ゼロの使い魔保管庫
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**ゼロの飼い犬1 事の発端? ...
人生には転機というものがある。
俺こと平賀才人みたいに、「突如異世界に召還される」なん...
極端な転機が訪れる人間は滅多にいないと思うが、
とにかく、人の生活は何かしらの転機でがらりと変わる。
その転機というものは、それが起きた時には気付かない事も...
今、思い返すと、あれがひとつのきっかけだったのかもしれ...
もしあの出来事が無かったなら、”今”は全く別のものになって...
呆れて笑ってしまうような些細な出来事だったけど、あの時が...
〜 ゼロの飼い犬 〜
■1
それは、俺がこの世界、ハルケギニアに来てからさほど時間...
俺とその主人が、自分達がガンダールヴと虚無の担い手であ...
「たらいま〜」
取り込んだばかりの、日向のいい匂いが漂う洗濯物が一杯に...
俺は”ご主人様”の部屋のドアを開けた。机の上にかごを下ろす...
使い魔というか、小間使いの仕事に順応してしまっている自...
俺はちらりとベッドの方へ目を向けた。
一人で寝るには大きすぎるんじゃないかと思える(でも俺は...
天蓋付きのベッドの上には、輝くような桃色がかったブロンド...
俺のご主人様を自称する、ルイズお嬢様が座り込んでいた。
どうやら、俺が部屋に入ってきたことに気づいていないよう...
「……?」
ルイズは膝を抱え込むような不自然な格好で、妙に真剣な顔...
何事かと思って近づいてみると、ルイズはその手に小さな裁...
「何やってんだ?」
「わひゃあっ!?」
ベッドの傍まで寄って聞くと、ルイズは素っ頓狂な声を上げ...
「なっ、ななな、何よ! いつの間に帰ってきたのよ! ノッ...
「してから入ったぞ。気付かないお前が悪いんじゃねーのか?」
「わたしは聞いてないわ、ちゃんと返事するまで待ちなさいよ...
ルイズは鼻息も荒く、ハサミを握り締めて文句を言ってくる。
「わーったよ、すみませんねぇ。で、そんなに集中するほど何...
「足の爪を切ってたのよ。文句ある?」
「爪?」
ハサミで? と思ったが、どうやらこの世界では爪切りは無...
なるほど、ルイズはベッドの上に布を敷いて、そこに生足を...
「全然切れてないじゃん」
ルイズが自分で抱え込んだ足の先の爪には、白い部分がかな...
「う、うるさいわね。今切り始めたばかりよ。それに、ご主人...
ルイズは頬を赤くして、手で自分の両足の指を隠した。
ははーん。そこで気付く。
「……お前、足の爪切るの苦手だろ」
「な、何言ってるのよ! そんなわけないでしょ! このヴァ...
いや、たぶん家は関係ないから。この反応は図星だな。
「まー、仕方ないかな。お前、何やっても不器用だもんなぁ」
このルイズと一緒に暮らすようになってさほど時間は経って...
微妙な力加減を必要とする作業が極端に苦手なことはよくわか...
■2
「馬鹿にしないでよね! 何よ、足の爪くらいっ!」
ルイズは殺意のこもった目で俺を一瞥してから、再び足の指...
が、ハサミを持った手はぶるぶる小刻みに震えている上に、妙...
どうやら、運動もあまりしていないせいか、体も固いらしい。...
「俺が切ってやろうか?」
見かねて、助け舟を出してやる。
「馬鹿にしないでって言ってるでしょ! 何でアンタに…」
「いやでも、こういう仕事って使い魔にやらせるものだったり...
着替えや洗顔、ブラッシングまでやらされているのだ。逆に...
「あ……そうね、こんなの貴族が自分でやる仕事じゃないわね。...
その発想は無かったわ、という顔をして、ルイズはハサミを...
「あいよ。じゃ、ベッドに腰掛けるみたいにしてくれ」
ベッドに敷かれていた布をとって、ベッドの脇の床に置く。...
言われたとおりにベッドに腰掛け、足を布の上に投げ出した。
「じゃ、失礼しますよー」
まずは右足から。ルイズの足のかかとの辺りを持って、少し...
