ゼロの使い魔保管庫
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488 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:02:...
ちょうど一冊本を読み終えたとき、窓の方から何か音がした...
背景に、巨大な竜が鼻先で部屋の窓をコツコツと叩いていた。...
い魔を見ながらタバサは無言で窓を開ける。途端に、シルフィ...
タバサの耳元で大きな顎を開いた。何か喋り出す兆候だと判断...
ト」の魔法を張り巡らす。同時にシルフィードが捲くし立て始...
「おねーさまおねーさま、やっぱりサイトが恋人候補No1よ...
「何の話」
「おねーさまの恋人の話なのね。明るいし気さくだし優しいし...
シルフィードは唾を飛ばして力説する。それを器用に避けつ...
「興味ない」
「そんなんじゃダメです!」
シルフィードが物凄い声で吠えたので、本棚が震えて本が何...
「とにかく、おねーさまもサイトとたくさんお話するといいの...
「必要ない」
「よーっし、そうと決まったら、シルフィ張り切っちゃうのね...
一方的に喋りまくって、シルフィードは夕暮れの空の彼方へ...
さくなり、やがて消えてしまう。タバサは騒々しい使い魔を黙...
に散乱した本を片付け始めた。
夜通しハルケギニアの空を飛び回って各地のデートスポット...
頃になってようやくトリステイン魔法学院に帰還した。睡眠を...
わったあとである。古の風韻竜であるシルフィードであっても...
「早く二人をデートスポットに放り込まなくちゃ」と心が浮き...
ていない。
シルフィードは魔法学院の上空から目を凝らし、才人の姿を...
だろうから、とりあえず才人だけでもデートスポットに連れて...
また来たいなあ」と思ってもらうのが目的である。
主人であるルイズにくっついて教室に入っているとしたら見...
人は外にいた。広場の隅で、何やら水を張ったたらいを前にし...
その真ん前ではなく、近くの建物の陰に、シルフィードは静...
(あれ、どうしてわたしこんな風に隠れてるのかしら)
建物の陰で、シルフィードは首を傾げる。何故だかよく分か...
立ってぎょっとした顔をされたら、と想像すると、あまりいい...
(何でかしら何でかしら、きゅいきゅい)
初めての感覚に戸惑い、シルフィードは頭の中できゅいきゅ...
は出なかったので、あっさりと考えるのを止めた。
(そんなことより、今はサイトなのね)
建物の角の向こうに首を伸ばして、その向こうにいる才人を...
した瞬間、相手もちょうどよく顔を上げたので、すぐに気付か...
一瞬、先程のぎょっとした才人の想像が頭を過ぎった。シル...
が、想像とは違い、才人は嬉しそうに笑って手を振ってくれた。
「ようシルフィード、傷は痛まないか」
昨日と同じく、こちらを警戒するような雰囲気は全くない。...
(うん、ちっとも痛くないわ)
一気に軽くなった心の命ずるままに、シルフィードは建物の...
下に走り寄る。普通、巨大な竜がそんな風に走ってきたら驚い...
様子は全く見せずに、のんびりした様子でこちらが近づいてく...
フィードの心が軽やかに躍りだした。
(ねーね、何してるの、何してるの)
はしゃぐように翼をばたつかせながら、シルフィードは才人...
「洗濯しろって言われたんだよ」
才人が苦笑混じりに、水を張ったたらいと、その横にある洗...
女物と思しき服が大量に詰め込まれていた。
489 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:03:...
(洗濯)
シルフィードとて、それが何かは知っている。タバサは自分...
ドはそもそも服を必要としないので、実際にやったことは一度...
(なんでサイトがそんなことしてるの。なんでなんで)
またも首を傾げるシルフィードに、才人がため息を吐く。
「ちょっと溜めててよ。いくらか一気にやった方が、使う水も...
それをあの女、『サボッてないで毎日マメにやりなさいよ』...
して、今日まで溜めてた分は全部今日で洗っちゃいなさい』...
才人は傍らの洗濯籠を叩き、肩を落とした。
「見ろ、籠一杯だぜ。どのぐれーかかるか分かりゃしねーよ。...
なくちゃならないし、その後干さなくちゃならねーし」
(大変なのね)
シルフィードの記憶するところでは、才人は魔法を使えない...
洗濯も乾燥も大して時間はかからないが、それが出来ないとな...
