ゼロの使い魔保管庫
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186 名前: 三年目(1) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
歌を歌いながら帰省の荷物をまとめるシエスタにルイズは不...
「ずいぶん嫌な歌詞じゃない?それ」
シエスタは振り向くと、舌を出して答える。
「チキュウで、男女でデュエットする曲ではすごく有名らしい...
「あああああんた!」
いきり立つルイズに、だがシエスタは逆に口を尖らせて反論...
「このぐらいの厭味ぐらいは受けてほしいと思いますけど?ミ...
ルイズは頬を赤らめて部屋の奥に目を向けた。奥には雪を模...
り、天井にも旗や始祖ブリミルの聖具に似た飾りが取り付けら...
ンダーは、今日を中心に前後3日だけはすっぽりと白く空けられ...
「アニエスさんが文句を言っていましたよ。『よくわからん記...
「だって!きちんと陛下には休暇を年初めに申請してるのよ?」
シエスタはずっ、と一歩前に出ると、ルイズに顔を近づけて...
「だから、私だって今日から休暇いただくようにしたんですよ...
「それは……」
「ありがとう、ぐらい言って欲しいですけど」
ルイズは口をますます口を尖らせ、だが誇らしげに言った。
「ありがと」
シエスタは小さく吹き出して答える。
「ま、私も骨休めしてきますよ。私もその……まあ内緒」
ん?とルイズは目を剥いたが、シエスタはわざとらしく舌を...
には指輪の絵が幾つも並んでいる。
「何それ」
「私たち平民の娘の間で、貰えたら嬉しい婚約指輪の人気商品...
一位に輝いているのは雪の結晶をあしらった指輪だった。ル...
の財力と平民を比べるほどルイズも馬鹿ではない。
「もしかして、予定でもあるの?」
「これでも平民の給金じゃどれだけかかるか。シュヴァリエの...
シエスタは笑って雑誌を鞄に押し込むと、荷物を背負ってド...
て答える。
「メリー・クリスマス!サイトさんと二人の時間を大切に!」
187 名前: 三年目(2) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
ちょっとまずかったかな、と先週王宮であったやりとりを思...
いがアニエス率いる騎士隊の苦手な分野だとのことでルイズに...
途端、即座に答えたのだ。
「お断りします」
マザリーニが渋い顔で唇を噛んでいた。アニエスが拳を握っ...
ズは臆することなく言い継いだのだ。
「陛下、今年に入ってすぐ、『24日だけはお休みを下さい』と...
に会えないとしても、この日だけはお休みをいただきたいと言...
アンリエッタははっ、としてうなずいた。クリスマス・イヴ...
その使い魔の寂しさを癒そうと決めている日。帰る道が見つか...
げるのだと聞いたではないか。親友と言いつつ彼女の大切な決...
を連れずに一人で断りに来たに違いない。
アンリエッタは大きくうなずいて言った。
「本当に私も気遣いが足りませんでした。私も甘えすぎていま...
苦手を克服してみようとは思いませんか?」
「しかし……」
「部隊外でもアニエスの確実に信頼出来る人がいれば後の報告...
アニエスは溜息をついてうなずき、ルイズは正式に休暇の認...
ながら苦笑する。自分は貴族だというのに、今日のために仕事...
でも仕方ないではないか。他の貴族だってパーティだ何だと...
けている仕事の多くは、たった一つでも一人の貴族が一生のう...
すら超えて無茶苦茶と言った方が良い仕事だ。
今日のためにシエスタと、シエスタに紹介されたマルトーシ...
もどうでも良いと、周囲にメイドがいる中で平民のマルトーに...
トーはまるでサイトの父親であるかのように、料理を覚えられ...
それも全て今日のため。そして、今日からまた、彼がチキュ...
ふと、ルイズのまなじりに涙がにじむ。そう、彼が帰る日ま...
彼をこの、遠い世界に繋いだままだ。このクリスマスだって自...
この三年間を思い出す。一年目。サイトが雪で氷菓子を作っ...
合コン紛いの怪しげな企画をしていたから吹っ飛ばした。でも...
今年王位に就いたタバサは、この日にマリコルヌを護衛に使う...
思っていたけれど、向こうでは本当に忠臣で通っているみたい...
せにずっと私のそばにいてくれた。
ずっと。気づくいたら本当に空気のように当たり前にいるサ...
に何かをしてもらうばかりだった。初めの頃お金の面倒は看て...
