ゼロの使い魔保管庫
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51 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:04...
それは突然だった。
「ルイズ」
「何?」
「豆とかってないか?」
「…は?」
ルイズは一瞬何考えてるんだ?という顔をした後にまた聞き返...
「…豆?」
「うん、豆。」
「豆、ね…調理室に行けばあるんじゃない?」
「そうか、ありがとう」
そう言うとサイトは厨房に向かって何故か嬉しそうに走ってい...
調理室に着くと夕食を作っている途中で、いいにおいがしてき...
覗くとシエスタが夕食のスープのなべをかきまわしてるところ...
「シエスター」
サイトが呼ぶとシエスタは鍋の火を止め振り向き、サイトの姿...
「どうしたんですかサイトさん?」
「シエスタ、豆ってない?」
「豆……ですか?」
「うん」
ルイズと同じ反応である。そりゃそうだろう。いきなり「豆ない...
「えーと、豆なら多分保管庫にありますけど」
そう言った途端、サイトの目が輝いた。本当に分からない。
「本当!?見せてくれる?」
「え、ええ…いいですけど」
そういってシエスタはサイトを調理室の奥の保管庫に連れてい...
「これは・・・」
「ここには豆以外にも料理に使う食材が保管されてるんですよ...
52 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:07...
「へぇ、そうなんだ」
「ほら、豆ならここにありますよ」
そういってシエスタは棚のようになった保管庫の中から豆のは...
「これが・・・ありがとうシエスタ、ちょっと見せてもらってもい...
「ええ、いいですけど」
サイトはそういってシエスタが取り出した箱を開けた。その中...
「あの…サイトさん、どうしました?」
「…ん?ああ、ゴメン、ところでシエスタ、この豆少しくれない...
「まあいいですけど…」
「あ、あとあそこにある入れ物も貸してくれる?」
そういってサイトは壁にかかっていたまるで枡のような小さな...
「あれなら全然使ったこともないのでいいですよ」
「本当!?ありがとう!」
「どういたしまして…ってサイトさん、豆とあんな箱を使って一...
「うん、実は…」
サイトは今日あったことを話した。
サイトがゼロ戦の整備を終え、格納庫の前で横たわっていたと...
サイトは体を大の字にし、草の上でゆっくりとした時間を過ご...
最近はいろいろとありすぎて疲れたのでたまにはこうやっての...
「雲ひとつない快晴、か……」
そんなことを呟いていたサイトが、ふと上半身を起こしなにや...
「快晴、晴れ、曇り、雨、雪……懐かしいな」
そう、サイトが言ったのは日本にいた頃に習った天気の呼び名...
「そういえば最近日本のことすっかり忘れてたな…今どうなって...
そういうとサイトは立ち上がり歩き出した。そしてふとこう呟...
「最近、食ってないな……日本食」
サイトは歩きながら考えた。アレは無理だろう、コレならいけ...
53 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:09...
「うん、コレなら大丈夫そうだ」
決めたサイトは足取りも軽くルイズ達のいる寮へと向かってい...
「…それで、豆と木の入れ物を?」
「うん」
「そういうことなら言ってくだされば、私も協力できますけど」
「いや、シエスタは夕食の事もあるし俺のせいで他の人に迷惑...
「でも…」
「大丈夫だって。そんなにたいしたことじゃないから」
「そうですか…わかりました。いい物が出来るよう頑張って下さ...
「あ、あと白い豆だけ使いたいからここで分別していってもい...
「だからそんな大変なことだったら手伝いしますって」
「ホント大丈夫だから。嬉しいけどシエスタは料理の方を頑張...
「そこまでいうんなら…分かりました、何かあったら言ってくだ...
そういうとシエスタは保管庫を抜けて調理室へと戻っていった。
「うん、わかった。ありがとうね」
そういってサイトは目の前にある箱を見ていった。
「これは大変だな…」
結局サイトが木の入れ物いっぱいの豆を選別し終えたのはシエ...
「ふー、やっと終わった。やっぱ慣れない作業をすると疲れるな...
サイトは選別し終えたばかりの豆を一粒摘んでみる。
「つーかこれ本当に大豆か?」
サイトが摘んでいる豆は色こそ白で丸いがサイトにはそれが大...
「とりあえず食ってみるか」
ぱくっ。
「うーん、分からないな…」
普段からよく食べたりしていない限り食べただけで大豆かどう...
「まあ形とかも似てるしこれでいっか」
結局はこの結論に至るのだった。だが。
「しまった…忘れてた…」
54 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:11...
「コレ」を作るにはあと二つ、重要なモノがかけていたのであ...
「どうしよう…何か思い出せれば…」
そういってサイトは日本にいたときの記憶を必死に探る。二つ...
「あっ、そうだよそうすればいいんだ!」
思い出した。
「でもどうやってとってくれば…そうだ、ゼロ戦でいけばいいか...
今日はやけに独り言の多いサイトだった。
サイトが保管庫を出るとシエスタが調理を終えて盛り付けをし...
「あっサイトさん終わったんですね?」
「うん。あとひとつだけお願いなんだけど明後日あたりにちょ...
「ええいいですよ」
「ありがと。あと豆の入ってる箱はしまっておいたから、これ...
「ええどうぞ」
「ごめんね、シエスタには迷惑ばかり掛けちゃって。お詫びに手...
「いえ、大丈夫です。私がやりますから。それにサイトさん、...
「あー、そうだね。じゃあ俺は戻るから」
そういうとサイトは木の入れ物に入った豆を持って調理室を出...
「ただいま、ルイズ」
「遅かったじゃない」
「ゴメンゴメン、ちょっと時間がかかって」
「ふぅん…そういえばアンタ調理室行ってたんでしょ?何やって...
「え?ああこれに豆入れてた」
「アンタまだ豆、豆て…ってその入れ物は何よ?」
「ああこれ?保管庫に行ったら使えそうな入れ物があったから...
「アンタいまシエスタって…そういえば調理室にはシエスタがい...
「い、いや違うって!何もしてないって!信じて!」
「いつもいつもそうやって逃れようとするわよね…」
「本当に今日は何もしてない!本当だから!」
55 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:12...
サイトの真剣な眼差しを受けてルイズも感じた物があったのか...
「わかったわ、今日はアンタの言うことを信じるわ。それより...
「うん、それが…」
サイトはさっきシエスタにした説明をもう一度ルイズにした。
ひょんなことから日本を思い出したこと。
日本食が食べたくなったこと。
いろいろ考えた末、コレなら作れると思い作ろうとしているこ...
そして説明が終わる頃に丁度夕食の時間となり話の続きはご飯...
「…で、その何とかやらを作るために豆とその入れ物がいるって...
