ゼロの使い魔保管庫
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**ゼロの飼い犬2 天使の指先 ...
■1
「それでは、本日の授業はここまでです。復習を欠かさないで...
シュブルーズ先生が講義に使った器具を片付け、教室を出て...
途端に騒がしくなった教室の中で、わたしはほとんど真っ白...
授業の内容が全然頭に入らなかった。あの使い魔のせいだ。...
ヒラガサイト。つい一週間くらい前に召還してしまった、わ...
今日は用事を言いつけているので、一緒に授業を聞いてはいな...
平民のくせに、しかも使い魔のくせにちっともわたしに尽く...
昨日はどういう風の吹き回しかわたしの爪を切ってやるとか言...
それだけなら、やっと自覚が出てきたのねと喜ぶ所なのだけ...
頬が赤くなってる事に気付いたわたしは、そのことを忌々し...
回りに見られないように顔を手のひらで隠すようにして頬杖を...
あいつの爪切りは、妙に上手かった。わたしが自分ですると...
しがちなんだけど、サイトは見てて気分が良くなるくらい綺麗...
でも、それだけだったら、あんなに…あんな、ヘンな気分には...
嬉しかった? 楽しかった? すっきりした?
……どれも、違う気がする。あいつが……普段ちっとも言うこと...
サイトが、わたしの前に跪いて、”使い魔らしく”わたしの体の...
すごく、満たされた。
平民にかしずかれることは珍しくもない。でも、それをあの...
でも、でもでも、それだけでもない。重要なのは、この先。
サイトは、マッサージするとか言って、爪切りが終わった後...
サイトが使い魔らしくしてるのは気分が良かったから、言う...
その時の感覚を思い出して、体がぶるっと震えた。何回目の...
でも……良かった。自分でも何でだかよくわからないくらい、...
足とか、足の指とか。ふだんはお風呂で洗うときくらいしか...
すごく気持ちよかった。そのままずっと続けられててもいいく...
触られてるのは足の先だけなのに、全身がぞくぞくするよう...
気持ちいいぞくぞく。そんな感じを味わったのは初めて。
それで、そんなのを続けられてたら、その時だけで消えてし...
体から抜けないで、どんどん溜まっていくような感じになって...
その一方でそのまま続けたらどうなるのか気になるわたしもい...
最後には、溜まっていた気持ちよさが一気に体を駆け抜ける...
「………はぁ……」
それを思い出した所で、ヘンな声が漏れて、慌てて口をつむ...
そう、こんな風に何度も思い返してしまうくらい、ショッキ...
だから、朝からたびたび上の空になって、授業にもちっとも身...
……で、その後あいつってば、調子に乗ったのか、私のふくら...
それがまた、指先が触れるだけでびりびり痺れるみたいにな...
これ以上続けられたらどうかなってしまう気がして怖くなった...
「ん………っ!」
”その時”の右足が、びくっと跳ねた。あの使い魔に……サイト...
ほんの一瞬の事だったけど、思い出すだけで足から体までぞ...
これが、一番衝撃的なこと。気持ちよかったわけじゃないと...
むしろ、あんな事されて、恥ずかしくて、信じられないのに。...
それなのに、まだあの感触がこの足に残って、消えない。思...
ヘンな感じになる。気持ちいいのに気持ち悪いような、モヤモ...
「はぁ〜〜〜〜っ」
大きくため息をついて、机に突っ伏す。これだわ。朝からこ...
あいつの事をこんなにいつも考えてなきゃいけないなんて、...
■2
「それがもう、すごぉ〜く良かったんだから。……ね、聞いてる...
「聞いてる」
思考が1ループしてやや落ち着いた所で、後ろの席での会話...
次の授業は同じ教室でやるから、休み時間だけど席についた...
顔を上げて確認しなくてもわかる。高慢でヤな性格してるツ...
無口で何を考えてるのかわからないタバサの二人だ。
黙って本のページを捲っているタバサにキュルケが一方的に...
「あんたの事だから経験無いんだろうけど、ホントに良かった...
興味ないで片づけるには勿体ないわよー、あのマッサージ」
「そう」
マッサージですって? キュルケは、今のわたしにとって非...
「……ね、それ、どういうこと?」
わたしは体を起こすと、後ろの席で話していたキュルケに聞...
「あら、妙なとこから反応があったわね。興味あるの、ヴァリ...
キュルケは目を丸くして聞いてきた。その横にいるタバサは...
「いや……あ、うん、まぁね……」
「別に遠慮する事じゃないわよ。エステの話をしてたの。トリ...
評判を聞いて行ってみたら、そこのマッサージが凄く良かった...
