ゼロの使い魔保管庫
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最近、タニアは朝が嫌いだ。特に皆と一緒に採る朝食の時間。
なるべくなら、朝は別に採りたい、とすら思うようになってい...
その理由は。
「ねえサイト、どっちだと思う?」
「何が?」
「やだもう、分かってるくせに…」
「俺は女の子がいいな。テファそっくりの可愛い娘」
妊娠したのがわかってから、公然といちゃつくようになったこ...
「やだサイトったら、冗談ばっかり」
「冗談でこんなこと言わないよ」
今朝のスープには砂糖でも入っているのだろうか?
タニアはスープを掻き込みながら、まるで砂糖をまぶした蜂蜜...
二人のアホ面を、特にデレまくる才人を見るにつけ、一時でも...
「ごちそうさまっ!」
空になった皿とスープ皿をまとめて、タニアは席を立つ。
「タニアねーちゃん早っ!」
「ちゃんとかまないとおいしくないよー」
ジムやサマンサ、その他子供達の非難を浴びながら、タニアは...
「まったく…誰かあのバカップルなんとかしてくんないかしら…」
食事の後片付けを終えたタニアは、日課の兎狩りに出かけた。
狩猟用の、しっかりした造りの短弓を持ち、小さな矢の入った...
タニアは、村で唯一弓を扱える子供だった。
というよりも、おもちゃの弓で遊んでいるうちに、弓の扱いを...
それでも彼女の腕は確かで、犬もいないのに三回に一度は必ず...
この弓であのバカップルどもの脳天をブチ抜いてやろうと思っ...
でも仮にも育ての親である。そういうわけにもいかない。
「…ほんと…頭さえ沸いてなきゃいい人たちなのよねえ…」
言いながら村を出て、道沿いに兎の巣のたくさんある狩猟ポイ...
しばらく道沿いに進むと。
奇妙な二人組みが道の向こうからやってきた。
大量の荷物を背負った黒髪のメイドと、フードを目深にかぶっ...
道に迷ったおのぼりさんかしら、とタニアが思っていると。
二人はこちらへ気付き、近寄ってくる。
…怪しい人だったら弓でなんとかしないとね。
軽く警戒しながら、タニアはその二人に手を振る。
「どうしました?道に迷いました?」
道に迷った旅人にかける台詞で、タニアは二人に話しかける。
二人はある人物を探しているのだと言い、そしてその人相をタ...
タニアはその人物を知っていた。
そして気付く。
この二人は救世主だ。
この二人を村に連れて行けば。
きっと明日からは、おいしい朝ごはんが食べられる…!
そしてタニアは、二人をウエストウッドの村へ案内した。
249 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 03:18:29 ID:al9...
ウエストウッドの村には、季節外れの嵐が吹き荒れようとして...
村の入り口にやってきた余所者に気がついたのは、洗濯物を干...
才人は妊娠しているティファニアを気遣って、重い仕事は全て...
今才人は、果物を採りに東の森に出かけていた。
ティファニアは外出用の大きな帽子をかぶり、二人に近づいて...
ぱっと見、二人連れの、女の子の旅人のようだ。
それでも一応警戒しながら、ティファニアは二人に近づいてい...
「あの、この村には宿も何もありませんよ?」
ティファニアは二人から一定の距離を取り、いつでも叫べるよ...
才人に言われて、知らない人間にはこうするようにしているの...
『もう自分だけの身体じゃないんだからな』…だって!だって!
「あの、どうかなさいましたか?」
二人のうち黒い髪のメイドが、赤くなって回りだしたティファ...
…いけないいけない。
ティファニアは我に返り、二人に今一度尋ねる。
「この村に、何のご用件でしょう?」
その質問に、黒い髪のメイドが応えた。
「あなた、ご存知ないかしら」
言って、上着のポケットから一枚の羊皮紙を取り出す。
そこには、ある男の人相書きが認められていた。
それは、どこか間の抜けた冴えない、黒髪の少年。
それほど上手な絵ではなかったが、ティファニアにはその少年...
そして、後ろに控えていた桃色の髪の少女が、それに続けた。
「この男の名前は、サイト。
サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。
先のアルビオン大戦で、行方不明になった、トリステインの...
そう、それはまさに才人だった。
ティファニアは思った。
この人達の目的がなんであれ…サイトを渡すわけにはいかない。
私の大切なひとを。
生涯の伴侶を。
…ヤダ私ったら何言ってるのかしらまだ式も挙げてないのに!
「あの、大丈夫ですか?」
再び赤くなってくるくる回りだしたティファニアを、黒髪のメ...
263 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:49:51 ID:al9...
その時、才人は。
がっつり果物を採取して、村に帰ってきていた。
「ちょっと頑張りすぎたかな」
果物を満載した荷車を見ながら、才人は言う。
そのまま町で果物屋を開けそうな物量だ。
そんな才人に背中に背負われたデルフリンガーが突っ込んだ。
「やりすぎだぜ相棒?この辺の果物が全部無くなっちまうかと...
