ゼロの使い魔保管庫
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175 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
「うーん、うーん……」
「何唸ってんだルイズ、腹でも痛いのかよ?」
「違うわよ。学院の課題で、物語を書くことになったの」
「はぁ? なんだってまた」
「貴族たるもの表現力が重要だとかなんとか」
「変なことになったな」
「全くだわ。ああもう、なんだってわたしが話なんか作らなく...
「ははは、まあやってみろよ、書きあがったら俺も読んでやっ...
「何でよ」
「そりゃ、お前が頭の中でどんなこと考えてんのかとか、気に...
「やな言い方! 他人事だと思って……! 見てなさい、超大作...
「へいへい、ま、せいぜい頑張れよな」
一ヵ月後。
「で、俺に何か用スかコルベール先生」
「うむ。先日生徒諸君に物語を作るよう課題を出したのだがね」
「ってあれ先生だったんスか」
「学院長の指示なのだよ。いやあ参った、私はこういう、物語...
それぞれに魅力があるように思えて、どうにも評価を下しづ...
何本も書いてきてくれている生徒もいてね、どうにもこうに...
「ま、先生理系ッスからね……で、俺にどうしろと?」
「評価を手伝って欲しい。もちろん、給金は出そう」
「いらないッスよ、先生にはいろいろと世話になってるし。そ...
「それに?」
「あの愉快な連中がどんな話を書いたんだか、かなり興味あり...
「さて、っつー訳で皆の物語を読むことになった訳だ」
「楽しそうだね相棒」
「おうよ。ま、とりあえず知ってる奴のから見ていくとするか。
まずは……お、こりゃギーシュだな。どれどれ……」
「……恋愛物かね、こりゃ」
「……いや、っつーかこれ、ずいぶん現実離れした話の運びだな...
「主人公が理由もなくモテまくってんね」
「多数の美少女に迫られて、一人と濡れ場まで行った挙句、ち...
また全員と元通りの関係に戻れる主人公、か……欲望に正直す...
「なんてーか、男に都合の良すぎる話だね」
「ま、言っちゃなんだがモテない男が喜びそうな話だわな……
あー、でもさ、こういう感じの話、俺の世界でもあったわ」
「こんな都合のいい話がウケるのかね?」
「やり方次第じゃねえのかな。それに、女の子の行動と思考が...
話の構成とか要所要所のギャグはなかなかイケてるぜ、これ。
最後の落とし所も心得てるし、読んでて不快になる感じは全...
出版したら、かなり大衆受けするんじゃねえのかね、これは。
それに、数もやたら多いし……スゲエな、書くの早すぎだよあ...
「なるほどねえ。さて、じゃ、次は……」
176 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
「タバサだな、これは……おっ、さすが文学少女だ、語彙も知識...
「でも中身は恋愛物だね」
「うむ。あいつも最近女の子っぽくなってきてるしな……実に喜...
「しかし、書き慣れてる感じがするね、この文章はさ」
「ああ。ひょっとしたらあいつ、結構ちょくちょく話書いてた...
「……しかし、この話の中身……」
「異世界に召喚された主人公が、ふとしたきっかけで元の世界...
ところが、本人だけでなく、彼に思いを寄せる少女も同行す...
さらに主人公の主人や他の友人達も追いかけてきて、元の世...
「……どっかで聞いた話だねえ」
「……ま、タバサにもいろいろと地球のこと話したしなあ」
「……ふむ。それはそれとして、かなり面白いねこりゃ」
「ああ。あいつ、本職の作家としてもやっていけるんじゃねえ...
「違ぇねえや。さて、お次は、と」
「マリコルヌか。ま、どうせあの太っちょのことだ、ギーシュ...
「……相棒よ」
「……ああ。なんか、スゲードロドロした話書いてるな、あいつ」
「おう。男が身勝手な欲望のままに女を……だの、
復讐を誓った少女が返り討ちにあって記憶を消されて、気づ...
凄く暗めの話が多いね、どうも……」
「要所要所はギーシュと同じで、男に都合のいい展開なんだが...
「あの坊ちゃんも、昔からいろいろ馬鹿にされてたみたいだし...
腹に一物溜め込んでるってのも、まあおかしなことじゃない...
