに一言も喋らせず、一息に言いたい事を言い尽くして...
話を聞くサイトの背中には、冷や汗が大量に流れていた。
「え……と、モンモン……あの……さ……」
「言い訳無用!! いい? タバサの相手もいいけど、ルイズ...
二股幇助としか取れないような言葉を残して、モンモランシ...
ガサリと言う音共に、近くの茂みからタバサが現れた。
「……ごめんなさい」
「い、いや、タバサは悪くないって……俺が鈍いんだ」
久々に外に出たのは、タバサとの話の途中で話題になった『...
地球に興味が無い様子のルイズと違い、サイトの話をうれし...
サイトは様々なことを話し始めていた。
「……どうするかなぁ」
サイトにとって昔の事を楽しく思い返す、思いのほか楽しい...
ルイズを悲しませているのなら、サイトにとっては選択の余...
「その……タバサ……あの……」
話を止めようとした時のタバサの様子を思い出し、サイトは...
「ダメ」
やっぱりダメですか。
ルイズと、どうやって話すか悩み始めるサイトにとって、意...
「ルイズと仲良くしなきゃ、ダメ」
「え?」
「ごめんなさい」
責任を感じたらしいタバサが、ペコリと頭を下げると後ろも...
「ちょっ……タバサ?」
「待ってて」
色恋沙汰が苦手……そもそも上手く理解できないタバサは、頼...
殺そうとしても自分よりわたしを優先した人を、
自分を助けてくれたサイトを、
力の及ぶ限り助けたい。
そして、適うならば、魔法を使えない彼の杖になりたい。
そんなタバサにとって、自分がサイトの邪魔をしてしまった...
サイトやモンモランシーが思う以上にタバサを困らせていた。
「で、タバサはどうしたいの?」
そんなの胸の内を悟っている様子の親友は、タバサの単語を...
感謝しているとはいえ、心情的にはタバサの味方をしたいキ...
言いよどむ様ならば、丸め込んでしまうつもりだった。
「二人に笑って欲しい」
サイトに惹かれている事を自覚し始めた少女の微笑みは、キ...
120 名前:4/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:54:10 ID:3...
「で、ヴァリエールの事をどれだけ知ってるの?」
酒場の片隅で顔に向かって灯りを向けられたサイトが目を細...
ルイズのところに向かおうとするサイトを、キュルケが力づ...
「キュルケ、何の真似だよ?」
「いいから、きりきり喋りなさいっ!!」
右手がテーブルに叩きつけられる音に、酒場中の客がサイト...
「あなたがやったのよね?」
「って、何を?」
キュルケの射すくめる様な眼光に身を縮めるサイトを見て、...
「あの子をあんなに女の子っぽくしたのは、だぁれ?」
「う……っ……いや……そのっ……」
実はキュルケは憂さを晴らしたいだけだった。
せっかく自分の得意分野で親友の役に立てると思ったのに。
タバサの望みは、自分ではなくルイズとサイトの仲を取り持...
「どーして、そうなるのよっ」
「な、何がだよっ?」
キュルケの脈絡の掴みにくい行動に、サイトは非常に居心地...
店に入った時は、店中の男達の羨望の眼差しに得意に成って...
今向けられるのは好奇の視線だけだった。
店の片隅で美人に詰め寄られる少年。
――どう見ても浮気の釈明中です。
苦笑と冷やかしの視線が痛い。もっとも半分は
『なんでこんなのが、こんな美人捕まえて、しかも浮気? 何...
そんな視線だったが。
散々迷走した挙句に、少しだけ冷静さを取り戻したキュルケ...
「ヴァリエールの機嫌を取りたいのよね?」
「はい……」
「で、あの子の喜ぶこと何か知ってるの?」
……あれ?
サイトは少し悩んだ後、真っ白になった。
ルイズの為とか、ルイズが好きだから……
そんな事を言いながら、自分はさっぱりルイズを喜ばせるこ...
側に居るだけでルイズが喜んでくれる等と言い切る自信はサ...
ルイズに自分は何か返せているのだろうか? サイトはキュ...
「ご、ごめんなしゃい」
「プレゼントの一つもしたことないわけ?」
「あ、それは有ります」
すっかり小さくなったサイトは、ついつい敬語で答えてしま...
「で、あの子は何を喜ぶの?」
「……分かりません」
「なってないわね」
「申し訳ございません」
タバサの事を一から仕込みたい!
キュルケが誘惑に耐えながら、サイトのダメなところを挙げ...
冷やかしていた周りの客が、あまりの落ち込みようにサイト...
『ルイズの為に何でもさせていただきます』
サイトはキュルケに絶対服従を誓っていた。
121 名前:5/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:54:53 ID:3...