「俺もあと1年後にはパパだからな!気合い入れないとな!」
「人の話聞けよ…っつーか少しは自重しろこの種馬」
「二人目は年子がいいかな?それともちょっと離したほうがい...
「はいはいわろすわろす」
「あー、双子だったりしたらそんなの意味ないかぁ。あははは...
「…うわマジ無視かいこいつ」
呆れたようにデルフリンガーがそう言い終わるのと、才人の牽...
「ただいまー、今日もお父さんがんばっちゃったよぉ」
誰がお父さんやねん、と突っ込みたいデルフリンガーだったが...
そして、才人はニコニコ笑顔で荷車を倉庫前に運ぶ。
そしてそこで、運命が動き出す。
「…ずいぶん幸せそうねえ、犬」
風が吹いた。
その風は才人に声を掛けた、フードを目深にかぶって厚ぼった...
それと同時に、少女の柔らかい桃色の波打つ髪が、柔らかく風...
才人は知っていた。
この声を。この桃色の髪を。この少女の名を。
「ルイズっ!?」
その声に応えるように。
少女の目がぎらり、と光る。
それは、獲物を見つけた肉食獣の目だった。
264 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:50:34 ID:al9...
才人はその視線と久しぶりに感じる戦慄に、完全に硬直してし...
「見つけたわよこのバカ犬!
もー逃がさないわよっ!」
言ってルイズは両手をわきわきさせて才人に飛び掛ろうとする。
それを、背後から伸びてきた、白い手が止める。
「ルイズ。あなたがそんなことしちゃいけませんよ」
そして、ルイズの前に立ったのは。
黒髪の、メイド。
「し、シエスタっ!?」
「お久しぶりです、サイトさん」
にっこり笑って、シエスタは軽く首をかしげる。
その両手には、大きなバスケットが抱かれている。
「ちょ、シエスタ、私はコイツにっ」
「落ち着いてルイズ。身体に障るわ」
言ってシエスタは優しい笑顔で今にも才人に飛び掛ろうとする...
…まて、なんでシエスタがルイズを呼び捨てにしてんだ?
それに、あの二人あんなに仲良かったか?
才人がその疑問をぶつける前に、シエスタが話しはじめた。
「サイトさん…あなたがいなくなってから、いろいろあったんで...
「いろいろって…?」
「まず。トリステイン王家に、世継ぎが生まれました」
シエスタの言葉に、才人は驚く。
「え?姫さま、結婚したんだ…?」
「いいえ」
「え」
結婚してないのに、世継ぎってことは…?
可能性は一つ。しかしそれは、才人にとって否定するべきもの...
「女王陛下は、結婚していません。でも、陛下は身篭っていた...
陛下は、行方不明になった、ある人が残した種だと、言って...
才人の身体から、汗が吹き出る。
まさか。まさか。
265 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:51:17 ID:al9...
シエスタは、淡々と続ける。
「公式に相手が誰という発表もなく、相手のはっきりしない子...
『愛した殿方の子を生むということが罪だというなら、その罪...
しかし、その事を盾にわが国とこの子を貶めようと言うのな...
母の愛って偉大ですよね」
才人の脂汗は最高潮を迎えていた。
まずい。やばい。あの夜のアレが大当たりですかまさか!?
シエスタはにこにこと笑顔のままだ。しかしその笑顔は微動だ...
ルイズはその後ろで俯いているだけで何の言葉も発さないが、...
三人の間に流れる緊張が最高潮に達そうとした瞬間。
びええええええええええええええ!
突然、空気を振るわせる咆哮が辺りに響いた。
それは甲高く、人の注意をそちらへと喚起し、そして保護欲を...
分かり易く言うと、赤子の鳴き声。
それは。
シエスタの抱えた、大きなバスケットの中から響いていた。
「あー、はいはい、おなかすきまちたかー?」
シエスタはバスケットを一旦地面に置くと、中身を取り上げた。
そこから現れたのは。
黒髪の、小さな小さな赤ん坊。
赤ん坊はシエスタの腕の中で、泣いて自己主張を続ける。
ゑ。アレナニ。ましゃか。
才人の頭の中で、名探偵サイトがあの赤ん坊に関する推理を繰...
あの赤ん坊は、そう、ここに来る途中でシエスタが拾って、面...
それが証拠に
シエスタは赤ん坊を揺らしながら、無遠慮に胸元をはだけた。
そして。
「ほーら、たっぷりのむんでちゅよー」
大きく張った乳首を、赤ん坊の口元に持っていく。
赤ん坊は小さな手でシエスタの乳房に掴まると。
乳首を口に含んで、んくんくと喉を鳴らし始めた。
シエスタの乳房からは、確実に母乳が出ていた。
「あ、あの、シエスタさん?」
才人は先ほどにも倍する脂汗をかきながら、シエスタに尋ねよ...