不要になった。だから今年。
今年の三年目は、私がサイトに尽くしてあげる年なのだ。
188 名前: 三年目(3) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
窓の外で遊ぶ子供たちの声が遠くなった。純白に輝いていた...
ている。空には二つの月が仲良く並んでいる。
テーブルにはサイトがチキュウでクリスマスによく食べてい...
な生魚をあしらった軽食、シエスタがひいお爺さんから習った...
王宮でも見ることの出来ない異国の料理が所狭しと並んでいる。
でも、ルイズの隣りは空いたままだ。ルイズは自分の手を見...
こうにしまってあるプレゼントのセーターは力作だというのに。
サイトはまだ帰ってこない。コルベールから卒業祝いに貰っ...
じさせる。サイトの世界ではさらに精度の高い時計があるのだ...
のがあったらどれだけ待つ時間は苦しいのだろう。
三年目の浮気。シエスタが意地悪に歌っていた歌を思い出し...
戻ってきて喧嘩している歌だ。今の私は。
サイトが帰ってこない。
がたり、とドアが鳴った。ルイズは飛び上がるようにして玄...
「お久しぶり!……どうしたの?」
モンモランシーが怪訝な顔で訊く。ルイズは溜息をついて何...
シーは化粧水の入った箱をルイズに押し付けて言った。
「今日ね、私の商会が初の黒字決算だったの!で、大口顧客様...
ああ、とルイズは気のない声を出して思い出す。モンモラン...
具を全部断り、代わりにお金をもらって香水専門のギーシュ・...
斐性なしだから、ルイズの予定の相手とは違うから、と笑って...
「悔しいけどラ・ヴァリエール家の買い方は尋常じゃないわ。...
んたのお姉さんだけよ。あと、紹介してくれたアニエス。制汗...
モンモランシーは一通り喋ると、そういえば、と言って続け...
「さっき、サイトが若い女の子と宝飾店にいたわ。たしかアニ...
水を買ったお客だからうちの商会でも話題になったんだけど。...
ルイズが顔をあげる。モンモランシーはやっと気付いて顔を...
「帰って」
「……ルイズ、あのね」
「帰って。今すぐ帰らないと」
脇から杖を取り出す。呪文を一言唱えた途端、闇色の気配が...
「わかった帰りますではまたのご利用を」
ルイズは乱暴にドアを閉める。待っていたのに。ずっとずっ...
使ってもらって。ずっとずっと待っていたのに。
でも、三年目の浮気。
ほろり、と涙がこぼれ落ちる。せっかく着飾ったドレスに涙...
必要もないのだから。このドレスを褒めて欲しかった人は帰っ...
ドアの脇に崩れ落ちるように座る。膝を抱え込んで声も出せ...
もう、独りの時間には耐えられない。
189 名前: 三年目(4) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
がたり、とドアが鳴る。
「ルイズごめん!遅くなった……ルイズ?」
ドアの脇からルイズがゆらりと立ち上がった。もう一度信じ...
サイトの背中からぴょこん、と気丈そうな年下の少女が顔を出...
「本日はサイト様にはお世話になりました!」
ルイズに敬礼する。だが服装はドレスだ。色白の頬は寒さで...
はルイズにかなり近く、だがどこか鍛えられたしなやかさが感...
「今日、仕事でさ……」
「プレゼント買っていたんですって?二人で。今日の、この日...
ルイズの言葉にサイトは気づく。
「ルイズ、お前何か……」
ルイズは言葉を遮って言う。
「待ってたのに。ずっとずっとずっと待ってたのに」
ルイズが杖を振り上げる。サイトは慌てて先ほどの少女を背...
「サイトの背中の後ろは、私の場所だと思ってた」
からり、と杖が手から落ちて転がる。ルイズは叫んだ。
「どこでも、どこでも行けばいいじゃない!その子と二人でチ...
も探せない私より、私なんかより!」
190 名前: 三年目(5) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
「ルイズ!違います!」
遠くから叫び声が聞こえた。声の方を向くと、アニエスの駆...
に王宮で着ている服の上にコートだけをはおった姿で息を切ら...
「違うのです。本当にサイトは手違いで仕事だったのです!」
ぐっと乱暴に引き寄せられたアニエスが黙って頭を下げる。...
けた跡が手の形に残っていた。
「最近、若いカップルの貴族を襲う変質者がいるのだ。それも...
ながりがあるようで内密に調べる必要があったわけだ。以前に...
