ゼロの使い魔保管庫
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378 せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金) 1...
さてと、13巻解禁したので、一言感想など。
すいません14巻で才人帰ってないビジョンが全力で見えまし...
っていうかそん時の事考えると今からwktkが止まらないぜ!
まあそれはともかく投下。
http://wikiwiki.jp/zero/?14-632
『救国の勇者』の続編?みたいなもの。13巻読んで思いつい...
379 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「こら。いい加減起きなさい」
柔らかい叱咤の声に、才人は目を醒ます。
まず目に入るのは桜の舞い散る青い空。左手に見えるくすんだ...
あくびをしながら弾力のある枕から起き上がる。軽くのびをす...
才人は背後を振り返る。
そこには、青い芝生に座り込んだ、ウェーブのかかった桜色の...
彼女の名は。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女は平賀才人の恋人にして婚約者。
異世界ハルケギニアから、才人とともに日本へやってきた、か...
「足、痺れるかと思ったわよ。全く」
「わり。ルイズの膝枕気持ちよくてさ」
才人の反論にまったくもう、しょうがないわね、と言いながら...
すると、やはり足が痺れたのだろう。ルイズはバランスを崩し...
それを才人は慌てて支える。
「…ほらやっぱり痺れたじゃない」
「…さっさと起こせばよかったんだよ」
腕の中でそうぼやくルイズに、才人はそう反論する。
しかし、ルイズはさらに反論する。
「あんまりカワイイ顔で寝てるから。起こすのもったいなくて」
「…あのなあ」
呆れたように才人は言うが。
傍から見れば、どこからどう見ても免許皆伝のバカップルであ...
二人は今、才人の暮らしていた日本にいる。
あの日、デルフリンガーの空けた穴から二人が地球に辿り着い...
日本にやってきたルイズは、最初、日本語がわからなかった。...
元々努力家で頭のよいルイズは、言葉と共に日本の習慣や文化...
今では、その外見以外は完全に日本に溶け込んでいた。
だが、問題は言語だけではない。ルイズには現代の日本で暮ら...
そう、戸籍である。異世界人である彼女にはビザすらない。法...
しかし、それをクリアする方法があった。才人の母の知り合い...
身元保証人にはその弁護士と、知人のイタリア人がなり、そし...
戸籍上の今の彼女の名前は、『平賀ルイズ・フランソワーズ』。
そして、今、彼女は才人と同じ大学に通う大学生。
桜の色をしたウェーブのショートボブと、ベージュのパンツル...
ルイズは、日本に来てから、襟元より下に髪を伸ばさなかった。
何故か、と一度だけ才人は尋ねた事がある。
ルイズは応えた。それはね、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブ...
だから、平賀ルイズ・フランソワーズとなった自分は、髪を伸...
才人は、それ以来、髪について何も言わない。
ルイズのあんな寂しそうな顔は見たくないし、思い出させたく...
今は、この日本で、ルイズを幸せにする。
それが、ガンダールヴの自分にできる、異世界へやってきた自...
まあ、そんな真剣な話はともかく、二人はそれなり以上に幸せ...
一つ屋根の下寝食を共にし、両親公認で交際していて、大学を...
まさに順風満帆である。
しかし。
そんな二人を、とんでもない異変が襲うのである。
380 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「ただいまー」
帰りを告げながら才人が家のドアを開ける。
その後ろに、ルイズが続く。
「ただいま帰りました」
才人の母がいたら『タダイマでいいのよルイズちゃんっ』とか...
「誰もいないのか」
玄関を見ると、そこに靴は一足もない。
父も母も、出かけているようだ。
二人はフローリングの廊下に上がり、居間へ向かう。
居間の机の上には、ラップをかけられた夕食が乗っかっていた。
不意に、才人の携帯が鳴る。才人はポケットから飛び出た、雑...
そのディスプレイには、『母』の文字。母親からメールが来た...
才人は『今日の晩御飯』という件名の最新メールを開いてみる。
『テーブルの上のおかずをチンして食べてね。お味噌汁はナベ...