267 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:52:38 ID:al9...
才人が本文を口にする前に、シエスタは応えたのだった。
「あ、この子、ハヤトっていうんですよ。
サイトさんの名前と、語感を合わせて名づけたんです。
ほーらハヤト、この人が
パ パ で ちゅ よー」
ま───────────────て────────────!
ちょっとまて───────────────────!
こっちも大当たり───────────────────ッ!?
シエスタがにこにこ笑顔で赤ん坊の顔を才人に向けるが、赤ん...
「…この子生んでたから、ちょっと出発が遅れちゃって…えへ」
軽く赤くなって、シエスタはそう言う。
そんなシエスタを、ルイズが押しのけた。
「『えへ』じゃないわよシエスタ!
アンタここに何しに来たのか忘れたわけ?」
ものすごい剣幕でシエスタに噛み付くルイズ。
そんなルイズを、シエスタが宥める。
「ちょっとルイズ。そんなに怒っちゃ…」
「これが怒らずにいられるわけないじゃないの!
やっとこの節操なしに文句言ってやれるってのに!」
言ってルイズはびしっ!と才人を指差す。
…ん?
才人は異変に気付いた。
…ルイズ太ったな?
才人の受けた印象の通り、ルイズのシルエットは丸かった。特...
才人の記憶しているルイズは、こんなにぽっこり膨らんだお腹...
…ッテチョットマテ。
268 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:53:39 ID:al9...
シエスタと口論を続けるルイズは、ついにばさぁっ!と身に纏...
その下は。
ルイズは見慣れたトリステイン魔法学院の制服ではなく、下腹...
その下腹部は、まるで妊婦のようにぽっこりと膨らんでいた。
「…何見てんのよ」
赤い顔で、ルイズは凝視する才人に文句を言う。
「あ、あああああああああのルイズ、そそそそそそそそそそそ...
才人の声は震え、うまく言葉にならない。
ルイズは赤くなって、ぷい!と顔を逸らす。
そして、言った。
「あ、あんたの子供に決まってんでしょ!
安定期に入るまで動き回るなって、お医者さまが言うから…。
って何説明させてんのよっ!」
怒るルイズにしかし、才人は完全に固まっていた。
あ、あの、ここまで大フィーバーってマジありえないんですけ...
「こういうの『確変』って言うんだよな?すげえな相棒」
デルフリンガーの突っ込みにも、才人は応えられない。
そんな才人に、シエスタがルイズを抑えながら言った。
「ルイズは落ち着いて、ね?お腹の赤ちゃんに障るわ。
あの、サイトさん。
ルイズね、相手のいない赤ちゃん孕んだからって、勘当され...
言ってルイズを見る。
ルイズは、二人から視線を逸らしているので、表情が見えない。
しかし、ルイズはそのまま言った。
「そ、そうよ、アンタが悪いんだから!
アンタのせいで私は貴族の身分まで捨てる事になったのよ!...
シエスタはそんなルイズの言葉を聴いてくすっと笑うと。
269 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:54:46 ID:al9...
「でもルイズったら、『絶対産みます!例え貴族の身分を捨て...
すごかったんですよぉ」
「ちょ、シエスタ、何勝手にしゃべって」
「その剣幕があんまりすごいから、ルイズのお父上も折れて、...
「し、し、し、し、シエスタあああああああああああああああ...
「しかもー、そのお医者様が『ちゃんと産むまでは安静にな』...
「ししししししししししししシエスタあああああああああああ...
いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい言い加減なこと...
「いい加減じゃないですぅー。全部事実ですぅー」
言い合いながらじゃれあう二人を、才人はじっと見つめる。
才人の中では、必死に現実を否定する才人が居た。
…あ、あの、なんですかこれわ。タチの悪い淫夢かなんかっすか...
そ、そうだ、きっとこれは夢だ。
目を覚ませば、俺はやわらかい藁の上で寝ているに違いない。
目を覚ませ俺。早く!早く早く早く早く早く早く早く早く!
「現実を見ようぜ相棒ー」
固まったまま動かない才人に、デルフリンガーがそう言う。
そして、もう一つの声が、才人の意識を完全に現実に引き戻す。
「サイト」
才人の背後からかけられたのは、鈴を転がすような、澄んだ声。
振り向くと、そこにいたのは。
「て、テファ」
俯いた、ティファニアがいた。
ま、まさかさっきの聞かれてた?
「あ、あの?」
ティファニアは、才人の声に顔を上げる。
その顔は、笑顔で満たされていた。
270 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:55:38 ID:al9...