キュルケはわたしが話に乗ってきたのが意外なのか、得意げ...
「天使の指先」
「そ。王侯貴族にもよく利用されるくらい格式高いお店な上、...
予約を取るのも大変なその店一番のマッサージ師の人にしても...
それはもう、それこそ天にも昇るような心地よさだったわ〜♪」
キュルケはうっとりした声で頬に手を当てる。わたしは今ま...
知らなかったけど、彼女がここまで言うのだから相当なものな...
「……そんなに気持ちいいものなの? マッサージって」
「そうよ〜。ただ気持ちいいだけじゃなくて、美容にも最高な...
ほら、今日はお化粧のノリが一味違うでしょう?」
得意げに前髪をかき上げるキュルケ。でも、わたしには普段...
でも今、キュルケはとても重要な事を言った。
マッサージは気持ちが良いらしい。それも、天にも昇る心地...
そりゃ、私だってマッサージがそれなりに気持ちいいものだと...
キュルケがここまで言うのだから、誇張でも何でもなく、相当...
つまり、つまり。話をまとめると。マッサージは元々凄く気...
昨日わたしがサイトにされてヘンな気分になっちゃったのはお...
それにそれに、ついその時の事を思い出しちゃって、その……...
思っちゃったりしなくもないのも、ごくごく自然な反応。そう...
なら、無問題。わたしがヘンなわけでもサイトがヘンなわけ...
何よ、今日ずっと悩んでたのが馬鹿みたいじゃない。
「で、興味あるなら『天使の指先』、紹介してあげてもいいけ...
「あ、うん、また今度ね」
わたしが考えをまとめてるうちも、キュルケは話を続けてい...
とりあえずもう聞きたいことは聞けたし次の授業の先生が教...
わたしは話を切り上げて自分の机に向き直った。
……ちょっとだけ、胸が期待に高鳴っているのがわかった。
■3
「サイト」
その日の授業が終わった後。雑用が終わって部屋に戻ってき...
「え、はい、何でございましょう?」
サイトはびくっと体を硬直させて、変な言葉遣いでわたしに...
気に入らない態度だけど、昨日わたしが蹴っ飛ばしたせいか...
「その…」
「きっ、昨日は悪かった! 調子に乗りすぎました! もうし...
サイトはわたしの言葉より先に、へこへこ謝ってきた。その...
「それではあっしはこの辺で……」
そのまま妙に芝居がかった台詞を残し、そそくさと部屋を出...
「待ちなさい」
呼び止めると、サイトはぎくっと立ち止まり、怯えた表情で...
「なんだよぅ、昨日のことだったら謝ってるじゃないかよぅ……」
「何を勘違いしてるのよ。別に怒ろうってわけじゃないわ」
全く、こんな捨て犬みたいにびくびくした態度をとられたら...
「え、ホント?」
「嘘ついても仕方ないでしょ。こ、ここ、こっちに来なさい。...
手招きして呼ぶと、サイトは恐る恐るといった風でわたしが...
ほんとに、気が小さい犬みたいな態度。
「それじゃ、昨日のことがおとがめ無しなら、何の用なんだ?」
まだ半信半疑という目で、サイトはわたしの顔色を伺う。そ...
足の爪の手入れをしながら、時折わたしの様子を見ていた目に...
昨日のことを思い出してとくんと胸が高鳴ってしまい、慌て...
「……今日も、マッサージしなさい」
「へ?」
「きっ、昨日のがその……悪くなかったから、またやりなさいっ...
睨みつけると、サイトはきょとんとした顔をした。
「なんで? 昨日、最後は俺を蹴飛ばすほど嫌がってたじゃん」
「それはその、びっくりしたから……。蹴ったのは謝るわ」
ああもう、じれったい。何でわたしの気を察しないのよ。
サイトもサイトで、わたしを気持ちよくさせようと思ってマッ...
「まぁ……しろっていうならしてもいいけど、俺、素人だぜ? ...
「嘘!?」
「こんな事で嘘ついたって仕方ないだろ」
すごく手慣れてるみたいで、あんなに良かったのに。じゃあ...
キュルケの言ってたお店ではどうなんだろう。そう考えてみ...
してもらいたいとは思わなかった。とにかく今、サイトにして...
「ま、まぁどっちでもいいわ。じゃあ、お願い」
わたしは昨日と同じように、ベッドに腰掛ける。これだけで...
「んー、その格好だと、俺もお前も疲れると思うんだよな。ベ...
サイトはちょっと考え込むような様子を見せてから、そう言...
「どうして?」
「俺も詳しいわけじゃないけど、テレビとかで見た限りでは、...