「うん。それともうひとついるものが」
「何よ」
「海に行けばとれるんだけど」
「ここにはないの?」
「うん」
「保管庫にも?」
「多分、ていうかまずない」
「じゃあどうするのよ」
「だから明日海までとりに行きたいんだけど、いい?」
「それがあればできるの?」
「うん、材料は揃うからあとはそれを調理するだけ」
「…まあ明日は何もないしちょっとサイトの故郷の料理にも興味...
「ありがと」
「あっあと…その…」
「ん?」
「その…わ、私も…連れてって…」
「え…」
「そのっさっ最近サイトと二人で外出ることもないしっ…たまに...
「…うん、そうだな」
そこまで言うとお互い急に恥ずかしくなり黙りこくってしまう...
56 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:15...
「いやー、若いっていいねぇ、ウン」
台無しだった。
その後空気を読めなかった哀れな剣が処罰されたのは言うまで...
そして夜。
「ルイズ、明日の事もあるしもう寝ない?」
「うん、そうね」
時間帯的にはまだおきていてもいい時間だが明日海まで行くこ...
「明日、楽しみだな」
布団の中でサイトが言う。
「ん…そうね」
「じゃあ、おやすみ」
「ね、ちょっと待って」
そういうとルイズはサイトの手に自分の手を重ねた。触れてい...
「どうしたんだ、ルイズ」
「なんだかこうしていたいの」
「そうか、それならずっとこうしていればいいよ」
「ありがとう…」
普段のルイズからは考えられない態度だったが、過去に何度か...
たことが増えているのだった。それはお互いが自分のキモチと...
先、二人が今の関係を超える日が来るのも実はそんなに遠くな...
「ねえサイト、サイトの故郷ってどんな感じなの?」
「ああ、そうだな、こっちにはないものがある。でもこっちに...
「ふぅん。何だか微妙ね」
「まあそうだな」
57 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:16...
「こっちの世界とはどっちがいいの?」
「どっちともいえない、今のところは。向こうにもこっちにも...
「サイトらしいわね」
「俺らしいかもな」
「そういえば、さっきサイトが作るって言ってた――――
こうして夜は更けていく。明日はいよいよ出発の日である。
152 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
↓
朝。
「んんっ〜」
先に起きたのはサイトだった。カーテンの隙間から差し込む日...
「おはよー」
誰に言う訳でもなく、まだ寝ぼけ眼のまま呟く。寝起きでまだ...
そんなサイトだったが、しばらくベットの上でぼーっとしてる...
眠気も覚めてきたところで、ふと横を見る。
「…すー、すー」
ルイズはまだ眠っている。サイトのほうに顔を向け、無防備な...
見た目でこそ起きているものの、まだまだ頭や体は眠っていた...
サイトの顔がだんだん近づいていく。1m。50cm。25cm。10cm。5...
しかし、そういうときに限って起こってしまうのものである。
「ん…」
パチッ。
最悪のタイミングである。
「…え?」
「…あ」
ルイズが眼を開けると目の前にはサイトの顔がどアップでうつ...
普段のサイトならこのような状況になったらすぐさま逃げるが...
か分からず、サイトの頭の中はフリーズしている。
ルイズもルイズで起きたばかり。当然何が起きたか分からず、...
朝の日差しが二人を照らす中、寝起きの二人はそのまましばら...
フリーズした頭が復旧するのは二人ともほぼ同時だった。何が...
し運悪く鍵が閉まったままで、焦りパニックになっているサイ...
153 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
「ごっ…ごめんー!!」
「こっこの…馬鹿犬ー!」
ドゥオオォォォォォォンン!!!
「あら、今日は朝早くから元気ですね」
そう言うのは調理室で朝食の準備をしているシエスタだった。
********************************************* [#bb4d8bec]
「で、なんでアンタは…あんなことをしたのよ」
ルイズは真っ赤になりながらサイトに問う。
「よく分からないけど…その…ルイズが可愛かったから、つい」
「!!!」
その言葉を聴いた瞬間、ルイズは口に運びかけていたハムを使...
ているのが指先を見て分かる。
「まあ…なんだ、すまなかったな、朝早くから」
サイトは恥ずかしがりながらも頭をぼりぼりとかいて謝る。
「え…」
サイトの謝罪の言葉を受け、固まっていたルイズの緊張が一気...
「ん?どうした」
サイトはもう普段に調子に戻り、パンをちぎり口に運ぶ。
「あ、ハム落としてるぞ、ルイズ」
そう言ってハムを取ろうとルイズに近づくサイトだったが、ル...
「……よ」
「え?」
「だから……わよ」
「わよ?」
「だから!その…わっ私が寝てたら少しは…きっキスぐらいはし...
語尾がだんだん小さくなるのにつれ、ルイズは下を向く。恥ず...
サイトはルイズの爆弾発言にドキッとしたが、そのうちこらえ...
「ひゃっ!?」
「ありがと、ルイズ」
154 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
「え…ううん、そっその…してもいいけど私が寝てるうちにしな...
「…へいへい」
「何よ、何かおかしい?」
「何も」
すっかりいつものルイズだなあと思い、サイトの顔に自然と笑...
「さて、朝ごはん食べたら行くか」
「えっ?…あっああそうね、食べたら行きましょう」
こうして二人の甘い朝食タイムは過ぎていったのである。
********************************************* [#k258bfd8]
―今ルイズとサイトが歩いているのは場所は格納庫の中。朝食を...
「ねえサイト」
ふいにルイズが聞く。
「ん?」
「海って言うけど、どこに行くかは決まってるの?」
「どこって、海は海だろ」
「そうじゃなくて、具体的にどこに行くのよ。海って行っても...
「うーん、まぁ適当に飛んで海が見えたらそっちにいけばいい...
「って、ちゃんと決めてないの?」
「うん。昨日決まったばかりだし…」
「じゃあ、地図とかは?」
「ない」
「ちょっと、もし迷ったらどうするのよ」
「大丈夫だって、ちゃんと帰ってこれるから」
「…本当でしょうね」
「信じろって。もし心配ならここで待っててもいいから」
「…心配だから着いていくんじゃない、馬鹿犬」
「なんか言った?」
「何も言ってないわよ」
「で、着いてくのか?」
「当たり前じゃない」
155 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
「へいへい」
そう言ってるうちに二人はゼロ戦の前に着いた。
「…いつ見てもすごいわね」
「…ま、そうだな」
二人は一言ずつ言い乗り込む。サイトが前、ルイズが後ろ。い...
「じゃあ、いくぜ」
離陸の準備をしながらサイトが言う。
「気をつけなさいよ」
「分かってるって」
そういうとゼロ戦のプロペラが少しずつ回り始める。
ゼロ戦はその機体を少しずつ進ませながら加速していく。格納...
「今日は調子がいいな」
「そうなの?」
「ああ」
やがて十分な速度になるとすこしづつ地面から離れていく。そ...
「離陸成功!」
大空をまるで鳥のように飛び回るゼロ戦。乗っているサイト達...