そんな夕食のメニューは、鰤大根にきんぴらごぼう、黒豆の煮...
味噌汁はおそらく、豆腐と若布。
ものすごく和食なメニューだったが、ルイズは意外なことに和...
最初は『なにこの茶色いおかず』とか言いながら食べていたが...
「まーた和食かよー」
しかし才人はそこまで和食が好きと言うわけでもない。
ルイズが和食好きだとわかって以来、平賀家のメニューには和...
…たまには、昔みたく一週間カレーとか食いたいなあ…。
などと爛れた願望を望みながら、才人はラップを丸め、ゴミ箱...
そんな才人に、荷物を部屋に置いてきたルイズが、語りかけた。
「洋食がいいなら、作ろうか?」
しかし即座に才人は否定する。
「いいっていいって!うん、和食がいい!」
五年経っても、ルイズには全く変わらないものが二つあった。
料理の腕と、胸の大きさである。
そして、このことに触れると当然、才人のご主人様は怒り狂う...
「…なんでそんなに慌ててんのよ」
「いや、なんでもないです、はい」
「私が料理すんのがそんなにイヤなワケーっ!?」
言って才人に飛び掛る。
あっという間にルイズは才人を居間の床に組み伏せる。
抵抗しようと思えば抵抗できるのだろうが、それをしてしまっ...
大人しくされるがまま、あんまり痛くないルイズの拳骨を受け...
381 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
何発か殴り終わると、ようやく冷静になったのか、ルイズは拳...
そして、マウントポジションのまま、すまなさそうな顔をする。
「…ごめんね。料理下手なのは事実だもんね…」
昔は怒ったらそのまま怒りっぱなしだったのだが、最近、ルイ...
それは、才人と婚約してからぐらいの時期から、そうなってき...
ルイズは才人の上で、しゅん、と小さくなる。
「…式挙げるまでには、ちゃんと普通に作れるようになるから…」
そして、不安を湛えた表情で才人を見つめて、言う。
「わたしのこと、きらいにならないで…」
ルイズは、ハルケギニアにいた時よりも、才人と離れる事を恐...
いかに家族のように接してくれてはいても、才人の家族とラ・...
この日本で、この地球で、この世界で、本当の意味でルイズが...
才人は、そんなルイズにたまらない愛しさを感じて、抱き締め...
「嫌いになんかなるわけないだろ。俺は死ぬまで、ルイズと一...
「うん。うん…」
まるで泣く子をあやすように髪を撫ぜる才人の肩に、ルイズは...
「…とんでもないバカップルぶりねえ。ご家族が見たらなんて言...
そんなキュルケの挑発も、懐かしく聞こえ
「…え?」
「…ルイズも聞こえたのか今の?」
一瞬聞こえた幻聴。
それは、日本語ではなかった。
異世界の言語。ハルケギニアの、言葉。
その声は、居間の入り口から響いてきた。
二人は、騎乗位のまま、居間の入り口を見る。
そこにいたのは。
背の高い、燃えるような真紅の長い髪をアップに纏めた、褐色...
日本家屋には場違いな、黒いローブを羽織っている。
それは、見紛うはずもない。
「「キュルケっ?」」
才人は日本語で、ルイズはハルケギニアの言葉で、その女性の...
「はぁい。お二人さん。元気にやってる?って聞くまでもない...
…何よその幽霊を見るような目つき」
「どどどどどどどどどーしてっ?」
ルイズは目の前にキュルケがいるのに、その存在が信じられな...
ここは日本で、ハルケギニアではない。
異世界という壁に隔てられているハルケギニアは、月よりも遠...
「んー?カンタンな理屈じゃないの。シャイターンの門を使っ...
「ってカンタンに言うけど!どうやって帰るのよ!アンタ家は...
キュルケは平然と言い放つが、ルイズはそんなキュルケに猛然...
自分はあれだけ悩み、あれだけ追い詰められて、この異世界に...
382 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「あー、家族なら連れてきたわよー?」
「へ?」
ルイズの目が点になる。
まさか、キュルケの両親が?
