ゼロの使い魔保管庫
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225 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:17:07 ID:7...
「そうか、我が姪はそのような事になっておるのか」
「はい、ジョゼフ様」
そこはガリア王宮の北側に存在する、小さな、花のない花壇。
まるで意味のない建造物のようなそこは、ある騎士団が非公式...
ガリア北花壇警護騎士団。闇の仕事を請け負う、闇の騎士たち...
いや、軍隊という呼称はこの場合相応しくないであろう。
彼らは個々に連携を取る事はない。個人が個人として、ガリア...
従って彼らには規律も、命令系統もない。
あるのは、ただ王の命に従うという唯一つの理のみ。
そして。
現ガリア王ジョゼフの姪、シャルロット・エレーヌ・オルレア...
母を取り戻し、トリステインに亡命した彼女には、最早ジョゼ...
しかし。
ジョゼフが、彼女に対する興味を失ったわけではなかった。
確かに、彼女はジョゼフの手駒ではなくなった。むしろ相手方...
しかし、そのすぐ脇には、ジョゼフが最も欲する、最大の駒が...
それは『虚無』の力に他ならない。
ジョゼフの姪はそのトリステインの『虚無』に極めて近しい場...
しかも、ミョズニトニルンの報告によれば、シャルロットはそ...
面白い。実に面白い。
ここでシャルロットに揺さぶりをかければ、周囲に布陣された...
なれば、どうする。無能王。
我が手にある『頭脳』を以って、勝負を賭けるか?
いや、今はその時期ではない。今『頭脳』を使うべき時ではな...
陣はまだ拮抗している。先の読めない布陣に、鬼札を使うわけ...
ジョゼフは考えた。
そして、花のない花壇を眺め、脇に控える神の頭脳に言う。
「…ミューズよ。奴は使えるか?」
「…は。まだ意思までは操作できませんが」
「よいよい。意のままに操るだけが手駒の使い方ではないぞ」
言ってジョゼフは懐から木製のサイコロを取り出し、石畳に放...
それは乾いた音を立てて転がり、停まる。
『1』の目を指していた。
「これは、運試しだよ。上手くいけば、トリステインの虚無を...
上手くいかなくとも、『盾』を落とすだけでもよい」
「…は。では、仰せのままに」
「うむ。奴を起こせ。そして、『盾』の下へ送り込め。
路銀と身体はいいものを与えておけよ」
「御意」
頷いて、シェフィールドは花壇の北へ。
ジョゼフは花壇の南、王宮へと帰っていく。
残された木製のサイコロが、小さな音を立てて真っ二つに割れ...
226 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:17:47 ID:7...
その日。
晴れ渡った虚無の曜日。
才人は、使い魔の一人と街に買い物に来ていた。
黒髪の二人組は、厨房から頼まれた買い物リストを手に、人ご...
サイトさーん、塩はもう買いましたか?
ん、こっちはあらかた終わったぜー。
二人は別々の場所で買い物をしながら、才人とシエスタは心の...
こういう時、使い魔の心のつながりは便利である。
電源のいらない、携帯電話のようなものだ。
二人はあらかじめ決めておいた集合場所に戻る。
そこはこの街の外縁、入り口そばの衛視所脇にある馬小屋。
そこに才人の馬と荷馬車が預けてある。
この衛視所はトリステイン王国軍の管轄だったため、シュヴァ...
才人にとって、普段はめんどくさいだけであまり役に立たない...
二人は山と買い込んだ買い物を荷馬車に放り込むと、ちょうど...
「お二人も、来れればよかったんですけどねー」
「…まあ二人とも試験だって言うし。しょうがないよな」
街中を歩きながら、二人は学院に置いてきたルイズとタバサの...
さすがに二人とも試験なので無理やり着いてくることもなかっ...
…二人っきりだからって、抜け駆けしたら怒るわよ。
…帰ってきたら、チェックするから。
しかしシエスタとて遊びで街に行くわけではない。
厨房の買出しの手伝いで街に行くのだ。
まあでも、お食事をご一緒するくらいは、かまいませんよねー。
などと思いながら、普段着のシエスタは、隣を歩く才人の腕に...
「シエスタさん?」
「はい、あててますよ♪」
半分お決まりになった掛け合いをしながら、二人はまるで寄り...
そして、二人は一件の食堂に目をつけた。
古ぼけてはいるがそこそこ繁盛している大きな食堂で、昼時の...
「あそこで食べようか」
「はい、そうしましょう」
そして、二人がその入り口を潜ろうとしたその瞬間。
その扉が物凄い勢いと音を立てて開き、中から人が転がり出て...
年のころは十代の、後半くらいだろうか。中途半端に伸びたく...
その人物は通りに出た瞬間にくるん!と反転すると、埃塗れの...
