ゼロの使い魔保管庫
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702 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
人の姿に化身させられたシルフィードが、タバサから借りた...
再び「お腹すいた」と騒ぎ始めた頃、一行は平賀家の前に到...
「さあさ皆さん、平賀家へようこそ、だ」
おどけた風に言う才蔵のそばで、懐かしい我が家を前に、才...
そんな才人の肩を励ますようにぽんと叩いて、才蔵は先に門...
「ただいまー」
気軽に言いながら、父の背中が家の中に消える。
だが、才人はどうしても歩き出すことが出来なかった。
(母ちゃん、どんな顔するだろ)
そう思うと、足がすくんだように動かなくなる。
そんな才人の背中を、誰かが乱暴に押した。振り返ると、ル...
「ほら、さっさと事情説明してきなさいよ。ご主人様が夜風に...
不満たらたらにそう言うルイズに、才人は苦笑した。
彼女なりに気を遣ってくれたらしいと、理解できたからだ。
「分かってるよ」
才人は一度深呼吸して、思い切って歩き出した。
玄関のドアを開けて家の中へ入った途端、懐かしい匂いに包...
(ああ、俺ん家だ)
玄関の靴箱も、二階に続く階段も、居間や風呂場へ続いてい...
暖かさがじわりと全身に浸透していくような感覚に、才人は...
そのとき、父親に背中を突かれて、居間の扉から誰かが姿を...
才人は再び緊張する。
長い黒髪をひっつめにした、どこにでもいるようなその主婦...
「ほら、いいから出てみろって」
「もう、一体何だってのよあんた……?」
背後の才蔵に文句を言いかけた天華は、玄関に立つ才人を見...
「……才人?」
「……母ちゃん」
懐かしい母の声に、才人は暖かさと同時に気まずさも感じた。
何と言っていいのか、よく分からない。
天華は驚きのあまり目を見開いたまま、硬直したようにこち...
才人は焦った。自分が、何かを言わなければ。
「えっと、あの、た、ただいま」
ようやくそれだけ言って、ぎこちなく手を挙げる。
703 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「才人!」
目の前の現実が信じられないような表情で叫びながら、天華...
一瞬叩かれるかと思って、才人は反射的に目を閉じた。
しかしやってきたのは頬の痛みではなく、全身を包む柔らか...
「……良かった。本当に、良かった」
耳の奥で、涙混じりの感極まった声がか細く震えている。
胸の奥から言葉では形容しがたいほど激しい何かがこみ上げ...
母の細い体を抱きしめ返しながら、才人は嗚咽をこらえてた...
「ごめん、ごめんな、母ちゃん」
「いいの、いいんだよ、才人」
天華は優しき囁きながら体を離し、泣き笑いの表情で才人の...
間近で見ると、母は以前よりも少しやつれたように見えた。
もしかしたらいなくなった自分を心配したせいかもしれない...
息子の実在を確かめるように、その肩に手を置きながら、天...
「ホントにもう、あんたって子は……一体、今までどこに行って...
これにも一言では答えられず、才人は困ってしまった。
「えっと、それは話すと長くなるんだけど」
「じゃあいいよ、後でゆっくり聞くから。とにかく、無事に帰...
予想以上に暖かい母の言葉で胸が一杯になり、才人は何も返...
天華は苦笑しながら才人の頭を撫でた。
「なんだいあんた、久しぶりに帰ってきたと思ったらずいぶん...
(やめてくれよ母ちゃん。俺、もう子供じゃないんだぜ)
そう思いながらも、才人は母の手を払いのけることなどでき...
「だってさ、俺、母ちゃんにも父ちゃんにも何も言わずにいな...
「いいんだよ。何か事情があったんだろう? 母ちゃんも父ち...
いつもの馬鹿みたいに能天気な顔を見せてとくれよ」
強張っていた体が自然にほぐれていくのを感じながら、才人...
「……馬鹿みたいにってのはひどくないか?」
「何言ってんだい、モグラみたいな顔してるくせに」
「相変わらずひでぇなぁ、母ちゃんは」
「本当のことじゃないの」
才人が顔をしかめると、天華は悪戯っぽく笑った。
少しだけ笑いあったあと、才人は笑いを収めて言った。
「ただいま、母ちゃん」
天華も優しく微笑んで、労わるように頷いた。
「お帰り、才人」
ほんの少しの気恥ずかしさを感じながら、才人は母と見詰め...
才蔵も、居間の扉枠に寄りかかりながら、黙って微笑んでい...
そのとき、母が何かに気付いた様子で、不意に首を傾げた。
704 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「ところで才人。後ろの人たちはお友達かい?」
「へ?」
振り返ると、玄関の扉の陰から、ルイズたちが顔を覗かせて...
どことなく拗ねたような表情のルイズ、涙ぐんで頷いている...
穏やかな微笑を浮かべているティファニア、ほっとしたよう...
他の皆は、ほとんど意地悪げにニヤニヤ笑っている。
どうやら今までのやり取りをほとんど見られていたらしい。...
「なんだよお前ら! こっち見んな!」
「あんたが遅いのが悪いんでしょ」
ルイズは唇を尖らせて反論する。言葉に詰まりながら、才人...
「あーっと、母ちゃん、こいつらはさ、その……」
どう説明したものかと迷う才人の肩を、天華が軽く叩く。
「とりあえず上がってもらいなよ。話はそれから聞くからさ」
その母の言葉で、ルイズらは正式に平賀家の客人として迎え...
シルフィードがまたもお腹が空いたと騒ぎ出したので、とり...
「スカッとする食べっぷりだこと。きれいな顔して、豪快なお...
夢中で食事に没頭するシルフィードを見て、天華は感心した...
「さて、それじゃ、ボチボチ事情を説明してくれや、才人」
ネクタイを外した父が、ソファに腰掛けて言った。
それぞれ椅子に腰掛けるなり床に座り込むなりしている他の...
「お前がこの一年間ぐらいの間、一体どこにいて何をしていた...
「分かった」
才人は頷き、異世界に行っていたことや、そこで数々の冒険...
偶然この世界に帰ってきてしまって、今ここにいる彼らはそ...
「大変だったんだねえ、あんたも」
話を聞き終わった天華は、感心したように大きく息を吐いた。
それ以上特に質問も何もしない母の態度に、才人は拍子抜け...
「え、それだけ?」
「それだけって、何が?」
天華はきょとんとして首を傾げた。
705 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「いや、そんなアッサリ信じてもらえるとは思ってなくてさ」
「ああ、そういうことね」
ぴらぴらと手を振りながら、母が苦笑する。
「母ちゃんたちはね、商売柄、一般的には非現実的って言われ...
「商売柄、って言うと」
「もう、父ちゃんからある程度は聞かされてんだろ?」
天華から意地悪げな視線を向けられて、才蔵は気まずげに目...
「仕方ねえだろ、息子がピンチだってのに正体明かさないでい...
「ま、あんたがそう言うなら信じてあげるけどね」
からかうように笑ったあと、天華は安心させるように才人に...
「父ちゃんから聞いてると思うけど、母ちゃんたちは普通の人...
だから、あんたが言ったことだってあり得ないことではない...