「海目指してGO!」
ゼロ戦はどんどん高度を上げる。下には森や建物が小さく見え...
「ねえ」
大空を滑空する中、ルイズがサイトに問う。
「今頃だけど、こんなことのために使っちゃっていいの?」
「使うって何を?」
「これよ、竜の羽衣よ」
「…うーん、まあ大丈夫なんじゃないか?」
「まあって、ちゃんと言ってないの?」
「仕方ないだろ、時間なかったんだから」
「誰かに怒られたらどうするのよ!」
「まーそのときはそのときだ」
「…はぁ」
156 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
サイトの無鉄砲さにルイズは呆れたようで思わずため息をする。
「まあいいけど、いつものことだし」
「そうだと思ってくれ」
そんな話をしながら、飛行機はどんどん飛んでいった。
「あれ?あれって確か竜の羽衣…サイトさん何する気でしょう?」
そういって小さくなりつつあるゼロ戦を見て首をかしげるのは...
「まあサイトさんのことですし、そのうち帰ってきますよね」
―あまり心配はしていないようだった。
373 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:4...
場所は変わって、ここはトリステイン西部の海岸沿い。まわり...
「おっ、あそこなんかよさそうだな」
そういってるのはここまでゼロ戦を操縦してきたサイト。学園...
「海がすぐ見えたから良かったけど迷ったらどうする気だった...
そういってため息をついているのは後ろの座席に座っているル...
「ま、いいじゃねえかちゃんと来れたんだしさ」
サイトはそういうとゼロ戦を操縦して着陸の態勢に入る。
ゼロ戦はだんだん高度を下げ、砂浜に程近い野原に着陸した。...
「お、なかなかいい景色じゃねえか」
「そうね、海に来るなんて久しぶりだし」
目の前には誰もいない真っ白な砂浜と青い海。雲ひとつない青...
まるで漫画の世界だな、とサイトは思いながら海に向かって歩...
キュッ、キュッ
まるで砂が鳴いているような音を立てる。サイト達は更に歩き...
キュッ、キュッ、キュッ、キュッ
「お、鳴き砂か」
「なきすな?」
不意にそう呟くサイトにルイズが問う。
「なきすなって、この音が出る砂のこと?」
「あぁ、俺のとこではそう呼んでた」
「サイトの故郷にもあったの?」
「うーん、あったけど少なかったな」
「なんでよ」
「海がきれいじゃないと砂が鳴らないんだよ。俺んとこはかな...
「ふぅん、そういうものなの」
374 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:4...
「そういうもんだ」
などと他愛のない話をしているうちに二人は波打ち際まで辿り...
波が立てるザザーッという音が海に来たことを今更ながら実感...
サイトは用意してきた容器に海水を入れるとよしと言って戻ろ...
するとルイズがそれを引き止める。
「もう終わり?」
「ん?そうだけど」
「せっかく海まで来たんだからもう少しいないと勿体無いわ」
「…ま、それもそうだな」
そう言うとサイトは海水の入った容器を置いてルイズの横に腰...
少しだけ塩のにおいがする風が並んで座る二人に優しく吹き付...
ゼロ戦を背後に、二人して座るルイズとサイトの姿が影となり...
しばらくは二人とも何もしゃべらず海を見つめたりしていたが...
「なんだか久しぶりだよな…こうやって二人っきりになるの」
ルイズはサイトの『二人っきり』と言うフレーズにドキッとす...
「ん…そうね」
「最近忙しかったし」
「こんなにゆっくり出来るのもそうそう多くないものね」
「そうだよな…」
話が切れてしまう。お互い二人っきりなのを意識してしまい上...
ともかく、二人の周りにはなんだか気恥ずかしいような気まず...
しかし、サイトの一言でその空気は一気に熱くなる。
「何だか…デートしてるみたいだな」
そう照れて頭をかきながらサイトが言う。
「でぇと?」
ルイズは『デート』の意味がわからず問う。サイトはこの時非...
「ねぇ、『でぇと』って何よ」
…とりあえず空気を読め、と突っ込みたくなるサイトだったかそ...
「『デート』っつーのはだな、まあ、その、恋人同士が二人で...
375 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:5...
「そういうもんだ」
などと他愛のない話をしているうちに二人は波打ち際まで辿り...
波が立てるザザーッという音が海に来たことを今更ながら実感...
サイトは用意してきた容器に海水を入れるとよしと言って戻ろ...
するとルイズがそれを引き止める。
「もう終わり?」
「ん?そうだけど」
「せっかく海まで来たんだからもう少しいないと勿体無いわ」
「…ま、それもそうだな」
そう言うとサイトは海水の入った容器を置いてルイズの横に腰...
少しだけ塩のにおいがする風が並んで座る二人に優しく吹き付...
ゼロ戦を背後に、二人して座るルイズとサイトの姿が影となり...
しばらくは二人とも何もしゃべらず海を見つめたりしていたが...
「なんだか久しぶりだよな…こうやって二人っきりになるの」
ルイズはサイトの『二人っきり』と言うフレーズにドキッとす...
「ん…そうね」
「最近忙しかったし」
「こんなにゆっくり出来るのもそうそう多くないものね」
「そうだよな…」
話が切れてしまう。お互い二人っきりなのを意識してしまい上...
ともかく、二人の周りにはなんだか気恥ずかしいような気まず...
しかし、サイトの一言でその空気は一気に熱くなる。
「何だか…デートしてるみたいだな」
そう照れて頭をかきながらサイトが言う。
「でぇと?」
ルイズは『デート』の意味がわからず問う。サイトはこの時非...
「ねぇ、『でぇと』って何よ」
…とりあえず空気を読め、と突っ込みたくなるサイトだったかそ...
「『デート』っつーのはだな、まあ、その、恋人同士が二人で...
376 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:5...
申し訳ない・・・
それを聞いてルイズがぼん!と一気に赤くなる。まるで頭から...
「ななな何言ってるのよこの犬!その…私とアンタが『でぇと』...
「す、すまんルイズ」
サイトは今頃になって『デート』なんて言った自分が恥ずかし...
パニックになりかけながら自分で自分に突っ込んでいるとルイ...
「でも…サイトは…私と、その、『でぇと』したいの?」
「へ?」
「だから…アンタは私の事好きなの?」
何かが吹っ切れたように大声で叫ぶ。そして叫んだ後に自分が...
を真っ赤にし俯く。
「アンタは…アンタはどうなのよ」
俯きながらいったルイズのその言葉は先ほどの発言でパニック...
マチナサイ。ルイズサンハイマナント?オレガルイズサンノコ...
ンデソンナコトヲキクンデスカ?モシカシテ?モシカシチャッ...
…と結論の分かり切っている問いを必死になって考えていた。パ...
ある。
ドウスルノ?ドウスルノオレ?トリアエズコタエレバイイノ?...