「ひぁっ!? な、何すんのよ!」
びくん、と足を跳ねさせるルイズ。危うく顎にヒットすると...
「あぶねーな、何って、触らなきゃ切れるわけないだろうが」
「触り方がヘンだったわ!」
「ただ持つのにヘンも何もあるかよ…」
ため息をついて、もう一度ルイズの足を掴む。ルイズはまた...
今度は蹴り上げたりはしてこなかった。
「(うわ、ちっちゃ……)」
あらためて手に持ってみると、その足の小ささに驚いた。足...
まるで子供の足みたいな印象。口に出したらルイズは起こるだ...
大きさの差に、つい壊れ物を扱うような気分にさせられてしま...
そして、その芸術品みたいな足に不似合いな、伸びてしまっ...
使い魔だからとかそういうのではなく、このままにしておくの...
「それにしても伸びてるなぁ。これだと、いつも履いてる長い...
「えっ! み、見たの!?」
「へ?」
慌てるルイズの顔を見ると、しまった、といった表情をして...
どうやら本当に穴が開いたままのソックスを履いてしまってい...
「そりゃみっともないやら勿体無いやら。切ってやるから安心...
「うう〜、また馬鹿にして…」
つい笑ってしまいそうになるのを堪えつつ、ハサミを構えて...
……すると、俺の左手のルーンが僅かに熱を持ち、光を発した。
あれ、何でだろ。俺はルイズの使い魔になってから、このル...
なったらしい事はわかっていたけど、今持ってるのはハサミだ...
ひょっとしたら、他人に向けて使ってるときは武器って扱い...
一応これでも人を傷付けることはできるわけだし。
首をかしげつつも、これ幸いとハサミを手の中でくるくる回...
やっぱり、今までよりも格段に軽快に使える。これなら思い通...
パチン、パチン、パチン。
「んっ……!」
ハサミを入れるたびに身じろぎするルイズの体をものともせ...
ルーンの力のおかげってのもあるんだろうが、ルイズの爪が綺...
まるで美術品の手入れをしているようで妙に気分が良い。
■3
「ルイズの爪は柔らかいな」
「え……なによ、それ」
切っていても、引っかかって刃が止まる、などといったこと...
ルイズは鼻にかかった声で返事をした。
「褒めてるんだけど」
「いいわよ、そんなの……早くぜんぶ切っちゃってよ」
ルイズは俺の眼前に足を差し出してくる。失礼な態度だが、...
「(そういえば、俺も小さいころは母ちゃんに切ってもらった...
ルイズの態度が幼いころの自分と重なって微笑ましく思えつ...
スムーズに右足の爪を小指から親指まで切りそろえることがで...
「よし、おっけー」
うむ、我ながら言い出来だ。満足して頷き、ふっと息を吹き...
「〜〜〜っ!!」
ルイズは唇をきゅっとかみ締めて、全身を震えさせた。爪を...
しばらく硬直させてから、糸が切れたように力を抜いた。
「おい、ルイズ、どした?」
「……え……?」
「え? じゃないだろ。俺が聞いてるんだよ」
「何が…?」
ハサミで傷つけてしまったとかではないらしいが、ぼーっと...
床屋で髪を切ってもらっている間は眠くなるけど、あんな感...
「まぁいいや。ほら、次は左足出せよ」
「うん……わかった」
今度は素直に左足を差し出してくるルイズ。
何か調子狂うな、などと思いながら、そちらの足の爪も切って...
パチン、パチン、パチン。
「ん……はぁ……」
ルイズの様子に注意してみると、目を瞑り、頬に茜をさして...
その姿を見ていて爪を切る手が止まると、ルイズは薄く目を...
どうして止めちゃうの? とでも言いたげな様子で。
何となく照れくさくなって、爪を切る作業に戻る。
「………」
何だかよくわからないけど、可愛い。
普段俺に文句ばっかり言って、蹴る殴る鞭で叩くの暴虐を振...
安心しきって俺に体を預けてくれているんだと考えると、感慨...
