ゼロの使い魔保管庫
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174 名前: サイトが魔法を使えたら(1/3) [sage] 投稿日: 20...
サイトは、図書館に呼び出された。
ルイズとコルベールの火の魔法の授業中、後ろからタバサに誘...
タバサをガリアから救出して以来、サイトはタバサに話しかけ...
なんでこんなとこに・・・サイトが首をかしげていると、巨大な本...
レビテーションで降りてきた。
「来た。」
タバサは、そう言うと、一冊の本をサイトに手渡してきた。
「これ、読んで。」
何の本かしら・・・とサイトはタイトルを見ると、
系統魔法の基本の手引き。と書いてあるようだ。
「タバサ、俺魔法の本なんて読んでもわかんないぞ。第一使い...
魔法の勉強はルイズの仕事だろが」
すこしタバサは眉をひそめた。
「使い魔かどうかは関係ない。ルイズは系統魔法は使えない。
だから、あなたが魔法使えたら助かるはず・・・・・・それにあなた...
危険な目にあったときにわたしがいなかったとしても安心。」
「そんなもんなのかな・・・でもさ、ホントにこの世界の人間じゃ...
魔法なんかできんのか?」
この世界で、シュヴァリエとなったとはいえ元平民で、さらに...
異世界から来たふつーの高校生なのである。いくらタバサにで...
言われたとしても、サイトは全くできるようには思えてこない。
「ガンダールヴ。」
「そりゃこの世界じゃ、伝説の使い魔かもしれないよ。だけど
それだけだ。」
「違う、ガンダールヴは魔法使いこなせる。これも伝説のひと...
タバサはサイトをまっすぐ見つめてそう言った。
175 名前: サイトが魔法を使えたら(2/3) [sage] 投稿日: 20...
ほんとかよ。俺に魔法の素質があると、タバサは言っているの...
「大丈夫、ちゃんと教える。だから、読んで」
ぐいっとタバサは、その魔法の本をサイトに突き出した。
そして、サイトに顔を近づけてさらに言った。
「読んで」
近くでみると、なるほどルイズと違う気品を漂わせるタバサに
サイトは頬を赤らめた。
タバサ意外とかわいいじゃないか・・・
「わ、わかった、読む、読んでみるよ。」
ちょっとどきまぎしながらサイトは本を受け取ったのである。
「じゃ、教える。系統魔法には、火・水・土・風、そして虚無...
日も暮れかかった頃、ルイズはサイトを探していた。
昼過ぎのコルベールの授業のあとから姿が見えないのだ。
どこいっちゃったのよ。あのバカ使い魔・・・ひとりにしちゃやだ...
ひとりにしないって言ったのに。う〜っとルイズは唇を噛んだ。
この季節の日暮れ時は、何か物悲しいものがあるのだ。
ルイズは、こんな時間が苦手だった。
サイトがアルビオンの森で消息を絶って、ひとりぼっちになっ...
思い出してしまうからである。
「サイトぉ・・・」
ルイズは、ちょっと泣きそうな声でつぶやいていた。
176 名前: サイトが魔法を使えたら(3/3) [sage] 投稿日: 20...
どのくらい時間がたったんだ。もう図書館の外は黄昏時を迎え...
「---今日は、ここまで。」
タバサ先生の初めての授業がようやく終わった。
もちろん見るも聞くも初めての経験だったが、なんとなくだが...
な気がしてきた。これもタバサの教え方がうまいからだとおも...
「タバサ、いろいろありがとな。俺がんばってみるよ」
「ん・・・」
珍しく、タバサがほほえんだ。
なんだかサイトはその微笑に照れてしまった。
そろそろ図書館の閉館時間も迫ってきていたので、サイトとタ...
図書館の出口へと向かった。
図書館から出て、エントランスの階段を降りようとしたとき、
桃色がかったブロンズ髪の後姿が見えた。
「ル、ルイズ・・・どうしたんだ、おまえこんなとこで・・・」
サイトは慌ててルイズへと駆け寄っていった。
そのサイトの後姿をタバサは少しつまらなそうな表情で見つめ...
228 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 20...
ルイズはとてつもなくせつなくなってしまった。
いない、サイトがいない-----
またいなくなっちゃった。また夢の中でしか会えないの?
そんなのやだ。ぜったいにやだ。
バカで、胸のおっきな子にすぐに鼻の下伸ばしちゃう
どーしよーもないエロ犬。だけど、そんなんだけど、
わたしの側からいなくなるのはさみしいの。せつないの。
どうしてせつなくなるのかは、自分の心の奥底では、わかって...
だけど、やっぱりプライドが・・・ううん。ほんとは違うの。
ほんとのキモチを表に出しちゃうと・・・サイトが帰れなくなっち...
だから我慢するの。
でももー暗いし冷えてきちゃったし、もーだめ、探しつかれち...
「どこにいるのよ。バカ・・・サイトのバカ」
ちょこんとルイズは、階段に座り込んだ。
そこは、図書館の階段であった。
ルイズは肌寒いので、図書館の中に入りたかったが、タイミン...
悪く、もうすぐ閉館の時刻。しょんぼりと階段に座ったのだ。
図書館から帰る生徒たちがちらほらと階段を降りてきた。
「ル、ルイズ・・・どうしたんだ、おまえこんなとこで・・・」
ふいに捜し求めていた使い魔の声がした。
ルイズはぴくりと体を震わせた。
229 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 20...
「どこいたのよ。バカ。わたしがどんだけ探したかわかってん...
「ご、ごめんよ。タバサにちょっと教えてもらうことがあって...
「あによ。そんなのわたしが教えたげるわ。なんでタバサなの...
ルイズの怒りのボルテージが上がってきた。
この犬。こともあろうに小さいタバサにも手を伸ばしてきたか。
このわたしの特権をおびかやす存在。タバサ。
なによ、わたしのほうがかわいいにきまってるんだから。
すると二人の背後からぼそりとタバサがつぶやいた。
「魔法。教えてた」
「まま魔法ですって〜」
ルイズはきゅっと唇をかんだ。
「魔法ならわたしもできるんだからっ、わたしに聞きなさいよ」
「あなたは伝説はできても、系統魔法はできない」
タバサはルイズを見据えて言い放った。
「---な、なんですってぇ、ゆゆ許さないんだから」
ルイズは今にも虚無(エクスプロージョン)を爆発させそうな勢...
「あなたはサイトがなぜ魔法をやろうとしているかわかってな...
一歩、タバサはルイズに近づいていった。
「わ、わかるわけないでしょー。貴族になってさらにメイジに...
これ以上もてるつもりなの!」
ぶんぶんサイトは首を振った。
「わかってない。」
「サイト、あなたを護るため」
うっとルイズは後ずさった。
「そ、そんなの当然じゃない。こいつはわたしの使い魔なんだ...
ご主人さまを護るの当然だもん」
「本心?」
タバサは一言ルイズに投げかけた。
「ほ、ほ本当だもん。うそじゃないもん」
ルイズはこれ以上言い返せない。
「わたしには言葉と想いのベクトルが反対なようにみえる。
あなたの言葉と想いは裏腹---」
見透かしたようなタバサの言葉にだんだんルイズの旗色が悪く...
「あなたはサイトをわかっていない」
タバサは止めの一言をルイズに放った。
284 名前: サイトが魔法を使えたら(1/5) [sage] 投稿日: 20...
一瞬目の前が真っ白になった。
「な、わたしがサイトのことわかってないですって・・・」
わなわなとルイズは怒りに震えた。
「そう。わかっていない」
タバサはルイズをしかと見据えて言い放つ。
「なななんであんたなんかに言われなきゃいけないのよ
タバサにわたしの使い魔の何がわかるとゆうのよっ」
「あなたこそ、都合が悪くなるとすぐに”使い魔”扱いする。
あなたはサイトに隠していることがある。それはサイトにとっ...
あなたにとっても大切なコトバなはず。どうして言わないのか
わたしには理解できない」
サイトはタバサが何を言っているのか全く分かっていなかった。
ルイズはタバサが何を言いたいのかはすぐに分かった。
でも言えない。いま言ってはならないのだ。
タバサはサイトに向きなおしてこう言った。
「わたしなら言える。わたしはサイトのことが---」
「やめてぇッ!!!!!!それ以上、言っちゃダメ。ダメなのよ。
タバサやめて。おねがい、おねがいだから---」
今にも泣き出しそうなルイズが絶叫した。
タバサはルイズを一瞥した。
「なぜわたしがサイトへ気持ちを打ち明けたらいけないの?
どうして?サイトはあなただけのモノじゃない」
三人の周りの空気が凍りついた。
再びタバサはサイトに向いて告げた。
「わたしはサイトのことが好き」
うわぁぁぁ・・・ルイズはその場で泣き崩れた。
285 名前: サイトが魔法を使えたら(2/5) [sage] 投稿日: 20...
ルイズは泣き崩れてしまった。
タバサはルイズを見据えたままだ。
サイトはルイズとタバサを交互にみた。
どうしたらいいんだ。
タバサが何を言ったのかすぐには飲み込めなかった。
たしかに好きと言ったよな。俺に?なんで?
いや、今はそんなことで混乱してる暇はない。
ルイズをなんとか慰めてやらないと・・・
「ルイズ、なぁルイズ。泣くな。な、泣くなよ---」
そんなサイトを見てタバサは一瞬眉をゆがませた。
しかし、またいつもの感情の消えた表情に戻った。
「また、図書館で。待ってる」
そういい残すとタバサはサイトたちから去っていた。
ルイズはまだ泣いていた。
「ルイズ。ごめん。だまってタバサと会って、ごめんよ」
サイトはだんだん切なくなっていったが、ルイズをなだめ続け...
「うっ、うぇ、ぶぁか、サイトのバカぁ・・・」
ポスポスポスと弱弱しくサイトの胸をたたいた。
「バカ、バカ、バカバカ・・・サイトのバカ・・・」
ポスポスポスポス---ルイズに叩かれながらもサイトは
ルイズの頭をやさしく抱えて胸に埋めるように抱き寄せた。
286 名前: サイトが魔法を使えたら(3/5) [sage] 投稿日: 20...
「・・・・ごめん。ごめんな・・・・」
「バカ、わたしの気持ちもわかんないくせに・・・
タバサと会っちゃうなんて・・・・バカバカ・・・」
「・・・・」
サイトは無言でルイズを抱いたまま、頭をなでてなぐさめた。
「・・・魔法の勉強はしてもいいわ・・・でも、タバサとはダ...
ダメなんだから・・・・・」
とめどなく流れる涙をサイトはそっと指でぬぐってやり、ルイ...
見つめた。
「おまえを護るため、俺は魔法をおぼえるよ。タバサはただの...
俺が好きなのは・・・・・ルイズ。おまえ一人なんだ」
「信じてくれ。ルイズ。」
ルイズは涙を自分でくしくしぬぐい、じっとサイトを見つめて...
「ほんとに?わたしのこと。好き?」
「ああ、好きだ」
「ほんとに、ほんと?好き?」
「ほんとにほんとだよ」
ルイズは少し頬を赤らめると眉を寄せて言った。
「もしタバサと何かあったら、コロスわよ」
サイトはやれやれといった表情でルイズに告げた。
「わかった。約束する。タバサには何もしない」
「口だけじゃ信じらんないもん・・・・
誓いの・・・・キスして。してくんなきゃ信じてあげないんだ...
サイトはやさしく微笑んだ。
わかったよ。かわいい俺のご主人さま---
二つの月に見守られる中、二人は誓いのキスを交わすのだった。
287 名前: サイトが魔法を使えたら(4/5) [sage] 投稿日: 20...
二人を照らす二つの月のそばで風竜をかる青髪の少女がいた。
サイトとルイズの元を去ってから使い魔である風竜シルフィー...
一気に学院の空高く舞い上がると図書館のあたりで旋回させた。
まだ、あの二人の姿がある。
月明かりなのではっきりとは見えない。しかし柔らかいその光...
存在を示していた。
どうやらまだなだめているようだった。
タバサは無意識のうちに唇をかみしめていた。
そして、胸の奥から沸き立ってくる魔力とは違う、何かに戸惑...
「きゅいきゅい、おねーさま。どうしたの?」
いつもの調子でシルフィードは聞いた。
「---わからない。なんだか胸の奥がもやもやする」
「いつもたくさんの本を読んでいるのに、おねーさまにも分か...
その言葉にタバサの右の眉がきっ、と引きつった。
「本には感情を沸き立たせることはあっても、感情そのものに...
「きゅいきゅい、おねーさま。たぶんそれジェラシーなのねん」
「嫉妬(ジェラシー)---」
タバサは目をきゅっとつぶって、自分の胸のあたりを左手でぎ...
288 名前: サイトが魔法を使えたら(5/5) [sage] 投稿日: 20...
「---誰に嫉妬してるのだろう」
ぼそりと胸からあふれた言葉がこぼれおちた。
「たーぶーんー。ルイズなのね、のね」
シルフィードが主人の心を見透かすように言葉を投げかけた。
ルイズ。我侭で傲慢なサイトの主人。その使い魔に使い魔以上...
を持っているのに、使い魔本人には真逆の言葉を突き立ててい...
「なぜ---」
そうつぶやくと目を開き、眼下にある嫉妬の対象を見下ろした。
二つの影が寄り添うように重なっていた。
タバサは重なり合う影に目がけて魔法ーウィンディ・アイシク...
このまま壊れてしまえばいい--しかし、その影の一つは先刻想...
「だめ」
風竜を急降下させ、その勢いにエア・ハンマーを乗せた。
パァァァーーーーン
氷の矢は瞬く間に粉々になって闇へと消えていった。
しかし、タバサの中には嫉妬と言う名の氷の矢が何本もつき刺...
441 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 20...
ルイズのお許しをもらったサイトは、午後の数時間をタバサと...
なった。もちろんご主人さまの命令(いいつけ)どおり、魔法...
ガンダールヴの力の助けもあってかサイトの理解力はタバサの...
系統魔法の基本の手引きは3日足らずで理解してしまったのであ...
今は初中級者向けの系統魔法の教科書を使って勉強に励んでい...