しかし、その予想は違っていた。
キュルケは、玄関の方へ向けて、廊下から呼びかけた。
「あなたー?まだ終わらないのぉー?」
あなた…?まさか…?
「少し待っておくれキュルケ、この扉の造りといったらもう、...
玄関から聞こえてきた声は。
「「コルベール先生っ!?」」
廊下に飛び出した二人の視界に入ったのは。
眩く輝く頭頂部。その脇にしがみつく、申し訳程度の毛髪。
通称コッパゲ、ジャン・コルベール。
好奇心旺盛なハルケギニア随一の研究者は、クロム合金の玄関...
「ってあなたってアンタもしかして…」
「そ。ウチの亭主よ。って言っても式挙げたのは今年の春だけ...
言って、左手の薬指に光る大粒のルビーを誇らしげに掲げる。
そして、続けた。
「それで、あと二人ほどいるんだけど。ちょっと遅れてるのか...
「…へ?」
「…誰?」
驚きで呆然とするしかない二人の視界に、黒い何かと、大きな...
次の瞬間。
「サイトさぁ〜〜〜〜〜んっ!!」
いつか聞きなれた声。
そして、日本の特定の場所でしかお目にかかれない、特殊なコ...
五年の歳月でさらにボリュームの増した髪と胸を揺らしながら...
「ちょ、シエスタ胸胸!当たってるって!」
「やだもうサイトさん、当ててるに決まってるじゃないですか...
言って更にきつく抱きつき、腰を振って柔らかい胸をぐにぐに...
「会いたかったです寂しかったですもう二度と離れませんっ!」
シエスタはうれし涙を流しながら、才人を絞め殺しそうな勢い...
「ちょ、苦しいってシエスタ」
その光景を呆然と見つめるルイズの中に、ずいぶんと久しく忘...
「…ああそう、そうなんだ。おちちがいいんだ。やっぱりアンタ...
叫んで放った久方ぶりの跳び蹴りは、メイドだけを吹っ飛ばす。
主人の危機を察した、優秀なシュヴァリエが、咄嗟に才人だけ...
383 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「サイト、大丈夫?」
「…え?タバサ?」
あの日の小さな青い髪の少女は、五年の歳月を経て女に成長し...
彼女を象徴する青い髪は真っ直ぐ美しく伸びており、動きの妨...
起伏の少なかった身体は、扇情的と言えるほどにメリハリがき...
しかし、才人の顔を潤んだ瞳で見つめるその女性は、確かに、...
タバサは何も言わず、感極まった表情で、才人に抱きつく。
「…逢いたかった…」
「ちょっと、サイトから離れなさいよっ!」
そのタバサの襟を引っつかみ、ルイズは才人からタバサをひっ...
タバサはあっさりと才人を放す。
そして、ルイズに微笑みかける。
「ルイズ、久しぶり」
その言葉に、ルイズの瞳に理性の光が、見る間に戻ってくる。
「ど、どうして?『門』はこっちからじゃ開けないのよっ?」
ルイズの言うとおりであった。
魔法の存在しない世界である地球では、異世界に戻るゲートを...
すなわち、ここにいる人間は、日本に骨をうずめるしか道はな...
ようやく玄関扉に飽きて居間にやってきたコルベールは、そん...
「異世界に行ける、それも魔法とは異なる理の支配する世界に...
その機会があるというのに、探求者として、それを逃す手は...
そんな熱のこもった言葉に、キュルケが続ける。
「私はダーリンの行く所ならどこへでもついていくわ。だって...
言って、コルベールの腕を抱え込む。コルベールが照れくさそ...
そしてそれに、復活したシエスタが続けた。
「私はサイトさんのメイドですし、この国はひいおじいちゃん...
里帰りだと思えばどうってことないですよ」
それに続いて、タバサが最後を飾る。
「…私はサイトに全てを捧げた身。彼のいないハルケギニアに未...
それとルイズ。あなたの家族から、手紙を預かっている」
タバサの差し出した手紙を、ルイズは開く。
『もう、ここにはいないルイズへ。
五年前、あなたが死んだと女王陛下に聞かされましたが、私...