「ファック!お前ら、ママの腹ん中に人の情けを忘れてきたん...
整った顔を思い切り歪ませて、右手の甲を食堂の中に向けて、...
果たしてそのジェスチャーは向けられた人間には何のことかさ...
まさか…!?少年の台詞を耳にした才人の中を、予感が駆け巡る...
227 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:19:15 ID:7...
食堂の扉の内側から、ごついのだの、細いのだの、ふとっちょ...
「ガキぃ、人様にたかる時はもう少し言葉選べや」
「乞食風情が口の利き方に気をつけろよ?」
男達は既に怒りで出来上がっており、どうやら先ほど転がり出...
才人トシエスタの見守る前で、金髪の少年は男達の迫力に屈す...
「誰が乞食だ!俺は財布をすられただけだっての!
てめえら、他人への施しを忘れると、サンタさんにプレゼン...
…間違いない。才人の予感が確信に変わる。
そして、今度のジェスチャーは流石に男達にも通じた。どこの...
「オラガキ。いい加減にしとけ?あ?」
「今謝れば一人イッパツで済ませてやるよ」
傭兵達は拳でバキバキと物騒な音を立てて、少年に詰め寄る。
しかし少年は一歩も引かない。
「てめえらなんてまとめてマックの包み紙みたいに丸めて」
「悪ぃ、コイツに悪気はないんだ」
少年の台詞を止めたのは、シエスタの腕から抜け出した才人だ...
あっという間に男達と少年の間に入ると、いつでも抜けるよう...
「お、おいお前何邪魔」
文句を言おうとする少年の言葉を手で遮り、今にも飛び掛って...
傭兵達の動きが、止まった。
「すまねえ、俺の顔に免じて、許してやってくれないか?この...
傭兵達に向けて、左手だけで謝る仕草を見せて、才人は言う。
傭兵達には、その仕草の意味が痛いほど伝わっていた。
シュヴァリエの頼みが聞けないなら、この場で抜くぞ。
さすがに場数を踏んでいる傭兵達らしく、若いながらも度胸と...
「…まあ、シュヴァリエ様にお願いされたとあっちゃあな…」
傭兵達が拳を引いたのを確認すると、才人はそこでようやく、...
「ありがとう。お礼と言っちゃなんだけど、エールの一杯もお...
「お、話がわかるじゃねえか」
才人の事後のフォローに、傭兵達は相好を崩した。
どやどやと食堂に戻っていく傭兵達に、才人はほっとする。
228 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:19:48 ID:7...
そして振り向くと。
不機嫌そうな顔の金髪の少年が、シエスタの止めるのも構わず...
「てめえ、何勝手に止めてんだよ!シット!」
映画やドラマの中で聞きなれた外国の言葉が、才人の郷愁を誘...
汚い言葉で罵られていると分かってはいるが、それでも才人は...
「あはは。久しぶりに聞いたなあ…それ」
「なんだよソレ。わけわかんねえ」
才人の笑顔に気を殺がれ、少年はばつが悪そうに頭を掻いた。
「あの、サイトさん?」
シエスタはそんな二人のやり取りに、才人に疑問符をぶつけた。
才人はそんなシエスタには応えずに、少年に言った。
「よかったら奢るよ。…同郷のよしみでさ」
才人は確信していた。
この少年は、地球人。それもおそらく、米国人。
それをシエスタに心の声で伝えると、案の定声を出して驚いた。
少年はよほど腹をすかせていたのか、料理がテーブルに並ぶや...
「すごい勢いですねえ」
シエスタは自分で食べるのも忘れて、少年の食欲に魅入ってい...
「いやあ、前の宿場町でスられちまって。二日もなんも食って...
〆のお茶で料理を流し込んで、満足そうに腹をさすりながら少...
「助かったぜ、日本人」
やっぱり。才人の確信は確実なものになった。
そして才人は少年に尋ねる。
「…で、一個聞きたいんだけど」
「何?何でも聞いてくれよブラザー」
「…あんたさ、アメリカ人?」
その質問に、少年はあっさりと応えた。
「その通り。名前は…そうだな、マキシマム。マキシマム・ロン...
「『そうだな』?」
あからさまに偽名くさいその名乗りに、才人は疑念を露にする。
その疑念に、マキシマムと名乗った少年は笑顔で立ち上がり、...
「とりあえず、腹も膨れたし。
続きは外で話そうか、ヒラガ・サイト」
少年の言葉に、才人とシエスタの動きが止まる。
まだ、才人はマキシマムに自分の名前を名乗っていない。
マキシマムは笑顔のまますたすたと食堂の外へ歩いていく。
「じゃ、支払いは任せたぜサイト。
ここの裏通りで待ってるからな、早く来いよ」
229 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:20:32 ID:7...