タバサは毎日必ずサイトとふたりきりになれることに喜びを感...
「タバサ、そろそろ教科書ばっか読んでるもの疲れてきたんだ...
使えなかったら意味がないだろ?」
タバサはちょっと困ったように答えた
「メイジとしてルーンを紡ぐためにはその媒介とするものが必...
サイトは首をひねった。
「媒介?」
「つまり杖のこと---」
「あー杖のことなのか、俺はそんなのもってねーな。デルフは...
「オレは魔法を吸収できても吐き出せねえよ。もちろん杖じゃ...
唐突にデルフリンガーが二人の話に割り込んできた。
「しかしだ。相棒の前のオレの相棒は右手にある物を持ってそ...
ルーンを唱えてたな。今思い出した!」
「なんだよ、そのある物ってのは」
サイトはいぶかしげにデルフリンガーに聞いた。
「それはオレに聞くよか、そこの青髪のおちびちゃんに聞いた...
「え?!タバサに!」
目を見開いてサイトはタバサのほうに視線を向けた。
442 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 20...
不意にサイトと目が合ったタバサは頬を染めた。想い人に見つ...
こんなに心躍るものなのだろうか、この高揚感にすこし戸惑い...
「い、イーヴァルディが作ったとされるインテリジェンス・ス...
名は、《グングニル》。」
「ほほー、おちびさん、ヤツの名前までご存知とは恐れ入りや...
デルフはタバサに感心していた。タバサは今まで人から(デル...
ことがなかったのでちょっと照れくさくなってうつむいてしま...
「なあ、相棒オレは、相棒の左腕なんだよ。つーことはだな、...
そー思ったことねえかい」
「う〜ん、正直デルフを扱うだけで一杯一杯だったからな。考...
「ありゃ、そなの・・・でもよ、グングニルってヤツがいるのは確...
まぁ、ちょいと変わった性格してんだけどな笑。これも今思い...
「ところでタバサ、そのグングニルってのは今どこにあるんだ...
サイトは素朴質問をタバサに投げかけた。
タバサは少し微笑み、じっとサイトを見つめてこの槍のありか...
「ここ。この魔法学院にあるの」
456 名前: サイトが魔法を使えたら(1/3) [sage] 投稿日: 20...
神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と...
デルフから先代ガンダールヴが右手に槍を持っていたことを聞...
その名前がグングニルであるということをタバサから聞いた。
なんと、その槍はこの魔法学院のどこかにあるらしい。
持ち前の旺盛な好奇心でサイトはワクワクしていた。
「じゃあさ、早速その槍を探したいなっ、な、タバサ。学院の...
タバサはたしなめるように言った。
「あせっちゃ駄目。在り処のめぼしはついてるから」
ちょっとサイトはすね気味に口を尖らせた。
「ちぇー。ケチんなくってもいいじゃんよ」
タバサはなぜかそんなサイトがかわいいと思ってしまう。
そしてサイトにやさしく諭した。
「駄目。まだ外は明るすぎる。今夜、夜が更けた頃、探しに行...
タバサのやさしい口調にサイトは素直に反応した。
「そか、暗くないとだめか。分かった。タバサの言う通りにす...
「ん。じゃぁ、今夜、本塔入口で待つ」
「了解、タバサ隊長!」
すこしにこりと笑ったタバサにサイトはどきっとした。
やっぱりかわいいよ。タバサ。
457 名前: サイトが魔法を使えたら(2/3) [sage] 投稿日: 20...
ルイズの部屋に戻ったサイトは夜が来るのを待った。
隣ですーすーとルイズの寝息が聞こえるなか、
サイトはそっと部屋から出て行った。
魔法学院本塔入口---
タバサは既に待合せ場所で待っていた。
サイトとふたりで待合せ。なんだがどきどきしてしまう。
夜という時間もこのどきどき感を高めているにちがいない。
そわそわしながらサイトがくるのを待った。
もしかしたらあのルイズに止められてしまっているかもしれな...
いやな予感がする---タバサはきゅっと唇をかんだ。
「おーい、タバサ。お待たせ。」
サイトは走ってきたらしい。タバサはいやな予感がはずれてほ...
458 名前: サイトが魔法を使えたら(3/3) [sage] 投稿日: 20...
「早く行こうぜ」
「ん。」
タバサは塔の入口の鍵をアンロックで開錠した。
「あのさタバサ、どこに行くんだよ」
サイトは小声でタバサの耳元で囁いた。
サイトの息が耳にかかったのでタバサはびくんと身体が跳ねた。
「・・・・耳。くすぐったい」
「おわっ、ごごめん。ちょっと近かったか」
サイトに少し距離をおかれてしまった。
別にいやなわけではなかったが、なんか恥ずかしいのだった。
気を取り直してタバサは答えた。
「5階の宝物庫に行く」
462 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
魔法学院本塔5階。魔法を使えばすぐに一飛びで行ける距離だ。
しかし、まだメイジではないサイトと一緒に走っていくしかな...
歩けばいいのにサイトは走り出してしまったのである。
身体が小さいタバサの体力は他の生徒と比べるとやはり少ない。
サイトは男の子なのでなおさら距離は開く一方だった。
だんだん息が続かなくなってきてタバサは走るのをやめてしま...
はぁ、はぁ、はぁ---いっそのことフライを使ってしまおうか。...
矢先、先走っていたサイトがいつの間にかタバサのところに引...
「タバサごめん、おもっきりダッシュしてた。手を貸すよ。一...
サイトはそういうとタバサの小さな右手を握ってきた。
サイトの予想外な行動にタバサは顔を赤くした。
「え・・・・あ、ありがと」
力強くサイトに手を引かれながら宝物庫の前までやって来た。
二人の目の前には巨大な鉄の扉が聳え立っていた。
「で、でかい---」
その巨大さにサイトは息を飲んだ。
しかもその鉄の扉にはこれまた頑丈そうな錠前が付いていた。
「・・・」
タバサは無言で鉄の扉を見上げていた。
「ど、どうすんだ。どうやって入るんだ」
サイトはあせってタバサに聞いた。
「・・・だいじょうぶ。」
そう一言タバサは呟くとサイトの目の前にきらりと光る物を突...
「か、鍵?!どうやって持ってきたんだよ--」
サイトがびっくりしてタバサへ問いかけた。
タバサは悪戯っぽく笑って、ヒミツ。と言った。
463 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
ガチャンーーータバサがどこから持ってきた鍵で宝物庫の巨大...
目の前に広がる秘蔵ともいうべきお宝の数々にサイトは圧倒さ...
「す、すっげーよ。まるで博物館じゃねーか!!!」
興奮するサイトのパーカをタバサはちょっとつまんでくいくい...
「こっち、来て」
どうやら地球にある博物館と同じようにある程度分類された状...
ようである。
物珍しさにキョロキョロしまくっているサイトを横目でちらち...
場所へと歩いていった。
「たぶん、ここらへん」
二人は剣や槍などの武器を保管している場所にたどりついた。
「にしてもずい分あるなー。探すにゃ骨が折れそうだな〜」
言葉とは裏腹にサイトの目はキラキラと輝いている。
そんなサイトをタバサは微笑ましく見つめた。
「デルフリンガー」
タバサがサイトの剣の名を呼んだ。
「ん〜。なんだぁお呼びかい。おちびさん---こりゃまた懐かし...
する場所にきたもんだ。おでれーた!」
「お願い。槍を探してほしいの」
「ヤツを見つけりゃいいんだな。分かったよ。おちびさん。
じゃぁ、相棒。悪いだが俺を持ってくんねぇかな」
デルフはサイトに言った。
わかった。そう言ってサイトは左手でデルフを握った。
左手のルーンが光り輝いた。
すると宝物庫のある一角が光を放ち始めた。
「相棒、おちびさん。あの光がヤツの居場所さ−−−」
なぜか渋い声色でデルフが言った。
二人は言われるがままに光の下へと急いだ。
464 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
タバサとサイトは光を放つ場所にきた。
2メイル半はある美しい木目が目立つ長い柄。そしてその先には...
鋭利な刃が付いていた。その槍の刃には何か文字が刻まれてお...
「よう、ひさしぶりじゃねか、グング。いつまで寝てんだよ。...
デルフは、懐かしい友人に冗談を言うように槍に話しかけた。
すると、槍がしゃべりはじめた。
「っるさいわねぇ〜ダレなのよぉ。折角人が気持ちよく寝てた...
その声を聞いてサイトは一瞬で凍りついた。
タバサは、伝説の槍を目の当たりにしてただただ凝視していた。
(これが、伝説のインテリジェンス・スピアーーグングニル・...
「おめぇ槍だし。いーから目ー覚ませ。久々に使い手が現れた...
デルフは急かすように言った。
「なにさ、使い手?えっわたしたちを使える人間がまた出てきた...
あぁらぁ、おにぃ〜さぁん、かわいぃじゃないよぉ。あたしの...
お名前、おしえて〜ん」
サイトの全身からいやーな汗が大量に噴きだした。
デルフはサイトの雰囲気を察して、かわりに槍に話しかけた。
「相棒やっぱ固まっちまったか。今回の相棒名前はなーーー」
「あんたにきてないわよぉ。この子に直接聞いてるんだから、...
「へーへー、ってことで相棒そろそろ口聞いてやってくれ」
「お・な・ま・え・は?」
「ひひひひひヒラガ・さささサイトです。」
サイトはてんぱってしまった。
またかよ。またアレか。この世界はスカロンみたいな人間だけ...
そう、この槍オネエ言葉でしゃべるのだ。
465 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
「素敵なお名前じゃないのぉ。サイトくんねぇ。よろしくぅ。...
あたしとしちゃ、グングニールって呼んでほしいわけ。あたし...
聞いてくんなきゃ、ゆーこときいたげないわよぉ。フフフ・・・」
この槍の言うこと聞いておかないと間違いなく寝込みを襲われ...
「わ、わかったよ。グングニール。よ、よろしくな」
「ぁあん。いー声じゃなぁい。ちゃーみんぐだわぁん。貴方の...
聞いてあげちゃうわよぉ。早速だけど、あたしに触れてみてぇ...
サイトは言われるがままグングニールに触れた。
するとグングニール全体が黄金色に光り輝いた。
「サイトくーん。あたしってば今はこんな図体だけどさぁ、と...
変身できちゃうのよぉ。今からやったげるから、しっかり受け...
輝きが閃光となり宝物庫全体を光で包み込んだ−−そしてサイト...
に杖くらいのかわいらしいサイズになったグングニールがいた。
「いやぁん、しっかりうけとめてもらっちゃたわ。感激ぃ」
激しい吐き気に襲われながらも必死になってサイトは小さくな...
しっかり握った。
262 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 20...
「・・・杖・・・」
タバサは変化したグングニールを見てひとりごちた。
確かこの前、タバサは魔法を使うには〔媒介〕が必要と言って...
このグングニールを得た今、魔法を使えるということなのだろ...
「な、なぁ、タバサ。俺、これで魔法が使えるようになるのか...
サイトはタバサに聞かずにはいれなかった。
「まだ、使うことはできない。」
「なんでだよ?」
「杖との契約が必要。」
「け、けいやく?!」
「−−そうさ、相棒。メイジとやらが魔法を使うにはまず、その...
となる杖ーー相棒の場合にゃグングだな。そいつと契約が必要...
デルフがタバサの言葉を継いだ。
「でも、どーやって契約すりゃいいんだよ?−−ま、まさかーー」
サイトにいやな予感が浮かびあがった。
ルイズが俺と使い魔の契約をしたときには・・・き、キスだったよ...
まさか今回の〔契約〕も・・・
ウェッ。危険な妄想に胃からナニかが逆流してくるような感覚...
「詠唱を唱えるのーー我が名はサイト・シュヴァリエ・ド・ヒ...
契約せんーー」
「やって」
タバサはサイトに促した。
「お、おう」
いい意味で予想を裏切られ、少しほっとして、サイトはうなず...
「ほんとは、あたししゃキスのほーがいいんだけどねぇ」
グングニールは心底残念そうにつぶやいた。
お、おうぇ。再びサイトは吐き気に襲われつつも、契約の詠唱...
「集中して。あなたならきっとできるーー」
タバサの励ましを受け、サイトはにこりと微笑み返した。
263 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 20...
サイトはグングニールを右手でしっかりと握りしめた。
「−−−我が名はーーサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。彼の杖...
左手のガンダールヴのルーンとグングニールの刃のルーンが共...
身体の中から『何か』が湧水のように湧き立つ感じがするーー...
サイトは今までに感じたことのない感覚に戸惑いながらも理解...
「相棒、これでメイジの扉が開かれたってことだな」
「だーりん。あたしも助けてあげるわ。よろしくねぇ」
「そ、そろそろ戻ろうか」
おしゃべり武器たちの言葉をよそにサイトはタバサに声をかけ...
「そうね」
タバサは短く答えた。しかし次に思わぬ言葉を継いだのだった。
「窓から帰る。あなたも一緒。魔法使う」
「いきなり!?そんな、む、無理じゃーー」
焦って声が震えるサイト。
「できる。できなきゃだめ。私を魔法で護ってみせて」
そしてタバサはいきなり窓から飛び出したーーー
550 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
わたし魔法は使わない。タバサは杖を握る右手から力を抜いた。
杖は手からこぼれ落ち、もはや手の届かないことろまで離れて...
きゅいきゅいーーと、上空で待機していたシルフィードが急降...
「おねーさま、正気?!このままだと死んでしまうのね。わた...
そういってタバサに近づいてきた。
「−−だめ。あなたは戻ってて。これは試練。わたしの命はサイ...
いま、サイトが真にメイジの資質に足るかどうか確かめるとき...
途中で言葉を紡ぐのをやめた。シルフィードは納得できないと...
羽ばたいていった。
あのとき。サイトに告白したとき。サイトはわたしの言葉を理...
そこに泣き崩れたルイズがいたから。サイトの一番の想い人。...
だけど、今ルイズはいない。もし叶うなら、また助けてほしい...
もらえたら−−。たとえ甘い気持ちなどサイトにはないにしても...