(そんなことになったら、デートスポット見に行けなくなっち...
きゅいきゅい鳴き声を上げながら、シルフィードは前脚を洗...
「待て待て。お前の爪で摘まんだら、服が破けちまうよ」
(あ、そっか)
シルフィードは慌てて前脚を引っ込め、うな垂れた。この姿...
「手伝ってくれるつもりだったのか、お前」
(うん)
シルフィードが頷くと、才人は笑って彼女の頭を撫でた。
「ありがとな。やっぱいい奴だなー、お前」
(でも役に立たないのよ)
その意を表すように悲しげに鳴くと、才人は相手を安心させ...
「大丈夫だって、俺一人でもやれるさ。ホント、ありがとうな」
労りと感謝の念が感じられる口調である。シルフィードの沈...
「あー、でも、これやんなくちゃいけないから、今日は相手し...
と思ったら、すぐにまた落ち込んでしまった。
(それじゃ、今日お出かけできないのね)
シルフィードもそうだが、才人だって長い間主人のそばから...
性の荒いルイズのことだ、才人が夜中勝手にどこかを遊び歩い...
するか知れたものではない。
(だから、昼間に出かけなくちゃならないのに)
シルフィードはもどかしさを感じた。自分の魔法を使えば、...
いかに才人相手と言えども、「正体を悟られるな」というタバ...
(どうしたらいいのかしら。きゅいきゅい)
シルフィードが困り果ててしまったそのとき、ふと才人が慌...
に自分の額を軽く叩いた。
「バカだな俺、石鹸忘れちまったよ。これじゃ洗濯できねーじ...
呟いたあと、シルフィードの頬をそっと撫でる。
「ちょっと俺石鹸取ってくるよ。お前の気持ちはありがたいん...
ろうからな。大人しく待っててくれよ」
申し訳なさそうに言い置いて、踵を返して去っていく。なか...
に対する好感度を上げつつ、シルフィードは洗濯籠の方を見る。
(上手い具合に才人もいなくなったし、今の内にすばやくやっ...
シルフィードは先住魔法独特の詠唱を素早く完成させ、次々...
濯物とたらいの中の水を空中に舞い上げる。水は球の形にし、...
した石鹸を放り込む。そのまま、服を傷つけないように注意し...
などを水側に残したまま、洗い立ての洗濯物だけを取り出す。...
い躍らせて速攻で乾燥させた後、洗濯籠に戻す。
490 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:05:...
(それにしても)
洗濯籠に戻す直前、シルフィードはふと、一枚の布きれを見...
れるその物品、人間のメスの股間を覆い隠すためのものである。
(どうして人間はこんなのつけるのかしら。寒いって言うなら...
オスを誘惑するんだったら、裸になって大事な部分もちゃん...
の。きゅいきゅい)
当然ながら常時裸の状態であるシルフィードには、何故人間...
のかがよく分からないのであった。
ともあれ、才人が石鹸片手に帰ってくる頃には、既に洗濯は...
「あれ、終わってる?」
綺麗になって洗濯籠の中に畳まれている洗濯物を見て、才人...
回すが、シルフィード以外は誰もいない。
「どうなってんだこりゃ。誰か、やってくれたのか?」
(わたしがやったのよ)
心の中では胸を張りつつ、シルフィードは首を傾げて知らん...
乱したように顔をしかめた。
「まさか、お前がやってくれたってこともないだろうし……うー...
腕を組んで悩み続ける才人の服の袖を、シルフィードは軽く...
「ん、どうした」
(お仕事終わったなら、シルフィーと一緒にお出かけするのね)
急かすように才人に背を向けて、乗れ、と言うように翼をば...
「なんだ、またどっか乗せてってくれんのか」
才人は困ったように頭を掻いた。
「参ったな、一応洗濯は終わったけどよ。状況がさっぱり理解...
(もう、じれったいのね)
シルフィードは、洗濯籠を咥えて空中に飛び上がろうとした...
「おい、ちょっと待てって」
(早く乗って。きゅいきゅい)
シルフィードが尻尾を振ると、才人は苦笑して頷いた。
「分かった分かった。お前の好きなようにするといいよ。ただ...
これこのまんまにしておいたら、またルイズに怒鳴られちま...
シルフィードは喜びの意を表現するために、長く高く鳴いた。
才人が洗濯物を片付けた後、彼を乗せたシルフィードは高々...
