ゼロの使い魔保管庫
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契約(その10) 痴女109号氏
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夜になった。
新郎新婦に休息は無い。
式と披露宴が終わると、二人は、早速荷物をまとめて新婚旅...
七泊八日の新婚旅行――とは言っても、実質は結婚式に来られ...
「あーあ、全く、やんなるわよね」
「……そうだな」
「ちょっとアンタ、なに疲れた顔してんのよ?」
そう言いながら、頬を真っ赤に染めた少女は、自らの“夫”に...
「――こっ、これから……しょっ、しょっ、しょっ」
「しょ?」
「『初夜』なんだからね……!! ちゃっ、ちゃんと、花嫁を……...
そう言って恥かしげにキスをねだるルイズは、才人が、今ま...
少年は、その幼き花嫁の、花びらのような唇に、自らのそれ...
だが……才人はもはや、自分自身の意思だけで、彼女が期待す...
「ルイズ」
「なに?」
「もう一度、ウェディングドレスに着替えてくれないか?」
「――え? 何で?」
ルイズは、その予想外の申し出に、目をぱちくりさせる。
「もう一回、大聖堂に行って、二人だけで、式を挙げよう?」
才人は、今の自分の立場を十分承知していた。
だからせめて、あの二人の小悪魔が、愛する花嫁を蹂躙する...
今宵の成り行き次第では、才人は、もう二度と、この愛する...
「なんか、……恥かしいな……」
そう言いながらルイズは、昼間に歩いたバージンロードを、...
無論、その傍らには、才人の姿がある。こちらも凛々しいタ...
「やっぱ、綺麗だよな、……お前ってさ」
才人が、溜め息交じりにそう言う。
「なに言ってるの? いまさら、そんな分かりきったこと言わ...
ルイズが幸せそうな顔を、さらにほころばせて、アカンベー...
「わかった。――じゃ、もう言わない」
才人が苦笑しながらそう言うと、今度は花嫁が、少し不服そ...
「――だめ」
「だめ?」
「御主人様は、犬のお世辞なんかに喜んで上げないけど、――で...
「はぁ?」
才人が、目をぱちくりさせると、
「だから……喜んでなんか上げないけど……ちょっとくらいは嬉し...
頬を真っ赤に染め、逆ギレしたように声を荒げ、にもかかわ...
ルイズの本当の美しさは、ああいう、衆目の眼前に晒された...
彼女は――性格はともかく――もともと顔の造型だけは、生まれ...
だが、彼は知っている。
才人自身と二人の時にしか見せない、この安心しきった可愛...
ハルケギニア広しといえども、平賀才人にしか見ることが出...
だから、才人は彼女には、決して逆らえない。眼前の花嫁の...
「ルイズ、お前は綺麗だ。すっごく綺麗だ。こんな可愛い花嫁...
「だから……?」
「幸せにする。――絶対に」
「ありがとう……サイト、大好き」
少女が薄く眼をつぶり、紅潮した頬よりも鮮やかな紅を差し...
花嫁と花婿は、誰もいない教会の聖堂の中、始祖の像が見守...
唾液と舌の蠢く音が、この世でもっとも神聖なる空間に響く。
禁欲を是とする教えを説く始祖ブリミル。だが、二人の放つ...
たとえて言うならそれは、互いが互いを骨の髄から求め合う―...
だが、その神聖なる愛欲の行為も、やがて、静かに終焉を迎...
ルイズの体から力が抜け、才人の背に回した腕が落ち、膝が...
「ル、イズ……?」
才人は、まるで白い粘液のように足元に崩れ落ちる花嫁に、...
が、ウエディングドレスの少女は、そのまま死んだように意...
「ルイズ、ルイズ!! 起きてくれ!! 目を覚ましてくれよ...
叫んだところで無駄だということは分かっている。
でも、叫ばずにいられない。
分かっている。奴らの仕業だ。あの……悪魔たち。
ルイズには、“その時”が来たら、自動的に意識を喪失するよ...
「もう時間切れ……なのか……?」
振り返りもせず才人は呟く。
「せめて、もう少しくらい二人きりで……」
「――ダメですよ、サイトさん」
才人の背に、むにゅっとした柔らかい感触が押しつけられる。
その声、感触……確認するまでもない。
彼を、この無間地獄に叩き込んだ最初の一人――シエスタ。
披露宴の準備中にポーションを、よりにもよって、三々九度...