タバサの身体は加速をつけて地面との距離を縮めていった−−
551 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
「タバサっ」
サイトは窓から身を乗り出し叫んだ。
「相棒、試練だねぇ。やるしかないねぇ」
デルフがため息混じりに話しかけた。
「だぁーりん。いえ、サイト。一緒にがんばりましょ。今は四...
グングニールがせかしてきた。
「そ、そうだな。で、でもどんな魔法使えっていうだよ−−」
正直パニックに近い精神状態になっていた。
「そーねぇ。あのおちびちゃんが空中で浮くとき良く使ってる...
グングニールがヒントをくれた。たしかシルフィードから落っ...
「タバサ、今助ける!!−−」
サイトはタバサへ向けグングニールを振り下ろした。
身体の中で力の流れを感じた。うねり、うずまき、右手に収斂...
「レビレーション!」
自然とその魔法の名前を口から発した。
来た。タバサは自分に魔法がかけられていくのが分かった。
サイトの放ったやさしく暖かい風の魔法がふわりとタバサの全...
タバサは瞳を閉じ、サイトの風にその身を委ねるのだった。
552 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
ふわり、とタバサは地上に降りた。
タバサはゆっくり目蓋をあけ、双月に照らし出される本塔を見...
サイトが風の魔法を使って地上へと舞い降りようとしている。
「タバサ、怪我ないか」
ふわり、とサイトが地上に降りつつタバサに話しかけた。
「ん。大丈夫。やさしい風だった」
「はぁ、よかったぁ。魔法がかかったかどうか心配だったんだ」
緊張していたのか、サイトの額には汗が光っていた。
そんなサイトをみて、にこりとタバサは微笑むと再び空を見やり
口笛を吹いたのだった。
きゅいきゅいーー風竜シルフィードが主人の呼びかけで地上に
降りてきた。
「おねーさま、怪我ないのね。だいじょーぶなのね」
タバサの使い魔は、主人を気遣う言葉をかけた。
つぎにサイトのほうに顔をむけて言った。
「おねーさまを助けてくれてありがとなのね」
サイトはシルフィの首をなでながら、心配かけたな、と語りか...
553 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
タバサはシルフィの背に乗ると、サイトも一緒に乗るように促...
行き先と尋ねると、タバサは学院とは異なる場所を告げたのだ...
「ラグトリアン湖まで一緒に来て」
「何しにいくんだ?」
「秘密。」
タバサは短く言葉を返すと、トリスティンの夜空めがけてシル...
ひんやりとした風が二人のほほをなぜていく。
夜の空中散歩もいいもんだな。とひとりごちるサイトだった。...
月明かりに照らされた青髪の少女。気高さを宿した碧眼。そし...
竜の背にゆられる二人は黙ったまま。湖畔へと向かって行った。
30 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 200...
月光に映えるラグドリアン湖の水面(みなも)は、宝石のよう...
「きれいだな・・・」
サイトがつぶやいた。
シルフィは、徐々に高度を下げていき、湖畔の一角へと降り立...
タバサとサイトの二人はシルフィの背中から降りると波打ち際...
周りは音が夜の闇に吸い込まれてしまったかのように静かだ。
サイトはあの時のことを思い出していた。そう、ルイズの惚れ...
会いに行ったときのことを---
「そういや、ここでおまえとやり合ったことあったな」
懐かしいよな。横にいるタバサに語りかけた。
タバサはこくりと頷き、あのときは痛くしてごめんなさい。と...
「あやまんなくていい、タバサにも守るもんあったんだからさ...
もらったし、気にすんな。」
サイトは真剣な表情だった。
ケガ---そういえばガリアで幽閉される前、サイトを抹殺しよう...
状況ではサイトがわたしに止めを刺せたはず。だのにわざとは...
「お腹のケガ、大丈夫?」
心配になってサイトに聞いてしまう。
「腹のケガ?ああ、アレ?キズあとは残ってるけどへーき平気」
手を振りながらサイトは答えた。
31 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 200...
あんなケガを負わせてしまったわたしをサイトは敵地(ガリア...
わたしのイーヴァルディの勇者---光る左手をもち、剣と槍で戦...
サイトは伝説の使い魔、ガンダールヴ。この二つの伝説はもと...
わたしはどんなときにでもこの勇者のそばにいたい。助けられ...
タバサは真っ直ぐ水の中へと歩みを進めた。膝まで水につかる...
「この湖は、誓いの精霊が棲まう場所。今からあなたに誓いを...
サイトにそう告げた後、右手を胸にあて、碧眼の瞳を閉じた。
さらに一呼吸おいてから言葉を紡ぎだした。
「わが名は、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。水の精霊...
「わたしはこの先、死が二人を分かつまで、サイト・シュヴァ...
気のせいだろうか、サイトには一瞬水面が震えたようにみえた。
誓いの言葉を言い終わったタバサは瞳を開き、サイトへ手を差...
293 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
わたしはこの先、死が二人を分かつまで、サイト・シュヴァリ...
タバサは俺に誓いを立てた。前にも時と場合を選ばずに俺を助...
身も心もあなたに捧げるって言葉だけだったら、大胆すぎる告...
瞳を開いたタバサにじっと見つめられて思わず目そらししてし...
タバサが俺に手を伸ばしてきた。こっちに来いってことなんだ...
サイトは、なぜか高鳴る鼓動を抑えつつざぶざぶと湖に入って...
「ど、どしたタバサ」
おそるおそるサイトは尋ねた。
するとタバサは、おもむろにかけていた眼鏡をはずした。
タバサという呼び名は母にもらった大切な人形の名前だ。彼女...
彼女は思った--ここでは、いや、この瞬間だけでいい、サイト...
「シャルロット、でいい」
「へっ!?」
いきなりの申し出にサイトは面食らった。
「タバサじゃ嫌。いまはシャルロットと呼んで・・・・・・・...
彼女は眼鏡をはずしたまま、サイトを見つめる。
「タバ---いや---しゃ、シャシャシャルロット。」
動揺を隠しきれなかったが彼女に言われるがままに言葉を返す。
眼鏡をはずした少し潤んだ碧い瞳でじかに見つめられている。...
シャルロットと呼んでくれた---心にジンと響くものを感じ、彼...
すでに間近にいる彼を上目遣いで見つめ、ありがと。と消え入...
ここまでの至近距離。あのときの戦い以来だった。いまは誓い...
精霊には大目にみてもらって、もうひとつの希望を言ってみた。
「・・・・・・もうひとつお願いがあるの・・・・・・・め、...
サイトは魔法にかかったように目を閉じる。いや本当に魔法に...
サイトは思った。あの少し潤んだシャルロットの碧眼に。
「これでいいのか?し、シャルロット・・・」
サイトのどきどきは最高潮に達しようとしていた。
「うん」
そう短く彼女は言葉を発すると、右手でサイトの着ているパー...
294 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
双月照らす湖畔で誓いを交わすシャルロット、そしてサイト--
この切なげな静寂が破られた。
「・・・睦まじいところ悪いな--北花壇騎士(シュヴァリエ・ド・...
声のした方に二人は視線を飛ばした。茂みの暗闇から人影が現...
しかし、その声には彼女は聞き覚えがあった。
ミョズニトニルン。声の主の名前をつぶやく、タバサ。
「え?誰だって??」
サイトは舌を噛みそうなその名前を一度では聞き取れなかった。
「ミョズニトニルン。この前ミョルドガントでルイズを踏み潰...
タバサは説明を加えた。
こいつが・・・!?サイトは唇をかみ締めた。タバサはサイトの周...
「虚無の使い魔よ。今日は虚無使いはどうした?まさか一人に...
片側の口角を吊り上げ、不気味な表情を浮かべるミョズニトニ...
「ま、まさかてめぇ--ルイズに何かしやがったのか!!!!」
サイトは身構え相手を見据えて言い放った。
この状況は危険。タバサはシルフィに口笛で合図を送る。する...
ある方角目指して飛び去ってしまった。
「逃げるつもりはない--」
タバサも身構えた。ところが、左手でサイトが制した。
「タバサ。おまえはじっとしてるんだ。ここは俺がなんとかす...
サイトは相手を見据えたまま言った。
「---ほう。このわたしと一戦交える気か。ガンダールヴ。面白...
ミョズニトニルンは被っていたフードを取り去った。
挑発してんのか。やったろうじゃねぇか。サイトは背中のデル...
え?驚いて後ろを振り返ると、なぜかタバサの手にデルフが握...
「た、タバサ?!」
しかし、タバサから返事は無い。何か目が虚ろだ。
「相棒、娘っこはあっちの虚無の使いに操られてるようだねぇ」
デルフは諦めたようにつぶやいた。
しまった!咄嗟の判断でサイトはタバサから飛んで離れ、ミョ...
「アンドバリの指輪!!?」
ミョズニトニルンはタバサに向け、深紫の指輪を向けていた。...
ミョズニトニルンの周りにはいつの間にか沢山の人形が集結し...
295 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
同刻---トリスティン魔法学院。
シルフィはタバサに命じられた場所にたどり着いた。
そしてとある一室の窓を突き破った。
ガシャァーーーーーン!!!!
バカァ・・・そんなにがっついたってぇ・・・あげないんだもん・・・
何か妙な夢をみていたルイズの眠りがとんだ闖入者によって破...
「ぎゃぁぁ〜〜!!!!!なななななななになに!!?なんなの〜」
絶叫とともにルイズは目を覚ざめた。
「たいへんなのねーたいへんなのねー!!!おねーさまがたいへん...
シルフィは寝起きのルイズに捲くし立てた。
「んーなんなのよー。タバサの使い魔じゃないよ。どしたのよ」
かすむ右目を擦りながらシルフィに聞きただした。
「たいへんたいへんたいへん」
翼をバタバタさせながらシルフィは騒いでいる。
「わかんないでしょー。何が大変なのよ」
困ったという表情でルイズは聞き返すのだった。
右目がまだぼやけていた。顔を洗ったほうがいいのかしら---
「おねーさまが、サイトが襲われてるのね〜きゅいきゅい」
はぁ?サイトがなんでよ。不安がルイズの小さな胸に過ぎった。
「はやく、乗るのねのね。急ぐのね〜」
シルフィに急かされるままルイズはその背に跨った。
まだ夜更けの冷たい風がルイズの頬をなでていた。
右目がようやく見えてきた。しかし、見えた景色はシルフィの...
「ちっ、やばいな---デルフとられてんのによ。この数はきびし...
サイトは額から流れる汗を無造作に拭い去った。
「だーりん。あ・た・しを忘れちゃやーよ(ハート)」
インテリジェンス・スピア グングニールが話しかけた。
そうか、コイツもいたんだ。杖状態に変化してから黙りこくっ...
アウトオブ眼中になっていた。
「とりあえず、タバサとアルヴィーに挟まれちゃどうしようも...
後ろからバッサリいかれても辛いし---」
「だーりん。あたし一回元に戻るわ。でもあのデコ女に変身見...
そうね。だーりん、あたしを水ン中に落としてちょーだいな。」
サイトはグングニールを足元に落とした--グングニールは水中...
サイトは、水中のグングニールの柄の末端を左足で踏んづけて...
「らんぼーなんだからぁ。まーよくってよ。この状態でもだー...
でも詠唱は相手に覚られないようにね」
おっけ。サイトは短く応えた。前後に目を配りながら間合いを...
先に仕掛けたのは操られたタバサだった---杖を打ち捨てたと同...
ガキッ!剣と槍が交差する。かなりの強い力に後ずさるサイト...
左手のルーンの輝きが増し、サイトは羽のように軽くなった体...
「タバサ、悪い。少し痛いかも。」
ぐりんと槍を180度回転させ、柄の末端--石突の部分をタバサの...
タバサの表情が一瞬苦悶の色を見せ体をくの字に曲げたまま倒...
一瞬複雑な表情を見せたサイトだったが、槍をもう一度半回転...
「今度はおまえの番だっ!!!!!」
サイトは湖岸を目指し、湖面を蹴り出した。
「わたしのアルヴィーを倒せるかしら--」
不敵な笑みを絶やさずミョズニトニルンは近づいてくるサイト...
”だーりん、そろそろ使っちゃいなさい”---小声でグングニール...
槍の重心を中心に頭上で回転させた。そして、小声で風のマジ...
”エア・ハンマー”----詠唱完了と同時に槍を石突まで滑らせ岸...
槍の穂先のルーンが輝いて魔法は発動した。
ドンッバキバキバキッ!アルヴィーの先頭の一団が次々となぎ...
「!!!---ガンダールヴ。やるではないか。『風圧』でわがアイ...
ヤツは俺が魔法を使っているとは気がついていない--サイトは...
「まだまだぁ!!全部吹き飛ばしてやるっ!!!」
296 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
回転させながらグングニールの穂先をわざと湖水に浸す。
グングニールの回転と同じようなうねりがサイトの身体の中で...
"ウィンディ・アイシクル"--独り言のようにスペルを紡ぐ。
こぉぉぉー無数の氷の矢が湖面ぎりぎりに発現した。このまま...
そこでサイトは別の魔法を氷の矢に向け繰り出した。
小さめの空気の塊に当てられ、氷の矢は粉々に砕ける。しかし...
グングニールの回転速度を上げ、その風圧にさらに魔法を上乗...
"エア・ハンマー"
アルヴィーの先陣をなぎ払った強度で無数の欠片に打ち付けた-...
アルヴィーたちに疾風と氷片が叩きつけられ、次々ズタボロに...
ドクン。ドクン。右目の視界に鼓動が高まっていく。
な、なによこれ。湖?なんであんなにいっぱい人形(アルヴィ...
まるで目の前に存在するかのような光景。
「ねぇ。シルフィ。あんたのご主人さまとあたしのサイトはど...
ちらりとシルフィは横目でルイズを見ていった。
「おねーさまとサイトはラグドリアンの湖なのね」
もしかして---この視界。サイトのなの?
この人形たちを操ってるのはもしかして、ミョズニトニルン?!...
ドックン。ドックン。鼓動がさらに速まる。
「ち、ちょっと、シルフィ。もっと速く飛びなさいよ。あいつ...