「あの人たちね、サイトを捜しに来たんだって」
「そ、そうみたいだね」
脂汗とともに、才人は応える。
ティファニアは笑顔のままだ。
「サイト、知ってる人なの?」
「う、うん、とってもよくご存知です」
才人の脂汗が倍になる。
ティファニアの笑顔は変わらない。ように見える。
「でね、二人に聞いたんだけど」
キタ。
ティファニアはまだその美しい笑顔を崩さない。
しかしその美しい笑顔には、妙な迫力が篭っていた。
「な、なにをお聞きになったんでしょうか?」
「二人とも、サイトの子供がいるって」
ティファニアの笑顔は変わらない。
しかし、その質は完全に反転していた。
いつものティファニアの笑顔を陽とするなら。
今のティファニアの笑顔は、完全に陰と化していた。
よく見ると。
ティファニアは巨大なリュックを背負い、手には外出用の大き...
そして、首をこくん、と軽くかしげて、満面の笑顔で言った。
「この、
超伝説級節操なし───────ッ!」
その声と同時に、振り上げた掌を、右から左へ振り抜いた。
すぱーん、と小気味いい音がして、才人の左頬にきれいな手形...
そして、その衝撃で尻餅をついた才人に、ティファニアは言っ...
「実家に、帰らせていただきますッ!」
「え、テファ実家って」
才人の疑問に、ティファニアはくるん!と振り向いて、背中で...
「エルフの国!私、エルフの国に行きますっ!」
そして、すたすたと歩き出した。
「あ、待ってテファっ!」
追いすがろうとした才人だったが。
がし。
その肩を、二つの手が掴んだ。
シエスタと、ルイズの手だった。
「どこに行こうっていうのかしら?」
「まだお話は終わっていませんよ、サイトさん?」
そして、遠ざかるティファニアの背中を見ながら。
才人は、二人の肉食獣に完全に捕縛されたのだった。
271 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:56:59 ID:al9...
結局タニアの朝の不機嫌は解消されたのだが。
「で、どー責任とるのよこの節操なし」
「ルイズだめよ、子供たちもいるんだし、ね?」
「子供『たち』!そー『たち』って所よ問題は!
タバサもなんか大きいお腹抱えて本国に帰ったし!
アンタどんだけ種バラまいてんのよ!」
「ほ、ほら落ち着いて、ね?」
「オチついてられるかぁぁぁぁぁ!」
あれから毎朝毎朝、半分抜け殻と化した才人を、二人の女の子...
まあ、朝から甘ったるい会話を聞かされ続けるよりはいいのだ...
「いいぞー、やれやれー」
「きょうはどっちがかつとおもうー?」
「ルイズおねーちゃんー!」
「シエスタおねえちゃんに1ドニエ!」
…子供たちの教育には果てしなくよろしくない。
「はいはい人の喧嘩を肴にしなーい。
ほら朝ごはん片付けてー」
「ちぇー」
「タニアおねえちゃんのけちんぼー」
「はいはいケチでもなんでも結構でございますよー」
言いながら呆れ顔で子供達をどやすタニア。
そんなタニアに、ジムが言った。
「タニアねーちゃん、なんかおばさんくさいぞー」
その言葉にタニアははっとなる。
そして天を仰いで、叫んだ。
「じょおだんじゃないわよっ!
私はまだ十三なのよっ!?
なんでこのトシで子守フラグ立てなきゃなんないわけっ!?」
しかし悲しいかな。
言いながら両手にはしっかりと食べ終わった器を重ねている。
既にタニアが子守で行き後れることは運命といえた。
「いーぃ度胸ねシエスタ!今日こそ決着をつけるべきかしら!」
「それはこっちの台詞です!どっちが本妻か、この機会にはっ...
「いーぞー」
「やれやれー」
苦悩するタニアを他所に、すでに恒例となった天下分け目の痴...
ウエストウッドの村に、平和な日常がやってくる。
272 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:57:39 ID:al9...
「で、結局テファお姉ちゃんはエルフの国で子供生んだらしい...
あっちから定期的に届く手紙で知ったんだけどね。
今?さあ、三年くらい前からかな、手紙こなくなっちゃって。
ま、私も心配かけるようなトシじゃないしね。
タニアお姉ちゃん?まだウエストウッドにいるみたいよ?
私たちはこうしてあっちこっちで出稼ぎしてるけどさ、まだ...
そそ。その二人の子供。
結局さ、サイトお兄ちゃんもどっちつかずだったんだけど、...
たぶん今も取り合いしてんじゃないかなー?
ほんっと、いい題材よあの人たち。
私の恋愛譚のネタの半分以上はあの人達題材にしてんの。
あ、それそれ。今売り出し中の『王子様と異界の姫』。
ま、元ネタわかっても知ってるの私と他の子たちくらいだか...
んじゃ、新刊もよろしくねっ♪」
〜吟遊詩人ヒースクリフの、人気作家エマ氏へのインタビュー...