パニックになりながらもどうにか答えを出すことができた。
「俺は…好きだ、ルイズのこと」
その答えを聞くとルイズは耳まで真っ赤な顔を俯けたまま震え...
ばれたじろぐサイトに抱きついた。
「ア、アノ、ナニヲヤッテイラッシャルンデスカ?ルイズサン」
サイトは固まりながらもどうにか言葉を捻り出して聞く。正直...
ってくる今の状況はある意味危険である。このまま続けられて...
東京タワーと化してしまうであろう。そしてそれをルイズに見...
たが、その後ルイズの取った行為はサイトの予想していた遥か...
「…!むーっ、んむー!!」
なんとルイズは少し体を離したかと思うといきなりサイトの唇...
は最初こそ何が起きたか分からないが、自分がキスされてるこ...
イトの体はルイズががっちりと掴んでいて動かすことが出来ず...
った。
人が二人しかいない砂浜に程近い野原で二人の人間が交じって...
している二人はルイズとサイトである。ルイズは覚悟を決めた...
なりキスされ最初は戸惑ったが、そのうち目をとしてルイズと...
心配が無い。そういった意識が二人のストッパーを見えないう...
「ん…ぷはっ」
「ん、く、ふう」
377 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:5...
ばらくして濃厚なそれは終わり、二人の間には太陽の光で僅か...
「ルイズ…」
「サイト…」
そして二人はそのまままだ見ぬ夢の世界へと突入していく―――
太陽がカッカと照りつける昼下がり、誰も見知らぬ海辺の野原...
まったく、昼間からお若いものである。
そして夕方。
結局昼間の行為の後二人は眠ってしまい、目が覚めると夕方だ...
乱れた服を治すと顔を一度も合わせずにゼロ戦に乗り込んだ。...
そうして、野原に赤い証拠を残してゼロ戦はルイズたちの住む...
寮に帰る途中、サイトがルイズに問う。
「あの、ルイズサン?」
「ふぇ?…な、何よ?」
ルイズも恥かしい中いきなりサイトに話しかけられ一瞬動転し...
「あ、あのー、昼間のアレはいったいどういう風の吹き回しで...
こう聞くのにかなりの勇気を要したが、昼間のいつもとは違う...
「あ、うん、その、たまたまよ!たまたま!」
誰がどう聞いても嘘をついてるのが丸分かりの返答である。
ルイズも絶対昼のことを聴かれるとは思っていたものの、いざ...
「たまたま?」
「もしかして…嫌だった?私とするの」
「いや!そんなめめめっそうもございません!」
サイトはルイズの弱気発言に背中をピシッと伸ばして否定の言...
「本当?」
「はい、本当です!」
誰が見てもいつもの二人ではなかった。当たり前なのかもしれ...
「…で、結局のところは…」
「う…うん、その、何だかサイトとあそこにいたら変な気分にな...
「変な気分?」
「うん。サイトと二人っきりでいるって思うと、サイトに抱き...
378 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:0...
「それで…と?」
「うん…」
「あと、あのときの好きってのも…」
「!私そんなことも言ってた?」
「え、ああ、まあ」
「…まあ、言ったことに間違いは無いわ。で、でもね、勘違いし...
「…分かったけど、これで俺たち恋人ってことだよな?」
「こっ恋人ですって!?何でそうなるのよ!」
「だって俺もルイズも好きって言ったし、ついでにアレもした...
「うるさい!アンタは私の使い魔なのよ?使い魔の分際で好き...
「へいへい、分かりましたよ。俺の恋人さん」
「なっ何いってんの?」
「へーへー」
すっかりいつもの調子に戻った。でも二人にはこれが一番合っ...
そんなこんなで話しているうちにゼロ戦は寮についた。
「さて、いよいよ調理の始まりだな」
「あ、すっかりわすれてたわ」
「まあ俺もさっきまで忘れてたんだけどな。コレ見て思い出し...
そういって海水の入った容器を取り出した。
「そういえばどこで調理するの?」
「シエスタに調理場貸してもらえるよう頼んどいた」
「ついでにへんなことしてないでしょうね?」
「…してません」
「怪しいわね」
「本当にしてねえってば」
「ふぅん。ま、そこまで言うんならいいわ」
実際本当にしてないわけなのだが。
ともかくそんな話をしながら二人は調理場に向かっていった。
二人が調理場に着くと丁度夕食の準備中だった。
379 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:0...
シエスター」
「あっ、サイトさんにミス・ヴァリエール」
「後でひとつ鍋貸してくれるー?」
「分かりましたー。準備が出来たら呼びますからー」
「ありがとねー」
そういって二人は部屋に歩いていった。
「今日の二人、なんだか妙に幸せそうでしたね…何かあったっぽ...
シエスタは意外と鋭かった…のではなく、サイトもルイズも感情...
そして食後。鍋を空かしたシエスタに呼ばれサイトとルイズ、...
「サイトさん、どうやって作るんですか?」
「教えなさいよ」
「えーっと、確か最初に海水を火にかけてにがりを作るんだよ...
「にがり?何それ」
「まあ今出来るから待ってろって」
そういうとサイトは持ってきた海水を鍋に入れ火をつけた。
数十分後。
「サイトーまだなのー?」
「もうすぐだから待ってろって。」
「まだー?」
「よし、出来た」
サイトはそういって鍋の火を止め、布をかぶせた木箱のにそれ...
「あっ、せっかく出来たのに何やってんのよ」
「いや、こうやって取り出すんだよ」
サイトがかぶせた布を出すと木箱の中には透明の液体があった。
「これが…トーフー?」
「これは豆腐じゃなくてにがりだよ」
「にがり?」
380 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:0...
「にがりって何ですか?」
さっきから二人の様子を見ていたシエスタが口を挟む。
「にがりってのは豆腐を作るときに固めるのに使うんだよ」
「ふーん、そうなの」
ルイズはそういいながら調理場に置かれていたスプーンでにが...
「ちょっと味見してみようかしら」
「あっ!ちょっ待てって」
ペロッ。一足遅かった。
「…苦い」
「だからにがりって言うんだろ」
「何でこんなもの作るのよ」
「豆腐に入れば苦くなくなるから大丈夫だって」
「本当なの?」
「まあ信じがたいかもしれないけどな」
「で、次は何をするんですか?」
「あ、つぎは豆を水に入れて一晩置くから、入れたらまた明日...
「分かりました。にがりもとっておけばいいんですね?」
「うん。そこに置いといて」
「はい」
「何だか悪いね、シエスタには。昨日といい今日といい」
「大丈夫ですから。その代わり完成したら少し分けて下さいね」
「いいですよ」
「私にも頂戴よ」
「はいはい、ちゃんとあげるから。じゃあまた明日」
「また明日。サイトさん、ミズヴァリエール」
そして翌朝。再び鍋の前。
終了行:
51 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:04...