「お願い」
キュルケがサイトを躾ける間、タバサの方でルイズの足止め...
そう指示されたタバサは、しばらく途方に暮れた後、
「はぁーい、おねえさま、シルフィにおまかせっ」
最悪の選択をしていた。
何を頼まれていたのか既に忘れていそうなテンションでサイ...
「わたしはルイズに会えない」
言われるまで気付かなかったとはいえ、ルイズが自分を優先...
サイトとの楽しい時間はとても大切だったから……
それを気遣い、守ってくれたルイズにどれほど感謝すればよ...
そして、だからこそ……
「今……会えない」
涙で視界が滲む。
ルイズの優しさが痛かった。
妬いてしまうとはいえ、サイトの側に人が居ても許せる自信...
「あなたになりたい」
サイトに想われる彼女に、今会うのは辛すぎる。
感情を押し殺した表情の下で、見えない何かが荒れ狂う。
ほんの少し前まで、何が有ろうと怯まなかった少女が、
自分の奥に芽生え始めているものに怯え、
「ごめんなさい」
復讐に燃えていたときには決してとらなかった道を進む。
胸の疼きを押さえながら、タバサはルイズから逃げていく。
122 名前:6/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:55:30 ID:3...
「じっかん〜、じっかん〜、時間を稼ぐのー、きゅいきゅいっ」
シルフィードはご機嫌だった。
タバサと合流して気がかりの無くなった彼女は、純粋に話が...
風韻竜はその長寿と引き換えに出生率が低い。
個体数が少なくとも生き延びることが出来る生命力と、生ま...
「お話、おっはなっし、た〜のし〜の〜」
長い時を一人で生きるのは寂しい。
同世代の同種すら希少な彼女にとって、タバサと知り合って...
「お姉さまも楽しそうだし、シルフィもうれしいのっ。
人の身体は窮屈だけど、こんな毎日なら別に少しくらいは我...
タバサの側に長く居たシルフィードは、タバサの心が癒えて...
それがまた彼女の喜びになった。
タバサの事をタバサ本人よりも気にかけている使い魔にとっ...
この一年で始めて全てがうまく行っている……
そんな実感に溢れていた。
「あー、ギーシュさまだ、やほー」
「元気が良いな、シルフィード」
ギーシュはシルフィードのことを知っても、『面白いじゃな...
他の者が辟易して逃げ出すシルフィードとの会話も、我慢強...
実は女の子と話をするのが好きなだけだが、聞き上手と言う...
同じく女の子が好きなマリコルヌは、シルフィードの話に付...
早々に話し相手失格の烙印を押されていた。
シルフィは話を聞くより話すほうが好きなのだ。
「どうしたんだい?」
「内緒〜、内緒だよ、ギーシュさま」
ついつい喋りそうになる自分の口を、両手で可愛らしく隠す...
「そうか、それじゃ仕方ないね。何か出来ることはないかな?」
「ん〜〜〜、んっ? あっ、ギーシュさま、ギーシュさまっ、...
シルフィードはルイズとの会話にギーシュの知恵を借りて……
「きゅい?」
『ルイズが動かなくなるようなお話』に、不思議そうに耳を...
123 名前:7/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:56:03 ID:3...
「うーっ、頭痛い……」
宿の自室で水を飲みながら、ルイズは頭痛に耐えていた。
ひとまずタバサをゲルマニアに逃がすため、最も足が付きに...
最も効率が良い方法で、ガリア国内を移動していた。
シルフィードがバテるまで、風韻竜に出せる限りのスピード...
手近な宿で休む。
この繰り返しだった。
通常の移動手段を想定している包囲網に、この方法だと掛か...
騎竜を探す役人も、まさか人間に成っているとは思わない為...
役人が探しているのは、数人の少年少女と竜であって、
保護者(キュルケとシルフィード)付きの旅行者ではないか...
高速移動と人化はそれなりに疲労するらしく、シルフィード...
彼女に負担をかけていることを自覚している一団が、しばら...
「のんびりしすぎたわ……」
実際、見つかってもどうと言うことは無い。
今のこの一団を地方の官憲程度で抑えられる筈は無いのだ。
恐ろしいのは、虚無の使い手そのものとエルフ程度だが、
ビダーシャルが出てきても、今回は逃げの一手が打てる。
虚無の使い手にしても、王族である公算が高いため、こんな...
それでも気を緩めすぎだ。
ルイズは気を引き締めることにする。
「よしっ」
勢い良くベットから立ち上がり……暫し頭を抱える。
二日酔いは辛い。
「ま、負けない……」
よろよろと立ち上がり、コクコクと水を飲む。
アルコールで少しだけ鬱憤を吐き出したルイズは、もうしば...