そのままシエスタは、背後から才人に抱きついたまま、無理...
少年は、反射的に抵抗しようとしたが、股間を優しく一撫で...
「今日はめでたい結婚式の日なんですからね。花婿さんが『部...
「『部外者』って――シエスタっ、お前っ!?」
そう言い放ったシエスタの手を振り解き、振り返った才人は...
いや、シエスタだけではない。
「そう。今日のあなたの花嫁は、ルイズじゃない」
シエスタの影から、ゆらりと現れたタバサも、空色の見事な...
手にした無骨な杖は、相変わらずだったが。
そして、大聖堂の巨大な扉から姿を現した、もう二人の女性。
「姫さま……テファ……!?」
やはり二人とも、タバサやシエスタと同じく、来賓として列...
ティファニアは、やはりというか、うつむいて気まずそうに...
始祖ブリミルの像の前で、くにゃりと倒れこんだルイズ。
タキシードを僅かに乱れさせて、うろたえた表情で自分たち...
そんな『新郎新婦』に嘲るような微笑を送っている、シエス...
何を考えているのか、サッパリ分からない、無表情なタバサ。
そして、これから行う行為の、あまりの罪深さに、いまだに...
そして、混乱の極みにあるらしい才人を、再び嘗めるように...
大聖堂の扉は、大きな音を立てて閉ざされ、“ロック”のスペ...
なぜ……? なぜ二人がここに……!?
疑問に思うまでもない。
この二人がタバサとシエスタの二人と行動を共にしている。...
「サイト殿。ルイズに飲ませたポーションを調合したのは、こ...
アンリエッタが、全く感情をうかがわせない冷たい表情で、...
そう聞いて、才人は初めて、この女王が『水』のトライアン...
いや、それ以上に感じたのは、アンリエッタの語調の厳しさ...
そこには『告白』といった風の、罪の意識はカケラも存在せ...
少年は、こんな彼女は見たことがなかった。
「何で……そんな……だって姫さま、あんた、ルイズの親友じゃな...
「ええ。ルイズはわたくしの、大事な大事なお友達です」
「だったら、何で……あんたまでルイズを裏切るような真似を――...
「裏切る……?」
アンリエッタの目に、わずかに感情の色が篭もる。
――それは、軽蔑であった。
「貴方に言われたくはないですわ、花婿さん。ルイズの想いを...
その言葉を前に、才人は凝然と凍りつく。
女王の言うことは、まさしく、そのとおりであったからだ。
この場において、もっとも断罪されるべき者は、シエスタで...
そして、女王はそんな彼に、畳み掛けるように言う。
「サイト殿。わたくしの親友を裏切った貴方に、この国の主権...
そこで話を切ると、女王は振り向き、シエスタを呼んだ。
そしてシエスタは、才人に対する以上のうやうやしさで、彼...
「サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。
――上の者、この国における一切の基本的人権・及び生存権を剥...
「は……?」
「なお、以上の刑の執行は、国権の代表者たる女王の名のもと...
そこまで一気に読み上げて、シエスタは不安げに才人を見た。
彼は、――予想通りというべきか、一度聞いただけでは文章の...
「あの……サイトさん、これ、読みます?」
「うん。いいかな」
彼は、羊皮紙を受け取ると、文章とにらめっこを開始するが...
さすがにアンリエッタが、そのパッとしない彼の反応に焦れ...
「〜〜〜〜〜〜っ!! で・す・か・ら!! つまりサイト殿...
しかし、才人はまだ、きょとんとしている。
文章の内容が問題なのではない。彼にとっては、そもそもア...
「――つまり、こういう事なのですわ!!」
アンリエッタは、懐からもう一枚の書類を取り出し、シエス...
そして、シエスタはそれを読み上げ始めた。
先程にも勝る、氷のような声で。
「――私サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガは、以下の契約を結...
「え?」
「現在行われつつある、ヴァリエール家の三女との婚姻を、そ...
「なっ……!? なにいいっ!?」
「その上で、以下の四人の女性との愛を、新たに始祖の眼前で...
「いやだ!! いやだいやだいやだ!! 冗談じゃねえっ!!」
「シエスタ、タバサ、ティファニア、アンリエッタの四人の“妻...
「いい加減にしろシエスタっ!! そんな契約、出来るわけな...
「なお、忠誠の証しとして、我が“便宜上の”花嫁たるルイズ・...