ルイズはぺしぺしとシルフィの首根っこあたりを叩いて急かす。
「痛い、痛いのね。わかってるのね。急ぐのね。きゅいきゅい」
シルフィは翼をより大きく羽ばたかせるのだった。
速度があがったせいかルイズの右の耳が激しい耳鳴りに襲われ...
ーーー私は----どうなってるの----朦朧とする意識の中タバサ...
ズキン・・・お腹のあたりに鈍痛が走った。ったい。痛みに身体が...
そうだ。シルフィはどうなっただろう---私何頼んだんだろう。...
やはりまだ身体がいうことをきかないらしい。周りから魔法の...
サイト。大丈夫かな。せっかく誓ったのに何もしてやれない。...
サイト---タバサは弱弱しい笑みを浮かべた---私がいなくても-...
再びタバサの意識が暗転した。
おっし。もうすこしでカタがつく。サイトの心が奮えたった。
そのちょーしよ。だーりん。ぐるぐるとサイトに振り回されな...
もういっちょ。かましとくか-----魔法を唱えようとした刹那、...
やべ。使いすぎたのか---額に手を当てサイトはよろめいた。
ひとまず魔法は温存してグングニールにしなりを利かせ襲い掛...
耳鳴りは続いていたが、眩暈は治まり視界をとりもどせた。と...
540 名前: サイトが魔法を使えたら(1/1) [sage] 投稿日: 20...
空。そして湖。それがサイトの左目に飛び込んできた景色だっ...
ルイズ!?
いつの間にか左の耳から耳鳴りは消え失せている。その耳から...
”サイト?私の声が聞こえるの・・・・?”
「ああ、聞こえる。ばっちり。」
湖。そして湖岸に群れるアルヴィーたち。そして右の耳からサ...
”ルイズ!?”
サイトが見るものだけではなく聞いたものも分かった。まるで...
「サイト?私の声が聞こえるの・・・・?」
”ああ、聞こえる。ばっちり。”
サイトは言葉を続けた。
「おまえもつながったんだな・・・声で分かるぜ。っと。」
目の前に群がる敵を槍捌きとマジックスペルの合わせ技で弾き...
これまで歴戦を戦ってきた彼でも無傷というわけにはいかなか...
「ルイズ、お願いだ。ここに降り立つまでに魔法唱えといてく...
”イサ・ナウシド・ウンジュー・----”
ルイズの心地のよい詠唱がサイトの左耳に入ってくる。
視線の先にいるミョズの背後に巨大な影が現れた。
ヨルムンガント・・・!!!サイトは青ざめた。
”だーりん。ねぇ。だーりんってば。”
グングニールが声をかけた。
なんだよ。どーすりゃいーんだよ。あれ。
”あたしをあれ目がけて投げてちょーだい”
んなことしたら俺お前拾いにいかないといけないんじゃ---俺丸...
”だいじょうぶよぉ。ちゃんと自分で戻ってこれるのよ〜。だか...
巨大な人形がこちらに近づいてくる。
ままよ----意を決したサイトは、グングニールを上段に構え、...
グングニールの穂先とサイトの左手のルーンの輝きが同調する...
いっけーーーーーーーーーー!!!!
ヨルムンガント目がけてグングニールを擲った。
”おまえもつながったんだな・・・声で分かるぜ。っと。”
私とサイトは今つながってるんだ。ルイズの心に温かい火が灯...
”バキン!ドカッ!”
何かがぶつかる音がする。不安な気持ちが溢れだした。
”ルイズ、お願いだ。ここに降り立つまでに魔法唱えといてくれ...
サイトの声が届いた。ルイズは不安を吹き飛ばすかのようにシ...
イサ・ナウシド・ウンジュー・----
アルヴィーにかけられたスペルを解除する”ディスペル”を唱え...
しかし詠唱開始から寸刻のたたないうちにルイズは右目に新た...
即座にスペルを”エクスプロージョン”に切り替える。
”ヨルムンガント!!!”サイトの叫びが飛び込んでくる。絶対に倒...
エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ----
ルイズの中で魔法の力がうねりはじめた。
112 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
グングニールは真っ直ぐにヨルムンガントに突き進んでいく。...
ヨルムンガントの頭部と穂先が接した瞬間、無数の紅色のプラ...
バチンッ。破裂音とともにグングニールの穂先が装甲にめり込...
「あ、ありえない---」
予想外な光景にミョズは顔色と言葉を失った。
一方、グングニールを投げてしまった今、サイトは丸腰になっ...
徒手空拳でなんとか致命傷は避けるものの、かなりの手数を喰...
眼前に隊列を組んだ槍ぶすまがサイト目掛けて突き進んできて...
や、ばっ---避けようにももう足が言うことを利かない。
ルイズ・・・ごめん・・・・サイトは目を瞑った。
ズブッ。何かに突き刺さる鈍い音がした----俺、死んだ?!
サイトは、恐る恐る目を開けた。なんとサイトは羊水のような...
ゆらめく視界には槍ぶすまが水球の表面5サントくらい突き刺...
誰かが水魔法でサイトを護ってくれたのだ。背後からかすかな...
”ガンダールヴ----手助ケシヨウ。アノ指輪ヲ我ノモトニ・・・”
声の主はこのラグドリアン湖に棲まう水の精霊であった。
水の精霊・・・。精霊の涙を分けてもらって以来の邂逅であった。
”オマエト約シタ。アノ指輪ヲ我ノ許ニモドスト。”
そうだった。忘れちゃいない。目の前にアンドバリの指輪はあ...
サイトの身体に接する「水」が柔らかいグリーンの光を放ち始...
身体が軽くなってきた。サイトの中で消えかけていた灯が再び...
「一つお願いだ。あそこに倒れているタバサも助けてやってく...
タバサのほうを指して精霊に願いを請うた。
”分カッタ。約束シヨウ---”
サイトを包み込んでいた水の球は消え失せ、今度はタバサが精...
ザンッ。ヨルムンガント1体を打ち破ったグングニールがサイ...
右の手で槍をむずと握り、ずぶりと湖面から引き抜いた。
その刹那。湖の上空から閃光が降り注いだのだった。
ルイズ。ニッと笑ってサイトは自分の周りに防御魔法を展開し...
虚無の爆風にたゆんと水の壁がゆらめいた。
ざざざ。ざざざ。タバサは夢の中にいた。彼女は母の胎内に宿...
小さな身体をさらに小さくして、母の中をたゆたっていた。
”母さま---”
トクン、トクン。小さな身体に生命の拍動が戻ってきた。
突如、その空間に一条の光芒が差し込んできた。タバサはその...
青髪の少女の瞳は開かれた。碧い双眸に再び光が灯る。意識は...
けれど、湖上で魔法を展開している黒髪の少年、上空で風竜の...
タバサの足元にはいつのまにか流れ着いた彼女の杖が漂ってい...
シルフィの背に立ちルイズはエクスプロージョンを眼下の敵勢...
これでおしまいにするんだから。精神力の大半を使い込んだ彼...
サイト。大丈夫かしら。自分の虚無で傷ついていないかと不安...
シルフィの肩越しにサイトの姿を確かめずにはいれない。しか...
魔法使えるようになっちゃったの---ルイズは一瞬目を丸くして...
シルフィはそんなルイズを横目で見やりつつ湖上にふわりと着...
虚無の光が晴れた後、小さな人形たちは無残な姿をさらしてい...
二度、同じ技が通じると思うとは浅薄だな・・・・ミョズは不適な...
彼女の背後から多数の巨大な影がもぞりと蠢いた。
113 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
「1体は斃せるようだな、褒めてやるぞ。しかし余興は終わり...
ミョズの言葉が言い終わらないうちミョズの背後から現れたヨ...
タバサは魔法で身軽にかわすが、攻撃はしなかった。体力の回...
そんなルイズの前にサイトは盾になってたちふさがった。
「こうも数が多いとあたしでもつかれちゃうわぁ。あいつも使...
あいつ=デルフリンガーはいまだ湖に突きたれられたままにな...
敵がどうと倒れこむ隙をついて、後ろへ飛びすさりルイズを抱...
なぁ、グング。デルフ握るまでに変身しといてくれ。サイトの...
「待ちくたびれたぜ〜相棒。錆びちまうかとおもった」デルフ...
サイトは抱えていたルイズを湖面に降ろしてあげた。そして剣...
サイトはその視線の方向に目を向ける。
すこし離れているタバサの口元が動いていた。するとサイトの...
水の系統魔法バブルであった。
”このヨルムンガントには系統も虚無も通じない----たぶん、先...
先住には先住ってことか。サイトはひとりごちる。この数では...
「精霊さんよ。もう一度”分けて”くれないかな」
サイトは、湖面に向かって声をかける。
”-------------使ウガヨイ”
サイトには足元の水の雰囲気が変化したのが分かった。
精霊の了解を得たサイトは、タバサへむけ先ほど彼女がやった...
視線が合ったルイズはあわてて目をついとそらした。
114 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
「まほう。つかえるよーになっちゃたんだ・・・・」
言葉の中に悔しさが混じっているのが分かった。
「言ったろ、お前を護りたい----だからがんばったんだ。」
サイトは言葉を続ける。
「まだ虚無使えるか?今から精霊の涙をもらうからそれに”ディ...
ルイズは目をそらしたまま、すこし口を尖らせて言葉を返す。
「さっきほとんど使っちゃた。歩くので精一杯なの・・・・だ、だ...
分ける?ってどうやって??サイトは怪訝な表情でルイズに聞...
「ききききききき」
ルイズは頬を朱に染め上げてサイトを見て言葉を伝えようとす...
ききききききき??サイトはオウム返しに繰り返す。
「きききき・・・・・キスして」
こんな状況だというのになんというご主人さま。サイトは内心...
くやしいけれど、やっぱりこいつへの気持ちは嘘はないの。今...
この不安を消してもらうには使い魔、いやサイトから愛情表現...
”儀式ではないキス”をもらえたルイズは喜色満面に言い放った。
「いまなら虚無でもなんでも出してあげるんだから」
サイトはルイズに微笑みかけた。しかし、一瞬でその表情は戦...
タバサはそんなメイジと使い魔の光景を複雑な思いで見た。し...
サイトと再び目線があった。それは、戦いの始まりを意味して...
ふくれあがったタバサの力とサイトの力が湖上で混ざり合う。...
−−−ルイズの詠唱が完了した瞬間、サイトとタバサは同時に魔法...
「「ウィンディ・アイシクル!!!」」
湖面から無数の氷の矢が三人の前に出現した。精霊の涙がこめ...
ルイズは矢の出現を確かめ虚無の力(ディスペル)を氷の矢に...
一斉に氷の矢がワインブルーへと変色する。タバサとサイトは...
空気を切り裂き矢がヨルムンガントめがけて降り注ぐ。それと...
ヨルムンガントたちの攻撃をかいくぐり、指揮官のところへ突...
虚無の使い魔の命知らずな行動にミョズは後れをとってしまっ...
ひっ。あっという間に懐に入られたミョズにはなす術がなかっ...
サイトが振り返ると。すでに戦いは終わりを告げていた。
先住魔法の込められたヨルムンガントたちは同じく先住魔法を...
ルイズとタバサの許にサイトは指輪をもって戻ってきた。
「アンドバリの指輪・・・」
タバサとルイズは口をそろえた。サイトはしゃがんでその指輪...
”ガンダールヴ。感謝スル。”精霊の声がした。
115 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
”ガンダールヴヨ、オマエニワタスモノガアル”精霊はそう言葉...
その先にはきらりと輝くものがあった。取り上げてみると鴇色...
”ソノ指輪は《ミョルニル》トイウ。左ノ手、四ノ指ニ嵌メヨ。...
奇蹟ガオコレバ、ソノ誓イハ永遠ノモノトナル---タダシ、誓イ...
精霊はそういい残して湖の奥へ消えていった。
「四の指ってなんだ?」
サイトは首をかしげた。
「内側の指から数えて4番目」
タバサが薬指を指差してくれた。
それって婚約指輪ってことなんじゃ・・・サイトはうろたえつつ、...
サイトの指輪を桃髪と青髪の二人の女の子は黙って見つめてい...
「さ、さて、この瓦礫の山どーすんだ。女王様に伝えて回収し...
サイトは指輪に触れられないようにルイズに話を振った。
「そ、そうね。伝えるべきだわ。これも成果だわ。そうだわ」
どことなく落ち着きのないルイズはポケットから紙とペンを取...
よろしくね。ルイズはフクロウの頭をなでながら書状を渡す。...
それじゃ、戻ろうか。サイトは二人に声をかけた。タバサは首...
ところが、サイトのご主人さまは黙ったまんまであった。
「ルイズ、どした」
サイトはうつむいたルイズの顔を覗き込む。
「ね、ねぇ、サイト。あんたわたしが助けに来てなかったら、...
ウッ。ルイズは急に顔を上げたのでサイトの鼻っ面にルイズの...
サイトに代わってタバサは表情を変えずに言葉を返す。
「サイトを連れ出したのは、私。この湖で誓いを立てるために...
「ちちち誓いですってぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜...
ゴゴゴゴとルイズの背後から怒気が沸き立つ。
「そう。誓い。私はサイトに心身を捧げることを誓った」
タバサはルイズを見据える。
「きぃぃぃぃっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ルイズは言葉にならない奇声を発していた。
「ま、まてタバサ。誤解を受けるぞ。俺が危ないときに護って...
両手で鼻を押さえつつサイトは立ち上がった。しかしその時を...
っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!サイトの声にならない悲鳴が...
瓦礫の向こうでサイトに叩き切られたミョズがいた。
ところが、その姿がミョズから人形《スキルニル》に変わって...
”ゼロの使い魔が魔法を使えるとは・・・想定外だった・・・指輪は奪...
ミョズの主の声が彼女の頭に直接響いた。
彼女の表情は先ほどと一変し恋する乙女となっていた。
”そんな。もったいのうございます。いますぐジョゼフさまのも...
そういってミョズは森深くへと姿を消した。
終了行:
174 名前: サイトが魔法を使えたら(1/3) [sage] 投稿日: 20...
サイトは、図書館に呼び出された。
ルイズとコルベールの火の魔法の授業中、後ろからタバサに誘...