終了行:
最近、タニアは朝が嫌いだ。特に皆と一緒に採る朝食の時間。
なるべくなら、朝は別に採りたい、とすら思うようになってい...
その理由は。
「ねえサイト、どっちだと思う?」
「何が?」
「やだもう、分かってるくせに…」
「俺は女の子がいいな。テファそっくりの可愛い娘」
妊娠したのがわかってから、公然といちゃつくようになったこ...
「やだサイトったら、冗談ばっかり」
「冗談でこんなこと言わないよ」
今朝のスープには砂糖でも入っているのだろうか?
タニアはスープを掻き込みながら、まるで砂糖をまぶした蜂蜜...
二人のアホ面を、特にデレまくる才人を見るにつけ、一時でも...
「ごちそうさまっ!」
空になった皿とスープ皿をまとめて、タニアは席を立つ。
「タニアねーちゃん早っ!」
「ちゃんとかまないとおいしくないよー」
ジムやサマンサ、その他子供達の非難を浴びながら、タニアは...
「まったく…誰かあのバカップルなんとかしてくんないかしら…」
食事の後片付けを終えたタニアは、日課の兎狩りに出かけた。
狩猟用の、しっかりした造りの短弓を持ち、小さな矢の入った...
タニアは、村で唯一弓を扱える子供だった。
というよりも、おもちゃの弓で遊んでいるうちに、弓の扱いを...
それでも彼女の腕は確かで、犬もいないのに三回に一度は必ず...
この弓であのバカップルどもの脳天をブチ抜いてやろうと思っ...
でも仮にも育ての親である。そういうわけにもいかない。
「…ほんと…頭さえ沸いてなきゃいい人たちなのよねえ…」
言いながら村を出て、道沿いに兎の巣のたくさんある狩猟ポイ...
しばらく道沿いに進むと。
奇妙な二人組みが道の向こうからやってきた。
大量の荷物を背負った黒髪のメイドと、フードを目深にかぶっ...
道に迷ったおのぼりさんかしら、とタニアが思っていると。
二人はこちらへ気付き、近寄ってくる。
…怪しい人だったら弓でなんとかしないとね。
軽く警戒しながら、タニアはその二人に手を振る。
「どうしました?道に迷いました?」
道に迷った旅人にかける台詞で、タニアは二人に話しかける。
二人はある人物を探しているのだと言い、そしてその人相をタ...
タニアはその人物を知っていた。
そして気付く。
この二人は救世主だ。
この二人を村に連れて行けば。
きっと明日からは、おいしい朝ごはんが食べられる…!
そしてタニアは、二人をウエストウッドの村へ案内した。
249 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 03:18:29 ID:al9...
ウエストウッドの村には、季節外れの嵐が吹き荒れようとして...
村の入り口にやってきた余所者に気がついたのは、洗濯物を干...
才人は妊娠しているティファニアを気遣って、重い仕事は全て...
今才人は、果物を採りに東の森に出かけていた。
ティファニアは外出用の大きな帽子をかぶり、二人に近づいて...
ぱっと見、二人連れの、女の子の旅人のようだ。
それでも一応警戒しながら、ティファニアは二人に近づいてい...
「あの、この村には宿も何もありませんよ?」
ティファニアは二人から一定の距離を取り、いつでも叫べるよ...
才人に言われて、知らない人間にはこうするようにしているの...
『もう自分だけの身体じゃないんだからな』…だって!だって!
「あの、どうかなさいましたか?」
二人のうち黒い髪のメイドが、赤くなって回りだしたティファ...
…いけないいけない。
ティファニアは我に返り、二人に今一度尋ねる。
「この村に、何のご用件でしょう?」
その質問に、黒い髪のメイドが応えた。
「あなた、ご存知ないかしら」
言って、上着のポケットから一枚の羊皮紙を取り出す。
そこには、ある男の人相書きが認められていた。
それは、どこか間の抜けた冴えない、黒髪の少年。
それほど上手な絵ではなかったが、ティファニアにはその少年...
そして、後ろに控えていた桃色の髪の少女が、それに続けた。
「この男の名前は、サイト。
サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。
先のアルビオン大戦で、行方不明になった、トリステインの...
そう、それはまさに才人だった。
ティファニアは思った。
この人達の目的がなんであれ…サイトを渡すわけにはいかない。
私の大切なひとを。
生涯の伴侶を。
…ヤダ私ったら何言ってるのかしらまだ式も挙げてないのに!
「あの、大丈夫ですか?」
再び赤くなってくるくる回りだしたティファニアを、黒髪のメ...
263 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:49:51 ID:al9...
その時、才人は。
がっつり果物を採取して、村に帰ってきていた。
「ちょっと頑張りすぎたかな」
果物を満載した荷車を見ながら、才人は言う。
そのまま町で果物屋を開けそうな物量だ。
そんな才人に背中に背負われたデルフリンガーが突っ込んだ。
「やりすぎだぜ相棒?この辺の果物が全部無くなっちまうかと...