なんとなく、予感がそう告げていたからです。お父様とお母...
お父様なんて、一時期軍を動かして捜索させようとしていた...
そしてその予想通り、ハルケギニアが遍く平定された今、姫...
そして、姫様はサイト殿の世界に行く準備をしているとも教...
私はまだ病気が治っていないのでそちらには行けませんが、...
サイト殿とお幸せに。私の愛しい小さなルイズ。 カ...
384 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
その下には、乱暴な走り書きで、
『元気でやんなさいよ! エレオノール』
と短い姉からの一文が。
そして、タバサは一身に手紙を読むルイズの脇に控える才人に...
「サイトには、ルイズの父君から」
「…ゑ?」
なんとなく内容の予想はついたが、才人はあえてその手紙を受...
そこには、思い切りきつい筆圧で、でかでかとこう書かれてい...
『娘はやら』
その途中からかき消すように線が引かれ、そして。
『娘を頼む。不幸にしたら呪い殺す。末代まで祟るぞ。覚悟し...
その手紙を見て、戦慄と共に才人は、どれだけルイズが愛され...
そして、心の中で改めて誓った。
ルイズは、必ず幸せにします。お義父さん。
お前に義父と呼ばれる筋合いはないわ、とその場にヴァリエー...
手紙を何度も反芻したルイズは、手紙を抱き締めて、泣いた。
形のいい顎を、滂沱の如き涙が伝い、流れ落ちる。
「父様…母様…姉様…ちいねえさま…!」
覚悟を決めて日本に来たとはいえ、ルイズにも望郷の念はあっ...
いや、五年の歳月が、彼女の心になお、望郷を募らせていたの...
才人は黙ってルイズを抱き締める。
ルイズはそんな才人の胸の中で、嗚咽を漏らし続けた。
友人達は黙ってルイズの泣き止むのを見守っていた。
しか、その沈黙はすぐに破られる。
385 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「なんでえなんでえ。久しぶりに来てみたらしんみりしてんな...
かちゃかちゃと小さな金属音とともに、そんな声が聞こえる。
この、声は。
五年前、シャイターンの門で最後に聞いた、その声は。
才人は、慌てて声のする場所を振り向く。
それは、自分のズボンのポケットに突っ込んだ、携帯のストラ...
その先に結ばれた、古ぼけた剣の形をした、ペーパーナイフ。
その鍔の一部が、まるで機械仕掛けのようにかちゃかちゃと動...
「よお相棒、五年ぶりかね?元気にしてたか?」
「で、デルフリンガー?どうしてお前が?」
「いやあ、魂だけで消えかけてたんよ俺っちも。そしたら、な...
気付いたらここにいたってわけだが」
才人は言葉も出ない。
突然の再開に、喜んでいいのか、涙を流していいのか。
そんな才人に、コルベールが語りかける。
「まあ、とりあえず今日の再開を祝おうじゃないか!ちょうど...
「え?この茶色いの料理だったの!?てっきり豚の餌かと思っ...
「まあまあ、ミス。ウチの田舎の魚料理でもこういうのありま...
「…美味しそう」
見知らぬ異世界に来たという不安を微塵も感じさせず、これか...
隣にいるルイズも、泣き止んで笑顔になっていた。
そして二人は笑い合うと、わざわざ遠出してきた友人達のため...
「文句言うなら一度食べてみなさいよキュルケ!おいしいのよ...
すぐ温めるから待ってなさい」
「じゃ、その間にみんなでDVD見ようぜ!言葉はわからんか...
えーっと、どこやったっけな『天使にラブソングを』のDV...
不意に始まったパーティに、平賀家の居間は喧騒に包まれる。
その喧騒の中、ずいぶんと小さくなった伝説の剣が、小さく嗤...
「また世話んなるぜ、相棒。
さあて、この世界のこの先六千年は、どんだけハチャメチャ...
ま、相棒のいた世界だ、ハルケギニアなんかよりずっと面白...
永遠の語り部は、新しい舞台の幕開けに、心躍らせたのだった...
終了行:
378 せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金) 1...