タバサをガリアから救出して以来、サイトはタバサに話しかけ...
なんでこんなとこに・・・サイトが首をかしげていると、巨大な本...
レビテーションで降りてきた。
「来た。」
タバサは、そう言うと、一冊の本をサイトに手渡してきた。
「これ、読んで。」
何の本かしら・・・とサイトはタイトルを見ると、
系統魔法の基本の手引き。と書いてあるようだ。
「タバサ、俺魔法の本なんて読んでもわかんないぞ。第一使い...
魔法の勉強はルイズの仕事だろが」
すこしタバサは眉をひそめた。
「使い魔かどうかは関係ない。ルイズは系統魔法は使えない。
だから、あなたが魔法使えたら助かるはず・・・・・・それにあなた...
危険な目にあったときにわたしがいなかったとしても安心。」
「そんなもんなのかな・・・でもさ、ホントにこの世界の人間じゃ...
魔法なんかできんのか?」
この世界で、シュヴァリエとなったとはいえ元平民で、さらに...
異世界から来たふつーの高校生なのである。いくらタバサにで...
言われたとしても、サイトは全くできるようには思えてこない。
「ガンダールヴ。」
「そりゃこの世界じゃ、伝説の使い魔かもしれないよ。だけど
それだけだ。」
「違う、ガンダールヴは魔法使いこなせる。これも伝説のひと...
タバサはサイトをまっすぐ見つめてそう言った。
175 名前: サイトが魔法を使えたら(2/3) [sage] 投稿日: 20...
ほんとかよ。俺に魔法の素質があると、タバサは言っているの...
「大丈夫、ちゃんと教える。だから、読んで」
ぐいっとタバサは、その魔法の本をサイトに突き出した。
そして、サイトに顔を近づけてさらに言った。
「読んで」
近くでみると、なるほどルイズと違う気品を漂わせるタバサに
サイトは頬を赤らめた。
タバサ意外とかわいいじゃないか・・・
「わ、わかった、読む、読んでみるよ。」
ちょっとどきまぎしながらサイトは本を受け取ったのである。
「じゃ、教える。系統魔法には、火・水・土・風、そして虚無...
日も暮れかかった頃、ルイズはサイトを探していた。
昼過ぎのコルベールの授業のあとから姿が見えないのだ。
どこいっちゃったのよ。あのバカ使い魔・・・ひとりにしちゃやだ...
ひとりにしないって言ったのに。う〜っとルイズは唇を噛んだ。
この季節の日暮れ時は、何か物悲しいものがあるのだ。
ルイズは、こんな時間が苦手だった。
サイトがアルビオンの森で消息を絶って、ひとりぼっちになっ...
思い出してしまうからである。
「サイトぉ・・・」
ルイズは、ちょっと泣きそうな声でつぶやいていた。
176 名前: サイトが魔法を使えたら(3/3) [sage] 投稿日: 20...
どのくらい時間がたったんだ。もう図書館の外は黄昏時を迎え...
「---今日は、ここまで。」
タバサ先生の初めての授業がようやく終わった。
もちろん見るも聞くも初めての経験だったが、なんとなくだが...
な気がしてきた。これもタバサの教え方がうまいからだとおも...
「タバサ、いろいろありがとな。俺がんばってみるよ」
「ん・・・」
珍しく、タバサがほほえんだ。
なんだかサイトはその微笑に照れてしまった。
そろそろ図書館の閉館時間も迫ってきていたので、サイトとタ...
図書館の出口へと向かった。
図書館から出て、エントランスの階段を降りようとしたとき、
桃色がかったブロンズ髪の後姿が見えた。
「ル、ルイズ・・・どうしたんだ、おまえこんなとこで・・・」
サイトは慌ててルイズへと駆け寄っていった。
そのサイトの後姿をタバサは少しつまらなそうな表情で見つめ...
228 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 20...
ルイズはとてつもなくせつなくなってしまった。
いない、サイトがいない-----
またいなくなっちゃった。また夢の中でしか会えないの?
そんなのやだ。ぜったいにやだ。
バカで、胸のおっきな子にすぐに鼻の下伸ばしちゃう
どーしよーもないエロ犬。だけど、そんなんだけど、
わたしの側からいなくなるのはさみしいの。せつないの。
どうしてせつなくなるのかは、自分の心の奥底では、わかって...
だけど、やっぱりプライドが・・・ううん。ほんとは違うの。
ほんとのキモチを表に出しちゃうと・・・サイトが帰れなくなっち...
だから我慢するの。
でももー暗いし冷えてきちゃったし、もーだめ、探しつかれち...
「どこにいるのよ。バカ・・・サイトのバカ」
ちょこんとルイズは、階段に座り込んだ。
そこは、図書館の階段であった。
ルイズは肌寒いので、図書館の中に入りたかったが、タイミン...
悪く、もうすぐ閉館の時刻。しょんぼりと階段に座ったのだ。
図書館から帰る生徒たちがちらほらと階段を降りてきた。
「ル、ルイズ・・・どうしたんだ、おまえこんなとこで・・・」
ふいに捜し求めていた使い魔の声がした。
ルイズはぴくりと体を震わせた。
229 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 20...
「どこいたのよ。バカ。わたしがどんだけ探したかわかってん...
「ご、ごめんよ。タバサにちょっと教えてもらうことがあって...
「あによ。そんなのわたしが教えたげるわ。なんでタバサなの...
ルイズの怒りのボルテージが上がってきた。
この犬。こともあろうに小さいタバサにも手を伸ばしてきたか。
このわたしの特権をおびかやす存在。タバサ。
なによ、わたしのほうがかわいいにきまってるんだから。
すると二人の背後からぼそりとタバサがつぶやいた。
「魔法。教えてた」
「まま魔法ですって〜」
ルイズはきゅっと唇をかんだ。
「魔法ならわたしもできるんだからっ、わたしに聞きなさいよ」
「あなたは伝説はできても、系統魔法はできない」
タバサはルイズを見据えて言い放った。
「---な、なんですってぇ、ゆゆ許さないんだから」
ルイズは今にも虚無(エクスプロージョン)を爆発させそうな勢...
「あなたはサイトがなぜ魔法をやろうとしているかわかってな...
一歩、タバサはルイズに近づいていった。
「わ、わかるわけないでしょー。貴族になってさらにメイジに...
これ以上もてるつもりなの!」
ぶんぶんサイトは首を振った。
「わかってない。」
「サイト、あなたを護るため」
うっとルイズは後ずさった。
「そ、そんなの当然じゃない。こいつはわたしの使い魔なんだ...
ご主人さまを護るの当然だもん」
「本心?」
タバサは一言ルイズに投げかけた。
「ほ、ほ本当だもん。うそじゃないもん」
ルイズはこれ以上言い返せない。
「わたしには言葉と想いのベクトルが反対なようにみえる。
あなたの言葉と想いは裏腹---」
見透かしたようなタバサの言葉にだんだんルイズの旗色が悪く...
「あなたはサイトをわかっていない」
タバサは止めの一言をルイズに放った。
284 名前: サイトが魔法を使えたら(1/5) [sage] 投稿日: 20...
一瞬目の前が真っ白になった。
「な、わたしがサイトのことわかってないですって・・・」
わなわなとルイズは怒りに震えた。
「そう。わかっていない」
タバサはルイズをしかと見据えて言い放つ。
「なななんであんたなんかに言われなきゃいけないのよ
タバサにわたしの使い魔の何がわかるとゆうのよっ」
「あなたこそ、都合が悪くなるとすぐに”使い魔”扱いする。
あなたはサイトに隠していることがある。それはサイトにとっ...
あなたにとっても大切なコトバなはず。どうして言わないのか
わたしには理解できない」
サイトはタバサが何を言っているのか全く分かっていなかった。
ルイズはタバサが何を言いたいのかはすぐに分かった。
でも言えない。いま言ってはならないのだ。
タバサはサイトに向きなおしてこう言った。
「わたしなら言える。わたしはサイトのことが---」
「やめてぇッ!!!!!!それ以上、言っちゃダメ。ダメなのよ。
タバサやめて。おねがい、おねがいだから---」
今にも泣き出しそうなルイズが絶叫した。
タバサはルイズを一瞥した。
「なぜわたしがサイトへ気持ちを打ち明けたらいけないの?
どうして?サイトはあなただけのモノじゃない」
三人の周りの空気が凍りついた。
再びタバサはサイトに向いて告げた。
「わたしはサイトのことが好き」
うわぁぁぁ・・・ルイズはその場で泣き崩れた。
285 名前: サイトが魔法を使えたら(2/5) [sage] 投稿日: 20...
ルイズは泣き崩れてしまった。
タバサはルイズを見据えたままだ。
サイトはルイズとタバサを交互にみた。
どうしたらいいんだ。
タバサが何を言ったのかすぐには飲み込めなかった。
たしかに好きと言ったよな。俺に?なんで?
いや、今はそんなことで混乱してる暇はない。
ルイズをなんとか慰めてやらないと・・・
「ルイズ、なぁルイズ。泣くな。な、泣くなよ---」
そんなサイトを見てタバサは一瞬眉をゆがませた。
しかし、またいつもの感情の消えた表情に戻った。
「また、図書館で。待ってる」
そういい残すとタバサはサイトたちから去っていた。
ルイズはまだ泣いていた。
「ルイズ。ごめん。だまってタバサと会って、ごめんよ」
サイトはだんだん切なくなっていったが、ルイズをなだめ続け...
「うっ、うぇ、ぶぁか、サイトのバカぁ・・・」
ポスポスポスと弱弱しくサイトの胸をたたいた。
「バカ、バカ、バカバカ・・・サイトのバカ・・・」
ポスポスポスポス---ルイズに叩かれながらもサイトは
ルイズの頭をやさしく抱えて胸に埋めるように抱き寄せた。
286 名前: サイトが魔法を使えたら(3/5) [sage] 投稿日: 20...
「・・・・ごめん。ごめんな・・・・」
「バカ、わたしの気持ちもわかんないくせに・・・
タバサと会っちゃうなんて・・・・バカバカ・・・」
「・・・・」
サイトは無言でルイズを抱いたまま、頭をなでてなぐさめた。
「・・・魔法の勉強はしてもいいわ・・・でも、タバサとはダ...
ダメなんだから・・・・・」
とめどなく流れる涙をサイトはそっと指でぬぐってやり、ルイ...
見つめた。
「おまえを護るため、俺は魔法をおぼえるよ。タバサはただの...
俺が好きなのは・・・・・ルイズ。おまえ一人なんだ」
「信じてくれ。ルイズ。」
ルイズは涙を自分でくしくしぬぐい、じっとサイトを見つめて...
「ほんとに?わたしのこと。好き?」
「ああ、好きだ」
「ほんとに、ほんと?好き?」
「ほんとにほんとだよ」
ルイズは少し頬を赤らめると眉を寄せて言った。
「もしタバサと何かあったら、コロスわよ」
サイトはやれやれといった表情でルイズに告げた。
「わかった。約束する。タバサには何もしない」
「口だけじゃ信じらんないもん・・・・
誓いの・・・・キスして。してくんなきゃ信じてあげないんだ...
サイトはやさしく微笑んだ。
わかったよ。かわいい俺のご主人さま---
二つの月に見守られる中、二人は誓いのキスを交わすのだった。
287 名前: サイトが魔法を使えたら(4/5) [sage] 投稿日: 20...
二人を照らす二つの月のそばで風竜をかる青髪の少女がいた。
サイトとルイズの元を去ってから使い魔である風竜シルフィー...
一気に学院の空高く舞い上がると図書館のあたりで旋回させた。
まだ、あの二人の姿がある。
月明かりなのではっきりとは見えない。しかし柔らかいその光...
存在を示していた。
どうやらまだなだめているようだった。
タバサは無意識のうちに唇をかみしめていた。
そして、胸の奥から沸き立ってくる魔力とは違う、何かに戸惑...
「きゅいきゅい、おねーさま。どうしたの?」
いつもの調子でシルフィードは聞いた。
「---わからない。なんだか胸の奥がもやもやする」
「いつもたくさんの本を読んでいるのに、おねーさまにも分か...
その言葉にタバサの右の眉がきっ、と引きつった。
「本には感情を沸き立たせることはあっても、感情そのものに...
「きゅいきゅい、おねーさま。たぶんそれジェラシーなのねん」
「嫉妬(ジェラシー)---」
タバサは目をきゅっとつぶって、自分の胸のあたりを左手でぎ...
288 名前: サイトが魔法を使えたら(5/5) [sage] 投稿日: 20...
「---誰に嫉妬してるのだろう」
ぼそりと胸からあふれた言葉がこぼれおちた。
「たーぶーんー。ルイズなのね、のね」
シルフィードが主人の心を見透かすように言葉を投げかけた。
ルイズ。我侭で傲慢なサイトの主人。その使い魔に使い魔以上...
を持っているのに、使い魔本人には真逆の言葉を突き立ててい...
「なぜ---」
そうつぶやくと目を開き、眼下にある嫉妬の対象を見下ろした。
二つの影が寄り添うように重なっていた。
タバサは重なり合う影に目がけて魔法ーウィンディ・アイシク...
このまま壊れてしまえばいい--しかし、その影の一つは先刻想...
「だめ」
風竜を急降下させ、その勢いにエア・ハンマーを乗せた。
パァァァーーーーン
氷の矢は瞬く間に粉々になって闇へと消えていった。
しかし、タバサの中には嫉妬と言う名の氷の矢が何本もつき刺...
441 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 20...
ルイズのお許しをもらったサイトは、午後の数時間をタバサと...
なった。もちろんご主人さまの命令(いいつけ)どおり、魔法...
ガンダールヴの力の助けもあってかサイトの理解力はタバサの...
系統魔法の基本の手引きは3日足らずで理解してしまったのであ...
今は初中級者向けの系統魔法の教科書を使って勉強に励んでい...
タバサは毎日必ずサイトとふたりきりになれることに喜びを感...
「タバサ、そろそろ教科書ばっか読んでるもの疲れてきたんだ...
使えなかったら意味がないだろ?」
タバサはちょっと困ったように答えた
「メイジとしてルーンを紡ぐためにはその媒介とするものが必...