てれびって何だろう。でも、確かに昨日は何度もベッドから...
逆にベッドの方に倒れそうになった。寝てる方がラクかもしれ...
「わかった」
ベッドに上がって、毛布の上に俯せになる。あ、でもこの格...
「俺もベッドに上がるけど、いいよな?」
「仕方ないわね……靴、ちゃんと脱いでよ」
■4
普段だったら使い魔が主人のベッドに乗るなんて論外だけど...
サイトが――たぶん自分の意志では初めて――わたしのベッドに上...
それがサイトの重さを伝えてくるような気がして、なんか……ヘ...
「んじゃ、始めるから。さっきも言ったけど、別に俺はプロっ...
「うん」
サイトは私の横に膝をついて、昨日と同じようにわたしの足...
あ、でも、昨日とちょっと違って、今はわたし、靴下を穿い...
「んっ…!」
そんなことを考えてる余裕は、すぐに無くなった。左足の膝...
甘い痛み……みたいな感触が駆け上がってくる。サイトはそのま...
わたしの足をぎゅっぎゅっと揉みほぐす。
「あっ……それ、いい……」
枕をぎゅうっと握りしめて、その刺激を受け入れる。なるほ...
さっき、靴下を脱いでおくことを考えたけど、靴下越しなの...
じわぁっと刺激が伝わってくる感じがする。
「強すぎたら言えよ。どこが気持ちいい?」
サイトは手の動きを止めないまま、暢気に聞いてくる。
そんなの、ぜんぶ気持ちいいわよ。具体的に言えるわけないで...
「こっちの方も触るぞ。昨日みたいに蹴るなよ」
「え……?」
ふくらはぎに指が這わせられた。昨日そこを触られたときは...
今はそうでもない。あの時とは何が違うのかしら。
「うっわ、柔らかいなー。ほとんど筋肉ついてないのに、俺へ...
「ば、馬鹿なこと言わないでっ……!」
ふにふにと弄ぶように弄くられる。わたしの、細すぎて、子...
今、足はベッドの上に下ろされて、サイトは両手でわたしの...
そっか、うつぶせだと、こういう事もできるのね。
その指がふくらはぎをだんだん上ってきて、膝の裏のところ...
「……ひっ、あ!」
反射的に、背筋が仰け反る。びっくりするような感触だった。
「あ、悪い。ここ、くすぐったいもんな」
わたしの反応を確かめるように、サイトの指が二度、三度わ...
確かに、くすぐったい。けど、くすぐったいだけじゃなくて、...
「お。ひょっとして、ここ良いのか?」
わたしの様子を見て、サイトは執拗に膝の裏を刺激してくる...
気持ちのいい痺れが走って、わたしのからだの中で膨らんでい...
あ、これ。昨日、わたしが一番ヘンになっちゃった時の……。
体の芯に火がついたみたいに熱くなる。きゅうっと、胸……うう...
とにかく、体の内側が縮み上がるような感じになる。
ヘン。絶対、変。なんでサイトに触られたときだけこんなに...
弄ってみたけどくすぐったいだけだった。こんな、頭もからだ...
「あっ、あっ……サイト、それだめ、だめだめっ……!」
「駄目なのか? じゃ、どこならいい?」
だめじゃない。でもだめ。膝の裏は触っていいけど、でも本...
でも触って欲しいのがどこなのかよくわかんない。だから膝の...
あーもう、自分でも何考えてるのかよくわかんない。
サイト、あんたわたしの使い魔でしょ。ご主人様がして欲し...
■5
「あっ……!」
サイトの指が、膝の裏より少し上、太股を少し触れたとき。...
腰の方まで駆け上がった。体の奥から、何か落ちてくるような...
何でかわからないけど、太股がぎゅっと閉じられて、腰が持...
「うわ、勝手に動くなよ。もういいの?」
わたしが足に触るのを拒むみたいな格好になったからか、サ...
それが、すごく寂しくて、勿体ないみたいに感じられてしまう。
「あ……だめ、やめちゃだめ……」
ずるずるとまた体をベッドに押しつける。今、明らかに、さ...
昨日怖くてやめてしまった、その先。サイトの指は、探るよう...
「はぁ……はぁ……はぁ……」
枕をぎゅうっと抱きしめて、顔を押しつけて、声が上がって...
サイトの指が、手がわたしに触れるたびに。わたしの中で甘く...
指がどんどん上がってくる。そこ……その先は、ソックスの裾...
――あれ、何よわたし。なんで、直接肌に触られるのを楽しみに...
「……え?」
でも、サイトの指は、わたしの肌には触れずに、すっと離さ...