「うーむ。人間、見かけにはよらんもんだな。
あの、女さえ絡まなきゃ臆病で大人しい野朗が、こんな残酷...
「ま、人間なんだから、一面だけじゃ判断できねえのは当然っ...
「まあな。何にしても、話が面白いのは事実だし」
「そういうこと。さて、次は誰かね」
「お、いよいよお待ちかねのルイズか」
「おうおう、愛しのご主人様だね相棒」
「よせやい、あんな我が侭女、使い魔としての感情が消された...
なんとも思ってねえッスよ。……ホントだぜ?」
「へいへい。さて、それじゃ中身の方を読んでみるとするか。
どうするよ相棒、今まで以上にベタベタで、相棒に対する愛...
「止めろよな! 照れるぜ全く」
「いやいや、あの嬢ちゃんもなかなか頭の方はメルヒェンでラ...
「だからよせって……ん?」
「……相棒よ。何というか、至って真面目な話じゃないかい?」
「……ああ。あんま、恋愛とか絡んでこねえな。ごくごく真面目...
「……ある意味、嬢ちゃんらしいっちゃ嬢ちゃんらしいね」
「……ま、一生懸命話考えてたみたいだしな」
「……実際、ガックリしてるだろ、相棒」
「うるせえや」
数時間後
「さーて、これであらかた読み終わったな」
「そうだね。で、どれが一番だったよ?」
「一番ってのはねえけど、とりあえず印象に残ってるのは最初...
「ふむふむ」
「っつーか、勿体ねえなこれ。こんなに面白いんなら、皆にも...
177 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
「……で、何だって掲示板にわたしたちの作品が張り出されてる...
「これも授業の一環だろ、ルイズよぉ」
「うう……なんか、すっごい恥ずかしいんだけど」
「でも、皆は喜んでるみたいだぜ?」
「おいギーシュ! なんだこの素晴らしい物語は! もっと書...
「そうだ。このままではあふれ出るパッションがどうにもなら...
「ははは、そうかそうか、それじゃあこれからも僕の素晴らし...
「……どっちかと言うと妄想っつった方がいいけどな」
「イカしてるぜ、この変態野朗!」
「……」
「あらタバサ、今日はずいぶん嬉しそうじゃない」
「……そう?」
「ええ。あなたの書いた話、評判いいみたいだものね」
「……そんなことない。ただ、いつも通りに書いただけ」
「あらまあ、まるで本業の作家みたいなこと言うのね」
「……」
「……まさか、本当にそうなの?」
「……そうと言えなくもない、かも」
「キャーッ! ちょっと皆、聞いてちょうだい、タバサったら...
「……正直さ、俺、マリコルヌの話になんか惹かれるんだよな」
「ああ。こう、一見明るいように見えて根底には暗くドロドロ...
「……あのね皆、僕は女子をドン引きさせるために話を書いた訳...
「そう言うなよ。なんかいいんだよねお前の話」
「そうだよ。もっと書けよ、俺らは見てやるからさ」
「はあ、全く……仕方ないなあ、これからも気が向いたら書くよ。
でも、しばらくはこの掲示板の管理でもしようかな。ギーシ...
うん、そうしよう。どうせなら感想書く紙も備え付けて、何...
「……しっかし、今回は慣れないことしたせいで本当に疲れたわ…...
「そか。ご苦労さんだな、ルイズ」
「……なによそのおざなりな……まあいいわ。で、どうだった、わ...
「……まあ、いいんじゃねえのかな。結構面白かったぜ」
「……そう。あのねサイト、実は、まだいろいろと書きたいもの...
「おう。じゃ、また書いたら俺に読ましてくれよ」
「し、仕方ないわね。そこまで言うなら読ませてあげるわよ」
「へいへい」
という経緯により、学院の掲示板に学院生の書いた物語が掲...
公式に管理人となったマリコルヌは、その後も続々と寄せら...
学生達は気軽に友人達の話を楽しめるようになったのである。
こうして掲示板には大量の作品が寄せられることとなった。
が、大抵の生徒は一作ニ作書き上げるだけで飽きるか、
人気のある生徒の作品に比べて自分の作品に対する評価が低...
その後もう二度と作品を書かないかのどちらかであった。
そうして、十週間ほどの時が経過した頃になると、未だに新...