「……本気なのか……?」
「以上のことを、始祖の御前にて誓います。――サイト・シュヴ...
アンリエッタが、いかにも残酷そうな光を目から放ち、ぬけ...
「本来なら、こんな契約は“重婚罪”に当たるため、いかに始祖...
才人はもはや、絶句していた。
何か言いたいのだが、もう言葉が出てこなかった。
ただ、絶望がその身を焼き、なんとか救いを周囲の女性たち...
――いや、いやいやいや。一人だけいた。良識が罪の意識を凌駕...
「テファ!! 何とか言ってくれ!! こんなムチャクチャな...
「ごめんなさい、サイト……」
瞬殺だった。
常識ある行動を訴えようとする才人の言葉を、雑音のように...
普段は、こんな話し方をする少女ではない。
だが、俯いていた目がこちらを向いた時、才人は、幾度目か...
「分かってるわ……サイトが本当に好きなのは、ルイズだけだっ...
語尾は消え行くような細い声であったが、それでも、才人に...
この場にもはや、自分の味方は誰もいない、ということを認...
「はじめる」
退屈そうに、事の成り行きを見ていたタバサが、ようやく動...
いや、タバサだけではない。アンリエッタも、ティファニア...
思わず逃げ腰になる才人。――しかし突然、下半身から力が抜...
「――これ、まさか……!?」
「はい!! 一服盛らせて頂きましたぁ」
語尾にハートマークが付きそうな声で、シエスタが笑う。
「油断しちゃダメですよ、サイトさん。ポーションがまさか自...
「そうですわサイト殿。これでは水精霊騎士隊の進退も考えね...
「そんな、そんなっ!! 俺のブザマは俺一人の責任で、あい...
「――安心なさい、サイト殿」
アンリエッタが、静かな声で囁いた。
「そんな、どうでもいい事などすぐに忘れさせてあげますわ」
アンリエッタが、そう言いながら指し示した先では、意識を...
タバサは、突然現れて、この場を仕切り始めた若き女王を見...
だが、一つ分かる事があるとすれば、アンリエッタからすれ...
アンリエッタが、彼から国籍と国法の庇護を剥奪するという...
しかし、どちらにしろタバサも、才人を他の女に渡すつもり...
終了行:
契約(その10) 痴女109号氏
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新郎新婦に休息は無い。
式と披露宴が終わると、二人は、早速荷物をまとめて新婚旅...
七泊八日の新婚旅行――とは言っても、実質は結婚式に来られ...
「あーあ、全く、やんなるわよね」
「……そうだな」
「ちょっとアンタ、なに疲れた顔してんのよ?」
そう言いながら、頬を真っ赤に染めた少女は、自らの“夫”に...
「――こっ、これから……しょっ、しょっ、しょっ」
「しょ?」
「『初夜』なんだからね……!! ちゃっ、ちゃんと、花嫁を……...
そう言って恥かしげにキスをねだるルイズは、才人が、今ま...
少年は、その幼き花嫁の、花びらのような唇に、自らのそれ...
だが……才人はもはや、自分自身の意思だけで、彼女が期待す...
「ルイズ」
「なに?」
「もう一度、ウェディングドレスに着替えてくれないか?」
「――え? 何で?」
ルイズは、その予想外の申し出に、目をぱちくりさせる。
「もう一回、大聖堂に行って、二人だけで、式を挙げよう?」
才人は、今の自分の立場を十分承知していた。
だからせめて、あの二人の小悪魔が、愛する花嫁を蹂躙する...
今宵の成り行き次第では、才人は、もう二度と、この愛する...
「なんか、……恥かしいな……」
そう言いながらルイズは、昼間に歩いたバージンロードを、...
無論、その傍らには、才人の姿がある。こちらも凛々しいタ...
「やっぱ、綺麗だよな、……お前ってさ」
才人が、溜め息交じりにそう言う。
「なに言ってるの? いまさら、そんな分かりきったこと言わ...
ルイズが幸せそうな顔を、さらにほころばせて、アカンベー...
「わかった。――じゃ、もう言わない」
才人が苦笑しながらそう言うと、今度は花嫁が、少し不服そ...
「――だめ」
「だめ?」
「御主人様は、犬のお世辞なんかに喜んで上げないけど、――で...
「はぁ?」
才人が、目をぱちくりさせると、
「だから……喜んでなんか上げないけど……ちょっとくらいは嬉し...