でも、たぶん、この感慨はそれだけじゃなくて……。
小指から順に左足の爪も切っていき、ついに一通り切り終わ...
けど、これで手を放し、終わりと宣言してしまうと終わりなん...
「(他人の前に跪いて爪を切るなんてそんなに楽しい事じゃな...
自分の気持ちに違和感を覚えながら、何となく、ルイズの小...
「ふぁ……んっ、なに?」
それまで眠るみたいに目を閉じていたルイズはぱっちり目を...
「あー、いや、爪切りは終わったけど、せっかくだしマッサー...
「……そう、良い心がけね」
あれ? 蹴られる事も覚悟してたのに。ルイズは一瞬考える...
俺が咄嗟についた言い訳を真に受けてまた体の力を抜き、俺が...
何か、変だ。俺もルイズも。
■4
妙な空気になっていることを感じながらも、マッサージする...
「あっ……それ、いいかも……」
あまり運動しないからかな。ルイズの足の肌はすべすべで柔...
土踏まずをぎゅっぎゅっと押してやると、ルイズはため息にも...
左手でルイズの足を支えたまま、形の良い足の指を左手で摘...
「ふぁっ……!」
すると、ルイズは身を震わせて、一際高い声を上げた。
これは嫌がってる声じゃないな、ちょっと痛いけどそれ以上に...
「どうだ? これは気持ちいい?」
「うん、それいい……上手じゃない…。続けて」
力を加減しつつ、指を引っ張ったり左右に動かしたりしてや...
そのたびにルイズは身を固くしつつも、とろけたような吐息を...
そんなことをしているうちに、ルイズが「良さそう」な反応...
どうも、そのままマッサージをするよりも、くすぐったり撫で...
「はぁ……はぁ、ふぅ……はぁ……」
だんだんと、ルイズは意味のある言葉を喋らなくなってきた...
その両手はベッドシーツをきゅっと握りしめている。
こっちの顔も赤くなる。何だよ、何なんだよ、その反応。
「(うわ……こっちまでドキドキしてきた)」
ここで急に止めたら不自然だし、このまま続けても変なこと...
俺の頭の中まで熱くなって混乱しかける。それでもこの手が止...
ルイズが気持ちよさそうに反応する部分を探して、不自然に...
だって、俺の前でこのご主人様が大人しくなって、俺がする...
しかも、こんなにも堂々と肌に触れているのにおとがめ無し...
それどころかルイズの方から続けることをせがんでくるなんて...
この状況を、俺の方が楽しんでる……?
ルイズは、足指の付け根をくすぐられるのが「好き」らしい。
触れるか触れないかの力でそこを何度も触ってやると、ルイズ...
何だよ、止めろって言ってくれよ。『なに馴れ馴れしくいつ...
それで終わるのに。こんな事続けてたら……。続けてたら…?
「あっ……は、あっ、あ……あぁ……」
遂に声を我慢することができなくなったのか、ルイズは喉を...
その声を聞いて、ぞくぞくと背筋が震える。この声をもっと聞...
そんな衝動にかられて、さらに強く……ルイズを”愛撫”する。
「あっ…なんか……それっ…だめ、だめだめサイトっ……それ、それ...
嫌がっているような口ぶりなのに、本気で拒もうとはしてい...
感極まっていくルイズの声の、その先を知りたくて、続けて。...
「んっ……んんぅっ……!!!」
ぎゅっと身を縮こませて、ルイズはその小さな身体を強く震...
その姿はくらくらするほど可愛くて、いやらしくて……。
今まで俺が彼女にされた暴挙のぜんぶを忘れてしまうほど、...
「………っは、はぁ、はぁ、はぁっ……」
しばらく、呼吸の仕方も忘れてしまったみたいに息を止めて...
そのまま、夢心地の中にいるみたいに、とろんと呆けた瞳を...
……その目は、”いい”ってことだよな? 構わないんだよな?
鳶色の瞳に魅入られたみたいになってしまって、俺はそろそ...
ルイズの足から、かかとを通って、その上に。ふくらはぎはこ...