さてと、13巻解禁したので、一言感想など。
すいません14巻で才人帰ってないビジョンが全力で見えまし...
っていうかそん時の事考えると今からwktkが止まらないぜ!
まあそれはともかく投下。
http://wikiwiki.jp/zero/?14-632
『救国の勇者』の続編?みたいなもの。13巻読んで思いつい...
379 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「こら。いい加減起きなさい」
柔らかい叱咤の声に、才人は目を醒ます。
まず目に入るのは桜の舞い散る青い空。左手に見えるくすんだ...
あくびをしながら弾力のある枕から起き上がる。軽くのびをす...
才人は背後を振り返る。
そこには、青い芝生に座り込んだ、ウェーブのかかった桜色の...
彼女の名は。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女は平賀才人の恋人にして婚約者。
異世界ハルケギニアから、才人とともに日本へやってきた、か...
「足、痺れるかと思ったわよ。全く」
「わり。ルイズの膝枕気持ちよくてさ」
才人の反論にまったくもう、しょうがないわね、と言いながら...
すると、やはり足が痺れたのだろう。ルイズはバランスを崩し...
それを才人は慌てて支える。
「…ほらやっぱり痺れたじゃない」
「…さっさと起こせばよかったんだよ」
腕の中でそうぼやくルイズに、才人はそう反論する。
しかし、ルイズはさらに反論する。
「あんまりカワイイ顔で寝てるから。起こすのもったいなくて」
「…あのなあ」
呆れたように才人は言うが。
傍から見れば、どこからどう見ても免許皆伝のバカップルであ...
二人は今、才人の暮らしていた日本にいる。
あの日、デルフリンガーの空けた穴から二人が地球に辿り着い...
日本にやってきたルイズは、最初、日本語がわからなかった。...
元々努力家で頭のよいルイズは、言葉と共に日本の習慣や文化...
今では、その外見以外は完全に日本に溶け込んでいた。
だが、問題は言語だけではない。ルイズには現代の日本で暮ら...
そう、戸籍である。異世界人である彼女にはビザすらない。法...
しかし、それをクリアする方法があった。才人の母の知り合い...
身元保証人にはその弁護士と、知人のイタリア人がなり、そし...
戸籍上の今の彼女の名前は、『平賀ルイズ・フランソワーズ』。
そして、今、彼女は才人と同じ大学に通う大学生。
桜の色をしたウェーブのショートボブと、ベージュのパンツル...
ルイズは、日本に来てから、襟元より下に髪を伸ばさなかった。
何故か、と一度だけ才人は尋ねた事がある。
ルイズは応えた。それはね、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブ...
だから、平賀ルイズ・フランソワーズとなった自分は、髪を伸...
才人は、それ以来、髪について何も言わない。
ルイズのあんな寂しそうな顔は見たくないし、思い出させたく...
今は、この日本で、ルイズを幸せにする。
それが、ガンダールヴの自分にできる、異世界へやってきた自...
まあ、そんな真剣な話はともかく、二人はそれなり以上に幸せ...
一つ屋根の下寝食を共にし、両親公認で交際していて、大学を...
まさに順風満帆である。
しかし。
そんな二人を、とんでもない異変が襲うのである。
380 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「ただいまー」
帰りを告げながら才人が家のドアを開ける。
その後ろに、ルイズが続く。
「ただいま帰りました」
才人の母がいたら『タダイマでいいのよルイズちゃんっ』とか...
「誰もいないのか」
玄関を見ると、そこに靴は一足もない。
父も母も、出かけているようだ。
二人はフローリングの廊下に上がり、居間へ向かう。
居間の机の上には、ラップをかけられた夕食が乗っかっていた。
不意に、才人の携帯が鳴る。才人はポケットから飛び出た、雑...
そのディスプレイには、『母』の文字。母親からメールが来た...
才人は『今日の晩御飯』という件名の最新メールを開いてみる。
『テーブルの上のおかずをチンして食べてね。お味噌汁はナベ...
そんな夕食のメニューは、鰤大根にきんぴらごぼう、黒豆の煮...