サイトは首をひねった。
「媒介?」
「つまり杖のこと---」
「あー杖のことなのか、俺はそんなのもってねーな。デルフは...
「オレは魔法を吸収できても吐き出せねえよ。もちろん杖じゃ...
唐突にデルフリンガーが二人の話に割り込んできた。
「しかしだ。相棒の前のオレの相棒は右手にある物を持ってそ...
ルーンを唱えてたな。今思い出した!」
「なんだよ、そのある物ってのは」
サイトはいぶかしげにデルフリンガーに聞いた。
「それはオレに聞くよか、そこの青髪のおちびちゃんに聞いた...
「え?!タバサに!」
目を見開いてサイトはタバサのほうに視線を向けた。
442 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 20...
不意にサイトと目が合ったタバサは頬を染めた。想い人に見つ...
こんなに心躍るものなのだろうか、この高揚感にすこし戸惑い...
「い、イーヴァルディが作ったとされるインテリジェンス・ス...
名は、《グングニル》。」
「ほほー、おちびさん、ヤツの名前までご存知とは恐れ入りや...
デルフはタバサに感心していた。タバサは今まで人から(デル...
ことがなかったのでちょっと照れくさくなってうつむいてしま...
「なあ、相棒オレは、相棒の左腕なんだよ。つーことはだな、...
そー思ったことねえかい」
「う〜ん、正直デルフを扱うだけで一杯一杯だったからな。考...
「ありゃ、そなの・・・でもよ、グングニルってヤツがいるのは確...
まぁ、ちょいと変わった性格してんだけどな笑。これも今思い...
「ところでタバサ、そのグングニルってのは今どこにあるんだ...
サイトは素朴質問をタバサに投げかけた。
タバサは少し微笑み、じっとサイトを見つめてこの槍のありか...
「ここ。この魔法学院にあるの」
456 名前: サイトが魔法を使えたら(1/3) [sage] 投稿日: 20...
神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と...
デルフから先代ガンダールヴが右手に槍を持っていたことを聞...
その名前がグングニルであるということをタバサから聞いた。
なんと、その槍はこの魔法学院のどこかにあるらしい。
持ち前の旺盛な好奇心でサイトはワクワクしていた。
「じゃあさ、早速その槍を探したいなっ、な、タバサ。学院の...
タバサはたしなめるように言った。
「あせっちゃ駄目。在り処のめぼしはついてるから」
ちょっとサイトはすね気味に口を尖らせた。
「ちぇー。ケチんなくってもいいじゃんよ」
タバサはなぜかそんなサイトがかわいいと思ってしまう。
そしてサイトにやさしく諭した。
「駄目。まだ外は明るすぎる。今夜、夜が更けた頃、探しに行...
タバサのやさしい口調にサイトは素直に反応した。
「そか、暗くないとだめか。分かった。タバサの言う通りにす...
「ん。じゃぁ、今夜、本塔入口で待つ」
「了解、タバサ隊長!」
すこしにこりと笑ったタバサにサイトはどきっとした。
やっぱりかわいいよ。タバサ。
457 名前: サイトが魔法を使えたら(2/3) [sage] 投稿日: 20...
ルイズの部屋に戻ったサイトは夜が来るのを待った。
隣ですーすーとルイズの寝息が聞こえるなか、
サイトはそっと部屋から出て行った。
魔法学院本塔入口---
タバサは既に待合せ場所で待っていた。
サイトとふたりで待合せ。なんだがどきどきしてしまう。
夜という時間もこのどきどき感を高めているにちがいない。
そわそわしながらサイトがくるのを待った。
もしかしたらあのルイズに止められてしまっているかもしれな...
いやな予感がする---タバサはきゅっと唇をかんだ。
「おーい、タバサ。お待たせ。」
サイトは走ってきたらしい。タバサはいやな予感がはずれてほ...
458 名前: サイトが魔法を使えたら(3/3) [sage] 投稿日: 20...
「早く行こうぜ」
「ん。」
タバサは塔の入口の鍵をアンロックで開錠した。
「あのさタバサ、どこに行くんだよ」
サイトは小声でタバサの耳元で囁いた。
サイトの息が耳にかかったのでタバサはびくんと身体が跳ねた。
「・・・・耳。くすぐったい」
「おわっ、ごごめん。ちょっと近かったか」
サイトに少し距離をおかれてしまった。
別にいやなわけではなかったが、なんか恥ずかしいのだった。
気を取り直してタバサは答えた。
「5階の宝物庫に行く」
462 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
魔法学院本塔5階。魔法を使えばすぐに一飛びで行ける距離だ。
しかし、まだメイジではないサイトと一緒に走っていくしかな...
歩けばいいのにサイトは走り出してしまったのである。
身体が小さいタバサの体力は他の生徒と比べるとやはり少ない。
サイトは男の子なのでなおさら距離は開く一方だった。
だんだん息が続かなくなってきてタバサは走るのをやめてしま...
はぁ、はぁ、はぁ---いっそのことフライを使ってしまおうか。...
矢先、先走っていたサイトがいつの間にかタバサのところに引...
「タバサごめん、おもっきりダッシュしてた。手を貸すよ。一...
サイトはそういうとタバサの小さな右手を握ってきた。
サイトの予想外な行動にタバサは顔を赤くした。
「え・・・・あ、ありがと」
力強くサイトに手を引かれながら宝物庫の前までやって来た。
二人の目の前には巨大な鉄の扉が聳え立っていた。
「で、でかい---」
その巨大さにサイトは息を飲んだ。
しかもその鉄の扉にはこれまた頑丈そうな錠前が付いていた。
「・・・」
タバサは無言で鉄の扉を見上げていた。
「ど、どうすんだ。どうやって入るんだ」
サイトはあせってタバサに聞いた。
「・・・だいじょうぶ。」
そう一言タバサは呟くとサイトの目の前にきらりと光る物を突...
「か、鍵?!どうやって持ってきたんだよ--」
サイトがびっくりしてタバサへ問いかけた。
タバサは悪戯っぽく笑って、ヒミツ。と言った。
463 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
ガチャンーーータバサがどこから持ってきた鍵で宝物庫の巨大...
目の前に広がる秘蔵ともいうべきお宝の数々にサイトは圧倒さ...
「す、すっげーよ。まるで博物館じゃねーか!!!」
興奮するサイトのパーカをタバサはちょっとつまんでくいくい...
「こっち、来て」
どうやら地球にある博物館と同じようにある程度分類された状...
ようである。
物珍しさにキョロキョロしまくっているサイトを横目でちらち...
場所へと歩いていった。
「たぶん、ここらへん」
二人は剣や槍などの武器を保管している場所にたどりついた。
「にしてもずい分あるなー。探すにゃ骨が折れそうだな〜」
言葉とは裏腹にサイトの目はキラキラと輝いている。
そんなサイトをタバサは微笑ましく見つめた。
「デルフリンガー」
タバサがサイトの剣の名を呼んだ。
「ん〜。なんだぁお呼びかい。おちびさん---こりゃまた懐かし...
する場所にきたもんだ。おでれーた!」
「お願い。槍を探してほしいの」
「ヤツを見つけりゃいいんだな。分かったよ。おちびさん。
じゃぁ、相棒。悪いだが俺を持ってくんねぇかな」
デルフはサイトに言った。
わかった。そう言ってサイトは左手でデルフを握った。
左手のルーンが光り輝いた。
すると宝物庫のある一角が光を放ち始めた。
「相棒、おちびさん。あの光がヤツの居場所さ−−−」
なぜか渋い声色でデルフが言った。
二人は言われるがままに光の下へと急いだ。
464 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
タバサとサイトは光を放つ場所にきた。
2メイル半はある美しい木目が目立つ長い柄。そしてその先には...
鋭利な刃が付いていた。その槍の刃には何か文字が刻まれてお...
「よう、ひさしぶりじゃねか、グング。いつまで寝てんだよ。...
デルフは、懐かしい友人に冗談を言うように槍に話しかけた。
すると、槍がしゃべりはじめた。
「っるさいわねぇ〜ダレなのよぉ。折角人が気持ちよく寝てた...
その声を聞いてサイトは一瞬で凍りついた。
タバサは、伝説の槍を目の当たりにしてただただ凝視していた。
(これが、伝説のインテリジェンス・スピアーーグングニル・...
「おめぇ槍だし。いーから目ー覚ませ。久々に使い手が現れた...
デルフは急かすように言った。
「なにさ、使い手?えっわたしたちを使える人間がまた出てきた...
あぁらぁ、おにぃ〜さぁん、かわいぃじゃないよぉ。あたしの...
お名前、おしえて〜ん」
サイトの全身からいやーな汗が大量に噴きだした。
デルフはサイトの雰囲気を察して、かわりに槍に話しかけた。
「相棒やっぱ固まっちまったか。今回の相棒名前はなーーー」
「あんたにきてないわよぉ。この子に直接聞いてるんだから、...
「へーへー、ってことで相棒そろそろ口聞いてやってくれ」
「お・な・ま・え・は?」
「ひひひひひヒラガ・さささサイトです。」
サイトはてんぱってしまった。
またかよ。またアレか。この世界はスカロンみたいな人間だけ...
そう、この槍オネエ言葉でしゃべるのだ。
465 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
「素敵なお名前じゃないのぉ。サイトくんねぇ。よろしくぅ。...
あたしとしちゃ、グングニールって呼んでほしいわけ。あたし...
聞いてくんなきゃ、ゆーこときいたげないわよぉ。フフフ・・・」
この槍の言うこと聞いておかないと間違いなく寝込みを襲われ...
「わ、わかったよ。グングニール。よ、よろしくな」
「ぁあん。いー声じゃなぁい。ちゃーみんぐだわぁん。貴方の...
聞いてあげちゃうわよぉ。早速だけど、あたしに触れてみてぇ...
サイトは言われるがままグングニールに触れた。
するとグングニール全体が黄金色に光り輝いた。
「サイトくーん。あたしってば今はこんな図体だけどさぁ、と...
変身できちゃうのよぉ。今からやったげるから、しっかり受け...
輝きが閃光となり宝物庫全体を光で包み込んだ−−そしてサイト...
に杖くらいのかわいらしいサイズになったグングニールがいた。
「いやぁん、しっかりうけとめてもらっちゃたわ。感激ぃ」
激しい吐き気に襲われながらも必死になってサイトは小さくな...
しっかり握った。
262 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 20...
「・・・杖・・・」
タバサは変化したグングニールを見てひとりごちた。
確かこの前、タバサは魔法を使うには〔媒介〕が必要と言って...
このグングニールを得た今、魔法を使えるということなのだろ...
「な、なぁ、タバサ。俺、これで魔法が使えるようになるのか...
サイトはタバサに聞かずにはいれなかった。
「まだ、使うことはできない。」
「なんでだよ?」
「杖との契約が必要。」
「け、けいやく?!」
「−−そうさ、相棒。メイジとやらが魔法を使うにはまず、その...
となる杖ーー相棒の場合にゃグングだな。そいつと契約が必要...
デルフがタバサの言葉を継いだ。
「でも、どーやって契約すりゃいいんだよ?−−ま、まさかーー」
サイトにいやな予感が浮かびあがった。
ルイズが俺と使い魔の契約をしたときには・・・き、キスだったよ...
まさか今回の〔契約〕も・・・
ウェッ。危険な妄想に胃からナニかが逆流してくるような感覚...
「詠唱を唱えるのーー我が名はサイト・シュヴァリエ・ド・ヒ...
契約せんーー」
「やって」
タバサはサイトに促した。
「お、おう」
いい意味で予想を裏切られ、少しほっとして、サイトはうなず...
「ほんとは、あたししゃキスのほーがいいんだけどねぇ」
グングニールは心底残念そうにつぶやいた。
お、おうぇ。再びサイトは吐き気に襲われつつも、契約の詠唱...
「集中して。あなたならきっとできるーー」
タバサの励ましを受け、サイトはにこりと微笑み返した。
263 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 20...
サイトはグングニールを右手でしっかりと握りしめた。
「−−−我が名はーーサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。彼の杖...
左手のガンダールヴのルーンとグングニールの刃のルーンが共...
身体の中から『何か』が湧水のように湧き立つ感じがするーー...
サイトは今までに感じたことのない感覚に戸惑いながらも理解...
「相棒、これでメイジの扉が開かれたってことだな」
「だーりん。あたしも助けてあげるわ。よろしくねぇ」
「そ、そろそろ戻ろうか」
おしゃべり武器たちの言葉をよそにサイトはタバサに声をかけ...
「そうね」
タバサは短く答えた。しかし次に思わぬ言葉を継いだのだった。
「窓から帰る。あなたも一緒。魔法使う」
「いきなり!?そんな、む、無理じゃーー」
焦って声が震えるサイト。
「できる。できなきゃだめ。私を魔法で護ってみせて」
そしてタバサはいきなり窓から飛び出したーーー
550 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
わたし魔法は使わない。タバサは杖を握る右手から力を抜いた。
杖は手からこぼれ落ち、もはや手の届かないことろまで離れて...
きゅいきゅいーーと、上空で待機していたシルフィードが急降...
「おねーさま、正気?!このままだと死んでしまうのね。わた...
そういってタバサに近づいてきた。
「−−だめ。あなたは戻ってて。これは試練。わたしの命はサイ...
いま、サイトが真にメイジの資質に足るかどうか確かめるとき...
途中で言葉を紡ぐのをやめた。シルフィードは納得できないと...
羽ばたいていった。
あのとき。サイトに告白したとき。サイトはわたしの言葉を理...
そこに泣き崩れたルイズがいたから。サイトの一番の想い人。...
だけど、今ルイズはいない。もし叶うなら、また助けてほしい...
もらえたら−−。たとえ甘い気持ちなどサイトにはないにしても...
タバサの身体は加速をつけて地面との距離を縮めていった−−
551 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
「タバサっ」
サイトは窓から身を乗り出し叫んだ。
「相棒、試練だねぇ。やるしかないねぇ」
デルフがため息混じりに話しかけた。
「だぁーりん。いえ、サイト。一緒にがんばりましょ。今は四...