「俺もあと1年後にはパパだからな!気合い入れないとな!」
「人の話聞けよ…っつーか少しは自重しろこの種馬」
「二人目は年子がいいかな?それともちょっと離したほうがい...
「はいはいわろすわろす」
「あー、双子だったりしたらそんなの意味ないかぁ。あははは...
「…うわマジ無視かいこいつ」
呆れたようにデルフリンガーがそう言い終わるのと、才人の牽...
「ただいまー、今日もお父さんがんばっちゃったよぉ」
誰がお父さんやねん、と突っ込みたいデルフリンガーだったが...
そして、才人はニコニコ笑顔で荷車を倉庫前に運ぶ。
そしてそこで、運命が動き出す。
「…ずいぶん幸せそうねえ、犬」
風が吹いた。
その風は才人に声を掛けた、フードを目深にかぶって厚ぼった...
それと同時に、少女の柔らかい桃色の波打つ髪が、柔らかく風...
才人は知っていた。
この声を。この桃色の髪を。この少女の名を。
「ルイズっ!?」
その声に応えるように。
少女の目がぎらり、と光る。
それは、獲物を見つけた肉食獣の目だった。
264 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:50:34 ID:al9...
才人はその視線と久しぶりに感じる戦慄に、完全に硬直してし...
「見つけたわよこのバカ犬!
もー逃がさないわよっ!」
言ってルイズは両手をわきわきさせて才人に飛び掛ろうとする。
それを、背後から伸びてきた、白い手が止める。
「ルイズ。あなたがそんなことしちゃいけませんよ」
そして、ルイズの前に立ったのは。
黒髪の、メイド。
「し、シエスタっ!?」
「お久しぶりです、サイトさん」
にっこり笑って、シエスタは軽く首をかしげる。
その両手には、大きなバスケットが抱かれている。
「ちょ、シエスタ、私はコイツにっ」
「落ち着いてルイズ。身体に障るわ」
言ってシエスタは優しい笑顔で今にも才人に飛び掛ろうとする...
…まて、なんでシエスタがルイズを呼び捨てにしてんだ?
それに、あの二人あんなに仲良かったか?
才人がその疑問をぶつける前に、シエスタが話しはじめた。
「サイトさん…あなたがいなくなってから、いろいろあったんで...
「いろいろって…?」
「まず。トリステイン王家に、世継ぎが生まれました」
シエスタの言葉に、才人は驚く。
「え?姫さま、結婚したんだ…?」
「いいえ」
「え」
結婚してないのに、世継ぎってことは…?
可能性は一つ。しかしそれは、才人にとって否定するべきもの...
「女王陛下は、結婚していません。でも、陛下は身篭っていた...
陛下は、行方不明になった、ある人が残した種だと、言って...
才人の身体から、汗が吹き出る。
まさか。まさか。
265 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:51:17 ID:al9...
シエスタは、淡々と続ける。
「公式に相手が誰という発表もなく、相手のはっきりしない子...
『愛した殿方の子を生むということが罪だというなら、その罪...
しかし、その事を盾にわが国とこの子を貶めようと言うのな...
母の愛って偉大ですよね」
才人の脂汗は最高潮を迎えていた。
まずい。やばい。あの夜のアレが大当たりですかまさか!?
シエスタはにこにこと笑顔のままだ。しかしその笑顔は微動だ...
ルイズはその後ろで俯いているだけで何の言葉も発さないが、...
三人の間に流れる緊張が最高潮に達そうとした瞬間。
びええええええええええええええ!
突然、空気を振るわせる咆哮が辺りに響いた。
それは甲高く、人の注意をそちらへと喚起し、そして保護欲を...
分かり易く言うと、赤子の鳴き声。
それは。
シエスタの抱えた、大きなバスケットの中から響いていた。
「あー、はいはい、おなかすきまちたかー?」
シエスタはバスケットを一旦地面に置くと、中身を取り上げた。
そこから現れたのは。
黒髪の、小さな小さな赤ん坊。
赤ん坊はシエスタの腕の中で、泣いて自己主張を続ける。
ゑ。アレナニ。ましゃか。
才人の頭の中で、名探偵サイトがあの赤ん坊に関する推理を繰...
あの赤ん坊は、そう、ここに来る途中でシエスタが拾って、面...
それが証拠に
シエスタは赤ん坊を揺らしながら、無遠慮に胸元をはだけた。
そして。
「ほーら、たっぷりのむんでちゅよー」
大きく張った乳首を、赤ん坊の口元に持っていく。
赤ん坊は小さな手でシエスタの乳房に掴まると。
乳首を口に含んで、んくんくと喉を鳴らし始めた。
シエスタの乳房からは、確実に母乳が出ていた。
「あ、あの、シエスタさん?」
才人は先ほどにも倍する脂汗をかきながら、シエスタに尋ねよ...