頬を真っ赤に染め、逆ギレしたように声を荒げ、にもかかわ...
ルイズの本当の美しさは、ああいう、衆目の眼前に晒された...
彼女は――性格はともかく――もともと顔の造型だけは、生まれ...
だが、彼は知っている。
才人自身と二人の時にしか見せない、この安心しきった可愛...
ハルケギニア広しといえども、平賀才人にしか見ることが出...
だから、才人は彼女には、決して逆らえない。眼前の花嫁の...
「ルイズ、お前は綺麗だ。すっごく綺麗だ。こんな可愛い花嫁...
「だから……?」
「幸せにする。――絶対に」
「ありがとう……サイト、大好き」
少女が薄く眼をつぶり、紅潮した頬よりも鮮やかな紅を差し...
花嫁と花婿は、誰もいない教会の聖堂の中、始祖の像が見守...
唾液と舌の蠢く音が、この世でもっとも神聖なる空間に響く。
禁欲を是とする教えを説く始祖ブリミル。だが、二人の放つ...
たとえて言うならそれは、互いが互いを骨の髄から求め合う―...
だが、その神聖なる愛欲の行為も、やがて、静かに終焉を迎...
ルイズの体から力が抜け、才人の背に回した腕が落ち、膝が...
「ル、イズ……?」
才人は、まるで白い粘液のように足元に崩れ落ちる花嫁に、...
が、ウエディングドレスの少女は、そのまま死んだように意...
「ルイズ、ルイズ!! 起きてくれ!! 目を覚ましてくれよ...
叫んだところで無駄だということは分かっている。
でも、叫ばずにいられない。
分かっている。奴らの仕業だ。あの……悪魔たち。
ルイズには、“その時”が来たら、自動的に意識を喪失するよ...
「もう時間切れ……なのか……?」
振り返りもせず才人は呟く。
「せめて、もう少しくらい二人きりで……」
「――ダメですよ、サイトさん」
才人の背に、むにゅっとした柔らかい感触が押しつけられる。
その声、感触……確認するまでもない。
彼を、この無間地獄に叩き込んだ最初の一人――シエスタ。
披露宴の準備中にポーションを、よりにもよって、三々九度...
そのままシエスタは、背後から才人に抱きついたまま、無理...
少年は、反射的に抵抗しようとしたが、股間を優しく一撫で...
「今日はめでたい結婚式の日なんですからね。花婿さんが『部...
「『部外者』って――シエスタっ、お前っ!?」
そう言い放ったシエスタの手を振り解き、振り返った才人は...
いや、シエスタだけではない。
「そう。今日のあなたの花嫁は、ルイズじゃない」
シエスタの影から、ゆらりと現れたタバサも、空色の見事な...
手にした無骨な杖は、相変わらずだったが。
そして、大聖堂の巨大な扉から姿を現した、もう二人の女性。
「姫さま……テファ……!?」
やはり二人とも、タバサやシエスタと同じく、来賓として列...
ティファニアは、やはりというか、うつむいて気まずそうに...
始祖ブリミルの像の前で、くにゃりと倒れこんだルイズ。
タキシードを僅かに乱れさせて、うろたえた表情で自分たち...
そんな『新郎新婦』に嘲るような微笑を送っている、シエス...
何を考えているのか、サッパリ分からない、無表情なタバサ。
そして、これから行う行為の、あまりの罪深さに、いまだに...
そして、混乱の極みにあるらしい才人を、再び嘗めるように...
大聖堂の扉は、大きな音を立てて閉ざされ、“ロック”のスペ...
なぜ……? なぜ二人がここに……!?
疑問に思うまでもない。
この二人がタバサとシエスタの二人と行動を共にしている。...
「サイト殿。ルイズに飲ませたポーションを調合したのは、こ...
アンリエッタが、全く感情をうかがわせない冷たい表情で、...
そう聞いて、才人は初めて、この女王が『水』のトライアン...
いや、それ以上に感じたのは、アンリエッタの語調の厳しさ...
そこには『告白』といった風の、罪の意識はカケラも存在せ...
少年は、こんな彼女は見たことがなかった。
「何で……そんな……だって姫さま、あんた、ルイズの親友じゃな...
「ええ。ルイズはわたくしの、大事な大事なお友達です」
「だったら、何で……あんたまでルイズを裏切るような真似を――...