マキシマムは、言ったとおり裏通りで待っていた。
才人は油断することなく、尋ねる。
「さっきの、偽名なのか?」
才人の言葉に、マキシマムは、建物の隙間から覗く青空を見上...
「偽名じゃないなあ。俺さ、自分の名前知らないんだわ」
言いながら、後頭部をぽりぽりと掻く。
そして続ける。
「この世界に呼ばれた時、俺は精神だけの状態でさ。
地球にいた時の事が、かなり抜けてんだよ」
基本的な知識や考え方などは残っていたが、自分の名前や出自...
そして、才人はその言葉に更なる疑問を持つ。
「あんたをこの世界に召喚したのは誰なんだ?」
その質問に、待ってました、と言わんばかりの笑顔でマキシマ...
「俺をここに呼んだヤツはシェフィールドって言ったぜ」
その名前は。
ガリアの虚無、無能王ジョゼフの使い魔、神の頭脳ミョズニト...
才人はその名前を聞いた瞬間、デルフリンガーを抜いてシエス...
「お前、まさか…!」
「察しがいいねえ。その通り。
俺はアンタを殺すように言われてここに来たんだ。ヒラガ・...
言ってマキシマムは腰の後ろに両手を回す。
マキシマムがそこから取り出したのは。
才人には見慣れた、シエスタには見慣れない、鉄の塊。
回転式の弾倉を持つ、二丁の銃。俗にリボルバーと呼ばれる、...
ハルケギニアには存在しないはずの、地球の銃。
そして、満面の、狂喜を湛えた笑顔で、マキシマムは言った。
「『仲間』と戦りあえるなんて最高だぜ…!
Welcome to Garden Of Madness!
ようこそ、狂い咲きの園へ!」
その言葉と同時に、彼の両手に握られたリボルバーが、火を噴...
230 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:21:18 ID:7...
才人は辛うじて初弾をデルフリンガーで弾くと、すぐ後ろの建...
「なんだ、あの鉄砲は?見たことねえぞあんなの」
デルフリンガーの言葉に、シエスタからの心の声が重なる。
サイトさんっ?お怪我はありませんかっ?
シエスタはここより少しマキシマムに近い建物の陰に隠れてい...
才人は無事をシエスタに伝えると、その場を動かないよう指示...
ハルケギニアの銃と違い、リボルバーは連発できる。
さらに、地面に穿たれた弾痕から、あの銃弾を体のどこかに当...
しかし、その弾数には限りがある。
見たところ、あのリボルバーの弾倉は六発。
つまり、片手につき六発、合計十二発を打ち切れば、リロード...
先ほどマキシマムが放った銃弾は二発。あと十発の銃弾を避け...
「あと十発かあ…」
避けきれるかどうか。
矢や魔法との戦闘経験はある才人だったが、さすがに亜音速で...
そんな才人に、デルフリンガーは軽く言う。
「やってみろよ相棒。なんとかなるって」
「軽いなあお前は…」
「まあぶっちゃけ、俺っちにも対策がわかんねえからな。当た...
確かにデルフリンガーの言うとおりだった。
降り注ぐ銃弾に剣士が対抗する手段…それは、ただ『避ける』。...
「んじゃ行ってみるかぁ!」
そして、才人は裏通りに身を躍らせる。
その真正面の奥で、マキシマムが右手のリボルバーを構えてい...
「正面から来るとはいい度胸だぜ!
Come'n Let's DANCE!」
最初の銃弾が飛んでくる。
銃口からその軌道を予測した才人は、右斜め前へのステップで...
そしてそのステップが終わる前に、休むことなく次の銃弾が襲...
その銃弾は的確に才人の着地点を狙っていた。
才人は咄嗟の判断で地面に飛び出し、転がる。
二発目の銃弾が地面を穿ち、そして。
立ち上がった才人の左肩を、三発目の銃弾が貫く。
その衝撃に才人は、すぐ近くの壁に叩きつけられる。
血しぶきが木の壁に飛び散り、そしてそこへ容赦ない追い討ち...
しかし、それは才人に当たることはない。
231 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:21:56 ID:7...
その壁の脇の路地から伸びた白い手が、あっという間に才人を...
「大丈夫ですかっ?サイトさんっ!」
その手はシエスタの手だった。
才人の左肩からは夥しい血が流れ、その腕はだらんとして動き...
「ミスったよ…」
ガンダールヴの力のお陰か、痛みはそれほど感じていなかった...
さらに、片腕が使えないことで身体のバランスがおかしくなっ...
進退窮まるとはまさにこのこと。
困窮する才人。
しかし、希望を捨てない者が、そこにいた。
「サイトさん!私の『力』、使えませんか?」
「へ?」
シエスタの申し出に、才人の目が点になる。
「ミス・タバサにしたみたいに!きっと私にも何かできると思...