267 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:52:38 ID:al9...
才人が本文を口にする前に、シエスタは応えたのだった。
「あ、この子、ハヤトっていうんですよ。
サイトさんの名前と、語感を合わせて名づけたんです。
ほーらハヤト、この人が
パ パ で ちゅ よー」
ま───────────────て────────────!
ちょっとまて───────────────────!
こっちも大当たり───────────────────ッ!?
シエスタがにこにこ笑顔で赤ん坊の顔を才人に向けるが、赤ん...
「…この子生んでたから、ちょっと出発が遅れちゃって…えへ」
軽く赤くなって、シエスタはそう言う。
そんなシエスタを、ルイズが押しのけた。
「『えへ』じゃないわよシエスタ!
アンタここに何しに来たのか忘れたわけ?」
ものすごい剣幕でシエスタに噛み付くルイズ。
そんなルイズを、シエスタが宥める。
「ちょっとルイズ。そんなに怒っちゃ…」
「これが怒らずにいられるわけないじゃないの!
やっとこの節操なしに文句言ってやれるってのに!」
言ってルイズはびしっ!と才人を指差す。
…ん?
才人は異変に気付いた。
…ルイズ太ったな?
才人の受けた印象の通り、ルイズのシルエットは丸かった。特...
才人の記憶しているルイズは、こんなにぽっこり膨らんだお腹...
…ッテチョットマテ。
268 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:53:39 ID:al9...
シエスタと口論を続けるルイズは、ついにばさぁっ!と身に纏...
その下は。
ルイズは見慣れたトリステイン魔法学院の制服ではなく、下腹...
その下腹部は、まるで妊婦のようにぽっこりと膨らんでいた。
「…何見てんのよ」
赤い顔で、ルイズは凝視する才人に文句を言う。
「あ、あああああああああのルイズ、そそそそそそそそそそそ...
才人の声は震え、うまく言葉にならない。
ルイズは赤くなって、ぷい!と顔を逸らす。
そして、言った。
「あ、あんたの子供に決まってんでしょ!
安定期に入るまで動き回るなって、お医者さまが言うから…。
って何説明させてんのよっ!」
怒るルイズにしかし、才人は完全に固まっていた。
あ、あの、ここまで大フィーバーってマジありえないんですけ...
「こういうの『確変』って言うんだよな?すげえな相棒」
デルフリンガーの突っ込みにも、才人は応えられない。
そんな才人に、シエスタがルイズを抑えながら言った。
「ルイズは落ち着いて、ね?お腹の赤ちゃんに障るわ。
あの、サイトさん。
ルイズね、相手のいない赤ちゃん孕んだからって、勘当され...
言ってルイズを見る。
ルイズは、二人から視線を逸らしているので、表情が見えない。
しかし、ルイズはそのまま言った。
「そ、そうよ、アンタが悪いんだから!
アンタのせいで私は貴族の身分まで捨てる事になったのよ!...
シエスタはそんなルイズの言葉を聴いてくすっと笑うと。
269 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:54:46 ID:al9...
「でもルイズったら、『絶対産みます!例え貴族の身分を捨て...
すごかったんですよぉ」
「ちょ、シエスタ、何勝手にしゃべって」
「その剣幕があんまりすごいから、ルイズのお父上も折れて、...
「し、し、し、し、シエスタあああああああああああああああ...
「しかもー、そのお医者様が『ちゃんと産むまでは安静にな』...
「ししししししししししししシエスタあああああああああああ...
いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい言い加減なこと...
「いい加減じゃないですぅー。全部事実ですぅー」
言い合いながらじゃれあう二人を、才人はじっと見つめる。
才人の中では、必死に現実を否定する才人が居た。
…あ、あの、なんですかこれわ。タチの悪い淫夢かなんかっすか...
そ、そうだ、きっとこれは夢だ。
目を覚ませば、俺はやわらかい藁の上で寝ているに違いない。
目を覚ませ俺。早く!早く早く早く早く早く早く早く早く!
「現実を見ようぜ相棒ー」
固まったまま動かない才人に、デルフリンガーがそう言う。
そして、もう一つの声が、才人の意識を完全に現実に引き戻す。
「サイト」
才人の背後からかけられたのは、鈴を転がすような、澄んだ声。
振り向くと、そこにいたのは。
「て、テファ」
俯いた、ティファニアがいた。
ま、まさかさっきの聞かれてた?
「あ、あの?」
ティファニアは、才人の声に顔を上げる。
その顔は、笑顔で満たされていた。
270 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:55:38 ID:al9...