味噌汁はおそらく、豆腐と若布。
ものすごく和食なメニューだったが、ルイズは意外なことに和...
最初は『なにこの茶色いおかず』とか言いながら食べていたが...
「まーた和食かよー」
しかし才人はそこまで和食が好きと言うわけでもない。
ルイズが和食好きだとわかって以来、平賀家のメニューには和...
…たまには、昔みたく一週間カレーとか食いたいなあ…。
などと爛れた願望を望みながら、才人はラップを丸め、ゴミ箱...
そんな才人に、荷物を部屋に置いてきたルイズが、語りかけた。
「洋食がいいなら、作ろうか?」
しかし即座に才人は否定する。
「いいっていいって!うん、和食がいい!」
五年経っても、ルイズには全く変わらないものが二つあった。
料理の腕と、胸の大きさである。
そして、このことに触れると当然、才人のご主人様は怒り狂う...
「…なんでそんなに慌ててんのよ」
「いや、なんでもないです、はい」
「私が料理すんのがそんなにイヤなワケーっ!?」
言って才人に飛び掛る。
あっという間にルイズは才人を居間の床に組み伏せる。
抵抗しようと思えば抵抗できるのだろうが、それをしてしまっ...
大人しくされるがまま、あんまり痛くないルイズの拳骨を受け...
381 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
何発か殴り終わると、ようやく冷静になったのか、ルイズは拳...
そして、マウントポジションのまま、すまなさそうな顔をする。
「…ごめんね。料理下手なのは事実だもんね…」
昔は怒ったらそのまま怒りっぱなしだったのだが、最近、ルイ...
それは、才人と婚約してからぐらいの時期から、そうなってき...
ルイズは才人の上で、しゅん、と小さくなる。
「…式挙げるまでには、ちゃんと普通に作れるようになるから…」
そして、不安を湛えた表情で才人を見つめて、言う。
「わたしのこと、きらいにならないで…」
ルイズは、ハルケギニアにいた時よりも、才人と離れる事を恐...
いかに家族のように接してくれてはいても、才人の家族とラ・...
この日本で、この地球で、この世界で、本当の意味でルイズが...
才人は、そんなルイズにたまらない愛しさを感じて、抱き締め...
「嫌いになんかなるわけないだろ。俺は死ぬまで、ルイズと一...
「うん。うん…」
まるで泣く子をあやすように髪を撫ぜる才人の肩に、ルイズは...
「…とんでもないバカップルぶりねえ。ご家族が見たらなんて言...
そんなキュルケの挑発も、懐かしく聞こえ
「…え?」
「…ルイズも聞こえたのか今の?」
一瞬聞こえた幻聴。
それは、日本語ではなかった。
異世界の言語。ハルケギニアの、言葉。
その声は、居間の入り口から響いてきた。
二人は、騎乗位のまま、居間の入り口を見る。
そこにいたのは。
背の高い、燃えるような真紅の長い髪をアップに纏めた、褐色...
日本家屋には場違いな、黒いローブを羽織っている。
それは、見紛うはずもない。
「「キュルケっ?」」
才人は日本語で、ルイズはハルケギニアの言葉で、その女性の...
「はぁい。お二人さん。元気にやってる?って聞くまでもない...
…何よその幽霊を見るような目つき」
「どどどどどどどどどーしてっ?」
ルイズは目の前にキュルケがいるのに、その存在が信じられな...
ここは日本で、ハルケギニアではない。
異世界という壁に隔てられているハルケギニアは、月よりも遠...
「んー?カンタンな理屈じゃないの。シャイターンの門を使っ...
「ってカンタンに言うけど!どうやって帰るのよ!アンタ家は...
キュルケは平然と言い放つが、ルイズはそんなキュルケに猛然...
自分はあれだけ悩み、あれだけ追い詰められて、この異世界に...
382 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「あー、家族なら連れてきたわよー?」
「へ?」
ルイズの目が点になる。
まさか、キュルケの両親が?
しかし、その予想は違っていた。
キュルケは、玄関の方へ向けて、廊下から呼びかけた。
「あなたー?まだ終わらないのぉー?」
あなた…?まさか…?