思わず、どうして? って聞いてしまいそうになって、自分...
そこより上は、ほとんどお尻に触るようなものだから……問題外...
そんな所に触って許されるわけないことくらいわかる。
それより……なんで、わたしがそんな事にも気付かないでいた...
まさか、わたし、期待してた……!?
混乱しかけるわたしをよそに、サイトは体の位置をちょっと...
普段自分で触る機会が、足よりも少ない場所。体の真ん中に...
考えがまとまらないうちに、サイトの指はまたわたしを何も...
「あっ、はぁっ、んぁっ…ふぁ!」
熱い。背中を押されて、撫でられて。体の奥まで、直接響い...
”気持ちいい”のが流し込まれてくる。こんなの、おかしくなる...
なんで、なんで? マッサージってこんなに凄いものなの?...
あるいは、サイトが実はもの凄く上手なの?
とろんと濁ったみたいになった頭で考えるけど、そんなこと...
だめ、もうだめ。ヘンになる。気持ちいいのが溜まりすぎて...
怖い。怖いけど、止めて欲しくない。悔しいけど、わたしは使...
「ちょっと、失礼」
サイトがそう言った声が、遠くから聞こえた気がした。
何の事だろう、そう思う前に、サイトはわたしの足を跨いで...
その格好だと、真後ろからわたしを両手で掴むように、背中を...
ホントに失礼。でも、そう考える前に……わたしの全身にぞく...
――逃げられない。
こんな格好になったら、サイトに何をされても……わたしは、...
何をされてもって……例えばどんなことなのか、具体的に考え...
そんな格好になって、その事に気付いた瞬間。
「あっ………あぁぁっ……!!」
溢れた。今まで溜まってた気持ちいいのが、一気に決壊して...
昨日よりも、ずっと凄い。頭の中が真っ白になるみたい。
体が魚みたいに跳ねて、その度にシーツと擦れる肌がまた電...
そんなのが何秒、何十秒、何分続いたのかわからないまま……...
消えるほんの少し前の意識で、キュルケが言ってた天にも昇...
■6
∞ ∞ ∞
ルイズは、こっちの心臓が興奮して破裂してしまいそうなく...
あれ、俺、何か特別なことしたか? むしろ、今から本格的...
今日、仕事が終わって帰ってきたらルイズにまたマッサージ...
とりあえず昨日俺も満更じゃなかったので引き受けて、適当...
その反応はやっぱり、ただマッサージされて気持ちいいって...
ルイズは、お、おおお、俺で、感じてる。気持ちよがってる...
そう考えると、頭がパンクしそうだった。心臓が凄まじいス...
今、自分の前……どころか、組み敷くような体勢になった下に...
輝くような桃色の髪と、見惚れるくらい整った小さな顔と、...
俺みたいな全国のモテない高校生男子のサンプルみたいな人...
それが、それが、俺に体を触るように命じてきて、ベッドに...
……つまり、合意です。これは合意なのです。
百人の将軍がいたら、百人とも『我が方に何ら負ける要素無...
『待て、これは孔明の罠だ』なんて抜かす奴がいたらそんな...
「ルイズ……?」
そのまま抱きしめてしまいたい衝動を必死で堪えつつ、俺は...
返事がない。ついさっきまでぎゅっと身をネコみたいに縮こ...
反応できないってことは無いと思うんだけど。
「ひょっとして、怖がってるのか? 大丈夫、やらし……優しく...
口が滑りかけた。まずい、こっちも結構動揺してる。深呼吸...
そこには、恥ずかしそうに俺を見上げるルイズの鳶色の瞳が…...
「すー……すー……」
桜色の小さな唇から漏れるのは、穏やかな寝息。ルイズは枕...
寝てたのです。
へなへなと俺の全身から力が抜けた。うとうと、なんてもん...
「……そりゃねぇだろ……」
ルイズの体の上からどいて、がっくりと肩を落とす。この思...
だが、次の機会があれば。また、こんな雰囲気になったら、...
「ぅうん……サイト……」
ルイズは、ささやくような声で俺の名を呼んだ。
「はっ、はい! サイトです!」
慌ててその口元に顔を寄せると。
「えらいわ……ほめてあげる……むにゃ……」
そこから続いたのは、完全に俺を犬扱いの台詞だった。その...
は、はは、そうだよな。冷静に考えたら、そうだよな。わか...
合意ところか、向こうは俺を意識すらしてないって事なのだ...
ベッドを降りる前にちらりと見たご主人様の寝顔は、やっぱ...
……それゆえに、生殺しだった。
なお、この日の夜、俺は一人になれる場所を探して学園内を...