シエスタは胸元をはだけ、鎖骨の間にある、黒い五角形…シエス...
否定しようとした才人を、デルフリンガーの言葉が止めた。
「試してみなよ、相棒」
「え?だってシエスタは…」
「…たぶんだけどな。そのガンダールヴの『使い魔の印』は、『...
この嬢ちゃんにも、何か『力』があるはずだ。じゃなきゃお...
デルフリンガーの説には、何か妙な説得力があった。
そして。
胸元をはだけるシエスタを見る才人の中に、かつて感じた感覚...
武器を取れ。武器を取れ。
汝は神の盾、ガンダールヴなり。
あらゆる武器は、汝が意のままに。
その声に導かれるまま、才人はシエスタの黒い盾の刻印に、口...
232 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:22:34 ID:7...
マキシマムが弾倉に銃弾を込め終わると、路地から、黒髪の少...
ベージュのワンピースに身を包んだその黒髪の少女は、先ほど...
「おいおい…俺は女子供も容赦しないぜ?
とりあえず撃っちゃうぜ?答えは聞いてないけどな!」
言ってマキシマムは遠慮なく、四発の銃弾を、次々にシエスタ...
その直後、シエスタの姿がゆらり、とゆらめいた。
「見えている直線の打撃が当たるとでも?」
次の瞬間、マキシマムの隣に彼女はいた。
「何っ!?」
そして、驚くマキシマムの横で一瞬屈むと、一気に伸び上がり...
マキシマムは一撃で吹き飛ばされ、土と木でできたすぐ後ろの...
「ぐはっ!」
衝撃にマキシマムの肺の中の空気が全て吐き出され、意識が一...
その隙に、シエスタはマキシマムの前で、腰を軽く落とし、左...
正拳の構えである。
そして、その手首には、黒い炎のようなものが纏われていた。
「我が拳に…穿てぬ物なし」
その言葉と同時に、空気を切り裂いてシエスタの右拳がマキシ...
血を吐いて絶命するマキシマムから拳を引き抜き、シエスタは...
「さようなら。サイトさんと同じ世界の人」
233 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:23:27 ID:7...
才人達の立ち去ったその裏道には、なぜか野次馬が一人も来な...
あれほどの轟音を立て、銃が乱射されていたにも拘らず、であ...
それは、周囲に張られた結界のせい。
あらかじめシェフィールドに渡されていた結界装置で、マキシ...
しかし、その結界は、術者の死亡と共に消えるはずだった。
つまり。マキシマムは、腹部を拳で貫かれ、なお生きているの...
しかし。壁にめり込み、口から腹から血を流す金髪の少年は、...
そこへ。
一人の女が現れる。
長い髪をなびかせ、その女は金髪の少年の握り締める、銀色の...
「情けないわね。身体を与えられておきながら」
全てのマジック・アイテムを操るミョズニトニルンの心に、そ...
なぁに。次は上手くやるさ!
あぁ、凄ェゾクゾクしてきた!またやりてえ!アイツとやりて...
そう、このリボルバーこそが、マキシマムの本体。
精神だけでハルケギニアにやってきた、マキシマムそのもので...
「…次は油断せずにやりなさい。
我が主はともかく、私はそこまで寛容ではないわ」
ミョズニトニルンはそう言って、手にした皮袋にリボルバーを...
その間も、マキシマムは心の声で喚いていた。
ヒリヒリしたぜ!あの感覚!最高だ!これが『充実感』ってヤ...
シェフィールドは、その声に応える代わりに、呆れたように呟...
「…どうしようもない中毒者ね、この男」
234 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:23:48 ID:7...
二人が学院に帰ったのは、才人の応急処置を済ませ、一晩休ん...
もちろん学院に残してきた二人の使い魔にこれでもかと詰め寄...
正直に応えたシエスタのせいで、ルイズに左肩の傷以上の重症...
それを聞いたタバサの表情が、一変した。
「…許さない」
静かな、しかし確かな殺気を纏い、タバサは決意を口にする。
「…ガリアに行く」
才人は、そんなタバサに尋ねる。
「ど、どうして?」
母を取り戻し、縁者をゲルマニアにかくまって、もう縁のない...
タバサは才人の質問に応える。
「…ガリア王にもう恨みはない。
でも、彼は、サイトを狙った。そして今も狙っている。
虚無であるルイズも、たぶんその対象になっているはず。
私の一番大切な人を。大切な人達を。
それだけは、絶対に。許さない」
ふだんよりも饒舌にそう語った。
雪風の中で静かに燃える殺意の炎が、心を介して才人達にも伝...
そして、その一週間後。
長期の休みをオールド・オスマンに申請し、四人は学院を発つ。
ガリア王を倒すための旅路が、今始まったのである。〜fin
終了行:
225 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:17:07 ID:7...