それとも外聞を捨ててでもサイトに甘えるか悩む。
「……いたたたた」
二日酔いに考え事は向かない。
「サイトのバカ……なんでわたしばっかりこんなに苦しいのよぅ…...
考えるのを止めて、ぽつぽつと胸のうちを吐き出す。
「わたしにも甘えさせなさいよ……」
「タバサばっかりズルイ……」
「あんた大きい胸が好きなんじゃなかったの?」
「…………寂しい……ょぅ」
段々小さくなる声と、段々大きく成る想い。
膝を抱えて丸くなるルイズが、サイトに会いに行く決心をす...
「ルイズ〜、ルイズ〜元気かなっ? きゅいきゅいっ」
二日酔いには最悪の来客が訪れた。
124 名前:8/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:56:35 ID:3...
にゅぉぉぉぉ、頭がキンキンするぅぅぅぅ。
のたうつルイズを余所に、シルフィードは元気にご挨拶。
「あ、おっはようっ、ルイズ、元気かなぁ?」
「だ、黙りなさいよ……って、なんでタバサがお姉さまで、わた...
余計なことを言ってしまったことを、ルイズは海よりも深く...
「えー、だってだって、ルイズはルイズって感じなんだもん。
ほらっ、ル・イ・ズって感じでしょ?」
弾むように大きくなる『ル・イ・ズ』が頭に響く。
「もう、ルイズで良いから、でてってー」
「え? 本当? わーい、ルイズでいいんだ、ルイズでいいん...
「にゃぁぁぁ」
何を言ってもシルフィードの口は止まらない。
「あ、ルイズ、ルイズ、質問があるのっ、答えて、答えてっ」
「もー、分かったわよっ、答えるから、答えたら出て行きなさ...
この言葉を、ほんの数秒後に後悔する事になる。
「ねぇ、ルイズ、『赤ちゃんてどこから来るの?』」
「え?」
「ねぇねぇ、ルイズっ、『赤ちゃんて……』」
「っっだ、黙んなさぁぁぁいっ!」
あまりのバカな質問に、二日酔いのことを忘れてルイズはシ...
「お、女の子がそんなこと言えるはずないじゃないっ」
「そうなの?」
「そうよっ!!」
釈然としない表情のシルフィードは、ギーシュに聞いた話と...
そう悩み始めるが、シルフィードも『赤ちゃんの作り方』に...
「女の子には聞いちゃダメなの?」
「そうよっ、そんな事言える筈無いじゃない!」
フムフムと頷いたシルフィードは、おもむろに立ち上がると、
「ん、わかったー、サイトに聞いてくるね」
――――――――――――――――――――――――
「サイトー、赤ちゃんの作り方教えてー」
「よしっ、OKだ、シルフィード!! さぁっ、おいでっ!!」
……妙に爽やかなサイトがシルフィードを抱きしめる様子が、...
――――――――――――――――――――――――
「だ、だめぇぇぇぇぇ」
「きゅい?
「そ、それくらいなら、わたしが教えるわよぉぉぉ」
125 名前:9/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:57:44 ID:3...
「えっと、だから……その……ね?」
「きゅい?」
話はまったく進んでいなかったが、ルイズの様子を見たシル...
「あの……やっぱり無しってのは?」
耐え切れなくなったルイズが、シルフィードに降参してみた。
「ひっ、ひどいのっ、ひどいのっ。
シルフィ、楽しみにしてたのにっ。
騙されたっ。シルフィ、ルイズに騙されたっ!」
暴れるシルフィードの次の台詞は、ルイズの顔を真っ青に...
「ルイズが赤ちゃんの作り方教えてくれるって、シルフィの事...
ひたすら人聞きの悪いことを絶叫しながら、部屋の外に駆け...
「ま、待ちなさぁぁぁあああいっ、人に聞かれたら誤解される...
言うからっ、説明するからっ」
「ならいいの、はやく、はやく〜、きゅいきゅい」
こいつ分かってやってないか?
ルイズはそんな疑いを持つが、
「楽しみなの、楽しみなの、きゅいきゅい」
シルフィードはまだ子供だった。
世のお母さん、お父さんの苦悩をルイズはたっぷりと味わっ...
(あぁ、ごめんなさい、ちぃねぇさま。ルイズは悪い子でした)
幼い頃、しつこく聞いてカトレアを困らせていた事を思い出...
「あ、そうだっ」
「きゅい?」
「そうっ、コウノトリよっ、コウノトリが運んでくるのよ」
ありがとう、ちぃねぇさま。
ルイズは姉に無上の感謝を……
「むー、嘘なの、ルイズはシルフィを騙そうとしているのっ」
「うっ」
「シルフィ、風韻竜ですもの、ルイズの産まれる前から空飛ん...