指先が移動するたびに体をびくびくさせるルイズが可愛くて、...
そして、ほとんど筋肉のついていない、細くてすべすべの太...
その奥を想像してごくりと唾を飲み込んだとき。
■5
「……だめーっ!!」
絞り出すような叫び声と共に、つま先で俺は思いっきりルイ...
「づっ!」「痛っ!」
その足先は薄く開いていた俺の口の中、前歯の辺りに当たっ...
「おい、蹴るこたねーだろ!?」
「だって、だって……!」
じーんと痛む歯を抑えながら、ちょっと涙目でルイズに文句...
すると、目の前に俺を蹴ったばかりのルイズの足が見えた。...
「あ、悪いっ」
俺の歯に当たって切れたのか。
そもそもいきなり俺を蹴ったルイズに否があるはずなのだが...
血が出ている指先を、口に含んだ。
「…………」
「…………」
時間が止まる。その状態のまま、俺とルイズは硬直した。
あれ、何してんだ俺。血が出てたからつい反射的に舐めちゃ...
いや、ルイズの足なら構わない。汚いなんて思わないし、む...
いくらなんでも変態じゃん。まずいじゃん。っていうか、ご主...
止まっていた時間は、たぶん実際には一秒にも満たないんだ...
そして、その異常な時間は、我がご主人様が発した、
「なっ、ななななな何してんのよ犬ーーーーーーーーーっっっ...
ついさっきまでのしおらしかった態度が夢だったかのような...
俺は全くの遠慮のない勢いで口に銜えていた足に蹴り飛ばされ...
「うわはっ!?」
ゴロゴロゴロ。世界が回る。
自分でも面白いくらいに見事に床を転がった俺は、寝床であ...
「ばっ、ばか! 変態! 信じらんない! でっ、ででで出て...
息を荒げたルイズの声が聞こえたが、顎を蹴られて頭を揺さ...
立ち上がれるわけもなく。
遠のいていく意識の中で、あぁ、俺はまた強烈なカンチガイ...
そう、この時は、ただのカンチガイで。大した意味もない、...
つづく
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**ゼロの飼い犬1 事の発端? ...
人生には転機というものがある。
俺こと平賀才人みたいに、「突如異世界に召還される」なん...
極端な転機が訪れる人間は滅多にいないと思うが、
とにかく、人の生活は何かしらの転機でがらりと変わる。
その転機というものは、それが起きた時には気付かない事も...
今、思い返すと、あれがひとつのきっかけだったのかもしれ...
もしあの出来事が無かったなら、”今”は全く別のものになって...
呆れて笑ってしまうような些細な出来事だったけど、あの時が...
〜 ゼロの飼い犬 〜
■1
それは、俺がこの世界、ハルケギニアに来てからさほど時間...
俺とその主人が、自分達がガンダールヴと虚無の担い手であ...
「たらいま〜」
取り込んだばかりの、日向のいい匂いが漂う洗濯物が一杯に...
俺は”ご主人様”の部屋のドアを開けた。机の上にかごを下ろす...
使い魔というか、小間使いの仕事に順応してしまっている自...
俺はちらりとベッドの方へ目を向けた。
一人で寝るには大きすぎるんじゃないかと思える(でも俺は...
天蓋付きのベッドの上には、輝くような桃色がかったブロンド...
俺のご主人様を自称する、ルイズお嬢様が座り込んでいた。
どうやら、俺が部屋に入ってきたことに気づいていないよう...
「……?」
ルイズは膝を抱え込むような不自然な格好で、妙に真剣な顔...
何事かと思って近づいてみると、ルイズはその手に小さな裁...
「何やってんだ?」
「わひゃあっ!?」
ベッドの傍まで寄って聞くと、ルイズは素っ頓狂な声を上げ...
「なっ、ななな、何よ! いつの間に帰ってきたのよ! ノッ...
「してから入ったぞ。気付かないお前が悪いんじゃねーのか?」
「わたしは聞いてないわ、ちゃんと返事するまで待ちなさいよ...
ルイズは鼻息も荒く、ハサミを握り締めて文句を言ってくる。
「わーったよ、すみませんねぇ。で、そんなに集中するほど何...