その中でも特に目立って賞賛を浴びていたのは、ギーシュと...
ギーシュはこの中でも特にたくさんの作品を書き上げ、
その軽妙な筆遣いと理由もなく女にモテる主人公により、モ...
タバサの方は淡々と作品を書き上げて、多少地味ながらも堅...
マリコルヌの方はどちらかと言えば管理を中心に活動してい...
作品の方も相変わらずドロドロとしたテイストを基本として...
ルイズの方はやる気と執筆のペースにムラがあり、そのとき...
様々な色合いの作品を唐突に書いては、周囲を感心させると...
このように、魔法学院掲示板の四人組は、それぞれの魅力を...
178 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
ところが、その頃になって事件が起きた。
「クソッ、気に入らないぞあのチビッ子め」
問題は、ド・ロレーヌが起こした。元からタバサが気に入ら...
今回のことでますます彼女が評価を上げることを妬み始めた...
彼はタバサの人気を下げるために、様々な妨害工作を展開し...
「見ろ、あのタバサの傲慢振りを。多少人気が高いのをいいこ...
聞けば、質問に対して思わせぶりな発言をして持ち上げられ...
こんな浅ましい女に、この掲示板を利用させておいていいの...
そんな風に息巻いたものの、ド・ロレーヌの発言にはほとん...
それどころか、静かで誠実な対応を返したタバサに対してま...
「クソッ、クソッ、クソッ! 見ていろあのチビっ子め、どう...
ド・ロレーヌは強硬手段に出た。なんと、姿を消すアイテム...
掲示板に貼り付けられていたタバサの作品を破り捨てるとい...
「けしからん! どうしてこんなひどいことをするんだ!」
その頃管理人としての立場がすっかり板についていたマリコ...
タバサの作品を直しながら、犯人に対して散々警告を発した...
「どうせ、あんな大人しい奴に何かが出来るわけもないだろう」
と、調子に乗って、直る端からタバサの作品を破り捨てまく...
「そうかそうか、そっちがその気ならこっちにも考えがあるぞ…...
ついに怒りが頂点に達したマリコルヌは、自分の持てる知識...
油断していたド・ロレーヌは、あっさりと自分の犯罪を見抜...
「この腐れ(ピー)め、お前の赤裸々な私生活をバラされたく...
普段舐めきっていたマリコルヌのド迫力に、ド・ロレーヌは...
「許してくれマリコルヌ、あのチビっ子の作家気取りが気に入...
反省してるから、先生に届けるのだけは勘弁してくれ!」
「……全然反省してるようには見えないが、まあいいだろう。次...
だが、残念ながら問題はこれで終わらなかった。
タバサが、このような騒動になったことに責任を感じて、掲...
「そんな、別に君のせいでは」
「……わたしにも、責任の一端はある」
という訳で、タバサの作品は惜しまれながらも掲示板から姿...
彼女はその後も物語を書き続けているという噂だったが、
残念ながらそれらが学院生たちの目に触れることは、二度と...
179 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
こうして、四人組は三人組となった。
ギーシュは相変わらずイケイケであり、マリコルヌもタバサ...
が、次の問題はルイズが起こした。
「駄目よ、駄目だわ、こんなものでは……!」
真面目な性格の彼女は、やはり作品を書くときでもクソがつ...
気楽に書いて気楽に読ませていればよかったのに、いつの間...
「少しでもいい作品を書かなければ」という怨念めいた思い...
彼女が潜在的に持つ自虐傾向が、悪い方向に働き始めたので...
「皆は面白いって言ってくれるけど、本当は違う。こんな穴だ...
きっと、わたしのこと哀れんでお世辞を言っているのよ!
それに、わたしもいつの間にか賞賛の言葉に安住して、いい...
駄目、こんな腐りきった心のままじゃ、素晴らしい作品なん...
周りから見れば深刻になりすぎだったのだが、元々思い込み...
「これは駄目だわ、何とかしなくては!」
彼女は早速マリコルヌのところへ赴くと、こう提案した。
「作品の悪いところをけなすためのコーナーを設けましょう!」
「ええ、そんなルイズ、これはあくまでも遊びだよ。別に人生...
「いいえ、駄目よ! 芸術に妥協は許されないわ。さあやるの...