でもでもっ、赤ちゃん運ぶ鳥なんていないの知ってるもの」
……なんて厄介な。ルイズが賢いのかバカなのかわからないシ...
「……ルイズ……嘘吐いた。
ルイズ、シルフィの事騙そうとした」
こ、この展開はっ、ルイズが嫌な予感に慄くと、
「ルイズが『赤ちゃんの作り方』で、シルフィを騙そうとした...
シルフィ、ルイズにおもちゃにされたぁぁぁぁ」
「ちょっ、だからそんな事喚きながら、外に向かうなぁぁぁぁ...
ルイズが力づくでシルフィードを取り押さえる。
「……シルフィ、『赤ちゃんの作り方』聞いただけなのに、ルイ...
「っっっ、わ、わざとじゃないでしょうねぇぇぇぇ」
126 名前:10/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:58:17 ID:...
「ふむふむー、なの」
「うぅ……お、お嫁に行けない」
シルフィードの精神攻撃に負けたルイズは、知っている限り...
「ん〜、でも、本当なの? きゅいきゅい」
「……本当よ」
「でも、ルイズのっ……赤ちゃんが出てくるようには見えなかっ...
「っ! わ、忘れなさいっ、忘れる約束でしょうがぁぁぁぁ」
乱れた着衣を整えながら、ルイズはシルフィードに掴みかか...
正確に話しても信じようとしないシルフィードに、オンナノ...
(あぁぁぁぁ、ティファニアに呪文聞いとけば良かった)
ここに始祖の魔道書が有れば、確実に読めるだろうに。
ビダーシャルと戦った時の百倍ほど、自分の不手際を呪って...
「んとんと、ルイズ」
「なによっ」
すっかりルイズに懐いたシルフィードが新たな質問を切り出...
「赤ちゃんていいもの?」
「ま……まあ……ね」
「何人ほしいの?」
「へ?」
「サイトの赤ちゃん欲しいの?」
「ふえっ」
「サイトと赤ちゃん作りたいのっ?」
「い、いやぁぁぁぁぁぁ」
シルフィードの質問は止まる事は無く……
「ルイズが教えてくれないのなら、サイトに聞くねっ。
あ、さっき見たの、サイトに教えてあげても良い? 良い?
サイトが知らなかったら困るしっ」
「だ、だめぇぇぇぇ、わ、わたしが説明するからぁぁぁぁ」
シルフィードの質問から逃げることすら出来なくなったルイ...
「……も、許して……」
「きゅいきゅい」
ルイズは精神が崩壊するまでシルフィードの質問に付き合っ...
127 名前:11/11[sage] 投稿日:2007/02/22(木) 01:59:03 ID:...
「いいわね?」
「はっ、ルイズの望みの物を聞き出し、早急にプレゼントする...
サイトはキュルケに連れられて、ルイズの部屋の前に来てい...
「手伝う」
「ありがと、タバサ」
感謝の印とばかりに髪をくしゃりと撫でるサイトを、眩しそ...
サイトと一緒になら……ルイズの前に立って、まずお礼を言お...
そう決心したタバサは今ここに居た。
「いくぜ」
小さくノックしてから、ルイズの部屋に踏み込む。
サイトとキュルケに隠れるようにタバサが続く。
「ルイズ……寝てるのか?」
サイトの問いかけに答えるように、ゆらりとルイズが起き上...
――シルフィードとの問答の途中に、いつの間にか意識を失っ...
鉛のように重く感じる体を起こした。
……これは……夢?
サイトが何か言ってる……
サイト……
サイト
寝惚けているルイズはサイトの顔を見ているだけで、シルフ...
――ルイズの様子がおかしい気がしたが、サイトは予定通り行...
アドリブで行動を変更できるほど、サイトは器用な少年では...
「い、今まで、俺ルイズの事……よく知ってるつもりだったけど……
良く考えたら、俺ルイズの欲しい物もわからないんだ……
こ、これから頑張るからさ、
今日も、何かプレゼントするつもりなんだ……
手に入るようにがんばるからっ……
ルイズっ『欲しい物』教えてくれっ!!」
ん――――と、空中を眺めていたルイズが、ふわりと笑って呟い...
「赤ちゃん♪」
「「「は?」」」
ルイズの衝撃のおねだりに、三人そろって間抜けな声を上げ...
「赤ちゃん♪ かわいーの♪」
「が、頑張るんだっけ?」
「え……と……ルイズ?」
あまりの展開にキュルケとサイトが取り乱す。
「え……と……て、手伝う?」
タバサも変だ。
「赤ちゃん♪ 赤ちゃん♪ 赤ちゃん♪」
「「「…………ぅ……」」」
正気に返ったルイズが窓から飛び降りようとするまで、三人...
ページ名: