ゼロの使い魔保管庫
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259 名前:その名はイーヴァルディ[sage] 投稿日:2007/04/15...
夜というのはどうしてこうも不気味で静かなのだろうと、タ...
窓越しの闇に唸る風が木々を揺らし、葉を舞い散らせる音は...
ようにも聞こえる。大人になれば恐くなくなるだろうという子...
その音を聞けば未だに不安な気持ちになる。どれだけ年を取っ...
闇は変わりなく恐ろしいらしい。
(わたしがまだ子供なだけかもしれないけど)
小さくため息を吐きながら、タバサは萎縮しそうになる心を...
明日が虚無の曜日だからとついつい読書に熱中して、気付け...
行くのも忘れていたためにこみ上げる尿意を抑えきれなくなり...
せてきた帰りなのである。
それにしても暗い。手元のランプの明りがごく狭い範囲しか...
曇りがちな天気なために、あまり月明かりを頼りにできないこ...
の中も、闇に飲まれるとまた別の表情を見せる。やけに大きな...
しないくせに今はやたらと大きく見える壁の汚れや染みも、何...
(大丈夫、わたしは吸血鬼やオーク鬼とだって戦ったことがあ...
自分にそう言い聞かせながらも、タバサはやはり落ち着かな...
いている。ちょっとした物音にもびくりと体を震わせてしまう...
仕方のないことだ、とは思う。怪物を倒したことがあるとい...
ことぐらい、タバサ自身にもよく分かっているのだ。
怪物というのは、あくまでも生物である。もちろん人間にと...
それでも対処法がない訳ではない。だから、襲われても何とか...
だが、幽霊は違う。生き物ですらない。もっと訳の分からな...
人間でも、幽霊に対しては恐怖心を抑えられないだろう。人間...
から。
要するに幽霊との戦い方が分かっていれば恐れる必要などな...
主でもなければ知らないだろう。彼らですら知らないかもしれ...
そんなことをつらつらと考えている内に、自分の部屋の前に...
ドアノブに手をかける。
だが、扉を開く直前、視界の隅を何かぼんやりと発光する物...
の方向を見ると、廊下の角に青白く光る何かが消えていくとこ...
260 名前:その名はイーヴァルディ[sage] 投稿日:2007/04/15...
ごくりと唾を飲み込みながら、タバサは一度部屋の中に入っ...
を追って走り出した。もちろん、恐いことは恐い。だが、もし...
放っておくわけにはいかない。
(もしかしたら、またルイズを狙って誰かが来たのかもしれな...
タバサは緊張しながらも忍び足で廊下を進み、壁の縁から曲...
もない廊下は暗く、本来ならば先の方を見通すことなどとても...
先ほどの青白い物体がゆっくりと歩いているせいで、その周囲...
(歩いている?)
そう、その物体は歩いていた。ということは、つまり人の形...
光を発するランプでも持っているのか、それとも人影自体が発...
ど聞いたことがないし、そういう化け物も知らない。だとする...
(そんなこと、考えちゃダメ)
タバサは小さく首を振って不吉な想像を頭の中から追い出す...
た。不審な人影と一気に距離を詰めるべく駆け出そうとして、...
先ほどまで確かにこの目で捉えていたはずの人影が、跡形も...
すら残さず、一瞬できれいに消えてしまった。
数秒も呆然としたあと、不意に恐怖が襲い掛かってきた。
人影の正体が何であれ、あのタイミングで消えるというのは...
いて何らかのリアクションを起こそうとしているのは間違いな...
タバサは瞬時に壁に背をつけ、極限まで目を見開き、鳥のよ...
を見回した。ひどく喉が渇いているくせに、背中からは異様な...
を詠唱する声は自分でも聞き取れないほど掠れきっていた。杖...
(どこ、どこから来るの、何が来るの)
恐怖に揺さぶられる心に、落ち着け、落ち着け、と絶え間な...
で何を根拠として落ち着けばいいというのか、自分でもよく分...
とにかく、何かあったらすぐに「ウィンディ・アイシクル」...
不意に肩を叩かれた。
悲鳴は上げなかった。というよりも、上げられなかった。口...
まったのだ。
(後ろは壁のはず)
一応心の中で再確認しつつ、タバサは目玉だけを動かしてで...
白い手が乗せられていた。青白い、というのは不健康な肌の色...
青白く発光しているのである。間違いなく、先ほどの人影の腕...
杖に溜めていた魔力が、形を保てずに霧散する。だがそんな...
魔法を浴びせたところで何になるというのか。
261 名前:その名はイーヴァルディ[sage] 投稿日:2007/04/15...
(落ち着いてシャルロット。大丈夫、まだ肩を叩かれただけ。...
大丈夫)
我ながら名案を思いついたという気分で、タバサはおもむろ...
み出した。同時に、例の青白い手もずるりと肩から滑り落ちる。
(自由への逃避)
いつだか読んだ本のタイトルを頭の中に思い浮かべながら、...
曲がったところですぐに立ち止まってしまう。曲がってすぐの...
たのである。
タバサは驚愕と恐怖に動けなくなりながらも、驚くほどの冷...
人影は、ローブを身に纏っていた。裾のところがボロボロで...
り昔のデザインのものだ。体型は長身で、痩せている。顎から...
うやら老人らしいが、それにしては異様なほどに背筋がぴしり...
こではなく、人影の顔である。深い皺に覆われた顔の中央、本...
かった。眼窩がぽっかりと開いて、闇が目玉の代わりに収まっ...
全身から不可思議な青白い光を立ち上らせているところから...
そういう事実を再確認してなおさら体を硬くするタバサの前...
ろしい顔を間近まで突きつけ、暗い眼窩を彼女の目線に合わせ...
そして、にたりと笑った。
自分が後ろ向きに倒れていくのを自覚しながら、タバサは「...
人事のように思った。
すっかり眠り込んでいたキュルケは、誰かが部屋の外でぼそ...
を詠唱しているのを聞いて目を覚ました。
(誰よ、こんな時間に)
寝台の上で上半身を起こして目をこするのと同時に、扉の鍵...
ク」の呪文である。寝惚けていたキュルケの頭が急速に覚醒し...
(誰だか知らないけど、このわたしの寝所に忍び込もうとはい...
無礼な闖入者を黒焦げにしてやるべくキュルケが杖を取り出...
「待ちなさい、燃やされたくなきゃ」
脅し文句はそれ以上続かなかった。部屋に飛び込んできたの...
「タバサじゃない。どうしたのこんな夜中に」
何故かいつも以上に小さく見える友人は、全く返事をしなか...
の扉に「ロック」の呪文を重ねがけする。さらに安全を確認す...
たあと、キュルケの寝台に飛び込んできた。
あとはもうぶるぶる震えて布団を被るばかりである。かなり...
も何も答えず、ただただ青い顔で杖を握り締めているだけだ。
(恐い夢でも見たのかしらね)
タバサの年を考えると失礼な推測ではあったが、今の彼女を...
よく知る友人の意外な一面に微笑みながら、キュルケもまた...
しめた。
結局その日の夜、タバサはキュルケにしがみついたままずっ...
終了行:
259 名前:その名はイーヴァルディ[sage] 投稿日:2007/04/15...
夜というのはどうしてこうも不気味で静かなのだろうと、タ...
窓越しの闇に唸る風が木々を揺らし、葉を舞い散らせる音は...
ようにも聞こえる。大人になれば恐くなくなるだろうという子...
その音を聞けば未だに不安な気持ちになる。どれだけ年を取っ...
闇は変わりなく恐ろしいらしい。
(わたしがまだ子供なだけかもしれないけど)
小さくため息を吐きながら、タバサは萎縮しそうになる心を...
明日が虚無の曜日だからとついつい読書に熱中して、気付け...
行くのも忘れていたためにこみ上げる尿意を抑えきれなくなり...
せてきた帰りなのである。
それにしても暗い。手元のランプの明りがごく狭い範囲しか...
曇りがちな天気なために、あまり月明かりを頼りにできないこ...
の中も、闇に飲まれるとまた別の表情を見せる。やけに大きな...
しないくせに今はやたらと大きく見える壁の汚れや染みも、何...
(大丈夫、わたしは吸血鬼やオーク鬼とだって戦ったことがあ...
自分にそう言い聞かせながらも、タバサはやはり落ち着かな...
いている。ちょっとした物音にもびくりと体を震わせてしまう...
仕方のないことだ、とは思う。怪物を倒したことがあるとい...
ことぐらい、タバサ自身にもよく分かっているのだ。
怪物というのは、あくまでも生物である。もちろん人間にと...
それでも対処法がない訳ではない。だから、襲われても何とか...
だが、幽霊は違う。生き物ですらない。もっと訳の分からな...
人間でも、幽霊に対しては恐怖心を抑えられないだろう。人間...
から。
要するに幽霊との戦い方が分かっていれば恐れる必要などな...
主でもなければ知らないだろう。彼らですら知らないかもしれ...
そんなことをつらつらと考えている内に、自分の部屋の前に...
ドアノブに手をかける。
だが、扉を開く直前、視界の隅を何かぼんやりと発光する物...
の方向を見ると、廊下の角に青白く光る何かが消えていくとこ...
260 名前:その名はイーヴァルディ[sage] 投稿日:2007/04/15...
ごくりと唾を飲み込みながら、タバサは一度部屋の中に入っ...
を追って走り出した。もちろん、恐いことは恐い。だが、もし...
放っておくわけにはいかない。
(もしかしたら、またルイズを狙って誰かが来たのかもしれな...
タバサは緊張しながらも忍び足で廊下を進み、壁の縁から曲...
もない廊下は暗く、本来ならば先の方を見通すことなどとても...
先ほどの青白い物体がゆっくりと歩いているせいで、その周囲...
(歩いている?)
そう、その物体は歩いていた。ということは、つまり人の形...
光を発するランプでも持っているのか、それとも人影自体が発...
ど聞いたことがないし、そういう化け物も知らない。だとする...
(そんなこと、考えちゃダメ)
タバサは小さく首を振って不吉な想像を頭の中から追い出す...
た。不審な人影と一気に距離を詰めるべく駆け出そうとして、...
先ほどまで確かにこの目で捉えていたはずの人影が、跡形も...
すら残さず、一瞬できれいに消えてしまった。
数秒も呆然としたあと、不意に恐怖が襲い掛かってきた。
人影の正体が何であれ、あのタイミングで消えるというのは...
いて何らかのリアクションを起こそうとしているのは間違いな...
タバサは瞬時に壁に背をつけ、極限まで目を見開き、鳥のよ...
を見回した。ひどく喉が渇いているくせに、背中からは異様な...
を詠唱する声は自分でも聞き取れないほど掠れきっていた。杖...
(どこ、どこから来るの、何が来るの)
恐怖に揺さぶられる心に、落ち着け、落ち着け、と絶え間な...
で何を根拠として落ち着けばいいというのか、自分でもよく分...
とにかく、何かあったらすぐに「ウィンディ・アイシクル」...
不意に肩を叩かれた。
悲鳴は上げなかった。というよりも、上げられなかった。口...
まったのだ。
(後ろは壁のはず)
一応心の中で再確認しつつ、タバサは目玉だけを動かしてで...
白い手が乗せられていた。青白い、というのは不健康な肌の色...
青白く発光しているのである。間違いなく、先ほどの人影の腕...
杖に溜めていた魔力が、形を保てずに霧散する。だがそんな...
魔法を浴びせたところで何になるというのか。
261 名前:その名はイーヴァルディ[sage] 投稿日:2007/04/15...
(落ち着いてシャルロット。大丈夫、まだ肩を叩かれただけ。...
大丈夫)
我ながら名案を思いついたという気分で、タバサはおもむろ...
み出した。同時に、例の青白い手もずるりと肩から滑り落ちる。
(自由への逃避)
いつだか読んだ本のタイトルを頭の中に思い浮かべながら、...
曲がったところですぐに立ち止まってしまう。曲がってすぐの...
たのである。
タバサは驚愕と恐怖に動けなくなりながらも、驚くほどの冷...
人影は、ローブを身に纏っていた。裾のところがボロボロで...
り昔のデザインのものだ。体型は長身で、痩せている。顎から...
うやら老人らしいが、それにしては異様なほどに背筋がぴしり...
こではなく、人影の顔である。深い皺に覆われた顔の中央、本...
かった。眼窩がぽっかりと開いて、闇が目玉の代わりに収まっ...
全身から不可思議な青白い光を立ち上らせているところから...
そういう事実を再確認してなおさら体を硬くするタバサの前...
ろしい顔を間近まで突きつけ、暗い眼窩を彼女の目線に合わせ...
そして、にたりと笑った。
自分が後ろ向きに倒れていくのを自覚しながら、タバサは「...
人事のように思った。
すっかり眠り込んでいたキュルケは、誰かが部屋の外でぼそ...
を詠唱しているのを聞いて目を覚ました。
(誰よ、こんな時間に)
寝台の上で上半身を起こして目をこするのと同時に、扉の鍵...
ク」の呪文である。寝惚けていたキュルケの頭が急速に覚醒し...
(誰だか知らないけど、このわたしの寝所に忍び込もうとはい...
無礼な闖入者を黒焦げにしてやるべくキュルケが杖を取り出...
「待ちなさい、燃やされたくなきゃ」
脅し文句はそれ以上続かなかった。部屋に飛び込んできたの...
「タバサじゃない。どうしたのこんな夜中に」
何故かいつも以上に小さく見える友人は、全く返事をしなか...
の扉に「ロック」の呪文を重ねがけする。さらに安全を確認す...
たあと、キュルケの寝台に飛び込んできた。
あとはもうぶるぶる震えて布団を被るばかりである。かなり...
も何も答えず、ただただ青い顔で杖を握り締めているだけだ。
(恐い夢でも見たのかしらね)
タバサの年を考えると失礼な推測ではあったが、今の彼女を...
よく知る友人の意外な一面に微笑みながら、キュルケもまた...
しめた。
結局その日の夜、タバサはキュルケにしがみついたままずっ...
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