「そうか、我が姪はそのような事になっておるのか」
「はい、ジョゼフ様」
そこはガリア王宮の北側に存在する、小さな、花のない花壇。
まるで意味のない建造物のようなそこは、ある騎士団が非公式...
ガリア北花壇警護騎士団。闇の仕事を請け負う、闇の騎士たち...
いや、軍隊という呼称はこの場合相応しくないであろう。
彼らは個々に連携を取る事はない。個人が個人として、ガリア...
従って彼らには規律も、命令系統もない。
あるのは、ただ王の命に従うという唯一つの理のみ。
そして。
現ガリア王ジョゼフの姪、シャルロット・エレーヌ・オルレア...
母を取り戻し、トリステインに亡命した彼女には、最早ジョゼ...
しかし。
ジョゼフが、彼女に対する興味を失ったわけではなかった。
確かに、彼女はジョゼフの手駒ではなくなった。むしろ相手方...
しかし、そのすぐ脇には、ジョゼフが最も欲する、最大の駒が...
それは『虚無』の力に他ならない。
ジョゼフの姪はそのトリステインの『虚無』に極めて近しい場...
しかも、ミョズニトニルンの報告によれば、シャルロットはそ...
面白い。実に面白い。
ここでシャルロットに揺さぶりをかければ、周囲に布陣された...
なれば、どうする。無能王。
我が手にある『頭脳』を以って、勝負を賭けるか?
いや、今はその時期ではない。今『頭脳』を使うべき時ではな...
陣はまだ拮抗している。先の読めない布陣に、鬼札を使うわけ...
ジョゼフは考えた。
そして、花のない花壇を眺め、脇に控える神の頭脳に言う。
「…ミューズよ。奴は使えるか?」
「…は。まだ意思までは操作できませんが」
「よいよい。意のままに操るだけが手駒の使い方ではないぞ」
言ってジョゼフは懐から木製のサイコロを取り出し、石畳に放...
それは乾いた音を立てて転がり、停まる。
『1』の目を指していた。
「これは、運試しだよ。上手くいけば、トリステインの虚無を...
上手くいかなくとも、『盾』を落とすだけでもよい」
「…は。では、仰せのままに」
「うむ。奴を起こせ。そして、『盾』の下へ送り込め。
路銀と身体はいいものを与えておけよ」
「御意」
頷いて、シェフィールドは花壇の北へ。
ジョゼフは花壇の南、王宮へと帰っていく。
残された木製のサイコロが、小さな音を立てて真っ二つに割れ...
226 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:17:47 ID:7...
その日。
晴れ渡った虚無の曜日。
才人は、使い魔の一人と街に買い物に来ていた。
黒髪の二人組は、厨房から頼まれた買い物リストを手に、人ご...
サイトさーん、塩はもう買いましたか?
ん、こっちはあらかた終わったぜー。
二人は別々の場所で買い物をしながら、才人とシエスタは心の...
こういう時、使い魔の心のつながりは便利である。
電源のいらない、携帯電話のようなものだ。
二人はあらかじめ決めておいた集合場所に戻る。
そこはこの街の外縁、入り口そばの衛視所脇にある馬小屋。
そこに才人の馬と荷馬車が預けてある。
この衛視所はトリステイン王国軍の管轄だったため、シュヴァ...
才人にとって、普段はめんどくさいだけであまり役に立たない...
二人は山と買い込んだ買い物を荷馬車に放り込むと、ちょうど...
「お二人も、来れればよかったんですけどねー」
「…まあ二人とも試験だって言うし。しょうがないよな」
街中を歩きながら、二人は学院に置いてきたルイズとタバサの...
さすがに二人とも試験なので無理やり着いてくることもなかっ...
…二人っきりだからって、抜け駆けしたら怒るわよ。
…帰ってきたら、チェックするから。
しかしシエスタとて遊びで街に行くわけではない。
厨房の買出しの手伝いで街に行くのだ。
まあでも、お食事をご一緒するくらいは、かまいませんよねー。
などと思いながら、普段着のシエスタは、隣を歩く才人の腕に...
「シエスタさん?」
「はい、あててますよ♪」
半分お決まりになった掛け合いをしながら、二人はまるで寄り...
そして、二人は一件の食堂に目をつけた。
古ぼけてはいるがそこそこ繁盛している大きな食堂で、昼時の...
「あそこで食べようか」
「はい、そうしましょう」
そして、二人がその入り口を潜ろうとしたその瞬間。
その扉が物凄い勢いと音を立てて開き、中から人が転がり出て...
年のころは十代の、後半くらいだろうか。中途半端に伸びたく...
その人物は通りに出た瞬間にくるん!と反転すると、埃塗れの...
「ファック!お前ら、ママの腹ん中に人の情けを忘れてきたん...