「うお、スゲー、お前ってこんな高く飛べるんだな」
シルフィードの背中で、才人がはしゃいだ声を上げる。高所...
ドの背から軽く身を乗り出して、物珍しげに地上を眺めている。
(落ちてもわたしが支えてあげるから安心。さて、どこに行っ...
シルフィードは、頭の中に昨夜調べ上げた無数のデートスポ...
に入りで、なおかつ今から行って戻ってこれる場所。
(あそこがいいのね)
シルフィードは空中で方向転換すると、ゆっくりと翼を羽ば...
ぶことができるが、背中で才人が身を乗り出しているから、安...
十分ほど飛ぶと、目的地が見えてきた。どこかの村の近くに...
草地になっている場所に、シルフィードは降り立った。
「お、なかなか綺麗なところじゃんか」
地面に下りた才人が、周囲を見回して感心したように言う。...
花々が可憐に咲き乱れ、風が吹くたび模様を変えて、見る者の...
(気に入ってくれたみたい)
シルフィードは花畑を眺める才人の背中を見て嬉しくなり、...
と才人が振り返って、こちらの頭を優しく撫でた。
「お前、ここに俺を連れてきたかったのか。いいとこだな、ス...
シルフィードは、自分のチョイスが間違っていなかったこと...
そのとき、才人が予想外のことを言い出した。
491 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:05:...
「お前も女の子だもんな。綺麗な場所が好きなのは当然か」
(え、違うのよ。別に、わたしが見たかった訳じゃ)
「ほら、もっと近く行って見てみようぜ。中に入らなきゃ、花...
才人に促されるまま、シルフィードはおずおずと花畑の近く...
のか、近くで見るとまた違った味わいがある。また様々な花の...
おかげか、自然と穏やかな気持ちになってくる。
(思った以上にいいところなのね。ここに連れてくれば、おね...
そんな風に心の中で満足していたとき、シルフィードはふと...
何かしているのに気付いた。
(何やってるの)
後ろから首を伸ばして才人の手元を見ると、摘んだ花を結び...
ろだった。「何それ何それ」とシルフィードがきゅいきゅい鳴...
「花冠作ろうと思ってさ。女の子ってこういうの好きだろ。幼...
た女の子がよく作っててさ。俺も見よう見まねでやってみた...
なー。ま、今はルイズのおかげで手先も器用になってきたし...
そんなことを喋りながら、才人は器用に色とりどりの花を繋...
フィード自身はそんなことをした経験はないので、物珍しくて...
(わあ、サイト、上手なのね)
感心して後ろから見ている内に、才人の手の中で花冠が完成...
(凄い凄い。これならおねーさまも大喜びなのね。でも)
ふと、シルフィードは首を傾げた。人間の頭に被せるにして...
たのだ。これでは、首にかけるのがちょうどいいぐらいのサイ...
(張り切って大きくつくりすぎちゃったのかしら)
疑問を重ねるシルフィードの前で、才人は不意に振り返り、...
手を伸ばしてきた。
驚くシルフィードの頭に、何かが乗せられる。それは、先程...
「ほら、プレゼントだ」
(え、シルフィに?)
目玉をぐりんと動かして頭の上を見てみれば、確かにその花...
まるように作ってあるようだ。最初から、そのつもりで作って...
「おー、ぴったりだな。どうよ、俺もなかなかやるもんだろ」
才人が得意げに笑う。シルフィードは、何故か落ち着かない...
(なんだか変な感じ)
その気持ちの正体がなかなかつかめないでいるシルフィード...
て欠伸をした。
「ねみーな……久々にルイズの命令から解放されたせいで、気が...
才人は花畑から少し離れた草地で、ごろりと横になった。
「悪い、俺ちょっと昼寝すっからさ。遅くならない内に起こし...
そして、すぐに寝息を立て始める。シルフィードは自分の感...
その顔をそっと覗き込んだ。
さっき寝入ったばかりだというのに、才人はもう大口を開け...
「これはマイナスポイントなのねー」と評価を下すところだが...
シルフィードは少しの間じっと才人を眺めたあと、自分もそ...
ないせいか、急に睡魔が襲ってくる。頭の上の鼻冠を落として...
ルフィードはそっと目を閉じた。
そうして二人ともぐっすり寝入ってしまったために、結局帰...