「あひぃ! ……わ、分かった、とりあえず試しにやってみるよ」
という訳で、掲示板に新たに「文句を言うコーナー」が新設...
多くの生徒はこれに困惑し、作者の心情を慮ってなかなか文...
で、ルイズはますます怒った。
「何よ、わたしの書いた話には文句をつける価値もないって言...
「落ち着けよルイズ、お前段々意味不明になってきてるぞ」
「お黙りなさい!」
と、才人の助言にも耳を貸さず暴走するルイズを見かねて、...
「分かった、じゃ、僕から見て気になったことを言うよ、ルイ...
「よし、きなさい!」
「まずね、こことここ文章がおかしいし、ここも設定的に矛盾...
「馬鹿な、こんな簡単なことに気づかなかっただなんて!
ああ、やっぱりわたしは駄目な子なんだわ! 褒められてい...
「……いや、別にそこまで深刻にならなくても。
ほら、それでも皆が楽しんでるってことは、そういう欠点を...
「マリコルヌ!」
「な、なに?」
「掲示板に載ってるわたしの作品、全部剥がして!」
「えぇ!? や、やだよそんなの、君の作品にだってファンが...
それに、僕が文句言った途端にそんなことしたら、僕の方に...
「いいから! こんな中途半端なものを、これ以上世に出して...
「そんなあ……」
とは言え、結局のところ本人の自由ではある。マリコルヌは...
こうして、雰囲気が読めずに暴走したルイズは、結局暴走し...
この一連の騒ぎを横で見ていた才人は、こうコメントしてい...
「いやあ、あいつなりに悩んではいるんだろうけど、正直何を...
ルイズはその後もあれこれと試行錯誤しているようだが、未...
180 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
そうした一連の騒動の中、やはりギーシュはイケイケであっ...
その人気は留まるところを知らず、他の有力作家が諸々の事...
「はははは、声援ありがとう皆、一緒に話を盛り上げていこう...
元々調子に乗りやすい性格のギーシュだったが、その性格が...
彼は休むことなく作品を書き続け、またその作風も初期の軽...
学生達の支持も留まるところを知らなかった。
が、やはり困ったちゃんというのはいるものである。
「おのれ、ギーシュの奴め、この僕を差し置いて」
と再び憤ったのは、件のド・ロレーヌであった。
ギーシュの人気に嫉妬した彼は、あらぬ噂を立て始めた。
「ギーシュの奴の話、見てみろよ。ずいぶんと低俗じゃないか。
こんなくだらない話がウケてるだなんて、僕には信じられな...
きっと、奴が自分で筆跡を誤魔化して、多数の感想を自作自...
ま、僕の邪推でなければいいけどね……」
前回に引き続き、今回も彼の策謀はうまくいかなかった。理...
その中傷の中身があまりにも馬鹿馬鹿しすぎたことが一つ。
読んでいる人間のほとんどが、話の内容が低俗だとかを気に...
ギーシュ自身がノリノリだったので、そんな中傷など大して...
そして何より、結局のところ彼の書く作品が非常に面白かっ...
こうして、いつも通り気に病んでいるのはマリコルヌ一人だ...
「……ギーシュ、君はいいよな、いろいろと……」
「ん? どうしたんだい管理人殿。ははは、暗い顔してないで...
「おおう、これは素晴らしい! いいなあ、僕も子供に戻った...
「ははは、僕の空想は百八式どころでは留まらないぞ!」
とまあ、あれこれと変な事件を巻き起こしつつ、トリステイ...
「ねえねえサイトさん、これ見てください」
「あん、なんだシエスタ、この紙束……おっ、こりゃ物語だな?」
「はい、わたしも書いてみたんです」
「へえ、シエスタが書いた話ならきっと優しい感じの……あの、...
「なんですか、サイトさん?」
「……この話、俺がシエスタに散々犯されるっていうとんでもね...
「フフフフフ……」
「ちょ、シエスタ、なんで後ろ手に鍵しめてんの!?」
「さあサイトさん、わたしと共にめくるめく甘美な世界に旅立...
「いやぁぁぁぁぁぁっ! 誰か助けてっ、ここに痴女が、痴女...