整った顔を思い切り歪ませて、右手の甲を食堂の中に向けて、...
果たしてそのジェスチャーは向けられた人間には何のことかさ...
まさか…!?少年の台詞を耳にした才人の中を、予感が駆け巡る...
227 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:19:15 ID:7...
食堂の扉の内側から、ごついのだの、細いのだの、ふとっちょ...
「ガキぃ、人様にたかる時はもう少し言葉選べや」
「乞食風情が口の利き方に気をつけろよ?」
男達は既に怒りで出来上がっており、どうやら先ほど転がり出...
才人トシエスタの見守る前で、金髪の少年は男達の迫力に屈す...
「誰が乞食だ!俺は財布をすられただけだっての!
てめえら、他人への施しを忘れると、サンタさんにプレゼン...
…間違いない。才人の予感が確信に変わる。
そして、今度のジェスチャーは流石に男達にも通じた。どこの...
「オラガキ。いい加減にしとけ?あ?」
「今謝れば一人イッパツで済ませてやるよ」
傭兵達は拳でバキバキと物騒な音を立てて、少年に詰め寄る。
しかし少年は一歩も引かない。
「てめえらなんてまとめてマックの包み紙みたいに丸めて」
「悪ぃ、コイツに悪気はないんだ」
少年の台詞を止めたのは、シエスタの腕から抜け出した才人だ...
あっという間に男達と少年の間に入ると、いつでも抜けるよう...
「お、おいお前何邪魔」
文句を言おうとする少年の言葉を手で遮り、今にも飛び掛って...
傭兵達の動きが、止まった。
「すまねえ、俺の顔に免じて、許してやってくれないか?この...
傭兵達に向けて、左手だけで謝る仕草を見せて、才人は言う。
傭兵達には、その仕草の意味が痛いほど伝わっていた。
シュヴァリエの頼みが聞けないなら、この場で抜くぞ。
さすがに場数を踏んでいる傭兵達らしく、若いながらも度胸と...
「…まあ、シュヴァリエ様にお願いされたとあっちゃあな…」
傭兵達が拳を引いたのを確認すると、才人はそこでようやく、...
「ありがとう。お礼と言っちゃなんだけど、エールの一杯もお...
「お、話がわかるじゃねえか」
才人の事後のフォローに、傭兵達は相好を崩した。
どやどやと食堂に戻っていく傭兵達に、才人はほっとする。
228 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:19:48 ID:7...
そして振り向くと。
不機嫌そうな顔の金髪の少年が、シエスタの止めるのも構わず...
「てめえ、何勝手に止めてんだよ!シット!」
映画やドラマの中で聞きなれた外国の言葉が、才人の郷愁を誘...
汚い言葉で罵られていると分かってはいるが、それでも才人は...
「あはは。久しぶりに聞いたなあ…それ」
「なんだよソレ。わけわかんねえ」
才人の笑顔に気を殺がれ、少年はばつが悪そうに頭を掻いた。
「あの、サイトさん?」
シエスタはそんな二人のやり取りに、才人に疑問符をぶつけた。
才人はそんなシエスタには応えずに、少年に言った。
「よかったら奢るよ。…同郷のよしみでさ」
才人は確信していた。
この少年は、地球人。それもおそらく、米国人。
それをシエスタに心の声で伝えると、案の定声を出して驚いた。
少年はよほど腹をすかせていたのか、料理がテーブルに並ぶや...
「すごい勢いですねえ」
シエスタは自分で食べるのも忘れて、少年の食欲に魅入ってい...
「いやあ、前の宿場町でスられちまって。二日もなんも食って...
〆のお茶で料理を流し込んで、満足そうに腹をさすりながら少...
「助かったぜ、日本人」
やっぱり。才人の確信は確実なものになった。
そして才人は少年に尋ねる。
「…で、一個聞きたいんだけど」
「何?何でも聞いてくれよブラザー」
「…あんたさ、アメリカ人?」
その質問に、少年はあっさりと応えた。
「その通り。名前は…そうだな、マキシマム。マキシマム・ロン...
「『そうだな』?」
あからさまに偽名くさいその名乗りに、才人は疑念を露にする。
その疑念に、マキシマムと名乗った少年は笑顔で立ち上がり、...
「とりあえず、腹も膨れたし。
続きは外で話そうか、ヒラガ・サイト」
少年の言葉に、才人とシエスタの動きが止まる。
まだ、才人はマキシマムに自分の名前を名乗っていない。
マキシマムは笑顔のまますたすたと食堂の外へ歩いていく。
「じゃ、支払いは任せたぜサイト。
ここの裏通りで待ってるからな、早く来いよ」
229 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:20:32 ID:7...