小柄で細身。自分と、アニエスに首ったまを掴まれている先...
額に手を当てて話す。
「私がアニエスに『手伝ってもらえば』とあの席で言いました...
アニエスは肩を縮めて再び頭を下げて言った。
「カップル役の男をサイトに頼んだのだ。そして女役は私の隊...
と仰ったのだが、陛下自らというわけにいかぬ上そもそも体型...
再びアンリエッタはアニエスを一睨みしてルイズの前に立っ...
「本当に今回は何度も何度も、ごめんなさい」
「陛下!」
頭を下げるアンリエッタにルイズは慌てて頭を上げるよう手...
ない。と、改めてルイズはサイトに目を向けた。サイトの戸惑...
「信じて、いいの?」
「前から言ってただろ?ルイズのそばにいるって」
ルイズがうなずくと、ようやくアンリエッタは顔を上げて馬...
下げてアンリエッタの後を追う。だがサイトは三人を呼び止め...
「悪いんだけど、証人になってくれるか」
ルイズは怪訝な顔をするが、三人は真剣な表情でうなずいた。
「ルイズさ、俺が宝飾店にいたのって、クリスマスプレゼント...
ら参考に聞いてたんだよな」
言ってサイトはポケットから小箱を取り出す。ルイズが受け...
守る中、ルイズは包みを解いた。中は指輪の小箱だ。
ゆっくりと開けると、そこにはどこかで見たデザインの指輪...
晶をあしらった指輪。サイトの給金ではかなり苦しいとシエス...
「婚約指輪、なんだけど。俺の給金じゃこれが精一杯で」
「……馬鹿」
「犬、じゃないんだな」
「私と結婚する人は、犬じゃないから」
差し出したルイズの指に、サイトはゆっくりと指輪をはめて...
なことをしているけれど、こうしてみれば自分より背は高くて...
彼の唇には。
肩を抱かれる。つま先立ちをするように背を伸ばす。サイト...
先ほど流した沢山の涙よりはるかに暖かくて。
ゆっくりと唇を重ねる二人を背にしながらアニエスは部下の...
「貯金しておけ。貴族の結婚式に呼ばれると何かと物入りだ」
双月がゆったりと二人を照らしていた。
終了行:
186 名前: 三年目(1) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
歌を歌いながら帰省の荷物をまとめるシエスタにルイズは不...
「ずいぶん嫌な歌詞じゃない?それ」
シエスタは振り向くと、舌を出して答える。
「チキュウで、男女でデュエットする曲ではすごく有名らしい...
「あああああんた!」
いきり立つルイズに、だがシエスタは逆に口を尖らせて反論...
「このぐらいの厭味ぐらいは受けてほしいと思いますけど?ミ...
ルイズは頬を赤らめて部屋の奥に目を向けた。奥には雪を模...
り、天井にも旗や始祖ブリミルの聖具に似た飾りが取り付けら...
ンダーは、今日を中心に前後3日だけはすっぽりと白く空けられ...
「アニエスさんが文句を言っていましたよ。『よくわからん記...
「だって!きちんと陛下には休暇を年初めに申請してるのよ?」
シエスタはずっ、と一歩前に出ると、ルイズに顔を近づけて...
「だから、私だって今日から休暇いただくようにしたんですよ...
「それは……」
「ありがとう、ぐらい言って欲しいですけど」
ルイズは口をますます口を尖らせ、だが誇らしげに言った。
「ありがと」
シエスタは小さく吹き出して答える。
「ま、私も骨休めしてきますよ。私もその……まあ内緒」
ん?とルイズは目を剥いたが、シエスタはわざとらしく舌を...
には指輪の絵が幾つも並んでいる。
「何それ」
「私たち平民の娘の間で、貰えたら嬉しい婚約指輪の人気商品...
一位に輝いているのは雪の結晶をあしらった指輪だった。ル...
の財力と平民を比べるほどルイズも馬鹿ではない。
「もしかして、予定でもあるの?」
「これでも平民の給金じゃどれだけかかるか。シュヴァリエの...
シエスタは笑って雑誌を鞄に押し込むと、荷物を背負ってド...
て答える。
「メリー・クリスマス!サイトさんと二人の時間を大切に!」
187 名前: 三年目(2) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
ちょっとまずかったかな、と先週王宮であったやりとりを思...
いがアニエス率いる騎士隊の苦手な分野だとのことでルイズに...