「少し待っておくれキュルケ、この扉の造りといったらもう、...
玄関から聞こえてきた声は。
「「コルベール先生っ!?」」
廊下に飛び出した二人の視界に入ったのは。
眩く輝く頭頂部。その脇にしがみつく、申し訳程度の毛髪。
通称コッパゲ、ジャン・コルベール。
好奇心旺盛なハルケギニア随一の研究者は、クロム合金の玄関...
「ってあなたってアンタもしかして…」
「そ。ウチの亭主よ。って言っても式挙げたのは今年の春だけ...
言って、左手の薬指に光る大粒のルビーを誇らしげに掲げる。
そして、続けた。
「それで、あと二人ほどいるんだけど。ちょっと遅れてるのか...
「…へ?」
「…誰?」
驚きで呆然とするしかない二人の視界に、黒い何かと、大きな...
次の瞬間。
「サイトさぁ〜〜〜〜〜んっ!!」
いつか聞きなれた声。
そして、日本の特定の場所でしかお目にかかれない、特殊なコ...
五年の歳月でさらにボリュームの増した髪と胸を揺らしながら...
「ちょ、シエスタ胸胸!当たってるって!」
「やだもうサイトさん、当ててるに決まってるじゃないですか...
言って更にきつく抱きつき、腰を振って柔らかい胸をぐにぐに...
「会いたかったです寂しかったですもう二度と離れませんっ!」
シエスタはうれし涙を流しながら、才人を絞め殺しそうな勢い...
「ちょ、苦しいってシエスタ」
その光景を呆然と見つめるルイズの中に、ずいぶんと久しく忘...
「…ああそう、そうなんだ。おちちがいいんだ。やっぱりアンタ...
叫んで放った久方ぶりの跳び蹴りは、メイドだけを吹っ飛ばす。
主人の危機を察した、優秀なシュヴァリエが、咄嗟に才人だけ...
383 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「サイト、大丈夫?」
「…え?タバサ?」
あの日の小さな青い髪の少女は、五年の歳月を経て女に成長し...
彼女を象徴する青い髪は真っ直ぐ美しく伸びており、動きの妨...
起伏の少なかった身体は、扇情的と言えるほどにメリハリがき...
しかし、才人の顔を潤んだ瞳で見つめるその女性は、確かに、...
タバサは何も言わず、感極まった表情で、才人に抱きつく。
「…逢いたかった…」
「ちょっと、サイトから離れなさいよっ!」
そのタバサの襟を引っつかみ、ルイズは才人からタバサをひっ...
タバサはあっさりと才人を放す。
そして、ルイズに微笑みかける。
「ルイズ、久しぶり」
その言葉に、ルイズの瞳に理性の光が、見る間に戻ってくる。
「ど、どうして?『門』はこっちからじゃ開けないのよっ?」
ルイズの言うとおりであった。
魔法の存在しない世界である地球では、異世界に戻るゲートを...
すなわち、ここにいる人間は、日本に骨をうずめるしか道はな...
ようやく玄関扉に飽きて居間にやってきたコルベールは、そん...
「異世界に行ける、それも魔法とは異なる理の支配する世界に...
その機会があるというのに、探求者として、それを逃す手は...
そんな熱のこもった言葉に、キュルケが続ける。
「私はダーリンの行く所ならどこへでもついていくわ。だって...
言って、コルベールの腕を抱え込む。コルベールが照れくさそ...
そしてそれに、復活したシエスタが続けた。
「私はサイトさんのメイドですし、この国はひいおじいちゃん...
里帰りだと思えばどうってことないですよ」
それに続いて、タバサが最後を飾る。
「…私はサイトに全てを捧げた身。彼のいないハルケギニアに未...
それとルイズ。あなたの家族から、手紙を預かっている」
タバサの差し出した手紙を、ルイズは開く。
『もう、ここにはいないルイズへ。
五年前、あなたが死んだと女王陛下に聞かされましたが、私...
なんとなく、予感がそう告げていたからです。お父様とお母...
