ゼロの使い魔保管庫
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492 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
キュルケが主人に選んだのはもちろんこの人。
「ダーリーーーーン♪」
メイド姿のキュルケは、そう叫んでコルベールの私室のドアを...
開いたドアの向こう側では、コルベールが机の上で書類を整理...
もちろん目が点になっている。
「あ、あの?ミス・ツェルプストー?」
学院長から実習の事は聞いていたが、まさか自分がターゲット...
全くもって認識の甘い中年である。
コルベールの時間を凍りつかせたまま、キュルケは無遠慮にコ...
「あら嫌だ、キュルケとお呼びになって♪」
「そうじゃなくてですねえっ」
首に回された手を乱暴に振り払うコルベール。
首筋に当たるやわらかい何かが気持ちよかったが、とりあえず...
「なんですかその格好っ」
まさか自分がターゲットになるとは露ほども思っていなかった...
全くもって、どうしようもなく認識の甘い中年である。
「あら、ご存知なくて?これは選択必修科目の『メイド実習』...
言ってキュルケは、にっこり笑ってくるりと回ってみせる。
長いエプロンドレスがひらりと舞い、黒と白と褐色と紅のコン...
「帰ってください」
しかし数多の戦場を駆け抜けてきたこの男には通じないらしい。
コルベールはそれだけ言うと、そっぽを向いて書類の整理に戻...
そのコルベールの態度に、キュルケは唖然とした。
自分でも行けると思ったのに。
普段見慣れない格好で気になるあの人に急接近!
恋愛のテクニックとしては中級クラスの技である。
普通の男なら、これでくらっとこないはずはないのだ。
いい例がルイズと才人である。
普段口うるさく騒ぎ立てるだけのルイズが、ちょっとドレス着...
あのぺったんこのラ・ヴァリエールですらあの鈍感魔人を反応...
このツェルプストーが!『微熱』のキュルケが!
こんな冴えない中年一人反応させられないなんてっ!
自分の想い人だというのに酷い言い草である。
493 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
しかしふと思い直してみる。
この実習、主に選ばれたものに拒否権は無い。実習開始時にシ...
ちらりとコルベールを見る。
視線が合った。
するとコルベールは、慌てて目を逸らす。
ははーん。
やはり学院長のお触れは、この冴えない中年教師にも伝わって...
コルベールの頬に伝った冷や汗が、その証だった。
「ねえセンセ」
キュルケの口がにやりと笑みの形に歪む。
「な、なんでしょうかミス」
コルベールはキュルケとは視線を合わさず、冷や汗をだらだら...
「学院長の指示を無視した教師はどうなるのかしら、先生?」
コルベールの汗の量が倍になる。
その場合、よくて減給、下手をすれば配置転換である。
復帰したばかりで色々物入りで、さらに自分の研究もあるコル...
「そ、それはですねえ」
「何も先生を困らせるつもりはありませんわ。実習の間だけ、...
そう言ってまた、コルベールの背後に回りこみ、首筋に手を回...
本当に、仕様がありませんねえ…。
コルベールは覚悟を決める。
「分かりました、その話お受けしましょう。
ただし条件があります」
「なぁにダーリン?」
「無用な接近と過度のスキンシップは禁止とします。
あと、『ダーリン』も禁止です」
「えぇ〜?」
「じゃないと合格は認めません」
そのコルベールの言葉に、キュルケは慌ててコルベールの首か...
そして尋ねた。
「じゃあ、なんと呼んだらいいのかしら?」
「そうですねえ」
コルベールは少し考える。
『ダーリン』もまずいが、メイド姿のキュルケに『ご主人様♪』...
…そうなると、答えは一つ。
「『先生』とお呼びください」
「えー」
「反論は認めません。嫌なら不合格にするまでです」
「…それじゃあ、こちらからも交換条件を」
「なんですか?」
「実習の間は私はあなたのメイドです。キュルケ、とお呼びく...
「え、でも」
「反論は認めません♪」
そうして、キュルケの『メイド実習』は幕を開けた。
494 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
結論から言って、実習は、キュルケの思惑とは大きく外れたも...