「あの人たちね、サイトを捜しに来たんだって」
「そ、そうみたいだね」
脂汗とともに、才人は応える。
ティファニアは笑顔のままだ。
「サイト、知ってる人なの?」
「う、うん、とってもよくご存知です」
才人の脂汗が倍になる。
ティファニアの笑顔は変わらない。ように見える。
「でね、二人に聞いたんだけど」
キタ。
ティファニアはまだその美しい笑顔を崩さない。
しかしその美しい笑顔には、妙な迫力が篭っていた。
「な、なにをお聞きになったんでしょうか?」
「二人とも、サイトの子供がいるって」
ティファニアの笑顔は変わらない。
しかし、その質は完全に反転していた。
いつものティファニアの笑顔を陽とするなら。
今のティファニアの笑顔は、完全に陰と化していた。
よく見ると。
ティファニアは巨大なリュックを背負い、手には外出用の大き...
そして、首をこくん、と軽くかしげて、満面の笑顔で言った。
「この、
超伝説級節操なし───────ッ!」
その声と同時に、振り上げた掌を、右から左へ振り抜いた。
すぱーん、と小気味いい音がして、才人の左頬にきれいな手形...
そして、その衝撃で尻餅をついた才人に、ティファニアは言っ...
「実家に、帰らせていただきますッ!」
「え、テファ実家って」
才人の疑問に、ティファニアはくるん!と振り向いて、背中で...
「エルフの国!私、エルフの国に行きますっ!」
そして、すたすたと歩き出した。
「あ、待ってテファっ!」
追いすがろうとした才人だったが。
がし。
その肩を、二つの手が掴んだ。
シエスタと、ルイズの手だった。
「どこに行こうっていうのかしら?」
「まだお話は終わっていませんよ、サイトさん?」
そして、遠ざかるティファニアの背中を見ながら。
才人は、二人の肉食獣に完全に捕縛されたのだった。
271 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:56:59 ID:al9...
結局タニアの朝の不機嫌は解消されたのだが。
「で、どー責任とるのよこの節操なし」
「ルイズだめよ、子供たちもいるんだし、ね?」
「子供『たち』!そー『たち』って所よ問題は!
タバサもなんか大きいお腹抱えて本国に帰ったし!
アンタどんだけ種バラまいてんのよ!」
「ほ、ほら落ち着いて、ね?」
「オチついてられるかぁぁぁぁぁ!」
あれから毎朝毎朝、半分抜け殻と化した才人を、二人の女の子...
まあ、朝から甘ったるい会話を聞かされ続けるよりはいいのだ...
「いいぞー、やれやれー」
「きょうはどっちがかつとおもうー?」
「ルイズおねーちゃんー!」
「シエスタおねえちゃんに1ドニエ!」
…子供たちの教育には果てしなくよろしくない。
「はいはい人の喧嘩を肴にしなーい。
ほら朝ごはん片付けてー」
「ちぇー」
「タニアおねえちゃんのけちんぼー」
「はいはいケチでもなんでも結構でございますよー」
言いながら呆れ顔で子供達をどやすタニア。
そんなタニアに、ジムが言った。
「タニアねーちゃん、なんかおばさんくさいぞー」
その言葉にタニアははっとなる。
そして天を仰いで、叫んだ。
「じょおだんじゃないわよっ!
私はまだ十三なのよっ!?
なんでこのトシで子守フラグ立てなきゃなんないわけっ!?」
しかし悲しいかな。
言いながら両手にはしっかりと食べ終わった器を重ねている。
既にタニアが子守で行き後れることは運命といえた。
「いーぃ度胸ねシエスタ!今日こそ決着をつけるべきかしら!」
「それはこっちの台詞です!どっちが本妻か、この機会にはっ...
「いーぞー」
「やれやれー」
苦悩するタニアを他所に、すでに恒例となった天下分け目の痴...
ウエストウッドの村に、平和な日常がやってくる。
272 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:57:39 ID:al9...
「で、結局テファお姉ちゃんはエルフの国で子供生んだらしい...
あっちから定期的に届く手紙で知ったんだけどね。
今?さあ、三年くらい前からかな、手紙こなくなっちゃって。
ま、私も心配かけるようなトシじゃないしね。
タニアお姉ちゃん?まだウエストウッドにいるみたいよ?
私たちはこうしてあっちこっちで出稼ぎしてるけどさ、まだ...
そそ。その二人の子供。
結局さ、サイトお兄ちゃんもどっちつかずだったんだけど、...
たぶん今も取り合いしてんじゃないかなー?
ほんっと、いい題材よあの人たち。
私の恋愛譚のネタの半分以上はあの人達題材にしてんの。
あ、それそれ。今売り出し中の『王子様と異界の姫』。
ま、元ネタわかっても知ってるの私と他の子たちくらいだか...
んじゃ、新刊もよろしくねっ♪」
〜吟遊詩人ヒースクリフの、人気作家エマ氏へのインタビュー...
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