それは突然だった。
「ルイズ」
「何?」
「豆とかってないか?」
「…は?」
ルイズは一瞬何考えてるんだ?という顔をした後にまた聞き返...
「…豆?」
「うん、豆。」
「豆、ね…調理室に行けばあるんじゃない?」
「そうか、ありがとう」
そう言うとサイトは厨房に向かって何故か嬉しそうに走ってい...
調理室に着くと夕食を作っている途中で、いいにおいがしてき...
覗くとシエスタが夕食のスープのなべをかきまわしてるところ...
「シエスター」
サイトが呼ぶとシエスタは鍋の火を止め振り向き、サイトの姿...
「どうしたんですかサイトさん?」
「シエスタ、豆ってない?」
「豆……ですか?」
「うん」
ルイズと同じ反応である。そりゃそうだろう。いきなり「豆ない...
「えーと、豆なら多分保管庫にありますけど」
そう言った途端、サイトの目が輝いた。本当に分からない。
「本当!?見せてくれる?」
「え、ええ…いいですけど」
そういってシエスタはサイトを調理室の奥の保管庫に連れてい...
「これは・・・」
「ここには豆以外にも料理に使う食材が保管されてるんですよ...
52 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:07...
「へぇ、そうなんだ」
「ほら、豆ならここにありますよ」
そういってシエスタは棚のようになった保管庫の中から豆のは...
「これが・・・ありがとうシエスタ、ちょっと見せてもらってもい...
「ええ、いいですけど」
サイトはそういってシエスタが取り出した箱を開けた。その中...
「あの…サイトさん、どうしました?」
「…ん?ああ、ゴメン、ところでシエスタ、この豆少しくれない...
「まあいいですけど…」
「あ、あとあそこにある入れ物も貸してくれる?」
そういってサイトは壁にかかっていたまるで枡のような小さな...
「あれなら全然使ったこともないのでいいですよ」
「本当!?ありがとう!」
「どういたしまして…ってサイトさん、豆とあんな箱を使って一...
「うん、実は…」
サイトは今日あったことを話した。
サイトがゼロ戦の整備を終え、格納庫の前で横たわっていたと...
サイトは体を大の字にし、草の上でゆっくりとした時間を過ご...
最近はいろいろとありすぎて疲れたのでたまにはこうやっての...
「雲ひとつない快晴、か……」
そんなことを呟いていたサイトが、ふと上半身を起こしなにや...
「快晴、晴れ、曇り、雨、雪……懐かしいな」
そう、サイトが言ったのは日本にいた頃に習った天気の呼び名...
「そういえば最近日本のことすっかり忘れてたな…今どうなって...
そういうとサイトは立ち上がり歩き出した。そしてふとこう呟...
「最近、食ってないな……日本食」
サイトは歩きながら考えた。アレは無理だろう、コレならいけ...
53 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:09...
「うん、コレなら大丈夫そうだ」
決めたサイトは足取りも軽くルイズ達のいる寮へと向かってい...
「…それで、豆と木の入れ物を?」
「うん」
「そういうことなら言ってくだされば、私も協力できますけど」
「いや、シエスタは夕食の事もあるし俺のせいで他の人に迷惑...
「でも…」
「大丈夫だって。そんなにたいしたことじゃないから」
「そうですか…わかりました。いい物が出来るよう頑張って下さ...
「あ、あと白い豆だけ使いたいからここで分別していってもい...
「だからそんな大変なことだったら手伝いしますって」
「ホント大丈夫だから。嬉しいけどシエスタは料理の方を頑張...
「そこまでいうんなら…分かりました、何かあったら言ってくだ...
そういうとシエスタは保管庫を抜けて調理室へと戻っていった。
「うん、わかった。ありがとうね」
そういってサイトは目の前にある箱を見ていった。
「これは大変だな…」
結局サイトが木の入れ物いっぱいの豆を選別し終えたのはシエ...
「ふー、やっと終わった。やっぱ慣れない作業をすると疲れるな...
サイトは選別し終えたばかりの豆を一粒摘んでみる。
「つーかこれ本当に大豆か?」
サイトが摘んでいる豆は色こそ白で丸いがサイトにはそれが大...
「とりあえず食ってみるか」
ぱくっ。
「うーん、分からないな…」
普段からよく食べたりしていない限り食べただけで大豆かどう...
「まあ形とかも似てるしこれでいっか」
結局はこの結論に至るのだった。だが。
「しまった…忘れてた…」
54 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:11...
「コレ」を作るにはあと二つ、重要なモノがかけていたのであ...
「どうしよう…何か思い出せれば…」
そういってサイトは日本にいたときの記憶を必死に探る。二つ...
「あっ、そうだよそうすればいいんだ!」
思い出した。
「でもどうやってとってくれば…そうだ、ゼロ戦でいけばいいか...
今日はやけに独り言の多いサイトだった。
サイトが保管庫を出るとシエスタが調理を終えて盛り付けをし...
「あっサイトさん終わったんですね?」
「うん。あとひとつだけお願いなんだけど明後日あたりにちょ...
「ええいいですよ」
「ありがと。あと豆の入ってる箱はしまっておいたから、これ...
「ええどうぞ」
「ごめんね、シエスタには迷惑ばかり掛けちゃって。お詫びに手...
「いえ、大丈夫です。私がやりますから。それにサイトさん、...
「あー、そうだね。じゃあ俺は戻るから」
そういうとサイトは木の入れ物に入った豆を持って調理室を出...
「ただいま、ルイズ」
「遅かったじゃない」
「ゴメンゴメン、ちょっと時間がかかって」
「ふぅん…そういえばアンタ調理室行ってたんでしょ?何やって...
「え?ああこれに豆入れてた」
「アンタまだ豆、豆て…ってその入れ物は何よ?」
「ああこれ?保管庫に行ったら使えそうな入れ物があったから...
「アンタいまシエスタって…そういえば調理室にはシエスタがい...
「い、いや違うって!何もしてないって!信じて!」
「いつもいつもそうやって逃れようとするわよね…」
「本当に今日は何もしてない!本当だから!」
55 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:12...
サイトの真剣な眼差しを受けてルイズも感じた物があったのか...
「わかったわ、今日はアンタの言うことを信じるわ。それより...
「うん、それが…」
サイトはさっきシエスタにした説明をもう一度ルイズにした。
ひょんなことから日本を思い出したこと。
日本食が食べたくなったこと。
いろいろ考えた末、コレなら作れると思い作ろうとしているこ...
そして説明が終わる頃に丁度夕食の時間となり話の続きはご飯...
「…で、その何とかやらを作るために豆とその入れ物がいるって...