コルベールはいきなり、散らかった研究室の清掃・整頓をキュ...
元々かなり散らかっていたものが、数週間の放置で埃が溜まっ...
「…い、いつになったら終わるのよ…」
尽きない資料の山と埃の海に、キュルケは辟易していた。
掃除を始めてから、もう半日は経つだろうか。
始める前よりはずいぶんましにはなっていたが、まだコルベー...
「全く…研究熱心なのもいいけど、ちょっとは整理整頓ってもの...
「すいませんね昔から部屋の掃除だけは苦手でして」
いつの間にか背後にコルベールが立っていた。
はっとしてキュルケは口をつぐむ。
そんなキュルケの肩をぽんと叩いて、コルベールはすぐ近くの...
「ちょ、そんな先生、掃除は私が」
「二人で一緒にすれば早いでしょう?」
にっこり笑って、コルベールは手にした本を本棚に入れた。
そして言った。
「ね、キュルケ?」
にっこり笑って笑顔を向けられた瞬間、キュルケの頬が朱に染...
わ、私が、『微熱』のキュルケともあろうものが、名前を呼ば...
「ほら、貸してください。重い本は私が」
「え、でも」
そしてキュルケの持っていた分厚い辞典を奪い取る。
相手が自分のいう事を聞かないのは少し癪だったが、好きな人...
495 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
「ほら、早く終わったでしょう?」
「ええ、そうですわね」
二人で協力した甲斐もあって、掃除は昼を少し回った頃に終焉...
部屋はまるで別の場所のように整理整頓されていた。
キュルケもコルベールも、掃除の疲労でヘトヘトだった。
二人で椅子の背に身体を預け、脱力していた。
ぐぎゅぅ〜っ
唐突に、犬の唸るような音が響いた。
「…あ」
キュルケの腹の虫であった。
キュルケの頬は羞恥で赤く染まる。
「お腹、すきましたね。そういえば」
言ってコルベールはにっこりと笑う。
そして立ち上がる。
「用意してきますよ、お昼」
「え」
それは本来、メイド実習中であるキュルケの役目である。
そう思ってキュルケは、コルベールを止めようとしたが。
「待ってください、それは私の」
「キュルケはここで待っていてください。命令ですよ?」
コルベールはそう言って、部屋から出て行ってしまった。
コルベールが戻ってくると、何故かキュルケは椅子の上でむく...
「どうしました?」
コルベールは厨房でもらってきたサンドイッチを机の上に置く...
「どうして」
「はい?」
「どうして先生は、私に何もさせてくれないんですか?」
悲しそうな表情で、キュルケはコルベールを見上げる。
コルベールはその疑問に、笑顔で応えた。
496 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
「してくれたじゃないですか」
「え」
「キュルケは私に仕える、そう言ってくれました」
そして、キュルケの前の椅子に腰掛けて、サンドイッチを手に...
コルベールは続ける。
「人に仕えるという事は、何でも命令を聞くということではな...
「え…じゃあ、どういう事なんです?」
「人に仕えるという事は、その人の望みを叶える手伝いをする...
人の望みとは、その人の手によってのみ叶えられるもの。
他人には決して与えられるものじゃないんですよ」
言って笑顔をキュルケに向ける。
その笑顔はどことなく泣いているようで。
キュルケに、コルベールの見ている世界の一部を垣間見せたよ...
キュルケはそんなコルベールの差し出したサンドイッチを受け...
「…ほんと、先生って不思議な人ね」
「変な人、とはよく言われますが。不思議な人と言われたのは...
そしてそう笑顔で返す。
その笑顔には、先ほど感じた悲しみのようなものはもう感じら...
「じゃあとりあえず、今の望みを聞きましょうか。ご主人様?」
笑顔でキュルケはそう尋ねた。
「そうですね。
…キュルケと一緒に、お昼ご飯を食べること、ですかね?」
コルベールの言葉に、二人は声を出して笑ったのだった。
*キュルケ メイド実習 修了*
終了行:
492 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
キュルケが主人に選んだのはもちろんこの人。
「ダーリーーーーン♪」
メイド姿のキュルケは、そう叫んでコルベールの私室のドアを...
開いたドアの向こう側では、コルベールが机の上で書類を整理...
もちろん目が点になっている。
「あ、あの?ミス・ツェルプストー?」
学院長から実習の事は聞いていたが、まさか自分がターゲット...
全くもって認識の甘い中年である。
コルベールの時間を凍りつかせたまま、キュルケは無遠慮にコ...
「あら嫌だ、キュルケとお呼びになって♪」
「そうじゃなくてですねえっ」
首に回された手を乱暴に振り払うコルベール。
首筋に当たるやわらかい何かが気持ちよかったが、とりあえず...
「なんですかその格好っ」
まさか自分がターゲットになるとは露ほども思っていなかった...
全くもって、どうしようもなく認識の甘い中年である。
「あら、ご存知なくて?これは選択必修科目の『メイド実習』...
言ってキュルケは、にっこり笑ってくるりと回ってみせる。
長いエプロンドレスがひらりと舞い、黒と白と褐色と紅のコン...
「帰ってください」
しかし数多の戦場を駆け抜けてきたこの男には通じないらしい。
コルベールはそれだけ言うと、そっぽを向いて書類の整理に戻...
そのコルベールの態度に、キュルケは唖然とした。
自分でも行けると思ったのに。
普段見慣れない格好で気になるあの人に急接近!
恋愛のテクニックとしては中級クラスの技である。
普通の男なら、これでくらっとこないはずはないのだ。
いい例がルイズと才人である。
普段口うるさく騒ぎ立てるだけのルイズが、ちょっとドレス着...
あのぺったんこのラ・ヴァリエールですらあの鈍感魔人を反応...
このツェルプストーが!『微熱』のキュルケが!
こんな冴えない中年一人反応させられないなんてっ!
自分の想い人だというのに酷い言い草である。
493 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
しかしふと思い直してみる。
この実習、主に選ばれたものに拒否権は無い。実習開始時にシ...
ちらりとコルベールを見る。
視線が合った。
するとコルベールは、慌てて目を逸らす。
ははーん。
やはり学院長のお触れは、この冴えない中年教師にも伝わって...
コルベールの頬に伝った冷や汗が、その証だった。
「ねえセンセ」
キュルケの口がにやりと笑みの形に歪む。
「な、なんでしょうかミス」
コルベールはキュルケとは視線を合わさず、冷や汗をだらだら...
「学院長の指示を無視した教師はどうなるのかしら、先生?」
コルベールの汗の量が倍になる。
その場合、よくて減給、下手をすれば配置転換である。
復帰したばかりで色々物入りで、さらに自分の研究もあるコル...
「そ、それはですねえ」
「何も先生を困らせるつもりはありませんわ。実習の間だけ、...
そう言ってまた、コルベールの背後に回りこみ、首筋に手を回...
本当に、仕様がありませんねえ…。
コルベールは覚悟を決める。
「分かりました、その話お受けしましょう。
ただし条件があります」
「なぁにダーリン?」
「無用な接近と過度のスキンシップは禁止とします。
あと、『ダーリン』も禁止です」
「えぇ〜?」
「じゃないと合格は認めません」
そのコルベールの言葉に、キュルケは慌ててコルベールの首か...
そして尋ねた。
「じゃあ、なんと呼んだらいいのかしら?」
「そうですねえ」
コルベールは少し考える。
『ダーリン』もまずいが、メイド姿のキュルケに『ご主人様♪』...
…そうなると、答えは一つ。
「『先生』とお呼びください」
「えー」
「反論は認めません。嫌なら不合格にするまでです」
「…それじゃあ、こちらからも交換条件を」
「なんですか?」
「実習の間は私はあなたのメイドです。キュルケ、とお呼びく...
「え、でも」
「反論は認めません♪」
そうして、キュルケの『メイド実習』は幕を開けた。
494 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
結論から言って、実習は、キュルケの思惑とは大きく外れたも...