了。
※ この作品は二次創作です。現実とは一切関係がありません。
何ていうか、笑って流してくれると信じてる。
終了行:
175 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
「うーん、うーん……」
「何唸ってんだルイズ、腹でも痛いのかよ?」
「違うわよ。学院の課題で、物語を書くことになったの」
「はぁ? なんだってまた」
「貴族たるもの表現力が重要だとかなんとか」
「変なことになったな」
「全くだわ。ああもう、なんだってわたしが話なんか作らなく...
「ははは、まあやってみろよ、書きあがったら俺も読んでやっ...
「何でよ」
「そりゃ、お前が頭の中でどんなこと考えてんのかとか、気に...
「やな言い方! 他人事だと思って……! 見てなさい、超大作...
「へいへい、ま、せいぜい頑張れよな」
一ヵ月後。
「で、俺に何か用スかコルベール先生」
「うむ。先日生徒諸君に物語を作るよう課題を出したのだがね」
「ってあれ先生だったんスか」
「学院長の指示なのだよ。いやあ参った、私はこういう、物語...
それぞれに魅力があるように思えて、どうにも評価を下しづ...
何本も書いてきてくれている生徒もいてね、どうにもこうに...
「ま、先生理系ッスからね……で、俺にどうしろと?」
「評価を手伝って欲しい。もちろん、給金は出そう」
「いらないッスよ、先生にはいろいろと世話になってるし。そ...
「それに?」
「あの愉快な連中がどんな話を書いたんだか、かなり興味あり...
「さて、っつー訳で皆の物語を読むことになった訳だ」
「楽しそうだね相棒」
「おうよ。ま、とりあえず知ってる奴のから見ていくとするか。
まずは……お、こりゃギーシュだな。どれどれ……」
「……恋愛物かね、こりゃ」
「……いや、っつーかこれ、ずいぶん現実離れした話の運びだな...
「主人公が理由もなくモテまくってんね」
「多数の美少女に迫られて、一人と濡れ場まで行った挙句、ち...
また全員と元通りの関係に戻れる主人公、か……欲望に正直す...
「なんてーか、男に都合の良すぎる話だね」
「ま、言っちゃなんだがモテない男が喜びそうな話だわな……
あー、でもさ、こういう感じの話、俺の世界でもあったわ」
「こんな都合のいい話がウケるのかね?」
「やり方次第じゃねえのかな。それに、女の子の行動と思考が...
話の構成とか要所要所のギャグはなかなかイケてるぜ、これ。
最後の落とし所も心得てるし、読んでて不快になる感じは全...
出版したら、かなり大衆受けするんじゃねえのかね、これは。
それに、数もやたら多いし……スゲエな、書くの早すぎだよあ...
「なるほどねえ。さて、じゃ、次は……」
176 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
「タバサだな、これは……おっ、さすが文学少女だ、語彙も知識...
「でも中身は恋愛物だね」
「うむ。あいつも最近女の子っぽくなってきてるしな……実に喜...
「しかし、書き慣れてる感じがするね、この文章はさ」
「ああ。ひょっとしたらあいつ、結構ちょくちょく話書いてた...
「……しかし、この話の中身……」
「異世界に召喚された主人公が、ふとしたきっかけで元の世界...
ところが、本人だけでなく、彼に思いを寄せる少女も同行す...
さらに主人公の主人や他の友人達も追いかけてきて、元の世...
「……どっかで聞いた話だねえ」
「……ま、タバサにもいろいろと地球のこと話したしなあ」
「……ふむ。それはそれとして、かなり面白いねこりゃ」
「ああ。あいつ、本職の作家としてもやっていけるんじゃねえ...
「違ぇねえや。さて、お次は、と」
「マリコルヌか。ま、どうせあの太っちょのことだ、ギーシュ...
「……相棒よ」
「……ああ。なんか、スゲードロドロした話書いてるな、あいつ」
「おう。男が身勝手な欲望のままに女を……だの、
復讐を誓った少女が返り討ちにあって記憶を消されて、気づ...
凄く暗めの話が多いね、どうも……」
「要所要所はギーシュと同じで、男に都合のいい展開なんだが...
「あの坊ちゃんも、昔からいろいろ馬鹿にされてたみたいだし...
腹に一物溜め込んでるってのも、まあおかしなことじゃない...
「うーむ。人間、見かけにはよらんもんだな。
あの、女さえ絡まなきゃ臆病で大人しい野朗が、こんな残酷...