「うん。それともうひとついるものが」
「何よ」
「海に行けばとれるんだけど」
「ここにはないの?」
「うん」
「保管庫にも?」
「多分、ていうかまずない」
「じゃあどうするのよ」
「だから明日海までとりに行きたいんだけど、いい?」
「それがあればできるの?」
「うん、材料は揃うからあとはそれを調理するだけ」
「…まあ明日は何もないしちょっとサイトの故郷の料理にも興味...
「ありがと」
「あっあと…その…」
「ん?」
「その…わ、私も…連れてって…」
「え…」
「そのっさっ最近サイトと二人で外出ることもないしっ…たまに...
「…うん、そうだな」
そこまで言うとお互い急に恥ずかしくなり黙りこくってしまう...
56 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:15...
「いやー、若いっていいねぇ、ウン」
台無しだった。
その後空気を読めなかった哀れな剣が処罰されたのは言うまで...
そして夜。
「ルイズ、明日の事もあるしもう寝ない?」
「うん、そうね」
時間帯的にはまだおきていてもいい時間だが明日海まで行くこ...
「明日、楽しみだな」
布団の中でサイトが言う。
「ん…そうね」
「じゃあ、おやすみ」
「ね、ちょっと待って」
そういうとルイズはサイトの手に自分の手を重ねた。触れてい...
「どうしたんだ、ルイズ」
「なんだかこうしていたいの」
「そうか、それならずっとこうしていればいいよ」
「ありがとう…」
普段のルイズからは考えられない態度だったが、過去に何度か...
たことが増えているのだった。それはお互いが自分のキモチと...
先、二人が今の関係を超える日が来るのも実はそんなに遠くな...
「ねえサイト、サイトの故郷ってどんな感じなの?」
「ああ、そうだな、こっちにはないものがある。でもこっちに...
「ふぅん。何だか微妙ね」
「まあそうだな」
57 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:16...
「こっちの世界とはどっちがいいの?」
「どっちともいえない、今のところは。向こうにもこっちにも...
「サイトらしいわね」
「俺らしいかもな」
「そういえば、さっきサイトが作るって言ってた――――
こうして夜は更けていく。明日はいよいよ出発の日である。
152 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
↓
朝。
「んんっ〜」
先に起きたのはサイトだった。カーテンの隙間から差し込む日...
「おはよー」
誰に言う訳でもなく、まだ寝ぼけ眼のまま呟く。寝起きでまだ...
そんなサイトだったが、しばらくベットの上でぼーっとしてる...
眠気も覚めてきたところで、ふと横を見る。
「…すー、すー」
ルイズはまだ眠っている。サイトのほうに顔を向け、無防備な...
見た目でこそ起きているものの、まだまだ頭や体は眠っていた...
サイトの顔がだんだん近づいていく。1m。50cm。25cm。10cm。5...
しかし、そういうときに限って起こってしまうのものである。
「ん…」
パチッ。
最悪のタイミングである。
「…え?」
「…あ」
ルイズが眼を開けると目の前にはサイトの顔がどアップでうつ...
普段のサイトならこのような状況になったらすぐさま逃げるが...
か分からず、サイトの頭の中はフリーズしている。
ルイズもルイズで起きたばかり。当然何が起きたか分からず、...
朝の日差しが二人を照らす中、寝起きの二人はそのまましばら...
フリーズした頭が復旧するのは二人ともほぼ同時だった。何が...
し運悪く鍵が閉まったままで、焦りパニックになっているサイ...
153 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
「ごっ…ごめんー!!」
「こっこの…馬鹿犬ー!」
ドゥオオォォォォォォンン!!!
「あら、今日は朝早くから元気ですね」
そう言うのは調理室で朝食の準備をしているシエスタだった。
********************************************* [#bb4d8bec]
「で、なんでアンタは…あんなことをしたのよ」
ルイズは真っ赤になりながらサイトに問う。
「よく分からないけど…その…ルイズが可愛かったから、つい」
「!!!」
その言葉を聴いた瞬間、ルイズは口に運びかけていたハムを使...
ているのが指先を見て分かる。
「まあ…なんだ、すまなかったな、朝早くから」
サイトは恥ずかしがりながらも頭をぼりぼりとかいて謝る。
「え…」
サイトの謝罪の言葉を受け、固まっていたルイズの緊張が一気...
「ん?どうした」
サイトはもう普段に調子に戻り、パンをちぎり口に運ぶ。
「あ、ハム落としてるぞ、ルイズ」
そう言ってハムを取ろうとルイズに近づくサイトだったが、ル...
「……よ」
「え?」
「だから……わよ」
「わよ?」
「だから!その…わっ私が寝てたら少しは…きっキスぐらいはし...
語尾がだんだん小さくなるのにつれ、ルイズは下を向く。恥ず...
サイトはルイズの爆弾発言にドキッとしたが、そのうちこらえ...
「ひゃっ!?」
「ありがと、ルイズ」
154 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
「え…ううん、そっその…してもいいけど私が寝てるうちにしな...
「…へいへい」
「何よ、何かおかしい?」
「何も」
すっかりいつものルイズだなあと思い、サイトの顔に自然と笑...
「さて、朝ごはん食べたら行くか」
「えっ?…あっああそうね、食べたら行きましょう」
こうして二人の甘い朝食タイムは過ぎていったのである。
********************************************* [#k258bfd8]
―今ルイズとサイトが歩いているのは場所は格納庫の中。朝食を...
「ねえサイト」
ふいにルイズが聞く。
「ん?」
「海って言うけど、どこに行くかは決まってるの?」
「どこって、海は海だろ」
「そうじゃなくて、具体的にどこに行くのよ。海って行っても...
「うーん、まぁ適当に飛んで海が見えたらそっちにいけばいい...
「って、ちゃんと決めてないの?」
「うん。昨日決まったばかりだし…」
「じゃあ、地図とかは?」
「ない」
「ちょっと、もし迷ったらどうするのよ」
「大丈夫だって、ちゃんと帰ってこれるから」
「…本当でしょうね」
「信じろって。もし心配ならここで待っててもいいから」
「…心配だから着いていくんじゃない、馬鹿犬」
「なんか言った?」
「何も言ってないわよ」
「で、着いてくのか?」
「当たり前じゃない」
155 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
「へいへい」
そう言ってるうちに二人はゼロ戦の前に着いた。
「…いつ見てもすごいわね」
「…ま、そうだな」
二人は一言ずつ言い乗り込む。サイトが前、ルイズが後ろ。い...
「じゃあ、いくぜ」
離陸の準備をしながらサイトが言う。
「気をつけなさいよ」
「分かってるって」
そういうとゼロ戦のプロペラが少しずつ回り始める。
ゼロ戦はその機体を少しずつ進ませながら加速していく。格納...
「今日は調子がいいな」
「そうなの?」
「ああ」
やがて十分な速度になるとすこしづつ地面から離れていく。そ...
「離陸成功!」
大空をまるで鳥のように飛び回るゼロ戦。乗っているサイト達...