コルベールはいきなり、散らかった研究室の清掃・整頓をキュ...
元々かなり散らかっていたものが、数週間の放置で埃が溜まっ...
「…い、いつになったら終わるのよ…」
尽きない資料の山と埃の海に、キュルケは辟易していた。
掃除を始めてから、もう半日は経つだろうか。
始める前よりはずいぶんましにはなっていたが、まだコルベー...
「全く…研究熱心なのもいいけど、ちょっとは整理整頓ってもの...
「すいませんね昔から部屋の掃除だけは苦手でして」
いつの間にか背後にコルベールが立っていた。
はっとしてキュルケは口をつぐむ。
そんなキュルケの肩をぽんと叩いて、コルベールはすぐ近くの...
「ちょ、そんな先生、掃除は私が」
「二人で一緒にすれば早いでしょう?」
にっこり笑って、コルベールは手にした本を本棚に入れた。
そして言った。
「ね、キュルケ?」
にっこり笑って笑顔を向けられた瞬間、キュルケの頬が朱に染...
わ、私が、『微熱』のキュルケともあろうものが、名前を呼ば...
「ほら、貸してください。重い本は私が」
「え、でも」
そしてキュルケの持っていた分厚い辞典を奪い取る。
相手が自分のいう事を聞かないのは少し癪だったが、好きな人...
495 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
「ほら、早く終わったでしょう?」
「ええ、そうですわね」
二人で協力した甲斐もあって、掃除は昼を少し回った頃に終焉...
部屋はまるで別の場所のように整理整頓されていた。
キュルケもコルベールも、掃除の疲労でヘトヘトだった。
二人で椅子の背に身体を預け、脱力していた。
ぐぎゅぅ〜っ
唐突に、犬の唸るような音が響いた。
「…あ」
キュルケの腹の虫であった。
キュルケの頬は羞恥で赤く染まる。
「お腹、すきましたね。そういえば」
言ってコルベールはにっこりと笑う。
そして立ち上がる。
「用意してきますよ、お昼」
「え」
それは本来、メイド実習中であるキュルケの役目である。
そう思ってキュルケは、コルベールを止めようとしたが。
「待ってください、それは私の」
「キュルケはここで待っていてください。命令ですよ?」
コルベールはそう言って、部屋から出て行ってしまった。
コルベールが戻ってくると、何故かキュルケは椅子の上でむく...
「どうしました?」
コルベールは厨房でもらってきたサンドイッチを机の上に置く...
「どうして」
「はい?」
「どうして先生は、私に何もさせてくれないんですか?」
悲しそうな表情で、キュルケはコルベールを見上げる。
コルベールはその疑問に、笑顔で応えた。
496 名前:キュルケメイドする。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投...
「してくれたじゃないですか」
「え」
「キュルケは私に仕える、そう言ってくれました」
そして、キュルケの前の椅子に腰掛けて、サンドイッチを手に...
コルベールは続ける。
「人に仕えるという事は、何でも命令を聞くということではな...
「え…じゃあ、どういう事なんです?」
「人に仕えるという事は、その人の望みを叶える手伝いをする...
人の望みとは、その人の手によってのみ叶えられるもの。
他人には決して与えられるものじゃないんですよ」
言って笑顔をキュルケに向ける。
その笑顔はどことなく泣いているようで。
キュルケに、コルベールの見ている世界の一部を垣間見せたよ...
キュルケはそんなコルベールの差し出したサンドイッチを受け...
「…ほんと、先生って不思議な人ね」
「変な人、とはよく言われますが。不思議な人と言われたのは...
そしてそう笑顔で返す。
その笑顔には、先ほど感じた悲しみのようなものはもう感じら...
「じゃあとりあえず、今の望みを聞きましょうか。ご主人様?」
笑顔でキュルケはそう尋ねた。
「そうですね。
…キュルケと一緒に、お昼ご飯を食べること、ですかね?」
コルベールの言葉に、二人は声を出して笑ったのだった。
*キュルケ メイド実習 修了*
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