ゼロの使い魔保管庫
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293 :私のご先祖様:2007/08/22(水) 22:38:45 ID:YHF6P99I
私のご先祖様は、どうやら凄い人だったらしい。
活気的な発明によって「異世界旅行」が可能になったのはた...
先祖様はなんと三百年ほども前に既に異世界に旅立ち、数年ほ...
もっとも、その当時「異世界」の存在なんて信じる人は誰も...
絡なしに放浪した挙句に、失踪の理由にとんでもない妄想をで...
いった扱いだったそうだが。
しかし、ご先祖様がそんな不名誉な扱いを受けていたのも、...
「異世界旅行機」を発明したのは、私の親戚でもある平賀才...
吹聴したご先祖様に何やら非常に心惹かれたらしく、「異世界...
世界に移動できる装置を発明した。だからこそ、ご先祖様が話...
され、「大法螺吹き」という蔑称も撤回されることになったの...
そして私は今、発明者である平賀才華博士と共に、「異世界...
大昔の映画の中で見たような、六角形のグリットで構成され...
の人々が注目しているこの機体に、ただの凡人に過ぎない私が...
ている訳だ。
「どうして私のような凡人を連れて行くことにしたんだい」
「ご先祖様の言ってたことを本当だって信じてたのは、わたし...
平賀才華博士は悪戯っぽくニカッと笑い、わたしを装置の中...
無論私は凡人であるので、この装置の仕組みも起動方法も全...
そんな訳だから、状況も分からず座っている内に、いつの間...
装置を出ると、そこは異世界だった。
と言っても、装置が出現したのは森の中だったので、「異世...
が湧かなかったのだが。
「これが見つかるとヤバイからね。人のいなさそうなところを...
才華博士はそう言い、周辺から草などを引っこ抜いてきて機...
く森の中を歩き出した。
今の地球ではまずお目にかかれないであろう、深い深い森の...
と木々が茂っており、正直非常に怖い。だが、才華博士の足取...
むしろ浮かれているように見えるほど、彼女の足取りは軽い。
「ずいぶん嬉しそうだね」
「そりゃそうだよ。ようやく、愛しのご先祖様の足跡が辿れる...
頭のてっぺんで結ばれた彼女の髪の房が楽しげに揺れるのを...
ようやく森を抜け出した先には、どこまでも草原が広がって...
が降り注ぎ、とても眩しい。
「さて、早速どっかで人を捕まえて、ご先祖様のこと聞かなく...
草原の中を通る道をひたすら歩き、私達は何とか真夜中にな...
とができた。
その頃には、夜空に二つの月が浮かんでいた。ご先祖様の証...
に異世界らしい、という実感が湧いた。
しかし、その実感は、今夜の寝床にと選んだ宿の中に入った...
こじんまりとした宿の中にいた人間が、皆どう見ても日本人...
主人も給仕の娘も、泊まっている客まで皆黒髪だ。目鼻立ちも...
れで、話に聞いていた西洋人のようなイメージとは大きくかけ...
の雰囲気が漂っているが、髪の色から目鼻立ちまで、どう見て...
「あららん、こりゃまるでコスプレ会場だね」
興味深げに呟きながら、才華博士が主人に泊まる旨を告げる...
との間に外見の違いはほとんどない。また、翻訳機も良好に作...
ることもなく、滞りなくチェックインできた。
その夜、「遠いところからきて、この辺りの民話などを調べ...
主人と給仕の娘が、代わる代わる様々な昔話を教えてくれた。
彼らの話は、どれもこれも地球でも耳にするような、他愛無...
だが、その中に一つだけ、妙に年代が新しく、その割に内容...
その話は、大体このような感じである。
294 :私のご先祖様:2007/08/22(水) 22:39:48 ID:YHF6P99I
「太陽と月が十万回も巡るぐらいの昔、この地に一人の英雄が...
七万の軍隊にも負けなかったその英雄は、数々の冒険譚を残...
しまった。
英雄が残したものは数多い。様々な財宝や長い平和や心躍る...
そして何より、この地に広く根付くことになる聖なる血であ...
最後の一説がよく分からなかったので詳しく聞こうとすると...
宿の主人が笑いながら話してくれたところによると、どうや...