あまりに惨めなので詳細は省略させていただく。
つづく
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■1
「それでは、本日の授業はここまでです。復習を欠かさないで...
シュブルーズ先生が講義に使った器具を片付け、教室を出て...
途端に騒がしくなった教室の中で、わたしはほとんど真っ白...
授業の内容が全然頭に入らなかった。あの使い魔のせいだ。...
ヒラガサイト。つい一週間くらい前に召還してしまった、わ...
今日は用事を言いつけているので、一緒に授業を聞いてはいな...
平民のくせに、しかも使い魔のくせにちっともわたしに尽く...
昨日はどういう風の吹き回しかわたしの爪を切ってやるとか言...
それだけなら、やっと自覚が出てきたのねと喜ぶ所なのだけ...
頬が赤くなってる事に気付いたわたしは、そのことを忌々し...
回りに見られないように顔を手のひらで隠すようにして頬杖を...
あいつの爪切りは、妙に上手かった。わたしが自分ですると...
しがちなんだけど、サイトは見てて気分が良くなるくらい綺麗...
でも、それだけだったら、あんなに…あんな、ヘンな気分には...
嬉しかった? 楽しかった? すっきりした?
……どれも、違う気がする。あいつが……普段ちっとも言うこと...
サイトが、わたしの前に跪いて、”使い魔らしく”わたしの体の...
すごく、満たされた。
平民にかしずかれることは珍しくもない。でも、それをあの...
でも、でもでも、それだけでもない。重要なのは、この先。
サイトは、マッサージするとか言って、爪切りが終わった後...
サイトが使い魔らしくしてるのは気分が良かったから、言う...
その時の感覚を思い出して、体がぶるっと震えた。何回目の...
でも……良かった。自分でも何でだかよくわからないくらい、...
足とか、足の指とか。ふだんはお風呂で洗うときくらいしか...
すごく気持ちよかった。そのままずっと続けられててもいいく...
触られてるのは足の先だけなのに、全身がぞくぞくするよう...
気持ちいいぞくぞく。そんな感じを味わったのは初めて。
それで、そんなのを続けられてたら、その時だけで消えてし...
体から抜けないで、どんどん溜まっていくような感じになって...
その一方でそのまま続けたらどうなるのか気になるわたしもい...
最後には、溜まっていた気持ちよさが一気に体を駆け抜ける...
「………はぁ……」
それを思い出した所で、ヘンな声が漏れて、慌てて口をつむ...
そう、こんな風に何度も思い返してしまうくらい、ショッキ...
だから、朝からたびたび上の空になって、授業にもちっとも身...
……で、その後あいつってば、調子に乗ったのか、私のふくら...
それがまた、指先が触れるだけでびりびり痺れるみたいにな...
これ以上続けられたらどうかなってしまう気がして怖くなった...
「ん………っ!」
”その時”の右足が、びくっと跳ねた。あの使い魔に……サイト...
ほんの一瞬の事だったけど、思い出すだけで足から体までぞ...
これが、一番衝撃的なこと。気持ちよかったわけじゃないと...
むしろ、あんな事されて、恥ずかしくて、信じられないのに。...
それなのに、まだあの感触がこの足に残って、消えない。思...
ヘンな感じになる。気持ちいいのに気持ち悪いような、モヤモ...
「はぁ〜〜〜〜っ」
大きくため息をついて、机に突っ伏す。これだわ。朝からこ...
あいつの事をこんなにいつも考えてなきゃいけないなんて、...
■2
「それがもう、すごぉ〜く良かったんだから。……ね、聞いてる...
「聞いてる」
思考が1ループしてやや落ち着いた所で、後ろの席での会話...
次の授業は同じ教室でやるから、休み時間だけど席についた...
顔を上げて確認しなくてもわかる。高慢でヤな性格してるツ...
無口で何を考えてるのかわからないタバサの二人だ。
黙って本のページを捲っているタバサにキュルケが一方的に...
「あんたの事だから経験無いんだろうけど、ホントに良かった...
興味ないで片づけるには勿体ないわよー、あのマッサージ」
「そう」
マッサージですって? キュルケは、今のわたしにとって非...
「……ね、それ、どういうこと?」
わたしは体を起こすと、後ろの席で話していたキュルケに聞...
「あら、妙なとこから反応があったわね。興味あるの、ヴァリ...
キュルケは目を丸くして聞いてきた。その横にいるタバサは...
「いや……あ、うん、まぁね……」
「別に遠慮する事じゃないわよ。エステの話をしてたの。トリ...
評判を聞いて行ってみたら、そこのマッサージが凄く良かった...
キュルケはわたしが話に乗ってきたのが意外なのか、得意げ...