「じゃあ、母ちゃんも忍者なのか?」
ミョズニトニルンを倒したときの、人間離れした父の戦いぶ...
母はどちらとも言いかねるように少し首を傾げた。
「まあ、そういうことも多少は出来なくはないけどね。わたし...
「何にしても、普通の専業主婦じゃねえってことかぁ」
両親がそんな人種だったなどとは夢にも思っていなかったの...
才蔵と天華は少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね、今まで内緒にしてて」
「お前を荒事に巻き込みたくなかったんでな。許してくれや」
才人は慌てて手を振った。
「いや、別に怒ったりはしてねえよ。ただ、あんまり話が急展...
天華と才蔵は、顔を見合わせて苦笑した。
「まあそうだろうね」
「そうだ、聞いてくれよ母ちゃん、こいつ俺の人生を中学生の...
「へえ。なかなか上手いこと言うじゃないの」
「おいおいそりゃねえよ母ちゃん」
母も父も調子を取り戻したようで、才人はほっとする。
「あの」
と、そのとき、黙って話を聞いていたルイズが会話に割り込...
「あら、あなたは」
「えーと、ルイズさん、だったかな」
才蔵と天華の問いかけに、ルイズは淑やかに頷いた。
「はい。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァ...
「ああ、こりゃどうもご丁寧に」
「ウチの息子がお世話になったようで」
立ち上がる二人の前に、思いつめたような顔で歩み出てきた...
706 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「おいルイズ、一体何を」
慌てて止めようとする才人の声を無視して、ルイズは厳かに...
「……故意ではなかったにせよ、私はお二人のご子息を本人の意...
家族や友人から引き離してしまいました。この程度で許され...
深くお詫び申し上げます。本当に、申し訳ありませんでした」
ルイズはさらに深く、頭を下げる。
彼女がそこまで思い悩むことではない、と才人は思ったが、...
困惑し、助けを求めるように両親を見ると、才蔵と天華は顔...
母が苦笑し、父が肩をすくめる。
「ルイズさん。それを言ったら」
からかうように、才蔵が笑った。
「ウチの馬鹿息子は、ここにいらっしゃる皆さんに同じことを...
ルイズははっとしたように顔を上げた。
「いえ、それは確かにそうかもしれませんが……」
口ごもるルイズの顔を、天華がいたわるように覗き込む。
「いいんですよ、そんな風に思いつめなくても」
「でも」
「わたしたちはね」
反論しかけるルイズを、天華はやんわりと遮った。
「才人がちゃんと無事に帰ってきてくれただけで、満足してい...
それに、今のこの子を見る限り、その……ハルケギニアってと...
皆さんのおかげでずいぶん楽しく過ごさせていただいたよう...
「そう、そうだよルイズ」
ここぞとばかりに、才人もフォローに入った。
「そりゃ確かに、最初に召喚されたときは迷惑な話だと思った...
少なくとも、あっちで過ごしてた間は十分楽しんでたぜ、俺」
才蔵と天華も、何度か頷いて才人の言葉を肯定した。
「そうですよ。この馬鹿はどんな危ないとこでも平気ではしゃ...
「責任感じる必要なんて全くありません。むしろご迷惑おかけ...
「いや、そりゃ言い過ぎだろ!」
再会したときの温かさはどこへやら、早速以前同様息子をこ...
その横で、ルイズは小さく息を吐いた。
わずかながら緊張感が薄れたらしいその様子に、才人はこっ...
責任感の強い彼女のこと、才人を心配していた天華を見て罪...
そのとき、一人話の輪から外れて夕食にがっついていたシル...
707 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「ねーねー、もうなくなっちゃったのねー」
見ると、テーブルの上に並んだいくつもの皿が、ほとんど空...
「あら、ホントに豪快な食べっぷりだね」
目を丸くする天華の脇をすり抜けたタバサが、手にした杖を...
シルフィードが悲鳴を上げる。
「いたいのね、何なさるのお姉さま!」
「うるさいアホ」
ゴン、ゴン! と鈍い音が響き渡り、シルフィードは頭を押...
「いたいいたいいたいいたい!」
「何で全部食べるの。加減というものを知りなさい」
「だって、サイトのお母様が遠慮なく食べてって言ったのね!」
「それは社交辞令」
「きゅいきゅい。難しい言葉はわかんない」
「黙れアホ」
ゴン、ゴン! と使い魔を何度も殴ったあと、タバサは天華...
「ごめんなさい」
「まあまあ」
天華は苦笑してタバサをなだめた。
「いいんですよ、ウチの男どもは注文がうるさいから、こんな...
「でも、だからと言ってこれは」
珍しく強い口調で食い下がるタバサを、天華は優しい目で見...
「ルイズさんもそうだけど、異世界のお嬢さんはまだお若いの...
だけど、そんなに気を遣ってもらわなくても結構ですからね」
微笑みながら、天華は自然な手つきでタバサの頭を撫でる。
彼女の瞳が大きく見開かれ、青い瞳に驚きが広がった。
「あらごめんなさいわたしったら」
天華は慌てて手を引っ込めた。
「ついつい自然に手が……気を悪くしないでちょうだいね」
「大丈夫、です」
タバサは気恥ずかしげに、頬を染めて俯いてしまう。
珍しいものを見たと驚く才人の前で、天華が首を傾げた。
「でも、確かにちょっと困っちゃったね」
「何がさ、母ちゃん」
「皆さんをおもてなしするためにも、何か作らなくちゃならな...
「いえ、サイト殿のお母様、私たちのことはお構いなく」
慌てて断ろうとするアンリエッタに、天華が気楽そうに手を...
708 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「いえいえ、息子がお世話になったお礼もありますし、遠慮な...
ウチは見ての通りしがない一般庶民ですから、大したものは...
そんな風に言われて、アンリエッタは困ったように傍らのア...
こんなときでも女王に忠実な銃士隊長は、静かに目を伏せて...
「恐れながら、ここはお言葉に甘えさせてもらった方がよろし...
この世界に来てからお休みなしで、陛下も本当は疲れておい...
「でも、隊長殿」
アンリエッタがまだ迷う素振りを見せたとき、不意に誰かの...
全員がその方向を見ると、
「や、これは失敬」
ギーシュが照れたように頭をかいている。
「ちょっとは空気読みなさいよあんた」
モンモランシーがいつものようにギーシュをはたき、その場...
「じゃ、決まりだね。才人、父ちゃんと一緒にスーパーまで買...
「は!? やだよ面倒くせえ」
「俺だって。仕事で疲れてんだよ母ちゃん。早くビール飲みて...
ほぼ同時に不平を唱えるダメ親子を、天華が一喝した。
「黙りなこのぐーたらども! はるばる異世界からいらっしゃ...
そう言われては断ることも出来ず、二人は渋々買い物に出か...
4 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
夜の静けさの中、才人と才蔵は近所にある24時間営業のスー...
買い物籠を二つ乗せたカートを押しながら、才人はブツブツ...
「ったく、帰ってきたばっかだってのに人使いが荒いぜ母ちゃ...
「いいじゃねえか、お前だって湿っぽいのは嫌だろ」
「そりゃそうだけどさ」
いまいち納得できないでいる才人の隣で、才蔵はキャベツ片...