「海目指してGO!」
ゼロ戦はどんどん高度を上げる。下には森や建物が小さく見え...
「ねえ」
大空を滑空する中、ルイズがサイトに問う。
「今頃だけど、こんなことのために使っちゃっていいの?」
「使うって何を?」
「これよ、竜の羽衣よ」
「…うーん、まあ大丈夫なんじゃないか?」
「まあって、ちゃんと言ってないの?」
「仕方ないだろ、時間なかったんだから」
「誰かに怒られたらどうするのよ!」
「まーそのときはそのときだ」
「…はぁ」
156 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:2...
サイトの無鉄砲さにルイズは呆れたようで思わずため息をする。
「まあいいけど、いつものことだし」
「そうだと思ってくれ」
そんな話をしながら、飛行機はどんどん飛んでいった。
「あれ?あれって確か竜の羽衣…サイトさん何する気でしょう?」
そういって小さくなりつつあるゼロ戦を見て首をかしげるのは...
「まあサイトさんのことですし、そのうち帰ってきますよね」
―あまり心配はしていないようだった。
373 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:4...
場所は変わって、ここはトリステイン西部の海岸沿い。まわり...
「おっ、あそこなんかよさそうだな」
そういってるのはここまでゼロ戦を操縦してきたサイト。学園...
「海がすぐ見えたから良かったけど迷ったらどうする気だった...
そういってため息をついているのは後ろの座席に座っているル...
「ま、いいじゃねえかちゃんと来れたんだしさ」
サイトはそういうとゼロ戦を操縦して着陸の態勢に入る。
ゼロ戦はだんだん高度を下げ、砂浜に程近い野原に着陸した。...
「お、なかなかいい景色じゃねえか」
「そうね、海に来るなんて久しぶりだし」
目の前には誰もいない真っ白な砂浜と青い海。雲ひとつない青...
まるで漫画の世界だな、とサイトは思いながら海に向かって歩...
キュッ、キュッ
まるで砂が鳴いているような音を立てる。サイト達は更に歩き...
キュッ、キュッ、キュッ、キュッ
「お、鳴き砂か」
「なきすな?」
不意にそう呟くサイトにルイズが問う。
「なきすなって、この音が出る砂のこと?」
「あぁ、俺のとこではそう呼んでた」
「サイトの故郷にもあったの?」
「うーん、あったけど少なかったな」
「なんでよ」
「海がきれいじゃないと砂が鳴らないんだよ。俺んとこはかな...
「ふぅん、そういうものなの」
374 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:4...
「そういうもんだ」
などと他愛のない話をしているうちに二人は波打ち際まで辿り...
波が立てるザザーッという音が海に来たことを今更ながら実感...
サイトは用意してきた容器に海水を入れるとよしと言って戻ろ...
するとルイズがそれを引き止める。
「もう終わり?」
「ん?そうだけど」
「せっかく海まで来たんだからもう少しいないと勿体無いわ」
「…ま、それもそうだな」
そう言うとサイトは海水の入った容器を置いてルイズの横に腰...
少しだけ塩のにおいがする風が並んで座る二人に優しく吹き付...
ゼロ戦を背後に、二人して座るルイズとサイトの姿が影となり...
しばらくは二人とも何もしゃべらず海を見つめたりしていたが...
「なんだか久しぶりだよな…こうやって二人っきりになるの」
ルイズはサイトの『二人っきり』と言うフレーズにドキッとす...
「ん…そうね」
「最近忙しかったし」
「こんなにゆっくり出来るのもそうそう多くないものね」
「そうだよな…」
話が切れてしまう。お互い二人っきりなのを意識してしまい上...
ともかく、二人の周りにはなんだか気恥ずかしいような気まず...
しかし、サイトの一言でその空気は一気に熱くなる。
「何だか…デートしてるみたいだな」
そう照れて頭をかきながらサイトが言う。
「でぇと?」
ルイズは『デート』の意味がわからず問う。サイトはこの時非...
「ねぇ、『でぇと』って何よ」
…とりあえず空気を読め、と突っ込みたくなるサイトだったかそ...
「『デート』っつーのはだな、まあ、その、恋人同士が二人で...
375 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:5...
「そういうもんだ」
などと他愛のない話をしているうちに二人は波打ち際まで辿り...
波が立てるザザーッという音が海に来たことを今更ながら実感...
サイトは用意してきた容器に海水を入れるとよしと言って戻ろ...
するとルイズがそれを引き止める。
「もう終わり?」
「ん?そうだけど」
「せっかく海まで来たんだからもう少しいないと勿体無いわ」
「…ま、それもそうだな」
そう言うとサイトは海水の入った容器を置いてルイズの横に腰...
少しだけ塩のにおいがする風が並んで座る二人に優しく吹き付...
ゼロ戦を背後に、二人して座るルイズとサイトの姿が影となり...
しばらくは二人とも何もしゃべらず海を見つめたりしていたが...
「なんだか久しぶりだよな…こうやって二人っきりになるの」
ルイズはサイトの『二人っきり』と言うフレーズにドキッとす...
「ん…そうね」
「最近忙しかったし」
「こんなにゆっくり出来るのもそうそう多くないものね」
「そうだよな…」
話が切れてしまう。お互い二人っきりなのを意識してしまい上...
ともかく、二人の周りにはなんだか気恥ずかしいような気まず...
しかし、サイトの一言でその空気は一気に熱くなる。
「何だか…デートしてるみたいだな」
そう照れて頭をかきながらサイトが言う。
「でぇと?」
ルイズは『デート』の意味がわからず問う。サイトはこの時非...
「ねぇ、『でぇと』って何よ」
…とりあえず空気を読め、と突っ込みたくなるサイトだったかそ...
「『デート』っつーのはだな、まあ、その、恋人同士が二人で...
376 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:5...
申し訳ない・・・
それを聞いてルイズがぼん!と一気に赤くなる。まるで頭から...
「ななな何言ってるのよこの犬!その…私とアンタが『でぇと』...
「す、すまんルイズ」
サイトは今頃になって『デート』なんて言った自分が恥ずかし...
パニックになりかけながら自分で自分に突っ込んでいるとルイ...
「でも…サイトは…私と、その、『でぇと』したいの?」
「へ?」
「だから…アンタは私の事好きなの?」
何かが吹っ切れたように大声で叫ぶ。そして叫んだ後に自分が...
を真っ赤にし俯く。
「アンタは…アンタはどうなのよ」
俯きながらいったルイズのその言葉は先ほどの発言でパニック...
マチナサイ。ルイズサンハイマナント?オレガルイズサンノコ...
ンデソンナコトヲキクンデスカ?モシカシテ?モシカシチャッ...
…と結論の分かり切っている問いを必死になって考えていた。パ...
ある。
ドウスルノ?ドウスルノオレ?トリアエズコタエレバイイノ?...