マキシマムは、言ったとおり裏通りで待っていた。
才人は油断することなく、尋ねる。
「さっきの、偽名なのか?」
才人の言葉に、マキシマムは、建物の隙間から覗く青空を見上...
「偽名じゃないなあ。俺さ、自分の名前知らないんだわ」
言いながら、後頭部をぽりぽりと掻く。
そして続ける。
「この世界に呼ばれた時、俺は精神だけの状態でさ。
地球にいた時の事が、かなり抜けてんだよ」
基本的な知識や考え方などは残っていたが、自分の名前や出自...
そして、才人はその言葉に更なる疑問を持つ。
「あんたをこの世界に召喚したのは誰なんだ?」
その質問に、待ってました、と言わんばかりの笑顔でマキシマ...
「俺をここに呼んだヤツはシェフィールドって言ったぜ」
その名前は。
ガリアの虚無、無能王ジョゼフの使い魔、神の頭脳ミョズニト...
才人はその名前を聞いた瞬間、デルフリンガーを抜いてシエス...
「お前、まさか…!」
「察しがいいねえ。その通り。
俺はアンタを殺すように言われてここに来たんだ。ヒラガ・...
言ってマキシマムは腰の後ろに両手を回す。
マキシマムがそこから取り出したのは。
才人には見慣れた、シエスタには見慣れない、鉄の塊。
回転式の弾倉を持つ、二丁の銃。俗にリボルバーと呼ばれる、...
ハルケギニアには存在しないはずの、地球の銃。
そして、満面の、狂喜を湛えた笑顔で、マキシマムは言った。
「『仲間』と戦りあえるなんて最高だぜ…!
Welcome to Garden Of Madness!
ようこそ、狂い咲きの園へ!」
その言葉と同時に、彼の両手に握られたリボルバーが、火を噴...
230 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:21:18 ID:7...
才人は辛うじて初弾をデルフリンガーで弾くと、すぐ後ろの建...
「なんだ、あの鉄砲は?見たことねえぞあんなの」
デルフリンガーの言葉に、シエスタからの心の声が重なる。
サイトさんっ?お怪我はありませんかっ?
シエスタはここより少しマキシマムに近い建物の陰に隠れてい...
才人は無事をシエスタに伝えると、その場を動かないよう指示...
ハルケギニアの銃と違い、リボルバーは連発できる。
さらに、地面に穿たれた弾痕から、あの銃弾を体のどこかに当...
しかし、その弾数には限りがある。
見たところ、あのリボルバーの弾倉は六発。
つまり、片手につき六発、合計十二発を打ち切れば、リロード...
先ほどマキシマムが放った銃弾は二発。あと十発の銃弾を避け...
「あと十発かあ…」
避けきれるかどうか。
矢や魔法との戦闘経験はある才人だったが、さすがに亜音速で...
そんな才人に、デルフリンガーは軽く言う。
「やってみろよ相棒。なんとかなるって」
「軽いなあお前は…」
「まあぶっちゃけ、俺っちにも対策がわかんねえからな。当た...
確かにデルフリンガーの言うとおりだった。
降り注ぐ銃弾に剣士が対抗する手段…それは、ただ『避ける』。...
「んじゃ行ってみるかぁ!」
そして、才人は裏通りに身を躍らせる。
その真正面の奥で、マキシマムが右手のリボルバーを構えてい...
「正面から来るとはいい度胸だぜ!
Come'n Let's DANCE!」
最初の銃弾が飛んでくる。
銃口からその軌道を予測した才人は、右斜め前へのステップで...
そしてそのステップが終わる前に、休むことなく次の銃弾が襲...
その銃弾は的確に才人の着地点を狙っていた。
才人は咄嗟の判断で地面に飛び出し、転がる。
二発目の銃弾が地面を穿ち、そして。
立ち上がった才人の左肩を、三発目の銃弾が貫く。
その衝撃に才人は、すぐ近くの壁に叩きつけられる。
血しぶきが木の壁に飛び散り、そしてそこへ容赦ない追い討ち...
しかし、それは才人に当たることはない。
231 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:21:56 ID:7...
その壁の脇の路地から伸びた白い手が、あっという間に才人を...
「大丈夫ですかっ?サイトさんっ!」
その手はシエスタの手だった。
才人の左肩からは夥しい血が流れ、その腕はだらんとして動き...
「ミスったよ…」
ガンダールヴの力のお陰か、痛みはそれほど感じていなかった...
さらに、片腕が使えないことで身体のバランスがおかしくなっ...
進退窮まるとはまさにこのこと。
困窮する才人。
しかし、希望を捨てない者が、そこにいた。
「サイトさん!私の『力』、使えませんか?」
「へ?」
シエスタの申し出に、才人の目が点になる。
「ミス・タバサにしたみたいに!きっと私にも何かできると思...
シエスタは胸元をはだけ、鎖骨の間にある、黒い五角形…シエス...