途端、即座に答えたのだ。
「お断りします」
マザリーニが渋い顔で唇を噛んでいた。アニエスが拳を握っ...
ズは臆することなく言い継いだのだ。
「陛下、今年に入ってすぐ、『24日だけはお休みを下さい』と...
に会えないとしても、この日だけはお休みをいただきたいと言...
アンリエッタははっ、としてうなずいた。クリスマス・イヴ...
その使い魔の寂しさを癒そうと決めている日。帰る道が見つか...
げるのだと聞いたではないか。親友と言いつつ彼女の大切な決...
を連れずに一人で断りに来たに違いない。
アンリエッタは大きくうなずいて言った。
「本当に私も気遣いが足りませんでした。私も甘えすぎていま...
苦手を克服してみようとは思いませんか?」
「しかし……」
「部隊外でもアニエスの確実に信頼出来る人がいれば後の報告...
アニエスは溜息をついてうなずき、ルイズは正式に休暇の認...
ながら苦笑する。自分は貴族だというのに、今日のために仕事...
でも仕方ないではないか。他の貴族だってパーティだ何だと...
けている仕事の多くは、たった一つでも一人の貴族が一生のう...
すら超えて無茶苦茶と言った方が良い仕事だ。
今日のためにシエスタと、シエスタに紹介されたマルトーシ...
もどうでも良いと、周囲にメイドがいる中で平民のマルトーに...
トーはまるでサイトの父親であるかのように、料理を覚えられ...
それも全て今日のため。そして、今日からまた、彼がチキュ...
ふと、ルイズのまなじりに涙がにじむ。そう、彼が帰る日ま...
彼をこの、遠い世界に繋いだままだ。このクリスマスだって自...
この三年間を思い出す。一年目。サイトが雪で氷菓子を作っ...
合コン紛いの怪しげな企画をしていたから吹っ飛ばした。でも...
今年王位に就いたタバサは、この日にマリコルヌを護衛に使う...
思っていたけれど、向こうでは本当に忠臣で通っているみたい...
せにずっと私のそばにいてくれた。
ずっと。気づくいたら本当に空気のように当たり前にいるサ...
に何かをしてもらうばかりだった。初めの頃お金の面倒は看て...
不要になった。だから今年。
今年の三年目は、私がサイトに尽くしてあげる年なのだ。
188 名前: 三年目(3) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
窓の外で遊ぶ子供たちの声が遠くなった。純白に輝いていた...
ている。空には二つの月が仲良く並んでいる。
テーブルにはサイトがチキュウでクリスマスによく食べてい...
な生魚をあしらった軽食、シエスタがひいお爺さんから習った...
王宮でも見ることの出来ない異国の料理が所狭しと並んでいる。
でも、ルイズの隣りは空いたままだ。ルイズは自分の手を見...
こうにしまってあるプレゼントのセーターは力作だというのに。
サイトはまだ帰ってこない。コルベールから卒業祝いに貰っ...
じさせる。サイトの世界ではさらに精度の高い時計があるのだ...
のがあったらどれだけ待つ時間は苦しいのだろう。
三年目の浮気。シエスタが意地悪に歌っていた歌を思い出し...
戻ってきて喧嘩している歌だ。今の私は。
サイトが帰ってこない。
がたり、とドアが鳴った。ルイズは飛び上がるようにして玄...
「お久しぶり!……どうしたの?」
モンモランシーが怪訝な顔で訊く。ルイズは溜息をついて何...
シーは化粧水の入った箱をルイズに押し付けて言った。
「今日ね、私の商会が初の黒字決算だったの!で、大口顧客様...
ああ、とルイズは気のない声を出して思い出す。モンモラン...
具を全部断り、代わりにお金をもらって香水専門のギーシュ・...
斐性なしだから、ルイズの予定の相手とは違うから、と笑って...
「悔しいけどラ・ヴァリエール家の買い方は尋常じゃないわ。...
んたのお姉さんだけよ。あと、紹介してくれたアニエス。制汗...
モンモランシーは一通り喋ると、そういえば、と言って続け...
「さっき、サイトが若い女の子と宝飾店にいたわ。たしかアニ...
水を買ったお客だからうちの商会でも話題になったんだけど。...
ルイズが顔をあげる。モンモランシーはやっと気付いて顔を...
「帰って」
「……ルイズ、あのね」
「帰って。今すぐ帰らないと」
脇から杖を取り出す。呪文を一言唱えた途端、闇色の気配が...