「天使の指先」
「そ。王侯貴族にもよく利用されるくらい格式高いお店な上、...
予約を取るのも大変なその店一番のマッサージ師の人にしても...
それはもう、それこそ天にも昇るような心地よさだったわ〜♪」
キュルケはうっとりした声で頬に手を当てる。わたしは今ま...
知らなかったけど、彼女がここまで言うのだから相当なものな...
「……そんなに気持ちいいものなの? マッサージって」
「そうよ〜。ただ気持ちいいだけじゃなくて、美容にも最高な...
ほら、今日はお化粧のノリが一味違うでしょう?」
得意げに前髪をかき上げるキュルケ。でも、わたしには普段...
でも今、キュルケはとても重要な事を言った。
マッサージは気持ちが良いらしい。それも、天にも昇る心地...
そりゃ、私だってマッサージがそれなりに気持ちいいものだと...
キュルケがここまで言うのだから、誇張でも何でもなく、相当...
つまり、つまり。話をまとめると。マッサージは元々凄く気...
昨日わたしがサイトにされてヘンな気分になっちゃったのはお...
それにそれに、ついその時の事を思い出しちゃって、その……...
思っちゃったりしなくもないのも、ごくごく自然な反応。そう...
なら、無問題。わたしがヘンなわけでもサイトがヘンなわけ...
何よ、今日ずっと悩んでたのが馬鹿みたいじゃない。
「で、興味あるなら『天使の指先』、紹介してあげてもいいけ...
「あ、うん、また今度ね」
わたしが考えをまとめてるうちも、キュルケは話を続けてい...
とりあえずもう聞きたいことは聞けたし次の授業の先生が教...
わたしは話を切り上げて自分の机に向き直った。
……ちょっとだけ、胸が期待に高鳴っているのがわかった。
■3
「サイト」
その日の授業が終わった後。雑用が終わって部屋に戻ってき...
「え、はい、何でございましょう?」
サイトはびくっと体を硬直させて、変な言葉遣いでわたしに...
気に入らない態度だけど、昨日わたしが蹴っ飛ばしたせいか...
「その…」
「きっ、昨日は悪かった! 調子に乗りすぎました! もうし...
サイトはわたしの言葉より先に、へこへこ謝ってきた。その...
「それではあっしはこの辺で……」
そのまま妙に芝居がかった台詞を残し、そそくさと部屋を出...
「待ちなさい」
呼び止めると、サイトはぎくっと立ち止まり、怯えた表情で...
「なんだよぅ、昨日のことだったら謝ってるじゃないかよぅ……」
「何を勘違いしてるのよ。別に怒ろうってわけじゃないわ」
全く、こんな捨て犬みたいにびくびくした態度をとられたら...
「え、ホント?」
「嘘ついても仕方ないでしょ。こ、ここ、こっちに来なさい。...
手招きして呼ぶと、サイトは恐る恐るといった風でわたしが...
ほんとに、気が小さい犬みたいな態度。
「それじゃ、昨日のことがおとがめ無しなら、何の用なんだ?」
まだ半信半疑という目で、サイトはわたしの顔色を伺う。そ...
足の爪の手入れをしながら、時折わたしの様子を見ていた目に...
昨日のことを思い出してとくんと胸が高鳴ってしまい、慌て...
「……今日も、マッサージしなさい」
「へ?」
「きっ、昨日のがその……悪くなかったから、またやりなさいっ...
睨みつけると、サイトはきょとんとした顔をした。
「なんで? 昨日、最後は俺を蹴飛ばすほど嫌がってたじゃん」
「それはその、びっくりしたから……。蹴ったのは謝るわ」
ああもう、じれったい。何でわたしの気を察しないのよ。
サイトもサイトで、わたしを気持ちよくさせようと思ってマッ...
「まぁ……しろっていうならしてもいいけど、俺、素人だぜ? ...
「嘘!?」
「こんな事で嘘ついたって仕方ないだろ」
すごく手慣れてるみたいで、あんなに良かったのに。じゃあ...
キュルケの言ってたお店ではどうなんだろう。そう考えてみ...
してもらいたいとは思わなかった。とにかく今、サイトにして...
「ま、まぁどっちでもいいわ。じゃあ、お願い」
わたしは昨日と同じように、ベッドに腰掛ける。これだけで...
「んー、その格好だと、俺もお前も疲れると思うんだよな。ベ...
サイトはちょっと考え込むような様子を見せてから、そう言...
「どうして?」
「俺も詳しいわけじゃないけど、テレビとかで見た限りでは、...
てれびって何だろう。でも、確かに昨日は何度もベッドから...