だったらしい。
百、いや千、下手をすれば万の女と寝所を共にしたそうだ。...
の腹に自分の種子を根付かせたのだそうだ。
「百発百中か。凄まじい話ですね」
私が素直な感想を口にしたとき、隣に座っていた才華博士は...
せていた。どうしたんだろうと私が怪訝に思うのとは関係なく...
「しかも、さすがに英雄だけあって血の力も凄かったらしいで...
と黒い瞳の持ち主に成長したそうですよ」
「なるほど。だから皆さんも黒髪に黒目なのですね」
私が納得したように言った途端、才華博士が唐突に笑い声を...
ルをばしんばしんと叩く様は、まるで気が狂ってしまったかの...
「一体どうしたんだい、そんなに笑って」
「これが笑わずにいられますかって。いやー、さすがだね、や...
才華博士は何度も「さすがだねえ」と呟き、そのたび満足げ...
んだか分からずに首を傾げるしかない私に対し、ニヤニヤ笑い...
「君はこのことについてどう思う?」
「どう、と言われてもね」
「率直な感想を述べてくれたまえよ」
「率直な感想ねえ。まあ、凄いと思うよ。精力絶倫なんてレベ...
「それと?」
「いや、そんなにたくさんの女を相手にして、病気にならなか...
才華博士の爆笑が、大爆笑に変わった。
私達は数日ほどの時間を異世界で過ごした後、無事地球へと...
とは言っても、私の方にはあまり異世界で過ごしたという感...
ご先祖様の話というのも全く聞けなかったし、歩いている人...
りだったせいで、異世界に来ているという実感が少しも湧かな...
一応写真は何枚か撮ったが、どれもこれも、コスプレしてい...
の中を歩いている、という感じになってしまっている。これで...
ないだろう。
そんな訳で、私としては未だに何か騙されたような気分が拭...
行中も旅行後も、終始ご機嫌な様子であった。
「いやー、やっぱり頑張ってたんだねー、わたしらのご先祖様...
彼女は何度もそう言うが、一体今回の旅のどこにご先祖様の...
らないのである。
終了行:
293 :私のご先祖様:2007/08/22(水) 22:38:45 ID:YHF6P99I
私のご先祖様は、どうやら凄い人だったらしい。
活気的な発明によって「異世界旅行」が可能になったのはた...
先祖様はなんと三百年ほども前に既に異世界に旅立ち、数年ほ...
もっとも、その当時「異世界」の存在なんて信じる人は誰も...
絡なしに放浪した挙句に、失踪の理由にとんでもない妄想をで...
いった扱いだったそうだが。
しかし、ご先祖様がそんな不名誉な扱いを受けていたのも、...
「異世界旅行機」を発明したのは、私の親戚でもある平賀才...
吹聴したご先祖様に何やら非常に心惹かれたらしく、「異世界...
世界に移動できる装置を発明した。だからこそ、ご先祖様が話...
され、「大法螺吹き」という蔑称も撤回されることになったの...
そして私は今、発明者である平賀才華博士と共に、「異世界...
大昔の映画の中で見たような、六角形のグリットで構成され...
の人々が注目しているこの機体に、ただの凡人に過ぎない私が...
ている訳だ。
「どうして私のような凡人を連れて行くことにしたんだい」
「ご先祖様の言ってたことを本当だって信じてたのは、わたし...
平賀才華博士は悪戯っぽくニカッと笑い、わたしを装置の中...
無論私は凡人であるので、この装置の仕組みも起動方法も全...
そんな訳だから、状況も分からず座っている内に、いつの間...
装置を出ると、そこは異世界だった。
と言っても、装置が出現したのは森の中だったので、「異世...
が湧かなかったのだが。
「これが見つかるとヤバイからね。人のいなさそうなところを...
才華博士はそう言い、周辺から草などを引っこ抜いてきて機...
く森の中を歩き出した。
今の地球ではまずお目にかかれないであろう、深い深い森の...
と木々が茂っており、正直非常に怖い。だが、才華博士の足取...
むしろ浮かれているように見えるほど、彼女の足取りは軽い。
「ずいぶん嬉しそうだね」
「そりゃそうだよ。ようやく、愛しのご先祖様の足跡が辿れる...