「なあ才人。お前の友達はこっちの世界の食いもん食えるのか...
「大丈夫だろ。俺だって、あっちの世界で普通に飯食って暮ら...
「そか。でもやっぱ納豆とかは苦手だろうなあ」
「まあ、なんかそんな感じはするけど」
そんな取りとめもない会話を交わしていた才人は、ふと何気...
もう夜中ということもあってそれほど多くはないが、スーパ...
明るい照明に軽快なBGM、棚に並んだたくさんの品々。
もうずいぶん見ていなかった光景である。
「ん、どうした?」
「いや」
才人はむず痒いような感覚を覚えながら首を振った。
「なんかさ、ホントに帰ってきたんだなあって思ってよ。
おかしいなあ、父ちゃんたちが変人だったって以上に、帰っ...
「今度は変人呼ばわりか、オイ」
才蔵がトマトを買い物籠に放り込みながら苦笑する。
才人はふとあることを思い出して、父に問いかけた。
「なあ父ちゃん、さっき、母ちゃんは忍者じゃねえって言って...
「んー、まあ、そうだな」
才蔵は一応返事をしたが、二つの玉ねぎの内どちらが大きい...
構わず、才人はさらに問う。
「でも、やっぱりなんか漫画みてえな力持ってんだろ」
「まあな」
「どんなのよ?」
「そうさな」
才蔵はいやなことでも思い出すように、ゴボウを選びながら...
「少なくとも、俺は素手じゃ母ちゃんには勝てん」
「どういうこった?」
「ルイズさんとかよ、魔法使うんだろ?」
「そうだけど、なんでそんな……って、まさか!」
才人はごくりと唾を飲み干した。
「母ちゃんも、メイジなのか!?」
思わぬところでハルケギニアと地球との接点を見つけたかと...
5 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「いや、違う。魔法、ではねえんだがな」
「じゃあ何だよ」
「限りなくそれに近い能力だとは言っておくよ。少なくとも、...
「よく分かんねえ」
「そうだな。何というか、オーガニック的な何か、とでも言っ...
「いや、ますます分かんねえからそれ」
「そうだろうなあ」
才蔵は苦笑した。
「なに、その内嫌でも分かるさ」
そう言ってから、ふとどこか遠くを見るような眼差しで、才...
「本当は、お前には一生隠し通すつもりだったんだがな」
その瞳が深い哀しみを湛えているように見えて、才人は少し...
「ま、今更言っても始まらねえけどよ」
だが、その表情は一瞬だけで、才蔵はすぐに意地悪そうな笑...
「しっかし、お前も相変わらず抜けてるよなあ」
何のことか分からず、才人は困惑する。
「何がだよ」
「あのお喋り母ちゃんを、お前の可愛らしいご友人方と一緒に...
くくっとかみ殺すように笑いながら、才蔵は食料品が一杯に...
その言葉の意味を、才人は帰宅後に嫌というほど思い知るこ...
食料品でパンパンになったスーパーのビニール袋を持って、...
居間に入ると、異世界の友人達は天華を中心にテーブルを囲...
ビニール袋を床に下ろしながら、才人は首を傾げる。
「何やってんの、皆」
声をかけた段になってようやく才人たちが帰ってきたことに...
そして、それぞれに楽しげな、あるいは意地悪げな笑みを浮...
「なんだよお前ら、その顔は」
嫌な予感を覚える才人に、ルイズがニヤニヤしながら言った。
「サイト。あんた、七つになるまでおねしょが治らなかったん...
「な」
続いてギーシュが肩を震わせながら言った。
「八つのときには探検に出かけて、沼で溺れかけたそうじゃな...
「に」
「野良犬に追い掛け回されて、泣き喚きながら逃げ回ったとか」
「う」
「着ぐるみショー、とかいうので、作り物の怪物相手に本気で...
「ぐお」
「いやー、懐かしいねえ」
天華がケラケラ笑った。
情報の出所はこいつか、と才人は恥ずかしがりながら怒鳴っ...
6 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「母ちゃん、何俺の恥ずかしい秘密をばらしてんのよ!?」
「いいじゃないの、減るもんでもないし。ほら皆さん、これが...
天華は怒る才人の目の前で、これ見よがしにアルバムを捲っ...
何でそんな写真が残ってんだと、少々疑問に思わないでもな...
「止めろよぉぉぉぉっ!」
才人は叫びながら飛び掛ったが、天華は片手でアルバムをつ...
「なに恥ずかしがってんの。誰にだって子供の頃はあるじゃな...
「そりゃそうだけど、そういう問題じゃねえんだよ! それよ...
才人は必死に追いかけるが、どうしても天華に翻弄されてし...
だが天華のほうは息子の手を避けながら、どこか感心した様...
「おやおや、しばらく見ない内にずいぶん動きが良くなったみ...
「そりゃ俺だって多少の修羅場を潜りぬけ……って、んなことは...
「いいじゃないの、息子にさらに親しみを持ってもらおうとい...
「一生分かりたくねえよ、そんな愛情!」
その追いかけっこは才人がバテるまで続いたが、結局アルバ...
「ちくしょう、なんで捕まえられねえんだ」
「年季が違うよ、年季が」
ぜぇぜぇ言いながら床に横たわる才人に、天華がからかうよ...
「じゃ、後は皆さんで楽しんでちょうだいな」
天華はまたテーブルにアルバムをおくと、張り切った様子で...
「さ、それじゃあ晩御飯の支度をしましょうかね」
「あ、わたしもお手伝いいたします」
「わたしも」
台所に向かう天華を、シエスタとティファニアが追いかける。
「あら、ごめんなさいね。それじゃお言葉に甘えちゃおうかし...
「はい。あまりお役に立てないかもしれませんけど」
「泊めていただくのですし、これぐらいのことは」
台所から楽しげな声と共に、包丁で食材を刻む音などが聞こ...
「クソッ、本当に母ちゃんも人外なんだなあ」
ぼやき、嘆息しつつソファに座り直す才人の後ろから、才蔵...
「オイ才人」
「なによ父ちゃん」
「今までよく見なかったから気がつかなかったけどよ……あの耳...
父が真剣な顔でそんなこと言うので、才人はますますうんざ...
「息子にそういう生々しい面見せるのはやめてくれよ父ちゃん」
「いやいや、これは由々しき問題だぜ。でかすぎだよあれは。
なんつーの、革命? そう、革命という表現が相応しい乳だ...
真面目くさった顔でうんうんと頷く才蔵の顔に、才人は自分...
7 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
そんな才人の肩を、誰かが横から叩いた。
「なんだよ……って、コルベール先生。どうしたんスか」
見ると、コルベールが興奮した面持ちでテーブルの上のアル...
「サイト君。あのシャシンというのは一体どういう原理になっ...
それと、今君の母上が使っている、スイッチを捻るだけで火...
それに我々の頭上で光り輝いているものも、ランプとは到...
好奇心に瞳を輝かせ、コルベールは矢継ぎ早に質問してくる...
「マイペースッスね、先生……父ちゃん、悪いけど相手頼むわ」
「あいよ。ささ、先生。あっちの部屋で酒でも飲みながらお話...