逆にベッドの方に倒れそうになった。寝てる方がラクかもしれ...
「わかった」
ベッドに上がって、毛布の上に俯せになる。あ、でもこの格...
「俺もベッドに上がるけど、いいよな?」
「仕方ないわね……靴、ちゃんと脱いでよ」
■4
普段だったら使い魔が主人のベッドに乗るなんて論外だけど...
サイトが――たぶん自分の意志では初めて――わたしのベッドに上...
それがサイトの重さを伝えてくるような気がして、なんか……ヘ...
「んじゃ、始めるから。さっきも言ったけど、別に俺はプロっ...
「うん」
サイトは私の横に膝をついて、昨日と同じようにわたしの足...
あ、でも、昨日とちょっと違って、今はわたし、靴下を穿い...
「んっ…!」
そんなことを考えてる余裕は、すぐに無くなった。左足の膝...
甘い痛み……みたいな感触が駆け上がってくる。サイトはそのま...
わたしの足をぎゅっぎゅっと揉みほぐす。
「あっ……それ、いい……」
枕をぎゅうっと握りしめて、その刺激を受け入れる。なるほ...
さっき、靴下を脱いでおくことを考えたけど、靴下越しなの...
じわぁっと刺激が伝わってくる感じがする。
「強すぎたら言えよ。どこが気持ちいい?」
サイトは手の動きを止めないまま、暢気に聞いてくる。
そんなの、ぜんぶ気持ちいいわよ。具体的に言えるわけないで...
「こっちの方も触るぞ。昨日みたいに蹴るなよ」
「え……?」
ふくらはぎに指が這わせられた。昨日そこを触られたときは...
今はそうでもない。あの時とは何が違うのかしら。
「うっわ、柔らかいなー。ほとんど筋肉ついてないのに、俺へ...
「ば、馬鹿なこと言わないでっ……!」
ふにふにと弄ぶように弄くられる。わたしの、細すぎて、子...
今、足はベッドの上に下ろされて、サイトは両手でわたしの...
そっか、うつぶせだと、こういう事もできるのね。
その指がふくらはぎをだんだん上ってきて、膝の裏のところ...
「……ひっ、あ!」
反射的に、背筋が仰け反る。びっくりするような感触だった。
「あ、悪い。ここ、くすぐったいもんな」
わたしの反応を確かめるように、サイトの指が二度、三度わ...
確かに、くすぐったい。けど、くすぐったいだけじゃなくて、...
「お。ひょっとして、ここ良いのか?」
わたしの様子を見て、サイトは執拗に膝の裏を刺激してくる...
気持ちのいい痺れが走って、わたしのからだの中で膨らんでい...
あ、これ。昨日、わたしが一番ヘンになっちゃった時の……。
体の芯に火がついたみたいに熱くなる。きゅうっと、胸……うう...
とにかく、体の内側が縮み上がるような感じになる。
ヘン。絶対、変。なんでサイトに触られたときだけこんなに...
弄ってみたけどくすぐったいだけだった。こんな、頭もからだ...
「あっ、あっ……サイト、それだめ、だめだめっ……!」
「駄目なのか? じゃ、どこならいい?」
だめじゃない。でもだめ。膝の裏は触っていいけど、でも本...
でも触って欲しいのがどこなのかよくわかんない。だから膝の...
あーもう、自分でも何考えてるのかよくわかんない。
サイト、あんたわたしの使い魔でしょ。ご主人様がして欲し...
■5
「あっ……!」
サイトの指が、膝の裏より少し上、太股を少し触れたとき。...
腰の方まで駆け上がった。体の奥から、何か落ちてくるような...
何でかわからないけど、太股がぎゅっと閉じられて、腰が持...
「うわ、勝手に動くなよ。もういいの?」
わたしが足に触るのを拒むみたいな格好になったからか、サ...
それが、すごく寂しくて、勿体ないみたいに感じられてしまう。
「あ……だめ、やめちゃだめ……」
ずるずるとまた体をベッドに押しつける。今、明らかに、さ...
昨日怖くてやめてしまった、その先。サイトの指は、探るよう...
「はぁ……はぁ……はぁ……」
枕をぎゅうっと抱きしめて、顔を押しつけて、声が上がって...
サイトの指が、手がわたしに触れるたびに。わたしの中で甘く...
指がどんどん上がってくる。そこ……その先は、ソックスの裾...
――あれ、何よわたし。なんで、直接肌に触られるのを楽しみに...
「……え?」
でも、サイトの指は、わたしの肌には触れずに、すっと離さ...
思わず、どうして? って聞いてしまいそうになって、自分...