「足の爪を切ってたのよ。文句ある?」
「爪?」
ハサミで? と思ったが、どうやらこの世界では爪切りは無...
なるほど、ルイズはベッドの上に布を敷いて、そこに生足を...
「全然切れてないじゃん」
ルイズが自分で抱え込んだ足の先の爪には、白い部分がかな...
「う、うるさいわね。今切り始めたばかりよ。それに、ご主人...
ルイズは頬を赤くして、手で自分の両足の指を隠した。
ははーん。そこで気付く。
「……お前、足の爪切るの苦手だろ」
「な、何言ってるのよ! そんなわけないでしょ! このヴァ...
いや、たぶん家は関係ないから。この反応は図星だな。
「まー、仕方ないかな。お前、何やっても不器用だもんなぁ」
このルイズと一緒に暮らすようになってさほど時間は経って...
微妙な力加減を必要とする作業が極端に苦手なことはよくわか...
■2
「馬鹿にしないでよね! 何よ、足の爪くらいっ!」
ルイズは殺意のこもった目で俺を一瞥してから、再び足の指...
が、ハサミを持った手はぶるぶる小刻みに震えている上に、妙...
どうやら、運動もあまりしていないせいか、体も固いらしい。...
「俺が切ってやろうか?」
見かねて、助け舟を出してやる。
「馬鹿にしないでって言ってるでしょ! 何でアンタに…」
「いやでも、こういう仕事って使い魔にやらせるものだったり...
着替えや洗顔、ブラッシングまでやらされているのだ。逆に...
「あ……そうね、こんなの貴族が自分でやる仕事じゃないわね。...
その発想は無かったわ、という顔をして、ルイズはハサミを...
「あいよ。じゃ、ベッドに腰掛けるみたいにしてくれ」
ベッドに敷かれていた布をとって、ベッドの脇の床に置く。...
言われたとおりにベッドに腰掛け、足を布の上に投げ出した。
「じゃ、失礼しますよー」
まずは右足から。ルイズの足のかかとの辺りを持って、少し...
「ひぁっ!? な、何すんのよ!」
びくん、と足を跳ねさせるルイズ。危うく顎にヒットすると...
「あぶねーな、何って、触らなきゃ切れるわけないだろうが」
「触り方がヘンだったわ!」
「ただ持つのにヘンも何もあるかよ…」
ため息をついて、もう一度ルイズの足を掴む。ルイズはまた...
今度は蹴り上げたりはしてこなかった。
「(うわ、ちっちゃ……)」
あらためて手に持ってみると、その足の小ささに驚いた。足...
まるで子供の足みたいな印象。口に出したらルイズは起こるだ...
大きさの差に、つい壊れ物を扱うような気分にさせられてしま...
そして、その芸術品みたいな足に不似合いな、伸びてしまっ...
使い魔だからとかそういうのではなく、このままにしておくの...
「それにしても伸びてるなぁ。これだと、いつも履いてる長い...
「えっ! み、見たの!?」
「へ?」
慌てるルイズの顔を見ると、しまった、といった表情をして...
どうやら本当に穴が開いたままのソックスを履いてしまってい...
「そりゃみっともないやら勿体無いやら。切ってやるから安心...
「うう〜、また馬鹿にして…」
つい笑ってしまいそうになるのを堪えつつ、ハサミを構えて...
……すると、俺の左手のルーンが僅かに熱を持ち、光を発した。
あれ、何でだろ。俺はルイズの使い魔になってから、このル...
なったらしい事はわかっていたけど、今持ってるのはハサミだ...
ひょっとしたら、他人に向けて使ってるときは武器って扱い...
一応これでも人を傷付けることはできるわけだし。
首をかしげつつも、これ幸いとハサミを手の中でくるくる回...
やっぱり、今までよりも格段に軽快に使える。これなら思い通...
パチン、パチン、パチン。
「んっ……!」
ハサミを入れるたびに身じろぎするルイズの体をものともせ...
ルーンの力のおかげってのもあるんだろうが、ルイズの爪が綺...