「ええ、是非ともお願いいたしますぞ」
「でしたら私がお酌いたしますわ」
艶っぽい微笑を浮かべて近づいてきたキュルケを見て、才蔵...
「やあ、こりゃまたきれいなお嬢さんだな。こちらこそ、向こ...
そのとき台所の方から包丁が飛んできた。才蔵の鼻先をかす...
青ざめた才蔵が台所の方を見ると、驚きの表情を浮かべたシ...
「父ちゃん? まさか、息子のお友達に不埒な真似しようって...
「はははは、まさかそんなこと。信用してくださいよマイハニ...
才蔵はへこへこしながら慌てて居間の隣の部屋に向かう。
ミョズニトニルンを撃退したときとは打って変わった情けな...
(尻に敷かれてんなあ、父ちゃん)
才人はまたも変なところで父と自分の血のつながりを自覚し...
そんな才人の両肩を、またも二つの手が叩く。
「サイト!」
「君って奴は!」
『実にけしからん!』
声を揃えてそう言うのは、目を血走らせたギーシュとマリコ...
才人は二人の勢いに少々引きながら聞いた。
「どうした、いきなり何言い出すんだよお前らは」
「どうしたもこうしたもあるか!」
「さっきのシャシンとやらを見たぞ!」
「君以外にも、たくさんの女の子達が写っているじゃあないか」
「なんてけしからん! 僕にも紹介してください!」
相変わらず正直な連中である。才人は苦笑して手を振った。
8 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「紹介ったって、俺には特別仲のいい女の子なんていなかった...
「嘘だっ!」
「そんなこと言って、学院のとき同様モテモテなのに違いない...
「いや、本当にいなかったって、そんなの」
これは本当のことである。
あまりに女の子と縁がなかったために、ネットの出会い系サ...
だが、ギーシュとマリコルヌはぎらぎらした目を見合わせて...
「ははは、白を切ろうったってそうはいかないよ、君」
「実際、君とずいぶん距離が近い子だっていたじゃないか」
「なに?」
そんな女の子のことなど記憶にないので、才人は困惑した。
「誰のこと言ってんだ、お前ら」
「とぼけるなよ」
「ほら、たとえばさ、君よりずいぶん小柄な黒髪の」
才人の脳裏に一人の少女の姿が浮かぶ。
これはひどい誤解だ、と才人は笑って手を振った。
「ああ、その子なら多分お隣の千夏」
そこまで言いかけたところで、才人は不意に背筋に悪寒を感...
恐る恐る振り返ってみると、世にも恐ろしい形相を浮かべた...
「オイ犬」
ドスの利いた声。見た目どおり、怒り心頭らしい。
「はい、なんでございましょうご主人様」
才人は自然とソファの上で正座をしていた。ハルケギニアで...
ルイズは震える指を、一枚の写真に突きつけた。
「これについて、何か言い訳することはありますか」
どれだ、と思って見てみて、才人の顔から血の気が引いた。
それは、才人が高一のときの、体育祭の写真だった。
100m走でゴールした後、他の走者が全て走り終わるのを...
問題は、そこに写っている才人の顔が向いている方向だった。
「不思議ねえ。わたしには、この、横にいるビッチの余計な脂...
ルイズの言うとおりである。
才人は、そのとき自分と同じように競技の終了を待っていた...
彼女が気付いていないのをいいことに、思う存分ガン視して...
無論気付いていなかったのは姫路さん本人だけで、写真の撮...
当時は「やあおはよう視姦レイパー」だのと散々からかわれ...
(そんな過去が、まさか今この場で命の危機として立ちふさが...
才人の背筋を冷たい汗が滑り落ちる。
とにかくなんとか切り抜けねばと、才人は必死で弁解する。
「落ち着けルイズ。そもそもこれはお前と会うずっと前の話で...
「関係あるか!」
叫びながら、ルイズが懐から杖を取り出す。
9 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「ふふ。あんた、そんなにあの部分につく余計な脂肪が好きな...
あんなもん、邪魔になるだけで何の役にも立たないってのに」
「いや、そんなことは俺にもお前にもわからないはずじゃ」
「あぁ?」
「いえ何でもないです」
また余計なことを言ってしまったと、才人はなおさら青ざめ...
ルイズはこめかみをひくつかせながら、かなり無理矢理っぽ...
「分かったわ。あんたのこの悪癖は、どうやら生まれついての...
とすれば、わたしは根本からそれを正す必要があると見た」
恐れおののく才人の前で、ルイズは杖を振り上げる。
「死にさらせこの」
「あら、ルイズさんったらずいぶん元気なのねえ」
背後からかかったのん気な声に、ルイズは慌てて杖を隠す。
「お、お母様!」
「おや、なんだか新鮮な響きねえ」
天華がうっとりと頬に片手を添える。
「さ、晩御飯の支度が出来ましたから、皆さんテーブルに座っ...
ほら才人、ボケッとしてないで家中から椅子をかき集めて来...
「お、おう、分かった!」
天の助けとばかりに才人が駆け出そうとしたところ、天華が...
「あんたもホント、変なとこばっかり父ちゃんに似るね」
「え」
「後でちゃんとフォローしとくんだよ」
どうやら、何もかもお見通しらしかった。
そうして、才人が懐かしい自分の部屋から椅子を持って出た...
「タバサ。どうした、何かあったか」
聞くと、彼女はいつもの無表情のまま淡々と言った。
「胸部の脂肪は激しい運動を阻害する。客観的に見て、少ない...
「なに?」
意味が分からず聞き返したが、タバサは黙って踵を返し、居...
10 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/1...
そんなこんなで、その日は騒がしい夜となった。
予想通りシルフィードが食卓を席巻し、あらゆる料理を思う...
才人の母に自分の存在を売り込もうと、ルイズとシエスタが...
その横でタバサはさり気なくサイレントの魔法を張り、周辺...
アンリエッタはその場の喧騒をどこか面白そうに見物しなが...
その隣ではアニエスが「女王の御前だというのに騒がしすぎ...
当の女王本人が上機嫌な手前、何も言えずにもどかしそうな...
ギーシュとマリコルヌは「うまいうまい」と遠慮なく食事に...
隣のモンモランシーから「あんたたちは馴染みすぎなのよ!...
珍しく酒に酔ったコルベールが才蔵相手に熱弁を振るい、キ...
才蔵はコルベールの話を聞きつつ赤ら顔で無闇にうんうん頷...
才人の見た感じでは果たして正気を保っていたかどうか怪し...
そんな喧騒の中、天華はニコニコ笑いながら、ティファニア...
「いやあ、ずいぶん賑やかだねえ、相棒」
「むしろ賑やかすぎるぜ」
テーブルに立てかけられたデルフリンガーの声に答えつつ、...
「ま、とりあえず、父ちゃんと母ちゃんが皆を受け入れてくれ...
「相棒のご両親らしく、些事にはこだわらねえ人たちみてえだ...
「なんか褒められてる気がしねえな、それ」
そう言いつつも、とりあえず初日が平穏無事に済みそうな流...