「わかった帰りますではまたのご利用を」
ルイズは乱暴にドアを閉める。待っていたのに。ずっとずっ...
使ってもらって。ずっとずっと待っていたのに。
でも、三年目の浮気。
ほろり、と涙がこぼれ落ちる。せっかく着飾ったドレスに涙...
必要もないのだから。このドレスを褒めて欲しかった人は帰っ...
ドアの脇に崩れ落ちるように座る。膝を抱え込んで声も出せ...
もう、独りの時間には耐えられない。
189 名前: 三年目(4) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
がたり、とドアが鳴る。
「ルイズごめん!遅くなった……ルイズ?」
ドアの脇からルイズがゆらりと立ち上がった。もう一度信じ...
サイトの背中からぴょこん、と気丈そうな年下の少女が顔を出...
「本日はサイト様にはお世話になりました!」
ルイズに敬礼する。だが服装はドレスだ。色白の頬は寒さで...
はルイズにかなり近く、だがどこか鍛えられたしなやかさが感...
「今日、仕事でさ……」
「プレゼント買っていたんですって?二人で。今日の、この日...
ルイズの言葉にサイトは気づく。
「ルイズ、お前何か……」
ルイズは言葉を遮って言う。
「待ってたのに。ずっとずっとずっと待ってたのに」
ルイズが杖を振り上げる。サイトは慌てて先ほどの少女を背...
「サイトの背中の後ろは、私の場所だと思ってた」
からり、と杖が手から落ちて転がる。ルイズは叫んだ。
「どこでも、どこでも行けばいいじゃない!その子と二人でチ...
も探せない私より、私なんかより!」
190 名前: 三年目(5) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13...
「ルイズ!違います!」
遠くから叫び声が聞こえた。声の方を向くと、アニエスの駆...
に王宮で着ている服の上にコートだけをはおった姿で息を切ら...
「違うのです。本当にサイトは手違いで仕事だったのです!」
ぐっと乱暴に引き寄せられたアニエスが黙って頭を下げる。...
けた跡が手の形に残っていた。
「最近、若いカップルの貴族を襲う変質者がいるのだ。それも...
ながりがあるようで内密に調べる必要があったわけだ。以前に...
小柄で細身。自分と、アニエスに首ったまを掴まれている先...
額に手を当てて話す。
「私がアニエスに『手伝ってもらえば』とあの席で言いました...
アニエスは肩を縮めて再び頭を下げて言った。
「カップル役の男をサイトに頼んだのだ。そして女役は私の隊...
と仰ったのだが、陛下自らというわけにいかぬ上そもそも体型...
再びアンリエッタはアニエスを一睨みしてルイズの前に立っ...
「本当に今回は何度も何度も、ごめんなさい」
「陛下!」
頭を下げるアンリエッタにルイズは慌てて頭を上げるよう手...
ない。と、改めてルイズはサイトに目を向けた。サイトの戸惑...
「信じて、いいの?」
「前から言ってただろ?ルイズのそばにいるって」
ルイズがうなずくと、ようやくアンリエッタは顔を上げて馬...
下げてアンリエッタの後を追う。だがサイトは三人を呼び止め...
「悪いんだけど、証人になってくれるか」
ルイズは怪訝な顔をするが、三人は真剣な表情でうなずいた。
「ルイズさ、俺が宝飾店にいたのって、クリスマスプレゼント...
ら参考に聞いてたんだよな」
言ってサイトはポケットから小箱を取り出す。ルイズが受け...
守る中、ルイズは包みを解いた。中は指輪の小箱だ。
ゆっくりと開けると、そこにはどこかで見たデザインの指輪...
晶をあしらった指輪。サイトの給金ではかなり苦しいとシエス...
「婚約指輪、なんだけど。俺の給金じゃこれが精一杯で」
「……馬鹿」
「犬、じゃないんだな」
「私と結婚する人は、犬じゃないから」
差し出したルイズの指に、サイトはゆっくりと指輪をはめて...
なことをしているけれど、こうしてみれば自分より背は高くて...
彼の唇には。
肩を抱かれる。つま先立ちをするように背を伸ばす。サイト...
先ほど流した沢山の涙よりはるかに暖かくて。
ゆっくりと唇を重ねる二人を背にしながらアニエスは部下の...
「貯金しておけ。貴族の結婚式に呼ばれると何かと物入りだ」
双月がゆったりと二人を照らしていた。
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