否定しようとした才人を、デルフリンガーの言葉が止めた。
「試してみなよ、相棒」
「え?だってシエスタは…」
「…たぶんだけどな。そのガンダールヴの『使い魔の印』は、『...
この嬢ちゃんにも、何か『力』があるはずだ。じゃなきゃお...
デルフリンガーの説には、何か妙な説得力があった。
そして。
胸元をはだけるシエスタを見る才人の中に、かつて感じた感覚...
武器を取れ。武器を取れ。
汝は神の盾、ガンダールヴなり。
あらゆる武器は、汝が意のままに。
その声に導かれるまま、才人はシエスタの黒い盾の刻印に、口...
232 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:22:34 ID:7...
マキシマムが弾倉に銃弾を込め終わると、路地から、黒髪の少...
ベージュのワンピースに身を包んだその黒髪の少女は、先ほど...
「おいおい…俺は女子供も容赦しないぜ?
とりあえず撃っちゃうぜ?答えは聞いてないけどな!」
言ってマキシマムは遠慮なく、四発の銃弾を、次々にシエスタ...
その直後、シエスタの姿がゆらり、とゆらめいた。
「見えている直線の打撃が当たるとでも?」
次の瞬間、マキシマムの隣に彼女はいた。
「何っ!?」
そして、驚くマキシマムの横で一瞬屈むと、一気に伸び上がり...
マキシマムは一撃で吹き飛ばされ、土と木でできたすぐ後ろの...
「ぐはっ!」
衝撃にマキシマムの肺の中の空気が全て吐き出され、意識が一...
その隙に、シエスタはマキシマムの前で、腰を軽く落とし、左...
正拳の構えである。
そして、その手首には、黒い炎のようなものが纏われていた。
「我が拳に…穿てぬ物なし」
その言葉と同時に、空気を切り裂いてシエスタの右拳がマキシ...
血を吐いて絶命するマキシマムから拳を引き抜き、シエスタは...
「さようなら。サイトさんと同じ世界の人」
233 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:23:27 ID:7...
才人達の立ち去ったその裏道には、なぜか野次馬が一人も来な...
あれほどの轟音を立て、銃が乱射されていたにも拘らず、であ...
それは、周囲に張られた結界のせい。
あらかじめシェフィールドに渡されていた結界装置で、マキシ...
しかし、その結界は、術者の死亡と共に消えるはずだった。
つまり。マキシマムは、腹部を拳で貫かれ、なお生きているの...
しかし。壁にめり込み、口から腹から血を流す金髪の少年は、...
そこへ。
一人の女が現れる。
長い髪をなびかせ、その女は金髪の少年の握り締める、銀色の...
「情けないわね。身体を与えられておきながら」
全てのマジック・アイテムを操るミョズニトニルンの心に、そ...
なぁに。次は上手くやるさ!
あぁ、凄ェゾクゾクしてきた!またやりてえ!アイツとやりて...
そう、このリボルバーこそが、マキシマムの本体。
精神だけでハルケギニアにやってきた、マキシマムそのもので...
「…次は油断せずにやりなさい。
我が主はともかく、私はそこまで寛容ではないわ」
ミョズニトニルンはそう言って、手にした皮袋にリボルバーを...
その間も、マキシマムは心の声で喚いていた。
ヒリヒリしたぜ!あの感覚!最高だ!これが『充実感』ってヤ...
シェフィールドは、その声に応える代わりに、呆れたように呟...
「…どうしようもない中毒者ね、この男」
234 :漆黒の力 ◆mQKcT9WQPM :2008/01/09(水) 21:23:48 ID:7...
二人が学院に帰ったのは、才人の応急処置を済ませ、一晩休ん...
もちろん学院に残してきた二人の使い魔にこれでもかと詰め寄...
正直に応えたシエスタのせいで、ルイズに左肩の傷以上の重症...
それを聞いたタバサの表情が、一変した。
「…許さない」
静かな、しかし確かな殺気を纏い、タバサは決意を口にする。
「…ガリアに行く」
才人は、そんなタバサに尋ねる。
「ど、どうして?」
母を取り戻し、縁者をゲルマニアにかくまって、もう縁のない...
タバサは才人の質問に応える。
「…ガリア王にもう恨みはない。
でも、彼は、サイトを狙った。そして今も狙っている。
虚無であるルイズも、たぶんその対象になっているはず。
私の一番大切な人を。大切な人達を。
それだけは、絶対に。許さない」
ふだんよりも饒舌にそう語った。
雪風の中で静かに燃える殺意の炎が、心を介して才人達にも伝...
そして、その一週間後。
長期の休みをオールド・オスマンに申請し、四人は学院を発つ。
ガリア王を倒すための旅路が、今始まったのである。〜fin
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