492 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:06:...
翌日、シルフィードは再び物陰から才人の様子を窺っていた。
タバサの方はシルフィードの方を特に叱らなかったが、才人...
(サイトに迷惑かけちゃった)
後悔しながら、シルフィードは首を伸ばして才人を観察する...
顔には、特に変わった感じは見られない。しかし、もしかした...
かったせいでルイズにお仕置きされた」と、内心では怒り狂っ...
昨日よりもずっと心が重くなった。
(また後で来るのね)
根が臆病なシルフィードは、才人に見つからないようにそっ...
また昨日と同じようなタイミングで、不意に才人が顔を上げて...
一瞬、シルフィードは体を強張らせる。しかし才人の方は、...
みを浮かべて、こちらに向かって大きく手を振った。
「ようシルフィード、元気か。昨日はお互い災難だったなあ」
シルフィードは喜びの鳴き声を上げながら、またドタドタと...
「おねーさまおねーさま」
「なに」
「サイト、やっぱりとっても素敵なのね。早くおねーさまもサ...
「そう」
相変わらず一方的に捲し立てるシルフィードと、本のページ...
その図式はいつもと同じように見えたが、その実少し違って...
「あ、えとね、おねーさま」
珍しく、シルフィードが遠慮がちな声を出す。タバサは怪訝...
まま、少しだけ本から目を離した。
「なに」
「あのね、お願いがあるの」
シルフィードは、どことなくもじもじしながら、タバサに向...
かがぶら下がっていた。
「花冠?」
「そう。これに、固定化の魔法をかけてほしいのね」
わざわざタバサに頼むということは、先住の魔法には固定化...
(どうして、これをずっと保存しておきたいのか)
そこのところは少し疑問だったが、シルフィードの真剣な顔...
(わたしも、昔母様や父様に花冠を作って、プレゼントした)
そんなことを思い出しながら、固定化の魔法を詠唱する。
「終わった」
と言ってやると、シルフィードは大喜びしながら、自分の頭...
「わーい、シルフィのお花、シルフィのお花」
はしゃぎ回るシルフィードを少しの間見つめたあと、タバサ...
終了行:
488 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:02:...
ちょうど一冊本を読み終えたとき、窓の方から何か音がした...
背景に、巨大な竜が鼻先で部屋の窓をコツコツと叩いていた。...
い魔を見ながらタバサは無言で窓を開ける。途端に、シルフィ...
タバサの耳元で大きな顎を開いた。何か喋り出す兆候だと判断...
ト」の魔法を張り巡らす。同時にシルフィードが捲くし立て始...
「おねーさまおねーさま、やっぱりサイトが恋人候補No1よ...
「何の話」
「おねーさまの恋人の話なのね。明るいし気さくだし優しいし...
シルフィードは唾を飛ばして力説する。それを器用に避けつ...
「興味ない」
「そんなんじゃダメです!」
シルフィードが物凄い声で吠えたので、本棚が震えて本が何...
「とにかく、おねーさまもサイトとたくさんお話するといいの...
「必要ない」
「よーっし、そうと決まったら、シルフィ張り切っちゃうのね...
一方的に喋りまくって、シルフィードは夕暮れの空の彼方へ...
さくなり、やがて消えてしまう。タバサは騒々しい使い魔を黙...
に散乱した本を片付け始めた。
夜通しハルケギニアの空を飛び回って各地のデートスポット...
頃になってようやくトリステイン魔法学院に帰還した。睡眠を...
わったあとである。古の風韻竜であるシルフィードであっても...
「早く二人をデートスポットに放り込まなくちゃ」と心が浮き...
ていない。
シルフィードは魔法学院の上空から目を凝らし、才人の姿を...
だろうから、とりあえず才人だけでもデートスポットに連れて...
また来たいなあ」と思ってもらうのが目的である。
主人であるルイズにくっついて教室に入っているとしたら見...
人は外にいた。広場の隅で、何やら水を張ったたらいを前にし...
その真ん前ではなく、近くの建物の陰に、シルフィードは静...
(あれ、どうしてわたしこんな風に隠れてるのかしら)
建物の陰で、シルフィードは首を傾げる。何故だかよく分か...
立ってぎょっとした顔をされたら、と想像すると、あまりいい...