――終わり。
終了行:
702 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
人の姿に化身させられたシルフィードが、タバサから借りた...
再び「お腹すいた」と騒ぎ始めた頃、一行は平賀家の前に到...
「さあさ皆さん、平賀家へようこそ、だ」
おどけた風に言う才蔵のそばで、懐かしい我が家を前に、才...
そんな才人の肩を励ますようにぽんと叩いて、才蔵は先に門...
「ただいまー」
気軽に言いながら、父の背中が家の中に消える。
だが、才人はどうしても歩き出すことが出来なかった。
(母ちゃん、どんな顔するだろ)
そう思うと、足がすくんだように動かなくなる。
そんな才人の背中を、誰かが乱暴に押した。振り返ると、ル...
「ほら、さっさと事情説明してきなさいよ。ご主人様が夜風に...
不満たらたらにそう言うルイズに、才人は苦笑した。
彼女なりに気を遣ってくれたらしいと、理解できたからだ。
「分かってるよ」
才人は一度深呼吸して、思い切って歩き出した。
玄関のドアを開けて家の中へ入った途端、懐かしい匂いに包...
(ああ、俺ん家だ)
玄関の靴箱も、二階に続く階段も、居間や風呂場へ続いてい...
暖かさがじわりと全身に浸透していくような感覚に、才人は...
そのとき、父親に背中を突かれて、居間の扉から誰かが姿を...
才人は再び緊張する。
長い黒髪をひっつめにした、どこにでもいるようなその主婦...
「ほら、いいから出てみろって」
「もう、一体何だってのよあんた……?」
背後の才蔵に文句を言いかけた天華は、玄関に立つ才人を見...
「……才人?」
「……母ちゃん」
懐かしい母の声に、才人は暖かさと同時に気まずさも感じた。
何と言っていいのか、よく分からない。
天華は驚きのあまり目を見開いたまま、硬直したようにこち...
才人は焦った。自分が、何かを言わなければ。
「えっと、あの、た、ただいま」
ようやくそれだけ言って、ぎこちなく手を挙げる。
703 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「才人!」
目の前の現実が信じられないような表情で叫びながら、天華...
一瞬叩かれるかと思って、才人は反射的に目を閉じた。
しかしやってきたのは頬の痛みではなく、全身を包む柔らか...
「……良かった。本当に、良かった」
耳の奥で、涙混じりの感極まった声がか細く震えている。
胸の奥から言葉では形容しがたいほど激しい何かがこみ上げ...
母の細い体を抱きしめ返しながら、才人は嗚咽をこらえてた...
「ごめん、ごめんな、母ちゃん」
「いいの、いいんだよ、才人」
天華は優しき囁きながら体を離し、泣き笑いの表情で才人の...
間近で見ると、母は以前よりも少しやつれたように見えた。
もしかしたらいなくなった自分を心配したせいかもしれない...
息子の実在を確かめるように、その肩に手を置きながら、天...
「ホントにもう、あんたって子は……一体、今までどこに行って...
これにも一言では答えられず、才人は困ってしまった。
「えっと、それは話すと長くなるんだけど」
「じゃあいいよ、後でゆっくり聞くから。とにかく、無事に帰...
予想以上に暖かい母の言葉で胸が一杯になり、才人は何も返...
天華は苦笑しながら才人の頭を撫でた。
「なんだいあんた、久しぶりに帰ってきたと思ったらずいぶん...
(やめてくれよ母ちゃん。俺、もう子供じゃないんだぜ)
そう思いながらも、才人は母の手を払いのけることなどでき...
「だってさ、俺、母ちゃんにも父ちゃんにも何も言わずにいな...
「いいんだよ。何か事情があったんだろう? 母ちゃんも父ち...
いつもの馬鹿みたいに能天気な顔を見せてとくれよ」
強張っていた体が自然にほぐれていくのを感じながら、才人...
「……馬鹿みたいにってのはひどくないか?」
「何言ってんだい、モグラみたいな顔してるくせに」
「相変わらずひでぇなぁ、母ちゃんは」
「本当のことじゃないの」
才人が顔をしかめると、天華は悪戯っぽく笑った。
少しだけ笑いあったあと、才人は笑いを収めて言った。
「ただいま、母ちゃん」
天華も優しく微笑んで、労わるように頷いた。
「お帰り、才人」
ほんの少しの気恥ずかしさを感じながら、才人は母と見詰め...
才蔵も、居間の扉枠に寄りかかりながら、黙って微笑んでい...
そのとき、母が何かに気付いた様子で、不意に首を傾げた。
704 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「ところで才人。後ろの人たちはお友達かい?」
「へ?」
振り返ると、玄関の扉の陰から、ルイズたちが顔を覗かせて...
どことなく拗ねたような表情のルイズ、涙ぐんで頷いている...
穏やかな微笑を浮かべているティファニア、ほっとしたよう...
他の皆は、ほとんど意地悪げにニヤニヤ笑っている。
どうやら今までのやり取りをほとんど見られていたらしい。...
「なんだよお前ら! こっち見んな!」
「あんたが遅いのが悪いんでしょ」
ルイズは唇を尖らせて反論する。言葉に詰まりながら、才人...
「あーっと、母ちゃん、こいつらはさ、その……」
どう説明したものかと迷う才人の肩を、天華が軽く叩く。
「とりあえず上がってもらいなよ。話はそれから聞くからさ」
その母の言葉で、ルイズらは正式に平賀家の客人として迎え...
シルフィードがまたもお腹が空いたと騒ぎ出したので、とり...
「スカッとする食べっぷりだこと。きれいな顔して、豪快なお...
夢中で食事に没頭するシルフィードを見て、天華は感心した...
「さて、それじゃ、ボチボチ事情を説明してくれや、才人」
ネクタイを外した父が、ソファに腰掛けて言った。
それぞれ椅子に腰掛けるなり床に座り込むなりしている他の...
「お前がこの一年間ぐらいの間、一体どこにいて何をしていた...
「分かった」
才人は頷き、異世界に行っていたことや、そこで数々の冒険...
偶然この世界に帰ってきてしまって、今ここにいる彼らはそ...
「大変だったんだねえ、あんたも」
話を聞き終わった天華は、感心したように大きく息を吐いた。
それ以上特に質問も何もしない母の態度に、才人は拍子抜け...
「え、それだけ?」
「それだけって、何が?」
天華はきょとんとして首を傾げた。
705 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「いや、そんなアッサリ信じてもらえるとは思ってなくてさ」
「ああ、そういうことね」
ぴらぴらと手を振りながら、母が苦笑する。
「母ちゃんたちはね、商売柄、一般的には非現実的って言われ...
「商売柄、って言うと」
「もう、父ちゃんからある程度は聞かされてんだろ?」
天華から意地悪げな視線を向けられて、才蔵は気まずげに目...
「仕方ねえだろ、息子がピンチだってのに正体明かさないでい...
「ま、あんたがそう言うなら信じてあげるけどね」
からかうように笑ったあと、天華は安心させるように才人に...
「父ちゃんから聞いてると思うけど、母ちゃんたちは普通の人...
だから、あんたが言ったことだってあり得ないことではない...