お父様なんて、一時期軍を動かして捜索させようとしていた...
そしてその予想通り、ハルケギニアが遍く平定された今、姫...
そして、姫様はサイト殿の世界に行く準備をしているとも教...
私はまだ病気が治っていないのでそちらには行けませんが、...
サイト殿とお幸せに。私の愛しい小さなルイズ。 カ...
384 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
その下には、乱暴な走り書きで、
『元気でやんなさいよ! エレオノール』
と短い姉からの一文が。
そして、タバサは一身に手紙を読むルイズの脇に控える才人に...
「サイトには、ルイズの父君から」
「…ゑ?」
なんとなく内容の予想はついたが、才人はあえてその手紙を受...
そこには、思い切りきつい筆圧で、でかでかとこう書かれてい...
『娘はやら』
その途中からかき消すように線が引かれ、そして。
『娘を頼む。不幸にしたら呪い殺す。末代まで祟るぞ。覚悟し...
その手紙を見て、戦慄と共に才人は、どれだけルイズが愛され...
そして、心の中で改めて誓った。
ルイズは、必ず幸せにします。お義父さん。
お前に義父と呼ばれる筋合いはないわ、とその場にヴァリエー...
手紙を何度も反芻したルイズは、手紙を抱き締めて、泣いた。
形のいい顎を、滂沱の如き涙が伝い、流れ落ちる。
「父様…母様…姉様…ちいねえさま…!」
覚悟を決めて日本に来たとはいえ、ルイズにも望郷の念はあっ...
いや、五年の歳月が、彼女の心になお、望郷を募らせていたの...
才人は黙ってルイズを抱き締める。
ルイズはそんな才人の胸の中で、嗚咽を漏らし続けた。
友人達は黙ってルイズの泣き止むのを見守っていた。
しか、その沈黙はすぐに破られる。
385 帰ってきた勇者 ◆mQKcT9WQPM [sage ] 2007/12/28(金)...
「なんでえなんでえ。久しぶりに来てみたらしんみりしてんな...
かちゃかちゃと小さな金属音とともに、そんな声が聞こえる。
この、声は。
五年前、シャイターンの門で最後に聞いた、その声は。
才人は、慌てて声のする場所を振り向く。
それは、自分のズボンのポケットに突っ込んだ、携帯のストラ...
その先に結ばれた、古ぼけた剣の形をした、ペーパーナイフ。
その鍔の一部が、まるで機械仕掛けのようにかちゃかちゃと動...
「よお相棒、五年ぶりかね?元気にしてたか?」
「で、デルフリンガー?どうしてお前が?」
「いやあ、魂だけで消えかけてたんよ俺っちも。そしたら、な...
気付いたらここにいたってわけだが」
才人は言葉も出ない。
突然の再開に、喜んでいいのか、涙を流していいのか。
そんな才人に、コルベールが語りかける。
「まあ、とりあえず今日の再開を祝おうじゃないか!ちょうど...
「え?この茶色いの料理だったの!?てっきり豚の餌かと思っ...
「まあまあ、ミス。ウチの田舎の魚料理でもこういうのありま...
「…美味しそう」
見知らぬ異世界に来たという不安を微塵も感じさせず、これか...
隣にいるルイズも、泣き止んで笑顔になっていた。
そして二人は笑い合うと、わざわざ遠出してきた友人達のため...
「文句言うなら一度食べてみなさいよキュルケ!おいしいのよ...
すぐ温めるから待ってなさい」
「じゃ、その間にみんなでDVD見ようぜ!言葉はわからんか...
えーっと、どこやったっけな『天使にラブソングを』のDV...
不意に始まったパーティに、平賀家の居間は喧騒に包まれる。
その喧騒の中、ずいぶんと小さくなった伝説の剣が、小さく嗤...
「また世話んなるぜ、相棒。
さあて、この世界のこの先六千年は、どんだけハチャメチャ...
ま、相棒のいた世界だ、ハルケギニアなんかよりずっと面白...
永遠の語り部は、新しい舞台の幕開けに、心躍らせたのだった...
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