まるで美術品の手入れをしているようで妙に気分が良い。
■3
「ルイズの爪は柔らかいな」
「え……なによ、それ」
切っていても、引っかかって刃が止まる、などといったこと...
ルイズは鼻にかかった声で返事をした。
「褒めてるんだけど」
「いいわよ、そんなの……早くぜんぶ切っちゃってよ」
ルイズは俺の眼前に足を差し出してくる。失礼な態度だが、...
「(そういえば、俺も小さいころは母ちゃんに切ってもらった...
ルイズの態度が幼いころの自分と重なって微笑ましく思えつ...
スムーズに右足の爪を小指から親指まで切りそろえることがで...
「よし、おっけー」
うむ、我ながら言い出来だ。満足して頷き、ふっと息を吹き...
「〜〜〜っ!!」
ルイズは唇をきゅっとかみ締めて、全身を震えさせた。爪を...
しばらく硬直させてから、糸が切れたように力を抜いた。
「おい、ルイズ、どした?」
「……え……?」
「え? じゃないだろ。俺が聞いてるんだよ」
「何が…?」
ハサミで傷つけてしまったとかではないらしいが、ぼーっと...
床屋で髪を切ってもらっている間は眠くなるけど、あんな感...
「まぁいいや。ほら、次は左足出せよ」
「うん……わかった」
今度は素直に左足を差し出してくるルイズ。
何か調子狂うな、などと思いながら、そちらの足の爪も切って...
パチン、パチン、パチン。
「ん……はぁ……」
ルイズの様子に注意してみると、目を瞑り、頬に茜をさして...
その姿を見ていて爪を切る手が止まると、ルイズは薄く目を...
どうして止めちゃうの? とでも言いたげな様子で。
何となく照れくさくなって、爪を切る作業に戻る。
「………」
何だかよくわからないけど、可愛い。
普段俺に文句ばっかり言って、蹴る殴る鞭で叩くの暴虐を振...
安心しきって俺に体を預けてくれているんだと考えると、感慨...
でも、たぶん、この感慨はそれだけじゃなくて……。
小指から順に左足の爪も切っていき、ついに一通り切り終わ...
けど、これで手を放し、終わりと宣言してしまうと終わりなん...
「(他人の前に跪いて爪を切るなんてそんなに楽しい事じゃな...
自分の気持ちに違和感を覚えながら、何となく、ルイズの小...
「ふぁ……んっ、なに?」
それまで眠るみたいに目を閉じていたルイズはぱっちり目を...
「あー、いや、爪切りは終わったけど、せっかくだしマッサー...
「……そう、良い心がけね」
あれ? 蹴られる事も覚悟してたのに。ルイズは一瞬考える...
俺が咄嗟についた言い訳を真に受けてまた体の力を抜き、俺が...
何か、変だ。俺もルイズも。
■4
妙な空気になっていることを感じながらも、マッサージする...
「あっ……それ、いいかも……」
あまり運動しないからかな。ルイズの足の肌はすべすべで柔...
土踏まずをぎゅっぎゅっと押してやると、ルイズはため息にも...
左手でルイズの足を支えたまま、形の良い足の指を左手で摘...
「ふぁっ……!」
すると、ルイズは身を震わせて、一際高い声を上げた。
これは嫌がってる声じゃないな、ちょっと痛いけどそれ以上に...
「どうだ? これは気持ちいい?」
「うん、それいい……上手じゃない…。続けて」
力を加減しつつ、指を引っ張ったり左右に動かしたりしてや...
そのたびにルイズは身を固くしつつも、とろけたような吐息を...
そんなことをしているうちに、ルイズが「良さそう」な反応...
どうも、そのままマッサージをするよりも、くすぐったり撫で...
「はぁ……はぁ、ふぅ……はぁ……」
だんだんと、ルイズは意味のある言葉を喋らなくなってきた...
その両手はベッドシーツをきゅっと握りしめている。
こっちの顔も赤くなる。何だよ、何なんだよ、その反応。
「(うわ……こっちまでドキドキしてきた)」
ここで急に止めたら不自然だし、このまま続けても変なこと...