「じゃあ、母ちゃんも忍者なのか?」
ミョズニトニルンを倒したときの、人間離れした父の戦いぶ...
母はどちらとも言いかねるように少し首を傾げた。
「まあ、そういうことも多少は出来なくはないけどね。わたし...
「何にしても、普通の専業主婦じゃねえってことかぁ」
両親がそんな人種だったなどとは夢にも思っていなかったの...
才蔵と天華は少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね、今まで内緒にしてて」
「お前を荒事に巻き込みたくなかったんでな。許してくれや」
才人は慌てて手を振った。
「いや、別に怒ったりはしてねえよ。ただ、あんまり話が急展...
天華と才蔵は、顔を見合わせて苦笑した。
「まあそうだろうね」
「そうだ、聞いてくれよ母ちゃん、こいつ俺の人生を中学生の...
「へえ。なかなか上手いこと言うじゃないの」
「おいおいそりゃねえよ母ちゃん」
母も父も調子を取り戻したようで、才人はほっとする。
「あの」
と、そのとき、黙って話を聞いていたルイズが会話に割り込...
「あら、あなたは」
「えーと、ルイズさん、だったかな」
才蔵と天華の問いかけに、ルイズは淑やかに頷いた。
「はい。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァ...
「ああ、こりゃどうもご丁寧に」
「ウチの息子がお世話になったようで」
立ち上がる二人の前に、思いつめたような顔で歩み出てきた...
706 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「おいルイズ、一体何を」
慌てて止めようとする才人の声を無視して、ルイズは厳かに...
「……故意ではなかったにせよ、私はお二人のご子息を本人の意...
家族や友人から引き離してしまいました。この程度で許され...
深くお詫び申し上げます。本当に、申し訳ありませんでした」
ルイズはさらに深く、頭を下げる。
彼女がそこまで思い悩むことではない、と才人は思ったが、...
困惑し、助けを求めるように両親を見ると、才蔵と天華は顔...
母が苦笑し、父が肩をすくめる。
「ルイズさん。それを言ったら」
からかうように、才蔵が笑った。
「ウチの馬鹿息子は、ここにいらっしゃる皆さんに同じことを...
ルイズははっとしたように顔を上げた。
「いえ、それは確かにそうかもしれませんが……」
口ごもるルイズの顔を、天華がいたわるように覗き込む。
「いいんですよ、そんな風に思いつめなくても」
「でも」
「わたしたちはね」
反論しかけるルイズを、天華はやんわりと遮った。
「才人がちゃんと無事に帰ってきてくれただけで、満足してい...
それに、今のこの子を見る限り、その……ハルケギニアってと...
皆さんのおかげでずいぶん楽しく過ごさせていただいたよう...
「そう、そうだよルイズ」
ここぞとばかりに、才人もフォローに入った。
「そりゃ確かに、最初に召喚されたときは迷惑な話だと思った...
少なくとも、あっちで過ごしてた間は十分楽しんでたぜ、俺」
才蔵と天華も、何度か頷いて才人の言葉を肯定した。
「そうですよ。この馬鹿はどんな危ないとこでも平気ではしゃ...
「責任感じる必要なんて全くありません。むしろご迷惑おかけ...
「いや、そりゃ言い過ぎだろ!」
再会したときの温かさはどこへやら、早速以前同様息子をこ...
その横で、ルイズは小さく息を吐いた。
わずかながら緊張感が薄れたらしいその様子に、才人はこっ...
責任感の強い彼女のこと、才人を心配していた天華を見て罪...
そのとき、一人話の輪から外れて夕食にがっついていたシル...
707 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「ねーねー、もうなくなっちゃったのねー」
見ると、テーブルの上に並んだいくつもの皿が、ほとんど空...
「あら、ホントに豪快な食べっぷりだね」
目を丸くする天華の脇をすり抜けたタバサが、手にした杖を...
シルフィードが悲鳴を上げる。
「いたいのね、何なさるのお姉さま!」
「うるさいアホ」
ゴン、ゴン! と鈍い音が響き渡り、シルフィードは頭を押...
「いたいいたいいたいいたい!」
「何で全部食べるの。加減というものを知りなさい」
「だって、サイトのお母様が遠慮なく食べてって言ったのね!」
「それは社交辞令」
「きゅいきゅい。難しい言葉はわかんない」
「黙れアホ」
ゴン、ゴン! と使い魔を何度も殴ったあと、タバサは天華...
「ごめんなさい」
「まあまあ」
天華は苦笑してタバサをなだめた。
「いいんですよ、ウチの男どもは注文がうるさいから、こんな...
「でも、だからと言ってこれは」
珍しく強い口調で食い下がるタバサを、天華は優しい目で見...
「ルイズさんもそうだけど、異世界のお嬢さんはまだお若いの...
だけど、そんなに気を遣ってもらわなくても結構ですからね」
微笑みながら、天華は自然な手つきでタバサの頭を撫でる。
彼女の瞳が大きく見開かれ、青い瞳に驚きが広がった。
「あらごめんなさいわたしったら」
天華は慌てて手を引っ込めた。
「ついつい自然に手が……気を悪くしないでちょうだいね」
「大丈夫、です」
タバサは気恥ずかしげに、頬を染めて俯いてしまう。
珍しいものを見たと驚く才人の前で、天華が首を傾げた。
「でも、確かにちょっと困っちゃったね」
「何がさ、母ちゃん」
「皆さんをおもてなしするためにも、何か作らなくちゃならな...
「いえ、サイト殿のお母様、私たちのことはお構いなく」
慌てて断ろうとするアンリエッタに、天華が気楽そうに手を...
708 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/...
「いえいえ、息子がお世話になったお礼もありますし、遠慮な...
ウチは見ての通りしがない一般庶民ですから、大したものは...
そんな風に言われて、アンリエッタは困ったように傍らのア...
こんなときでも女王に忠実な銃士隊長は、静かに目を伏せて...
「恐れながら、ここはお言葉に甘えさせてもらった方がよろし...
この世界に来てからお休みなしで、陛下も本当は疲れておい...
「でも、隊長殿」
アンリエッタがまだ迷う素振りを見せたとき、不意に誰かの...
全員がその方向を見ると、
「や、これは失敬」
ギーシュが照れたように頭をかいている。
「ちょっとは空気読みなさいよあんた」
モンモランシーがいつものようにギーシュをはたき、その場...
「じゃ、決まりだね。才人、父ちゃんと一緒にスーパーまで買...
「は!? やだよ面倒くせえ」
「俺だって。仕事で疲れてんだよ母ちゃん。早くビール飲みて...
ほぼ同時に不平を唱えるダメ親子を、天華が一喝した。
「黙りなこのぐーたらども! はるばる異世界からいらっしゃ...
そう言われては断ることも出来ず、二人は渋々買い物に出か...
4 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
夜の静けさの中、才人と才蔵は近所にある24時間営業のスー...
買い物籠を二つ乗せたカートを押しながら、才人はブツブツ...
「ったく、帰ってきたばっかだってのに人使いが荒いぜ母ちゃ...
「いいじゃねえか、お前だって湿っぽいのは嫌だろ」
「そりゃそうだけどさ」
いまいち納得できないでいる才人の隣で、才蔵はキャベツ片...