(何でかしら何でかしら、きゅいきゅい)
初めての感覚に戸惑い、シルフィードは頭の中できゅいきゅ...
は出なかったので、あっさりと考えるのを止めた。
(そんなことより、今はサイトなのね)
建物の角の向こうに首を伸ばして、その向こうにいる才人を...
した瞬間、相手もちょうどよく顔を上げたので、すぐに気付か...
一瞬、先程のぎょっとした才人の想像が頭を過ぎった。シル...
が、想像とは違い、才人は嬉しそうに笑って手を振ってくれた。
「ようシルフィード、傷は痛まないか」
昨日と同じく、こちらを警戒するような雰囲気は全くない。...
(うん、ちっとも痛くないわ)
一気に軽くなった心の命ずるままに、シルフィードは建物の...
下に走り寄る。普通、巨大な竜がそんな風に走ってきたら驚い...
様子は全く見せずに、のんびりした様子でこちらが近づいてく...
フィードの心が軽やかに躍りだした。
(ねーね、何してるの、何してるの)
はしゃぐように翼をばたつかせながら、シルフィードは才人...
「洗濯しろって言われたんだよ」
才人が苦笑混じりに、水を張ったたらいと、その横にある洗...
女物と思しき服が大量に詰め込まれていた。
489 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:03:...
(洗濯)
シルフィードとて、それが何かは知っている。タバサは自分...
ドはそもそも服を必要としないので、実際にやったことは一度...
(なんでサイトがそんなことしてるの。なんでなんで)
またも首を傾げるシルフィードに、才人がため息を吐く。
「ちょっと溜めててよ。いくらか一気にやった方が、使う水も...
それをあの女、『サボッてないで毎日マメにやりなさいよ』...
して、今日まで溜めてた分は全部今日で洗っちゃいなさい』...
才人は傍らの洗濯籠を叩き、肩を落とした。
「見ろ、籠一杯だぜ。どのぐれーかかるか分かりゃしねーよ。...
なくちゃならないし、その後干さなくちゃならねーし」
(大変なのね)
シルフィードの記憶するところでは、才人は魔法を使えない...
洗濯も乾燥も大して時間はかからないが、それが出来ないとな...
(そんなことになったら、デートスポット見に行けなくなっち...
きゅいきゅい鳴き声を上げながら、シルフィードは前脚を洗...
「待て待て。お前の爪で摘まんだら、服が破けちまうよ」
(あ、そっか)
シルフィードは慌てて前脚を引っ込め、うな垂れた。この姿...
「手伝ってくれるつもりだったのか、お前」
(うん)
シルフィードが頷くと、才人は笑って彼女の頭を撫でた。
「ありがとな。やっぱいい奴だなー、お前」
(でも役に立たないのよ)
その意を表すように悲しげに鳴くと、才人は相手を安心させ...
「大丈夫だって、俺一人でもやれるさ。ホント、ありがとうな」
労りと感謝の念が感じられる口調である。シルフィードの沈...
「あー、でも、これやんなくちゃいけないから、今日は相手し...
と思ったら、すぐにまた落ち込んでしまった。
(それじゃ、今日お出かけできないのね)
シルフィードもそうだが、才人だって長い間主人のそばから...
性の荒いルイズのことだ、才人が夜中勝手にどこかを遊び歩い...
するか知れたものではない。
(だから、昼間に出かけなくちゃならないのに)
シルフィードはもどかしさを感じた。自分の魔法を使えば、...
いかに才人相手と言えども、「正体を悟られるな」というタバ...
(どうしたらいいのかしら。きゅいきゅい)
シルフィードが困り果ててしまったそのとき、ふと才人が慌...
に自分の額を軽く叩いた。
「バカだな俺、石鹸忘れちまったよ。これじゃ洗濯できねーじ...
呟いたあと、シルフィードの頬をそっと撫でる。
「ちょっと俺石鹸取ってくるよ。お前の気持ちはありがたいん...
ろうからな。大人しく待っててくれよ」
申し訳なさそうに言い置いて、踵を返して去っていく。なか...
に対する好感度を上げつつ、シルフィードは洗濯籠の方を見る。
(上手い具合に才人もいなくなったし、今の内にすばやくやっ...
シルフィードは先住魔法独特の詠唱を素早く完成させ、次々...
濯物とたらいの中の水を空中に舞い上げる。水は球の形にし、...