「ま、人間なんだから、一面だけじゃ判断できねえのは当然っ...
「まあな。何にしても、話が面白いのは事実だし」
「そういうこと。さて、次は誰かね」
「お、いよいよお待ちかねのルイズか」
「おうおう、愛しのご主人様だね相棒」
「よせやい、あんな我が侭女、使い魔としての感情が消された...
なんとも思ってねえッスよ。……ホントだぜ?」
「へいへい。さて、それじゃ中身の方を読んでみるとするか。
どうするよ相棒、今まで以上にベタベタで、相棒に対する愛...
「止めろよな! 照れるぜ全く」
「いやいや、あの嬢ちゃんもなかなか頭の方はメルヒェンでラ...
「だからよせって……ん?」
「……相棒よ。何というか、至って真面目な話じゃないかい?」
「……ああ。あんま、恋愛とか絡んでこねえな。ごくごく真面目...
「……ある意味、嬢ちゃんらしいっちゃ嬢ちゃんらしいね」
「……ま、一生懸命話考えてたみたいだしな」
「……実際、ガックリしてるだろ、相棒」
「うるせえや」
数時間後
「さーて、これであらかた読み終わったな」
「そうだね。で、どれが一番だったよ?」
「一番ってのはねえけど、とりあえず印象に残ってるのは最初...
「ふむふむ」
「っつーか、勿体ねえなこれ。こんなに面白いんなら、皆にも...
177 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
「……で、何だって掲示板にわたしたちの作品が張り出されてる...
「これも授業の一環だろ、ルイズよぉ」
「うう……なんか、すっごい恥ずかしいんだけど」
「でも、皆は喜んでるみたいだぜ?」
「おいギーシュ! なんだこの素晴らしい物語は! もっと書...
「そうだ。このままではあふれ出るパッションがどうにもなら...
「ははは、そうかそうか、それじゃあこれからも僕の素晴らし...
「……どっちかと言うと妄想っつった方がいいけどな」
「イカしてるぜ、この変態野朗!」
「……」
「あらタバサ、今日はずいぶん嬉しそうじゃない」
「……そう?」
「ええ。あなたの書いた話、評判いいみたいだものね」
「……そんなことない。ただ、いつも通りに書いただけ」
「あらまあ、まるで本業の作家みたいなこと言うのね」
「……」
「……まさか、本当にそうなの?」
「……そうと言えなくもない、かも」
「キャーッ! ちょっと皆、聞いてちょうだい、タバサったら...
「……正直さ、俺、マリコルヌの話になんか惹かれるんだよな」
「ああ。こう、一見明るいように見えて根底には暗くドロドロ...
「……あのね皆、僕は女子をドン引きさせるために話を書いた訳...
「そう言うなよ。なんかいいんだよねお前の話」
「そうだよ。もっと書けよ、俺らは見てやるからさ」
「はあ、全く……仕方ないなあ、これからも気が向いたら書くよ。
でも、しばらくはこの掲示板の管理でもしようかな。ギーシ...
うん、そうしよう。どうせなら感想書く紙も備え付けて、何...
「……しっかし、今回は慣れないことしたせいで本当に疲れたわ…...
「そか。ご苦労さんだな、ルイズ」
「……なによそのおざなりな……まあいいわ。で、どうだった、わ...
「……まあ、いいんじゃねえのかな。結構面白かったぜ」
「……そう。あのねサイト、実は、まだいろいろと書きたいもの...
「おう。じゃ、また書いたら俺に読ましてくれよ」
「し、仕方ないわね。そこまで言うなら読ませてあげるわよ」
「へいへい」
という経緯により、学院の掲示板に学院生の書いた物語が掲...
公式に管理人となったマリコルヌは、その後も続々と寄せら...
学生達は気軽に友人達の話を楽しめるようになったのである。
こうして掲示板には大量の作品が寄せられることとなった。
が、大抵の生徒は一作ニ作書き上げるだけで飽きるか、
人気のある生徒の作品に比べて自分の作品に対する評価が低...
その後もう二度と作品を書かないかのどちらかであった。
そうして、十週間ほどの時が経過した頃になると、未だに新...
その中でも特に目立って賞賛を浴びていたのは、ギーシュと...
ギーシュはこの中でも特にたくさんの作品を書き上げ、
その軽妙な筆遣いと理由もなく女にモテる主人公により、モ...
タバサの方は淡々と作品を書き上げて、多少地味ながらも堅...
マリコルヌの方はどちらかと言えば管理を中心に活動してい...
作品の方も相変わらずドロドロとしたテイストを基本として...
ルイズの方はやる気と執筆のペースにムラがあり、そのとき...
様々な色合いの作品を唐突に書いては、周囲を感心させると...
このように、魔法学院掲示板の四人組は、それぞれの魅力を...
178 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
ところが、その頃になって事件が起きた。
「クソッ、気に入らないぞあのチビッ子め」
問題は、ド・ロレーヌが起こした。元からタバサが気に入ら...
今回のことでますます彼女が評価を上げることを妬み始めた...
彼はタバサの人気を下げるために、様々な妨害工作を展開し...
「見ろ、あのタバサの傲慢振りを。多少人気が高いのをいいこ...
聞けば、質問に対して思わせぶりな発言をして持ち上げられ...
こんな浅ましい女に、この掲示板を利用させておいていいの...
そんな風に息巻いたものの、ド・ロレーヌの発言にはほとん...
それどころか、静かで誠実な対応を返したタバサに対してま...
「クソッ、クソッ、クソッ! 見ていろあのチビっ子め、どう...
ド・ロレーヌは強硬手段に出た。なんと、姿を消すアイテム...
掲示板に貼り付けられていたタバサの作品を破り捨てるとい...
「けしからん! どうしてこんなひどいことをするんだ!」
その頃管理人としての立場がすっかり板についていたマリコ...
タバサの作品を直しながら、犯人に対して散々警告を発した...
「どうせ、あんな大人しい奴に何かが出来るわけもないだろう」
と、調子に乗って、直る端からタバサの作品を破り捨てまく...
「そうかそうか、そっちがその気ならこっちにも考えがあるぞ…...
ついに怒りが頂点に達したマリコルヌは、自分の持てる知識...
油断していたド・ロレーヌは、あっさりと自分の犯罪を見抜...
「この腐れ(ピー)め、お前の赤裸々な私生活をバラされたく...
普段舐めきっていたマリコルヌのド迫力に、ド・ロレーヌは...
「許してくれマリコルヌ、あのチビっ子の作家気取りが気に入...
反省してるから、先生に届けるのだけは勘弁してくれ!」
「……全然反省してるようには見えないが、まあいいだろう。次...
だが、残念ながら問題はこれで終わらなかった。
タバサが、このような騒動になったことに責任を感じて、掲...
「そんな、別に君のせいでは」
「……わたしにも、責任の一端はある」
という訳で、タバサの作品は惜しまれながらも掲示板から姿...
彼女はその後も物語を書き続けているという噂だったが、
残念ながらそれらが学院生たちの目に触れることは、二度と...
179 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
こうして、四人組は三人組となった。
ギーシュは相変わらずイケイケであり、マリコルヌもタバサ...
が、次の問題はルイズが起こした。
「駄目よ、駄目だわ、こんなものでは……!」
真面目な性格の彼女は、やはり作品を書くときでもクソがつ...
気楽に書いて気楽に読ませていればよかったのに、いつの間...
「少しでもいい作品を書かなければ」という怨念めいた思い...
彼女が潜在的に持つ自虐傾向が、悪い方向に働き始めたので...
「皆は面白いって言ってくれるけど、本当は違う。こんな穴だ...
きっと、わたしのこと哀れんでお世辞を言っているのよ!
それに、わたしもいつの間にか賞賛の言葉に安住して、いい...
駄目、こんな腐りきった心のままじゃ、素晴らしい作品なん...
周りから見れば深刻になりすぎだったのだが、元々思い込み...
「これは駄目だわ、何とかしなくては!」
彼女は早速マリコルヌのところへ赴くと、こう提案した。
「作品の悪いところをけなすためのコーナーを設けましょう!」
「ええ、そんなルイズ、これはあくまでも遊びだよ。別に人生...
「いいえ、駄目よ! 芸術に妥協は許されないわ。さあやるの...