パニックになりながらもどうにか答えを出すことができた。
「俺は…好きだ、ルイズのこと」
その答えを聞くとルイズは耳まで真っ赤な顔を俯けたまま震え...
ばれたじろぐサイトに抱きついた。
「ア、アノ、ナニヲヤッテイラッシャルンデスカ?ルイズサン」
サイトは固まりながらもどうにか言葉を捻り出して聞く。正直...
ってくる今の状況はある意味危険である。このまま続けられて...
東京タワーと化してしまうであろう。そしてそれをルイズに見...
たが、その後ルイズの取った行為はサイトの予想していた遥か...
「…!むーっ、んむー!!」
なんとルイズは少し体を離したかと思うといきなりサイトの唇...
は最初こそ何が起きたか分からないが、自分がキスされてるこ...
イトの体はルイズががっちりと掴んでいて動かすことが出来ず...
った。
人が二人しかいない砂浜に程近い野原で二人の人間が交じって...
している二人はルイズとサイトである。ルイズは覚悟を決めた...
なりキスされ最初は戸惑ったが、そのうち目をとしてルイズと...
心配が無い。そういった意識が二人のストッパーを見えないう...
「ん…ぷはっ」
「ん、く、ふう」
377 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:5...
ばらくして濃厚なそれは終わり、二人の間には太陽の光で僅か...
「ルイズ…」
「サイト…」
そして二人はそのまままだ見ぬ夢の世界へと突入していく―――
太陽がカッカと照りつける昼下がり、誰も見知らぬ海辺の野原...
まったく、昼間からお若いものである。
そして夕方。
結局昼間の行為の後二人は眠ってしまい、目が覚めると夕方だ...
乱れた服を治すと顔を一度も合わせずにゼロ戦に乗り込んだ。...
そうして、野原に赤い証拠を残してゼロ戦はルイズたちの住む...
寮に帰る途中、サイトがルイズに問う。
「あの、ルイズサン?」
「ふぇ?…な、何よ?」
ルイズも恥かしい中いきなりサイトに話しかけられ一瞬動転し...
「あ、あのー、昼間のアレはいったいどういう風の吹き回しで...
こう聞くのにかなりの勇気を要したが、昼間のいつもとは違う...
「あ、うん、その、たまたまよ!たまたま!」
誰がどう聞いても嘘をついてるのが丸分かりの返答である。
ルイズも絶対昼のことを聴かれるとは思っていたものの、いざ...
「たまたま?」
「もしかして…嫌だった?私とするの」
「いや!そんなめめめっそうもございません!」
サイトはルイズの弱気発言に背中をピシッと伸ばして否定の言...
「本当?」
「はい、本当です!」
誰が見てもいつもの二人ではなかった。当たり前なのかもしれ...
「…で、結局のところは…」
「う…うん、その、何だかサイトとあそこにいたら変な気分にな...
「変な気分?」
「うん。サイトと二人っきりでいるって思うと、サイトに抱き...
378 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:0...
「それで…と?」
「うん…」
「あと、あのときの好きってのも…」
「!私そんなことも言ってた?」
「え、ああ、まあ」
「…まあ、言ったことに間違いは無いわ。で、でもね、勘違いし...
「…分かったけど、これで俺たち恋人ってことだよな?」
「こっ恋人ですって!?何でそうなるのよ!」
「だって俺もルイズも好きって言ったし、ついでにアレもした...
「うるさい!アンタは私の使い魔なのよ?使い魔の分際で好き...
「へいへい、分かりましたよ。俺の恋人さん」
「なっ何いってんの?」
「へーへー」
すっかりいつもの調子に戻った。でも二人にはこれが一番合っ...
そんなこんなで話しているうちにゼロ戦は寮についた。
「さて、いよいよ調理の始まりだな」
「あ、すっかりわすれてたわ」
「まあ俺もさっきまで忘れてたんだけどな。コレ見て思い出し...
そういって海水の入った容器を取り出した。
「そういえばどこで調理するの?」
「シエスタに調理場貸してもらえるよう頼んどいた」
「ついでにへんなことしてないでしょうね?」
「…してません」
「怪しいわね」
「本当にしてねえってば」
「ふぅん。ま、そこまで言うんならいいわ」
実際本当にしてないわけなのだが。
ともかくそんな話をしながら二人は調理場に向かっていった。
二人が調理場に着くと丁度夕食の準備中だった。
379 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:0...
シエスター」
「あっ、サイトさんにミス・ヴァリエール」
「後でひとつ鍋貸してくれるー?」
「分かりましたー。準備が出来たら呼びますからー」
「ありがとねー」
そういって二人は部屋に歩いていった。
「今日の二人、なんだか妙に幸せそうでしたね…何かあったっぽ...
シエスタは意外と鋭かった…のではなく、サイトもルイズも感情...
そして食後。鍋を空かしたシエスタに呼ばれサイトとルイズ、...
「サイトさん、どうやって作るんですか?」
「教えなさいよ」
「えーっと、確か最初に海水を火にかけてにがりを作るんだよ...
「にがり?何それ」
「まあ今出来るから待ってろって」
そういうとサイトは持ってきた海水を鍋に入れ火をつけた。
数十分後。
「サイトーまだなのー?」
「もうすぐだから待ってろって。」
「まだー?」
「よし、出来た」
サイトはそういって鍋の火を止め、布をかぶせた木箱のにそれ...
「あっ、せっかく出来たのに何やってんのよ」
「いや、こうやって取り出すんだよ」
サイトがかぶせた布を出すと木箱の中には透明の液体があった。
「これが…トーフー?」
「これは豆腐じゃなくてにがりだよ」
「にがり?」
380 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:0...
「にがりって何ですか?」
さっきから二人の様子を見ていたシエスタが口を挟む。
「にがりってのは豆腐を作るときに固めるのに使うんだよ」
「ふーん、そうなの」
ルイズはそういいながら調理場に置かれていたスプーンでにが...
「ちょっと味見してみようかしら」
「あっ!ちょっ待てって」
ペロッ。一足遅かった。
「…苦い」
「だからにがりって言うんだろ」
「何でこんなもの作るのよ」
「豆腐に入れば苦くなくなるから大丈夫だって」
「本当なの?」
「まあ信じがたいかもしれないけどな」
「で、次は何をするんですか?」
「あ、つぎは豆を水に入れて一晩置くから、入れたらまた明日...
「分かりました。にがりもとっておけばいいんですね?」
「うん。そこに置いといて」
「はい」
「何だか悪いね、シエスタには。昨日といい今日といい」
「大丈夫ですから。その代わり完成したら少し分けて下さいね」
「いいですよ」
「私にも頂戴よ」
「はいはい、ちゃんとあげるから。じゃあまた明日」
「また明日。サイトさん、ミズヴァリエール」
そして翌朝。再び鍋の前。
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