「裏切る……?」
アンリエッタの目に、わずかに感情の色が篭もる。
――それは、軽蔑であった。
「貴方に言われたくはないですわ、花婿さん。ルイズの想いを...
その言葉を前に、才人は凝然と凍りつく。
女王の言うことは、まさしく、そのとおりであったからだ。
この場において、もっとも断罪されるべき者は、シエスタで...
そして、女王はそんな彼に、畳み掛けるように言う。
「サイト殿。わたくしの親友を裏切った貴方に、この国の主権...
そこで話を切ると、女王は振り向き、シエスタを呼んだ。
そしてシエスタは、才人に対する以上のうやうやしさで、彼...
「サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。
――上の者、この国における一切の基本的人権・及び生存権を剥...
「は……?」
「なお、以上の刑の執行は、国権の代表者たる女王の名のもと...
そこまで一気に読み上げて、シエスタは不安げに才人を見た。
彼は、――予想通りというべきか、一度聞いただけでは文章の...
「あの……サイトさん、これ、読みます?」
「うん。いいかな」
彼は、羊皮紙を受け取ると、文章とにらめっこを開始するが...
さすがにアンリエッタが、そのパッとしない彼の反応に焦れ...
「〜〜〜〜〜〜っ!! で・す・か・ら!! つまりサイト殿...
しかし、才人はまだ、きょとんとしている。
文章の内容が問題なのではない。彼にとっては、そもそもア...
「――つまり、こういう事なのですわ!!」
アンリエッタは、懐からもう一枚の書類を取り出し、シエス...
そして、シエスタはそれを読み上げ始めた。
先程にも勝る、氷のような声で。
「――私サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガは、以下の契約を結...
「え?」
「現在行われつつある、ヴァリエール家の三女との婚姻を、そ...
「なっ……!? なにいいっ!?」
「その上で、以下の四人の女性との愛を、新たに始祖の眼前で...
「いやだ!! いやだいやだいやだ!! 冗談じゃねえっ!!」
「シエスタ、タバサ、ティファニア、アンリエッタの四人の“妻...
「いい加減にしろシエスタっ!! そんな契約、出来るわけな...
「なお、忠誠の証しとして、我が“便宜上の”花嫁たるルイズ・...
「……本気なのか……?」
「以上のことを、始祖の御前にて誓います。――サイト・シュヴ...
アンリエッタが、いかにも残酷そうな光を目から放ち、ぬけ...
「本来なら、こんな契約は“重婚罪”に当たるため、いかに始祖...
才人はもはや、絶句していた。
何か言いたいのだが、もう言葉が出てこなかった。
ただ、絶望がその身を焼き、なんとか救いを周囲の女性たち...
――いや、いやいやいや。一人だけいた。良識が罪の意識を凌駕...
「テファ!! 何とか言ってくれ!! こんなムチャクチャな...
「ごめんなさい、サイト……」
瞬殺だった。
常識ある行動を訴えようとする才人の言葉を、雑音のように...
普段は、こんな話し方をする少女ではない。
だが、俯いていた目がこちらを向いた時、才人は、幾度目か...
「分かってるわ……サイトが本当に好きなのは、ルイズだけだっ...
語尾は消え行くような細い声であったが、それでも、才人に...
この場にもはや、自分の味方は誰もいない、ということを認...
「はじめる」
退屈そうに、事の成り行きを見ていたタバサが、ようやく動...
いや、タバサだけではない。アンリエッタも、ティファニア...
思わず逃げ腰になる才人。――しかし突然、下半身から力が抜...
「――これ、まさか……!?」
「はい!! 一服盛らせて頂きましたぁ」
語尾にハートマークが付きそうな声で、シエスタが笑う。
「油断しちゃダメですよ、サイトさん。ポーションがまさか自...
「そうですわサイト殿。これでは水精霊騎士隊の進退も考えね...
「そんな、そんなっ!! 俺のブザマは俺一人の責任で、あい...
「――安心なさい、サイト殿」
アンリエッタが、静かな声で囁いた。
「そんな、どうでもいい事などすぐに忘れさせてあげますわ」
アンリエッタが、そう言いながら指し示した先では、意識を...
タバサは、突然現れて、この場を仕切り始めた若き女王を見...
だが、一つ分かる事があるとすれば、アンリエッタからすれ...
アンリエッタが、彼から国籍と国法の庇護を剥奪するという...
しかし、どちらにしろタバサも、才人を他の女に渡すつもり...
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