そこより上は、ほとんどお尻に触るようなものだから……問題外...
そんな所に触って許されるわけないことくらいわかる。
それより……なんで、わたしがそんな事にも気付かないでいた...
まさか、わたし、期待してた……!?
混乱しかけるわたしをよそに、サイトは体の位置をちょっと...
普段自分で触る機会が、足よりも少ない場所。体の真ん中に...
考えがまとまらないうちに、サイトの指はまたわたしを何も...
「あっ、はぁっ、んぁっ…ふぁ!」
熱い。背中を押されて、撫でられて。体の奥まで、直接響い...
”気持ちいい”のが流し込まれてくる。こんなの、おかしくなる...
なんで、なんで? マッサージってこんなに凄いものなの?...
あるいは、サイトが実はもの凄く上手なの?
とろんと濁ったみたいになった頭で考えるけど、そんなこと...
だめ、もうだめ。ヘンになる。気持ちいいのが溜まりすぎて...
怖い。怖いけど、止めて欲しくない。悔しいけど、わたしは使...
「ちょっと、失礼」
サイトがそう言った声が、遠くから聞こえた気がした。
何の事だろう、そう思う前に、サイトはわたしの足を跨いで...
その格好だと、真後ろからわたしを両手で掴むように、背中を...
ホントに失礼。でも、そう考える前に……わたしの全身にぞく...
――逃げられない。
こんな格好になったら、サイトに何をされても……わたしは、...
何をされてもって……例えばどんなことなのか、具体的に考え...
そんな格好になって、その事に気付いた瞬間。
「あっ………あぁぁっ……!!」
溢れた。今まで溜まってた気持ちいいのが、一気に決壊して...
昨日よりも、ずっと凄い。頭の中が真っ白になるみたい。
体が魚みたいに跳ねて、その度にシーツと擦れる肌がまた電...
そんなのが何秒、何十秒、何分続いたのかわからないまま……...
消えるほんの少し前の意識で、キュルケが言ってた天にも昇...
■6
∞ ∞ ∞
ルイズは、こっちの心臓が興奮して破裂してしまいそうなく...
あれ、俺、何か特別なことしたか? むしろ、今から本格的...
今日、仕事が終わって帰ってきたらルイズにまたマッサージ...
とりあえず昨日俺も満更じゃなかったので引き受けて、適当...
その反応はやっぱり、ただマッサージされて気持ちいいって...
ルイズは、お、おおお、俺で、感じてる。気持ちよがってる...
そう考えると、頭がパンクしそうだった。心臓が凄まじいス...
今、自分の前……どころか、組み敷くような体勢になった下に...
輝くような桃色の髪と、見惚れるくらい整った小さな顔と、...
俺みたいな全国のモテない高校生男子のサンプルみたいな人...
それが、それが、俺に体を触るように命じてきて、ベッドに...
……つまり、合意です。これは合意なのです。
百人の将軍がいたら、百人とも『我が方に何ら負ける要素無...
『待て、これは孔明の罠だ』なんて抜かす奴がいたらそんな...
「ルイズ……?」
そのまま抱きしめてしまいたい衝動を必死で堪えつつ、俺は...
返事がない。ついさっきまでぎゅっと身をネコみたいに縮こ...
反応できないってことは無いと思うんだけど。
「ひょっとして、怖がってるのか? 大丈夫、やらし……優しく...
口が滑りかけた。まずい、こっちも結構動揺してる。深呼吸...
そこには、恥ずかしそうに俺を見上げるルイズの鳶色の瞳が…...
「すー……すー……」
桜色の小さな唇から漏れるのは、穏やかな寝息。ルイズは枕...
寝てたのです。
へなへなと俺の全身から力が抜けた。うとうと、なんてもん...
「……そりゃねぇだろ……」
ルイズの体の上からどいて、がっくりと肩を落とす。この思...
だが、次の機会があれば。また、こんな雰囲気になったら、...
「ぅうん……サイト……」
ルイズは、ささやくような声で俺の名を呼んだ。
「はっ、はい! サイトです!」
慌ててその口元に顔を寄せると。
「えらいわ……ほめてあげる……むにゃ……」
そこから続いたのは、完全に俺を犬扱いの台詞だった。その...
は、はは、そうだよな。冷静に考えたら、そうだよな。わか...
合意ところか、向こうは俺を意識すらしてないって事なのだ...
ベッドを降りる前にちらりと見たご主人様の寝顔は、やっぱ...
……それゆえに、生殺しだった。
なお、この日の夜、俺は一人になれる場所を探して学園内を...
あまりに惨めなので詳細は省略させていただく。
つづく
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