頭のてっぺんで結ばれた彼女の髪の房が楽しげに揺れるのを...
ようやく森を抜け出した先には、どこまでも草原が広がって...
が降り注ぎ、とても眩しい。
「さて、早速どっかで人を捕まえて、ご先祖様のこと聞かなく...
草原の中を通る道をひたすら歩き、私達は何とか真夜中にな...
とができた。
その頃には、夜空に二つの月が浮かんでいた。ご先祖様の証...
に異世界らしい、という実感が湧いた。
しかし、その実感は、今夜の寝床にと選んだ宿の中に入った...
こじんまりとした宿の中にいた人間が、皆どう見ても日本人...
主人も給仕の娘も、泊まっている客まで皆黒髪だ。目鼻立ちも...
れで、話に聞いていた西洋人のようなイメージとは大きくかけ...
の雰囲気が漂っているが、髪の色から目鼻立ちまで、どう見て...
「あららん、こりゃまるでコスプレ会場だね」
興味深げに呟きながら、才華博士が主人に泊まる旨を告げる...
との間に外見の違いはほとんどない。また、翻訳機も良好に作...
ることもなく、滞りなくチェックインできた。
その夜、「遠いところからきて、この辺りの民話などを調べ...
主人と給仕の娘が、代わる代わる様々な昔話を教えてくれた。
彼らの話は、どれもこれも地球でも耳にするような、他愛無...
だが、その中に一つだけ、妙に年代が新しく、その割に内容...
その話は、大体このような感じである。
294 :私のご先祖様:2007/08/22(水) 22:39:48 ID:YHF6P99I
「太陽と月が十万回も巡るぐらいの昔、この地に一人の英雄が...
七万の軍隊にも負けなかったその英雄は、数々の冒険譚を残...
しまった。
英雄が残したものは数多い。様々な財宝や長い平和や心躍る...
そして何より、この地に広く根付くことになる聖なる血であ...
最後の一説がよく分からなかったので詳しく聞こうとすると...
宿の主人が笑いながら話してくれたところによると、どうや...
だったらしい。
百、いや千、下手をすれば万の女と寝所を共にしたそうだ。...
の腹に自分の種子を根付かせたのだそうだ。
「百発百中か。凄まじい話ですね」
私が素直な感想を口にしたとき、隣に座っていた才華博士は...
せていた。どうしたんだろうと私が怪訝に思うのとは関係なく...
「しかも、さすがに英雄だけあって血の力も凄かったらしいで...
と黒い瞳の持ち主に成長したそうですよ」
「なるほど。だから皆さんも黒髪に黒目なのですね」
私が納得したように言った途端、才華博士が唐突に笑い声を...
ルをばしんばしんと叩く様は、まるで気が狂ってしまったかの...
「一体どうしたんだい、そんなに笑って」
「これが笑わずにいられますかって。いやー、さすがだね、や...
才華博士は何度も「さすがだねえ」と呟き、そのたび満足げ...
んだか分からずに首を傾げるしかない私に対し、ニヤニヤ笑い...
「君はこのことについてどう思う?」
「どう、と言われてもね」
「率直な感想を述べてくれたまえよ」
「率直な感想ねえ。まあ、凄いと思うよ。精力絶倫なんてレベ...
「それと?」
「いや、そんなにたくさんの女を相手にして、病気にならなか...
才華博士の爆笑が、大爆笑に変わった。
私達は数日ほどの時間を異世界で過ごした後、無事地球へと...
とは言っても、私の方にはあまり異世界で過ごしたという感...
ご先祖様の話というのも全く聞けなかったし、歩いている人...
りだったせいで、異世界に来ているという実感が少しも湧かな...
一応写真は何枚か撮ったが、どれもこれも、コスプレしてい...
の中を歩いている、という感じになってしまっている。これで...
ないだろう。
そんな訳で、私としては未だに何か騙されたような気分が拭...
行中も旅行後も、終始ご機嫌な様子であった。
「いやー、やっぱり頑張ってたんだねー、わたしらのご先祖様...
彼女は何度もそう言うが、一体今回の旅のどこにご先祖様の...
らないのである。
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