した石鹸を放り込む。そのまま、服を傷つけないように注意し...
などを水側に残したまま、洗い立ての洗濯物だけを取り出す。...
い躍らせて速攻で乾燥させた後、洗濯籠に戻す。
490 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:05:...
(それにしても)
洗濯籠に戻す直前、シルフィードはふと、一枚の布きれを見...
れるその物品、人間のメスの股間を覆い隠すためのものである。
(どうして人間はこんなのつけるのかしら。寒いって言うなら...
オスを誘惑するんだったら、裸になって大事な部分もちゃん...
の。きゅいきゅい)
当然ながら常時裸の状態であるシルフィードには、何故人間...
のかがよく分からないのであった。
ともあれ、才人が石鹸片手に帰ってくる頃には、既に洗濯は...
「あれ、終わってる?」
綺麗になって洗濯籠の中に畳まれている洗濯物を見て、才人...
回すが、シルフィード以外は誰もいない。
「どうなってんだこりゃ。誰か、やってくれたのか?」
(わたしがやったのよ)
心の中では胸を張りつつ、シルフィードは首を傾げて知らん...
乱したように顔をしかめた。
「まさか、お前がやってくれたってこともないだろうし……うー...
腕を組んで悩み続ける才人の服の袖を、シルフィードは軽く...
「ん、どうした」
(お仕事終わったなら、シルフィーと一緒にお出かけするのね)
急かすように才人に背を向けて、乗れ、と言うように翼をば...
「なんだ、またどっか乗せてってくれんのか」
才人は困ったように頭を掻いた。
「参ったな、一応洗濯は終わったけどよ。状況がさっぱり理解...
(もう、じれったいのね)
シルフィードは、洗濯籠を咥えて空中に飛び上がろうとした...
「おい、ちょっと待てって」
(早く乗って。きゅいきゅい)
シルフィードが尻尾を振ると、才人は苦笑して頷いた。
「分かった分かった。お前の好きなようにするといいよ。ただ...
これこのまんまにしておいたら、またルイズに怒鳴られちま...
シルフィードは喜びの意を表現するために、長く高く鳴いた。
才人が洗濯物を片付けた後、彼を乗せたシルフィードは高々...
「うお、スゲー、お前ってこんな高く飛べるんだな」
シルフィードの背中で、才人がはしゃいだ声を上げる。高所...
ドの背から軽く身を乗り出して、物珍しげに地上を眺めている。
(落ちてもわたしが支えてあげるから安心。さて、どこに行っ...
シルフィードは、頭の中に昨夜調べ上げた無数のデートスポ...
に入りで、なおかつ今から行って戻ってこれる場所。
(あそこがいいのね)
シルフィードは空中で方向転換すると、ゆっくりと翼を羽ば...
ぶことができるが、背中で才人が身を乗り出しているから、安...
十分ほど飛ぶと、目的地が見えてきた。どこかの村の近くに...
草地になっている場所に、シルフィードは降り立った。
「お、なかなか綺麗なところじゃんか」
地面に下りた才人が、周囲を見回して感心したように言う。...
花々が可憐に咲き乱れ、風が吹くたび模様を変えて、見る者の...
(気に入ってくれたみたい)
シルフィードは花畑を眺める才人の背中を見て嬉しくなり、...
と才人が振り返って、こちらの頭を優しく撫でた。
「お前、ここに俺を連れてきたかったのか。いいとこだな、ス...
シルフィードは、自分のチョイスが間違っていなかったこと...
そのとき、才人が予想外のことを言い出した。
491 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:05:...
「お前も女の子だもんな。綺麗な場所が好きなのは当然か」
(え、違うのよ。別に、わたしが見たかった訳じゃ)
「ほら、もっと近く行って見てみようぜ。中に入らなきゃ、花...
才人に促されるまま、シルフィードはおずおずと花畑の近く...
のか、近くで見るとまた違った味わいがある。また様々な花の...
おかげか、自然と穏やかな気持ちになってくる。
(思った以上にいいところなのね。ここに連れてくれば、おね...
そんな風に心の中で満足していたとき、シルフィードはふと...
何かしているのに気付いた。
(何やってるの)
後ろから首を伸ばして才人の手元を見ると、摘んだ花を結び...
ろだった。「何それ何それ」とシルフィードがきゅいきゅい鳴...
「花冠作ろうと思ってさ。女の子ってこういうの好きだろ。幼...