俺の頭の中まで熱くなって混乱しかける。それでもこの手が止...
ルイズが気持ちよさそうに反応する部分を探して、不自然に...
だって、俺の前でこのご主人様が大人しくなって、俺がする...
しかも、こんなにも堂々と肌に触れているのにおとがめ無し...
それどころかルイズの方から続けることをせがんでくるなんて...
この状況を、俺の方が楽しんでる……?
ルイズは、足指の付け根をくすぐられるのが「好き」らしい。
触れるか触れないかの力でそこを何度も触ってやると、ルイズ...
何だよ、止めろって言ってくれよ。『なに馴れ馴れしくいつ...
それで終わるのに。こんな事続けてたら……。続けてたら…?
「あっ……は、あっ、あ……あぁ……」
遂に声を我慢することができなくなったのか、ルイズは喉を...
その声を聞いて、ぞくぞくと背筋が震える。この声をもっと聞...
そんな衝動にかられて、さらに強く……ルイズを”愛撫”する。
「あっ…なんか……それっ…だめ、だめだめサイトっ……それ、それ...
嫌がっているような口ぶりなのに、本気で拒もうとはしてい...
感極まっていくルイズの声の、その先を知りたくて、続けて。...
「んっ……んんぅっ……!!!」
ぎゅっと身を縮こませて、ルイズはその小さな身体を強く震...
その姿はくらくらするほど可愛くて、いやらしくて……。
今まで俺が彼女にされた暴挙のぜんぶを忘れてしまうほど、...
「………っは、はぁ、はぁ、はぁっ……」
しばらく、呼吸の仕方も忘れてしまったみたいに息を止めて...
そのまま、夢心地の中にいるみたいに、とろんと呆けた瞳を...
……その目は、”いい”ってことだよな? 構わないんだよな?
鳶色の瞳に魅入られたみたいになってしまって、俺はそろそ...
ルイズの足から、かかとを通って、その上に。ふくらはぎはこ...
指先が移動するたびに体をびくびくさせるルイズが可愛くて、...
そして、ほとんど筋肉のついていない、細くてすべすべの太...
その奥を想像してごくりと唾を飲み込んだとき。
■5
「……だめーっ!!」
絞り出すような叫び声と共に、つま先で俺は思いっきりルイ...
「づっ!」「痛っ!」
その足先は薄く開いていた俺の口の中、前歯の辺りに当たっ...
「おい、蹴るこたねーだろ!?」
「だって、だって……!」
じーんと痛む歯を抑えながら、ちょっと涙目でルイズに文句...
すると、目の前に俺を蹴ったばかりのルイズの足が見えた。...
「あ、悪いっ」
俺の歯に当たって切れたのか。
そもそもいきなり俺を蹴ったルイズに否があるはずなのだが...
血が出ている指先を、口に含んだ。
「…………」
「…………」
時間が止まる。その状態のまま、俺とルイズは硬直した。
あれ、何してんだ俺。血が出てたからつい反射的に舐めちゃ...
いや、ルイズの足なら構わない。汚いなんて思わないし、む...
いくらなんでも変態じゃん。まずいじゃん。っていうか、ご主...
止まっていた時間は、たぶん実際には一秒にも満たないんだ...
そして、その異常な時間は、我がご主人様が発した、
「なっ、ななななな何してんのよ犬ーーーーーーーーーっっっ...
ついさっきまでのしおらしかった態度が夢だったかのような...
俺は全くの遠慮のない勢いで口に銜えていた足に蹴り飛ばされ...
「うわはっ!?」
ゴロゴロゴロ。世界が回る。
自分でも面白いくらいに見事に床を転がった俺は、寝床であ...
「ばっ、ばか! 変態! 信じらんない! でっ、ででで出て...
息を荒げたルイズの声が聞こえたが、顎を蹴られて頭を揺さ...
立ち上がれるわけもなく。
遠のいていく意識の中で、あぁ、俺はまた強烈なカンチガイ...
そう、この時は、ただのカンチガイで。大した意味もない、...
つづく
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