グングニールがせかしてきた。
「そ、そうだな。で、でもどんな魔法使えっていうだよ−−」
正直パニックに近い精神状態になっていた。
「そーねぇ。あのおちびちゃんが空中で浮くとき良く使ってる...
グングニールがヒントをくれた。たしかシルフィードから落っ...
「タバサ、今助ける!!−−」
サイトはタバサへ向けグングニールを振り下ろした。
身体の中で力の流れを感じた。うねり、うずまき、右手に収斂...
「レビレーション!」
自然とその魔法の名前を口から発した。
来た。タバサは自分に魔法がかけられていくのが分かった。
サイトの放ったやさしく暖かい風の魔法がふわりとタバサの全...
タバサは瞳を閉じ、サイトの風にその身を委ねるのだった。
552 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
ふわり、とタバサは地上に降りた。
タバサはゆっくり目蓋をあけ、双月に照らし出される本塔を見...
サイトが風の魔法を使って地上へと舞い降りようとしている。
「タバサ、怪我ないか」
ふわり、とサイトが地上に降りつつタバサに話しかけた。
「ん。大丈夫。やさしい風だった」
「はぁ、よかったぁ。魔法がかかったかどうか心配だったんだ」
緊張していたのか、サイトの額には汗が光っていた。
そんなサイトをみて、にこりとタバサは微笑むと再び空を見やり
口笛を吹いたのだった。
きゅいきゅいーー風竜シルフィードが主人の呼びかけで地上に
降りてきた。
「おねーさま、怪我ないのね。だいじょーぶなのね」
タバサの使い魔は、主人を気遣う言葉をかけた。
つぎにサイトのほうに顔をむけて言った。
「おねーさまを助けてくれてありがとなのね」
サイトはシルフィの首をなでながら、心配かけたな、と語りか...
553 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
タバサはシルフィの背に乗ると、サイトも一緒に乗るように促...
行き先と尋ねると、タバサは学院とは異なる場所を告げたのだ...
「ラグトリアン湖まで一緒に来て」
「何しにいくんだ?」
「秘密。」
タバサは短く言葉を返すと、トリスティンの夜空めがけてシル...
ひんやりとした風が二人のほほをなぜていく。
夜の空中散歩もいいもんだな。とひとりごちるサイトだった。...
月明かりに照らされた青髪の少女。気高さを宿した碧眼。そし...
竜の背にゆられる二人は黙ったまま。湖畔へと向かって行った。
30 名前: サイトが魔法を使えたら(1/2) [sage] 投稿日: 200...
月光に映えるラグドリアン湖の水面(みなも)は、宝石のよう...
「きれいだな・・・」
サイトがつぶやいた。
シルフィは、徐々に高度を下げていき、湖畔の一角へと降り立...
タバサとサイトの二人はシルフィの背中から降りると波打ち際...
周りは音が夜の闇に吸い込まれてしまったかのように静かだ。
サイトはあの時のことを思い出していた。そう、ルイズの惚れ...
会いに行ったときのことを---
「そういや、ここでおまえとやり合ったことあったな」
懐かしいよな。横にいるタバサに語りかけた。
タバサはこくりと頷き、あのときは痛くしてごめんなさい。と...
「あやまんなくていい、タバサにも守るもんあったんだからさ...
もらったし、気にすんな。」
サイトは真剣な表情だった。
ケガ---そういえばガリアで幽閉される前、サイトを抹殺しよう...
状況ではサイトがわたしに止めを刺せたはず。だのにわざとは...
「お腹のケガ、大丈夫?」
心配になってサイトに聞いてしまう。
「腹のケガ?ああ、アレ?キズあとは残ってるけどへーき平気」
手を振りながらサイトは答えた。
31 名前: サイトが魔法を使えたら(2/2) [sage] 投稿日: 200...
あんなケガを負わせてしまったわたしをサイトは敵地(ガリア...
わたしのイーヴァルディの勇者---光る左手をもち、剣と槍で戦...
サイトは伝説の使い魔、ガンダールヴ。この二つの伝説はもと...
わたしはどんなときにでもこの勇者のそばにいたい。助けられ...
タバサは真っ直ぐ水の中へと歩みを進めた。膝まで水につかる...
「この湖は、誓いの精霊が棲まう場所。今からあなたに誓いを...
サイトにそう告げた後、右手を胸にあて、碧眼の瞳を閉じた。
さらに一呼吸おいてから言葉を紡ぎだした。
「わが名は、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。水の精霊...
「わたしはこの先、死が二人を分かつまで、サイト・シュヴァ...
気のせいだろうか、サイトには一瞬水面が震えたようにみえた。
誓いの言葉を言い終わったタバサは瞳を開き、サイトへ手を差...
293 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
わたしはこの先、死が二人を分かつまで、サイト・シュヴァリ...
タバサは俺に誓いを立てた。前にも時と場合を選ばずに俺を助...
身も心もあなたに捧げるって言葉だけだったら、大胆すぎる告...
瞳を開いたタバサにじっと見つめられて思わず目そらししてし...
タバサが俺に手を伸ばしてきた。こっちに来いってことなんだ...
サイトは、なぜか高鳴る鼓動を抑えつつざぶざぶと湖に入って...
「ど、どしたタバサ」
おそるおそるサイトは尋ねた。
するとタバサは、おもむろにかけていた眼鏡をはずした。
タバサという呼び名は母にもらった大切な人形の名前だ。彼女...
彼女は思った--ここでは、いや、この瞬間だけでいい、サイト...
「シャルロット、でいい」
「へっ!?」
いきなりの申し出にサイトは面食らった。
「タバサじゃ嫌。いまはシャルロットと呼んで・・・・・・・...
彼女は眼鏡をはずしたまま、サイトを見つめる。
「タバ---いや---しゃ、シャシャシャルロット。」
動揺を隠しきれなかったが彼女に言われるがままに言葉を返す。
眼鏡をはずした少し潤んだ碧い瞳でじかに見つめられている。...
シャルロットと呼んでくれた---心にジンと響くものを感じ、彼...
すでに間近にいる彼を上目遣いで見つめ、ありがと。と消え入...
ここまでの至近距離。あのときの戦い以来だった。いまは誓い...
精霊には大目にみてもらって、もうひとつの希望を言ってみた。
「・・・・・・もうひとつお願いがあるの・・・・・・・め、...
サイトは魔法にかかったように目を閉じる。いや本当に魔法に...
サイトは思った。あの少し潤んだシャルロットの碧眼に。
「これでいいのか?し、シャルロット・・・」
サイトのどきどきは最高潮に達しようとしていた。
「うん」
そう短く彼女は言葉を発すると、右手でサイトの着ているパー...
294 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
双月照らす湖畔で誓いを交わすシャルロット、そしてサイト--
この切なげな静寂が破られた。
「・・・睦まじいところ悪いな--北花壇騎士(シュヴァリエ・ド・...
声のした方に二人は視線を飛ばした。茂みの暗闇から人影が現...
しかし、その声には彼女は聞き覚えがあった。
ミョズニトニルン。声の主の名前をつぶやく、タバサ。
「え?誰だって??」
サイトは舌を噛みそうなその名前を一度では聞き取れなかった。
「ミョズニトニルン。この前ミョルドガントでルイズを踏み潰...
タバサは説明を加えた。
こいつが・・・!?サイトは唇をかみ締めた。タバサはサイトの周...
「虚無の使い魔よ。今日は虚無使いはどうした?まさか一人に...
片側の口角を吊り上げ、不気味な表情を浮かべるミョズニトニ...
「ま、まさかてめぇ--ルイズに何かしやがったのか!!!!」
サイトは身構え相手を見据えて言い放った。
この状況は危険。タバサはシルフィに口笛で合図を送る。する...
ある方角目指して飛び去ってしまった。
「逃げるつもりはない--」
タバサも身構えた。ところが、左手でサイトが制した。
「タバサ。おまえはじっとしてるんだ。ここは俺がなんとかす...
サイトは相手を見据えたまま言った。
「---ほう。このわたしと一戦交える気か。ガンダールヴ。面白...
ミョズニトニルンは被っていたフードを取り去った。
挑発してんのか。やったろうじゃねぇか。サイトは背中のデル...
え?驚いて後ろを振り返ると、なぜかタバサの手にデルフが握...
「た、タバサ?!」
しかし、タバサから返事は無い。何か目が虚ろだ。
「相棒、娘っこはあっちの虚無の使いに操られてるようだねぇ」
デルフは諦めたようにつぶやいた。
しまった!咄嗟の判断でサイトはタバサから飛んで離れ、ミョ...
「アンドバリの指輪!!?」
ミョズニトニルンはタバサに向け、深紫の指輪を向けていた。...
ミョズニトニルンの周りにはいつの間にか沢山の人形が集結し...
295 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
同刻---トリスティン魔法学院。
シルフィはタバサに命じられた場所にたどり着いた。
そしてとある一室の窓を突き破った。
ガシャァーーーーーン!!!!
バカァ・・・そんなにがっついたってぇ・・・あげないんだもん・・・
何か妙な夢をみていたルイズの眠りがとんだ闖入者によって破...
「ぎゃぁぁ〜〜!!!!!なななななななになに!!?なんなの〜」
絶叫とともにルイズは目を覚ざめた。
「たいへんなのねーたいへんなのねー!!!おねーさまがたいへん...
シルフィは寝起きのルイズに捲くし立てた。
「んーなんなのよー。タバサの使い魔じゃないよ。どしたのよ」
かすむ右目を擦りながらシルフィに聞きただした。
「たいへんたいへんたいへん」
翼をバタバタさせながらシルフィは騒いでいる。
「わかんないでしょー。何が大変なのよ」
困ったという表情でルイズは聞き返すのだった。
右目がまだぼやけていた。顔を洗ったほうがいいのかしら---
「おねーさまが、サイトが襲われてるのね〜きゅいきゅい」
はぁ?サイトがなんでよ。不安がルイズの小さな胸に過ぎった。
「はやく、乗るのねのね。急ぐのね〜」
シルフィに急かされるままルイズはその背に跨った。
まだ夜更けの冷たい風がルイズの頬をなでていた。
右目がようやく見えてきた。しかし、見えた景色はシルフィの...
「ちっ、やばいな---デルフとられてんのによ。この数はきびし...
サイトは額から流れる汗を無造作に拭い去った。
「だーりん。あ・た・しを忘れちゃやーよ(ハート)」
インテリジェンス・スピア グングニールが話しかけた。
そうか、コイツもいたんだ。杖状態に変化してから黙りこくっ...
アウトオブ眼中になっていた。
「とりあえず、タバサとアルヴィーに挟まれちゃどうしようも...
後ろからバッサリいかれても辛いし---」
「だーりん。あたし一回元に戻るわ。でもあのデコ女に変身見...
そうね。だーりん、あたしを水ン中に落としてちょーだいな。」
サイトはグングニールを足元に落とした--グングニールは水中...
サイトは、水中のグングニールの柄の末端を左足で踏んづけて...
「らんぼーなんだからぁ。まーよくってよ。この状態でもだー...
でも詠唱は相手に覚られないようにね」
おっけ。サイトは短く応えた。前後に目を配りながら間合いを...
先に仕掛けたのは操られたタバサだった---杖を打ち捨てたと同...
ガキッ!剣と槍が交差する。かなりの強い力に後ずさるサイト...
左手のルーンの輝きが増し、サイトは羽のように軽くなった体...
「タバサ、悪い。少し痛いかも。」
ぐりんと槍を180度回転させ、柄の末端--石突の部分をタバサの...
タバサの表情が一瞬苦悶の色を見せ体をくの字に曲げたまま倒...
一瞬複雑な表情を見せたサイトだったが、槍をもう一度半回転...
「今度はおまえの番だっ!!!!!」
サイトは湖岸を目指し、湖面を蹴り出した。
「わたしのアルヴィーを倒せるかしら--」
不敵な笑みを絶やさずミョズニトニルンは近づいてくるサイト...
”だーりん、そろそろ使っちゃいなさい”---小声でグングニール...
槍の重心を中心に頭上で回転させた。そして、小声で風のマジ...
”エア・ハンマー”----詠唱完了と同時に槍を石突まで滑らせ岸...
槍の穂先のルーンが輝いて魔法は発動した。
ドンッバキバキバキッ!アルヴィーの先頭の一団が次々となぎ...
「!!!---ガンダールヴ。やるではないか。『風圧』でわがアイ...
ヤツは俺が魔法を使っているとは気がついていない--サイトは...
「まだまだぁ!!全部吹き飛ばしてやるっ!!!」
296 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
回転させながらグングニールの穂先をわざと湖水に浸す。
グングニールの回転と同じようなうねりがサイトの身体の中で...
"ウィンディ・アイシクル"--独り言のようにスペルを紡ぐ。
こぉぉぉー無数の氷の矢が湖面ぎりぎりに発現した。このまま...
そこでサイトは別の魔法を氷の矢に向け繰り出した。
小さめの空気の塊に当てられ、氷の矢は粉々に砕ける。しかし...
グングニールの回転速度を上げ、その風圧にさらに魔法を上乗...
"エア・ハンマー"
アルヴィーの先陣をなぎ払った強度で無数の欠片に打ち付けた-...
アルヴィーたちに疾風と氷片が叩きつけられ、次々ズタボロに...
ドクン。ドクン。右目の視界に鼓動が高まっていく。
な、なによこれ。湖?なんであんなにいっぱい人形(アルヴィ...
まるで目の前に存在するかのような光景。
「ねぇ。シルフィ。あんたのご主人さまとあたしのサイトはど...
ちらりとシルフィは横目でルイズを見ていった。
「おねーさまとサイトはラグドリアンの湖なのね」
もしかして---この視界。サイトのなの?
この人形たちを操ってるのはもしかして、ミョズニトニルン?!...
ドックン。ドックン。鼓動がさらに速まる。
「ち、ちょっと、シルフィ。もっと速く飛びなさいよ。あいつ...
ルイズはぺしぺしとシルフィの首根っこあたりを叩いて急かす。
「痛い、痛いのね。わかってるのね。急ぐのね。きゅいきゅい」
シルフィは翼をより大きく羽ばたかせるのだった。
速度があがったせいかルイズの右の耳が激しい耳鳴りに襲われ...