「なあ才人。お前の友達はこっちの世界の食いもん食えるのか...
「大丈夫だろ。俺だって、あっちの世界で普通に飯食って暮ら...
「そか。でもやっぱ納豆とかは苦手だろうなあ」
「まあ、なんかそんな感じはするけど」
そんな取りとめもない会話を交わしていた才人は、ふと何気...
もう夜中ということもあってそれほど多くはないが、スーパ...
明るい照明に軽快なBGM、棚に並んだたくさんの品々。
もうずいぶん見ていなかった光景である。
「ん、どうした?」
「いや」
才人はむず痒いような感覚を覚えながら首を振った。
「なんかさ、ホントに帰ってきたんだなあって思ってよ。
おかしいなあ、父ちゃんたちが変人だったって以上に、帰っ...
「今度は変人呼ばわりか、オイ」
才蔵がトマトを買い物籠に放り込みながら苦笑する。
才人はふとあることを思い出して、父に問いかけた。
「なあ父ちゃん、さっき、母ちゃんは忍者じゃねえって言って...
「んー、まあ、そうだな」
才蔵は一応返事をしたが、二つの玉ねぎの内どちらが大きい...
構わず、才人はさらに問う。
「でも、やっぱりなんか漫画みてえな力持ってんだろ」
「まあな」
「どんなのよ?」
「そうさな」
才蔵はいやなことでも思い出すように、ゴボウを選びながら...
「少なくとも、俺は素手じゃ母ちゃんには勝てん」
「どういうこった?」
「ルイズさんとかよ、魔法使うんだろ?」
「そうだけど、なんでそんな……って、まさか!」
才人はごくりと唾を飲み干した。
「母ちゃんも、メイジなのか!?」
思わぬところでハルケギニアと地球との接点を見つけたかと...
5 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「いや、違う。魔法、ではねえんだがな」
「じゃあ何だよ」
「限りなくそれに近い能力だとは言っておくよ。少なくとも、...
「よく分かんねえ」
「そうだな。何というか、オーガニック的な何か、とでも言っ...
「いや、ますます分かんねえからそれ」
「そうだろうなあ」
才蔵は苦笑した。
「なに、その内嫌でも分かるさ」
そう言ってから、ふとどこか遠くを見るような眼差しで、才...
「本当は、お前には一生隠し通すつもりだったんだがな」
その瞳が深い哀しみを湛えているように見えて、才人は少し...
「ま、今更言っても始まらねえけどよ」
だが、その表情は一瞬だけで、才蔵はすぐに意地悪そうな笑...
「しっかし、お前も相変わらず抜けてるよなあ」
何のことか分からず、才人は困惑する。
「何がだよ」
「あのお喋り母ちゃんを、お前の可愛らしいご友人方と一緒に...
くくっとかみ殺すように笑いながら、才蔵は食料品が一杯に...
その言葉の意味を、才人は帰宅後に嫌というほど思い知るこ...
食料品でパンパンになったスーパーのビニール袋を持って、...
居間に入ると、異世界の友人達は天華を中心にテーブルを囲...
ビニール袋を床に下ろしながら、才人は首を傾げる。
「何やってんの、皆」
声をかけた段になってようやく才人たちが帰ってきたことに...
そして、それぞれに楽しげな、あるいは意地悪げな笑みを浮...
「なんだよお前ら、その顔は」
嫌な予感を覚える才人に、ルイズがニヤニヤしながら言った。
「サイト。あんた、七つになるまでおねしょが治らなかったん...
「な」
続いてギーシュが肩を震わせながら言った。
「八つのときには探検に出かけて、沼で溺れかけたそうじゃな...
「に」
「野良犬に追い掛け回されて、泣き喚きながら逃げ回ったとか」
「う」
「着ぐるみショー、とかいうので、作り物の怪物相手に本気で...
「ぐお」
「いやー、懐かしいねえ」
天華がケラケラ笑った。
情報の出所はこいつか、と才人は恥ずかしがりながら怒鳴っ...
6 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「母ちゃん、何俺の恥ずかしい秘密をばらしてんのよ!?」
「いいじゃないの、減るもんでもないし。ほら皆さん、これが...
天華は怒る才人の目の前で、これ見よがしにアルバムを捲っ...
何でそんな写真が残ってんだと、少々疑問に思わないでもな...
「止めろよぉぉぉぉっ!」
才人は叫びながら飛び掛ったが、天華は片手でアルバムをつ...
「なに恥ずかしがってんの。誰にだって子供の頃はあるじゃな...
「そりゃそうだけど、そういう問題じゃねえんだよ! それよ...
才人は必死に追いかけるが、どうしても天華に翻弄されてし...
だが天華のほうは息子の手を避けながら、どこか感心した様...
「おやおや、しばらく見ない内にずいぶん動きが良くなったみ...
「そりゃ俺だって多少の修羅場を潜りぬけ……って、んなことは...
「いいじゃないの、息子にさらに親しみを持ってもらおうとい...
「一生分かりたくねえよ、そんな愛情!」
その追いかけっこは才人がバテるまで続いたが、結局アルバ...
「ちくしょう、なんで捕まえられねえんだ」
「年季が違うよ、年季が」
ぜぇぜぇ言いながら床に横たわる才人に、天華がからかうよ...
「じゃ、後は皆さんで楽しんでちょうだいな」
天華はまたテーブルにアルバムをおくと、張り切った様子で...
「さ、それじゃあ晩御飯の支度をしましょうかね」
「あ、わたしもお手伝いいたします」
「わたしも」
台所に向かう天華を、シエスタとティファニアが追いかける。
「あら、ごめんなさいね。それじゃお言葉に甘えちゃおうかし...
「はい。あまりお役に立てないかもしれませんけど」
「泊めていただくのですし、これぐらいのことは」
台所から楽しげな声と共に、包丁で食材を刻む音などが聞こ...
「クソッ、本当に母ちゃんも人外なんだなあ」
ぼやき、嘆息しつつソファに座り直す才人の後ろから、才蔵...
「オイ才人」
「なによ父ちゃん」
「今までよく見なかったから気がつかなかったけどよ……あの耳...
父が真剣な顔でそんなこと言うので、才人はますますうんざ...
「息子にそういう生々しい面見せるのはやめてくれよ父ちゃん」
「いやいや、これは由々しき問題だぜ。でかすぎだよあれは。
なんつーの、革命? そう、革命という表現が相応しい乳だ...
真面目くさった顔でうんうんと頷く才蔵の顔に、才人は自分...
7 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
そんな才人の肩を、誰かが横から叩いた。
「なんだよ……って、コルベール先生。どうしたんスか」
見ると、コルベールが興奮した面持ちでテーブルの上のアル...
「サイト君。あのシャシンというのは一体どういう原理になっ...
それと、今君の母上が使っている、スイッチを捻るだけで火...
それに我々の頭上で光り輝いているものも、ランプとは到...
好奇心に瞳を輝かせ、コルベールは矢継ぎ早に質問してくる...
「マイペースッスね、先生……父ちゃん、悪いけど相手頼むわ」
「あいよ。ささ、先生。あっちの部屋で酒でも飲みながらお話...