「あひぃ! ……わ、分かった、とりあえず試しにやってみるよ」
という訳で、掲示板に新たに「文句を言うコーナー」が新設...
多くの生徒はこれに困惑し、作者の心情を慮ってなかなか文...
で、ルイズはますます怒った。
「何よ、わたしの書いた話には文句をつける価値もないって言...
「落ち着けよルイズ、お前段々意味不明になってきてるぞ」
「お黙りなさい!」
と、才人の助言にも耳を貸さず暴走するルイズを見かねて、...
「分かった、じゃ、僕から見て気になったことを言うよ、ルイ...
「よし、きなさい!」
「まずね、こことここ文章がおかしいし、ここも設定的に矛盾...
「馬鹿な、こんな簡単なことに気づかなかっただなんて!
ああ、やっぱりわたしは駄目な子なんだわ! 褒められてい...
「……いや、別にそこまで深刻にならなくても。
ほら、それでも皆が楽しんでるってことは、そういう欠点を...
「マリコルヌ!」
「な、なに?」
「掲示板に載ってるわたしの作品、全部剥がして!」
「えぇ!? や、やだよそんなの、君の作品にだってファンが...
それに、僕が文句言った途端にそんなことしたら、僕の方に...
「いいから! こんな中途半端なものを、これ以上世に出して...
「そんなあ……」
とは言え、結局のところ本人の自由ではある。マリコルヌは...
こうして、雰囲気が読めずに暴走したルイズは、結局暴走し...
この一連の騒ぎを横で見ていた才人は、こうコメントしてい...
「いやあ、あいつなりに悩んではいるんだろうけど、正直何を...
ルイズはその後もあれこれと試行錯誤しているようだが、未...
180 名前:どっかで聞いた話[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 0...
そうした一連の騒動の中、やはりギーシュはイケイケであっ...
その人気は留まるところを知らず、他の有力作家が諸々の事...
「はははは、声援ありがとう皆、一緒に話を盛り上げていこう...
元々調子に乗りやすい性格のギーシュだったが、その性格が...
彼は休むことなく作品を書き続け、またその作風も初期の軽...
学生達の支持も留まるところを知らなかった。
が、やはり困ったちゃんというのはいるものである。
「おのれ、ギーシュの奴め、この僕を差し置いて」
と再び憤ったのは、件のド・ロレーヌであった。
ギーシュの人気に嫉妬した彼は、あらぬ噂を立て始めた。
「ギーシュの奴の話、見てみろよ。ずいぶんと低俗じゃないか。
こんなくだらない話がウケてるだなんて、僕には信じられな...
きっと、奴が自分で筆跡を誤魔化して、多数の感想を自作自...
ま、僕の邪推でなければいいけどね……」
前回に引き続き、今回も彼の策謀はうまくいかなかった。理...
その中傷の中身があまりにも馬鹿馬鹿しすぎたことが一つ。
読んでいる人間のほとんどが、話の内容が低俗だとかを気に...
ギーシュ自身がノリノリだったので、そんな中傷など大して...
そして何より、結局のところ彼の書く作品が非常に面白かっ...
こうして、いつも通り気に病んでいるのはマリコルヌ一人だ...
「……ギーシュ、君はいいよな、いろいろと……」
「ん? どうしたんだい管理人殿。ははは、暗い顔してないで...
「おおう、これは素晴らしい! いいなあ、僕も子供に戻った...
「ははは、僕の空想は百八式どころでは留まらないぞ!」
とまあ、あれこれと変な事件を巻き起こしつつ、トリステイ...
「ねえねえサイトさん、これ見てください」
「あん、なんだシエスタ、この紙束……おっ、こりゃ物語だな?」
「はい、わたしも書いてみたんです」
「へえ、シエスタが書いた話ならきっと優しい感じの……あの、...
「なんですか、サイトさん?」
「……この話、俺がシエスタに散々犯されるっていうとんでもね...
「フフフフフ……」
「ちょ、シエスタ、なんで後ろ手に鍵しめてんの!?」
「さあサイトさん、わたしと共にめくるめく甘美な世界に旅立...
「いやぁぁぁぁぁぁっ! 誰か助けてっ、ここに痴女が、痴女...
了。
※ この作品は二次創作です。現実とは一切関係がありません。
何ていうか、笑って流してくれると信じてる。
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