ーーー私は----どうなってるの----朦朧とする意識の中タバサ...
ズキン・・・お腹のあたりに鈍痛が走った。ったい。痛みに身体が...
そうだ。シルフィはどうなっただろう---私何頼んだんだろう。...
やはりまだ身体がいうことをきかないらしい。周りから魔法の...
サイト。大丈夫かな。せっかく誓ったのに何もしてやれない。...
サイト---タバサは弱弱しい笑みを浮かべた---私がいなくても-...
再びタバサの意識が暗転した。
おっし。もうすこしでカタがつく。サイトの心が奮えたった。
そのちょーしよ。だーりん。ぐるぐるとサイトに振り回されな...
もういっちょ。かましとくか-----魔法を唱えようとした刹那、...
やべ。使いすぎたのか---額に手を当てサイトはよろめいた。
ひとまず魔法は温存してグングニールにしなりを利かせ襲い掛...
耳鳴りは続いていたが、眩暈は治まり視界をとりもどせた。と...
540 名前: サイトが魔法を使えたら(1/1) [sage] 投稿日: 20...
空。そして湖。それがサイトの左目に飛び込んできた景色だっ...
ルイズ!?
いつの間にか左の耳から耳鳴りは消え失せている。その耳から...
”サイト?私の声が聞こえるの・・・・?”
「ああ、聞こえる。ばっちり。」
湖。そして湖岸に群れるアルヴィーたち。そして右の耳からサ...
”ルイズ!?”
サイトが見るものだけではなく聞いたものも分かった。まるで...
「サイト?私の声が聞こえるの・・・・?」
”ああ、聞こえる。ばっちり。”
サイトは言葉を続けた。
「おまえもつながったんだな・・・声で分かるぜ。っと。」
目の前に群がる敵を槍捌きとマジックスペルの合わせ技で弾き...
これまで歴戦を戦ってきた彼でも無傷というわけにはいかなか...
「ルイズ、お願いだ。ここに降り立つまでに魔法唱えといてく...
”イサ・ナウシド・ウンジュー・----”
ルイズの心地のよい詠唱がサイトの左耳に入ってくる。
視線の先にいるミョズの背後に巨大な影が現れた。
ヨルムンガント・・・!!!サイトは青ざめた。
”だーりん。ねぇ。だーりんってば。”
グングニールが声をかけた。
なんだよ。どーすりゃいーんだよ。あれ。
”あたしをあれ目がけて投げてちょーだい”
んなことしたら俺お前拾いにいかないといけないんじゃ---俺丸...
”だいじょうぶよぉ。ちゃんと自分で戻ってこれるのよ〜。だか...
巨大な人形がこちらに近づいてくる。
ままよ----意を決したサイトは、グングニールを上段に構え、...
グングニールの穂先とサイトの左手のルーンの輝きが同調する...
いっけーーーーーーーーーー!!!!
ヨルムンガント目がけてグングニールを擲った。
”おまえもつながったんだな・・・声で分かるぜ。っと。”
私とサイトは今つながってるんだ。ルイズの心に温かい火が灯...
”バキン!ドカッ!”
何かがぶつかる音がする。不安な気持ちが溢れだした。
”ルイズ、お願いだ。ここに降り立つまでに魔法唱えといてくれ...
サイトの声が届いた。ルイズは不安を吹き飛ばすかのようにシ...
イサ・ナウシド・ウンジュー・----
アルヴィーにかけられたスペルを解除する”ディスペル”を唱え...
しかし詠唱開始から寸刻のたたないうちにルイズは右目に新た...
即座にスペルを”エクスプロージョン”に切り替える。
”ヨルムンガント!!!”サイトの叫びが飛び込んでくる。絶対に倒...
エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ----
ルイズの中で魔法の力がうねりはじめた。
112 名前: サイトが魔法を使えたら(1/4) [sage] 投稿日: 20...
グングニールは真っ直ぐにヨルムンガントに突き進んでいく。...
ヨルムンガントの頭部と穂先が接した瞬間、無数の紅色のプラ...
バチンッ。破裂音とともにグングニールの穂先が装甲にめり込...
「あ、ありえない---」
予想外な光景にミョズは顔色と言葉を失った。
一方、グングニールを投げてしまった今、サイトは丸腰になっ...
徒手空拳でなんとか致命傷は避けるものの、かなりの手数を喰...
眼前に隊列を組んだ槍ぶすまがサイト目掛けて突き進んできて...
や、ばっ---避けようにももう足が言うことを利かない。
ルイズ・・・ごめん・・・・サイトは目を瞑った。
ズブッ。何かに突き刺さる鈍い音がした----俺、死んだ?!
サイトは、恐る恐る目を開けた。なんとサイトは羊水のような...
ゆらめく視界には槍ぶすまが水球の表面5サントくらい突き刺...
誰かが水魔法でサイトを護ってくれたのだ。背後からかすかな...
”ガンダールヴ----手助ケシヨウ。アノ指輪ヲ我ノモトニ・・・”
声の主はこのラグドリアン湖に棲まう水の精霊であった。
水の精霊・・・。精霊の涙を分けてもらって以来の邂逅であった。
”オマエト約シタ。アノ指輪ヲ我ノ許ニモドスト。”
そうだった。忘れちゃいない。目の前にアンドバリの指輪はあ...
サイトの身体に接する「水」が柔らかいグリーンの光を放ち始...
身体が軽くなってきた。サイトの中で消えかけていた灯が再び...
「一つお願いだ。あそこに倒れているタバサも助けてやってく...
タバサのほうを指して精霊に願いを請うた。
”分カッタ。約束シヨウ---”
サイトを包み込んでいた水の球は消え失せ、今度はタバサが精...
ザンッ。ヨルムンガント1体を打ち破ったグングニールがサイ...
右の手で槍をむずと握り、ずぶりと湖面から引き抜いた。
その刹那。湖の上空から閃光が降り注いだのだった。
ルイズ。ニッと笑ってサイトは自分の周りに防御魔法を展開し...
虚無の爆風にたゆんと水の壁がゆらめいた。
ざざざ。ざざざ。タバサは夢の中にいた。彼女は母の胎内に宿...
小さな身体をさらに小さくして、母の中をたゆたっていた。
”母さま---”
トクン、トクン。小さな身体に生命の拍動が戻ってきた。
突如、その空間に一条の光芒が差し込んできた。タバサはその...
青髪の少女の瞳は開かれた。碧い双眸に再び光が灯る。意識は...
けれど、湖上で魔法を展開している黒髪の少年、上空で風竜の...
タバサの足元にはいつのまにか流れ着いた彼女の杖が漂ってい...
シルフィの背に立ちルイズはエクスプロージョンを眼下の敵勢...
これでおしまいにするんだから。精神力の大半を使い込んだ彼...
サイト。大丈夫かしら。自分の虚無で傷ついていないかと不安...
シルフィの肩越しにサイトの姿を確かめずにはいれない。しか...
魔法使えるようになっちゃったの---ルイズは一瞬目を丸くして...
シルフィはそんなルイズを横目で見やりつつ湖上にふわりと着...
虚無の光が晴れた後、小さな人形たちは無残な姿をさらしてい...
二度、同じ技が通じると思うとは浅薄だな・・・・ミョズは不適な...
彼女の背後から多数の巨大な影がもぞりと蠢いた。
113 名前: サイトが魔法を使えたら(2/4) [sage] 投稿日: 20...
「1体は斃せるようだな、褒めてやるぞ。しかし余興は終わり...
ミョズの言葉が言い終わらないうちミョズの背後から現れたヨ...
タバサは魔法で身軽にかわすが、攻撃はしなかった。体力の回...
そんなルイズの前にサイトは盾になってたちふさがった。
「こうも数が多いとあたしでもつかれちゃうわぁ。あいつも使...
あいつ=デルフリンガーはいまだ湖に突きたれられたままにな...
敵がどうと倒れこむ隙をついて、後ろへ飛びすさりルイズを抱...
なぁ、グング。デルフ握るまでに変身しといてくれ。サイトの...
「待ちくたびれたぜ〜相棒。錆びちまうかとおもった」デルフ...
サイトは抱えていたルイズを湖面に降ろしてあげた。そして剣...
サイトはその視線の方向に目を向ける。
すこし離れているタバサの口元が動いていた。するとサイトの...
水の系統魔法バブルであった。
”このヨルムンガントには系統も虚無も通じない----たぶん、先...
先住には先住ってことか。サイトはひとりごちる。この数では...
「精霊さんよ。もう一度”分けて”くれないかな」
サイトは、湖面に向かって声をかける。
”-------------使ウガヨイ”
サイトには足元の水の雰囲気が変化したのが分かった。
精霊の了解を得たサイトは、タバサへむけ先ほど彼女がやった...
視線が合ったルイズはあわてて目をついとそらした。
114 名前: サイトが魔法を使えたら(3/4) [sage] 投稿日: 20...
「まほう。つかえるよーになっちゃたんだ・・・・」
言葉の中に悔しさが混じっているのが分かった。
「言ったろ、お前を護りたい----だからがんばったんだ。」
サイトは言葉を続ける。
「まだ虚無使えるか?今から精霊の涙をもらうからそれに”ディ...
ルイズは目をそらしたまま、すこし口を尖らせて言葉を返す。
「さっきほとんど使っちゃた。歩くので精一杯なの・・・・だ、だ...
分ける?ってどうやって??サイトは怪訝な表情でルイズに聞...
「ききききききき」
ルイズは頬を朱に染め上げてサイトを見て言葉を伝えようとす...
ききききききき??サイトはオウム返しに繰り返す。
「きききき・・・・・キスして」
こんな状況だというのになんというご主人さま。サイトは内心...
くやしいけれど、やっぱりこいつへの気持ちは嘘はないの。今...
この不安を消してもらうには使い魔、いやサイトから愛情表現...
”儀式ではないキス”をもらえたルイズは喜色満面に言い放った。
「いまなら虚無でもなんでも出してあげるんだから」
サイトはルイズに微笑みかけた。しかし、一瞬でその表情は戦...
タバサはそんなメイジと使い魔の光景を複雑な思いで見た。し...
サイトと再び目線があった。それは、戦いの始まりを意味して...
ふくれあがったタバサの力とサイトの力が湖上で混ざり合う。...
−−−ルイズの詠唱が完了した瞬間、サイトとタバサは同時に魔法...
「「ウィンディ・アイシクル!!!」」
湖面から無数の氷の矢が三人の前に出現した。精霊の涙がこめ...
ルイズは矢の出現を確かめ虚無の力(ディスペル)を氷の矢に...
一斉に氷の矢がワインブルーへと変色する。タバサとサイトは...
空気を切り裂き矢がヨルムンガントめがけて降り注ぐ。それと...
ヨルムンガントたちの攻撃をかいくぐり、指揮官のところへ突...
虚無の使い魔の命知らずな行動にミョズは後れをとってしまっ...
ひっ。あっという間に懐に入られたミョズにはなす術がなかっ...
サイトが振り返ると。すでに戦いは終わりを告げていた。
先住魔法の込められたヨルムンガントたちは同じく先住魔法を...
ルイズとタバサの許にサイトは指輪をもって戻ってきた。
「アンドバリの指輪・・・」
タバサとルイズは口をそろえた。サイトはしゃがんでその指輪...
”ガンダールヴ。感謝スル。”精霊の声がした。
115 名前: サイトが魔法を使えたら(4/4) [sage] 投稿日: 20...
”ガンダールヴヨ、オマエニワタスモノガアル”精霊はそう言葉...
その先にはきらりと輝くものがあった。取り上げてみると鴇色...
”ソノ指輪は《ミョルニル》トイウ。左ノ手、四ノ指ニ嵌メヨ。...
奇蹟ガオコレバ、ソノ誓イハ永遠ノモノトナル---タダシ、誓イ...
精霊はそういい残して湖の奥へ消えていった。
「四の指ってなんだ?」
サイトは首をかしげた。
「内側の指から数えて4番目」
タバサが薬指を指差してくれた。
それって婚約指輪ってことなんじゃ・・・サイトはうろたえつつ、...
サイトの指輪を桃髪と青髪の二人の女の子は黙って見つめてい...
「さ、さて、この瓦礫の山どーすんだ。女王様に伝えて回収し...
サイトは指輪に触れられないようにルイズに話を振った。
「そ、そうね。伝えるべきだわ。これも成果だわ。そうだわ」
どことなく落ち着きのないルイズはポケットから紙とペンを取...
よろしくね。ルイズはフクロウの頭をなでながら書状を渡す。...
それじゃ、戻ろうか。サイトは二人に声をかけた。タバサは首...
ところが、サイトのご主人さまは黙ったまんまであった。
「ルイズ、どした」
サイトはうつむいたルイズの顔を覗き込む。
「ね、ねぇ、サイト。あんたわたしが助けに来てなかったら、...
ウッ。ルイズは急に顔を上げたのでサイトの鼻っ面にルイズの...
サイトに代わってタバサは表情を変えずに言葉を返す。
「サイトを連れ出したのは、私。この湖で誓いを立てるために...
「ちちち誓いですってぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜...
ゴゴゴゴとルイズの背後から怒気が沸き立つ。
「そう。誓い。私はサイトに心身を捧げることを誓った」
タバサはルイズを見据える。
「きぃぃぃぃっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ルイズは言葉にならない奇声を発していた。
「ま、まてタバサ。誤解を受けるぞ。俺が危ないときに護って...
両手で鼻を押さえつつサイトは立ち上がった。しかしその時を...
っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!サイトの声にならない悲鳴が...
瓦礫の向こうでサイトに叩き切られたミョズがいた。
ところが、その姿がミョズから人形《スキルニル》に変わって...
”ゼロの使い魔が魔法を使えるとは・・・想定外だった・・・指輪は奪...
ミョズの主の声が彼女の頭に直接響いた。
彼女の表情は先ほどと一変し恋する乙女となっていた。
”そんな。もったいのうございます。いますぐジョゼフさまのも...
そういってミョズは森深くへと姿を消した。
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