た女の子がよく作っててさ。俺も見よう見まねでやってみた...
なー。ま、今はルイズのおかげで手先も器用になってきたし...
そんなことを喋りながら、才人は器用に色とりどりの花を繋...
フィード自身はそんなことをした経験はないので、物珍しくて...
(わあ、サイト、上手なのね)
感心して後ろから見ている内に、才人の手の中で花冠が完成...
(凄い凄い。これならおねーさまも大喜びなのね。でも)
ふと、シルフィードは首を傾げた。人間の頭に被せるにして...
たのだ。これでは、首にかけるのがちょうどいいぐらいのサイ...
(張り切って大きくつくりすぎちゃったのかしら)
疑問を重ねるシルフィードの前で、才人は不意に振り返り、...
手を伸ばしてきた。
驚くシルフィードの頭に、何かが乗せられる。それは、先程...
「ほら、プレゼントだ」
(え、シルフィに?)
目玉をぐりんと動かして頭の上を見てみれば、確かにその花...
まるように作ってあるようだ。最初から、そのつもりで作って...
「おー、ぴったりだな。どうよ、俺もなかなかやるもんだろ」
才人が得意げに笑う。シルフィードは、何故か落ち着かない...
(なんだか変な感じ)
その気持ちの正体がなかなかつかめないでいるシルフィード...
て欠伸をした。
「ねみーな……久々にルイズの命令から解放されたせいで、気が...
才人は花畑から少し離れた草地で、ごろりと横になった。
「悪い、俺ちょっと昼寝すっからさ。遅くならない内に起こし...
そして、すぐに寝息を立て始める。シルフィードは自分の感...
その顔をそっと覗き込んだ。
さっき寝入ったばかりだというのに、才人はもう大口を開け...
「これはマイナスポイントなのねー」と評価を下すところだが...
シルフィードは少しの間じっと才人を眺めたあと、自分もそ...
ないせいか、急に睡魔が襲ってくる。頭の上の鼻冠を落として...
ルフィードはそっと目を閉じた。
そうして二人ともぐっすり寝入ってしまったために、結局帰...
492 名前: 犬竜騒動 [sage] 投稿日: 2007/09/14(金) 03:06:...
翌日、シルフィードは再び物陰から才人の様子を窺っていた。
タバサの方はシルフィードの方を特に叱らなかったが、才人...
(サイトに迷惑かけちゃった)
後悔しながら、シルフィードは首を伸ばして才人を観察する...
顔には、特に変わった感じは見られない。しかし、もしかした...
かったせいでルイズにお仕置きされた」と、内心では怒り狂っ...
昨日よりもずっと心が重くなった。
(また後で来るのね)
根が臆病なシルフィードは、才人に見つからないようにそっ...
また昨日と同じようなタイミングで、不意に才人が顔を上げて...
一瞬、シルフィードは体を強張らせる。しかし才人の方は、...
みを浮かべて、こちらに向かって大きく手を振った。
「ようシルフィード、元気か。昨日はお互い災難だったなあ」
シルフィードは喜びの鳴き声を上げながら、またドタドタと...
「おねーさまおねーさま」
「なに」
「サイト、やっぱりとっても素敵なのね。早くおねーさまもサ...
「そう」
相変わらず一方的に捲し立てるシルフィードと、本のページ...
その図式はいつもと同じように見えたが、その実少し違って...
「あ、えとね、おねーさま」
珍しく、シルフィードが遠慮がちな声を出す。タバサは怪訝...
まま、少しだけ本から目を離した。
「なに」
「あのね、お願いがあるの」
シルフィードは、どことなくもじもじしながら、タバサに向...
かがぶら下がっていた。
「花冠?」
「そう。これに、固定化の魔法をかけてほしいのね」
わざわざタバサに頼むということは、先住の魔法には固定化...
(どうして、これをずっと保存しておきたいのか)
そこのところは少し疑問だったが、シルフィードの真剣な顔...
(わたしも、昔母様や父様に花冠を作って、プレゼントした)
そんなことを思い出しながら、固定化の魔法を詠唱する。
「終わった」
と言ってやると、シルフィードは大喜びしながら、自分の頭...
「わーい、シルフィのお花、シルフィのお花」
はしゃぎ回るシルフィードを少しの間見つめたあと、タバサ...
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