「ええ、是非ともお願いいたしますぞ」
「でしたら私がお酌いたしますわ」
艶っぽい微笑を浮かべて近づいてきたキュルケを見て、才蔵...
「やあ、こりゃまたきれいなお嬢さんだな。こちらこそ、向こ...
そのとき台所の方から包丁が飛んできた。才蔵の鼻先をかす...
青ざめた才蔵が台所の方を見ると、驚きの表情を浮かべたシ...
「父ちゃん? まさか、息子のお友達に不埒な真似しようって...
「はははは、まさかそんなこと。信用してくださいよマイハニ...
才蔵はへこへこしながら慌てて居間の隣の部屋に向かう。
ミョズニトニルンを撃退したときとは打って変わった情けな...
(尻に敷かれてんなあ、父ちゃん)
才人はまたも変なところで父と自分の血のつながりを自覚し...
そんな才人の両肩を、またも二つの手が叩く。
「サイト!」
「君って奴は!」
『実にけしからん!』
声を揃えてそう言うのは、目を血走らせたギーシュとマリコ...
才人は二人の勢いに少々引きながら聞いた。
「どうした、いきなり何言い出すんだよお前らは」
「どうしたもこうしたもあるか!」
「さっきのシャシンとやらを見たぞ!」
「君以外にも、たくさんの女の子達が写っているじゃあないか」
「なんてけしからん! 僕にも紹介してください!」
相変わらず正直な連中である。才人は苦笑して手を振った。
8 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「紹介ったって、俺には特別仲のいい女の子なんていなかった...
「嘘だっ!」
「そんなこと言って、学院のとき同様モテモテなのに違いない...
「いや、本当にいなかったって、そんなの」
これは本当のことである。
あまりに女の子と縁がなかったために、ネットの出会い系サ...
だが、ギーシュとマリコルヌはぎらぎらした目を見合わせて...
「ははは、白を切ろうったってそうはいかないよ、君」
「実際、君とずいぶん距離が近い子だっていたじゃないか」
「なに?」
そんな女の子のことなど記憶にないので、才人は困惑した。
「誰のこと言ってんだ、お前ら」
「とぼけるなよ」
「ほら、たとえばさ、君よりずいぶん小柄な黒髪の」
才人の脳裏に一人の少女の姿が浮かぶ。
これはひどい誤解だ、と才人は笑って手を振った。
「ああ、その子なら多分お隣の千夏」
そこまで言いかけたところで、才人は不意に背筋に悪寒を感...
恐る恐る振り返ってみると、世にも恐ろしい形相を浮かべた...
「オイ犬」
ドスの利いた声。見た目どおり、怒り心頭らしい。
「はい、なんでございましょうご主人様」
才人は自然とソファの上で正座をしていた。ハルケギニアで...
ルイズは震える指を、一枚の写真に突きつけた。
「これについて、何か言い訳することはありますか」
どれだ、と思って見てみて、才人の顔から血の気が引いた。
それは、才人が高一のときの、体育祭の写真だった。
100m走でゴールした後、他の走者が全て走り終わるのを...
問題は、そこに写っている才人の顔が向いている方向だった。
「不思議ねえ。わたしには、この、横にいるビッチの余計な脂...
ルイズの言うとおりである。
才人は、そのとき自分と同じように競技の終了を待っていた...
彼女が気付いていないのをいいことに、思う存分ガン視して...
無論気付いていなかったのは姫路さん本人だけで、写真の撮...
当時は「やあおはよう視姦レイパー」だのと散々からかわれ...
(そんな過去が、まさか今この場で命の危機として立ちふさが...
才人の背筋を冷たい汗が滑り落ちる。
とにかくなんとか切り抜けねばと、才人は必死で弁解する。
「落ち着けルイズ。そもそもこれはお前と会うずっと前の話で...
「関係あるか!」
叫びながら、ルイズが懐から杖を取り出す。
9 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/10...
「ふふ。あんた、そんなにあの部分につく余計な脂肪が好きな...
あんなもん、邪魔になるだけで何の役にも立たないってのに」
「いや、そんなことは俺にもお前にもわからないはずじゃ」
「あぁ?」
「いえ何でもないです」
また余計なことを言ってしまったと、才人はなおさら青ざめ...
ルイズはこめかみをひくつかせながら、かなり無理矢理っぽ...
「分かったわ。あんたのこの悪癖は、どうやら生まれついての...
とすれば、わたしは根本からそれを正す必要があると見た」
恐れおののく才人の前で、ルイズは杖を振り上げる。
「死にさらせこの」
「あら、ルイズさんったらずいぶん元気なのねえ」
背後からかかったのん気な声に、ルイズは慌てて杖を隠す。
「お、お母様!」
「おや、なんだか新鮮な響きねえ」
天華がうっとりと頬に片手を添える。
「さ、晩御飯の支度が出来ましたから、皆さんテーブルに座っ...
ほら才人、ボケッとしてないで家中から椅子をかき集めて来...
「お、おう、分かった!」
天の助けとばかりに才人が駆け出そうとしたところ、天華が...
「あんたもホント、変なとこばっかり父ちゃんに似るね」
「え」
「後でちゃんとフォローしとくんだよ」
どうやら、何もかもお見通しらしかった。
そうして、才人が懐かしい自分の部屋から椅子を持って出た...
「タバサ。どうした、何かあったか」
聞くと、彼女はいつもの無表情のまま淡々と言った。
「胸部の脂肪は激しい運動を阻害する。客観的に見て、少ない...
「なに?」
意味が分からず聞き返したが、タバサは黙って踵を返し、居...
10 名前: 平賀さん家へいらっしゃい [sage] 投稿日: 2007/1...
そんなこんなで、その日は騒がしい夜となった。
予想通りシルフィードが食卓を席巻し、あらゆる料理を思う...
才人の母に自分の存在を売り込もうと、ルイズとシエスタが...
その横でタバサはさり気なくサイレントの魔法を張り、周辺...
アンリエッタはその場の喧騒をどこか面白そうに見物しなが...
その隣ではアニエスが「女王の御前だというのに騒がしすぎ...
当の女王本人が上機嫌な手前、何も言えずにもどかしそうな...
ギーシュとマリコルヌは「うまいうまい」と遠慮なく食事に...
隣のモンモランシーから「あんたたちは馴染みすぎなのよ!...
珍しく酒に酔ったコルベールが才蔵相手に熱弁を振るい、キ...
才蔵はコルベールの話を聞きつつ赤ら顔で無闇にうんうん頷...
才人の見た感じでは果たして正気を保っていたかどうか怪し...
そんな喧騒の中、天華はニコニコ笑いながら、ティファニア...
「いやあ、ずいぶん賑やかだねえ、相棒」
「むしろ賑やかすぎるぜ」
テーブルに立てかけられたデルフリンガーの声に答えつつ、...
「ま、とりあえず、父ちゃんと母ちゃんが皆を受け入れてくれ...
「相棒のご両親らしく、些事にはこだわらねえ人たちみてえだ...
「なんか褒められてる気がしねえな、それ」
そう言いつつも、とりあえず初日が平穏無事に済みそうな流...
――終わり。
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